JP3674381B2 - 分解能切換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子の回転角度位置を検出する位置検出器の分解能を切り換える装置に係り、特に、回転子の高速動作に対応してしかも高精度で位置検出データの検出を可能とすることにより、位置検出器を用いて回転子の位置決め制御を行う場合に、位置決め時間の短縮化および位置決め制御の高精度化を図るのに好適な分解能切換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、回転子の回転角度をその回転角度に応じて変化するアナログ信号として検出するセンサとしては、レゾルバが用いられている。このレゾルバは、モータ等の回転軸に回転自在に取り付けられるものであって、例えば、ロータとステータとの間のリラクタンスがロータの位置により変化し、ロータ1回転につきリラクタンス変化の基本波成分が1周期となるように構成されており、サーボ機構の検出系などに用いられる。レゾルバからのレゾルバ信号はアナログであるため、これをディジタル信号に変換するレゾルバ用ディジタル変換器(RDC:Resolver Digital Converter)が用意されている。
【0003】
従来、RDCは、レゾルバからのレゾルバ信号に基づいて、所定分解能で回転軸の回転角度位置を位置検出データとして検出するようになっている。RDCによっては、複数段階ある分解能を備えたものもあるが、用途に応じて分解能を固定設定して用いていた。
この分解能には、例えば、最大速度が1[rps]/614400[pps]である12ビットの分解能と、最大速度が3[rps]/153600[pps]である10ビットの分解能とがあり、通常、最大速度が増加するにつれて分解能が低くなっていくものである。このため、回転軸が比較的高速で回転する場合に適用するときは、RDCの分解能を10ビットに設定して対応させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のRDCでは分解能を固定設定しているため、RDCの分解能を低分解能(10ビット)に設定した場合は、回転軸が高速で回転しているときにはこれに対応することができるが、回転軸が低速で回転しているときには粗い精度で位置検出データを検出することとなり、逆に、RDCの分解能を高分解能(12ビット)に設定した場合は、回転軸が低速で回転しているときには細かな精度で位置検出データを検出することができるが、回転軸が高速で回転しているときにはこれに対応することができなくなる。このことは、RDCを用いて回転軸の位置決め制御を行う場合に、位置決め時間が長くなるばかりか、位置決め制御を精度よく行えないという問題につながる。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、回転子の高速動作に対応してしかも高精度で位置検出データの検出を可能とすることにより、RDC等の位置検出器を用いて回転子の位置決め制御を行う場合に、位置決め時間の短縮化および位置決め制御の高精度化を図るのに好適な分解能切換装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の分解能切換装置は、回転子の回転角度をその回転角度に応じて変化する位置検出信号として検出し、検出した位置検出信号に基づいて、複数段階ある分解能のうち指定された分解能で前記回転子の回転角度位置を位置検出データとして検出する位置検出器に適用される分解能切換装置であって、前記回転子の回転速度を検出し、検出した回転速度に応じて前記位置検出器の分解能を前記複数段階ある分解能のうちいずれかに切り換える制御を行う制御手段を備え、前記制御手段は、前記検出した回転速度が増加しているときの分解能切換パターンと、前記検出した回転速度が減少しているときの分解能切換パターンとを異ならせ、前記位置検出器の分解能を切り換える際は、前記位置検出器からの位置検出データが変化した直後に行うようになっている
【0007】
このような構成であれば、回転子が回転すると、その回転速度が検出され、検出された回転速度に応じて位置検出器の分解能が切り換えられる。これにより、位置検出器では、回転子の回転角度が位置検出信号として検出され、検出された位置検出信号に基づいて、複数段階ある分解能のうち回転速度に応じて切り換えられた分解能で回転子の回転角度位置が検出される。
また、回転子の回転速度が増加しているとき(加速度が正の値)は、制御手段により、位置検出器の分解能が所定切換パターンで切り換えられる。これに対して、回転子の回転速度が減少しているとき(加速度が負の値)は、制御手段により、増加時の分解能切換パターンとは異なる切換パターンで位置検出器の分解能が切り換えられる。
したがって、回転子の速度リップルの影響によって位置検出器の分解能が無意味に切り換えられるのを抑制することができる。
さらに、制御手段により、位置検出器の分解能を切り換える際は、位置検出器からの位置検出データが変化した直後に行われる。
RDC等の位置検出器は、位置検出データが変化する直前にその分解能が切り換えられると、発振してしまって位置検出データを正確に読み出すことができなくなる場合が想定される。そこで、このように位置検出データが変化した直後に分解能を切り換えるようにすれば、発振を抑制することができるので、位置検出器の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができる。
【0008】
ここで、位置検出器としては、例えば、回転子に回転自在に取り付けられたレゾルバを備え、このレゾルバにより、回転子の回転角度をその回転角度に応じて変化する位置検出信号として検出する構成のものを用いることができる。
さらに、本発明に係る請求項2記載の分解能切換装置は、請求項1記載の分解能切換装置において、前記制御手段は、所定サンプリング周期で前記位置検出器から前記位置検出データを読み出し、読み出した位置検出データに基づいて前記回転子の回転速度を算出するようになっており、前記位置検出器の分解能を切り換える際は、前記位置検出データを読み出した直後に行うようになっている。
このような構成であれば、制御手段により、所定サンプリング周期で位置検出器から位置検出データが読み出され、読み出された位置検出データに基づいて回転子の回転速度が算出される一方、位置検出器の分解能を切り換える際は、位置検出データが読み出された直後に行われる。
RDC等の位置検出器は、位置検出データが読み出される直前にその分解能が切り換えられると、動作が不安定となって位置検出データを正確に読み出すことができなくなる場合が想定される。そこで、このように位置検出データが読み出される直後に分解能を切り換えるようにすれば、次の位置検出データを読み出すまでの時間(ほぼ1サンプリング周期)を、動作を安定させるための時間として確保することができるので、位置検出器の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができる。
さらに、本発明に係る請求項3記載の分解能切換装置は、請求項1および2のいずれか1項に記載の分解能切換装置において、前記位置検出器における前記位置検出データの1ビット当たりの電流値を決定するためのゲインスケーリング抵抗部と、帯域を調整するためのCR部と、前記位置検出器の最大トラッキングレートを決定するためのトラッキング抵抗部と、前記制御手段からの切換信号に応じて前記ゲインスケーリング抵抗部、前記CR部および前記トラッキング抵抗部の回路定数を切り換えるスイッチング部とを備える。
このような構成であれば、制御手段により、位置検出器の分解能を切り換える際はスイッチング部に切換信号が出力される。これに伴って、スイッチング部により、ゲインスケーリング抵抗部、CR部およびトラッキング抵抗部の回路定数が切り換えられる。
RDC等の位置検出器は、単純に分解能を切り換えるだけでは動作中の分解能切換を実現するには不十分であり、これを実現するためには、切換前後の帯域を統一させること、内部ループのヒステリシス幅を調整することが少なくとも必要となる。そこで、このように分解能の切り換えに合わせてゲインスケーリング部、CR部およびトラッキング抵抗部の回路定数を切り換えるようにすれば、分解能の切り換えに合わせて、切換前後の帯域を統一させるとともに内部ループのヒステリシス幅を調整することが可能となるので、動作中の分解能切換を実現することができる。
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る請求項4記載の位置決め制御システムは、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分解能切換装置を用いて位置決め制御を行うようになっている。
また、請求項1記載の分解能切換装置をより具体化した装置として、次の第2の分解能切換装置が考えられる。第2の分解能切換装置は、請求項1記載の分解能切換装置において、前記回転子の回転速度を検出し、検出した回転速度に応じて前記位置検出器の分解能を前記複数段階ある分解能のうちいずれかに切り換える制御を行う制御手段を備えている。
【0009】
このような構成であれば、回転子が回転すると、制御手段により、回転子の回転速度が検出され、検出された回転速度に応じて位置検出器の分解能が複数段階ある分解能のうちいずれかに切り換えられる。
さらに、第2の分解能切換装置をより具体化した装置として、次の第3の分解能切換装置が考えられる。第3の分解能切換装置は、第2の分解能切換装置において、前記位置検出器は、前記回転子の回転速度を複数段階に区分したときの各段階に対応した分解能を備えており、前記制御手段は、前記位置検出器の分解能を、前記複数段階ある分解能のうち検出した回転速度よりも高い段階に対応した分解能に切り換えるようになっている。
【0010】
このような構成であれば、制御手段により、位置検出器の分解能が、回転子の回転速度を複数段階に区分したときの各段階に対応した分解能のうち検出された回転速度よりも高い段階に対応したものに切り換えられる
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1ないし図5は、本発明に係る分解能切換装置の実施の形態を示す図である。
この実施の形態は、本発明に係る分解能切換装置を、図1に示すように、RDC22を用いてモータ10の回転軸の位置決め制御を行う位置決め制御システムにおいて、RDC22の分解能を切り換える場合について適用したものである。
【0019】
まず、本発明に係る分解能切換装置を適用する位置決め制御システムの構成を図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る分解能切換装置を適用する位置決め制御システムの構成を示すブロック図である。
図1において、位置決め制御システムは、メガトルクモータ等のモータ10と、モータ10の回転軸に回転自在に取り付けられたレゾルバ20と、レゾルバ20からの出力信号に基づいて回転軸の回転角度位置を検出するRDC22と、RDC22の分解能を切り換える切換制御部30と、RDC22からの出力信号に基づいて回転軸の回転速度を演算する速度演算部52と、RDC22からの出力信号と位置指令信号に基づいて回転軸の位置制御を行う位置制御部40と、速度演算部52からの出力信号と位置制御部40からの出力信号に基づいて回転軸の速度制御を行う速度制御部50と、速度制御部50からの出力信号に基づいてモータ10に与える負荷電流を制御する電流制御部60と、で構成されている。
【0020】
レゾルバ20は、例えば、単極3相可変リラクタンス型レゾルバであって、円筒状のステータと、回転軸を把持してステータ内に回転自在に配設されたロータと、で構成されており、ロータとステータとの間のリラクタンスがロータの位置により変化し、ロータの1回転につきリラクタンス変化の基本波成分が1周期となるように構成されている。すなわち、ロータの内径中心をステータの内径中心と一致させ、ロータ30の外形中心をその内径中心から一定の偏心量だけ偏心させるようにしてロータの肉厚を変化させてあり、これによってリラクタンスがロータの位置により変化するようになっている。このため、レゾルバ20は、回転軸の回転角度をその回転角度に応じて変化するアナログ信号として検出するようになっている。
【0021】
RDC22は、レゾルバ20からのアナログ信号であるレゾルバ信号に基づいて、2段階ある分解能のうち指定された分解能で回転軸の回転角度位置を位置検出データとして検出するようになっている。この分解能には、例えば、最大速度が1[rps]/614400[pps]である12ビットの分解能と、最大速度が3[rps]/153600[pps]である10ビットの分解能とがある。このため、RDC22は、12ビットの分解能に設定されているときは、回転軸の回転速度が最大速度1[rps]を超えない範囲において、回転軸の回転角度位置を12ビット(0〜4095)の精度で分解してこれを位置検出データとして検出し、10ビットの分解能に設定されているときは、回転軸の回転速度が最大速度3[rps]を超えない範囲において、回転軸の回転角度位置を10ビット(0〜1023)の精度で分解してこれを位置検出データとして検出するようになっている。なお、RDC22の分解能は、モータ10の回転速度が“0”の状態では12ビットに設定されている。
【0022】
切換制御部30は、RDC22からの位置検出データに基づいて、RDC22の分解能切換端子に切換信号を出力することにより、RDC22の分解能を、12ビットおよび10ビットのいずれかに切り換えるようになっている。
位置制御部40は、RDC22からの位置検出データと位置指令信号とを入力し、位置指令信号による位置指令値と位置検出データとの差分に基づいて、回転軸の回転角度位置が位置指令値と一致するように速度指令値を算出して速度制御部50に出力することにより、回転軸の回転角度位置をフィードバック制御するようになっている。
【0023】
速度制御部50は、速度演算部52からの回転軸の速度実績値と位置制御部40からの速度指令値とを入力し、回転軸の速度実績値と速度指令値との差分に基づいて、回転軸の回転速度が速度指令値と一致するように電流指令値を算出して電流制御部60に出力することにより、回転軸の回転速度をフィードバック制御するようになっている。
【0024】
電流制御部60は、速度制御部50からの電流指令値を入力し、モータ10の負荷電流値と電流指令値との差分に基づいて、モータ10の負荷電流値が電流指令値と一致するようにモータ10の負荷電流をフィードバック制御するようになっている。
次に、RDC22および切換制御部30の構成を図2ないし図4を参照しながら詳細に説明する。図2は、RDC22および切換制御部30の詳細な構成を示すブロック図であり、図3および図4は、RDC22の分解能を切り換えるタイミングを示すタイムチャートである。
【0025】
図2において、RDC22は、位置検出データを出力するための16ビットの出力端子である位置検出データ出力端子To0〜To15と、RDC22の分解能を切り換える切換指令である切換信号を入力するための分解能切換端子Tiと、を有している。
また、RDC22は、12ビットの分解能に設定されているときは、位置検出データ出力端子To0〜To11を介して12ビットの位置検出データを出力し、10ビットの分解能に設定されているときは、位置検出データ出力端子To2〜To11を介して10ビットの位置検出データを出力するようになっている。これにより、RDC22の動作中に分解能が切り換えられても、位置検出データの桁数が切換前後で同一に保たれる。例えば、12ビットの分解能に設定されているときに、位置検出データが、“2000”,“2001”,“2002”,“2003”,“2004”,“2005”,“2006”,“2007”と変化していき、“2008”になったときに10ビットの分解能に切り換えられると、位置検出データはその後、“2008”,“2008”,“2008”,“2008”,“2012”,“2012”,“2012”,“2012”と変化していく。
【0026】
切換制御部30は、RDC22からの位置検出データおよび後述のCPU34からの切換制御信号を処理する信号処理回路32と、信号処理回路32からの位置検出データに基づいてRDC22の分解能を切り換える切換指令である切換制御信号を生成するCPU34と、信号処理回路32からの切換信号に基づいてRDC22の回路定数を調整する回路定数調整部36と、で構成されている。
【0027】
信号処理回路32は、位置検出データ出力端子To0〜To15を介してRDC22からの位置検出データを入力し、CPU34の読出指令に応じて、入力した位置検出データをCPU34に出力するようになっている。また、図3に示すように、CPU34からの切換制御信号を入力したときは、切換制御信号を入力した時点を基準として次の位置検出データがRDC22から出力されるのを待ってその直後に、分解能切換端子Tiおよび回路定数調整部36に切換信号を出力するようになっている。
【0028】
回路定数調整部36は、RDC22における位置検出データの1ビット当たりの電流値を決定するためのゲインスケーリング抵抗部36aと、帯域を調整するためのCR部36bと、RDC22の最大トラッキングレートを決定するためのトラッキング抵抗部36cと、信号処理回路32からの切換信号に応じてゲインスケーリング抵抗部36a、CR部36bおよびトラッキング抵抗部36cの回路定数を切り換えるスイッチング部36dと、で構成されており、ゲインスケーリング抵抗部36aと、CR部36bと、トラッキング抵抗部36cとは、その順で直列に接続されている。
【0029】
ゲインスケーリング抵抗部36aは、スイッチS1と抵抗R41(例えば36[kΩ])とを直列接続し、スイッチS2と抵抗R42(例えば180[kΩ])とを直列接続し、さらに、これらと抵抗R43(例えば510[kΩ])とを並列接続して構成されている。そして、スイッチS1、スイッチ2および抵抗R43の一端には、RDC22の同期整流回路22aが接続されている。
【0030】
CR部36bは、RDC22の積分器22bと並列接続して、積分器22bの帯域を決定するための回路部である。これは、コンデンサC51と抵抗R51とを直列接続するとともにこれらとコンデンサC41とを並列接続して第1のCR部を構成し、コンデンサC52と抵抗R52とを直列接続するとともにこれらとコンデンサC42とを並列接続して第2のCR部を構成し、さらに、第1のCR部と第2のCR部とのいずれかに切換可能な3点切換スイッチS3を設けて構成されている。そして、コンデンサC41,C51,C42,C52の一端には、ゲインスケーリング抵抗部36aにおける抵抗R41〜R43の他端が接続されている。
【0031】
トラッキング抵抗部36cは、スイッチS4と抵抗R61(例えば5.6[kΩ])とを直列接続し、スイッチS5と抵抗R62(例えば27[kΩ])とを直列接続し、さらに、これらと抵抗R63(例えば82[kΩ])とを並列接続して構成されている。そして、スイッチS4、スイッチ5および抵抗R63の一端には、CR部36bにおけるスイッチS3の他端が接続されており、抵抗R61〜R63の他端には、RDC22の電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)22cが接続されている。
【0032】
スイッチング部36dは、10ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換信号を入力したときは、スイッチS1,S4をオン状態とし、スイッチS2,S5をオフ状態とするとともに、スイッチS3を第1のCR部に切り換えるようになっている。また、12ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換信号を入力したときは、スイッチS1,S4をオフ状態とし、スイッチS2,S5をオン状態とするとともに、スイッチS3を第2のCR部に切り換えるようになっている。
【0033】
CPU34は、図3に示すように、RDC22の位置検出データの出力周期よりも長い所定サンプリング周期で、信号処理回路32に読出指令を出力して位置検出データを読み出し、読み出した位置検出データに基づいて回転軸の回転速度を算出するようになっている。そして、図4に示すように、算出した回転速度が増加しているときであって回転速度が所定値(例えば0.8[rps])以上となったときは、10ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換制御信号を信号処理回路32に出力し、算出した回転速度が減少しているときであって回転速度が所定値(例えば0.7[rps])以下となったときは、12ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換制御信号を信号処理回路32に出力するようになっている。また、CPU34は、図3に示すように、切換制御信号を信号処理回路32に出力する際は、位置検出データを信号処理回路32から読み出した直後に行うようになっている。
【0034】
次に、上記実施の形態の動作を図面を参照しながら説明する。
上記位置決め制御システムにおいて、モータ10が停止した状態で位置指令信号が入力されると、まず、位置制御部40では、回転軸の回転角度位置が位置指令信号による位置指令値と一致するように速度指令値が算出され、算出された速度指令値が速度制御部50に出力される。速度制御部50では、速度指令値が入力されると、回転軸の回転速度が速度指令値と一致するように電流指令値が算出され、算出された電流指令値が電流制御部60に出力される。電流制御部60では、電流指令値が入力されると、モータ10の負荷電流値が電流指令値と一致するように負荷電流が制御され、これにより、モータ10が回転させられる。
【0035】
こうしてモータ10が回転を開始すると、レゾルバ20により、回転軸の回転角度に応じて変化するレゾルバ信号が出力され、RDC22では、レゾルバ20からのレゾルバ信号に基づいて、12ビットの分解能で回転軸の回転角度位置が検出され、12ビットの位置検出データが位置制御部40および速度演算部52に出力される。
【0036】
こうして位置検出データが位置制御部40にフィードバックされると、位置検出部40では、位置検出データによる回転角度位置よりも位置指令値が大きいときは、速度指令値を増加させ、位置検出データによる回転角度位置よりも位置指令値が小さいときは、速度指令値を減少させるといった制御が行われることにより、位置検出データによる回転角度位置と位置指令値との差分がなくなるように速度指令値の増減が制御される。
【0037】
速度制御部50では、速度指令値よりも速度演算部52からの速度実績値が大きいときは、電流指令値を増加させ、速度指令値よりも速度実績値が小さいときは、電流指令値を減少させるといった制御が行われることにより、速度指令値と速度実績値との差分がなくなるように電流指令値の増減が制御される。電流制御部60では、電流指令値よりもモータ10の負荷電流値が大きいときは、負荷電流を増加させ、電流指令値よりも負荷電流値が小さいときは、負荷電流を減少させるといった制御が行われることにより、電流指令値と負荷電流値との差分がなくなるように負荷電流の増減が制御される。
【0038】
このように、上記位置決め制御システムでは、位置指令信号が入力されると、回転軸の回転角度位置が位置指令値となるようにモータ10が制御されるが、この制御過程においては、モータ10の回転速度に応じてRDC22の分解能が切り換えられる。次に、その切換動作を説明する。
まず、図4に示すように、モータ10の回転速度が増加していき、その回転速度が所定値(例えば0.8[rps])以上となったときは、CPU34により、次の位置検出データが信号処理回路32から読み出されるのを待ってその直後に、10ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換制御信号が信号処理回路32に出力される。信号処理回路32では、この切換制御信号が入力されると、次の位置検出データがRDC22から出力されるのを待ってその直後に、10ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換信号がRDC22および回路定数調整部36に出力される。
【0039】
回路定数調整部36では、この切換信号が入力されると、スイッチング部36dにより、スイッチS1,S4がオフ状態とされ、スイッチS2,S5がオン状態とされるとともに、スイッチS3が第2のCR部に切り換えられる。その結果、抵抗R42と抵抗R43とが並列接続され、第2のCR部が接続され、抵抗R62と抵抗R63とが並列接続されることにより、抵抗R42,R43と、第2のCR部と、抵抗R62,R63と、が直列接続された回路が構成される。このため、切換前と同じ帯域が保持されるとともにRDC22の内部ループのヒステリシス幅が10ビットの分解能に対応して調整される。
【0040】
一方、RDC22では、上記切換信号が入力されると、分解能が10ビットに切り換えられ、その結果、レゾルバ20からのレゾルバ信号に基づいて、10ビットの分解能で回転軸の回転角度位置が検出され、10ビットの位置検出データが位置制御部40および速度演算部52に出力される。
次に、図4に示すように、モータ10の回転速度が減少していき、その回転速度が所定値(例えば0.7[rps])以下となったときは、CPU34により、次の位置検出データが信号処理回路32から読み出されるのを待ってその直後に、12ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換制御信号が信号処理回路32に出力される。信号処理回路32では、この切換制御信号が入力されると、次の位置検出データがRDC22から出力されるのを待ってその直後に、12ビットの分解能に切換を行う切換指令である切換信号がRDC22および回路定数調整部36に出力される。
【0041】
回路定数調整部36では、この切換信号が入力されると、スイッチング部36dにより、スイッチS1,S4がオン状態とされ、スイッチS2,S5がオフ状態とされるとともに、スイッチS3が第1のCR部に切り換えられる。その結果、抵抗R41と抵抗R43とが並列接続され、第1のCR部が接続され、抵抗R61と抵抗R63とが並列接続されることにより、抵抗R41,R43と、第1のCR部と、抵抗R61,R63と、が直列接続された回路が構成される。このため、切換前と同じ帯域が保持されるとともにRDC22の内部ループのヒステリシス幅が12ビットの分解能に対応して調整される。
【0042】
一方、RDC22では、上記切換信号が入力されると、分解能が12ビットに切り換えられ、その結果、レゾルバ20からのレゾルバ信号に基づいて、12ビットの分解能で回転軸の回転角度位置が検出され、12ビットの位置検出データが位置制御部40および速度演算部52に出力される。
なお、このように、回転軸の回転速度に応じて分解能を切り換えながら位置検出データを検出するようにした場合、位置決め時間および位置偏差は、10ビットの分解能で固定設定して位置検出データを検出するようにした従来の場合に比して、図5に示すようになる。図5は、本発明による位置決め時間および位置偏差と、従来の位置決め時間および位置偏差とを比較したグラフである。
【0043】
図中、本発明による位置決め時間は、従来に比してほぼ半分の時間となり、また、本発明による位置偏差は、従来に比してほぼ半分の時間で収束していることが判る。
このようにして、本実施の形態では、RDC22の分解能を切り換える切換制御部30を備え、回転軸の回転速度を検出し、検出した回転速度が所定値以上であるときは、RDC22の分解能を高速回転対応の10ビットに切り換え、検出した回転速度が所定値以下であるときは、RDC22の分解能を高精度である12ビットに切り換えるようにした。このため、回転軸が高速で回転しているときにはこれに対応することができ、逆に、回転軸が低速で回転しているときには細かな精度で位置検出データを検出することができるので、従来に比して、位置決め時間を短縮することができるとともに、高精度な位置決め制御を行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、回転速度が増加しているときであって回転速度が0.8[rps]以上となったときは、10ビットの分解能に切り換え、回転速度が減少しているときであって回転速度が0.7[rps]以下となったときは、12ビットの分解能に切り換るといったように、回転速度が増加しているときの分解能切換パターンと、検出した回転速度が減少しているときの分解能切換パターンと、を異ならせるようにした。このため、回転軸の速度リップルの影響によってRDC22の分解能が無意味に切り換えられるのを抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態では、CPU34からの切換制御信号を入力したときは、切換制御信号を入力した時点を基準として次の位置検出データがRDC22から出力されるのを待ってその直後に、分解能切換端子Tiおよび回路定数調整部36に切換信号を出力するようにした。このため、RDC22の発振を抑制することができるので、RDC22の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、切換制御信号を信号処理回路32に出力する際は、位置検出データを信号処理回路32から読み出した直後に行うようにした。このため、次の位置検出データを読み出すまでの時間(ほぼ1サンプリング周期)を、CPU36の動作を安定させるための時間として確保することができるので、RDC22の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができ。
【0047】
さらに、本実施の形態では、分解能の切り換えに合わせてゲインスケーリング部、CR部およびトラッキング抵抗部の回路定数を切り換えるようにした。このため、分解能の切り換えに合わせて、切換前後の帯域を統一させるとともにRDC22の内部ループのヒステリシス幅を調整することが可能となるので、RDC22の動作中の分解能切換を実現することができる。
【0048】
さらに、本実施の形態では、RDC22は、12ビットの分解能に設定されているときは、位置検出データ出力端子To0〜To11を介して位置検出データを出力し、10ビットの分解能に設定されているときは、位置検出データ出力端子To2〜To11を介して位置検出データを出力するようにした。このため、RDC22の動作中に分解能を切り換えても、位置検出データの桁数が切換前後で同一に保たれるので、回転軸の回転角度位置を再度捕捉する必要がなくなる。
【0049】
なお、上記実施の形態においては、10ビットの分解能と12ビットの分解能とを有するRDC22を用いて構成したが、これに限らず、さらに複数段階の分解能を有するRDC22を用いて、RDC22の分解能を、複数段階ある分解能うちいずれかに切り換えるように構成してもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る請求項1記載の分解能切換装置によれば、回転子が高速で回転しているときにはこれに対応することができ、逆に、回転子が低速で回転しているときには細かな精度で位置検出データを検出することができるので、従来に比して、位置決め時間を短縮することができるとともに、高精度な位置決め制御を行うことができるという効果が得られる。また、回転子の速度リップルの影響によって位置検出器の分解能が無意味に切り換えられるのを抑制することができるという効果も得られる。さらに、発振を抑制することができるので、位置検出器の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができるという効果も得られる。
さらに、本発明に係る請求項2記載の分解能切換装置によれば、次の位置検出データを読み出すまでの時間(ほぼ1サンプリング周期)を、動作を安定させるための時間として確保することができるので、位置検出器の分解能を切り換えても、位置検出データを比較的正確に読み出すことができるという効果が得られる。
さらに、本発明に係る請求項3記載の分解能切換装置によれば、分解能の切り換えに合わせて、切換前後の帯域を統一させるとともに内部ループのヒステリシス幅を調整することが可能となるので、動作中の分解能切換を実現することができるという効果が得られる。
一方、本発明に係る請求項4記載の位置決め制御システムによれば、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分解能切換装置と同等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分解能切換装置を適用する位置決め制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】RDC22および切換制御部30の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】RDC22の分解能を切り換えるタイミングを示すタイムチャートである。
【図4】RDC22の分解能を切り換えるタイミングを示すタイムチャートである。
【図5】本発明による位置決め時間および位置偏差と、従来の位置決め時間および位置偏差とを比較したグラフである。
【符号の説明】
10 モータ
20 レゾルバ
22 RDC
30 切換制御部
32 信号処理回路
34 CPU
36 回路定数調整部
36a ゲインスケーリング抵抗部
36b CR部
36c トラッキング抵抗部
36d スイッチング部
40 位置制御部
50 速度制御部
52 速度演算部
60 電流制御部

Claims (4)

  1. 回転子の回転角度をその回転角度に応じて変化する位置検出信号として検出し、検出した位置検出信号に基づいて、複数段階ある分解能のうち指定された分解能で前記回転子の回転角度位置を位置検出データとして検出する位置検出器に適用される分解能切換装置であって、
    前記回転子の回転速度を検出し、検出した回転速度に応じて前記位置検出器の分解能を前記複数段階ある分解能のうちいずれかに切り換える制御を行う制御手段を備え、
    前記制御手段は、前記検出した回転速度が増加しているときの分解能切換パターンと、前記検出した回転速度が減少しているときの分解能切換パターンとを異ならせ、前記位置検出器の分解能を切り換える際は、前記位置検出器からの位置検出データが変化した直後に行うようになっていることを特徴とする分解能切換装置。
  2. 請求項1において、
    前記制御手段は、所定サンプリング周期で前記位置検出器から前記位置検出データを読み出し、読み出した位置検出データに基づいて前記回転子の回転速度を算出するようになっており、前記位置検出器の分解能を切り換える際は、前記位置検出データを読み出した直後に行うようになっていることを特徴とする分解能切換装置。
  3. 請求項1および2のいずれか1項において、
    前記位置検出器における前記位置検出データの1ビット当たりの電流値を決定するためのゲインスケーリング抵抗部と、帯域を調整するためのCR部と、前記位置検出器の最大トラッキングレートを決定するためのトラッキング抵抗部と、前記制御手段からの切換信号に応じて前記ゲインスケーリング抵抗部、前記CR部および前記トラッキング抵抗部の回路定数を切り換えるスイッチング部とを備えることを特徴とする分解能切換装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分解能切換装置を用いて位置決め制御を行うようになっていることを特徴とする位置決め制御システム。
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