JP3673294B2 - 気相法炭素繊維の製造法及びその装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は気相法の炭素繊維、より詳しくは有機化合物の熱分解による気相成長法によって炭素繊維を製造する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
気相成長炭素繊維製造方法は、反応炉内で有機化合物を熱分解してウイスカー状の微細な炭素繊維を1工程で得ることの出来る優れた方法である。しかし工業的な生産性に問題があり種々改善がなされてきた。
例えば初めはセラミック基板に遷移金属の超微粒子を付着させてから有機化合物を供給し分解させ長時間成長させて比較的太く長い気相法炭素繊維を製造する方法であった(特開昭52−103528)。
この方法は良好な物性の炭素繊維が得られるが、繊維径が太くなることや反応速度が遅く、工業生産に向かないなど不十分な点が多かった。
これを改善するために、鉄を始めとする遷移金属の有機化合物を触媒とし、この触媒とキャリヤーガス及び例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を液または気体状で反応炉に導入して有機化合物を800℃〜1300℃程度で熱分解し、微細な炭素繊維を短時間で生産する方法が開発され生産性が改善された。
【0003】
これら気相法炭素繊維の製造方法としては
▲1▼フェロセン等の遷移金属化合物を気化させ反応炉に導入し、遷移金属の微粒子を生成させシードとして用いる製造方法(特開昭60−54998)。
▲2▼鉄等の遷移金属を直接熱分解炉中で気化させてシードを作り製造する方法(特開昭61−291497)。
▲3▼フェロセン等の遷移金属化合物を液体有機化合物に分散あるいは溶解させて反応炉中にスプレーしてシードとして製造する方法(特開昭58−180615)。
等によって製造されるようになった。
これらの方法によって得られる気相法炭素繊維は繊維径が0.01μ〜5μ、長さ1μ〜1000μ程度の繊維状を形成し、黒鉛構造の網面が繊維軸に沿って発達し、内部に中空の孔があるのが特徴である。
【0004】
これらの方法において炭素繊維は通常反応炉の壁面に析出し、さらに先に析出した繊維上に新たに繊維が析出するので最後には炉内が繊維で閉塞するようになる。従ってその前に炭素繊維を間欠的に掻き取り、連続運転を可能なようにしている。この掻き取り装置として実公平1−21980が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造法では鉄等の遷移金属の微粒子が触媒として用いられ、その微粒子が繊維の先端に存在しているが、その他に繊維を構成しない微粒子が金属粒あるいは化合物等になるのも存在する。また有機化合物の炭素も繊維化せず炭化物等となるのもあり、これらの金属等と炭化物等が混在した炭素質スケールが炉壁面に次第に蓄積されてくる。
【0006】
炭素繊維は上記した掻き取り装置で容易に炉壁面から剥離することができるが、炭素質スケールは硬く、かつ壁面に固着しているので物理的に除去することは容易でない。このスケールは伝熱を妨げるのみならず、量が多くなると掻き取り装置の操作に支障を来す。
従来、このスケールは機械的に除去することが考えられる程度であり、その他の適切な方法は未だ提案されていない。
本発明の目的は気相法炭素繊維の製造法において、反応炉の壁面に固着した炭素質スケールを化学的方法で安全で効率よくかつスケールが製品に混入するのを防止しながら除去することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は反応炉は高温であり、そして炉壁に固着したスケールは主体が炭素質であって、酸素によって容易に燃焼除去できること、また炉内のガス雰囲気を注意すれば安全に燃焼除去できることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造法において、所定時間運転後反応を停止し、反応炉内に不活性ガスを導入し、炉内を同ガスの雰囲気に切換え、次いで酸素含有ガスを導入して反応炉壁に固着した炭素質スケールを燃焼除去することを特徴とする気相法炭素繊維の製造法である。
【0008】
スケール除去工程終了後、炉内ガスの切換え等を行なって所定の炭素繊維製造工程に戻し、以下これらの工程を交互に行なうことにより、反応炉を冷却することなく、効率よく炭素繊維を製造することができる。
本発明の装置は触媒や原料の装入機構及び加熱装置を備えた公知の反応炉に不活性ガス及び酸素含有ガスの導入管を設け、該反応炉の下部に反応炉壁に固着した炭素質スケールの燃焼残渣取出装置を設けて安全にしてかつ炭素繊維製品にスケールが混入しないようにした気相法炭素繊維の製造装置である。
この場合上記取出装置の上部に不活性ガス導入管及び酸素含有ガス導入管を設け、下部にガス遮断弁を設けて反応炉内と製品受け装置や搬送装置等との間を遮断することにより、不活性ガス等の切換えを効率よく行なうことができる。
【0009】
以下本発明を詳しく説明する。
気相法炭素繊維の製造法は従来公知の方法と変りはない。即ち、原料有機化合物はベンゼン、トルエン、天然ガス等であり、触媒としてはフェロセン等の遷移金属を含む有機化合物が好ましい。反応温度は800℃〜1300℃程度である。キャリヤーガスは通常は水素ガスが用いられる。
上記の原料や触媒等を反応炉に連続的に供給すると炭素繊維は炉壁に次々に析出し滞積する。これを間欠的に掻き取りながら、繊維の製造を続行する。そうすると次第に炉壁に金属やその化合物及び炭化物等が混在した硬いスケールが固着する。このスケールの除去は反応炉の大きさ等にもよるがほぼ6〜24時間運転すると除去する必要が生ずる。
【0010】
本発明において反応炉は横型でも可能であるが、炭素繊維及びスケールの燃焼後の残渣を自然落下させることができる点で縦型の方が好ましい。
スケールの燃焼に際しては、運転を停止した反応炉内は水素ガスを多量に含む雰囲気にあるので、先ずこれを窒素、アルゴン等の不活性ガスに切換える。この雰囲気調整を効率よく行なうには、反応炉にできるだけ近い位置に遮断弁を設けるとよい。これによって雰囲気を調整すべき容積が小さくなり、効率よく置換できる。炉内に水素ガスがなくなってから、次に酸素含有ガスを例えば反応炉の下部から炉内に導入する。反応炉は高温になっているので炭素質のスケールは燃焼する。燃焼ガスは例えば炉の上部から排出する。なお、スケールを一層早く燃焼除去させるため、炉内にバーナー等による酸素を含有する燃焼炎の吹きつけを行なうこともできる。
酸素含有ガスとしては空気、酸素富化空気等のほか前記のような酸化性燃焼炎が用いられる。
【0011】
スケールの燃焼が進むと内包されていた金属等の燃焼残渣は炉壁から剥離する。また部分燃焼によって剥離し易くなった燃焼残渣を掻き取り装置等によって除く機械的除去方法を併用することもできる。燃焼残渣は横型炉の場合はかき取り装置により、下流に集めた後吸引装置等により炉内から除去し、縦型炉の場合は落下するので炉の下部から除く。
スケールの除去後は反応炉内を不活性ガスに切換える。そして酸素ガスが存在しなくなってから、再び前と同様運転を再開する。以下これらの操作を交互に繰り返す。
【0012】
次に本発明の装置について説明する。
図1は本発明装置の一実施例を示す断面図、図2は図1の燃焼残渣の受け器の部分を示す断面図である。
図において、1は縦型の反応炉(熱分解炉)であり、その周囲は加熱装置2で囲繞されている。反応炉には上部から水素ガス及びフェロセン等の触媒を溶解したベンゼン等の有機化合物が導入管3、4によりスプレーノズル5により供給される。有機化合物は触媒を溶解したもの以外に反応炉に供給することもできる。また触媒は有機化合物に溶解しないで、気化させる等により供給してもよい。
【0013】
炉壁に生成した炭素繊維は間欠的に先端がリング状になっている掻き落し装置13により落下させ、繊維受け部14から搬送装置(図示せず)によりホッパー等に送る。反応炉からのガスも下部から流出され、繊維と分離して処理排出される。なお、運転中はバルブ12は閉にする。
この運転を持続すると炉壁に前述したスケールが固着し、掻き落し装置が円滑に操作できなくなったとき、運転を停止し、遮断弁(スライド板)10を駆動装置10′により、作動させて炉内を閉塞する。次に窒素導入管8より遮断弁10の上部から窒素ガスを反応炉に導入し、排出管6を開とし、炉内の水素ガスを駆逐し、窒素雰囲気とする。その後窒素ガスの導入を停止し、空気導入管7より空気を炉内に導入し、炉壁上のスケールを燃焼させる。
【0014】
図では空気と窒素はバルブにより切換え、炉への導入口は1つになっているが、これは別々に設けてもよい。なお、空気導入の前に遮断弁の下部にも窒素ガスを供給した方がより安全である。また遮断弁を2段にし、その中間に窒素ガスを導入し、不活性領域とすればさらに安全である。
スケール中の炭素物質は燃焼し、不燃物(燃焼残渣)は落下し、スライド板上に留まる。スケールの部分燃焼によって剥離し易くなったスケールは掻き落し装置で機械的に落すこともできる。スライド板上の燃焼残渣は蓋9を開けて吸引等により取り出す。
【0015】
図2は燃焼残渣の受け器15を遮断弁の上方に設けた場合を示す。受け器15は炉の側面に気密に取付けたケース16内に収納され、駆動装置15′により炉内とケースの間を往復作動するようになっている。炉内で燃焼残渣を受けた後、受け器をケース内に移動させ、蓋17を開けて燃焼残渣を取出す。遮断弁の開閉、窒素ガス、酸素ガスの切換え等は図1の場合と同様である。炭素繊維の製造中は受け器10はケース16内に収納し、蓋17を閉としておく。
【0016】
【実施例】
図1の装置を用いて実施した。反応炉として直径170mm、長さ1500mmの円筒を用いた。反応炉の内壁の温度は約1200℃である。
ベンゼンンにフェロセン3重量%溶解し、液状で100ml/分を、水素ガス100l/分を用いて炉内に噴霧した。炉壁上に生成した炭素繊維を約1分間隔で掻き落し、6時間運転した。このとき反応炉の内壁に多いところでスケールが約5mm厚に付着した。
得られた炭素繊維は約18kgである。ここで炉内温度を維持したまま運転は停止し、図1の遮断弁を閉じ、排出管6を開とし、反応炉内及び反応炉の下部に窒素ガスを導入した。炉内の水素ガス濃度が4%以下となったところで窒素ガスを空気に切換え、炉内に送入して空焼きを4時間行なった。空焼きが進行するにつれて燃焼残渣物が遮断弁(板)上に落下した。残渣物は炭素と鉄化合物を含む灰状物で、その量は321gであった、これを蓋9を開け、吸引装置で回収した。
【0017】
燃焼残渣物を回収した後蓋9を閉じ、空気を窒素ガスに換えて炉内に導入し、炉内の酸素濃度が1%以下になったところで窒素ガスの導入を停止し、遮断弁を開け、排出管6を閉塞した。以下初めの運転に戻った。この運転と空焼きを繰り返すことによって半連続的に炭素繊維を製造することができた。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば反応炉の内壁に固着して機械的に剥離させることが困難なスケールを容易に除去することができる。機械的除去と違って、炉を損傷したりするおそれがなく、また炉内温度を下げずに実施できるので熱経済上も有利である。装置としてはガス遮断弁の設置、雰囲気ガスの切換えにより安全にスケールの除去ができ、また燃焼残渣の回収装置を取付けることにより、製品に燃焼残渣が混入することがないなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の1例を示す断面図である。
【図2】本発明装置の他の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 反応炉
2 加熱装置
3 水素ガス導入管
4 ベンゼン等導入管
5 スプレーノズル
6 排出管
7 空気導入管
8 窒素導入管
10 遮断弁
11 フランジ
13 掻き落し装置
15 スケールの燃焼残渣受け器
16 受け器の収納ケース
Claims (4)
- 原料有機化合物、遷移金属化合物を縦型反応炉に連続的に供給して有機化合物の熱分解による気相法炭素繊維の製造法において、所定時間運転後反応を停止し、炉内温度を維持したまま反応炉内に不活性ガスを導入し、次いで酸素含有ガスを導入して反応炉壁に固着した炭素質スケールを燃焼除去し、金属を含む燃焼残渣を炉壁から自然落下により剥離することを特徴とする気相法炭素繊維の製造法。
- 気相法炭素繊維の製造工程と反応炉壁に固着した炭素質スケールの燃焼除去工程とを交互に行なうことを特徴とする請求項1記載の気相法炭素繊維の製造法。
- 原料有機化合物、遷移金属化合物を反応炉に連続的に供給する気相法炭素繊維の製造装置において、加熱装置2を備えた縦型反応炉1に不活性ガス及び酸素含有ガスの導入管8、7を設け、該反応炉の下部に反応炉壁に固着した炭素質スケールの燃焼残渣受け器15及び該受け器の収納ケース16を設けてなる気相法炭素繊維の製造装置。
- 上記受け器15の上部に不活性ガス及び酸素含有ガス導入管8、7を設け、該受け器の下部に反応炉内のガスを遮弊する遮断弁10を設けてなる請求項3記載の気相法炭素繊維の製造装置。
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