JP2005097014A - カーボンナノチューブの製造装置および製造方法、並びにそれに用いるガス分解器 - Google Patents

カーボンナノチューブの製造装置および製造方法、並びにそれに用いるガス分解器 Download PDF

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Abstract

【課題】 連続運転が可能で量産に適した気相成長法において、金属触媒の使用を必要に応じて選択することができる新たなカーボンナノチューブの製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適したガス分解器を提供すること。
【解決手段】 1)反応管6と、炭素含有原料を含む気流を反応管6内部に供給するガス供給配管4と、反応管6内部を加熱する加熱手段5と、前記気流と接触してこれを分解するガス分解器7と、カーボンナノチューブが合成される合成部8と、を含む製造装置。2)炭素含有原料を含む気流を、加熱状態のガス分解器7に接触させて前記炭素含有原料を分解し、その分解物を連続的に合成部8に供給することで、合成部8上においてカーボンナノチューブを合成させる製造方法。3)炭素含有原料を含む気流中の炭素含有原料を分解させた後に、当該分解物でカーボンナノチューブを合成させる、多孔質材料からなるガス分解器。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブの製造装置および製造方法に関し、さらに詳しくは、製造効率の高い気相成長法を採用しつつ、より効率的にカーボンナノチューブを回収することのできるカーボンナノチューブの製造装置および製造方法に関し、さらにそれに用いるに適した部材(ガス分解器)に関する。
最近、カーボンナノチューブやフラーレンに代表される炭素構造体は、そのサイズや特異な性質のため、様々な分野での応用が期待されている。特に、カーボンナノチューブは電界放出ディスプレイ用エミッタ、電界効果トランジスタ、走査型プローブ顕微鏡の探針、リチウム二次電池の負極やその他各種複合材料など、実用化に向けて、多くの研究がなされている。
一方、上記のような応用展開が図られる中で、カーボンナノチューブそのものの安定的かつ効率的な製造技術は未だ確立されていない。今後、カーボンナノチューブの実用化が進むためには、低コストで大量のカーボンナノチューブを製造する技術の開発が必須であるといえる。
カーボンナノチューブの製造法として代表的な、アーク放電法、レーザー蒸発法および気相成長法について以下に記す。
まずアーク放電法は、2本のグラファイト棒を1〜2mmほど離してアーク放電を起こし、炭素を蒸発させる方法である。この方法は分子構造の欠陥が少ないカーボンナノチューブを製造できるが、連続運転ができないため生産性を高くすることが困難である。
また、レーザー蒸発法は、金属触媒を含むグラファイトを1200℃に加熱した電気炉に入れ、アルゴンガスを流しながらグラファイトにレーザーを当て蒸発させて、炉の内壁にカーボンナノチューブを生成させる方法として知られている。この方法は高純度の単層カーボンナノチューブを製造するのには向いているが、収量が少ないこと、連続運転ができないことなど生産性が低いという面を有する。
一方、気相成長法は連続運転が可能であるため最も量産に適した方法だとされている。具体的には、触媒となる金属の微粒子を600℃〜1000℃の電気炉に炭化水素ガスとともに注入することによりカーボンナノチューブを製造する方法や、金属触媒を固定した基板を電気炉内に置き、その上に炭化水素ガスを流してカーボンナノチューブを基板表面に成長させる方法、さらには、炭化水素ガスと有機金属化合物の混合ガスを加熱炉に注入し、有機金属化合物が分解して生成される金属触媒を利用することでカーボンナノチューブを製造する方法なども知られている。
これらの方法は、連続運転が可能であるため生産性は高いが、いずれも製造されたカーボンナノチューブ中に金属触媒が含まれる。そのため、これらの方法で製造したカーボンナノチューブを利用する場合に、金属触媒の残留が問題にならない、あるいは、金属触媒を積極的に必要とする場合においては特に問題は生じないが、金属触媒が不純物とされる場合においては、金属触媒を除去する工程が必要となる。通常カーボンナノチューブに含まれる金属触媒は、アモルファスカーボンに覆われていたり、カーボンナノチューブ内部に取り込まれていたりするため、これらの除去のためには、遠心分離、ソックスレー抽出、アニーリングや酸処理などを施さねばならず、多大な労力を要する。さらには、これらの処理はカーボンナノチューブそのものに大きなダメージをあたえるため、完全に金属触媒を除去したカーボンナノチューブを得ようとすると、最終的には収率が数%まで落ちてしまう場合があるなどの問題があった。
さらに、上記の気相成長法では、製造されるカーボンナノチューブが電気炉内の反応室内壁面に堆積するため、回収が困難であるという問題も抱えていた。
Shigeo Maruyama, et al. Low−temperature synthesis of high−purity single−walled carbon nanotubes from alcohol, Chemical Physics Letters 360, 10 July 2002, p.229〜234
したがって、本発明は、原理的に連続運転が可能なためにカーボンナノチューブの製造方法の中でも最も量産に適している気相成長法において、金属触媒の使用を必要に応じて選択することができる新たなカーボンナノチューブの製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適した部材(ガス分解器)を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明のカーボンナノチューブの製造装置は、内部でカーボンナノチューブを気相成長させる反応管と、炭素含有原料を含む気流を前記反応管内部に供給するガス供給配管と、前記反応管内部を加熱する加熱手段と、前記反応管内部に配され、前記気流と接触して前記炭素原料を分解するガス分解器と、前記反応管内部に配され、前記気流により前記ガス分解器外に搬送された前記炭素原料の分解物が連続的に供給されてカーボンナノチューブが合成される合成部と、を含むことを特徴とする。
通常の気相成長法においては、気相反応する場とカーボンナノチューブの成長開始点とを担う金属触媒からカーボンナノチューブが成長して行くが、本発明のカーボンナノチューブの製造装置においては、ガス分解器に炭素含有原料の分解の機能を担わせ、カーボンナノチューブの成長は、気流によりガス分解器外に搬送された炭素原料の分解物が連続的に供給される合成部で行わせており、分解と成長とが別の場で行われるように機能分離されている。そのため、金属触媒を用いる、用いない、にかかわらず、カーボンナノチューブを合成するための炭素含有原料の分解物を、カーボンナノチューブの合成が行われる合成部に連続的に供給することができ、カーボンナノチューブを連続的に製造することができる。即ち、金属触媒を用いない場合においても、連続運転が可能でありながら、生産後のカーボンナノチューブから金属触媒を除去する必要がなく、極めて生産性が高い。
また、触媒となる金属を、例えば合成部としての基板上に配置するなどしてガス分解に併用した場合には、ガス分解器における炭素含有原料の分解に加え、金属触媒が有するメリット(カーボンナノチューブの成長点の特定作用や、金属触媒のガス分解によるカーボンナノチューブの合成作用、等)を同時に活用できるため、より生産性が向上する。
なお、ここで炭素含有原料の分解物とは、カーボンナノチューブを合成する際にその構成物となる炭素構造物であり、炭素原子単体や複数の炭素原子からなるクラスター状のものであると考えられているが、カーボンナノチューブの成長メカニズムは気相成長法に限らず、まだ解明されていないため、その構成を厳密に特定することは難しい。したがって、原料ガスを含む気流をガス分解器に接触させ、その気流を連続的に供給することでカーボンナノチューブを生じさせる、炭素含有原料の変化物をその分解物と呼ぶ。
前記ガス分解器としては、炭素含有原料を含む気流と接触した後の気流を連続的に供給したときに、カーボンナノチューブを合成可能な状態に炭素含有原料を分解する作用を有するものであれば、特に制限は無いが、炭素含有原料の分解作用を有する材料の中でも多孔質材料であることが好ましく、特に金属酸化物材料および炭素材料からなる多孔質材料であることが好ましい。
前記合成部としては、基板であることが好ましく、その場合、1枚でも2枚以上でも構わない。前記合成部が2枚以上の基板であるとき、それらを略平行に配すると、分解物の利用効率が上がり生産効率が向上するため好ましい。
本発明のカーボンナノチューブの製造装置のより具体的な構成としては、例えば、以下の(1)〜(3)に示す態様が挙げられる。
(1) 前記ガス分解器が、前記合成部としての基板表面に配置されてなる構成。
(2) 前記ガス供給配管が前記反応管内部に延伸して、前記気流の放出口が前記反応管内に位置しており、かつ、そのガス供給管内に、供給される前記気流と接触可能に前記ガス分解器が配されてなる構成。
この場合、前記ガス供給配管内の前記ガス分解器の近傍に、該ガス分解器を加熱するための補助加熱手段が配されてなることが好ましい。また、前記ガス分解器としては、粒状の多孔質材料の集合体が挙げられ、金属酸化物材料および炭素材料からなる粒状の多孔質材料の集合体であることが好ましい。
さらに、この場合の具体的構成としては、前記ガス供給配管の前記気流の放出口に近接して、前記合成部が配されてなる構成が挙げられ、前記合成部が、1枚または2枚以上の基板であることが好ましい。そのとき、前記合成部としての基板の少なくとも1枚が、前記ガス供給配管の前記放出口から放出される気流の方向に対して、垂直にまたは角度をもって配置されてなることがより好ましい。
(3) 前記ガス分解器が、前記反応管の内壁面の全面または一部の面に配され、該ガス分解器の表面に前記合成部が配されてなる構成。
この構成においては、大きく2つの形態を取ることができる。
一つ目は、カーボンナノチューブの合成後、合成部を反応管内部から取り出して、カーボンナノチューブを採取する場合で、ガス分解器の内側の表面(即ち反応管と対向する面とは反対側の面)に合成部を配置するものである。つまり、外側から内側に向けて、「反応管」>「ガス分解器」>「合成部」の順で構成される形態である。
二つ目は、反応管の内壁を合成部として併用し、合成後カーボンナノチューブを反応管内壁から採取する場合で、ガス分解器の外側の表面(即ち反応管に対向する側の面)に合成部となる反応管の内壁を配置する。つまり、外側から内側に向けて、「反応管(内面が「合成部」)」>「ガス分解器」の順で構成される形態である。
前者の構成では、反応管内に導入される気流が、まずガス分解器に向かうように設計することが望ましい。後者の場合には、ガス供給管の気流の放出口と合成部との間にガス分解器が介在するように、ガス分解器と接する反応管の内壁面の一部に最終的に前記気流を反応管外部に排気する排気口を配置することが、前記気流を効率的にガス分解器に供給することができるため好ましい。なお、後者の場合、(1)上記のような排気口を複数設けることで、より広範囲のガス分解器に対して気流を集中して供給しカーボンナノチューブの生産効率を高めたり、(2)前記放出口や排気口の径を適宜調整して、気流の速度を調整したり、(3)放出口や排気口の形状を変化させたり、(4)放出口や排気口を分岐させる等、適宜、気流の方向を制御する各種の方法を適宜選択することもでき、それによってさらに効率的にカーボンナノチューブを合成することもできる。これらの変形は、当然ガス供給管の放出口の形状や構造に対しても適宜取り入れることが可能である。
なお、反応管やガス供給管は必ずしも円筒管状である必要はなく、本発明の方式によるカーボンナノチューブの気相成長が実施できる程度に、適宜変更することは当然可能である。特に反応管については、気流の導入と排気が行える構造であれば特に制限されない。
本発明のカーボンナノチューブの製造装置としては、前記合成部に、金属触媒が配置される構成とすることも可能である。金属触媒を配置することにより、金属触媒を用いる際のメリットを、本発明の方式においても奏させることができる。即ち、例えば、その金属触媒が前記合成部においてカーボンナノチューブの成長点を特定させることができるというメリットや、その金属触媒が、使用する炭素原料の分解作用を有する場合には、ガス分解器から供給された分解物によるカーボンナノチューブの成長とともに、従来の金属触媒による成長が同時に発生することとなり生産効率が向上するというメリットがある。また、合成部自体を、金属触媒を含む材料からなる基板とすることでも、金属触媒利用時の効果を得ることができる。
本発明のカーボンナノチューブの製造装置の前記加熱手段としては、加熱炉とすることができ、その場合当該加熱炉の内部に前記反応管が配置されてなるものとすることができる。
一方、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、炭素含有原料を含む気流を、加熱状態のガス分解器に接触させて前記炭素含有原料を分解し、前記気流により前記ガス分解器外に搬送された前記炭素含有原料の分解物を連続的に前記合成部に供給することで、当該合成部上においてカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法においては、既述の通り、ガス分解器に炭素含有原料を分解させる機能を担わせ、カーボンナノチューブの合成は、別途合成部に担わせている。すなわち、ガス分解器によって分解された炭素含有原料の分解物は、気流により前記ガス分解器外に搬送され、連続的に合成部に供給されることで、当該合成部上においてカーボンナノチューブを合成させている。つまり、分解と合成とが別の場で行われるようにしている。
そのため、生産性の高い気相成長過程を用いながらも、金属触媒の使用は任意に選択できる新たな製造方法を提供することができる。したがって、金属触媒が不純物とされる用途においては、金属触媒を含まないカーボンナノチューブを製造し、製造されたカーボンナノチューブを前記合成部で容易に回収することができる。そのため、連続的な作業が可能でありながら、生産後のカーボンナノチューブから金属触媒を除去する必要がなく、極めて生産性が高い。また、金属触媒のメリットを享受したい場合には、金属触媒を合成部に用いることで、そのメリットを活用することができる。
前記ガス分解器や前記合成部としては、本発明のカーボンナノチューブの製造装置の項で述べた通りである。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法のより具体的な手法としては、例えば、以下の<1>〜<3>に示す態様が挙げられる。なお、これら各手法は、本発明のカーボンナノチューブの製造装置のより具体的な構成で挙げられた、(1)〜(3)の態様にそれぞれ対応し、かかる装置により実現することができる。
<1> 前記ガス分解器を、前記合成部としての基板表面に配置して、該ガス分解器に前記気流を接触させる手法。
<2> 管内に前記ガス分解器が配置されたガス供給配管の導入口から、前記気流を導入し、前記ガス分解器を通過後の前記気流の流路に配した前記合成部によりカーボンナノチューブを回収する手法。
この場合、前記ガス分解器としては、粒状の多孔質材料の集合体が挙げられ、金属酸化物材料および炭素材料からなる粒状の多孔質材料の集合体を用いることが好ましい。
また、この場合の具体的構成としては、前記ガス供給配管の前記気流の放出口に近接して、前記合成部を配する手法が挙げられ、前記合成部が、1枚または2枚以上の基板であることが好ましい。そのとき、前記合成部としての基板の少なくとも1枚を、前記ガス供給配管の前記放出口から放出される気流の方向に対して、垂直にまたは角度をもって配置することが好ましい。
<3> 前記ガス分解器を、前記気体の流動方向と略平行に、かつ流動する気体の全周またはその一部を取り囲むように配し、その表面に前記合成部を配する手法。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法としては、前記気流の加熱を加熱炉により行い、かつ、前記炭素含有原料の分解、並びにカーボンナノチューブの合成を、前記加熱炉の内部に配された反応管内部にて行うことができる。
最後に、本発明のガス分解器は、炭素含有原料を含む気流中の炭素含有原料を分解させた後に、当該分解物でカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造に用いるガス分解器であって、多孔質材料からなることを特徴とする。かかるガス分解器は、金属酸化物材料および炭素材料からなる多孔質材料であることが好ましい。本発明のガス分解器は、炭素含有原料の分解物の使用を前提とする各種気相反応法によるカーボンナノチューブの製造にも適用可能であるが、上記本発明のカーボンナノチューブの製造方法に用いることが特に好ましい。
本発明によれば、カーボンナノチューブの連続生産に適している気相成長過程を採用しつつ、従来必須であった金属触媒の利用を必要に応じて選択することができる新たなカーボンナノチューブの製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適したガス分解器を提供することができる。
また、本発明によれば、特に金属触媒を含まないカーボンナノチューブを製造し、製造されたカーボンナノチューブは金属触媒の除去工程を不要にできることから、極めて製造効率の高いカーボンナノチューブの製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適したガス分解器を提供することができる。
また、金属触媒を活用することで、カーボンナノチューブの成長位置を特定させることができ、また、金属触媒が、使用する炭素原料の分解作用を有する場合には、ガス分解器により供給される分解物と、金属触媒の作用による分解物とによりカーボンナノチューブが成長するため、より生産効率を向上させることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明のカーボンナノチューブの製造装置(以下、単に「製造装置」という場合がある。)の一例である第1の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。本実施形態の製造装置は、既述の(1)の構成を具備する製造装置であり、既述の<1>の手法を具備するカーボンナノチューブの製造方法(以下、単に「製造方法」という場合がある。)に供されるものである。
図1に示される製造装置は、原料タンク1、キャリアーガス流量調節機2、原料ガス流量調節機3、ガス供給配管4、加熱炉(加熱手段)5、反応管6、ガス分解器7、基板(固定部)8および排気トラップ9を備えてなる。
原料タンク1には、カーボンナノチューブを形成するための炭素源が収容されており、当該炭素源とキャリアーとが混合されて、原料を含む供給ガスとされる。この両者の混合において、キャリアーガスはキャリアーガス流量調節機2により、原料としての炭素源は原料ガス流量調節機3により、それぞれを独立に流量が調整された後に、ガス供給配管4によって反応管6内に注入される。なお、本発明においては、キャリアーガス自体が炭素源となる種類のガスを選択し、特に他のガスと混合させることなくそのまま(あるいは適宜混合させて)供給ガスとして、ガス供給配管4によって反応管6内に供給することとしても構わない。この場合、反応管6の下流に真空装置を設けて原料ガスを反応管6内に引き込む方法を採ることが好ましい。
本発明において、炭素源としての前記原料は、カーボンナノチューブを製造する反応管6内で分解して炭素源となり得る有機化合物である限り特に制限はなく、好適な有機化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、スチレンなどの芳香族炭化水素化合物;およびベンゾチオフェン、チオフェンなどの含硫黄複素環式化合物;などを挙げることができる。特に好適な有機化合物はアルコール系である。本実施形態では、エタノールを用いている。
本発明において、前記キャリアーガスとしては、カーボンナノチューブを製造する反応管6内で不活性な気体である限り、特に制限はない。具体的にはアルゴン、ネオン、水素、窒素、ヘリウムなどを挙げることができる。特に窒素ガス(N2)がキャリアーガスとして好適であり、本実施形態においても窒素ガスを用いている。
本実施形態において、ガス供給配管4は、前記原料ガスを加熱炉5内の反応管6内に供給するように構成されている。具体的な材質としては、本実施形態では、6mmφのステンレス製パイプを用いているが、耐熱性や耐圧性等の要求性能を満たすものであれば、特に制限されるものではない。また、本実施形態において、ガス供給配管4は、反応管6の端部にある開口部(不図示)に装着してガスを導入する機構のものであるが、反応管6内部まで差し込まれて延伸し、反応管6の例えば中央付近に導入するものでもよい(第2の実施形態参照)。
本実施形態においては、加熱炉5として横型のものを採用しているが、本発明において、加熱炉は反応管内を所定の温度に加熱する装置があればその構造、大きさ、材質、形につき特に制限はなく、横型でも縦型でも構わない。縦型にした場合は、原料のフロー方向を上から下へ流すものとしてもよいし、また下から上へ流すものとしてもよい。
本発明において、前記反応管としては、前記加熱炉からの熱エネルギーを受けて反応管内が所定の温度に維持され、ガス分解器や、基板等の合成部を内蔵することができる限り、その構造、大きさ、材質、形に特に制限はない。本実施形態においては、具体的な材質として石英ガラス管を用い、横型で内径30mmφ、長さ50cmの円筒形状のものである。
その他、例えばガス分解器、基板をそれぞれ独立に温度制御できる手段、たとえばヒーターなどを内蔵してもよい。
本発明において、ガス分解器とは、耐熱性が十分に高く、原料を含む気流と接触してこれを分解させて反応させる機能を有するものであれば、特に制限は無いが、多孔質性材料であることが好ましく、細孔径が0.3nm〜100nm程度の細孔構造をもつ多孔質性材料であることがより好ましい。
本発明におけるガス分解器に適した耐熱性の高い(具体的には、600℃において安定であること。)材料としては、セラミックス材料や炭素材料が挙げられる。セラミックス材料としては、例えば金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物が挙げられ、金属酸化物の中でもAl酸化物とSi酸化物を主成分としたアルミノケイ酸塩が好適である。
本発明におけるガス分解器に適した多孔質材料の細孔径としては、既述の通り0.3nm〜100nmの範囲であるが、より好ましくは0.3nm〜10nmの範囲、さらに好ましくは0.3nm〜2nmの範囲である。
上記の材質と細孔構造とを満たす材料としては、例えばゼオライト系材料が最も好適であり、具体的にはモレキュラーシーブが好ましい。また、他に好適な材質として多孔質性の炭素材料、具体的には活性炭(細孔径:2nm〜80nm)、備長炭(細孔径:2nm〜100μm)などを挙げることができる。
モレキュラーシーブをガス分解器として、本発明によるカーボンナノチューブの製造に使用した場合、一度カーボンナノチューブの製造に使用したモレキュラーシーブを再び使用した際、製造されるカーボンナノチューブの収率が落ちることがある。このときモレキュラーシーブは体積収縮している。これは高温で使用することにより、ゼオライトの結晶構造が変化して、細孔が潰れていると考えられる。よって、ある程度の頻度で、使用するモレキュラーシーブを交換することが好ましく、製造操作のたびに新しいモレキュラーシーブを使用することがより好ましい。
モレキュラーシーブに限らず、ガス分解器は高温に晒されること、原料ガスが接触すること、および、製造されたカーボンナノチューブのほとんどは後述する合成部により回収されるが、その一部がわずかながらガス分解器に残る可能性もあること、等の理由から、使用により劣化する場合がある。したがって、本発明では、いずれの材料をガス分解器に用いた場合においても、ある程度の頻度でガス分解器を交換することが好ましく、製造操作のたびに新しいガスを使用することがより好ましい。そのガス分解器の交換を容易に為し得るように、ガス交換器をカートリッジ状に構成することも好ましい態様である。
本発明において、前記ガス分解器の形態は、前記原料を含む供給ガスが接触しながら通過できるものであれば特に限定されず、例えば、ガス分解器の材料を粒状(粉末状)にして用いたり、これを塗布して用いても構わない。また、フィルター状やペレット状に加工成型し、原料ガスとの接触面積を増大させるように凹凸などを形成して用いてもよい。
前記ガス分解器の設置場所は、前記供給ガス中の原料が分解される温度に維持された反応管内であり、かつ原料が接触する位置であれば特に制限はない。反応管内に直接置いた構造、反応管内壁面に塗布した構造、あるいは、反応管内のガスの流路全体をガスの通り道を確保した上で塞ぐように配置した構造(例えば、粒状のガス分解器を充填したり、フィルター状のガス分解器を配したり等)が好適である。
本実施形態において、ガス分解器7は、モレキュラーシーブをペレット状に成型したもの(ナカライテクス製モレキュラーシーブ、タイプ3A、1/16)を用い、反応管6内に設置された基板(固定部)8の上に配置した。
本発明における炭素構造体を生成、堆積させる合成部としては、特に制限は無く、各種形状のものを用いることが可能であるが、基板を用いることが望ましい。なお、ここで言う「基板」とは、生成されるカーボンナノチューブを回収するに適した平面部を一面有するものであればよく、完全に平板状であることは要求されない。
合成部としての基板には、セラミックス系材料が最も好適である。具体的にはアルミナ、酸化チタン、炭化タングステン、炭化バリウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。またシリカゲル、石英ガラス、金属なども用いることができる。金属を基板として用いる場合は、FeやNiやYなど従来の気相成長法において金属触媒として用いられているものを含むものが特に好ましい。また、これらの材料を、適当な基板上に、蒸着等により薄膜状に形成しても、同様な効果が得られる。
以上のような材料を基板として用いることで、得られるカーボンナノチューブの内部に金属触媒は含まれない。また基板表面が平滑であれば、堆積したカーボンナノチューブを掻き取ることで容易にカーボンナノチューブを回収することができる。
その他、既述の金属触媒を粉末状、粒状、ペレット状等にして基板やその他の合成部に配置しても構わない。このように金属触媒を基板に配する(当該「配する」の概念には、既述の薄膜形成を含むこととする。)ことで、金属触媒を配置することにより、前記合成部におおいてカーボンナノチューブの成長点を特定させることができ、回収効率が上がるというメリットがある。ただし、粉末状、粒状、ペレット状等にして基板やその他の合成部に単に配置した場合には、得られるカーボンナノチューブの内部に金属触媒が含まれるため、得られるカーボンナノチューブの用途によっては、別途分離操作が必要となる場合がある。
本実施形態においては、合成部として、2cm×2cmで平板状のアルミナの基板を用い、金属触媒は用いなかった。
本実施形態において、基板8は、反応管6の内周面に、供給されるガスの流れと略平行になるように配している(そしてその上にガス分解器7を配している)。本発明において基板等合成部の設置場所は、前記ガス分解器に供給されるガスが接触する位置近傍または下流であれば特に制限はなく、ガス分解器によって分解された原料と直接接触する位置が好ましい。例えば本実施形態のように、ガス分解器7を直接基板8の上に載せた構成や、後述する第2の実施形態の如き構成などを、好ましいものとして例示することができる。
本実施形態において、排気トラップ9は、反応管6を通り抜けたガスが気泡となって、適当な液体中を通過する構成である。ガスを通過させる液体には、原料ガスやその分解物を溶かし込むことができるものが採用される。例えば、原料ガスとしてエタノールなどのアルコール類を用いた場合には、前記液体として水を用いればよい。本実施形態では、前記液体として水を採用している。排気トラップ9を設置することにより、カーボンナノチューブ製造現場の大気汚染を防ぐことができる。
加熱炉5を運転することにより反応管6内部を設定温度800℃に加熱する。なお、本発明において、反応管内部の反応温度としては、通常400℃〜1300℃の範囲内に設定され、好ましくは600℃〜1000℃の範囲内、より好ましくは750℃〜900℃の範囲内である。
キャリアーガス流量調節機2によって流量が50ml/minに調整された窒素ガスが、原料タンク1を介することによって原料であるエタノールと混合され、原料ガス流量調節機3で総流量が50ml/minに調節された後、ガス供給配管4を介して反応管6内の反応領域に供給される。原料は、反応管6内に設置されたガス分解器7に接触することで分解が促進され、その結果、反応管6内のガス分解器7近傍に設置された基板8上でカーボンナノチューブの成長が起こる。加熱炉5の温度および原料ガスフロー条件をこのままに維持して1時間保持した。カーボンナノチューブ製造後の排気ガスは、排気トラップ9で原料分や原料分解物分等が捕捉された後、窒素分が排気される。
1時間の製造操作の後、原料の供給を止め、ガス供給配管4から供給するフローガスを窒素ガスのみとし、室温まで冷却した。以上のようにして、気相成長法により生成されたカーボンナノチューブは、アルミナ製の基板8上に煤状に堆積した状態で得られ、基板8表面を掻き取ることによって、容易にその堆積物を回収することができた。この煤状の堆積物をSEM観察およびTEM観察した結果、金属触媒を含まない直径50nm〜200nm、長さ10μm〜200μmの繊維状物質であり、カーボンナノチューブであることが確認された。図2にSEM観察写真(倍率1万倍)を示す。なお、写真の倍率は、写真の引き伸ばしの程度により、多少の誤差が生じている(以下、各種SEM観察写真において同様)。このSEM観察写真から、アモルファスカーボンなどのカーボンの塊は全く形成されず、純度の高いカーボンナノチューブが生成されていることがわかる。本実施形態において得られたカーボンナノチューブの質量を20mm四方の基板質量の変化、すなわち、ナノチューブ堆積前と堆積後の基板の質量差から求めた。その結果、約8mgのカーボンナノチューブが合成されたことがわかった。
比較のため、本実施形態の製造装置と同様の構成で、ガス分解器7を反応管6内に設置せず、アルミナ製の基板8のみを反応管6内中央に配置して、同様の生成条件で1時間保持した。その結果、基板8全体が薄い灰色になったが、煤状物質は堆積しなかった。基板8表面の薄い灰色の物質は、SEM観察による分析の結果、アモルファスカーボンが基板表面に薄膜状に堆積したものであることが確認された。図3に、SEM観察写真(倍率5万倍)を示す。
以上の結果から、本実施形態におけるガス分解器は、効率的にカーボンナノチューブを製造する効果を有することが明らかとなった。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の製造装置の一例である第2の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。本実施形態の製造装置は、既述の(2)の構成を具備する製造装置であり、既述の<2>の手法を具備する製造方法に供されるものである。
本実施形態の製造装置は、第1の実施形態の製造装置におけるガス供給配管4とは構造の異なるガス供給配管14,14’を用いていること、および反応管6内部に配される物の詳細が異なることを除いては、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図4において図1と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の製造装置は、図4に示されるようにガス供給配管14が、それよりもやや内径の大きなガス供給配管14’(15mmφ)に連通し、そのガス供給配管14’が反応管6内部まで延伸している。そして、ガス供給配管14’の反応管6内部の開口部に、ガス分解器17が配置されている。ガス分解器17には、ペレット状のモレキュラーシーブ(ナカライテクス製モレキュラーシーブ、タイプ3A、1/16、約7g)を長さ5cmの領域にわたって詰めた。
ガス供給配管14’には、ガス分解器17を加熱するためのヒーター10を内蔵した。このようにガス供給配管14’の開口部にガス分解器17を詰め込んだ場合等、加熱炉5の熱が届きにくい場合には、別途前記ガス分解器を加熱するための補助的な加熱手段を設けることが好ましい。本実施形態のように補助的な加熱手段(ヒーター10)を内蔵した場合には、ガス分解器17の設置位置の温度としては、通常500℃〜1300℃の範囲内に設定され、好ましくは600℃〜900℃の範囲内である。本実施形態においては、850℃に設定した。
合成部としての基板18は、第1の実施形態と同様、アルミナ製の基板を用いた。基板18は、反応管6内のガス供給配管14’の開口部(放出口)に対向する位置(距離2mm)に、ある程度の角度(垂直に対して20゜寝かせた状態)をもって配した。
ヒーター10によってガス分解器17を850℃に加熱しながら、加熱炉5の加熱条件(反応管6の設定温度)およびガスフロー条件を第1の実施形態と同様にしてカーボンナノチューブの製造操作を行い、これを1時間保持した。その結果、アルミナ製の基板18表面にカーボンナノチューブの煤状の堆積物が得られた。基板18表面を掻き取ることによって、容易にその堆積物を回収することができた。この煤状の堆積物をSEM観察およびTEM観察した結果、金属触媒を含まない直径20nm〜50nm、長さ1μm〜20μmの繊維状物質であり、カーボンナノチューブであることが確認された。図5にSEM観察写真(倍率1万倍)を示す。このSEM観察写真から、第1の実施形態によって得られたカーボンナノチューブと同様、アモルファスカーボンを含まない純度の高いカーボンナノチューブが生成されていることがわかる。
<第3の実施形態>
図6は、本発明の製造装置の一例である第3の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。本実施形態の製造装置は、既述の(3)の構成を具備する製造装置であり、既述の<3>の手法を具備する製造方法に供されるものである。
本実施形態の製造装置は、反応管6内部に配される物の詳細が異なることを除いては、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図6において図1と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の製造装置は、図6に示されるように、ガス分解器の材料を反応管6の内壁に塗布して形成されたガス分解器27を採用し、そのさらに内側に第1の実施形態と同様のアルミナ製の基板28を配置して構成されたものである。用いたガス分解器の材料は、第1の実施形態と同様ナカライテクス製モレキュラーシーブ、タイプ3A、1/16であり、これを乳鉢により粉砕し、水に分散させて塗布液(混合割合(質量比)、ガス分解器材料:水=2:1)を調製し、該塗布液を反応管6の内壁に塗布して厚さ1mmのガス分解器27を形成した。その他、同様の構成のガス分解器27を形成する方法として、ガス分解器の材料を用いて、反応管6内に隙間無く嵌挿可能なパイプ状に成型し、得られた成型体を反応管6内に嵌挿することも可能である。本実施形態の方式によれば、ガス分解器の交換が、削り落とすことによる除去と塗布液調製並びに塗布を要するのに対し、後者の例の場合、パイプ状のガス分解器をカートリッジと見立てて、これを取り替えるのみで済むため、交換作業が簡易であると言うメリットがある。
加熱炉5の加熱条件(反応管6の設定温度)およびガスフロー条件を第1の実施形態と同様にしてカーボンナノチューブの製造操作を行い、これを1時間保持した。その結果、アルミナ製の基板28表面にカーボンナノチューブの煤状の堆積物が得られた。基板28表面を掻き取ることによって、容易にその堆積物を回収することができた。この煤状の堆積物をSEM観察およびTEM観察した結果、金属触媒を含まない直径40nm〜80nm、長さ1μm〜20μmの繊維状物質であり、カーボンナノチューブであることが確認された。図7にSEM観察写真(倍率1万倍)を示す。このSEM観察写真から、第1の実施形態によって得られたカーボンナノチューブと同様、アモルファスカーボンを含まない純度の高いカーボンナノチューブが生成されていることがわかる。
<第4の実施形態>
図8は、本発明の製造装置の一例である第4の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。本実施形態の製造装置は、縦型の加熱炉および反応管を用い、それに合わせて反応管内および配管系の取り回しを構成したものである。
本実施形態の製造装置は、加熱炉(加熱手段)45および反応管46が縦型であり、それに応じて反応管46内部に配される物の詳細が異なることを除いては、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図8において図1と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
供給ガスのガスフローは、反応管46の内部を上から下へ流す構成とした。内径30mmφの反応管46の上部に、供給ガスの流動方向に1cmの長さでモレキュラーシーブ(ナカライテクス製、モレキュラーシーブタイプ3A、1/16、約6g)を詰めて、ガス分解器47とした。また合成部としての基板は、第1の実施形態と同様、アルミナ製の基板を用いているが、本実施形態では、図4に示されるようにこれを基板48a,48b,48cの3枚を、1cm間隔で平行に、かつ、供給ガスの流動方向に略垂直でガス分解器47の下流に(対向させて)設置した。このように複数枚の基板を略平行に配することで、1枚目の基板で捕捉し切れなかった生成物(カーボンナノチューブ)を2枚目以降の基板で捕捉することができ、カーボンナノチューブの製造効率が向上する。
加熱炉45の加熱条件(反応管46の設定温度)およびガスフロー条件を第1の実施形態と同様にしてカーボンナノチューブの製造操作を行い、これを1時間保持した。その結果、アルミナ製の基板48a,48b,48c表面にカーボンナノチューブの煤状の堆積物が得られた。本実施形態においては、基板を3枚並置しているが、最も上部に配した基板に最も多くの堆積物が堆積し、下方に行くに従ってその量は激減したが、最も下方の基板にも堆積物自体は確認された。基板48a,48b,48c表面を掻き取ることによって、容易にその堆積物を回収することができた。この煤状の堆積物をSEM観察およびTEM観察した結果、金属触媒を含まない直径40nm〜80nm、長さ2μm〜20μmの繊維状物質であり、カーボンナノチューブであることが確認された。図9にSEM観察写真(倍率1万倍)を示す。このSEM観察写真から、第1の実施形態によって得られたカーボンナノチューブと同様、アモルファスカーボンを含まない純度の高いカーボンナノチューブが生成されていることがわかる。
<第5の実施形態>
図10は、本発明の製造装置の一例である第5の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。本実施形態の製造装置は、金属触媒を用いた構成である。本実施形態の製造装置は、反応管6内部に配される物の詳細が異なることを除いては、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図10において図1と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の製造装置は、図10に示されるように、ガス分解器57と合成部としての基板58とを、供給ガスの流動方向に並置して構成される。
用いたガス分解器57は第1の実施形態と同様のものであり、第1の実施形態のガス分解器7では、2つのペレットを配置しているが、本実施形態では1つのみである点が異なっている。
また、基板58は、第1の実施形態と同様のアルミナ製のものを用いているが、ガス分解器57と近接したり、対向したりするのではなく、供給ガスの流動方向に並置された状態で配置される。ただし、その表面には、金属触媒としてのNiが径10〜100nmの微粒子状態で、1μm×1μmあたり約100個の分布で載置されている。
加熱炉5の加熱条件(反応管6の設定温度)およびガスフロー条件を第1の実施形態と同様にしてカーボンナノチューブの製造操作を行い、これを1時間保持した。その結果、アルミナ製の基板28表面にカーボンナノチューブの煤状の堆積物が得られた。基板28表面を掻き取ることによって、容易にその堆積物を回収することができた。この煤状の堆積物をSEM観察およびTEM観察した結果、直径10nm〜60nm、長さ0.5μm〜5μmの繊維状物質であり、カーボンナノチューブであることが確認された。ただし、得られたカーボンナノチューブの先端には金属触媒が含まれていたため、純粋なカーボンナノチューブとして利用する場合には、この触媒を分離する必要があるものであった。図11にSEM観察写真(倍率1万倍)を示す。
本発明の製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適したガス分解器は、極めて製造効率が高いので、カーボンナノチューブの大量生産に好適に利用することができる。また、本発明によれば、大量生産でありながら、不純物の混在が少なく、得られるカーボンナノチューブの純度が高いというメリットもある。
さらに、本発明の製造装置および製造方法、さらにそれに用いるに適したガス分解器は、従来の金属触媒を使用する気相成長法にも適用できる。すなわち、本発明のガス分解器を気相成長の反応管内に設置することにより、原料の分解をより促進することが期待される。これにより、金属触媒を使用する場合でも、カーボンナノチューブの生成がより効率的になることが容易に推測される。
本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一例である第1の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。 第1の実施形態によって得られたカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率1万倍)である。 第1の実施形態中の比較試験によって得られた灰色物質のカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率5万倍)である。 本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一例である第2の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。 第2の実施形態によって得られたカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率1万倍)である。 本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一例である第3の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。 第3の実施形態によって得られたカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率1万倍)である。 本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一例である第4の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。 第4の実施形態によって得られたカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率1万倍)である。 本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一例である第5の実施形態の製造装置を表す模式断面図である。 第5の実施形態によって得られたカーボンナノチューブのSEM観察写真(倍率1万倍)である。
符号の説明
1 原料タンク、 2 キャリアーガス流量調節機、 3 原料ガス流量調節機、 4,14,14’ ガス供給配管、 5,45 加熱炉(加熱手段)、 6,46 反応管、 7,17,47,57 ガス分解器、 8,18,28,48a,48b,48c,58 基板(合成部)、 9 排気トラップ、 10 ヒーター

Claims (36)

  1. 内部でカーボンナノチューブを気相成長させる反応管と、炭素含有原料を含む気流を前記反応管内部に供給するガス供給配管と、前記反応管内部を加熱する加熱手段と、前記反応管内部に配され、前記気流と接触して前記炭素原料を分解するガス分解器と、前記反応管内部に配され、前記気流により前記ガス分解器外に搬送された前記炭素原料の分解物が連続的に供給されてカーボンナノチューブが合成される合成部と、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。
  2. 前記ガス分解器が、多孔質材料であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  3. 前記ガス分解器が、金属酸化物材料および炭素材料からなる多孔質材料であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  4. 前記合成部が、1枚または2枚以上の基板であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  5. 前記合成部が、2枚以上の基板が略平行に配されてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  6. 前記ガス分解器が、前記合成部としての基板表面に配置されてなることを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  7. 前記ガス供給配管が前記反応管内部に延伸して、前記気流の放出口が前記反応管内に位置しており、かつ、そのガス供給管内に、供給される前記気流と接触可能に前記ガス分解器が配されてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  8. 前記ガス供給配管内の前記ガス分解器の近傍に、該ガス分解器を加熱するための補助加熱手段が配されてなることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  9. 前記ガス分解器が、粒状の多孔質材料の集合体であることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  10. 前記ガス分解器が、金属酸化物材料および炭素材料からなる粒状の多孔質材料の集合体であることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  11. 前記ガス供給配管の前記気流の放出口に近接して、前記合成部が配されてなることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  12. 前記合成部が、1枚または2枚以上の基板であることを特徴とする請求項11に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  13. 前記合成部としての基板の少なくとも1枚が、前記ガス供給配管の前記放出口から放出される気流の方向に対して、垂直にまたは角度をもって配置されてなることを特徴とする請求項11に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  14. 前記ガス分解器が、前記反応管の内壁面の全面または一部の面に配され、該ガス分解器の表面に前記合成部が配されてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  15. 前記合成部に、金属触媒が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  16. 前記合成部に、薄膜状の金属触媒が形成されて配置されることを特徴とする請求項15に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  17. 前記合成部が、金属触媒を含む材料からなる基板であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  18. 前記加熱手段が加熱炉であり、該加熱炉の内部に前記反応管が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  19. 炭素含有原料を含む気流を、加熱状態のガス分解器に接触させて前記炭素含有原料を分解し、前記気流により前記ガス分解器外に搬送された前記炭素含有原料の分解物を連続的に前記合成部に供給することで、当該合成部上においてカーボンナノチューブを合成させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
  20. 前記ガス分解器として、多孔質材料を用いることを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  21. 前記ガス分解器として、金属酸化物材料および炭素材料からなる多孔質材料を用いることを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  22. 前記合成部として、1枚または2枚以上の基板を用いることを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  23. 前記合成部として、略平行に配された2枚以上の基板を用いることを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  24. 前記ガス分解器を、前記合成部としての基板表面に配置して、該ガス分解器に前記気流を接触させることを特徴とする請求項22に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  25. 管内に前記ガス分解器が配置されたガス供給配管の導入口から、前記気流を導入し、前記ガス分解器を通過後の前記気流の流路に前記合成部を配することを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  26. 前記ガス分解器として、粒状の多孔質材料を用いることを特徴とする請求項25に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  27. 前記ガス分解器として、金属酸化物材料および炭素材料からなる粒状の多孔質材料を用いることを特徴とする請求項25に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  28. 前記ガス供給配管の前記気流の放出口に近接して、前記合成部を配することを特徴とする請求項25に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  29. 前記合成部が、1枚または2枚以上の基板であることを特徴とする請求項28に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  30. 前記合成部としての基板の少なくとも1枚を、前記ガス供給配管の前記放出口から放出される気流の方向に対して、垂直にまたは角度をもって配置することを特徴とする請求項28に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  31. 前記ガス分解器を、前記気体の流動方向と略平行に、かつ流動する気体の全周またはその一部を取り囲むように配し、その表面に前記合成部を配してなることを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  32. 前記気流の加熱を加熱炉により行い、かつ、前記炭素含有原料の分解、並びにカーボンナノチューブの合成を、前記加熱炉の内部に配された反応管内部にて行うことを特徴とする請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  33. 請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法であって、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造装置を用いて行うことを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
  34. 炭素含有原料を含む気流中の炭素含有原料を分解させた後に、当該分解物でカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造に用いるガス分解器であって、多孔質材料からなることを特徴とするガス分解器。
  35. 金属酸化物材料および炭素材料からなることを特徴とする請求項35に記載のガス分解器。
  36. 請求項19に記載のカーボンナノチューブの製造方法に用いることを特徴とするガス分解器。
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