JP3570095B2 - 球状炭素類の製造方法及びその装置 - Google Patents

球状炭素類の製造方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、球状炭素類(例えば、フラーレンC60)の製造方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド、グラファイトに次ぐ第3の結晶炭素として、球状炭素化合物であるフラーレンの存在が明らかにされ、マクロ量の合成法が確立されたのは1990年になってからである。
【0003】
フラーレンは、炭素のみからなる一連の球状炭素化合物であり、炭素60個からなるC60及びそれ以上の偶数個の炭素からなるいわゆるHigher Fullerenes の総称であり、12個の5員環と20個又はそれ以上の6員環を含んでいる。即ち、60個、70個、74個、76個、78個、80個、82個又は84個等(炭素原子数は幾何学的に球状構造を形成し得る数から選択される。)の炭素原子が球状に結合してクラスター(分子集合体)を構成してなる球状炭素Cであって、それぞれ、C60、C70、C74、C76、C78、C80、C82、C84等のように表される。
【0004】
例えばC60は、図5に概略図示するように、正二十面体の頂点をすべて切り落として正五角形を出した“切頭二十面体”と呼ばれる多面体構造を有し、更に図6に明示するように、この多面体の60個の頂点をすべて炭素原子Cで置換したクラスターであり、公式サッカーボール型の分子構造を有する。同様に、C70、C76、C84等も、いわばラグビーボール型の分子構造を有する。
【0005】
こうしたフラーレンは、その用途等について種々研究が進められており、例えばC60フラーレンにアルカリ金属をドープした物質が超電導性を示すことが確認されたことから、有機磁性体、電池用電極材料等としての可能性を秘めた新素材として注目され、電子材料としての応用が盛んに研究されている。
【0006】
そして、その製造方法としては KrotoとSmalley が初めてC60を確認した際に用いた、グラファイトへのレーザー照射が挙げられる(H. W. Kroto, et al., Nature 318, 162(1985))。その他、太陽光によりフラックスを気化させる等の作製法が見い出されているが、Kratschmerらが直流アーク放電での作製法(W. Kratschmer et al., Chem. Phys. Lett. 170, 167(1990), W. Kratschmer et al., Nature 347, 354(1990))を見い出して以来、広く直流アーク放電法が用いられている。
【0007】
例えば、図7は、概略的に例示した真空装置20内において、アーク放電によってフラーレンを製造する方法を示すものである。即ち、水冷された真空チャンバー21内に一対の高純度グラファイト(又は炭素)製の対向電極22、23を0.2〜1.5cmの間隔を置いて配置し、不活性ガスの存在下で両電極間に直流(又は交流)電圧24を印加することによって、対向電極22−23間にアーク放電を生じさせる。
【0008】
使用可能な不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、キセノン等が挙げられ、アーク放電に際する不活性ガスの圧力は10〜500Torrであってよく、50〜200Torrが望ましい。また、電極22、23の一方22は負極に、他方23は正極に接続してアーク放電を行うが、電源24は直流であっても交流であってもよい。
【0009】
このような条件下で放電を行うと、電極、特に正極23の構成材料である炭素が蒸発してプラズマ化され、真空チャンバー21の内壁面上にスス状に付着する。この付着物25は、上記したフラーレンを10%程度含有する生成物であって、このフラーレンは例えばC60を約85%含有している。
【0010】
そして、このフラーレンの生成と同時に、負極22上には特定の炭素付加体26が、負極22の先端から2〜3cmの長さに亘って負極22の約20%の体積で析出(付着)する。この付着物26は、電極22、23の極性を逆にして飛散せしめ、フラーレン25として真空チャンバーの内壁面上に付着させるようにしている。
【0011】
しかしながら、上記した各製造方法は全て、工業的に大量のフラーレンを生産する方法としては不十分であり、生成量が少量であるのみならず、製造に要するエネルギー及び電気量が大きく、そのままでは産業への応用は困難である。
【0012】
また、上記の如く、直流アーク放電法は、黒鉛及び炭素電極を用い、プラズマ中でフラーレンを製造する方法であるが、減圧不活性体中で放電させねばならない等の制約があった。しかも、上記の付着物25は、例えば1時間かけてアーク放電下で得られるが、これに加えて、回収後に溶媒で溶解後、活性アルミニウムチューブに通して不純物を除去する如き精製工程が不可避であり、全体として24時間も要し、しかも回収率は数%と低く、量産性に乏しいものであった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、大量の電力消費やエネルギーの消費を要することなく、比較的簡単な設備により工業的に大量生産が可能である球状炭素類の製造方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、球状炭素類の製造に対する既成観念を脱却し、画期的で効率的な球状炭素類の製造方法及びその装置を見い出し、本発明に到達したものである。
【0015】
即ち、本発明は、液体の有機化合物(特にトルエン:以下、同様)を不活性キャリアガスでバブリングし、このバブリングによって前記キャリアガスに前記液体の有機化合物を飽和させた有機化合物混合ガスを得、この有機化合物混合ガスに不活性な別のキャリアガスを混合し、この混合による圧力で前記有機化合物混合ガスを熱分解部に供給して前記有機化合物混合ガス中の有機化合物を熱分解させ、これによって、n(但し、nは60、70、76、84等の如く幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される球状炭素類を生成させ、この球状炭素類を前記熱分解部の少なくとも出口に設けられたガス透過性の回収手段に付着させる、球状炭素類の製造方法に係るものである。
本発明はまた、液体の有機化合物を収容する容器と、この容器内に不活性キャリアガスを導入してバブリングを行う手段と、このバブリングによって前記液体の有機化合物を飽和させた有機化合物混合ガスに熱分解部の前位にて不活性な別のキャリアガスを混合する手段と、この混合による有機化合物混合ガスを前記熱分解部に導く手段と、前記有機化合物混合ガス中の有機化合物を熱分解してCn(但し、nは60、70、76、84等の如く幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される球状炭素類を生成させる前記熱分解部と、前記球状炭素類を付着して回収するために前記熱分解部の少なくとも出口に設けられたガス透過性の回収手段と、前記熱分解部を加熱する手段とを有する、球状炭素類の製造装置も提供するものである。
【0016】
本発明の製造方法及びその装置によれば、通常、工業的に広く行われている熱分解プロセスを用いることにより、従来法に比べてより簡便かつ工業的にフラーレンの如き球状炭素類を製造することができ、大量生産方式としても期待される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明においては、前記有機化合物又はトルエンを含む前記混合ガス前記熱分解部に供給し、この熱分解部又はその近傍の配管系に付着した球状炭素類を回収することが望ましい。
【0018】
この場合、混合ガスを熱分解部に供給して前記有機化合物又はトルエンの熱分解温度に保持し、熱分解後に冷却して回収することが望ましい。
【0019】
そして、前記有機化合物又はトルエンを連続供給して熱分解してもよく、又は、前記有機化合物又はトルエンを断続的に供給して熱分解してもよい。
【0020】
前者の場合、前記熱分解部の少なくとも出口にガス透過性の前記回収手段を設け、前記熱分解部へ前記有機化合物又はトルエンの蒸気を不活性キャリアガスで連行させて導入し、前記熱分解部で前記有機化合物又はトルエンの蒸気を熱分解して前記球状炭素類を生成させ、この球状炭素類を少なくとも前記回収手段に付着させることが望ましい。
【0021】
この場合、熱分解部の内壁に付着した球状炭素類も回収することが望ましい。
【0022】
更に、回収した球状炭素類は、具体的には、溶媒で溶解し、この溶液から分離する。
【0023】
また、上記の有機化合物として芳香族炭化水素、例えばトルエンを用いることができる。
【0025】
また、上記の回収手段として石英ウールを用いてよい。
【0026】
また、上記の有機化合物又はトルエンの熱分解温度を400〜2000℃とすることが望ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【0028】
図1は、本実施例の製造方法に使用可能な連続式フラーレン製造装置(以下、単に「装置」と称する。)を示す概略断面図である。
【0029】
本実施例の装置1は、熱分解炉(以下、単に「炉」と称する。)2を上下に貫通する石英からなる炉芯管(例えば、30mmφ)3が設けられ、この炉芯管3の下部はキャリアガスGの導入管11b及び後述するトルエン混合ガス13Aの導入管12に連結されて連通している。
【0030】
炉2は、例えば円筒状を呈し、その内部には炉芯管3を囲むように例えば幅W:500mmの抵抗加熱方式のヒーター5が設けられ、炉2の内部に設けた温度制御器6と配線7によって接続されている。そして、炉2の出入口位置の炉芯管3内には石英ウール4a、4bが設けられ、ガス通過性を有しつつ、トルエン混合ガス13Aから生成されるフラーレン含有物15を付着(濾過)するようになっている。
【0031】
炉芯管3の下部に連結されているトルエン混合ガス導入管12には、その途中にバルブ10aが設けられ、更にその先端は装置1の下部に配設した容器8内の上部中空空間に嵌入している。また、この容器8には、キャリアガスGの導入管11aの先端が、トルエン13を収容した容器8の底部近傍まで嵌入し、液体トルエン13中に浸漬されている。
【0032】
そして、このキャリアガスGの導入管11aの他端側には、その途中にフローメーター9aが設けられ、キャリアガスGの収容器(図示せず)から供給されるキャリアガスGが流量調節されて容器8内へ送られるようになっている。一方、炉芯管3の下部に連結されている他方のキャリアガス導入管11bも同様に、フローメーター9b及びバルブ10bを途中に配し、その先端はキャリアガスGの収容器(図示せず)に連結されている。
【0033】
容器8内は密閉されており、この中へ球状炭素類の原料となる液体トルエン13が注入されている。そして、図示の如く、導入管11aの先端から液体トルエン13の中へキャリアガスGを放出させ、図示のようにバブリングすることによりキャリアガスに液体トルエン13を飽和させ、導入管12を介して飽和したトルエン混合ガス13Aを炉芯管3内へ供給する。
【0034】
この容器8へ導入管11aを介して送り込まれるキャリアガスGは、容器8内で液体トルエン13を飽和させるために必要な圧力にフローメーター9aによって調節されたものであり、更に、容器8内における圧力損失も受け、最初に比べてその圧力は低下する。
【0035】
従って、気化したトルエン混合ガス13Aを容器8外へ導入管12を介して排出する圧力は保持してはいるものの、これを炉2内へ十分に送り込むために、もう一方の導入管11bから送り込まれるキャリアガスGの圧力によって炉芯管3内へトルエン混合ガス13Aを導入し、例えば1.5 l/minで流入させる。炉芯管3内でのトルエン混合ガスの滞留時間は1分程度であってよい。
【0036】
導入管11bへ送り込まれるキャリアガスGはフローメーター9bによって圧力が調節されるが、導入管11bに設けたバルブ10b及び導入管12に設けたバルブ10aは共に逆止弁であるため、トルエン混合ガス13Aは確実に炉2へ導入される。
【0037】
そして、本実施例の装置1は、図示省略した供給機構により、消費した液体トルエン13が容器8内に連続して補充される連続方式として稼働するものであり、容器8内には常に所定量の液体トルエン13が確保されている。
【0038】
炉2内は、抵抗加熱方式のヒーター5により例えば800℃(到達温度)に加熱されており、上記の如く、キャリアガスGにより炉芯管3へ導入されたトルエン混合ガス13Aは、加熱された炉芯管3内を通過する間に熱分解され、これによって煤(スス)15が生成される。この煤15は、石英ウール4aに付着するが入口側の石英ウール4b上にも付着し、炉芯管3の内壁面にも付着する。
【0039】
上記のように、トルエン混合ガス13Aを熱分解させる温度は、通常、生成した煤15が黒鉛化する温度よりは低い400℃〜2000℃の範囲内にあるが、原料として使用する材料に応じて、好ましくは例えば500℃〜1500℃であり、更に好ましくは例えば700℃〜1200℃に設定する方がよい。また、炉芯管3内の気圧は1気圧以下に減圧してもよい。
【0040】
上記のようにして、熱分解されたトルエン混合ガス13Aは煤15を生成しながら炉芯管3から排出される。そして、煤15は、図1に示すように、炉芯管3の内壁及び炉2の出口側に設けた石英ウール4aに付着し、これらから剥離して落下した煤15が炉入口側に設けた石英ウール4b上にも堆積する。これらの石英ウールは、耐熱性、耐有機溶剤性があって好適な材質であるが、こうした物性を充たせば、他の材質の回収手段を用いることができる。
【0041】
本実施例に使用可能なフラーレン原料としては、上記したトルエン以外にも、C〜C20のメタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素、トルエン、キシレン、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、石油等の天然有機物、酸素、窒素等のヘテロ原子を含むそれらの化合物が挙げられる。また、上記に例示した原料の混合物も使用可能である。
【0042】
また、キャリアガスとしては、窒素、アルゴン等の不活性ガスが好適である。
【0043】
上記の如く、トルエン混合ガス13Aを熱分解させ、煤15が付着した炉芯管3は加熱温度(例えば800℃)のまま例えば3時間保持した後、室温まで徐冷し、石英ウール4a、更には炉芯管3及び石英ウール4bに付着した煤15を回収する。
【0044】
そして、回収した煤15をメチルナフタレンに浸漬させ、フラーレンを溶解させる。更に、この溶解液を活性炭とシリカゲルとの複合体を充填したカラムに通してフラーレンを選択的に抽出し、メチルナフタレンを蒸発させれば、目的とする球状炭素類、例えばC60フラーレンが得られる。
【0045】
図2は、上記のようにして得られた球状炭素類を、TOF−Mass(Time−of−flight mass spectroscopy)と称されるレーザデソープションイオン化によるTime−of−Flight法で測定したC60の質量分布を示す。
【0046】
図2においては、m/z(mは質量、zは電荷)値を広範囲のシーケンスにおいて示したものであり、本実施例による800℃での熱分解により、m/z=720付近においてC60のフラーレンのスペクトルが得られたことが確認される。
【0047】
本実施例においては、上記した800℃の熱分解以外に、上記と同様の方法により、加熱温度のみを例えば850℃に設定してフラーレンを生成させた。
【0048】
図3は、850℃で得られた球状炭素類を上記と同様の条件で測定したものである。これによれば、上記したC60以外に、m/z=840付近においてC70のフラーレンのスペクトルが得られたこと(即ち、C60と共にC70も生成されたこと)が確認される。
【0049】
図4は、トルエンの供給方法を変えた本発明の参考例を示すものである。この例による製造装置1Aでは、上記の液体トルエン13の容器8の代わりに、気体トルエン13Bを入れた高圧ボンベ16が配され、またキャリアガスボンベ17が共に、それぞれの開閉弁16a、17aを介して導入管12で連結されるようになっている。
【0050】
従って、キャリアガスボンベ17のキャリアガスGは、気体トルエン13Bを炉2内へ連行しつつ他方の導入管11bからのキャリアガスGによって炉内に導入するが、これ以外は上記した液体トルエンを原料とする場合と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0051】
なお、上記した本実施例によるフラーレン製造装置1は、原料のトルエンを連続して供給させる連続供給方式としたが、これに代えて、原料としてトルエンを断続的に供給するバッチ方式にすることもできる。バッチ式の場合、炉内雰囲気の少なくとも一部を原料ガスで充たした後に炉を密封し、到達温度に加熱すればよい。
【0052】
以上の図1〜図に示した実施例によれば、上記した如く、通常、工業的に利用されている熱分解プロセスを用いてフラーレンを生成させるものであるから、比較的簡単な製造装置により、容易にフラーレンを製造することができ、大量生産の可能性を十分に有している。しかも、従来のアーク放電方式に比べて消費電力を低減でき、例えば1ケタ程度も電力量が減少する。
【0053】
また、本実施例によれば、原料の種類に応じた適当な熱分解温度領域を任意に設定することができるため、加熱温度を調節することによりC60のみでなく、更に多くの炭素原子数を有するフラーレンも製造することができ、原料も安く、安価な製品を供給することができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述した実施例は本発明の技術的思想に基づいて種々な変形が可能である。
【0055】
例えば、加熱方法も上述した実施例の抵抗加熱方式以外の誘導加熱方式、電子ビーム加熱方式、高周波加熱方式等も使用することができ、また、熱分解方法も600℃程度の低温でも行える減圧熱分解方式でも可能である。炉内への原料ガスの供給は、昇温前、昇温中、到達温度保存中のいずれに行ってもよい。
【0056】
また、生成物の回収方法も上述した実施例のような方法以外で回収することができる。例えば、上述した実施例ではトルエン混合ガス13Aの炉芯管3への流れが、炉芯管3の下から上へ流れるようになっているが、これを逆にして上から下へ、又は炉2を傾斜させて斜め下向きにトルエン混合ガス13Aが流れるようにし、配管の端末に石英ウールを配設すれば、生成物を自然に落下させて一ケ所に溜め、効率的に回収することも可能である。
【0057】
また、実施例では炉2の形状を円形の筒型としたが、三角形や四角形又はこれ以上の多角形等、上述した実施例以外の形状及び大きさにすることもできる。そして、キャリアガスの配管系も上述した実施例の11a、11bの如き対向する位置からではなく、同一方向からの配管とすることもできる。その他、各部の配置、構成及び形状も任意に行うことができる。
【0058】
【発明の作用効果】
本発明は上述した如く、液体の有機化合物を不活性キャリアガスでバブリングし、このバブリングによって前記キャリアガスに前記液体の有機化合物を飽和させた有機化合物混合ガスを得、この有機化合物混合ガスに不活性な別のキャリアガスを混合し、この混合による圧力で前記有機化合物混合ガスを熱分解部に供給して前記有機化合物混合ガス中の有機化合物を熱分解させ、これによって、n(但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される球状炭素類を生成させ、この球状炭素類を前記熱分解部の少なくとも出口に設けられたガス透過性の回収手段に付着させるので、上記の球状炭素類を容易かつ工業的に得ることができる。
【0059】
従って、上記の球状炭素類を生成させるために、従来にない特殊な設備のための大がかりの設備投資も要せず、在来の設備を利用して実施することが可能であり、大量生産方式として期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による方法を実施するための装置を示す概略断面図である。
【図2】同実施例により生成したフラーレンのTOF−Mass スペクトル図である。
【図3】同実施例により生成した他のフラーレンのTOF−Mass スペクトル図である。
【図4】本発明の参考例による方法を実施するための装置を示す概略断面図である。
【図5】従来例によるフラーレンにおける切頭二十面体構造を示す概略図である。
【図6】同、60フラーレンにおける炭素間の結合状態を示す概略図である。
【図7】同、60フラーレンの製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1…製造装置、2…熱分解炉、3炉芯管、4a、4b…石英ウール、
5…ヒーター、6…温度調節器、7…配線、8…容器、
9a、9b…フローメーター、10a、10b…調節バルブ、
11a、11b、12…配管、13…液体トルエン、
13A…トルエン混合ガス、15…煤(フラーレン含有)、G…キャリアガス

Claims (21)

  1. 液体の有機化合物を不活性キャリアガスでバブリングし、このバブリングによって前記キャリアガスに前記液体の有機化合物を飽和させた有機化合物混合ガスを得、この有機化合物混合ガスに不活性な別のキャリアガスを混合し、この混合による圧力で前記有機化合物混合ガスを熱分解部に供給して前記有機化合物混合ガス中の有機化合物を熱分解させ、これによって、n(但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される球状炭素類を生成させ、この球状炭素類を前記熱分解部の少なくとも出口に設けられたガス透過性の回収手段に付着させる、球状炭素類の製造方法。
  2. 前記有機化合物混合ガスを前記熱分解部に供給し、この熱分解部又はその近傍の配管系に付着した球状炭素類を回収する、請求項1に記載した製造方法。
  3. 前記有機化合物混合ガスを熱分解部に供給して前記有機化合物の熱分解温度に保持し、熱分解後に冷却する、請求項1に記載した製造方法。
  4. 前記有機化合物を連続供給して熱分解する、請求項1に記載した製造方法。
  5. 前記有機化合物を断続的に供給して熱分解する、請求項1に記載した製造方法。
  6. 回収した前記球状炭素類を溶媒で溶解し、この溶液から分離する、請求項に記載した製造方法。
  7. 前記熱分解部の少なくとも出口にガス透過性の前記回収手段を設け、前記熱分解部で前記有機化合物を熱分解させて前記球状炭素類を生成させ、この球状炭素類を少なくとも前記回収手段に付着させる、請求項に記載した製造方法。
  8. 前記熱分解部の内壁に付着した球状炭素類も回収する、請求項に記載した製造方法。
  9. 前記回収手段として石英ウールを用いる、請求項に記載した製造方法。
  10. 前記有機化合物の熱分解温度を400〜2000℃とする、請求項1に記載した製造方法。
  11. 前記有機化合物としてトルエンを用いる、請求項1〜10のいずれか1項に記載した製造方法。
  12. 液体の有機化合物を収容する容器と、この容器内に不活性キャリアガスを導入してバブリングを行う手段と、このバブリングによって前記液体の有機化合物を飽和させた有機化合物混合ガスに熱分解部の前位にて不活性な別のキャリアガスを混合する手段と、この混合による有機化合物混合ガスを前記熱分解部に導びく手段と、前記有機化合物混合ガス中の有機化合物を熱分解してCn(但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表される球状炭素類を生成させる前記熱分解部と、前記球状炭素類を付着して回収するために前記熱分解部の少なくとも出口に設けられたガス透過性の回収手段と、前記熱分解部を加熱する手段とを有する、球状炭素類の製造装置。
  13. 前記熱分解部又はその近傍の配管系に付着した球状炭素類が回収される、請求項12に記載した製造装置。
  14. 前記熱分解部が前記有機化合物の熱分解温度に保持され、熱分解後に冷却される、請求項12に記載した製造装置。
  15. 前記有機化合物が連続供給されて熱分解される、請求項12に記載した製造装置。
  16. 前記有機化合物が断続的に供給されて熱分解される、請求項12に記載した製造装置。
  17. 前記熱分解部の少なくとも出口にガス透過性の前記回収手段が設けられ、前記熱分解部で前記有機化合物を熱分解して生成した球状炭素類が少なくとも前記回収手段に付着する、請求項12に記載した製造装置。
  18. 前記熱分解部の内壁に付着した球状炭素類も回収される、請求項17に記載した製造装置。
  19. 前記回収手段として石英ウールが用いられる、請求項12に記載した製造装置。
  20. 前記有機化合物の熱分解温度が400〜2000℃とされる、請求項12に記載した製造装置。
  21. 前記有機化合物としてトルエンが用いられる、請求項12〜20のいずれか1項に記載した製造装置。
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JPH11223815A (ja) * 1998-02-06 1999-08-17 Sony Corp 液晶素子及びその製造方法、並びに配向膜又はその組成物

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