JP3673232B2 - 光情報記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定波長のレーザ光を用いて記録及び再生を行うことができる追記型光情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザ光により1回限りの情報の記録が可能な追記型光情報記録媒体は、CD−Rと称され、広く知られている。市販のCDプレーヤを用いて再生できる利点を有しており、また最近では、パーソナルコンピュータの普及に伴ってその需要も増大している。また、CD−Rより大容量の記録が可能な媒体として、デジタル・ハイビジョンの録画などに対応するための追記型デジタル・ヴァーサタイル・ディスク(DVD−R)も実用化されている。
【0003】
これら追記型光情報記録媒体の構造の1つとしては、円盤状基板上に、Auなどからなる光反射層と、有機化合物からなる記録層と、更に、該記録層に接着させるための接着層を含むカバー層と、が順次積層されたものが知られている。レーザ光が前記樹脂層側から照射されることで、記録及び再生を行うことができる。追記型光情報記録媒体への情報の記録は、記録層のレーザ光照射部分がその光を吸収して局所的に発熱変形(例えば、ピットなどの生成)することにより行われる。一方、情報の再生は、通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を追記型光情報記録媒体に照射して、記録層が発熱変形した部位(記録部分)と変形していない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。
【0004】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も開始された。このような状況の下で、画像情報を安価簡便に記録することができる大容量の光情報記録媒体が必要とされている。上記のDVD−Rは現状では大容量の記録媒体としての役割を十分に果たしているが、大容量化、高密度化の要求は高まる一方であり、これらの要求に対応できる記録媒体の開発も必要である。このため、光情報記録媒体は、更に、短波長の光で高密度の記録を行なうことができる、より大容量の記録媒体の開発が進められている。特に、1回限りの情報の記録が可能な追記型光情報記録媒体は、大容量の情報の長期保存又はバックアップ用としての使用頻度が高まりつつあるため、その開発に対する要求は強い。
【0005】
通常、光情報記録媒体の高密度化は、記録及び再生用レーザの短波長化、対物レンズの高NA化によりビームスポットを小さくすることで達成することができる。最近では、波長680nm、650nm及び635nmの赤色半導体レーザから、更に超高密度の記録が可能となる波長400nm〜500nmの青紫色半導体レーザ(以下、青紫色レーザと称する。)まで開発が急速に進んでおり、それに対応した光情報記録媒体の開発も行われている。特に、青紫色レーザの発売以来、該青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムの開発が検討されており、相変化する記録層を有する書換型光情報記録媒体及び光記録システムは、既に、DVRシステム(「ISOM2000」210〜211頁)として発表されている。これにより、書換型光情報記録媒体における高密度化の課題に対しては、一定の成果が得られた。
【0006】
上述のような青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムに用いる光情報記録媒体は、青紫色レーザ光を記録層に照射させる際、高NAの対物レンズの焦点を合わせるために、レーザ光が入射するカバー層を薄化することが好ましい。ここで、カバー層としては、例えば、薄いフィルムが使用され、接着剤又は粘着剤を用いて記録層に接着されている。カバー層の厚さは、通常、接着剤が硬化し形成された接着層を含め約100μmであるが、照射されるレーザの波長やNAにより最適化される。
【0007】
また、特開2000−67468号公報には、透明フィルムと粘着シートの積層体が離形フィルムに両側を挟持された構成のフィルム積層体を連続的に形成し、その後に円盤形状に加工して円盤形状のフィルム積層体とし、さらには粘着シートに接する側の離形フィルムを剥離しながら、記録面が形成された光ディスク基板表面上に、位置合わせを行ないながら貼り合わせる、という方法でカバー層を設ける方法が記載されている。
かかる方法によれば、フィルム積層体を連続的に形成した後、そのフィルム積層体をロール状に巻回させると、円盤形状に加工したフィルム積層体にはカールや巻き癖がつくため、面ブレや厚みムラを有するカバー層が形成されてしまうことになる。結果的に、かかるカバー層を備えた光情報記録媒体は、十分な記録特性や耐久性を得ることができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、ロール状に巻回される工程を有するカバー層の作製方法を用いた光情報記録媒体の製造方法において、優れた記録特性及び耐久性を有する光情報記録媒体の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、優れた生産性を有する光情報記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、粘着層が設けられたカバーフィルムからなるカバー層自身の歪みを低減させ、かつ、粘着層の密着性を高めることで、上記従来技術の問題点を解決することを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の光情報記録媒体の製造方法は、基板上に設けられた記録層側の表面に、粘着層が設けられたカバーフィルムからなるカバー層を、該粘着層が前記表面と当接するように貼り合わせてなる光情報記録媒体の製造方法であって、
前記カバー層が、
ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程と、
前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程と、
前記粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程と、
前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムをディスク状に打ち抜く工程と、
ディスク状の前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程と、
を順次経て作製されることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【0010】
なお、ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程は、
ロール状に巻かれた離型フィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着剤を連続的に塗布し、粘着剤塗布層を形成する工程と、
前記離型フィルムの表面に形成された粘着剤塗布層を乾燥させる工程と、
前記粘着剤塗布層とカバーフィルムの表面とが当接するように貼り合わせる工程と、
によって、行われることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光情報記録媒体の製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明の光情報記録媒体の製造方法において、特徴的な、カバー層の作製方法について説明する。
本発明において、カバー層は、(a)ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程と、(b)粘着層が設けられたカバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程と、(c)粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程と、(d)粘着層が設けられたカバーフィルムをディスク状に打ち抜く工程と、(e)ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程と、を順次経て作製される。
以下、各工程毎に説明する。
【0012】
[(a)ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程]
カバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける方法としては、カバーフィルムの表面に、予め形成された粘着層を貼り付ける方法(以下、適宜、間接法と称する)と、カバーフィルムの表面に、直接、粘着剤を塗布し、乾燥させることで粘着層を形成する方法(以下、適宜、直接法と称する。)と、の2つに大別することができる。
【0013】
間接法の場合、例えば、図1に示すような粘着層設置装置を経て、粘着層を連続的にカバーフィルム表面に貼り付けることができる。ここで、図1は、カバーフィルムの表面に粘着層を連続的に設ける方法の例示的1態様に用いられる粘着層設置装置の概略断面図である。なお、かかる粘着層設置装置は、その装置内で、後述する(b)粘着層が設けられたカバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程をも行うことができる。
図1に示されるように、粘着層設置装置は、離型フィルムf1が巻回されたロール1と、塗布手段2と、乾燥手段3と、カバーフィルムf2が巻回されたロール4と、粘着層が設けられた離型フィルムf1とカバーフィルムf2とを共巻するためのロール5と、を有する。
【0014】
粘着層設置装置の動作としては、まず、離型フィルムf1が巻回されたロール1から、離型フィルムf1を矢印方向に送り出す。図示されない制御部が、送り出された離型フィルムf1の先端が、所定の領域(塗布領域)まで搬送されたのを確認すると、かかる領域に設置された塗布部2を用いて、離型フィルムf1の表面に予め調製された粘着剤塗布液の塗布を開始する(塗布工程)。かかる塗布工程により、粘着剤塗布層が形成された離型フィルムf1が得られる。なお、ロール1に巻回された離型フィルムf1が末端まで送り出されるまで、かかる粘着剤の塗布工程は継続する。
図示されない制御部が、粘着剤塗布層が形成された離型フィルムf1が、乾燥領域まで搬送されたことを確認すると、かかる乾燥領域に設置された乾燥手段3により粘着剤塗布層を乾燥する(乾燥工程)。そして、かかる工程により、粘着剤塗布層の溶媒が揮発し、粘着層を備えた離型フィルムf1が得られる。その後、粘着層を備えた離型フィルムf1を、更に搬送し、ロール4から送り出されたカバーフィルムf2と、貼り合わせ領域aにて、カバーフィルムf2の表面と接着層とが当接するように貼り合わせる(貼り合わせ工程)。そして、ロール5に、粘着層を備える離型フィルムf1とカバーフィルムf2とを共巻する(巻き取り工程)。粘着層設置装置において、これら一連の工程は、1つのロール状の離型フィルムf1がロール1から送り出され、ロール5に巻き取られるまで連続的に行われる。
【0015】
粘着層設置装置において、塗布手段2としては、従来公知の塗布手段を用いることができる。具体的には、スプレー法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などの塗布手段が挙げられる。
また、乾燥手段3としては、加熱乾燥、送風乾燥など、従来公知の塗布手段を用いることができる。
【0016】
直接法の場合、ロール状のカバーフィルムを送り出し、かかるカバーフィルムの先端から末端まで、連続的に粘着剤塗布液を塗布し、粘着剤塗布層を形成した後、順次、粘着剤塗布層を乾燥して、カバーフィルムの片側表面全域に粘着層を形成する。
なお、直接法における塗布及び乾燥の工程においても、上記粘着層設置装置に用いられる塗布手段及び乾燥手段と同様のものを用いることができる。
【0017】
この(a)の工程で用いられる離型フィルムf1としては、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートセルロースフィルムなどを用いることができる。
【0018】
この(a)の工程で用いられるカバーフィルムf2としては、透明な材質のフィルムであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、なかでもポリカーボネートまたは三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、「透明」とは、記録及び再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。
ここで、カバーフィルムf2は、後述する(b)の工程において、再び、ロール状に巻回されることから、巻回をより容易に行うために、カバーフィルムf2の粘着層が設けられない面には、離型処理が施されていることが好ましい。用いられる離型処理としては、カバーフィルムf2自体の表面を粗面化する方法や、離型性を有するフィルムを貼り付ける方法、更には、離型層を塗布法などで形成する方法が挙げられる。これらの離型処理の中でも、離型性を有するフィルムを貼り付ける方法が好ましい。
【0019】
また、カバーフィルムf2は、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤および/または500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
カバーフィルムf2の表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータ及び3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。また、記録及び再生に用いられる光の集光度の観点から、カバーフィルムの複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0020】
また、ロール状のカバーフィルムとしては、例えば、150mmφの軸に、幅150mm、長さ200mのフィルムを巻回したものを用いることができる。
カバーフィルムf2の厚さは、0.03〜0.15mmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.12mmの範囲であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、カバーフィルムを貼り合わせる工程におけるの取り扱いが容易となり、しかも、コマ収差を抑えることができるという利点がある。
【0021】
この(a)の工程で用いられる粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着剤を使用することができるが、透明性、耐久性の観点から、アクリル系の粘着剤が好ましい。かかるアクリル系の粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどを主成分とし、凝集力を向上させるために、短鎖のアルキルアクリレートやメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートと、架橋剤との架橋点となりうるアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどと、を共重合したものを用いることが好ましい。主成分と、短鎖成分と、架橋点を付加するための成分と、の混合比率、種類を、適宜、調節することにより、ガラス転移温度(Tg)や架橋密度を変えることができる。
【0022】
上記粘着剤と併用される架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ樹脂系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、キレート系架橋剤が挙げられるが、この中でも、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。かかるイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート類を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートHTL;武田薬品社製のタケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202;住友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL;等を挙げることができる。
【0023】
[(b)粘着層が設けられたカバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程]この工程を経ることにより、ロール状に巻回された、粘着層が設けられたカバーフィルムは、同じ量の板状積層体などよりも、持ち運びが容易であり、搬送性に優れるという利点を有する。このため、例えば、前記粘着層設置装置により一連の粘着層設置工程が行われ、再び、ロール状に巻き取られた粘着層が設けられたカバーフィルムは、装置から容易に取り外され、後述の(c)の工程へ、容易に移行することができる。
【0024】
[(c)粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程]
この工程は、粘着層の粘着性、及び記録層又は中間層の貼り合わせ面との密着性を優れたものとし、光情報記録媒体としての耐久性を向上させるための工程である。
この工程では、前記(b)の工程によりロール状に巻回された、粘着層が設けられたカバーフィルムを、粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する。ここで、「粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで」とは、「粘着層を赤外分光吸収スペクトルで測定し、使用した架橋剤の架橋に関与する官能基に由来するピークが実質的になくなるまで」を指し、粘着層の厚さ、粘着層を構成する粘着剤、架橋剤の種類や、保持される空間の雰囲気(温度及び湿度)によって、適宜、調節される。
【0025】
例えば、粘着剤としてアクリル系粘着剤と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤と、を用いて構成される粘着層(X)を、温度23℃、湿度50%Rhの雰囲気下において、かかる粘着層の赤外分光吸収スペクトルを経時的に測定し、保持前(塗布直後)にみられるイソシアネートに由来する2275〜2250cm-1付近に出現する吸収ピークが実質的になくなるまでの時間を測定することで、「粘着層(X)の架橋反応が実質的に終了するまで」に対応する時間を求めることができる。
このようにして求められる「粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで」に対応する時間は、具体的には、通常の室温環境(温度21〜30℃、湿度30〜80%Rh)において、72時間である。このため、かかる環境下において、粘着層が設けられたカバーフィルムは、72時間以上保持することを要することになる。
【0026】
[(d)粘着層が設けられたカバーフィルムをディスク状に打ち抜く工程]
この工程では、ロール状の粘着層が設けられたカバーフィルムを、所定の大きさ、つまり、基板と同じ大きさのディスク状に打ち抜くものである。
より詳細には、ロール状の粘着層が設けられたカバーフィルムを送り出し、一時的に、平面状にした状態で、例えば、カットパンチを用いて、基板と同じ大きさに連続的に打ち抜くものである。
その後、打ち抜かれた箇所以外の粘着層が設けられたカバーフィルムは、再び、ロール状に巻き取られることで、打ち抜きによって生成されるゴミは、容易に回収することが可能となる。
【0027】
[(e)ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程]
この工程は、粘着層が設けられたカバーフィルムが有するカール、巻き癖、異方性などの歪みを矯正するために行われる。かかる工程を、図2を参照して、詳細に説明する。ここで、図2は、保持手段にディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層した状態を示す概略図である。
なお、本発明において、「略垂直」とは、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを積層してなる積層体の端面(最端層の表面)が、各々の粘着層が設けられたカバーフィルムの形状に起因して、及び/又は、後述する保持手段に起因して、スペーサを設置する前において、垂直から僅かに傾斜していてもよい状態を含むものである。
【0028】
図2に示すように、保持手段は、台座10と、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3のセンターホールより僅かに小さな外径を有するストックジグ20と、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3の積層体を略垂直に保持するためのスペーサ30と、からなる。
台座10は、図示されない固定部材により、固定面Fに固定される。その台座10に対して、垂直に設けられたストックジグ20に、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3のセンターホールを嵌め込む状態で、所定の枚数、例えば、50枚積層する。スペーサ30は、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3を50枚積層した場合の積層体の厚みを考慮し、台座10からの距離を積層体の厚みと同等若しくは僅かに短くなるように、設置される。これにより、かかる積層体を傾けることなく略垂直に保持することができる。
また、矢印方向から荷重を加える方法によって、台座10からスペーサ30までの距離を、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3の積層体の厚みよりより短くすると、更に短時間で、歪みを矯正することもできる。ここで、好ましい荷重としては、10〜500gの範囲である。
【0029】
この状態で、所定の時間、例えば1時間、保持することにより、ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムf3は、その自重と、加えられる荷重と、により、カール、巻き癖、異方性などの歪みが矯正される。かかる保持時間は、カバーフィルムの厚さ、粘着層の厚さ、粘着層を構成する粘着剤、架橋剤及びその他の添加剤の種類や、保持される空間の雰囲気(温度及び湿度)によって、適宜、調節される。
【0030】
このようにして作製されるカバー層は、粘着層の架橋反応が実質的に終了しており、記録層又は中間層の貼り合わせ面に対して高い密着性を示すとともに、カール、巻き癖、異方性などの歪みが矯正されているため、面ムラや厚みムラが少ないという優れた効果を有する。更に、カバー層の作製工程は、全て、連続的に行われ、かつ、上述の(b)及び(d)の工程を有することで、搬送性に優れ、ゴミの回収が容易であるため、生産性に優れるという効果をも有する。
かかるカバー層を、基板上に設けられた記録層側の表面に、粘着層が前記表面と当接するように貼り合わされることで、光情報記録媒体が製造される。このようにして製造された光情報記録媒体は、優れた記録特性及び耐久性を有することになる。
【0031】
ここで、本発明の光情報記録媒体の製造方法において、前記カバー層の作製工程の他にも、後述する、基板上に前記光反射層を形成するための光反射層形成工程、該光反射層上に前記記録層を形成する記録層形成工程、を始めとした種々の公知の工程を有する。
【0032】
<光反射層形成工程>
光反射層形成工程は、後述する基板のプリグルーブが形成された面に光反射性物質からなる光反射層を形成する工程である。
前記基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。また、基板の厚さは、1.1±0.3mmとすることが好ましい。
【0033】
基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プリグルーブ)が形成されている。より高い記録密度を達成するためにはCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプリグルーブが必要となる。例えば、DVR−blueのような媒体として使用する場合には、プリグルーブのトラックピッチは、200〜400nmの範囲にとすることを必須とし、好ましくは、250〜350nmの範囲となる。また、プリグルーブの深さ(溝深さ)は、20〜150nmの範囲とすることを必須とし、好ましくは、30〜100nmの範囲となる。
【0034】
なお、後述する光反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0035】
光反射層は、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
なお、前記反射率は、70%以上であることが好ましい。
【0036】
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alあるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agあるいはこれらの合金である。
【0037】
<記録層形成工程>
記録層形成工程は、前記光反射層上に記録層を形成する工程である。当該記録層は、波長600nm以下のレーザ光により情報の記録が可能で、記録物質としての色素を含有していることが好ましい。当該記録層に含有される色素としては、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素ベンゾトリアゾール色素、アミノブタジエン色素等が挙げられる。
【0038】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、および同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0039】
記録層は、色素等の記録物質を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に形成された光反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成される。塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0040】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する記録物質の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0041】
結合剤を使用する場合に、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に記録物質に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
【0042】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。記録層は単層でも重層でもよい。また、記録層の層厚は、一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは30〜300nmの範囲にあり、より好ましくは50〜100nmの範囲にある。更に、塗布液温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、23〜50℃の範囲であることが特に好ましい。
【0043】
記録層には、該記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
【0044】
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0045】
<中間層形成工程>
本発明の光情報記録媒体の製造方法において、前記記録層上には、中間層が設けられてもよい。中間層は記録層の保存性を高め、記録層とカバー層との接着性を向上させるために設けられる。中間層に用いられる材料としては、記録及び再生に用いられる光を透過する材料であれば、特に、制限されるものではないが、例えば、一般的には、誘電体であることが好ましい。具体的には、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料が好ましく、ZnS、MoO2、GeO2、TeO、SiO2、TiO2、ZuO、ZnS−SiO2、SnO2が好ましく、ZnS−SiO2、SnO2がより好ましい。また、この中間層は、蒸着、スパッタリング等の真空成膜により形成することができる。
【0046】
以上のように、光反射層形成工程と、記録層形成工程と、必要に応じて中間層形成工程と、を経て形成された積層体と、上述のカバー層の作製工程により作製されたカバー層と、を貼り合わせることにより、光情報記録媒体が得られる。
【0047】
以上、本発明においては、記録物質として色素等の有機化合物を含有する記録層を備えた光情報記録媒体の製造方法の例について説明したが、記録層は、相変化により記録を行う相変化記録層、光磁気により記録を行う光磁気記録層であってもよい。例えば、相変化記録層とする場合には、誘電体層はZnS−SiO2等から構成し、光透過層の代わりに誘電体層を設ける。また、相変化記録層には、記録物質としてSb、Te、Ag、In等のカルコゲナイド等の金属化合物を使用することができる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
<光情報記録媒体の作製>
スパイラル状のグルーブ(深さ100nm、幅120nm、トラックピッチ320nm)を有し、厚さ1.1mm、直径120mmのポリカーボネート樹脂(帝人社製ポリカーボネート、商品名:パンライトAD5503)基板を射出成形した。得られた基板のグルーブを有する面上に、Agをスパッタして100nmの厚さの光反射層を形成した(光反射層形成工程)。
【0050】
その後、オラゾールブルGN(フタロシアニン系色素、cibaスぺシャリティケミカル社製)20gを2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール1リットル中に添加し、2時間超音波処理を行って溶解し、記録層形成用の塗布液を調製した。調製された塗布液を、光反射層上に、回転数を300〜4000rpmまで変化させながら、23℃、50%RHの条件で、スピンコートにより塗布した。その後、23℃、50%RHで1〜4時間保存して形成された記録層の膜厚100nmであった(記録層形成工程)。そして、記録層上に、ZnS−SiO2を厚さ5nmになるようにスパッタし、中間層を形成した。
【0051】
<カバー層の作製>
[粘着剤塗布液の調製]
アクリル系共重合体(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1)と、イソシアネート系架橋剤(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1)と、を100:1(質量比)で混合し、粘着剤塗布液Aを調製した。
【0052】
[(a)ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程、及び、(b)粘着層が設けられたカバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程]
まず、図1に示す粘着層設置装置を用いて、カバーフィルムの表面に粘着層を設けた。ロール1に巻回されたポリエチレン製離型フィルムを矢印方向に送り出し、設置された塗布部2を用いて、離型フィルムの表面に粘着剤塗布液Aを塗布した(塗布工程)。その後、粘着剤塗布層が形成された離型フィルムを、乾燥領域に設置された乾燥手段3により100℃でを乾燥し(乾燥工程)、粘着層を備えた離型フィルムを得た。そして、粘着層を備えた離型フィルムを、更に搬送し、ロール4から送り出されたカバーフィルム(ポリカーボネートフィルム、帝人ピュアエース、厚さ:80μm、片面離型フィルム付き)と、貼り合わせ領域aにて、カバーフィルムののポリカーボネート面と接着層とが当接するように貼り合わせた(貼り合わせ工程)。そして、ロール5に、粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムと共巻した(巻き取り工程)。
【0053】
[(c)粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程]
その後、粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムと共巻した状態のロール5を、23℃、50%Rhの雰囲気で、72時間保持した。この「72時間」とは、前記雰囲気下において、本実施例における粘着層を赤外分光吸収スペクトルで経時的に測定し、イソシアネートに由来する2275〜2250cm-1付近に出現する吸収ピークが実質的になくなるまでの経過時間であり、本実施例における「粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで」に対応する時間である。
なお、本工程において、赤外分光吸収スペクトルは下記条件にてFT−IR1回反射法で測定した。
測定機:サーモ ニコレジャパン製 Nexus670
測定アクセサリ:OMNI−Sampler 1回反射型水平ATR装置
積算回数:4cm-1 32回
検出器:MCT−A(高感度検出器)
【0054】
[(d)粘着層が設けられたカバーフィルムをディスク状に打ち抜く工程、及び(e)ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程]
共巻した状態の粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムとを、ロール5から送り出し、上記基板と同じ形状に打ち抜いた。打ち抜かれた粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムとの積層体は、図2に示すように、固定面Fに固定された台座10に対して、垂直に設けられたストックジグ20に、略垂直に、嵌め込み、50枚積層した。この時、スペーサ30は、台座10からの距離を前記積層体の厚みと同等とした。その状態で、1時間保持した。
【0055】
その後、1枚毎に、取り出し、粘着剤側の離型フィルムを剥がし、上記中間層と、粘着層と、をローラによる押し圧手段によって貼り合わせ、光情報記録媒体を作製した。
【0056】
<評価>
(1)C/N(搬送波対雑音比)
作製された光情報記録媒体を、405nmのレーザ、NA:0.85ピックアップを搭載した記録再生評価機(パルステック社製:DDU1000)を使用し、クロック周波数66MHz/線速5.6m/sの条件で単一周波数の信号(2T=0.13μm)で記録及び再生し、スペクトルアナライザを用いてC/Nを測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(2)カバー層の厚みムラの評価
作製した光情報記録媒体を、キーエンス製レーザ変位計(LT8020)にて、2点間シート距離として測定可能なカバー層の厚みを、光情報記録媒体の円周方向8点(45°間隔)、半径方向8点(5mm間隔)、の計64点で測定し、その(最大値−平均値)の値と、(平均値−最小値)の値と、から厚みムラを求めた。結果を表1に示す。
【0058】
(3)密着力
作製した光情報記録媒体を、80℃、85%Rhの環境に、48時間、放置した。その後の光情報記録媒体のカバー層が手で捲ることで、剥れるかどうかをみた。剥れたものを×、剥れなかったが端部がめくれたものを△、剥れなかったものを○と表示した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
実施例1の(c)粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程において、粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムと共巻した状態のロール5を、23℃、50%Rhの雰囲気で、168時間保持した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光情報記録媒体を作製した。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
実施例1の(e)ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程において、打ち抜かれた粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムとの積層体を略垂直に50枚積層し、その状態で、24時間保持した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光情報記録媒体を作製した。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
実施例1の(c)粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程において、粘着層を備える離型フィルムとカバーフィルムと共巻した状態のロール5を、23℃、50%Rhの雰囲気で、48時間保持した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光情報記録媒体を作製した。なお、48時間の保持時間は、粘着層の架橋反応が実質的に終了する範囲を外れる時間である。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
[比較例2]
実施例1の(e)ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程を除いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光情報記録媒体を作製した。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
実施例1における粘着剤塗布液の調整において、イソシアネート架橋剤を用いない他は、実施例1と同様にして、比較例3の光情報記録媒体を作製した。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
[比較例4]
予め、ディスク状に打ち抜いた離型フィルムの表面にスピンコートを用いて実施例1で用いた粘着剤塗布液Aを塗布した。かかる粘着剤塗布液Aにより形成された粘着層上に、同じくディスク上に打ち抜いたポリカーボネートフィルムを貼り合わせ、72時間保持した。その後、図2に示すように、略垂直に50枚積層してから1時間保持して、カバー層を得た他は、実施例1と同様にして、比較例4の光情報記録媒体を作製した。ここで、用いられた離型フィルム及びポリカーボネートフィルムは、実施例1と同じものである。
作製された光情報記録媒体を、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果から、本発明の製造方法を用いて作製された実施例1〜3の光情報記録媒体は、記録特性のC/N、厚みムラ、更には密着力がいずれも良好であることが判明した。
一方、比較例1〜4の光情報記録媒体は、実施例1〜3と比較して、記録特性のC/Nが低いことが明らかとなった。また、比較例1のように粘着層の架橋反応が実質的に終了していない場合や、比較例3のように粘着層に架橋剤を用いない場合には、厚みムラや密着力が劣ることが判明した。更に、実施例3のように略垂直での保持工程を設けなかった場合には、密着力が大きく低下していることが判明した。実施例4のようにスピンコートに粘着層を形成し、かつ、粘着層の架橋反応が実質的に終了していない場合には、記録特性のC/Nが低く、厚みムラが大きいことが判明した。
【0067】
【発明の効果】
ロール状に巻回される工程を有するカバー層の作製方法を用いた光情報記録媒体の製造方法において、優れた記録特性及び耐久性を有する光情報記録媒体の製造方法を提供することができる。また、本発明の他の目的は、優れた生産性を有する光情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カバーフィルムの表面に粘着層を連続的に設ける方法の例示的1態様に用いられる粘着層設置装置の概略断面図である。
【図2】 保持手段にディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルムを略垂直に積層した状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1、4、5 ロール
2 塗布手段
3 乾燥手段
10 台座
20 ストックジグ
30 スペーサ
f1 離型フィルム
f2 カバーフィルム
f3 ディスク状の粘着層が設けられたカバーフィルム
F 固定面
Claims (4)
- 基板上に設けられた記録層側の表面に、粘着層が設けられたカバーフィルムからなるカバー層を、該粘着層が前記表面と当接するように貼り合わせてなる光情報記録媒体の製造方法であって、
前記カバー層が、
ロール状に巻回されたカバーフィルムの表面に、架橋剤を含有する粘着層を連続的に設ける工程と、
前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムを、再びロール状に巻き取る工程と、
前記粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程と、
前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムをディスク状に打ち抜く工程と、
ディスク状の前記粘着層が設けられた前記カバーフィルムを略垂直に積層して保持する工程と、
を順次経て作製されることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。 - 前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤、エポキシ樹脂系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤又はキレート系架橋剤であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の製造方法。
- 前記粘着層の架橋反応が実質的に終了するまで保持する工程が、所定湿度及び温度雰囲気下で所定時間保持する工程であることを特徴とする請求項3に記載の光情報記録媒体の製造方法。
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