JP3673021B2 - 電子部品実装用無鉛はんだ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリント回路基板に電子部品を実装する場合に使用する無鉛はんだに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路基板への電子部品の実装には、フロ−法またはリフロ−法が使用されている。すなわち、電子部品をプリント回路基板に仮固定し、フラックスを塗布し、次いで、はんだ浴に浸漬させて溶融はんだを付着させ、この付着はんだを冷却・凝固させる方法(フロ−法)、または電子部品をプリント回路基板にクリ−ムはんだで仮固定し、加熱炉に通してクリ−ムはんだを溶融・凝固させる方法(リフロ−法)が使用されている。
従来、上記フロ−法及びリフロ−法でのはんだには、Sn−Pb系のはんだが主に使用されてきたが、Pbは毒性の強い重金属である。
近来、環境問題が地球規模で取り上げられ、鉛についても生態系への悪影響や汚染が問題視されつつあり、はんだの無鉛化が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電子部品の実装に使用する無鉛はんだとして、「Agが2.5〜3.0重量%、Biが1.0〜2.0重量%、Cuが1.0重量%、Sbが1.0〜2.0重量%、残部がSnからなるはんだ合金」が提案されている(特開平7−88680号公報の段落〔0029〕)。
【0004】
周知の通り、2種以上の元素が混じり合って固相を形成する形態は、固溶体と化合物であり、合金の特性は、固溶体の種類及び結晶粒の形と大きさ、金属間化合物の種類、粒子の大きさ、分布状態等のミクロ組織の状態によって異なる。
上記無鉛はんだ合金において、BiやSbはSnとで固溶体を形成し、AgやCuはSnとで金属間化合物を形成し、その固溶体や金属間化合物のミクロ組織の状態によって一定の温度的特性や機械的特性が呈される。
【0005】
上記特開平7−88680号公報には、Ag、Bi、Cu、Sb等の個々の元素の添加理由の開示はない。
一般にはんだ合金において、Biは、はんだ融点の低下に有効であるが、Biを溶質とする固溶体は脆く、機械的強度上、Bi添加量の増大は不利であると認識されている。
しかしながら、本発明者は、上記Sn−Ag−Bi−Cu−Sb系はんだにおいては、Bi添加量を3〜5重量%にすれば、3重量%以下の場合に較べて機械的強度を大幅に増加できることを知った。
【0006】
本発明の目的は、かかる知見に基づきSn−Ag−Bi−Cu−Sb系はんだにおいて、低融点を保持しつつ機械的強度を大幅に増加できる電子部品用の無鉛はんだ合金を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子部品実装用無鉛はんだは、棒状、線状、プリフォ−ム状、やに入りはんだの何れかであり、Agが0.5〜3.5重量%、Biが3.0〜5.0重量%、Cuが0.5〜2.0重量%、Sbが0.5〜2.0重量%、残部がSnからなることを特徴とし、酸化防止を図るためにPまたはGaを0.5重量%以下添加することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る無鉛はんだ合金において、Snを基材とする理由は、毒性が極めて少なく、母材に対する優れた濡れ性を付与でき、産出量も安定であり、安価であることによる。
【0009】
本発明において、Agを添加する理由は、はんだの融点をSnの融点以下とすると共に、生成する金属間化合物であるAg Snを緻密に分散させることによる機械的強度、特に引張り強度の向上を得るためである。その添加量を0.5〜3.5重量%とした理由は、0.5重量%以下では、はんだ融点の低下に殆ど寄与するところが無く、機械的強度の向上も満足に達成し得ず、3.5重量%以上では、液相線温度が高くなり過ぎるばかりかAgSn金属間化合物初晶の晶出量が過剰となり、機械的特性、特に伸び特性が低下し脆くなり、また、表面からAgSnがウイスカとなって突き出すためにショ−トサ−キット発生の畏れがあるからである。
【0010】
本発明において、Cuを添加する理由は、はんだの融点を低下させるばかりでなくAgとの相乗効果により機械的特性を更に向上させるためである。その添加量を0.3〜2.0重量%とした理由は、0.3重量%以下では融点の低下及び機械的強度の向上に殆ど寄与させ得ず、2.0重量%以上では、液相線温度が高くなり過ぎるばかりかSn−Cu金属間化合物が多量に発生しかえって機械的強度が低下するからである。
【0011】
本発明において、Biを添加する理由は、機械的強度の大幅な増加とはんだ融点の低下を達成するためである。その添加量を3.0〜5.0重量%とした理由は、3.0重量%以下では機械的強度の大幅な増加が得られないと共に融点の低下が僅少にとどまり、5.0重量%以上ではSnとの固溶体の多量発生により低温部に共晶点が出現し、使用環境温度がこの共晶点温度に近づいたときに組織の粗大化、伸び特性の劣化が招来され、ひいては、はんだ付け接合部のクラック発生が懸念されるからである。
【0012】
本発明において、Sbを添加する理由は、Sn中に緻密分散の固溶体を形成させ、はんだの機械的強度を向上させると共に接着強度を増強させるためである。その添加量を0.5〜2.0重量%とした理由は、0.5重量%以下では、機械的強度の向上が殆ど得られず、また2.0重量%以上では液相線温度が高くなり過ぎるばかりか、流動性が低下しはんだ付け不良が発生し易くなり、伸び特性も低下してはんだ付け接合部のクラック発生が懸念されるからである。
【0013】
本発明において、PまたはGaを添加する理由は、はんだ溶融時にこれらの元素が優先的に酸化して他の元素の酸化を防止し、溶融はんだ表面に浮いて巻き込まれることがなく、酸化による合金組成の変動を排除するためであり、その添加料を0.5重量%以下とした理由は、これ以上では高価となるばかりか、はんだの脆弱化が招来されるからである。
本発明においては、上記以外の元素を、JIS Z−3282に規定されているA級の範囲内で不純物として含んでいてもよい。(但し、Pbは0.10重量%以下)
【0014】
本発明に係る無鉛はんだ合金は、フロ−法でのはんだ浴として好適に使用される。
【0015】
状、線状、プリフォ−ム状、やに入りはんだの形態で使用することもできる。
【0016】
【実施例】
〔実施例1〜3〕
表1に示す組成の無鉛はんだを調整した。
各実施例品について、固相線温度、液相線温度及びエ−ジング前後の機械的特性(引張り強度、伸び率)を測定したところ、表1の通りであった。
なお、機械的特性は、JIS Z−2201の4号に規定されている試験片を調整し、ロ−ドセル式万能試験機を使用し、引張り速度5mm/min、試験温度25℃にて測定し、エ−ジングは150℃にて100時間とした。。
【0017】
表1
実施例1 実施例2 実施例3
Ag(重量%) 3.4 3.4 3.4
Bi(重量%) 3.0 4.0 4.8
Cu(重量%) 0.6 0.6 0.6
Sb(重量%) 0.6 0.6 0.6
Sn(重量%) 残部 残部 残部
固相線温度(℃) 209 207 206
液相線温度(℃) 225 223 221
初期引張強度
(kgf/mm) 8.8 9.2 9.8
エ−ジング後
引張強度(kgf/mm)7.6 9.8 10.3
初期伸び率(%) 14.4 15.0 15.5
エ−ジング後
伸び率(%) 18.9 17.2 16.5
【0018】
〔比較例1及び2〕
表2に示す組成の無鉛はんだを調整した。実施例と同様、固相線温度、液相線温度及びエ−ジング前後の機械的特性(引張り強度、伸び率)を測定したところ、表2の通りであった。
【0019】
表2
比較例1 比較例2
Ag(重量%) 3.4 3.4
Bi(重量%) 2.0 6.0
Cu(重量%) 0.6 0.6
Sb(重量%) 0.6 0.6
Sn(重量%) 残部 残部
固相線温度(℃) 219 200
液相線温度(℃) 230 212
初期引張強度
(kgf/mm) 7.8 9.2
エ−ジング後
引張強度(kgf/mm) 6.5 9.8
初期伸び率(%) 9.4 8.2
エ−ジング後
伸び率(%) 8.2 3.2
【0020】
〔実施例4〕
表3に示す組成の無鉛はんだを調整した。
各実施例品について、上記と同様に固相線温度、液相線温度及びエ−ジング前後の機械的特性(引張り強度、伸び)を測定したところ、表3の通りであった。
〔比較例3〕
表3に示す組成の無鉛はんだを調整した。固相線温度、液相線温度及びエ−ジング前後の機械的特性(引張り強度、伸び)を測定したところ、表3の通りであった。
【0021】
表3
実施例4 比較例3
Ag(重量%) 3.0 3.0
Bi(重量%) 4.8 2.0
Cu(重量%) 0.6 0.6
Sb(重量%) 0.6 0.6
Sn(重量%) 残部 残部
固相線温度(℃) 199 216
液相線温度(℃) 220 228
初期引張強度
(kgf/mm2) 10.1 7.9
エ−ジング後
引張強度(kgf/mm2)10.2 6.8
初期伸び率(%) 12.0 9.2
エ−ジング後
伸び率(%) 12.0 8.3
【0022】 なお、上記実施例及び比較例の何れにおいても、組成の元素以外の不純物をJIS Z−3282に規定されたA級の範囲内で含んでいる。
また、各実施例のそれぞれに対し、Pを100ppm、またはGaを0.3重量%添加してエ−ジング前後の機械的特性(引張り強度、伸び)を測定したところ同様の結果が得られ、かつ、P、Ga添加による酸化抑制効果を確認できた。
【0023】
実施例においては、上記実施例と比較例との対比から明らかなように、Biが2.0重量%の比較例1、3に較べて著しく優れた引張り強度を呈し、Biが6重量%の比較例2に較べて著しく優れた伸び率を呈し、特にエ−ジングによる伸び率の低下がなく、加熱に対する安定性を保証できる有利性がある。
本発明において、好適な実施形態は3.0重量%<Ag≦3.5重量%、3.0重量%<Bi≦5.0重量%、0.5重量%≦Cu<1重量%、0.5重量%≦Sb<1重量%、残部Snである。
【0024】
【発明の効果】
本発明に係る無鉛はんだ合金は、公知の「Ag2.5〜3.0重量%、Bi1.0〜2.0重量%、Cu1.0重量%、Sb1.0〜2.0重量%、残部Snからなるはんだ合金」に対し、Biを3.0〜5.0重量%と増加すると、意外にも機械的強度が大幅に増加することを知見してBiの添加量を増量しており、液相線温度を更に降下させて機械的強度を有効に増大でき、プリント回路基板への電子部品のフロ−法またはリフロ−法による実装に使用する無鉛はんだとして極めて有用である。

Claims (2)

  1. 棒状、線状、プリフォ−ム状、やに入りはんだの何れかであり、Agが0.5〜3.5重量%、Biが3.0〜5.0重量%、Cuが0.5〜2.0重量%、Sbが0.5〜2.0重量%、残部がSnからなることを特徴とする電子部品実装用無鉛はんだ
  2. 請求項1記載のはんだの組成にPまたはGaが0.5重量%以下添加されていることを特徴とする電子部品実装用無鉛はんだ
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