JP3672643B2 - 印刷インキ組成物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷インキ組成物に関し、さらに詳しくはプラスチックフィルムや金属蒸着フィルムに印刷可能で、特に金属表面に印刷された場合に優れた接着性およびラミネート適性を有する印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品等の軟包装材料として、各種材料からなる印刷インキをプラスチックフィルム(被着体)に印刷したものが広く利用されている。
【0003】
例えば、菓子や米の袋には、インキを被着体の表側のみに印刷し、食品と接触する裏側には印刷しないといった簡単な構成(表刷り印刷方式といわれる)のものが利用されるが、この表刷り用印刷インキの代表的なバインダー樹脂は、ポリアミド樹脂とセルロース誘導体との混合系である。
【0004】
これは表刷り用印刷インキに要求される性能が、主に光沢、接着性、耐熱性等であるためで、ポリアミド樹脂は光沢および接着性、セルロース誘導体は耐熱性をインキに付与する。
【0005】
また、被着体に印刷インキが印刷された後、さらに印刷面にポリマーをラミネートする構成(裏刷り印刷方式といわれる)があり、インキが表裏両面で外部と接触しないことから、通常の食品包装袋の他にボイル・レトルト用途に利用されている。
【0006】
この裏刷り用印刷インキの代表的なバインダー樹脂は、ポリウレタン系であり、プラスチックフィルムに対する接着性、ボイル・レトルト処理での耐熱水性に優れるという特徴を有する。
【0007】
一方、インキが印刷される被着体も、用途に応じて各種プラスチックフィルムが利用されるが、中でも本発明のインキの印刷対象となるのは、表面にアルミニウムなどの金属が蒸着されたフィルムであり、表刷り・裏刷りにかかわらず、この被着体を用いて得られる印刷物は、金属光沢と高い質感を有するという特徴がある。
【0008】
しかし、総じてプラスチックフィルム用の印刷インキは、金属蒸着面に対する接着性が低いという傾向があり、特に、金属蒸着フィルムに印刷された後、多湿下に長時間さらされるとこの傾向が顕著となる。
【0009】
前記のバインダー樹脂を用いたインキ系でも、表刷り印刷物ではフィルム面に対するインキの接着性、裏刷り印刷物では接着性の他にラミネート強度も低下するという問題が発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、特に金属蒸着フィルムに印刷された時に良好な接着性を有し、さらにラミネート加工が行われる場合には良好なラミネート強度を有するインキ組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、顔料、バインダー樹脂および有機溶剤から主として構成され、プラスチックフィルムまたは金属蒸着フィルムに印刷するための印刷インキ組成物において、前記バインダー樹脂が、ポリアミド−セルロース誘導体混合系バインダー樹脂またはポリウレタン樹脂からなり、さらに一つ以上の水酸基と一つ以上のカルボキシル基を同一分子内に有し、数平均分子量200〜5000、酸価20〜350、水酸基価20〜350の範囲にある化合物を、印刷インキ組成物全量に対して0.1〜10重量%含有することを特徴とする印刷インキ組成物に関する。
【0012】
その良好な態様として、バインダー樹脂としてポリアミド−セルロース誘導体混合系あるいはポリウレタン系バインダー樹脂を用いる印刷インキ組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記印刷インキ組成物を金属蒸着フィルムに印刷して得られる印刷物及びラミネート加工物に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0015】
[顔料]
まず、本発明のインキ組成物で使用する顔料としては、一般に有機溶剤性インキ組成物で使用できる無機、有機の顔料あるいは体質顔料が使用できる。
【0016】
具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛など、有機顔料として、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
【0017】
さらに体質顔料としては、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどを挙げることができる。
【0018】
これらの顔料のインキ組成物中での含有量は、通常、1〜50重量%程度である。
【0019】
[バインダー樹脂]
本発明のインキ組成物で使用するバインダー樹脂としては、主にポリアミド−セルロース誘導体混合系またはポリウレタン系で、必要に応じて他の樹脂を添加することができる。
【0020】
・ポリアミド樹脂
本発明のインキ組成物のバインダー樹脂として用いるポリアミド樹脂は、主に重合脂肪酸からなり、さらに必要により脂肪族、脂環族または芳香族ジカルボン酸や脂肪族モノカルボン酸を一部含有してもよい酸成分と、主に脂肪族、脂環族、芳香脂肪族および芳香族ポリアミンの単独または混合物からなり、さらに必要に応じて一級または二級モノアミンを一部含有してもよいアミン成分とを反応させたものである。
【0021】
ここで、重合脂肪酸は、一般に炭素数が16から22の不飽和脂肪酸またはそのエステルの重合により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸、三量化重合脂肪酸等を含むものである。
【0022】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸など、脂環族ジカルボン酸としてはシクロヘキサンジカルボン酸など、芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などを挙げることができる。
【0023】
さらに脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などを挙げることができる。
【0024】
一方、アミン成分としては、ポリアミンとして、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミン、キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン、一級および二級モノアミンとして、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのを挙げることができる。
【0025】
以上の酸成分とアミン成分からポリアミド樹脂を合成する方法としては、反応成分のカルボキシル基/アミノ基のモル比率を0.9/1.0〜1.0/0.9、好ましくは1.0/1.0とし、反応温度を160〜280℃、好ましくは180〜230℃として、最終段階では100トール程度またはそれ以下の減圧下で反応させることが望ましい。
【0026】
・セルロース誘導体
本発明のインキ組成物のバインダー樹脂として用いるセルロース誘導体としては、ニトロ基置換体としてニトロセルロース、低級アシル基置換体としてセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、低級アルキル基置換体としてメチルセルロース、エチルセルロースなどを挙げることができる。
【0027】
これらセルロース誘導体の分子量や置換度などは、通常の塗料やインキ組成物で使用される範囲のものが本発明でも支障なく利用できるが、耐熱性の面からはニトロ基置換体の使用が有利であり、接着性の面からは低級アシル基置換体および低級アルキル基置換体が有利であるから、使用の目的に応じて適宜選択して使用することが好ましい。
【0028】
本発明において、ポリアミド樹脂−セルロース誘導体系バインダー樹脂とした場合、バインダー樹脂総量は、通常、粘度や流動性の面からインキ組成物中に5〜30重量%程度であり、また、ポリアミド樹脂/セルロース誘導体の併用比率としては、光沢や耐熱性の面から1.0/0.1〜1.0/0.5(重量比率)の範囲が好ましい。
【0029】
・ポリウレタン樹脂
本発明のインキ組成物のバインダー樹脂として用いるポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、鎖伸長剤および必要に応じて反応停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂である。
【0030】
まず、有機ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及びα,α,α’ ,α' −テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0031】
これらの有機ジイソシアネート化合物は、単独または混合して使用できるが、溶解性、インキの流動性の面から、脂環族、脂肪族または芳香脂肪族のものが好ましい。
【0032】
高分子ジオール化合物としては、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物の他、各種高分子ジオール化合物が使用できる。
【0033】
ここで、ポリエーテルジオール化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAの、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種または2種以上の付加物などが挙げられる。
【0034】
また、ポリエステルジオール化合物としては、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸、イソフタール酸、マレイン酸等の二塩基酸の1種または2種以上と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類の1種または2種以上とを縮合反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0035】
さらに、その他の高分子ジオール化合物として、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール等を挙げることができる。
【0036】
これらの高分子ジオールは、数平均分子量300〜6000で、単独または混合して使用することができるが、得られるラミネートインキのラミネート強度、ボイル・レトルト適性の面から、ポリエステルジオール化合物がより好適である。
【0037】
なお、前記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物の使用比率は、イソシアネート基と水酸基の当量比が、通常、(1.3〜3.0):1.0、より好ましくは、(1.5〜2.0):1.0となる範囲である。
【0038】
次に、鎖伸長剤としては、ジオール化合物あるいはジアミン化合物が利用できる。
【0039】
ここで、ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができ、またジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、α,α,α' ,α' −テトラメチルキシリレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。
【0040】
さらに、分子量の調整等で、必要に応じて使用する反応停止剤としては、n−ブチルアミン、モノエタノールアミンなどのモノアミン、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコールを挙げることができる。
【0041】
以上の各材料よりポリウレタン樹脂を製造する方法としては、インキバインダー用ポリウレタン樹脂を製造するための公知の方法がそのまま利用できる。
【0042】
また、本発明にかかるポリウレタン樹脂の数平均分子量としては、通常、5,000ないし150,000、より好ましくは30,000ないし100,000である。
【0043】
本発明において、ポリウレタン樹脂系バインダーの通常の使用量は、粘度や流動性の面からインキ組成物中に5〜30重量%の範囲が好ましい。
【0044】
・その他のバインダー樹脂
その他のバインダー樹脂としては、フィルム用溶剤性印刷インキで使用される各種バインダー樹脂が使用でき、具体的にはマレイン酸系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂等を挙げることができる。これらバインダー樹脂のインキ組成物における使用量は、通常、0〜10重量%程度である。
【0045】
[ヒドロキシカルボン酸]
本発明で使用する、一つ以上の水酸基と一つ以上のカルボキシル基を同一分子内に有する化合物(以下、ヒドロキシカルボン酸という場合がある)であって、通常のヒドロキシカルボン酸として、12−ヒドロキシステアリン酸などがあげられる。
【0046】
また、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸として、以下のa〜dの反応生成物があげられる。
【0047】
a.ポリオールモノカルボン酸化合物および/またはポリオールポリカルボン酸化合物にラクトン化合物やポリイソシアネート化合物を反応させて得られるか、またはポリオールモノカルボン酸化合物および/またはポリオールポリカルボン酸化合物を含むポリオール化合物にポリイソシアネート化合物を反応させてえられるヒドロキシカルボン酸(以下、Aタイプヒドロキシカルボン酸という)
b.ポリカルボン酸無水物とポリオール化合物を無水物基に対して水酸基の過剰の存在下で反応させることによって得られるヒドロキシカルボン酸(以下、Bタイプヒドロキシカルボン酸という)
c.ポリカルボン酸化合物とポリオール化合物をカルボキシル基に対して水酸基の過剰の存在下で反応させて得られるヒドロキシカルボン酸(以後、Cタイプヒドロキシカルボン酸という)
d.ポリオールモノカルボン酸化合物および/またはポリオールポリカルボン酸化合物にアルキレンオキサイド化合物を付加させて得られるヒドロキシカルボン酸(以下、Dタイプヒドロキシカルボン酸という)
・Aタイプヒドロキシカルボン酸
まず、Aタイプヒドロキシカルボン酸の反応成分であるポリオールモノカルボン酸化合物としては、ジメチロールプロピオン酸等、また、ポリオールポリカルボン酸化合物としては酒石酸などが挙げられる。
【0048】
さらに無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のジカルボン酸無水物または無水トリメリット酸等のポリカルボン酸一無水物の1種または2種以上に、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール化合物の1種または2種以上を反応させるか、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物の1種または2種以上に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのグリコール化合物の1種または2種以上、または前記ポリオール化合物の1種または2種以上、もしくはそれらの混合物を反応させたものも利用できる。
【0049】
また、もう一方の反応成分のラクトン化合物としては、好ましくは4員環ないし7員環であり、アルキル基あるいはアルコキシル基等の置換基を有する誘導体であっても良い。具体的には、β−プロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、β−エチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,γ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン等が挙げられ、単独または混合して使用できる。
【0050】
また、ポリイソシアネート化合物としては、前記の芳香族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物のいずれも使用でき、これら単量体から誘導されるダイマー、トリマー、ビューレット、アロファネート、またトリメチロールプロパン、グリセリン、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオールなどのポリオールとの付加体も使用できる。
【0051】
前記ポリオールモノカルボン酸化合物および/またはポリオールポリカルボン酸化合物を含むポリオール化合物にポリイソシアネート化合物を反応させてえられるヒドロキシカルボン酸のばあいに使用するポリオール化合物としては、後記Bタイプヒドロキシカルボン酸の説明のところであげられているものが使用できる。
【0052】
・Bタイプヒドロキシカルボン酸
まず、Bタイプヒドロキシカルボン酸の反応成分であるポリカルボン酸無水物としては、前記ポリカルボン酸一無水物およびポリカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0053】
また、もう一方の反応成分であるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリエーテルエステルポリオール化合物などが利用できる。
【0054】
ここでポリエーテルポリオール化合物としては、水、前記グリコール化合物、前記ポリオール化合物等を開始剤として、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのオキシラン化合物を重合して得られるポリエーテルポリオール化合物を挙げることができる。
【0055】
またポリエステルポリオール化合物としては、例えば前記グリコール化合物、前記ポリオール化合物もしくはそれらの混合物とアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸化合物の1種または2種以上もしくはそれらのジアルキルエステルの1種または2種以上またはそれらの混合物と反応させて得られるポリエステルポリオール、前記グリコール成分、前記ポリオール成分等を開始剤として前記ラクトン化合物を重合して得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。さらに、ポリエーテルエステルポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオールを開始剤とした前記ラクトン化合物を重合して得られるポリエーテルエステルポリオールを挙げることができる。
【0056】
なお、AおよびBタイプヒドロキシカルボン酸を得るための、酸無水物基の水酸基による開環反応、水酸基へラクトンを付加する反応、水酸基とイソシアネート基との反応は公知の方法で行うことができる。
【0057】
・Cタイプヒドロキシカルボン酸
前記ジカルボン酸化合物とトリメチロールプロパン、グリセリン等の水酸基を3つ以上有するポリオール化合物を反応させたヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
【0058】
・Dタイプヒドロキシカルボン酸
前記ポリオールモノカルボン酸化合物および/または前記ポリオールポリカルボン酸化合物と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド化合物の1種または2種以上を付加させて得られるヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
【0059】
以上のヒドロキシカルボン酸のうち、本発明では、数平均分子量200〜5000、好ましくは400〜4000、酸価20〜350、好ましくは40〜250、水酸基価20〜350、好ましくは40〜300の範囲のものを利用する。ここで、当該ヒドロキシカルボン酸の数平均分子量が前記範囲未満となるか、または酸価が前記範囲を超えると、バインダー樹脂との相溶性が低下する。一方、当該ヒドロキシカルボン酸の数平均分子量が前記範囲を超えるか、または酸価が前記範囲未満となると、得られるインキ組成物の金属蒸着フィルム、アルミニウム箔への接着性やラミネート強度が低下する。
【0060】
さらに、当該ヒドロキシカルボン酸の水酸基価が前記範囲未満になると、得られるインキ組成物の金属蒸着フィルム、アルミニウム箔への接着性が低下し、一方、前記範囲を超えると、インキ組成物の硬化塗膜が硬くなりプラスチックフィルムに対する接着性が低下する。
【0061】
これらのヒドロキシカルボン酸のインキ組成物における含有量は、0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0062】
ヒドロキシカルボン酸の使用量が前記の範囲より少なくなると、得られるインキの金属蒸着フィルムに対する接着性が低下し、一方、多くなると耐ブロッキング性などが低下して好ましくない。
【0063】
なお、分子内にエーテル結合、エステル結合またはウレタン結合を有するヒドロキシカルボン酸は、バインダー樹脂との相溶性、有機溶剤に対する溶解性に優れることから、A〜Dタイプヒドロキシカルボン酸がより好適に使用できる。
【0064】
[有機溶剤]
本発明で使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系、およびエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系とその誘導体など各種有機溶剤を挙げることができ、通常は混合溶剤として利用される。
【0065】
[インキの製造方法]
以上の材料を用いて本発明のインキ組成物を製造する方法としては、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤及び必要に応じて顔料分散剤などの混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライターなどを用いて練肉し、さらに所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0066】
[用途]
本発明のインキ組成物は主にグラビア印刷方式を利用して各種被着体に印刷することができる。
【0067】
ここで、インキ組成物の印刷される被着体としては、通常の延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、変性ポリプロピレン、ポリエステル(PET)、ナイロン、ポリスチレン等の各種プラスチックフィルムの他に、それぞれアルミニウムなどの金属の蒸着された延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエステルフィルム等である。
【0068】
さらに、インキのバインダーとしてポリウレタン樹脂を使用した系は、上記フィルムに印刷された後、印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系などのアンカーコート剤を塗工し、溶融ポリオレフィンを積層する押出しラミネート加工、及び印刷面にウレタン系などの接着剤を塗工し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート加工にも利用可能である。
【0069】
なお、金属蒸着フィルムにインキが印刷された後にラミネート加工される構成としては、金属蒸着CPPの金属蒸着面にインキが印刷された後、印刷面にOPPやPETなどのフィルムが積層されるか、あるいは金属蒸着OPPや金属蒸着PETの蒸着面にインキが印刷された後、印刷面にOPPやPETフィルムが積層され、さらに印刷面と反対の面にCPPが積層されるものがある。
【0070】
本発明の印刷インキ組成物は通常のプラスチックフィルムのみならず、金属蒸着フィルムに対して、従来のインキ組成物にない優れた効果を発揮するものである。
【0071】
【実施例】
以下、実施例でもって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、部および%は特に限定がない限り、重量部及び重量%を表す。
【0072】
<ヒドロキシカルボン酸の調製>
合成例1(ヒドロキシカルボン酸No.1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ジメチロールプロピオン酸134部、ε−カプロラクトン100部を入れ、窒素ガスを導入しながら180℃に加熱しジメチロールプロピオン酸を均一に溶解させた。次にテトラブチルチタネート0.04部をε−カプロラクトン200部に分散させたものを、撹拌下に反応液に滴下し180℃にて2時間反応させ、数平均分子量430、水酸基価259、酸価130のヒドロキシカルボン酸No.1を得た。
【0073】
合成例2(ヒドロキシカルボン酸No.2)
合成例1と同様の装置に、ジメチロールプロピオン酸118部、ε−カプロラクトン100部を入れ、窒素ガスを導入しながら180℃に加熱しジメチロールプロピオン酸を均一に溶解させた。次にテトラブチルチタネート0.3部をε−カプロラクトン2522部に分散させたものを、撹拌下に反応液に滴下し180℃にて2時間反応させ、数平均分子量2700、水酸基価41、酸価20のヒドロキシカルボン酸No.2を得た。
【0074】
合成例3(ヒドロキシカルボン酸No.3)
合成例1と同様の装置に、ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオール=1/1(モル比)とイソフタル酸/アジピン酸=1/1(モル比)から得られた数平均分子量500のポリエステルジオール500部と無水トリメリット酸192部を入れ、窒素ガスを導入しながら85℃にて3時間反応させ、数平均分子量約700、水酸基価81、酸価162のヒドロキシカルボン酸No.3を得た。
【0075】
合成例4(ヒドロキシカルボン酸No.4)
合成例1と同様の装置に、ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオール=1/1(モル比)とイソフタル酸/アジピン酸=1/1(モル比)から得られた数平均分子量1000のポリエステルジオール1000部と無水フタル酸148部を入れ、窒素ガスを導入しながら85℃にて3時間反応させ、数平均分子量1150、水酸基価49、酸価49のヒドロキシカルボン酸No.4を得た。
【0076】
合成例5(ヒドロキシカルボン酸No.5)
合成例1と同様の装置に、ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオール=1/1モル比とイソフタル酸/アジピン酸=1/1モル比から得られる数平均分子量500のポリエステルジオール1000部と無水ピロメリット酸218部を入れ、窒素ガスを導入しながら85℃にて3時間反応させ、数平均分子量約1200、水酸基価92、酸価92のヒドロキシカルボン酸No.5を得た。
【0077】
合成例6(ヒドロキシカルボン酸No.6)
合成例1と同様の装置に、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)800部と無水ピロメリット酸218部を入れ、窒素ガスを導入しながら120℃にて3時間反応させ、数平均分子量約1000、水酸基価110、酸価110のヒドロキシカルボン酸No.6を得た。
【0078】
合成例7(ヒドロキシカルボン酸No.7)
合成例1と同様の装置に、ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオール=1/1(モル比)とイソフタル酸/アジピン酸=1/1(モル比)から得られた数平均分子量2000のポリエステルジオール1000部、ジメチロールプロピオン酸200部およびトリレンジイソシアネート180部を入れ、窒素ガスを導入しながら70℃にて10時間反応させ、数平均分子量約1440、水酸基価78、酸価61のヒドロキシカルボン酸No.7を得た。
【0079】
合成例8(ヒドロキシカルボン酸No.8)
合成例1と同様の装置に、トリメチロールプロパン67部、ネオペンチルグリコール156部、1,4−ブタンジオール135部、アジピン酸219部、イソフタル酸249部を入れ、窒素ガスを導入しながら180℃に加熱し、酸価が0.01以下となるまで反応させた後、80℃に冷却し、無水トリメリット酸96部を加え80℃で6時間反応させ、数平均分子量1800、水酸基価61、酸価61のヒドロキシカルボン酸No.8を得た。
【0080】
合成例9(ヒドロキシカルボン酸No.9)
オートクレーブ中に、ジメチロールプロピオン酸134部、水酸化カリウム1部を入れ十分に撹拌した後、5気圧、110℃でエチレンオキサイドガスを反応させて、数平均分子量2500、水酸基価45、酸価22のヒドロキシカルボン酸No.9を得た。
【0081】
合成例10(ヒドロキシカルボン酸No.10)
合成例1と同様の装置に、ジメチロールプロピオン酸134部、ε−カプロラクトン100部を入れ、窒素ガスを導入しながら180℃に加熱しジメチロールプロピオン酸を均一に溶解させた。次にテトラブチルチタネート0.03部をε−カプロラクトン14部に分散させたものを、撹拌下に反応液に滴下し180℃にて2時間反応させ、数平均分子量250、水酸基価450、酸価225のヒドロキシカルボン酸No.10を得た。
【0082】
合成例11(ヒドロキシカルボン酸No.11)
合成例1と同様の装置に、ジメチロールプロピオン酸134部、ε−カプロラクトン100部を入れ、窒素ガスを導入しながら180℃に加熱しジメチロールプロピオン酸を均一に溶解させた。次にテトラブチルチタネート0.6部をε−カプロラクトン5600部に分散させたものを、撹拌下に反応液に滴下し180℃にて2時間反応させ、数平均分子量5800、水酸基価19、酸価9.6のヒドロキシカルボン酸No.11を得た。
【0083】
<ポリアミド樹脂ワニスの調製>
トルエン280部、メチルエチルケトン280部、イソプロパノール140部の混合溶剤中に市販のポリアミド樹脂(レオマイドS2600、花王株式会社製)300部を溶解させて固形分30%のポリアミド樹脂ワニスを得た。
【0084】
<ポリウレタン樹脂ワニスの調製>
合成例1と同様の装置に、イソホロンジイソシアネート39.1部、アジピン酸と1,4−ブタンジオールから合成された数平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール207部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃にて10時間反応させた。冷却後、トルエン193部、メチルエチルケトン193部を加えて均一に溶解し、イソプロピルアルコール193部、イソホロンジアミン11.9部を加えて20分間反応させ、さらにn−ブチルアミン1.5部を反応を停止し、数平均分子量25000、固形分30%のポリウレタン樹脂ワニスを得た。
【0085】
<実施例1〜18、比較例1〜5の印刷インク組成物の調製および評価>
表1に示した配合の中から、顔料、バインダー樹脂及び適量の溶剤の混合物をレッドデビル型ペイントコンディショナーで混練した後、残りの成分を撹拌、混合して実施例1〜18、比較例1〜5の印刷インキ組成物を調製した。
【0086】
得られた印刷インキ組成物を、32μmの版深度のグラビア版を備えたグラビア校正機にて、ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製 E−5102、厚さ12μm)およびアルミ蒸着ポリエステルフィルム(東洋メタライジング(株)製 VM−PET、厚さ12μm)に印刷し、接着性、耐ブロッキング性の評価を行った。さらに実施例15〜18、比較例5のインキ組成物を前記と同じ方法で無延伸アルミ蒸着ポリプロピレンフィルム(東洋セロファン(株)製 MLフィルム、CP−WA、厚さ25μm)に印刷後、接着剤(武田薬品(株)製、タケネートA−385/タケラックA−50)を介して延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製 P−2161、厚さ30μm)をラミネートし、40℃で3日エージングして、ラミネート強度を測定した。結果を表1〜2に示す。
【0087】
<評価方法及び評価基準>
性能評価試験1(ポリエステルフィルム接着性)
ポリエステルフィルム印刷物の印刷面にセロファンテープを貼り付けて、剥がしたときにインキ皮膜が被着体から剥がれる面積の比率から、接着性を評価した。
【0088】
A:全く剥がれない
B:剥がれる面積が20%未満である。
【0089】
C:剥がれる面積が20%以上である。
【0090】
性能評価試験2(アルミ蒸着ポリエステルフィルム接着性)
アルミ蒸着ポリエステルフィルム印刷物の印刷面にセロファンテープを貼り付けて、剥がしたときにインキ皮膜が被着体から剥がれる面積の比率から、接着性を評価した。
【0091】
A:全く剥がれない
B:剥がれる面積が20%未満である。
【0092】
C:剥がれる面積が20%以上である。
【0093】
性能評価試験3(耐ブロッキング性)
アルミ蒸着ポリエステルフィルム印刷物の印刷面とフィルム裏面を合わせて、2kg/cm2 の荷重をかけて、40℃の温度条件下で24時間放置した。
【0094】
印刷面からフィルムを剥がす際の抵抗およびインキ皮膜のフィルム裏面への移行の度合いから耐ブロッキング性を評価した。
【0095】
A:全く抵抗なく剥がれる。
【0096】
B:僅かに抵抗があるが、インキ皮膜のフィルム裏面への移行はない。
【0097】
C:インキ皮膜がフィルム裏面へ移行する。
【0098】
性能評価試験4(ラミネート強度)
ラミネート物を15mm幅に切断し、安田精機(株)製剥離試験機を用いて、剥離速度300mm/minにてT型剥離強度を測定した。
【0099】
なお、剥離強度はg/15mmの実測値を記載した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【発明の効果】
以上、実施例を用いて具体的に示したように、本発明の印刷インキ組成物は、通常の印刷インキでは接着性の低くなる金属蒸着フィルムに対しても、良好な接着性を有し、さらにラミネート加工が行われる場合には良好なラミネート強度を有するものである。
Claims (5)
- 顔料、バインダー樹脂および有機溶剤から主として構成され、プラスチックフィルムまたは金属蒸着フィルムに印刷するための印刷インキ組成物において、前記バインダー樹脂が、ポリアミド−セルロース誘導体混合系バインダー樹脂またはポリウレタン樹脂からなり、さらに一つ以上の水酸基と一つ以上のカルボキシル基を同一分子内に有し、数平均分子量200〜5000、酸価20〜350、水酸基価20〜350の範囲にある化合物を、印刷インキ組成物全量に対して0.1〜10重量%含有することを特徴とする印刷インキ組成物。
- 前記バインダー樹脂として、ポリアミド−セルロース誘導体混合系バインダー樹脂を用いる請求項1記載の印刷インキ組成物。
- 前記バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂を用いる請求項1記載の印刷インキ組成物。
- 金属蒸着フィルムに、請求項2記載の印刷インキ組成物を印刷して得られる印刷物。
- 金属蒸着フィルムに、請求項3記載の印刷インキ組成物を印刷した後、さらにラミネート加工して得られるラミネート加工物。
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