JP3671657B2 - トラバース装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、特にガラス繊維のロービング回巻体を形成するのに適したトラバース装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラス繊維のロービング回巻体は、紡糸工程においてブッシングノズルから引き出された多数のフィラメントを集束してストランドとし、このストランドを巻き取ってケーキと称する回巻体を形成してから所定時間乾燥させた後、複数個のケーキからストランドを引き出して合糸したロービングストランドを巻取機で巻き取ることによって製造される。この場合、所定幅のロービング回巻体を形成するために、ロービングは、トラバース装置により所定幅に綾振りされながら巻き取られる。
【0003】
トラバース装置は、例えば図2に示すように、幅方向にスリット10が形成されたカムボックス11と、カムボックス11内で回転駆動するカムロール12とで構成された綾振機構と、カムボックス11のスリット10を介して前記カムロール12のカム溝13と係合されたトラバースガイド14と、トラバースガイド14の先端に固着され、ロービングRの通過する導糸孔15が形成されたアイレット部材16とを備えてなり、カムロール12を回転させ、トラバースガイド14を往復移動させることにより、導糸孔15を通過するロービングRを綾振りさせるものである。トラバースガイド14の先端に固着されたアイレット部材16には、図3(a)に示すような円形の導糸孔15、あるいは図3(b)に示すようなU字形の導糸孔15が形成されており、このアイレット部材16をセットボルト等の緊締部材を用いて、あるいは接着剤によりトラバースガイド14に固着してある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトラバース装置の場合、アイレット部材16の導糸孔15を通過しながら綾振りされるロービングストランドRは、導糸孔15の周囲において特に綾振り方向である左右両面部のみに交互に摺動するため、この左右両面部の摩耗が著しく、その結果、図4(a)(b)に示すように動糸孔15周面の左右両面部には、偏摩耗による凹部15aが形成される。
【0005】
このようにアイレット部材16の導糸孔15に凹部15aが形成されると、綾振りされるロービングRが前記凹部15aにより毛羽立たされたり、あるいは凹部15aの周囲に摩耗微粉が堆積し、ある程度の堆積物となった時にロービングRと共に巻き取られて製品中に異物として混入するという問題が生じる。またアイレット部材16自体も、短期に交換する必要があり、その度に巻取作業を中断しなければならないため、歩留まり低下の原因にもなっている。
【0006】
特にロービングRは、ストランドを複数本単位で合糸したものであるため、導糸孔15周面に対する摺擦による摩耗度合いが大きく、また既に乾燥されたストランドを合糸しているため、紡糸工程でのストランドに比べて毛羽が立ちやすいことから、特に上記トラバース装置についての改善が望まれていた。
【0007】
そこで本出願人は、特願平7−350312号において、アイレット部材の導糸孔の摩耗の少ないトラバース装置を提案している。
【0008】
このトラバース装置は、図5に示すように、綾振機構と、該綾振機構に係合して幅方向に往復移動するトラバースガイド14と、該トラバースガイド14に取り付けられ、繊維の通過する導糸孔15が形成されたアイレット部材16とからなり、アイレット部材16が回動することを特徴とするものである。
【0009】
このトラバース装置では、円筒形のアイレット部材16が、トラバースガイド14の移動幅に亘って設けられ、取付ブラケット17によってカムボックス11に取り付けられたレール部材18に外周面を当接した状態でベアリング19を介してトラバースガイド14に装着され、トラバースガイド14の往復移動時の摺動により回動するため、アイレット部材16の導糸孔15の周面において、同一部位だけにロービングRが摺擦することがなく、適宜変化するため、導糸孔15の偏摩耗が起こらない。
【0010】
このトラバース装置を作動させると、ロービングRが方向転換ローラ20によって下方から方向転換され、トラバースガイド14によって綾振りされながら押さえローラ21によって圧接されながらロービング回巻体22として巻き取られる。またトラバースガイド14は、回転運動を直線運動に代えるためのガイドとして用いられるスライダー23を介してカムボックス11のスリット10に支持されている。因みに、スライダーは、ガラス繊維強化プラスチックから作製されている。
【0011】
ところがこのトラバース装置を長期に亘って作動させると、スライダー23が徐々に摩耗し、これによってアイレット部材16がレール部材18から浮き上がって回動し難くなり、その結果、やはりアイレット部材16の導糸孔15に偏摩耗が発生するという問題があった。
【0012】
また通常、アイレット部材は、滑性に優れた真鍮から形成されているが、このようなアイレット部材を使用してガラス繊維を巻き取る場合、アイレット部材とガラス繊維との間に摩擦熱が発生し、アイレット部材にガムアップと呼ばれるガラス繊維集束剤の固形分が付着する現象が発生しやすい。このようなガムアップが発生すると、ガラス繊維が切断しやすくなるため、アイレット部材の材質として、比熱が小さく、摩擦熱を軽減できる樹脂を使用することが望まれているが、樹脂製のアイレット部材を使用すると、偏摩耗がより発生しやすくなるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、長期に亘って作動させても、繊維の摩耗によってアイレット部材の導糸孔に偏摩耗が発生するのを防止できるトラバース装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のトラバース装置は、綾振機構と、綾振機構に係合して幅方向に往復移動するトラバースガイドと、トラバースガイドに取り付けられ、繊維の通過する導糸孔が形成された円筒状のアイレット部材と、トラバースガイドの移動幅に亘って設けられたレール部材とを備えてなり、前記レール部材は、バネ機構によって常にアイレット部材の外周面を押圧しており、これによってアイレット部材が回動することを特徴とする。
【0015】
また本発明のトラバース装置は、アイレット部材が、樹脂から形成されてなることを特徴とする。
【0016】
【作用】
本発明のトラバース装置によると、アイレット部材が回動するため、導糸孔の周囲において同一部位だけに繊維が摺擦することなく適宜変化するため、アイレット部材の導糸孔の偏摩耗が防止できる。
【0017】
またこのトラバース装置を長期に亘って作動させることによってスライダーが徐々に摩耗しても、レール部材がバネ機構によって常にアイレット部材の外周面を押圧した状態にあるため、アイレット部材はレール部材から離間することはなく、良好に回動する。
【0018】
このように本発明のトラバース装置では、常にアイレット部材が良好に回動し、その導糸孔の周面の同一部位だけロービングが摺擦することがなく、適宜変化するため、樹脂製のアイレットを使用しても、導糸孔の偏摩耗が起こりにくい。また樹脂製のアイレット部材は、比熱が小さいため、アイレット部材と繊維との摩擦熱を軽減でき、ガムアップが発生し難くなる。
【0019】
アイレット部材を形成する樹脂としては、ベークライト、ポリイミド等が適している。
【0020】
【実施例】
以下、本発明のトラバース装置を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかるトラバース装置をロービング巻取機に適用した場合の縦断面図である。
【0022】
このトラバース装置は、巻取幅方向にスリット10が形成されたカムボックス11と、カムボックス11内で回転駆動するカムロール12と、カムボックス11のスリット10を介して前記カムロール12のカム溝13と係合するトラバースガイド14と、トラバースガイド14の先端に固着され、ロービングRの通過する導糸孔15を備えたアイレット部材16とからなる。
【0023】
トラバースガイド14は、スライダー23によりカムボックス11のスリット10に係合していると共に、トラバースガイド14の先端には、ロービングRの導糸孔15が形成された円筒形のアイレット部材16が、その外周にボールベアリング19を介して装着してある。上記トラバースガイド14に対するボールベアリング19及びアイレット部材16の取り付けは、トラバースガイド14とボールベアリング19の外輪とをネジロックにより緊締固着し、アイレット部材16とボールベアリング19の内輪についても同様にネジロックにより緊締固着してある。アイレット部材は、ベークライト樹脂から形成され、またトラバースガイド14とアイレット部材15及びボールベアリング19の取り付けは、接着剤によって固着してもよい。
【0024】
レール部材18は、トラバースガイド14の移動幅に亘って設けられ、その先端面には、ゴム材18aが貼り付けられている。このレール部材18は、カムボックス11に形成された取付部11aに、バネ材24を介して接続されているため、常にアイレット部材16の外周面を押圧している。
【0025】
次に上記トラバース装置の動作について説明する。
【0026】
ロービングRは、方向転換ローラ(図示せず)により上方から方向転換され、トラバースズイド14により綾振りされながらロービング回巻体22として巻き取られる。カムボックス11内のカムロール12は、回転駆動源(図示せず)により回転駆動することにより、カムロール12のカム溝13と係合するトラバースガイド14がスリット10に沿って巻取り幅方向に往復移動し、これによりアイレット部材16の導糸孔15を通過するロービングRが綾振りされながら巻き取られる。
【0027】
ロービングRは、綾振りされることによってアイレット部材16の導糸孔15周面の左右両面部に交互に摺擦するが、外周面がレール部材18に当接したアイレット部材16が、トラバースガイド14の往復移動に伴い正逆方向に回動し、ロービングRがアイレット部材16の導糸孔15の全周面に均一に摺擦するため、導糸孔15の偏摩耗を防止することができる。
【0028】
またレール部材18は、バネ材24によって常にアイレット部材16の外周面を押圧した状態にあるため、長期に亘って作動させても、アイレット部材16がレール部材18から離間することなく摺動し、良好に回動する。
【0029】
さらにアイレット部材16は、ベークライト樹脂から作製されているため、スービングRとの間の摩擦熱を軽減でき、ガムアップの発生も抑えることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明のトラバース装置は、トラバースガイドの往復移動時にアイレット部材が回動するため、繊維が導糸孔の周面において同一部位だけに摺擦することがなく、導糸孔の偏摩耗を防止できる。
【0031】
またレール部材は、バネ機構によって常にアイレット部材の外周面を押圧しているため、スライダーが摩耗しても、アイレット部材は良好に回動する。
【0032】
さらに常にアイレット部材が回動するため、その材質として樹脂を使用することが可能となり、このように樹脂製のアイレット部材を使用することによって、アイレット部材と繊維との摩擦熱を軽減でき、ガムアップの発生を抑えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるトラバース装置をロービング巻取機に適用した状態を示す縦断面図である。
【図2】従来のトラバース装置を示す平面図である。
【図3】(a)は、従来のトラバース装置のアイレット部材の導糸孔を示す平面図、(b)は、他の形状の導糸孔を示す平面図である。
【図4】(a)は、図3(a)の導糸孔が偏摩耗した状態を示す平面図、(b)は、図3(b)の導糸孔が偏摩耗した状態を示す平面図である。
【図5】従来のトラバース装置をロービング巻取機に適用した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
11 カムボックス
12 カムロール
13 カム溝
14 トラバースガイド
15 導糸孔
16 アイレット部材
18 レール部材
22 ロービング回巻体
23 スライダー
24 バネ材
Claims (2)
- 綾振機構と、綾振機構に係合して幅方向に往復移動するトラバースガイドと、トラバースガイドに取り付けられ、繊維の通過する導糸孔が形成された円筒状のアイレット部材と、トラバースガイドの移動幅に亘って設けられたレール部材とを備えてなり、前記レール部材は、バネ機構によって常にアイレット部材の外周面を押圧しており、これによってアイレット部材が回動することを特徴とするトラバース装置。
- アイレット部材が、樹脂から形成されてなることを特徴とする請求項1記載のトラバース装置。
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JP06419698A JP3671657B2 (ja) | 1998-02-26 | 1998-02-26 | トラバース装置 |
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JP06419698A JP3671657B2 (ja) | 1998-02-26 | 1998-02-26 | トラバース装置 |
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JPH11240673A JPH11240673A (ja) | 1999-09-07 |
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ID=13251086
Family Applications (1)
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JP06419698A Expired - Fee Related JP3671657B2 (ja) | 1998-02-26 | 1998-02-26 | トラバース装置 |
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