JP5057286B2 - ガラスロービング - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス繊維を使用する繊維強化樹脂(FRP)用途で使用されるガラスロービングに関する。
FRP用のガラスロービングは、様々な成形方法によって優れた性能を有するガラス繊維強化樹脂に利用されている。このガラスロービングは、一般に次のような工程で製造される。まず、均質に熔融された溶融ガラスは、白金製のブッシングの底部に設けられた多数のノズルから引き出されることによって、直径数μmから数十μmのガラスフィラメントとして成形される。次いで、例えばシングルエンドのガラスロービングを成形するには、各ガラスフィラメントの表面に集束剤を塗布した後、数百〜数千本のガラスフィラメントが1本のガラスストランドに束ねられ、このガラスストランドに所定の綾を掛けながらガラスロービング(DWR:Direct Wound Roving)として所定長まで巻き取られる。ここでガラスストランドに綾を掛ける方法としては、巻き取り装置であるコレット近傍において、綾掛け装置(トラバース装置)をコレットの回転軸方向に沿って往復運動させることにより、ガラスストランドの糸道を制御して綾を掛ける方法が一般的に行われている。ガラスストランドを制御する方法としては、コレット回転数に対して、機械的もしくは電気的に連動させて一定の比率でトラバースを往復運動させる、もしくは各機構を別駆動にすることにより、電子制御で連動させるという方法がある。こうして成形されたガラスロービングは、そのまま乾燥工程を経て、ガラスストランドを適正に乾燥した後に、ガラスロービングを形成する際、すなわち巻き取り時に使用した巻き取り管を抜去する等の必要となる処理が施され、シングルエンドロービングが出来上がることとなる。
このようなガラスロービングは、軽量で高い機械的強度を有する構造材を構成する際には欠かせない材料の一つであるため、ガラスロービングの性能向上やその品位を高める目的で多くの発明が行われてきている。例えば特許文献1では、最も長いガラスフィラメントの糸長差が0.1〜0.5%で、糸長差のバラツキが0.05%以上であるものを使用することによって、外部からFRP成形体の破壊強度を超える応力が加わっても直ちに破壊されることがないFRP成形体を構成することができるという発明が開示されている。また特許文献2では、高い巻き密度となるように形成されたガラスロービングの乾燥時に発生するパンクを抑制するために、ガラスストランドを巻き取る際にストランドが交差することによって形成される菱形状の隙間がガラスロービングの内表面から外表面まで渦巻形状を呈した開口孔として並ぶ構造となるように構成とすることが提案されている。さらに特許文献3では、ガラスストランドの毛羽の発生や持ち上がり、崩落の発生を抑制するための構成として、ガラスストランドのストランドピッチが50〜80mmの範囲にあり、ワインド数が5〜9の範囲とする発明も行われている。
またガラスストランドに綾を掛けるために使用されるトラバース装置についても、多数の発明が行われてきている。例えば特許文献4では、繊維の通過する導糸孔が形成されたアイレット部材が回動することによって、導糸孔の偏磨耗を防止してアイレット部材の寿命を延ばすという発明が行われている。また特許文献5では、従来のスパイラル状のトラバースワイヤを使用する際にコレット周面の円周線上に沿って巻かれた、いわゆる平行巻の部分が生じ、この平行巻の部分があることでガラスストランドを引き出す際に隣接するガラスストランドの影響で、ガラスストランドが折れて毛羽が発生する現象や、ガラスストランドが切れてしまう現象が生じるのを防ぐため、スパイラル形状ではない特定の形状を有するトラバースワイヤを使用することで改善できるとする発明も行われている。
特開2002−80237号公報 特開2003−212590号公報 特開2007−112636号公報 特開平9−169470号公報 特開2004−217325号公報
しかしながら、これまで行われてきた発明だけではガラスロービングの性能を一層高いものとするには十分とは言えない。構造材料として使用される多くのガラス繊維は、その高度な性能の割に以外な程安価で供給されており、しかもこれを補強材としてFRPに使用すると高い補強効果を確実に実現することを可能とする秀逸な基幹材料である。そのため、ガラス繊維は高強度を要する構造部材など、益々多くの用途で使用されることになることは間違いない。繊維強化材料やこれに使用される構成材料について、より一層の性能の向上や、安定した品位を実現するための研究、調査を行うことは、ガラスロービング等のガラス繊維のさらなる汎用性を高める上で必須となるものであり、このような取り組みを行うことによって、新たな使用方法や未注目機能を見出すことに繋がる可能性も大きいため、常に従来以上の性能を有するガラス繊維を追い求めることは重要である。そして高い機械的強度や剛性等を有するFRPを得るため、あるいは従来にない新たな機能を有する複合材料を得るためには、それを補強するために使用されるガラス繊維にもそれなりの高い品位や性能が要求され続けることになる。このため、これまでに行われた発明でもガラス繊維の品位の向上についてはそれ相応に効果があるものの、様々な点でさらに高い品位を実現し、安定した性能を発揮させるためには、一層の改善が必要である。
本発明では、上述したような観点からガラスロービング、特にDWRと呼ばれるシングルエンドロービングの性能として以下の問題点に注目し、これを改善しようとするものである。すなわちガラスロービングを使用してFRPを製造する場合には、様々な製造方法が知られているが、その内でも特に高強度な構造材を成形する際に多用されるものとして、フィラメントワインディング法(FW法ともいう)やプルトルージョン法(引き抜き法ともいう)がある。FRPの製造方法としてFW法や引き抜き法を適用する場合には、含浸槽などを使用してガラスストランドを所定の樹脂に含浸させた後で、ガラスストランドに付着した余分な樹脂については、ダイス等の細い隙間、あるいは細孔を通して余剰分を搾り取る工程が必要となる。ところが、このような余分な樹脂を搾り取る工程において、樹脂を含んだ状態のガラスストランドが過剰に解繊された状態、すなわち各々のフィラメントが樹脂を含んでいてもバラバラな集束されていない状態となり易い現象(以後、この現象を過剰開繊現象と呼ぶ)には、樹脂を搾り取る際にガラスフィラメントが過剰にダイス等と擦れてその表面に傷が生じるか、あるいは折れてしまい、その結果ガラス繊維が糸切れをおこし、FRPの連続成形が行えなくなって製造効率が低下する問題がある。また、このような構造欠陥を有するガラスストランドが使用されると、成形されたFRPの様々な高い性能が十分に発揮されなくなるという問題も懸念される。
そこで本発明は、ガラス繊維を使用する繊維強化樹脂を製造する際にガラス繊維の外観品位等に起因して生じる製造効率の低下や繊維強化樹脂の性能低下を抑止し、効率の高い繊維強化樹脂の製造を実現し、材料設計通りの安定した性能を発揮する繊維強化樹脂を成形することのできるガラスロービングを提供することを課題とする。
本発明のガラスロービングは、複数本のガラスフィラメントが一本のガラスストランドに集束されて回巻状に巻き取られたガラスロービングであって、前記ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、フィラメント糸長方向に右撚りと左撚りとを交互に繰り返す単糸撚りされた状態で巻き取られてなることを特徴とする。
ここで、複数本のガラスフィラメントが一本のガラスストランドに集束されて回巻状に巻き取られたガラスロービングであって、前記ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、フィラメント糸長方向に右撚りと左撚りとを交互に繰り返す単糸撚りされた状態で巻き取られてなるとは次のようなものである。すなわち、本発明のガラスロービングは、多数本のガラスフィラメントが集束剤を塗布されることによってギャザリング工程で集束されてガラスストランドにされ、このガラスストランドがワインダーに取り付けられたコレットに巻き取られて形成された回巻状のガラスロービングである。そしてこのガラスロービングについて、巻き取られるガラスストランドを構成する複数のフィラメントを束ねて撚りを掛ける双糸撚りの状態ではなく、フィラメント1本ずつを個別に撚りを掛けた状態、すなわち単糸撚りの状態にあり、しかも1本のガラスフィラメントの撚りの方向が、糸長方向に右ネジ方向と左ネジ方向とに相互に繰り返されるように撚られたままで集束、乾燥された状態にあり、そのガラスフィラメントが含まれるガラスストランドを巻き取ったものであることを表している。
本発明者は、フィラメントワインディング法やプルトルージョン法によるFRPの成形工程で問題となるガラスロービングの過剰開繊現象を防止する方法について長年に亘る研究を行う中で、過剰開繊現象の発生を抑止することのできるガラスストランド構造を初めて見いだし、さらに研究を重ねる中で過剰開繊現象を抑止するストランド構造を実現することのできるガラスロービングの製造方法とそれに関わるガラスロービング製造用トラバース装置を発明し、ここに提示するものである。
過剰開繊現象の発生を効率よく抑制するためには、上述したようにガラスストランドを構成するガラスフィラメントの何本かは、1本のガラスフィラメントで右撚り(あるいは右巻き)と左撚り(あるいは左巻き)とを繰り返す単糸撚りされた構造(以後、自撚反復構造と呼ぶ)となっていることが重要であり、このような構造となっていないガラスストランドでは過剰開繊現象が多発することになる。ここで、自撚反復構造となっているフィラメントの本数は多い程よいが、必ずしもガラスストランドを構成する全てのガラスフィラメントが自撚反復構造を呈している必要はなく、少なくともガラスストランドを構成するガラスフィラメントの内の1本以上が自撚反復構造となっていればよい。また自撚反復構造については、右撚りが施されている部分の長さや左撚りが施されている部分の長さについては、特に限定するものではなく、また撚りの大きさ、つまり甘撚か、あるいは強撚かについても限定されるものではない。
またガラスストランドを構成するガラスフィラメントについて、自撚反復構造となる構成を製造において実現するためには、どのような方法によって実現するものであっても自撚反復構造となるような方法を採用するのであればよいが、ガラス繊維を回巻状にコレット上に巻き取る際に、自撚反復構造が実現されるように製造するのが好ましく、より具体的には後述するように所定の条件を満足するトラバース装置を使用することによって実現するのがよい。
ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが自撚反復構造となっているかどうかを確認する方法としては、サンプリングしたガラスストランドから集束剤によって集束されて乾燥された状態にあるガラスフィラメントを注意深く開繊した上で、その捩れ状態を観察することによって自撚反復構造を認めることができる。自撚反復構造となっているフィラメントでは、右撚りによる捩れと左撚りによる捩れが交互に繰り返し現れる現象が観察される。ただし、確認のため開繊操作を行う際に、ガラスフィラメントの捩れ状態が変化しないように注意すればよい。また他の確認方法であってもガラスフィラメントが捩れた状態であることが確実に判る確認方法を使用するのであれば特に限定されるものではない。
ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、1本だけでフィラメント糸長方向に右撚りと左撚りとを交互に繰り返す単糸撚りされた状態で巻き取られてなること、すなわちガラスフィラメントが自撚反復構造となっていることが、樹脂が含浸した状態におけるガラスストランドの過剰開繊現象をどのようなメカニズムによって抑制することを可能とするのかということについて、その詳細は判明していない。ただ本発明者らは、右撚りと左撚りが交互に繰り返したガラスフィラメントがガラスストランド中に存在することによって、自撚反復構造を有するガラスフィラメントが自撚反復構造の認められないガラスフィラメントを束ねる働きをするものと考えており、このような右撚りと左撚りが交互に繰り返される構造によって、束縛力が左右に均等に加わることとなり、ガラスストランド全体としてはフィラメントが過剰開繊現象をおこすこともなく、またガラスストランドが大きく捩れた状態になることもないと考えている。
また本発明のガラスロービングは、上述に加えシングルエンドロービングであるならば、設計通りの高強度の構造を有するFRP構造物を得ることができるようになる。ここでガラスロービングがシングルエンドロービングであるとは、マルチエンドロービングのようにガラスストランドの末端位置が揃っていないのではなく、ガラスストランドの末端位置が1つに揃った状態にあるロービングのことである。
さらに本発明のガラスロービングは、上述に加え単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の交互の右撚りと左撚りとが、周期的に繰り返されてなるものであるならば、ガラスフィラメントが含まれるガラスストランド全体として、その外形が捩れた構造にはならず、ガラスストランドを使用して各種成形法により複合材料を成形する際に、均質な構造を有する成形体を得ることが容易である。
ここで、単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の交互の右撚りと左撚りとが、周期的に繰り返されてなるものであるとは、1本のガラスフィラメントについて、右撚り状態にある長さと左撚り状態にある長さが、反対方向の撚り部分を挟んで隣り合ったそれぞれの同方向の撚りについて等しいか、あるいは右撚り状態にある長さと左撚り状態にある長さの両方が共に等しい状態にあることを意味している。また周期的というのは、ロービング全体に亘ってのものでなくとも、1つのロービングについて少なくとも10回以上の反復性をもっており、部分的に周期性が認められるものであるならばよい。また右撚りと左撚りの長さが漸次増加、あるいは漸次減少するなどの形態を呈するものであってもよい。
単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の交互の右撚りと左撚りとが、周期的に繰り返されることを確認するには、前記したような解除操作を行う際に、各撚り方向のガラスフィラメントの長さを計測すればよい。計測機器としては、ノギス、巻き尺、あるいはレーザー計測機等、校正を受けた計測機器、治具等を使用していればよい。
本発明のガラスロービングは、単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の右撚りと左撚りとの交互の繰り返しが、トラバース装置の綾振り動作によって形成されてなるものであることを特徴とする。
ここで、単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の右撚りと左撚りとの交互の繰り返しが、トラバース装置の綾振り動作によって形成されてなるものであるとは、ガラスストランドに含まれるガラスフィラメントの撚り状態が糸長方向について、右撚りと左撚りが繰り返し形成された状態で巻き取られた構造が形成されるもので、元々捩れていない複数のガラスフィラメントを集束剤によって束ね、綾を掛けるために使用されるトラバース装置によってコレット周囲に綾を振りつつ巻き取られることによって形成されたものであることを意味している。
トラバース装置については、ガラス繊維の表面に傷等のダメージ等を与えることなく綾振りすることができるものであれば、どのような構成、駆動方式に従うものであっても採用することができる。よって、トラバース速度やトラバース幅、綾振り角度、ワインド数等の様々な製造条件については、製造されるロービングの寸法等によって必要な条件を採用してよい。
本発明のガラスロービングを構成するガラス繊維の材質は、どのような材質であってもよい。すなわち、Eガラス(無アルカリガラス組成)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス組成)、Cガラス(耐酸性のアルカリ石灰含有ガラス組成)、Dガラス(低誘電率を実現する組成)、Sガラス(高強度、高弾性率を実現する組成)、Tガラス(高強度、高弾性率を実現する組成)そしてHガラス(高誘電率を実現する組成)を使用することができる。
また本発明のガラスストランドを構成するガラスフィラメントの繊維径や繊維断面形状については特に限定されることはない。すなわち直径数μmから数十μmまでのガラスフィラメントを使用することができ、さらに断面形状についても真円、略楕円、扁平円、中空円、あるいは略矩形などを適宜採用することが可能である。
また本発明のガラスロービングを集束するために使用される集束剤は、所望の集束性を発揮するものであるならばどのようなものであってもよく、また集束剤に加え他の添加剤を適宜加えて使用することも可能である。
ラスロービング製造用トラバース装置は、ガラスロービングを回巻状に巻き取る際に、糸条ガイド部材によりガラスフィラメント束に綾振り動作をさせるトラバース装置であって、前記糸条ガイド部材に糸溝が形成されてなり、該糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率が1.0以上であることを特徴とする。
ここで、ガラスロービングを回巻状に巻き取る際に、糸条ガイド部材によりガラスフィラメント束に綾振り動作をさせるトラバース装置であって、前記糸条ガイド部材に糸溝が形成されてなり、該糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率が1.0以上であるとは次のようなものである。すなわち、ガラス長繊維ストランドをコレットに巻き取る際にコレット回転軸に平行な方向に往復運動を行うことによって綾振りを行う綾振り装置について、この装置の往復運動を行う糸条ガイド部(トラバースガイドともいう)材にガラスストランドがコレット上で所定綾振り幅となるように巻き取られるようにガラスストランドを案内するための糸溝が形成されており、糸溝の溝長さ方向の糸条ガイド部の厚み寸法に対する糸溝の幅寸法の割合、すなわち糸溝の幅寸法を糸条ガイド部の厚み寸法で除した値が1.0以上となることを意味している。
トラバース装置の糸条ガイド部材については、前記したように糸溝が施されたものであって、ガラス繊維表面に欠陥ともなる傷等を形成するものではなく、しかも糸条ガイド部材そのものの損耗が著しいものでなければ採用することができる。
トラバース装置の糸条ガイド部材について、その糸溝の幅寸法は、平行な溝幅であることが好ましいが、必要に応じて平行でなくともよい。溝幅が平行ではない場合には、平均溝幅が本発明での溝幅に相当するものである。また糸条ガイド部の厚み寸法についても溝幅の場合と同様に、糸条ガイド部の厚み寸法が一定ではない場合には、その平均値を糸条ガイド部の厚み寸法とする。しかしながら糸条ガイド部の厚み寸法については、溝がある部分の厚み寸法のみが重要であるため、厚み寸法の変動がある場合には、溝がある部分についての平均値を糸条ガイド部の厚み寸法とする。糸溝の幅寸法や糸条ガイド部の厚み寸法の計測についても、上述したような校正された各種計測機器、治具などを使用することが可能である。
ラスロービング製造用トラバース装置において、糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率を1.0以上とすることによって、ガラスストランドに適正な応力を加えつつ綾振りを行うことが可能となり、この比率が1.0未満では、厚み寸法の割合が大きくなり過ぎる結果、ガラスストランドが強くガイド部材に押し付けられることになり、その結果ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、1本だけでフィラメント糸長方向に右撚りと左撚りとを交互に繰り返した状態で巻き取られることがなくなるので好ましくない。
たガラスロービング製造用トラバース装置において、糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率は、あまりに大きくなり過ぎると、ガラスストランドを所定箇所に綾振りすることが困難となる場合もあり、このような観点から、糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率は、好ましくは5.0以下とすることが好ましく、さらに好ましくは4.0以下であり、一層好ましくは3.0以下とすることである。
さらにガラスロービング製造用トラバース装置においては、綾振りされるガラスストランドの外径寸法による制約から、糸条ガイド部材の厚み寸法には、上限値と下限値があり、上限値は4.0mm、下限値は0.5mmである。この上限値、下限値についてはより安定した品位のガラスストランドを製造するためには、好ましくは上限値が3.0mm、下限値は1.0mmとなる。
たガラスロービング製造用トラバース装置は、上述に加えトラバース装置の糸条ガイド部材のJISK6911(1995)に従う曲げ弾性率が6GPaから20GPaの範囲内であるならば、糸条ガイドの弾性が大きすぎることなく、また小さすぎることもない適正な弾性を有し、綾振り動作中にガラスストランド中のガラスフィラメントの撚りを形成するという点に関して安定した性能を発揮するので好ましい。トラバース装置の糸条ガイド部材のJISK6911(1995)に従う曲げ弾性率が6GPaより小さいと、糸条ガイドが柔らかすぎて容易に撓み過ぎることになるため、ガラスストランドをミスガイドする確率が高くなる。一方トラバース装置の糸条ガイド部材のJISK6911(1995)に従う曲げ弾性率が20GPaを超えると材料が硬くなり過ぎるため、溝加工等の加工を施す製造費用が嵩むことになる場合もあるため好ましくない。
たガスロービング製造用トラバース装置は、トラバース装置の糸条ガイド部材を、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などによって構成することができる。例えば、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂及びポリアセタール樹脂等を適宜使用することができる。またこれらの樹脂材は、単独部材ばかりでなく様々な複合材を採用することができる。例えば炭素繊維、ガラス繊維等を適量含有させたものを使用してもよい。また繊維材以外にも、顆粒、粉末などを混合するものであってもよい。またトラバース装置の糸条ガイド部材は、複数の部材を組み合わせた構造とするものであってもよい。例えば、糸溝表面部分のみをガラス繊維補強フェノール樹脂のプレートとし、このプレートがポリカーボネート製の基材に貼り付けられているような構成であってもよい。
またトラバース装置の糸条ガイド部材の糸溝表面については、必ずしも平面である必要はなく、凸面状であったり、凹凸状であったりしてもよく、さらにこの糸溝部に回転自在のローラーが取り付けられている構成であってもよい。
ラスロービングの製造方法は、ブッシングノズルより引き出したガラスフィラメントに集束剤を塗布した後に、糸条ガイド部材を有するガラスロービング製造用トラバース装置を使用し、ガラスフィラメント束を200mmから400mmの綾振り幅で綾振り動作させて回巻状にガラスストランドを巻き取り、その後に水分を乾燥することによって請求項1から請求項4の何れかに記戴のガラスロービングを製造することを特徴とする。
ここで、ブッシングノズルより引き出したガラスフィラメントに集束剤を塗布した後に、糸条ガイド部材を有するガラスロービング製造用トラバース装置を使用し、ガラスフィラメント束を200mmから400mmの綾振り幅で綾振り動作させて回巻状にガラスストランドを巻き取り、その後に水分を乾燥するとは、次のようなものである。すなわち、熔融ガラスをブッシングに配設したノズルから連続的に引き出して形成したガラスフィラメントに集束剤を塗布し、このガラスフィラメント束を糸条ガイド部材に糸溝が形成されてなり、糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率が1.0以上であるガラスロービング用トラバース装置を使用して、糸条ガイド部材の綾振り幅が200mmから400mmの範囲内となるように綾振り動作させつつ、ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、1本だけでフィラメント糸長方向に右撚りと左撚りを交互に繰り返した状態となるようにガラスストランドとして回巻状に巻き取り、その後に集束剤を塗布する際に付着した水分を加熱することによって乾燥させてガラスロービングとすることを表している。
ガラス繊維を製造するブッシングの仕様については、様々なものを採用してよく、ブッシングのノズル数や、ノズルの配置についても適宜最適なものを使用してよい。また集束剤を塗布する方法については、様々な方法を採用することができ、例えば公知のアスピレータ等を使用して適量塗布することができればよい。
ガラスフィラメント束を200mmから400mmの綾振り幅で綾振り動作させることによって、回巻状に巻き取りされた際に適度な周期で自撚反復構造が形成されることになり、また回巻状に巻き取りを終えた後のガラスロービングの乾燥を施すことによって、自撚反復構造が搬送中の振動などによっても解除されてしまうことがなく、安定した撚り品位を有するガラスロービングを得ることができる。
綾振り幅が200mm未満である場合には、形成されるガラスロービングの幅寸法が小さいものとなり、製造効率が悪い。また綾振り幅が400mmを超える場合には、ガラスロービングの重量が重くなり過ぎることになるので、この重量に耐えることができるようにするための工程設備の改造が必要になる場合もある。
また、水分を乾燥する方法については、どのような方法であっても、十分な効率で乾燥が行えるものであればよく、例えば120℃〜140℃の乾燥炉内に数〜数十時間の処理時間だけガラスロービングを滞留させて乾燥する熱風を利用した乾燥法と、マイクロ波、高周波を利用し数時間程度で乾燥する誘電乾燥法のいずれを採用するものであってもよい。
ラスロービング製造用トラバース装置を使用して、本発明のガラスロービングを得る際にガラスストランド中のガラスフィラメントにどのようにして撚りが形成されるかという点について、本発明者の予測に従い図2を参照しながら説明する。図2(A)はガラスストランドをガラスロービングとしてコレットに巻き取り操作中の部分平面図であり、図2(B)は部分斜視図を表している。図2で、10はガラスロービング、20はガラスストランド、50はコレット、60はトラバース装置、61はトラバース装置駆動部、63は糸条ガイド部材、64は糸溝、R はロービングの回転方向、Vは糸条ガイド部材の移動方向、Wはロービングの回転に伴いストランドに加わる引張力、HはVとWとの合力( =撚り応力)をそれぞれ表している。
図2(A)から明らかなように、ガラスストランド20をコレット50の回転方向Rに巻き取る操作を行う場合には、巻き取られる直前でトラバース装置60によってコレット50の軸方向に装置駆動部61によって駆動されて左右に動作する糸条ガイド部材63の動きによって綾振りされつつ巻き取られることになる。図2(B)に示す部分斜視図を使用して、このようなガラスストランド20の巻き取り動作中にガラスストランド20に働く応力について説明する。この図は、巻き取り動作の途中を例示したものであるが、ここではガラスストランド20は、トラバース右方向に動作する糸条ガイド部材63の移動に伴う応力Vを糸条ガイド部材63の糸溝の一方の溝内表面から受けているが、それと同時にロービング10の回転方向Rに従い回転するロービング10によって糸長方向に沿った引張力Wを受けている。このためガラスストランド20は、綾振り中に糸条ガイド部材63の箇所でVとWの合力となる撚り応力Hを受けることになり、ガラスストランド20が綾振り動作中の糸条ガイド部材63の糸溝の一方の溝内表面に押し付けられて自由に撚りが掛からない状態になっていなければ、すなわち糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率が1.0以上となっていればガラスストランド中の何本かのストランド表面近傍のガラスフィラメントが撚られていくことになる。ここで例示したのは、糸条ガイド部材63が右方向に移動する場合についてであるが、糸条ガイド部材63が反対方向に移動する際には、右方向とは逆向きの応力、すなわち左方向の撚り応力が働くことになるので、糸条ガイド部材63の往復間に撚り方向は反転することになる。このようなことが可能となるのは、前述したうように綾振り動作中の糸条ガイド部材63がガラスストランドの撚りを生じさせないような強い保持性を有する場合には実現することができない。
すなわち、ガラスストランド中のガラスフィラメントに自撚反復構造を形成するためには、糸条ガイド部材63の構造に制約を設けることで、ガイドミスを引き起こすことはなく、しかも所定の撚りが実現可能な自由度を有する糸条ガイド部材63となる。このような構成が、糸溝64の糸道方向の糸条ガイド部材63の厚み寸法に対する糸溝幅寸法の比率が、1.0以上であることによって実現されることになる。
ラスロービングの製造方法は、上述に加えブッシングノズルからのガラスフィラメントの引き出し方向に対して略垂直となるように配したコレットを具備する巻き取り装置を使用し、前記コレット軸方向と平行な方向にガラスフィラメント束を綾振り動作させて回巻状にガラスストランドを巻き取るものであれば、安定した綾振り動作を行うことが可能であり、高い品位のガラスロービングを得ることができる。
(1)以上のように、本発明のガラスロービングは、複数本のガラスフィラメントが一本のガラスストランドに集束されて回巻状に巻き取られたガラスロービングであって、前記ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、フィラメント糸長方向に右撚りと左撚りを交互に繰り返した単糸撚りされた状態で巻き取られてなるものであるため、ガラス繊維を使用して繊維強化樹脂を製造する際にガラス繊維の外観品位等によって生じる製造効率の低下や繊維強化樹脂の性能低下を抑止することができ、効率の高い繊維強化樹脂の製造を実現し、材料設計通りの性能を発揮する繊維強化樹脂を成形することのできる。
(2)また本発明のガラスロービングは、シングルエンドロービングであるならば、高強度を必要とするエンジニアリングプラスチック等の繊維強化樹脂を形成するものとして、特に好適な構造のガラスロービングとなる。
(3)さらに本発明のガラスロービングは、単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の交互の右撚りと左撚りが、周期的に繰り返されてなるものであるならば、偏りのない均等なガラスストランドを得ることが容易となるので、均質で安定した性能を有する高品位の強化樹脂材を成形することができる。
(4)また本発明のガラスロービングは、単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の右撚りと左撚りの交互の繰り返しが、トラバース装置の綾振り動作によって形成されてなるものであれば、樹脂を含浸した後に余剰な樹脂をガラスストランドから搾り取る工程において、ガラスストランドにループや糸切れ等の欠陥を発生することがないものとなる。
以下に本発明のガラスロービング、及びガラスロービング製造用トラバース装置と、この装置を使用するガラスロービングの製造方法について具体的に説明する。
図1に本発明のガラスロービングの斜視説明図を示す。この図中で、10はガラスロービング、20はガラスストランド、30は、自撚反復構造の認められるガラスフィラメント、40は自撚反復構造の認められないガラスフィラメント、31と33は自撚反復構造の認められるガラスフィラメントの右撚りの部分、32と34は自撚反復構造の認められるガラスフィラメントの左撚りの部分をそれぞれ表している。
このガラスロービング10は、23μmの直径を有するE ガラス材質の2200g/1000mの番手のシングルエンドロービングである。そしてこのガラスロービング10はエポキシ樹脂などを使用してプルトルージョン法によって構造強化材として利用される梁材を形成するために使用されるものである。このガラスロービング10は、ラスロービング製造用トラバース装置、すなわちトラバース装置のガラス繊維強化フェノール樹脂よりなる糸条ガイド部材に直線状の糸溝が形成されており、この糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法(1.8mm)に対する糸溝幅寸法(2.2mm)の比率が約1.2であって、この値が1.以上のものを使用し、溶融ガラスをブッシングから引き出した後に集束剤を塗布して綾振り幅260mmでコレット上に巻き取る事によって製造され、その後120℃の熱風を利用した乾燥法で乾燥をおこなったものであるため、次のような特徴を有している。
すなわち、このガラスロービング10は、ガラスロービング10として巻き取られたガラスストランド20から、例えばその内の3m程を取り出した後にガラスストランド20を構成するガラスフィラメントを解除していくと、その中にはフィラメント糸長方向の右撚り部分31、33と左撚り部分32、34が同じ長さで周期的に繰り返す、いわゆる自撚反復構造を有するガラスフィラメント30が認められる。またこのガラスストランド10には、自撚反復構造のないガラスフィラメント40も含まれているが、自撚反復構造のないガラスフィラメント40は自撚反復構造を有するガラスフィラメント30によって容易に開繊された状態とならないように束縛され、束ねられた状態となっているため、簡単にガラスフィラメントが解除され難い構造となっている。
またこの自撚反復構造を有するガラスフィラメント30をさらに詳しく観察すると、3mの長さ中に約10回の反復構造を確認することができ、これは糸条ガイド部材による綾振り動作に対応したものであって、右撚り部分31、33と左撚り部分32、34とは反対方向に捩れたように撓んだ状態となっていることで目視観察であっても識別するのが容易である。
このガラスロービング10を使用して、繊維強化樹脂の作製を試みると、プルトルージョン法を適用するためにエポキシ樹脂を含浸した後に余剰な樹脂をガラスストランドから搾り取る工程を経た後に、ガラスストランドを観察すると、ガラスストランドがループや糸切れ等の欠陥を発生しておらず、高い品位を有していることを確認することができる。
次いで本発明の他のガラスロービングについての性能を確認するために行った評価について説明し、このガラスロービングを製造するために使用したガラスロービング製造用トラバース装置について例示する。
まず、直径23μmのEガラスからなるガラスフィラメントに集束剤を塗布し、2000本のガラスフィラメントを1本に束ね(2200tex)ガラスストランドとし、図2に示したと同様の綾振り構造を有するガラスロービング製造用トラバース装置を使用して綾振り幅260mmでガラスロービングを作製し、高周波を利用した乾燥法によって水分を乾燥した。
ここで使用したガラスロービング製造用トラバース装置は、トラバース装置のガラス繊維強化フェノール樹脂よりなる糸条ガイド部材に直線状の糸溝が形成されており、この糸溝の糸道方向の糸条ガイド部材の厚み寸法(2.5mm)に対する糸溝幅寸法の比率を変更したものである。
次いでこのガラスロービングについて、フィラメントワインディング法における樹脂搾り時のフィラメント切れの評価を行った。評価方法は、まずフィラメントワインディングマシン機を用いて、ガラスロービングからガラスストランドを引き出す。次いでこのガラスストランドの一定長分(15m)を予め準備したエポキシ樹脂を一定温度に加熱、保持した状態の樹脂槽を潜らせてガラスストランドに樹脂が含浸された状態とし、この樹脂含浸操作の後に、樹脂絞りダイスを通過した後のガラスストランド上に発生するフィラメントのループの数を目視観察しつつ計測した。ガラスストランドにループが認められない場合は、図3のような状態でガラスストランドが観察されるが、ガラスストランドにループが認められる場合には図4のように観察される。
評価の結果を表1にまとめる。この表では、図4に示したようなループ数が15mの長さのガラスストランドについて、その出現回数が50回以上ある場合は明らかに支障があると判断できるため、50回よりも少ないものを「○」とし、多いものを「×」とし、それぞれの表記の下にループ出現の回数を示した。
表1から明らかなように、実施例である試料No.1は、糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝寸法の比率が1.0の構成の糸条ガイド部材を有するガラスロービング製造用トラバース装置を使用することによって巻き取られたものであり、15mのガラスロービングについてループの出現回数を計測したところ、その回数は41回と50回以下であり、実使用上問題のない品位であり、「〇」判定であることが明らかになった。またこのガラスロービングのガラスストランドを1mだけ開繊して調査したところ、ガラスストランド中に右撚りと左撚りが3回繰り返していると認められるガラスフィラメントの存在を確認することができた。
また実施例である試料No.2については、糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝寸法の比率が2.5の構成を有する糸条ガイド部材を持つガラスロービング製造用トラバース装置を使用することによって巻き取られたものであり、15mのガラスロービングについてループの出現回数を計測したところ、その回数は18回と少なく、実使用上まったく問題のない品位であり、「〇」判定であった。またこのガラスロービングについてもガラスストランドを1mだけ開繊して調査したところ、試料No.1と同様にガラスストランド中に右撚りと左撚りが3回繰り返し認められるガラスフィラメントが存在することを確認することができた。
一方比較例として、試料No.3は、糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝寸法の比率が0.8の糸条ガイド部材を有するガラスロービング製造用トラバース装置を使用することによって巻き取られたものであるため、15mのガラスロービングについてのループの出現回数を計測したところ、112回と明らかに多く、「×」判定となった。そしてこのガラスロービングについてもガラスストランドを1mだけ開繊して調査したところ、ガラスストランド中には撚りが認められるガラスフィラメントは確認できなかった。
さらに比較例である試料No.4は、糸条ガイド部材の厚み寸法に対する糸溝寸法の比率が0.5と小さい糸条ガイド部材を持つガラスロービング製造用トラバース装置を使用することによって巻き取られたものであり、15mのガラスロービングについてのループの出現回数を計測したところ、148回と非常に多くなり、「×」判定となった。そしてこのガラスストランドについても1mだけ開繊して調査したところ、ガラスストランド中には撚りが認められるガラスフィラメントは確認できなかった。
以上のように、ガラスロービング製造用トラバース装置の構成によってガラスロービング中のガラスフィラメントに適正な反復する撚りを付与することができ、ガラスフィラメントに適正な反復する撚りが存在する構造とすることで、ループなどの過剰開繊現象が効率よく抑制できることになることが明瞭となった。
次いでガラスロービング製造用トラバース装置の要部である糸条ガイド部材について、複数の事例を示す。
条ガイド部材を有するガラスロービング製造用トラバース装置は、ガラスストランドが綾振りさせる際の折り返し点で折り返しのためにガラス繊維が嵩張って厚みが大きくなる耳高現象を回避することのできるクリーピング機構を有するものであり、綾振り速度や綾振り幅の変動も微調整が可能な調整機構を有している。そしてこのような駆動系を有するトラバース装置駆動部61からの信号に従い、電磁動作によってコレット50軸方向に左右反復動作を行うのが、糸条ガイド部材63である。
図5はガラスロービング製造用トラバース装置に使用されている糸条ガイド部材であって、図中で63は糸条ガイド部材(トラバース)、64は糸溝、65は糸条ガイド部材の左側糸支持部、66は糸条ガイド部材の右側糸支持部、Xは糸溝64の幅寸法、Yは糸条ガイド部材63の厚み寸法を表している。
この糸条ガイド部材63では、ガラスストランドを綾振りする場合には、ガラスストランドは、糸条ガイド部材63の左側糸支持部65及び糸条ガイド部材63の右側糸支持部66に反復的に接触しつつ巻き取られていくことになる。この場合にこの支持部65、66にガラスストランドが強く押し付けられ過ぎると、ガラスストランド中のガラスフィラメントの動きが阻害され、その結果反復的に繰り返される右撚りと左撚りを有するガラスフィラメントは形成されることがなくなる。一方ガラスストランドの動きを重視し過ぎるとガラスストランドが糸溝64から外れ易くなり、また糸条ガイド部材63も磨耗し易くなって、耐久性が低くなってしまう。よって糸条ガイド部材63の厚み寸法Yに対する溝幅寸法Xとの比が1.0以上とすることによって本発明を達成することができたものであり、ここに示す糸条ガイド部材63では、糸条ガイド部材63の厚み寸法Yが2.0mm、糸溝64幅寸法Xが2.5mmのものである。
次いで図6は、他のガラスロービング製造用トラバース装置に使用されている糸条ガイド部材であって、図中で67は糸条ガイド部材(トラバース)、68は糸溝、69は糸条ガイド部材の左側糸支持部、70は糸条ガイド部材の右側糸支持部、X は糸溝幅寸法、Y は糸条ガイド部材の厚み寸法を表している。
この糸条ガイド部材67では、ガラスストランドと接触する糸条ガイド部材67の左側糸支持部69及び糸条ガイド部材67の右側糸支持部70の形状を凸状に湾曲させることによって、ガラスストランドとの接触時にそれぞれの支持部が受ける力を緩和したものであるが、この場合には糸条ガイド部材67の糸溝68の幅寸法Xは、凸状部の平均値を計測すればよく、その値は2.4mmで、糸条ガイド部材67の厚み寸法Yが1.9mmであるので、糸条ガイド部材の厚み寸法Yに対する溝幅寸法Xとの比は、約1.3であって、1.0以上としたものである。そしてこの糸条ガイド部材67を使用する場合であっても、例えば350mm幅の綾振り動作を行う装置に搭載することによって反復的に繰り返される右撚りと左撚りを有するガラスフィラメントが形成されることを確認することができる。
[図1]本発明のガラスロービングの説明図。
[図2]ラスロービング製造用トラバース装置による撚り形成についての説明
図であり、(A)は部分平面図、(B)は部分斜視図を表している。
[図3]ループの認められないガラスストランドの写真。
[図4]ループの認められるガラスストランドの写真。
[図5]糸条ガイド部材の斜視図。
[図6]他の糸条ガイド部材の斜視図。
符号の説明
10 ガラスロービング
20 ガラスストランド
30 自撚反復構造の認められるガラスフィラメント
40 自撚反復構造の認められないガラスフィラメント
31、33 自撚反復構造の認められるガラスフィラメントの右撚りの部分
32、34 自撚反復構造の認められるガラスフィラメントの左撚りの部分
50 コレット
60 トラバース装置
61 トラバース装置駆動部
63、67 糸条ガイド部材(トラバース)
64、68 糸溝
65、69 糸条ガイド部材の左側糸支持部
66、70 糸条ガイド部材の右側糸支持部
R ロービングの回転方向
V 糸条ガイド部材の移動に伴う応力
W ロービングの回転に伴いストランドに加わる引張力
H VとWとの合力(=撚り応力)
X 糸溝幅寸法
Y 糸条ガイド部材の厚み寸法

Claims (3)

  1. 複数本のガラスフィラメントが一本のガラスストランドに集束されて回巻状に巻き取られたガラスロービングであって、
    前記ガラスストランドを構成するガラスフィラメントが、フィラメント糸長方向に右撚りと左撚りとを交互に周期的に繰り返す単糸撚りされた状態で巻き取られてなることを特徴とするガラスロービング。
  2. シングルエンドロービングであることを特徴とする請求項1に記戴のガラスロービング。
  3. 単糸撚りされたガラスフィラメントのフィラメント糸長方向の右撚りと左撚りとの交互の繰り返しが、トラバース装置の綾振り動作によって形成されてなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記戴のガラスロービング。
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