JP3671497B2 - ポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、医薬や生化学の分野において有用な、1級水酸基を有するヒドロキシメチルエチレンオキシ構造を繰り返し単位とする、直鎖状で高品質のポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法としては、
(1)ポリグリセリンにアルカリ触媒の存在下ハロゲン化アルキルを反応させる方法、
(2)グリシドールを脂肪族アルコールに付加する方法(A.Kleemann、R.Wagner著、「GLYCIDOLS」、Huting社、1981年発行)、
(3)エピクロルヒドリンを脂肪族アルコールに1モル付加したのち、アルカリ条件下で脱塩化水素閉環し、次いで希硫酸で開環する操作を、目的の重合度に達するまで繰り返す方法、
(4)脂肪族アルコールに第三ブチルグリシジルエーテルを付加重合したのち、アリールスルホン酸などの強酸の存在下第三ブチル基を脱離する方法(英国特許第1,267,259号明細書)、
などが知られている。
しかし、(1)のハロゲン化アルキルを反応させる方法は、ポリグリセリン中に、反応に関与する水酸基が多数存在するため、アルキル基が付加する位置や数が不均一であるという問題がある。
(2)のグリシドールを重合させる方法では、アルキルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物の場合は、水酸基の反応性が高いためフェノール性水酸基に確実にグリシドールが付加するが、脂肪族アルコールの場合は水酸基の反応性が低いため、通常の方法で反応するとグリシドール中の水酸基に他のグリシドールが付加する単独付加重合がおこり、未反応の脂肪族アルコールやポリグリセリンが不純物として多量に副生する問題がある。しかも、付加反応を確実に行ったとしても、グリシドールを反応に用いると、1モル付加後水酸基が2個残存することになり、その2個の水酸基にさらにグリシドールが付加するため、次式で示されるように、構造は多数の分岐を有し、1級水酸基及び2級水酸基が混在するものとなる。
【化3】
(3)のエピクロルヒドリンを用いる方法でも、通常の反応では(2)と同様に多数の分岐を有する構造となる。1モルずつ段階的に反応すれば、直鎖状で骨格内に1級水酸基を有するものを得ることも可能であるが、反応工程が煩雑になるという問題点がある。また、原料のエピクロルヒドリンに由来する塩素分が混入するという欠点がある。
(4)の第三ブチルグリシジルエーテルを用いる方法では、直鎖状の骨格で1級水酸基を有する構造が得られるが、原料の第三ブチルグリシジルエーテルは合成が容易でなく、しかも第三ブチル基を脱離する工程で強酸を使用しなければならないため、第三ブチル基の脱離とともに主鎖のエーテル結合の切断が生じることが避けられず、さらに耐酸性の反応器を必要とするという問題点がある。
これまで、ポリグリセリンのモノエーテルとしては、アルキルフェノールの誘導体が、耐塩性の界面活性剤として樹脂添加剤あるいは化粧品配合原料として使用されていたため、構造の不均一性や骨格内の水酸基の形態はそれほど問題ではなかった。しかし、近年になり生理活性蛋白質の化学修飾やリポソームなどのドラッグデリバリーシステムにポリグリセリンの誘導体が使用されるようになると、アルキルフェノール誘導体より安全な、副生物の少ない高純度の直鎖状ポリグリセリンモノアルキルエーテルが要求されるようになった。しかし、上述の(1)〜(4)の製造方法では、高純度で直鎖状の骨格内に1級水酸基のみを有するポリグリセリンモノアルキルエーテルを簡便に得ることはできなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、繰り返し単位中の水酸基がすべて1級水酸基であり、分岐構造のない直鎖状で高品質のポリグリセリンモノアルキルエーテルの簡便な製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、脂肪族アルコールにグリシジルエステルを付加したのち、アルカリを用いて鹸化処理することにより、繰り返し単位中の水酸基がすべて1級水酸基である直鎖状のポリグリセリンモノアルキルエーテルを得ることができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(1)一般式[1]
R1OH …[1]
(ただし、式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基である。)
で示される脂肪族アルコールに、一般式[2]
【化4】
(ただし、式中、R2COは炭素数2〜24のアシル基である。)
で示されるグリシジルエステルを付加する工程と、
(2)アルカリを用いて鹸化処理することにより、一般式[2]で示される化合物に由来するアシル基を脱離する工程とからなる、
一般式[3]
【化5】
(ただし、式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基、nはグリセリン構成単位の平均付加モル数で2〜10である。)
で示される1級水酸基を有するヒドロキシメチルエチレンオキシ構造を繰り返し単位とする直鎖状のポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法、及び、
(2)(1)一般式[2]で示される化合物がグリシジルアセテートである第(1)項記載のポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明方法においては、一般式[1]で示される脂肪族アルコールに、一般式[2]で示されるグリシジルエステルを付加する。
R1OH …[1]
【化6】
一般式[1]において、R1で示される脂肪族炭化水素基の炭素数は8〜24である。このような脂肪族炭化水素基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、オクテニル基、ウンデセニル基、テトラデセニル基、ヘプタデセニル基、イコセニル基、トリコセニル基、ジメチルヘキシル基、イソステアリル基、オレイル基などを挙げることができる。R1で示される脂肪族炭化水素基の炭素数が8未満であると、本発明方法により製造されるポリグリセリンモノアルキルエーテルを界面活性剤として使用する場合、脂肪族炭化水素基の疎水基としての機能が不足するおそれがある。R1で示される脂肪族炭化水素基の炭素数が24を超えると、原料が入手しにくいので好ましくない。脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状、飽和又は不飽和のいずれも使用することができる。
【0006】
一般式[2]において、R2COで示されるアシル基の炭素数は2〜24である。このようなアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルプロパノイル基、ピバロイル基、カプロイル基、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2,3−ジメチルブタノイル基、3,3−ジメチルブタノイル基、ヘプタノイル基、カプリロイル基、3−エチルヘプタノイル基、ノナノイル基、カプリノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、トリデカノイル基、ミリストイル基、イソセトイル基、パルミトイル基、マルガロイル基、ステアロイル基、ノナデカノイル基、イソステアロイル基、ヘンイコサノイル基、トリコサノイル基、テトラコサノイル基などの飽和脂肪族アシル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、エライドイル基などの不飽和脂肪族アシル基、シクロヘキシルカルボニル基などの脂環式アシル基、フェニルアセチル基、ベンゾイル基、ブチルベンゾイル基、ジブチルベンゾイル基、オクチルベンゾイル基、ノニルベンゾイル基、ドデシルベンゾイル基、ジオクチルベンゾイル基、ジノニルベンゾイル基、スチレン化ベンゾイル基などの芳香族アシル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基などの複素環式アシル基などを挙げることができる。本発明方法において、アシル基の炭素数は、鹸化処理後の精製方法により適切な炭素数を選定することができる。精製工程において、脱水、ろ過工程をとる場合は、アシル基の炭素数は2〜4であることが好ましく、炭素数が2のアセチル基であることが特に好ましい。精製工程において溶剤抽出をする場合は、アシル基の炭素数は8〜18であることが好ましい。炭素数が1のホルミル基は、鹸化によりギ酸を発生するので好ましくない。アシル基の炭素数が24を超えると、原料が入手しにくいので好ましくない。
【0007】
本発明方法において、一般式[1]で示される脂肪族アルコールに一般式[2]で示されるグリシジルエステルを付加する。付加反応は、ルイス酸触媒又はアルカリ触媒の存在下に行うことが好ましい。ルイス酸触媒としては、例えば、三フッ化硼素、四塩化錫などを用いることができる。アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどを用いることができる。使用する触媒の量は、脂肪族アルコールとグリシジルエステルの合計量に対して0.01〜5重量%であることが好ましい。触媒の量が、脂肪族アルコールとグリシジルエステルの合計量に対して0.01重量%未満であると、反応速度が遅く、反応に長時間を要するおそれがある。触媒の量が、脂肪族アルコールとグリシジルエステルの合計量の5重量%を超えると、反応速度が速すぎて、反応の制御が困難になるおそれがある。
【0008】
本発明方法において、触媒としてルイス酸、例えば、三フッ化硼素を使用したとき、一般式[1]で示される脂肪族アルコールと三フッ化硼素から次式で示されるカルボニウムイオンが生成する。
R1+……-BF3OH
このカルボニウムイオンに一般式[2]で示されるグリシジルエステルが付加して、次式で示されるカルボニウムイオンとなる。
【化7】
以下、同様にしてグリシジルエステルの付加が続き、nモルのグリシジルエステルが付加したとき、一般式[4]で示される中間体が生成する。
【化8】
【0009】
本発明方法において、触媒としてアルカリ、例えば、水酸化ナトリウムを使用したとき、一般式[1]で示される脂肪族アルコールの水酸基と水酸化ナトリウムが反応して次式で示されるアニオンが生成する。
R1O-……+Na
このアニオンに一般式[2]で示されるグリシジルエステルが付加して、次式で示されるアニオンとなる。
【化9】
以下、同様にしてグリシジルエステルの付加が続き、nモルのグリシジルエステルが付加したとき、一般式[5]で示される中間体が生成する。
【化10】
【0010】
本発明方法においては、一般式[4]及び一般式[5]で示される中間体をアルカリを用いて鹸化処理し、一般式[2]で示される化合物に由来するアシル基を脱離して水酸基とするとともに、末端のカルボニウムイオン又はアニオンも水酸基とする。鹸化に使用するアルカリには特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することができる。鹸化工程においては、反応に使用したグリシジルエステルのモル数に対して1.01〜1.50モル倍のアルカリを使用することが好ましい。使用するアルカリの量が、反応に使用したグリシジルエステルのモル数に対して1.01モル倍未満であると、中間体よりアシル基が完全に脱離せず、エステル結合を形成したまま残存するおそれがある。使用するアルカリの量が、グリシジルエステルのモル数に対して1.50モル倍を超えると、中和に要する酸の量がいたずらに増加する。本発明方法においては、鹸化工程において、アルカリを1〜50重量%水溶液として添加することが好ましい。アルカリ水溶液の濃度が1重量%未満であると、処理液量が過大になるおそれがある。アルカリ水溶液の濃度が50重量%を超えると、反応系中で部分的にアルカリ濃度が高くなり、オキシエチレン鎖の切断などの副反応が生じるおそれがある。
【0011】
本発明方法において、鹸化処理は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。鹸化を窒素雰囲気下で行うことにより、望ましくない酸化反応などの副反応を抑えることができる。本発明方法においては、鹸化処理を70〜150℃で行うことが好ましい。鹸化処理の温度が70℃未満であると、反応速度が遅く、鹸化処理に長時間を要するおそれがある。鹸化処理の温度が150℃を超えると、副反応が生じるおそれがある。
本発明方法においては、鹸化工程を終了したのち、反応混合物に塩酸を加えてpHを5〜8に調整することが好ましい。塩酸による中和により生成する塩は塩化物であり、反応系よりの除去が容易である。反応混合物のpHが5未満であっても、8を超えても、続いて行う脱水処理中に、生成したポリグリセリンモノアルキルエーテルが変質し、あるいは、弱酸交換型イオン交換樹脂又は脱塩用透析膜による処理が困難となるおそれがある。塩酸によりpHを5〜8に調整した反応混合物は、10〜400mmHgの減圧下、70〜150℃で脱水することが好ましい。減圧を10mmHg未満とするためには高度な設備が必要であり、本発明方法においては、脱水のために10mmHg未満の減圧は通常は必要ではない。減圧が400mmHgを超えると、脱水に長時間を要するおそれがある。脱水の温度が70℃未満であると、脱水に長時間を要するおそれがある。脱水の温度が150℃を超えると、ポリグリセリンモノアルキルエーテルが変質するおそれがある。
【0012】
本発明方法においては、さらに弱酸交換型イオン交換樹脂又は脱塩用透析膜を用いて、生成したポリグリセリンモノアルキルエーテルより残存する一般式[2]で示される化合物に由来するカルボン酸又はその塩及び中和塩を除去することができる。弱酸交換型イオン交換樹脂又は脱塩用透析膜を用いて精製することにより、不純物を含まない高品質のポリグリセリンモノアルキルエーテルを得ることができる。
本発明方法においては、一般式[4]及び一般式[5]で示される中間体の鹸化処理によって、一般式[3]
【化11】
で示される、n個の1級水酸基と、末端の1個の2級水酸基とを有し、直鎖状のポリオキシエチレン構造の主鎖を有するポリグリセリンモノアルキルエーテルが得られる。
【0013】
一般式[3]において、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基である。このような脂肪族炭化水素基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、オクテニル基、ウンデセニル基、テトラデセニル基、ヘプタデセニル基、イコセニル基、トリコセニル基、ジメチルヘキシル基、イソステアリル基、オレイル基などを挙げることができる。R1で示される脂肪族炭化水素基の炭素数が8未満であると、本発明方法により製造されるポリグリセリンモノアルキルエーテルを界面活性剤として使用する場合、脂肪族炭化水素基の疎水基としての機能が不足するおそれがある。R1で示される脂肪族炭化水素基の炭素数が24を超えると、本発明方法により製造されるポリグリセリンモノアルキルエーテルを界面活性剤として使用する場合、適当なHLB値を与えるために付加すべきグリシジルエステルのモル数が多くなるため、反応が容易でなくなるとともに、生成物が高分子量化して取り扱いに困難を生じるおそれがある。脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状、飽和又は不飽和のいずれも使用することができる。
【0014】
一般式[3]において、nはグリセリン構成単位の平均付加モル数で2〜10である。nが1である化合物は、通常の製造方法によって本発明方法によるものと同等の構造の化合物を得ることができる。nが10を超えると、ポリグリセリンモノアルキルエーテルの粘度が高くなり、取り扱いが困難となるおそれがある。
一般的に、ポリグリセリンモノアルキルエーテルを製造する場合、反応に関与する水酸基が原料やモノマー中に複数存在するため、均一な構造のポリグリセリンモノアルキルエーテルを得ることは困難であり、ポリグリセリンモノアルキルエーテルの沸点が高いためこれらを反応後に分離精製することも困難である。本発明方法は、反応原料として脂肪族アルコールとグリシジルエステルを用いることにより、反応段階の分岐を有する構造の副生を抑制し、鹸化処理により効率的に主鎖内に1級水酸基のみを有する均一な構造の直鎖状のポリグリセリンモノアルキルエーテルを製造することを特徴としている。本発明方法では、一般式[1]で示される化合物と一般式[2]で示される化合物の反応後、ポリグリセリンがエステル化されている状態となるため、一般式[2]の化合物としてグリシジルアセテートを用い、付加反応後無水酢酸などを用いて残存する末端の水酸基をアセチル化したのち蒸留し、その後本発明の鹸化処理をすることによりさらに高純度のポリグリセリンモノアルキルエーテルを得ることができる。
【0015】
また、本発明の鹸化処理後、中和、脱水、ろ過することにより系中に発生するカルボン酸塩の大半は除去することができるが、さらに精製を行うときには、陰イオン交換型イオン交換樹脂を通してカルボン酸を除去したのち、中和、脱水、ろ過すること、あるいは限外ろ過により残存する微量のカルボン酸塩を除去することができる。また、一般式[2]のR2COとして炭素数8以上のアシル基を有するものを使用し、鹸化処理後中和工程でpHを2以下に下げて、生成したカルボン酸をトルエンやヘキサンなどの有機溶剤で抽出除去することなどができる。精製に用いるイオン交換樹脂は、ポリグリセリンモノアルキルエーテルからカルボン酸塩を除去する目的で使用するので、陰イオン交換型のものであれば種々の構造のものが使用できる。また限外ろ過膜としては、カルボン酸塩を除去することが目的であるので、脱塩型のものであれば種々のものが使用できる。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
ステアリルアルコール270g(1.0モル)とナトリウムメトキシド16.2gを3リットル容オートクレーブに採り、系内を窒素ガスに置換したのち80℃に昇温し、75〜85℃、50mmHg以下で1時間脱メタノールを行った。次いで110〜130℃、5kg/cm2以下の条件でグリシジルアセテート765.6g(6.6モル)を4時間かけて加えたのち、さらに1時間反応を続けた。次に10重量%塩酸を用いてpHを7.0に調整したのち、100℃、50mmHg以下で1時間脱水を行った。次に合成ゼオライト系吸着剤[協和化学(株)製、商品名キョーワード600]10gを入れ、1時間かき混ぜた。次に80℃に冷却し、吸着剤および析出した塩をろ別して化合物(1−A)980gを得た。
得られた化合物(1−A)の水酸基価は57.8(ステアリルアルコール1モルにグリシジルアセテート6モルが付加した化合物の計算値58.07)、鹸化価は349.6(ステアリルアルコール1モルにグリシジルアセテート6モルが付加した化合物の計算値348.44)、酸価は0.0であった。得られた化合物(1−A)の赤外線吸収分析を行った。スペクトルを図1に示す。これらの結果より、化合物(1−A)の構造は式[1−A]であると推定した。
【化12】
次に1リットル容オートクレーブに化合物(1−A)483g(0.5モル)を採り、40重量%水酸化ナトリウム水溶液360gを加えて、窒素雰囲気下、100℃で2時間鹸化を行った。次いで塩酸を用いてpHを7.0に調整し、脱塩用透析機[マイクロアシライザーG3、旭化成工業(株)製]を用いて脱塩を行ったのち、100℃、50mmHg以下で2時間脱水を行った。次に合成ゼオライト系吸着剤[協和化学(株)製、商品名キョーワード600]10gを入れ、1時間かき混ぜた。次に80℃に冷却し、吸着剤をろ別して化合物(1−B)280gを得た。
得られた化合物(1−B)の水酸基価は550.9(グリセリン6量体のモノステアリルエーテルの水酸基価の計算値550.0)、鹸化価は0.0、酸価は0.0であった。得られた化合物(1−B)の赤外線吸収分析を行った。スぺクトルを図2に示す。
以上の結果より、得られた化合物(1−B)の構造は式[1−B]であると推定した。
【化13】
実施例2
ラウリルアルコール186g(1.0モル)と四塩化錫11.14gを3リットル容オートクレーブに採り、系内を窒素ガスに置換したのち35℃に昇温し、35〜45℃、5kg/cm2以下の条件でグリシジルアセテート371.2g(3.2モル)を3時間かけて加えたのち、さらに1時間反応を続けた。次に5重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、トルエン2リットルを加え30分かき混ぜたのち、5重量%食塩水500mlを加え3回水洗を行い触媒の中和塩を除去した。次に100℃、50mmHg以下で1時間脱水、脱溶剤を行った。次に合成ゼオライト系吸着剤[協和化学(株)製、商品名キョーワード600]10gを入れ、1時間かき混ぜた。次に80℃に冷却し、吸着剤及び析出した塩をろ別して化合物(2−A)498gを得た。
得られた化合物(2−A)の水酸基価は107.4(ラウリルアルコール1モルにグリシジルアセテート3モルが付加した化合物の計算値105.1)、鹸化価は311.4(ラウリルアルコール1モルにグリシジルアセテート3モルが付加した化合物の計算値315.2)、酸価は0.0であった。これらの結果より、化合物(2−A)の構造は式[2−A]であると推定した。
【化14】
次に1リットル容オートクレーブに化合物(2−A)320.4g(0.6モル)を採り、40重量%水酸化ナトリウム水溶液198gを加えて、窒素雰囲気下100℃で2時間鹸化を行った。次いで塩酸を用いてpHを2.0に調整し、トルエン1リットルを加えてかき混ぜたのち、食塩水300mlずつを用いて3回水洗し、鹸化により脱離した酢酸、中和塩及び過剰の塩酸を除去した。次いで水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0を調整し、エバポレーターを用いて80℃で脱水、脱溶剤を行った。次いで析出した塩をろ過により除去した。次いで得られたろ液206.8gに合成ゼオライト系吸着剤[協和化学(株)製、商品名キョーワード600]5gを入れ、80℃で1時間かき混ぜたのち、減圧下吸着剤をろ別して化合物(2−B)198.3gを得た。
得られた化合物(2−B)の水酸基価は546.2(グリセリン3量体のモノラウリルエーテルの水酸基価の計算値は550.0)、鹸化価は0.0、酸価は0.0であった。
以上の結果より、得られた化合物(2−B)の構造は式[2−B]であると推定した。
【化15】
比較例1
ステアリルアルコール270.0g(1.0モル)とナトリウムメトキシド16.2gを3リットル容オートクレーブに採り、系内を窒素ガスに置換したのち80℃に昇温し、75〜85℃、50mmHg以下で1時間脱メタノールを行った。ついで110〜130℃、5kg/cm2以下の条件でグリシドール488.4g(6.6モル)を4時間かけて加えたのち、さらに1時間反応を続けた。次に10重量%塩酸を用いてpHを7.0に調整したのち、100℃、50mmHg以下で1時間脱水を行った。次に合成ゼオライト系吸着剤[協和化学(株)製、商品名キョーワード600]10gを入れ、1時間かき混ぜた。次に80℃に冷却し、吸着剤及び析出した塩をろ別して、化合物(3−A)629gを得た。
得られた化合物(3−A)は2層に分離していたため、トルエン1リットルとイオン交換水30gを加え、分液ロートを用いてトルエン層と水層に分別し、それぞれロータリーエバポレーターを用いて脱水、脱溶剤を行った。その結果、上層回収部分として242g、下層回収部分として354gを得た。得られた上層回収部分の水酸基価は294.1、下層回収部分の水酸基価は890.6であった。上層回収部分の赤外吸収スペクトルを図3に、下層回収部分の赤外吸収スペクトルを図4に示す。これらの結果から、上層回収部分は原料ステアリルアルコール及びグリシドールの低付加モル物の混合物であり、下層回収部分は副生したポリグリセリン及びグリシドールの高付加モルのものであることが推定され、本反応が多量の副生成物を伴う反応であることが分かる。
実施例1〜2及び比較例1より、本発明方法により得られるポリグリセリンモノアルキルエーテルがヒドロキシメチルエチレンオキシ構造を繰り返し単位とする均一な構造を有することが分かる。
【0017】
【発明の効果】
本発明方法は、ポリグリセリンモノアルキルエーテルを製造するに際し、脂肪族アルコールにグリシジルエステルを付加し、鹸化処理によりアシル基を脱離してポリグリセリンモノアルキルエーテルを得る方法であるので、特殊な反応装置や反応条件を使用せずに簡便に均一な構造を有するポリグリセリンモノアルキルエーテルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、化合物(1−A)の赤外線吸収スペクトルである。
【図2】図2は、化合物(1−B)の赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3は、上層回収部分の赤外吸収スペクトルである。
【図4】図4は、下層回収部分の赤外吸収スペクトルである。
Claims (2)
- (1)一般式[1]
R1OH …[1]
(ただし、式中、R1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基である。)
で示される脂肪族アルコールに、一般式[2]
で示されるグリシジルエステルを付加する工程と、
(2)アルカリを用いて鹸化処理することにより、一般式[2]で示される化合物に由来するアシル基を脱離する工程とからなる、
一般式[3]
で示される1級水酸基を有するヒドロキシメチルエチレンオキシ構造を繰り返し単位とする直鎖状のポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法。 - 一般式[2]で示される化合物がグリシジルアセテートである請求項1記載のポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法。
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