JP3669207B2 - マイクロリレー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマイクロリレー、特に、ダブルブレイク接点構造を有する静電マイクロリレーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、マイクロリレーとしては、図9に示す静電マイクロリレーがある(特開平2─100224号公報参照)。
すなわち、この静電マイクロリレーでは、固定基板1の上面両側縁部に配置した2本の棒状のスペーサ手段2,2を介して可動基板3を組み付けたものである。そして、前記固定基板1に設けた固定電極4a,4bに、静電引力で、前記可動基板3の可動電極5a,5bを交互にそれぞれ吸着させることにより、枢支部6を支点に可動電極5a,5bを回動させる。そして、前記可動電極5a,5bの下面先端縁部に設けた可動接点7aおよび7bを、前記固定基板1に設けた2対の固定接点8a,8bおよび9a,9bに交互に接触させ、開閉していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記静電マイクロリレーでは、例えば、可動接点7aが固定接点8a,8bに接触する場合に、可動接点7aが一方の固定接点8aだけに片当たりし、接触状態が安定しないという問題点があった。これは、接点の膜厚を均一に形成することが容易でなく、膜厚にバラツキが生じるためである。さらに、固定基板1においては、プロセス中の温度変化、金属を付着させることによる内部応力の発生によって反りが生じるからである。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、接触安定性の高い静電マイクロリレーを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るマイクロリレーは、前記課題を解決するための手段として、固定基板に対して可動基板が平行に対向し、固定基板の上面に並設した一対の固定接点に、対向方向に平行に往復移動する前記可動基板に設けた可動接点を接離させて開閉するダブルブレーク接点構造を有するマイクロリレーにおいて、
前記固定基板の上面のうち、前記固定接点の間に、前記固定接点の対向する先端縁部がはみ出す凹部を形成する一方、前記可動接点の厚さ寸法を漸次変化させることにより、前記可動接点の接触面を、前記固定接点の対向する先端縁部に最初に当接する傾斜面とした構成としてある。
【0006】
また、固定基板に対して可動基板が平行に対向し、固定基板の上面に並設した一対の固定接点に、対向方向に平行に往復移動する前記可動基板に設けた可動接点を接離させて開閉するダブルブレーク接点構造を有するマイクロリレーにおいて、
前記固定基板の上面のうち、前記固定接点の間に、前記固定接点の対向する先端縁部がはみ出す凹部を形成する一方、前記固定接点の少なくともいずれか一方の厚さ寸法を漸次変化させることにより、前記固定接点の接触面を、前記可動接点の下面に最初に当接する先端縁部を有する傾斜面とした構成であってもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
第1実施形態に係る静電マイクロリレーは、図1ないし図6に示すように、固定基板10の上面に可動基板20を積み重ねたものである。
【0008】
前記固定基板10には、単結晶シリコン基板11の上面に絶縁膜15を介して固定電極12および固定接点13,14が形成されている。また、前記固定電極12および固定接点13,14は、プリント配線16aおよび17a,18aを介して接続パッド16および17,18にそれぞれ接続されている。そして、前記固定電極12およびプリント配線16a,17a,18aの表面が絶縁膜15で被覆されている。また、前記固定基板の略中央に凹部11aが形成され、この凹部11aに前記固定接点13,14の対向する先端縁部が迫り出している(図3(a))。
【0009】
前記可動基板20は、前記固定基板10の上面に立設した4本の支持部21の上面縁部から側方にそれぞれ延在する第1梁部22で、可動電極23を均等に支持したものである。そして、前記支持部21の1本は、前記固定基板10の上面に設けたプリント配線19aを介して接続パッド19に接続されている。一方、前記可動電極23には、その中央に一対のスリット24,24を設けることにより、第2梁部25が形成されている。第2梁部25の下面中央には絶縁膜26を介して可動接点27が設けられている。この可動接点27は前記固定接点13,14に接離可能に対向するテーパ面27a,27bを有している。
【0010】
次に、前述の構成からなる静電マイクロリレーの製造方法を説明する。
まず、図4(a)のシリコン基板11に図4(b)に示すように絶縁膜15を介して固定電極12および固定接点13,14を形成する。これと同時に、接続パッド16,17,18,19、および、プリント配線16a,17a,18a,19aをそれぞれ形成する。そして、固定電極12およびプリント配線16a,17a,18aを絶縁膜15で被覆する。さらに、前記固定接点13,14の間に凹部11aを形成することにより、固定接点13,14の対向する先端縁部が凹部11a内に迫り出し、固定基板10が完成する(図4(c))。
【0011】
なお、前記絶縁膜15として比誘電率3〜4のシリコン酸化膜あるいは比誘電率7〜8のシリコン窒化膜を用いれば、大きな静電引力が得られ、接触荷重を増加させることができる。
【0012】
一方、図5(a)に示すように、上面側からシリコン層31,酸化シリコン層32およびシリコン層33からなるSOIウエハ30の下面に、接点間ギャップを形成するため、ウェットエッチングを行う。ウェットエッチングとしては、例えば、シリコン酸化膜をマスクとするTMAHによる方法がある。この結果、図5(b)に示すように、下方側に突出する支持部21を形成できる。そして、図5(c)に示すように、絶縁膜26を設けた後、可動接点27を形成し、ついで、不要な絶縁膜26を除去する(図5(d))。
【0013】
次に、図6(a)に示すように、前記固定基板10に前記SOIウエハ30を所定の位置に接合一体化する。そして、図6(b)に示すように、SOIウエハ30の上面をTMAH,KOH等のアルカリエッチング液で酸化シリコン層32までエッチングし、薄くする。さらに、フッ素系エッチング液で前記酸化シリコン層32を除去し、図6(b)に示すようにシリコン層33、すなわち可動電極23を露出させる。そして、RIE等を用いたドライエッチングで型抜きエッチングを行い、切欠部およびスリット24,24を形成することにより、第1,第2梁部22,25を切り出し、可動基板20が完成する。
【0014】
なお、固定基板10は単結晶シリコン基板11に限らず、ガラス基板で形成してもよい。
【0015】
次に、前記構成からなる静電マイクロリレーの動作について説明する。
両電極12,23間に電圧を印加せず、静電引力を発生させていない状態では、図1(b),(c)に示すように、第1梁部22は弾性変形せず、支持部21から水平に延びた状態を維持する。このため、可動基板20は固定基板10と所定間隔で対向し、可動接点27は両固定接点13,14から開離している。
【0016】
ここで、両電極12,23間に電圧を印加して静電引力を発生させると、第1梁部22が弾性変形し、可動電極23が固定電極12に接近する。前記静電引力は、電極間距離が小さくなるに従って増加する傾向にある。そして、可動基板10が固定基板20に当接直前まで接近すると、両電極12,23間に作用する静電引力は急激に増大し、可動接点27のテーパ面27a,27bが固定接点13,14の先端縁部にそれぞれ接触する。そして、可動電極23が固定電極12に絶縁膜15を介して吸着される。このため、可動接点27が第2梁部25を介して固定接点13,14に押し付けられる。このとき、可動接点27の表面はテーパ面27a,27bを有している。一方、固定接点13,14の対向する先端縁部が凹部11a内に迫り出している。このため、可動接点27が固定接点13,14に接触した後も、固定接点13,14を凹部11a内に押し込む。この結果、固定接点13,14の膜厚にバラツキがあっても、可動接点27が固定接点13,14に確実に接触し、安定した接触状態を確保できる。
【0017】
その後、両電極12,23間の印加電圧を除去すると、第1,第2梁部22,25の弾性力が接点開離力として作用する。このため、可動電極23が固定電極12から開離し、可動接点27が固定接点13,14から開離し、元の状態に復帰する。
【0018】
また、本実施形態では、可動基板20全体をシリコンウェハ単体で形成すると共に、点対称,断面線対称となるように形成してある。このため、可動電極23に反りや捩りが生じにくい。したがって、動作不能および動作特性のバラツキを効果的に防止でき、円滑な動作特性を確保できる。
【0019】
本発明に係る静電マイクロリレーの第2実施形態は、図7に示すように、固定接点13,14の表面にテーパ面13a,14aをそれぞれ形成する一方、可動接点27の下面を平滑とした場合である。
この静電マイクロリレーによれば、可動接点27が下降して固定接点13,14に接触すると、可動接点27はテーパ面13a,14aの対向する先端縁部に接触する。ついで、固定接点13,14は弾性変形し、凹11a内に押し込まれる(図7(b))。このため、可動接点27または固定接点13,14の膜厚にバラツキがあっても、可動接点27が固定接点13,14に確実に接触し、接触信頼性が高いという利点がある。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0020】
第3実施形態は、図8に示すように、一対の固定接点13,14のうち、一方の固定接点13の上面を平滑にする一方、残る固定接点14の上面にテーパ面14aを形成した場合である。
この静電マイクロリレーによれば、可動接点27が下降して固定接点13,14に接触すると、可動接点27はテーパ面14aの先端縁部に接触する。ついで、固定接点14を弾性変形させながら、可動接点27が固定接点13に接触する(図8(b))。このため、第2実施形態と同様、可動接点27が固定接点13,14に確実に接触する。
【0021】
なお、前記実施形態では、可動基板を4本の第1梁部22で支持するようにしたが、3本あるいは2本の第1梁部22で支持するようにしてもよい。これにより、面積効率の良い静電マイクロリレーを得ることが可能となる。
また、前記可動接点および固定接点の接触面に形成するのは、テーパ面に限らず、円弧面であってもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1に記載の静電マイクロリレーによれば、可動接点の傾斜面が固定接点の対向する先端縁部に当接した後、固定接点を弾性変形させつつ、固定基板の凹部に嵌合する。このため、可動接点が固定接点に確実に接触し、接触信頼性の高いマイクロリレーが得られる。
【0023】
請求項2によれば、一対の固定接点のうち、少なくともいずれか一方の固定接点に傾斜面を形成してある。このため、可動接点が固定接点に設けた傾斜面の先端縁部に当接した後、その固定接点を弾性変形させて凹部内に押し込む。このため、可動接点と固定接点との接触が確実になり、接触信頼性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る静電マイクロリレーの平面図(a)、および、その断面図(b),(c)である。
【図2】 図1の固定基板の平面図(a)、および、その可動基板の底面図(b)である。
【図3】 図1にかかる可動接点の動作前後を示す拡大断面図(a),(b)である。
【図4】 図1にかかる固定基板のプロセス工程を示す断面図である。
【図5】 図1にかかる可動基板のプロセス工程を示す断面図である。
【図6】 図1にかかる固定基板および可動基板の接合後のプロセス工程を示す断面図である。
【図7】 本発明の第2実施形態に係る静電マイクロリレーの可動接点の動作前後を示す拡大断面図(a),(b)である。
【図8】 本発明の第3実施形態に係る静電マイクロリレーの可動接点の動作前後を示す拡大断面図(a),(b)である。
【図9】 従来例に係る静電マイクロリレーの分解斜視図(a)、および、断面図(b)である。
【符号の説明】
10…固定基板、11…シリコン基板、11a…凹部、12…固定電極、13,14…固定接点、13a,14a…テーパ面、15…絶縁膜。
20…可動基板、21…支持部、22…第1梁部、23…可動電極、24…スリット、25…第2梁部、26…絶縁膜、27…可動接点、27a,27b…テーパ面。
Claims (2)
- 固定基板に対して可動基板が平行に対向し、固定基板の上面に並設した一対の固定接点に、対向方向に平行に往復移動する前記可動基板に設けた可動接点を接離させて開閉するダブルブレーク接点構造を有するマイクロリレーにおいて、
前記固定基板の上面のうち、前記固定接点の間に、前記固定接点の対向する先端縁部がはみ出す凹部を形成する一方、前記可動接点の厚さ寸法を漸次変化させることにより、前記可動接点の接触面を、前記固定接点の対向する先端縁部に最初に当接する傾斜面としたことを特徴とするマイクロリレー。 - 固定基板に対して可動基板が平行に対向し、固定基板の上面に並設した一対の固定接点に、対向方向に平行に往復移動する前記可動基板に設けた可動接点を接離させて開閉するダブルブレーク接点構造を有するマイクロリレーにおいて、
前記固定基板の上面のうち、前記固定接点の間に、前記固定接点の対向する先端縁部がはみ出す凹部を形成する一方、前記固定接点の少なくともいずれか一方の厚さ寸法を漸次変化させることにより、前記固定接点の接触面を、前記可動接点の下面に最初に当接する先端縁部を有する傾斜面としたことを特徴とするマイクロリレー。
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