JP3668408B2 - 緑茶飲料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、香味に優れ、色調も損なわれず、しかも長期保存しても不快な沈澱物を生じることがない緑茶飲料、特に透明容器詰用飲料として最適な緑茶飲料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、緑茶飲料の香りを高めるために様々な手法が採られてきた。例えば特開平11−262359号等には、茶生葉を釜で炒り香気を出させる方法が開示されているが、このように緑茶葉を火入れすることによって加熱による火入れ茶特有の芳香が発揚し、茶の香味を向上させることができる。
しかし、緑茶葉を火入れ処理すると、この処理に伴って抽出液の色調が損なわれる傾向があり、透明容器詰め飲料の場合は特に、飲料の色調は重要な商品価値となるため、透明容器詰用の緑茶飲料の製造においてはこの点は重大な課題となっていた。
【0003】
茶飲料の香りを高める別の手段として、酵素処理によって緑茶飲料の香味を改善する方法が提案されている。例えば特開平4−228028号は、茶抽出残さに酵素を添加して加水分解させることにより、フレーバーを有する水溶性茶抽出物を製造する方法を開示しており、また特開平01−300848号は、茶葉を25〜60℃の水中において不活性ガスの存在下で酵素処理する方法を開示している。
しかし、このような酵素処理によってフレーバーを強化すると、低沸点部の青い香りのみが強化され、かえって香りのバランスが崩れてしまう課題があった。また、従来開示されていた酵素処理法はいずれも、実際の生産ラインを考慮すると決して実用的な方法とは言えなかった。
【0004】
また、特開平8−126472号は、香味を向上させるために玉露茶と深蒸し茶の抽出液を混合する方法を開示し、特開平6−343389号は、殺菌処理時に発生するオフフレバー、いわるゆるレトルト臭の発生を防止するため,低温で抽出する方法を開示している。
しかし前者の方法は、単に玉露茶と深蒸し蒸の抽出液を混合しただけであったため、長期保存すると沈殿(澱)が発生することがあり、透明容器飲料には不向きであったし、また、後者の方法は、レトルト臭を抑制できる代わりにやはり長期保存中に沈殿物が発生する傾向があった。
【0005】
このように、従来の手法によって緑茶飲料の香りを高めようと処理すると、茶飲料の色調や香味が損なわれることとなり、場合によっては長期保存中に沈殿物が発生したり、かえって香りのバランスを崩してしまう課題があった。
そこで本発明は、香味に優れ、芳香成分のバランスも良く、しかも不快な沈澱物を生じさせない緑茶飲料の製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題解決のため、本発明は、抽出工程を2系統に分け、一工程においては、緑茶葉を加圧抽出して加圧抽出液を得(工程A)、他の一工程においては、緑茶葉を常圧抽出し、これを微細ろ過して常圧抽出液を得(工程B)、そして、それぞれの工程で得られた加圧抽出液と常圧抽出液とを混合し(工程C)、緑茶飲料を製造することとした。
【0007】
本発明の茶飲料の製造方法によれば、工程Aで得られる加圧抽出液は、飲料に最適な香りを効率的かつ多量に回収した液であるが、緑茶特有の渋味・旨味は足りない傾向となる。この一方、工程Bで得られる常圧抽出液は、渋味・旨味が強く、良好な色調が得られる傾向となる。本発明は、これらを適当に混合することにより、香味に優れ、芳香成分のバランスも良く、しかもオリの発生も見られず、特にいわゆるペットボトルなどの透明容器詰用緑茶飲料として好適な緑茶飲料を製造することに成功した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の緑茶飲料の製造方法を実施形態に沿って説明する。
【0009】
上述のように、本発明は、抽出工程を2系統に分け、工程Aでは、緑茶葉を加圧抽出して加圧抽出液を得、工程Bでは、緑茶葉を常圧抽出し、これを微細ろ過して常圧抽出液を得、そして工程Cにおいて、工程Aで得られた加圧抽出液と工程Bで得られた常圧抽出液とを混合する。
【0010】
先ず、工程Aの実施形態について説明する。
本工程で行なう加圧抽出は、密閉状態において0.5〜1.5kg/cm2の圧力をかけて、すなわち大気圧+0.5〜1.5kg/cm2の圧力下で緑茶葉を温水抽出するのが好ましい。この範囲外の加圧でも或る程度の効果は得られるが、0.5kg/cm2より著しく低いと条件によっては所望の香りが得られなくなり、1.5kg/cm2を超えると渋味ばかりが強調される傾向が見られるようになる。より好ましくは0.5〜1.0kg/cm2に加圧するのがよい。
この際使用する加圧抽出装置としては、例えば、ステンレス製の密閉可能な抽出装置であって、下部の排出コックを締め、上部より温水をポンプで注入することによって装置内を所定の圧力に加圧することができ、その後当該排出コックを開けてポンプで温水を装置内に注入することによって圧力を保ちながら抽出液を排出させることができる抽出装置を好ましく用いることができる。但し、加圧抽出装置をこのような装置に限定するものではない。異なる構成の装置であっても密閉可能であって所定の圧力に加圧可能な抽出装置であれば使用することができる。
【0011】
抽出温度、すなわち抽出する温水の温度は、45〜90℃、より好ましくは60〜90℃の温水で抽出するのが好ましい。この範囲外でもある程度の効果は得られるが、45℃より低いと温度を一定に保つことが難しく、かつ所望の香りが得られなくなる可能性があり、90℃を超えると逆に渋味が強くなりすぎる傾向がでてくる。これに対して、60〜90℃の温水で抽出すると、より安定して優れた香味を得ることができる。
さらに、茶葉を粉末にして接触面積を大きくし、かつ60〜90℃の高温で抽出すると、より飲料に適した香りをより多く回収することができる。
【0012】
かかる加圧抽出においては、密閉状態内に緑茶葉を投入し所望の圧力0.5〜1.5kg/cm2 に加圧したら、即座に温水抽出するのが好ましい。温水抽出する前に緑茶葉を加圧雰囲気下にてしばらく静置すると、苦味成分や渋味成分などが抽出され過ぎる傾向となる。ただし、2分程度までの静置であれば、内容成分の抽出が起こらないから、この範囲の静置であれば条件によっては好ましい結果を得ることができる。
【0013】
また、緑茶葉に加水分解酵素を加え、この場合には加水分解酵素と共に緑茶葉を密閉状態加圧下に適宜時間静置させるのがより好ましい。このようにすればより一層優れた芳香成分をより多く回収することができる。加水分解酵素を添加して緑茶の香りを高める方法は従来から提案されてきた手法であるが、加圧下で加水分解酵素と共存させる手法は開示されておらず、しかもこのように加圧雰囲気下にて緑茶葉と加水分解酵素とを共存させて加水を分解させれば、常圧下で加水分解を起こさせる場合に比べ、より一層優れた芳香成分をより多く回収することができる。ここで、加水分解酵素としては、β―グルコシダーゼ、セルラーゼ、グリコシダーゼ、オリゴグリコシダーゼなどを挙げることができるが、中でもβ−グリコシダーゼ、オリゴグリコシダーゼを好ましく使用することができる。
【0014】
工程Aに付する緑茶葉は、16〜50メッシュに粉砕してなる粉砕茶を用いることが好ましい。粉砕することによって、未粉砕の茶葉に比べて芳香成分をより多く回収することができる。しかも、16〜50メッシュの範囲に粉砕すれば芳香成分をより一層効率的に回収することができる。50メッシュを超えると芳香成分の回収率が低下する傾向が見られるようになる一方、16メッシュより細かくすると苦味が出て来る可能性がある。
【0015】
さらに、工程Aに付する緑茶葉は、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で加熱処理するのが好ましい。加熱処理することによって緑茶が本来有している香りと加熱処理によって生じる甘い香りとのバランスを良くすることができる。
加熱処理の方法としては、遠赤外線、直火などによる加熱方法を挙げることができるが、加熱手段を特に限定するものではない。
【0016】
次に、工程Bの実施形態について説明する。
本工程では、緑茶葉を常法に従って常圧抽出し、これを微細ろ過する。ここで、常法に従った常圧抽出とは、従来緑茶飲料を製造する際に行なわれていた常圧下での温水又は冷水による抽出法を広く包含する意であり、例えばニーダーと呼ばれる抽出装置で抽出を行ない、ろ過などで抽出残さを除去する方法を挙げることができる。
好ましい工程Bとしては、ニーダーを用いて緑茶葉を大気圧下で温水抽出し、茶殻を除去した後、これにビタミンCを加え、急冷後微細濾過して常圧抽出液を得る方法を例示することができる。
【0017】
なお、工程Bに付する緑茶葉は、粉砕を行なってない通常の茶葉を使用するのが好ましい。粉砕茶を使用すると、苦味成分や渋味成分が多く回収されるため、かえって香味を低減させる原因となる可能性がある。
【0018】
次に、工程Cでは、上記工程Aで得られた加圧抽出液と、上記工程Bで得られた常圧抽出液とを混合する。この際、加圧抽出液と常圧抽出液との混合割合は、原料茶葉の重量換算で5:95〜50:50、より好ましくは5:95〜25:75、さらにより好ましくは10:90〜20:80とするのが望ましい。特に10:90〜20:80の割合で混合すると、香味に優れていることはもちろん、香りと旨味のバランスがとれ、しかも不快な沈澱物の発生もない緑茶飲料を製造することができる。
ここで、原料茶葉の重量換算での混合割合とは、単なる加圧抽出液の量と常圧抽出液の量との割合ではなく、工程A及び工程Bで使用した原料茶葉の重量に換算した混合割合の意であり、これを混合基準とする考え方こそ本発明の一つの特徴をなすものである。この混合基準では、例えば、工程Aにおいて原料茶葉Xgを加圧抽出してxmlの加圧抽出液を得、工程Bにおいて原料茶葉Ygを常圧抽出してymlの常圧抽出液を得、得られた各抽出液の全てを混合する場合は、抽出液の量(x及びyの値)にかかわらずX:Yとなる。これに対し、得られた加圧抽出液の1/2と得られた常圧抽出液の全量と混合する場合は1/2X:Yとなり、加圧抽出液(xml)の1/4を混合する場合は1/4X:Yとなる。
【0019】
本発明の緑茶飲料の製造方法は、上記基準に加えて別の基準でも制御することができる。すなわち、緑茶飲料中のカテキン量(本発明でのカテキン量とは、エピカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキンガレート及びエピガロカテキンの総量を言う。)を基準として緑茶飲料の製造方法を制御することができ、混合後の最終抽出液のカテキン量が35〜45mg%(mg%:1000分の1重量%、本発明において同じ。)となるように調整するのが好ましい。カテキン量が35mg%を下回ると香味が薄くなる傾向があり、逆に50mg%を超えると条件によっては不快な沈澱物の発生が見られるようになる。
緑茶飲料中のカテキン量を調整する手段としては、工程Bにおける抽出時間や抽出温度を変化させることで行なうことができるが、これらの手段に限定されるものではない。
【0020】
ここで、本発明の最適実施形態を例示する。
工程Aにおいて、不活性ガス雰囲気下で火入れ処理した緑茶葉を16〜50メッシュに粉砕して粉砕茶とし、この粉砕茶に加水分解酵素を加えて、これらを抽出装置に投入して密閉状態0.5〜1.5kg/cm2の加圧下で30秒〜2分程度静置し、その後この加圧条件を保ちつつ60〜90℃の温水で抽出して加圧抽出液を得る。
他方、工程Bにおいて、未粉砕・未加熱処理の緑茶葉を例えばニーダーと呼ばれる抽出装置で抽出を行ない、ろ過などで抽出残さを除去した後、微細ろ過して常圧抽出液を得る。
そして、工程Cにおいて、上記工程A,Bで得られた加圧抽出液と常圧抽出液とを原料茶葉の重量換算で5:95〜25:75の割合となるように混合すればよい。
【0021】
なお、工程Cにおいて混合した抽出液は、常法によって調合、殺菌し、容器に充填すればよい。
また、工程A及び工程Bに付する原料茶の種類は特に問うものではない。すなわち原料茶の品種、産地、摘採時期、栽培方法などに限らず、どのような茶種も処理対象とすることができる。
【0022】
以下、各種試験を通じて本発明の効果について説明する。
【0023】
(試験1)
工程A:ステンレス製の密閉可能な抽出装置内に30メッシュに粉砕した緑茶葉1kgを投入し、80℃の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液aを得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、未粉砕の緑茶葉1kgを大気圧下70℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液bを得た。
工程C:液aと液bとを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算での混合割合を変化させて(10/90、20/80、30/70、40/60)混合して殺菌後液c1〜c4を得た。
また、従来法として上記の液bを殺菌して液b1を得た。
液a、b1、cのそれぞれについて、37℃で1ヶ月放置後のオリの発生状況を観察すると共に香味についての官能評価を行い、これらの結果を下記表1にまとめた。
【0024】
【表1】
Figure 0003668408
【0025】
この結果、従来法のもの(液b1)は旨味はあるが香味が薄かった。また、液aは香りがあるが旨味に乏しかった。これに対し、液cの中で液aと液bとを原料茶葉の重量換算で10:90〜20:80の割合で混同した液c1、c2は、香りと旨味のバランスがとれていたばかりか、不快な沈澱物の発生も見られなかった。
なお、上記工程Aにおいて粉砕した緑茶葉を原料とする代わりに、粉砕しない緑茶葉を原料として同様の試験を行ったところ、粉砕した緑茶葉を用いた方が香りが強く、しかもバランスもとれていた。
【0026】
(試験2)
工程A:ステンレス製の密閉可能な抽出装置内に30メッシュに粉砕した緑茶葉1kgを投入し、45〜100℃の所定温度の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、0.5〜1.5kg/cm2(大気圧+0.5〜1.5kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液d1〜d11を得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、未粉砕の緑茶葉1kgを大気圧下70℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液eを得た。
工程C:液d1〜d11と液eとを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算で20:80の割合に混合して殺菌後液f1〜f11を得た。
液f1〜f11のそれぞれについて、37℃で1ヶ月放置後のオリの発生状況を観察すると共に香味についての官能評価を行い、これらの結果を下記表2にまとめた。なお、この場合の官能評価は液eの香味と比較することで行った。
【0027】
【表2】
Figure 0003668408
【0028】
この結果、45℃では全ての圧力下で液e(従来法)よりも香味が弱かった。60℃では液eより改善され、圧力が上がるに連れて更に良好になり、70℃では0.5kg/cm2及び1.0kg/cm2の条件のものが極めて良好であり、90℃では0.5kg/cm2での条件のものが極めて良好であった。
以上の結果から、工程Aの加圧抽出条件としては、温度60〜90℃の範囲、圧力0.5〜1.5kg/cm2の範囲が好ましい条件であることが分かった。
なお、粉砕した緑茶葉を原料とする代わりに、粉砕しない緑茶葉を原料として同様の試験を行ったところ、粉砕した緑茶葉を用いた方が香りが強く、しかもバランスもとれていた。
【0029】
(試験3)
工程A:ステンレス製の密閉可能な抽出装置内に30メッシュに粉砕した緑茶葉1kgを投入し、80℃の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液gを得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、1kgの緑茶葉を大気圧下50〜85℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液h1〜h4を得た。
工程C:液gと液h1〜h4とを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算での混合割合を変化させて(0/100〜25/75)混合して殺菌後液i1〜i6を得た。
液i1〜i6のそれぞれについて、カテキン量を測定し、37℃で1ヶ月放置後のオリの発生状況を観察すると共に香味についての官能評価を行い、これらの結果の一部を下記表3にまとめた。なお、カテキン量は、抽出温度すなわち抽出する温水の温度を変化させることで変化させることができる。
【0030】
【表3】
Figure 0003668408
【0031】
この結果、カテキン量が50mg%を超えるように調整するとオリの発生が見られるようになる一方、35mg%よりも低いと香味がうすくなることが判明した。よって、オリの発生及び香味の観点からカテキン量は35〜50mg%とするのが好ましいことが明らかになった。
【0032】
(試験4)
工程A:ステンレス製の密閉可能な抽出装置内に30メッシュに粉砕した緑茶葉1kgを投入し、80℃の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液jを得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、1kgの緑茶葉を大気圧下50〜85℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液k1〜k5を得た。この際、抽出に用いる温水の温度を変化させてカテキン量を調整した。
工程C:液jと液k1〜k5とを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算での混合割合を変化させて(0:100〜45:55)混合して殺菌後液m1〜m50を得た。
液m1〜m50のそれぞれについて、滋味及び水色の評価を行い、これらの結果を下記表4にまとめた。
【0033】
【表4】
Figure 0003668408
【0034】
この結果、カテキン量を35〜45mg%とし、かつ、工程Aにより得られた抽出液(液j)と工程Bにより得られた茶抽出液(液k1〜k5)とを原料茶葉の重量換算で5:95〜25:75の割合で混合した場合が香味的に最適であることが分かった。
【0035】
(試験5)
工程A:ステンレス製の密閉可能な抽出装置内に非粉砕又は10〜60メッシュに粉砕した緑茶葉1kgを投入し、80℃の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液n1〜n9を得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、未粉砕の緑茶葉1kgを大気圧下70℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液oを得た。
工程C:液n1〜n9と液oとを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算で20:80の割合に混合して殺菌後液p1〜p9を得た。
液p1〜p9のそれぞれについて香味について官能評価を行い、これらの結果を下記表5にまとめた。
【0036】
【表5】
Figure 0003668408
【0037】
この結果、非粉砕の緑茶葉では香りが弱く、芳香成分を効率的に回収できなかった。これに対し、15メッシュ以下に粉砕した場合は、苦味があり香味的に不良であった。また、50メッシュ以上では香りが効率的に回収できなかった。
以上の結果から、15〜50メッシュに粉砕した茶葉を原料として用いるのが、芳香成分を効率的に回収できることが明らかとなった。
【0038】
(試験6)
本試験では、工程Aに付する原料茶葉に対して不活性ガス下で火入れ処理する場合の効果について検討した。
【0039】
工程A:流動ドラム式火入れ機を使い、この火入れ機のドラム内に炭酸ガスを送り込み、加熱温度85℃、ドラム回転10rpm、ドラム傾斜0.25の条件で緑茶葉を火入れ処理した。このように不活性ガス(炭酸ガス)雰囲気下火入れ処理によって得られた茶葉を30メッシュに粉砕し、この粉砕茶1kgをステンレス製の密閉可能な抽出装置内に投入し、80℃の温水を装置内に注入して抽出室内の圧力を上昇させ、1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)の圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液q1を得た。また、空気中で火入れ処理を行って得られた茶葉を、同様に加圧抽出を行って液q2を得た。
工程B:大気に開放された抽出装置を用いて、未粉砕の緑茶葉1kgを大気圧下70℃の温水100Lで4分間抽出し、茶殻を除去した後ビタミンCを加え、急冷後微細ろ過して液rを得た。
工程C:液q1又はq2と液rとを、それぞれの量を調整することにより原料茶葉の重量換算で20:80の割合に混合して殺菌後液s1及びs2を得た。
下記表6には、液s1、s2の火入れ条件を示すと共に、水色及び滋味について官能評価を行った結果を示した。
【0040】
【表6】
Figure 0003668408
【0041】
この結果、不活性ガス雰囲気下で火入れ処理を行うと、処理ドラム内の湿度が一気に上昇することによって水分が減少し、火入れ処理効果が効率的に現れることが判明した。また、官能評価においても、空気中での火入処理の方は青味が強くしかも渋味が残ったが、不活性ガス雰囲気の場合には火入れによる甘い香りと青味がバランス良く処理されていた。
【0042】
(試験7)
本試験では、工程Aにおいて、加圧抽出する際に酵素処理を併用した場合の効果、特に茶成分の効率的捕集効果について検討した。
【0043】
工程A:流動ドラム式火入れ機を使い、この火入れ機のドラム内に炭酸ガスを送り込み、加熱温度85℃、ドラム回転10rpm、ドラム傾斜0.25の条件で緑茶葉を火入れ処理した。このように不活性ガス雰囲気下火入れ処理によって得られた茶葉を30メッシュに粉砕し、この粉砕茶1kgに加水分解酵素(β-グルコシダーゼ)50mgを添加し、これらをステンレス製の密閉可能な抽出装置内に投入して抽出室内の圧力を上昇させて1.0kg/cm2(大気圧+1.0kg/cm2)とした。そして、2分間放置後、60℃の温水を装置内に注入し、当該圧力を保ちながら抽出液を排出させ、液t1を得た。また、酵素を添加しないものについても同条件で加圧抽出を行って液t2を得た。
これら液t1、t2について、定量のため内部標準物質としてのエチルデカノエートを添加し、連続水蒸気蒸留装置にて香気成分を捕集した。そして捕集後濃縮し、これをガスクロマトグラフィーで芳香成分の定量分析を行い、その結果を図1に示した。なお、定量方法としては、内部標準物質(エチルデカノエート)に対する各成分の面積比をもって行なった。
【0044】
この結果、図1に示されるように、酵素未処理では、火入れ処理により緑茶特有の爽快な香り成分(シス−3−ヘキセノール)及び緑茶の主要となる成分(リナロールやネロリドール9は減少し、火入れによる香り成分のみ残り、バランスを欠いていた。
これに対し、酵素処理では、爽快な香り成分(シス−3−ヘキセノール)と、緑茶の主要成分(リナロールやネロリドール)と、火入れ処理による甘い香り成分とがバランスよく残されていることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酵素処理の有無による捕集香気成分量の違いを示したグラフである。

Claims (9)

  1. 緑茶葉を加圧抽出して得られる加圧抽出液と、前記緑茶葉とは異なる緑茶葉を常圧抽出し、これを微細ろ過して得られる常圧抽出液とを混合することを特徴とする緑茶飲料の製造方法。
  2. 加圧抽出液と常圧抽出液とを、原料茶葉の重量換算で5:95〜25:75の割合で混合することを特徴とする請求項1に記載の緑茶飲料の製造方法。
  3. 加圧抽出する緑茶葉には、16〜50メッシュに粉砕してなる粉砕茶を用いる一方、常圧抽出する緑茶葉には未粉砕の茶葉を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑茶飲料の製造方法。
  4. 加圧抽出する緑茶葉には、不活性ガス雰囲気下で加熱処理した緑茶葉を用いる一方、常圧抽出する緑茶葉には、不活性ガス雰囲気下で加熱処理してない茶葉を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑茶飲料の製造方法。
  5. 混合後の抽出液のカテキン量が、35〜45mg%となるように調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緑茶飲料の製造方法。
  6. 加圧抽出は、密閉状態0.5〜1.5kg/cm2の加圧下で温水抽出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緑茶飲料の製造方法。
  7. 加圧抽出は、60〜90℃の温水で抽出することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の緑茶飲料の製造方法。
  8. 緑茶葉に加水分解酵素を加え、この加水分解酵素と共に緑茶葉を密閉状態加圧下で適宜時間静置し、その後抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の緑茶飲料の製造方法。
  9. 緑茶葉を加圧抽出して得られる加圧抽出液と、前記緑茶葉とは異なる緑茶葉を常圧抽出し、これを微細ろ過して得られる常圧抽出液との混合液を含有する透明容器詰用緑茶飲料。
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