JP3668369B2 - インサート成形型及びインサート成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インサート成形型及びインサート成形方法に関し、更に詳しくは、パイプ状あるいは棒状挿入体の外周部に任意形状の樹脂部材を射出成形するためのインサート成形型及びインサート成形方法に関する。本発明は、挿入体が、金型金属よりも弱い樹脂製等の材質のものである場合や、径方向の圧力によって損傷/破壊され易い構造的要因を持つ場合や、外周部表面が粗く、外径が不均一で射出成形時にバリを生じる場合等に、特に好ましく適用される。
【0002】
【従来の技術】
パイプ体あるいは棒状体の外周部に任意形状の樹脂部材を接合状態で形成する場合、これらを挿入体としてインサート成形型に挿入し、その外周部に溶融樹脂を射出成形すると言うインサート成形法が用いられることがある。
【0003】
例えば、トンネル等の掘削工事において使用される樹脂製ロックボルトは、通常は引抜き成形(FRP樹脂製)や押出し成形によって単なるリニアなパイプ状あるいは棒状に形成されるが、ナット型ジョイントを用いて長尺化するケースやパイプ型ロックボルトにおいて薬液注入ホースと螺合接続するケースに備え、ロックボルト本体の端部外周に雄ネジ部をインサート成形する場合がある。
【0004】
このようなインサート成形においては、溶融樹脂の大きな射出圧による挿入体の軸方向への位置ズレを防止するために、成形型の挿入体保持部において挿入体を強く挟持しておく必要がある。又、挿入体保持部と挿入体間の隙間への溶融樹脂浸入によるバリの形成を防止(いわゆる樹脂の噛切り)するために、挿入体保持部内周面と挿入体外周面を密接させておく必要がある。
【0005】
このため従来は、例えば図1に示すように、成形型の上型1と下型2(いずれも切断端面で図示する)との合せ面に開口した挿入体保持部3の閉型時内径d1 を、挿入体4の外径d0 より僅かに(例えば、0.05〜0.2mm程度)小さく設計し、その締代によって挿入体4の外周部を強く締付けて、挿入体4の強力な挟持と溶融樹脂の噛切りを図っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術の方法は、挿入体が鉄等の頑丈な金属製である場合には良いが、挿入体が例えば樹脂製である場合には、剛体である金型の強力な締付けに耐えられずに、損傷又は破壊を受ける恐れがある。
【0007】
更に、挿入体が径方向の圧力によって損傷/破壊され易い構造的要因を持つ場合、即ちパイプ体である場合や、ガラス長繊維束に樹脂を含浸させて引抜き成形されたFRP製のパイプ体/棒状体(FRP製ロックボルトが代表的である)である場合には、かかる不具合が一層顕著になる。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術のような不具合のないインサート成形型及びインサート成形方法を提供することを、解決すべき課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の発明)の構成は、パイプ状挿入体補強用の中ピンを含んで構成される、パイプ状挿入体の外周部に任意形状の樹脂部材を射出成形するためのインサート成形型であって、上下型の合せ面に開口した挿入体保持部に、前記挿入体の外周面に圧接される弾性変形可能な材料を用いた締付け手段を備えると共に、インサート成形型における先端側の挿入体保持部には前記中ピンの頭部に対する受座が径方向への遊びを以て形成されている、インサート成形型である。
【0010】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、パイプ状挿入体に第1発明に係る中ピンを内挿して、前記中ピンの頭部を第1発明に係る受座で受けた状態で、前記パイプ状挿入体をインサート成形型に挿入し、このパイプ状挿入体を第1発明に係る締付け手段によって締付け状態に保持しながら、前記挿入体の外周部に任意形状の樹脂部材を射出成形する、インサート成形方法である。
【0014】
【発明の作用・効果】
本発明によれば、挿入体保持部において、弾性変形可能な材料を用いた締付け手段が挿入体の外周面に圧接される。このため、その圧接力と弾性変形材料に特有の摩擦抵抗とによって、挿入体は軸方向への位置ズレに対して強力に保持され、溶融樹脂の大きな射出圧によっても位置ズレを起こさない。
【0015】
又、このような強い保持力が弾性的圧接力及び摩擦力と言う形で作用するため、剛体による締付けの場合に比較して挿入体に加わる径方向の圧力は著しく小さく、従ってその損傷や破壊が起こり難い。
【0016】
更に、締付け手段が弾性変形を伴って挿入体に圧接されるので、挿入体保持部と挿入体間の隙間は高度の液密状態に封止され、樹脂の噛切りが実質的に完全に行われる。
【0017】
更に、本発明においては、パイプ状挿入体に補強用の中ピンが内挿された状態で前記締付け手段による締付けが行われるので、径方向の圧力によって損傷/破壊され易いと言うパイプ状挿入体の構造的要因が解消され、その損傷や破壊が一層起こり難くなる。換言すれば、この場合には挿入体位置決めのための一層強力な締付けが許容される。
【0018】
又、本発明による場合には、パイプ体のインサート成形におけるパイプ孔の偏心の問題が解消される。
【0019】
即ち、図2にやや誇張して示すように、挿入体4のパイプ孔5は、特に引抜き成形法等の特定の成形法による場合には、往々にして偏心状態に形成される。このような挿入体4の先端側より図3に示す中ピン6を内挿してインサート成形を行う場合には、挿入体4の先端側は中ピン6で位置決めする場合にはパイプ孔5の中心点O2 を軸として位置決めされる一方、挿入体4の基端側は挿入体4外周形状の中心点O1 を軸として位置決めされるため、双方の固定位置に幅δのズレを生じて、挿入体4のインサート成形型内での固定的保持が困難になったり、閉型時に挿入体4が折れたりし易くなる。
【0020】
しかし、図3のように、中ピン6の頭部7に対する受座8(断面で図示する)が、幅δの変位を許す径方向への遊びを以て先端側の挿入体保持部3に形成されている場合には、中ピン6が上記の遊びを利用して幅δ分だけ径方向へ変位することができるため、上記の固定位置のズレを解消できるのである。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
〔挿入体〕
本発明において加工対象となる挿入体は、基本的にはその材質、外形及び内部構造を限定されず、例えば金属製のパイプ体あるいは棒状体(金属製ロックボルト等)の外周部に任意形状の樹脂部材(例えば、雄ネジ部材)を接合状態で形成することもできる。
【0023】
しかし、発明の効果をより有効に発現させるためには、前記従来技術のインサート成形方法によって損傷又は破壊を受ける恐れがある材質のもの(例えば、樹脂製ロックボルト)、とりわけ、径方向の圧力によって損傷/破壊され易い構造的要因を持つもの(例えば、パイプ状の樹脂製ロックボルトや、パイプ状あるいは棒状のFRP製ロックボルト)を対象とすることが好ましい。
【0024】
挿入体は必ずしもロックボルトのようにリニアで細長い外形を備えたパイプ体あるいは棒状体である必要はなく、比較的短尺形状や、屈曲部等を備えるパイプ体あるいは棒状体でも良いし、ロックボルトも含めて外周表面に任意形態の凹凸が形成されていても構わない。
【0025】
〔インサート成形型〕
インサート成形型は、開閉可能な上型と下型の合せ面に、締付け手段を備えた挿入体保持部を開口させたものであり、パイプ状挿入体を補強するための内挿用中ピンを含んで構成される場合と、そうでない場合とがある。上型及び/又は下型には、適宜に溶融樹脂の射出孔が設けられる。
【0026】
〔挿入体保持部〕
挿入体保持部は、成形型のキャビティにおける挿入体先端側と挿入体基端側に設けて挿入体を2ケ所で保持する構成が好ましいが、基端側だけに挿入体保持部が設けられた片持ち形式でも実施可能である。先端側にも挿入体保持部を設ける場合、その開口形態は成形型の外部まで開口していても良い(この場合、挿入体の先端部を成形型外部まで突出させて位置決めすることにより、挿入体の中間部外周に任意形状の樹脂部材を成形することもできる。)し、先端部が上下成形型の壁部によって閉止される盲孔状に開口していても良い。
【0027】
〔締付け手段〕
締付け手段は上記挿入体保持部に備えさせるものであって、弾性変形可能な材料を用い、かつ挿入体の外周面に圧接可能な形状及び形態で形成される。このような要求を満たす限りにおいて締付け手段の構成は限定されないが、その代表的な一例が、ゴム/エラストマー材料を挿入体の外径より僅かに(例えば、0.1〜2mm程度)小さな内径となるように、挿入体保持部内周の全周囲にわたって、かつ挿入体保持部内周の一部幅又は全幅にわたって、設けることである(実際には上型側と下型側に分割形成される)。
【0028】
本発明において、挿入体の樹脂射出圧に抗する位置決めと溶融樹脂の噛切りは上記構成の締付け手段によって行われるが、溶融樹脂の射出圧や挿入体の形状等に関して極めて厳しい条件でインサート成形がおこなわれる場合に備え、念のために、締付け効果のない溶融樹脂封止用のパッキンを適部に施したり、締付け手段付きの挿入体保持部を成形型外部にまで延長して設けても良い。
【0029】
〔中ピン〕
インサート成形型がパイプ状挿入体を補強するための内挿用中ピンを含んで構成される場合、成形後のピン抜きを考慮して、ピン本体より大径の頭部を備えた中ピンを挿入体先端側より内挿する方式が好ましく、そのための頭部用受座が上記挿入体先端側の挿入体保持部に設けられることがある。この受座は、前記「作用・効果」の項で説明した理由から、中ピンの頭部に対する径方向への一定の遊びを以て形成されることが、より好ましい。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の参考例及び実施例を図面に基づいて説明する。
【0031】
(参考例)
図4は内挿用中ピンを含まずに構成されるタイプのインサート成形型と、これによるインサート成形方法を示し、上型9と下型10からなるインサート成形型の合せ面に、基端側の挿入体保持部11と先端側の挿入体保持部12とが開口形成されている。
【0032】
双方の挿入体保持部11,12の内周面にはそれぞれ、全周囲にわたって、シリコンラバー製の締付け手段14が接着剤等を用いて内張り状に設けられている。締付け手段14は分割フランジ状の押え部材13により軸方向にサポートされている。そして先端側の挿入体保持部12においては、上記押え部材13の端面の一部が挿入体15(樹脂製ロックボルトである)に対するストッパ面となっており、かつ、図5に拡大して示すように、このストッパ面と締付け手段14の間には溶融樹脂の封止を一層完全にするためのシートパッキン16が介装されている。
【0033】
本参考例では、以上の構成により、挿入体15がその先端を上記ストッパ面に突当てた位置で、挿入体保持部11,12の締付け手段14を弾性的に圧接された状態で保持される。そして射出孔17から雄ネジ部材成形用のキャビティ18に溶融樹脂が射出されるのである。その間、締付け手段14によって挿入体15の軸方向への位置ズレが防止されると共に、締付け手段14によって(及び補完的にシートパッキン16によって)溶融樹脂の封止がなされ、バリの発生が防止される。
【0034】
(実施例)
図6は内挿用中ピンを含んで構成されるタイプのインサート成形型と、これによるインサート成形方法を示し、基端側の挿入体保持部19と先端側の挿入体保持部20との内周面にはそれぞれ、全周囲にわたって、フランジ状の押え部材13によりサポートされたシリコンラバー製の締付け手段14が内張り状に形成されている。
【0035】
そして基端側の挿入体保持部19においては、更に成形型外部に固定した分割フランジ状の保持部材21を設けると共に、その内周面の全周囲にわたって前記同様の締付け手段14を内張り状に形成することにより、挿入体保持部19と同軸同内径の挿入体保持部22を形成している。
【0036】
一方、先端側の挿入体保持部20においては、押え部材13のストッパ面の一部を掘込んで受座23が設けられ、パイプ状の挿入体24(引抜き成形されたFRP製ロックボルトである)に内挿された中ピン25の頭部26がこの受座23に径方向への一定の遊び27を以て収容されている。なお、中ピン25は、キャビティ18よりも深く内挿されることでパイプ状挿入体24の溶融樹脂射出圧に対する抵抗性を付与し、少なくとも基端側の挿入体保持部19,22による保持部分よりも深く内挿されることで締付けに対するパイプ状挿入体24の抵抗性を付与するので、後者の深さにまで内挿されることが好ましい。
【0037】
本実施例では、以上の構成により、挿入体保持部22による締付け効果が付加されて溶融樹脂の射出圧に抗する位置決め効果が一層大きくなると共に、かかる締付けの強化に対応して中ピン25による挿入体24の補強がなされるために、挿入体24の損傷や破壊は一層有効に防止される。
【0038】
本実施例において、上記以外の点は参考例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来技術に係るインサート成形型とその使用方法を示す図である。
【図2】 パイプ状挿入体の断面図である。
【図3】 中ピンと受座の関係を示す図である。
【図4】 参考例に係るインサート成形型とその使用方法を示す図であり、挿入体以外は断面又は切断端面で図示する。
【図5】 図4の要部拡大図である。
【図6】 実施例に係るインサート成形型とその使用方法を断面又は切断端面で示す図である。
【符号の説明】
9 上型
10 下型
11,12,19,20,22 挿入体保持部
14 締付け手段
23 受座
25 中ピン

Claims (2)

  1. パイプ状挿入体補強用の中ピンを含んで構成される、パイプ状挿入体の外周部に任意形状の樹脂部材を射出成形するためのインサート成形型であって、上下型の合せ面に開口した挿入体保持部に、前記挿入体の外周面に圧接される弾性変形可能な材料を用いた締付け手段を備えると共に、インサート成形型における先端側の挿入体保持部には前記中ピンの頭部に対する受座が径方向への遊びを以て形成されていることを特徴とするインサート成形型。
  2. パイプ状挿入体に請求項1に記載の中ピンを内挿して、前記中ピンの頭部を請求項1に記載の受座で受けた状態で、前記パイプ状挿入体をインサート成形型に挿入し、このパイプ状挿入体を請求項1に記載の締付け手段によって締付け状態に保持しながら、前記挿入体の外周部に任意形状の樹脂部材を射出成形することを特徴とするインサート成形方法。
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