JP3663197B2 - 光ファイバケーブルの分岐方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる光ファイバケーブルを研磨して被覆を除去して、光ファイバケーブルから光ファイバ芯線を取出して分岐する分岐方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図30は、光ファイバケーブル1を示す断面図である。図31は、従来の技術の光ファイバケーブル1の分岐方法を示す図である。基地局設備と複数の通信端末機器とを通信可能に接続して通信網が形成されている。基地局設備と通信端末機器とを接続するにあたっては、高い通信速度を得るために、光通信を可能にする光ファイバケーブル1が用いられる。
【0003】
光ファイバケーブル1は、複数本の光ファイバ芯線2が、並べられた状態で、共通の外套被膜3によって覆われ、帯状に形成される。図31では、従来の分岐方法を理解しやすくするために、外套被膜3を除去した状態で光ファイバケーブル1を示す。このような光ファイバケーブル1は、その一端部で、各光ファイバ芯線2が基地局設備に接続され、基地局設備から延ばされている。通信端末機器は、光ファイバケーブル1の中途部から一本の光ファイバ芯線2が分岐されて接続される。
【0004】
光ファイバケーブル1を分岐するにあたっては、図31(1)に示すように、光ファイバケーブル1全体を中途部で切断し、図31(2)に示すように、切断された端部において、各光ファイバ芯線2を分離する。次に、図31(3)に示すように、一本の光ファイバ芯線2を抜き出して、端末機器に接続される端末機器用光ファイバ芯線4とを接続するとともに、図31(4)に示すように、分岐した光ファイバ芯線を除く残余の各光ファイバ芯線2を、接続用はぎ芯線5を用いて再接続をしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ファイバケーブル1は、各光ファイバ芯線2を共通に覆う外套被膜3を有するので、光ファイバケーブル1を切断せずに、一本の光ファイバ芯線2だけを抜き出すことができない。したがって光ファイバケーブル1全体を一旦切断しなければならないので、現用回線である既に通信に用いられている光ファイバ芯線2が存在する場合、停波、すなわち通信停止する必要がある。
【0006】
また1本の光ファイバ芯線2を抜き出した後、残余の光ファイバ芯線2を再接続しなければならず、手間を要する。しかも各光ファイバ芯線2を分離するときに、指の爪および分離工具などで光ファイバ芯線2を引っ掛けて分離するので、各光ファイバ芯線2を損傷しているおそれがあり、この部分を切除することが好ましい。したがって各光ファイバ芯線2の切断された端部同士を接続することができず、接続用はぎ芯線5を用いなければならず、1本の光ファイバ芯線2を再接続するにあたって2ヶ所の接続が必要となる。たとえば8芯の光ファイバケーブル1の場合、再接続するにあたって4芯接続が2回、2芯接続が2回、単身接続が2回の接続作業が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、通信停止することなく、かつ分岐作業の手間を少なくすることができる光ファイバケーブルの分岐方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させ、研磨材を、光ファイバケーブルに対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す被膜除去工程と、
長手薄板状に形成されるとともに、長手方向一端部から他端部に向かうにつれて、幅寸法を小さくするように先細状に形成されるへら片を用いて、分岐すべき特定の光ファイバ芯線と、隣接する光ファイバ芯線との間に、前記へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入し、光ファイバケーブルの1箇所を固定して、前記へら片を、固定した位置から遠ざかる方向へ変位させることによって、特定の光ファイバ芯線の縁を切って分離する芯線分離工程と、
前記へら片を用いて、残余の光ファイバ芯線から分離した光ファイバ芯線をすくい、抜き出す芯線抜出工程と、
抜き出した光ファイバ芯線を切断し、切断した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続する芯線接続工程とを含むことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
本発明に従えば、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。さらに外套被膜の研磨された部分を解すことによって、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去することができる。また外套被膜を除去された光ファイバケーブルの、特定の光ファイバ芯線と、これに隣接する光ファイバ芯線との間に、へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入した状態で変位させることで、前記特定の光ファイバ芯線を分離して、分離した特定の光ファイバ芯線を抜き出すことができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套被膜を除去し、へら片を用いて、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に関連する研磨装置10を開いた状態で示す斜視図である。図2は、研磨装置10を開いた状態で示す正面図である。図3は、研磨装置10を閉じた状態で示す斜視図である。図4は、研磨装置10を閉じた状態で示す正面図である。図5は、研磨装置10をへら片11が突出された状態で示す斜視図である。研磨装置10は、被研磨物を研磨するための装置であって、一対の挟持片12a,12bを含む。
【0010】
各挟持片12a,12bは、長手状の部材であり、長手方向一端部13a,13bに被研磨物を挟持するための挟持部14a,14bをそれぞれ有し、長手方向他端部15a,15b付近で角変位軸線L12まわりに相互に角変位自在に連結される。これら各挟持片12は、図1、図2および図5に示すように、各挟持部14a,14bが相互に離間した離間位置と、図3および図4に示すように、各挟持部14a,14bが当接した当接位置とにわたって、離間位置から当接位置に向かう近接方向Aおよびその反対方向である当接位置から離間位置に向かう離反方向Bへ相対的に角変位することができる。近接方向Aは、各挟持部14a,14bが相対的に近接する方向であり、離反方向Bは、各挟持部14a,14bが相対的に離反する方向である。離間位置では、長手方向他端部15a,15bが当接している。
【0011】
図6は、図2の切断面線S6−S6から見た断面図である。各挟持片12a,12bは、挟持片本体16a,16bと、挟持片本体16a,16bと協働して研磨材17a,17bを保持する保持体18a,18bとをそれぞれ有する。このような構成によって、各挟持部14a,14bのうち、少なくともいずれか一方、本実施の形態では両方の挟持部14a,14bには、平面状の研磨面19a,19bを形成する状態に研磨材17a,17bを着脱自在にそれぞれ装着することができる。研磨材17a,17bは、可撓性を有する基材の一表面に、複数の研磨用微粒子が固着されて設けられるシート状研磨材であって、たとえば紙やすりなどによって実現することができる。
【0012】
図7は、研磨材17a,17bが装着された各挟持部14によって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に垂直な平面で切断して示す断面図である。図8は、研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に平行な平面で切断して示す断面図である。図9は、光ファイバ芯線21を示す断面図である。研磨装置10は、各挟持部14に研磨材17を装着した状態で、被研磨物、たとえば図7および図8に示すような光ファイバケーブル20を、各挟持部14a,14bによって挟持することができる。各挟持部14によって挟持した状態で、各研磨材17の研磨面19を、光ファイバケーブル20に面接触させることができる。
【0013】
光ファイバ芯線21は、コア21aがクラッド21bに覆われ、さらに被膜21cに覆われ、またさらに着色層21dに覆われて形成される。この着色層21dは、光ファイバケーブル20に設けられる複数の光ファイバ芯線21から特定の光ファイバ芯線21を視覚的に判別することができるようにするための層であって、光ファイバケーブル20には、各着色層21dの色の異なる光ファイバ芯線21が設けられる。
【0014】
このような複数本の光ファイバ芯線21が、並べられた状態で、共通の外套被膜22,23によって覆われ、帯状の光ファイバケーブル20が形成される。本実施の形態では、光ファイバケーブル20は、8本の光ファイバ芯線21を有する8芯のケーブルであって、4本ずつにグループ分けされ、各グループ毎に、4本の光ファイバ芯線21が並べられた状態で第1外套被膜22によって覆われ、これら全体を第2外套被膜23によって覆って、帯状に構成される。本実施の形態では、研磨装置10は、このような光ファイバケーブル21を、その厚み方向両側から挟持部14によって挟持し、研磨装置10を光ファイバケーブル21に対して変位して、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル21に摺動させ、各外套被膜22,23を厚み方向両側から研磨して除去するために用いられる。
【0015】
このような光ファイバケーブル21の被膜除去に用いる場合、たとえばアルミナ質研削材から成り、粒径がたとえば75μm以上125μm以下程度の研磨用微粒子を有する研磨材17が好適に用いられる。このような材質および粒径の研磨用微粒子を有する研磨材17を用いれば、数回の研磨で外套被膜22,23に適度な傷がつき、外套被膜のみを剥離させやすくなる。
【0016】
図10は、研磨装置10を分解して示す斜視図である。図11は、研磨装置10を分解して示す正面図である。図12は、研磨装置10を分解して示す側面図である。図13は、一方の挟持片本体16aを示す正面図である。図14は、一方の挟持片本体16aを示す正面図である。図15は、図14の切断面線S15−S15を示す断面図である。図16は、一方の保持体18aを示す正面図である。図17は、一方の保持体18aを示す底面図である。図18は、一方の保持体18aを示す側面図である。図19は、へら片11を示す正面図である。図20は、へら片11を示す平面図である。図21は、図20の切断面線S20−S20から見た断面図である。図22は、研磨装置10を閉じた状態で、各挟持部14a,14b付近の一部を示す正面図である。図10〜図12には、理解を容易にするために、一部の部品を省略して示す。図1〜図6を併せて参照して、研磨装置10は、一対の挟持片本体16a,16bと、一対の保持体18a,18bと、軸部材25と、ばね部材26と、へら片11とが組み立てられて構成される。各挟持片本体16a,16bは、同様の構成であり、各保持体18a,18bは、同様の構成である。
【0017】
各挟持片本体16a,16bは、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、大略的に長尺長方形板状の基部30と、基部30における幅方向一側部から厚み方向一方に突出する壁部31とを有する。基部30は、その長手方向一端部における厚み方向他方側の表面部に保持体嵌合凹所32が形成され、この長手方向一端部が残余の部分に比べて薄肉に形成されている。さらにこの薄肉に形成される長手方向一端部には、厚み方向に貫通し、内ねじが刻設される保持体固定ねじ孔35が形成されている。
【0018】
壁部31は、基部30の長手方向両端部間の中間部であって、長手方向他端部寄りの部分において突出している。この壁部31は、その幅寸法W31が、基部30の幅寸法W30の約1/2(W30=2×W31)である。また壁部31には、基部30の幅方向に貫通する軸孔33が形成されるとともに、幅方向他方側の表面部に幅方向他方に開放するばね嵌合凹所34が形成されている。これら壁部31の幅方向他方側の端部の端面36は、軸孔33の軸線に垂直な平面に形成され、軸孔33の軸線をほぼ全周にわたって取囲み、かつ軸孔33の軸線に関して基部30の長手方向両側にわたって配置される。
【0019】
各保持体18a,18bは、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、大略的に長方形板状の基部37と、基部37における幅方向両側部から厚み方向一方に突出する2つの係止突部38とを有する。また基部37には、厚み方向に貫通する保持体ねじ係止孔39が形成される。
【0020】
各保持体18a,18bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部に、厚み方向他方側から着脱自在に装着される。具体的には、各保持体18a,18bは、各係止突部38を挟持片本体側に配置して、保持体嵌合凹所32に嵌合される。保持体ねじ係止孔39に、外ねじが刻設される保持体固定ねじ部材40を厚み方向他方側挿通し、その保持体固定ねじ部材40を、頭部が各保持体18a,18bに係止される状態で保持体固定ねじ孔35を利用して、各挟持片本体16a,16bに螺着し、各保持体18a,18bが、各挟持片本体16a,16bに固定される。この状態で各係止突部38が、各挟持片本体16a,16bの幅方向両側部に係止され、各保持体18a,18bの各挟持片本体16a,16bに対する保持体固定ねじ部材40まわりの角変位が阻止される。また保持体嵌合凹所32を形成することによって、各挟持片12a,12bの厚みを小さくし、狭隘な空間で作業を容易にすることができる。
【0021】
このように各挟持片本体16a,16bに各保持体18a,18bが装着されて、各挟持片12a,12bが構成される。各挟持部14a,14bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部によって構成される。各研磨材17a,17bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における厚み方向一方側に、研磨用微粒子が設けられる研磨面と反対側の面を各挟持片本体16a,16bに対向させて支持させて配置され、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における幅方向両端部に巻き掛けるようにして、厚み方向他方側に折返され、その折り返される両端部が、各挟持片本体16a,16bと各保持体18a,18bとによって挟持されて、各挟持部14a,14bに保持される。
【0022】
各挟持部14a,14bとなる各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における厚み方向一方側の表面、したがって各研磨材17a,17bを支持する面は、各軸孔33の軸線と平行な平面に形成され、これによって保持される各研磨材17a,17bの研磨面19a,19bは、各軸孔33の軸線と平行な平面となる。このように保持される各研磨材17a,17bは、両端部が挟持されることによって確りと保持され、しかも各保持体18a,18bが、各係止突起38によって、各挟持片本体16a,16bに対して角変位阻止されているので、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル20に対して摺動させても、各研磨材17a,17bが不所望にずれてしまうことが防がれる。
【0023】
各挟持片12a,12bは、各挟持片本体16a,16bの厚み方向一方側表面部が相互に対向するように、さらに長手方向一端部同士が対向し、かつ長手方向他端部同士が対向するように配置される。このように配置された状態で、軸部材25が、その軸線を、各挟持片本体16a,16bの各軸孔33の軸線と一致させて、各軸孔33に共通に挿通されて設けられ、この軸部材25によって、各挟持片12a,12bが、軸部材25の軸線と一致する角変位軸線L12まわりに角変位自在に連結される。
【0024】
軸部材25は、円筒状の部材であって、内ねじが刻設されるとともに、軸線方向一端部には外向きフランジ部42が形成されている。この軸部材25には、外ねじが刻設される軸止めねじ部材44が螺着され、軸部材25の外向きフランジ部42と、軸止めねじ部材44の頭部とによって、各挟持片本体16a,16bの壁部31を一緒に挟持している。これによって軸部材25が抜止めされるとともに、壁部31における幅方向他方側の端部の端面36同士を当接させ、各挟持片12a,12bが相対的に角変位するときに、各端面36に案内させて、各挟持片12a,12bの不所望な変位を防止して、各挟持片12a,12bが、角変位軸線L12まわりに円滑に角変位するようにできる。
【0025】
ばね部材26は、各挟持片12a,12bに、離反方向Bの押圧力、具体的には、ばね力を発生させる押圧力発生手段であって、ねじりコイルばねによって実現される。このばね部材26は、各挟持片本体16a,16bのばね嵌合凹所34に嵌まり込み、軸部材25が挿通した状態で設けられる。この状態で、両端部が各挟持片12a,12bの挟持片本体16a,16bに弾発的に当接され、各挟持片12a,12bに、離反方向Bのばね力が与えられる。
【0026】
研磨装置10は、操作者によって操作力が与えられていない状態では、ばね部材26のばね力によって、各挟持片12a,12bが離間位置にある開いた状態にある。この開いた状態から、ばね力よりも大きな操作力を与えて、各挟持片12a,12bを近接方向Aへ角変位させることによって、各挟持片12a,12bが当接位置にある閉じた状態にすることができる。この閉じた状態から、操作力を解除すると、ばね部材26のばね力によって、各挟持片12a,12bが離反方向Bへ角変位され、開いた状態になる。ここで当接位置は、各研磨材17a,17bが装着されていない状態では、各挟持部14a,14b同士が直接当接する位置であり、各研磨材17a,17bが装着されている状態では、各研磨材17a,17bが当接する位置であり、両者ともほぼ同様の位置であるので、両者とも当接位置という。
【0027】
研磨装置10は、光ファイバケーブル20を分岐する作業の一環として、上述のように光ファイバケーブル20を研磨して、外套被膜22,23を除去するために用いられる装置であって、光ファイバケーブル20を分岐する作業において、特定の光ファイバ芯線21を抜き出して分離するために用いることができるように、へら片11を備える。したがって本実施の形態の研磨装置10は、単なる研磨装置ではなく、光ファイバ分離装置として機能する。
【0028】
へら片11は、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、長手薄板状に形成される。このへら片11は、長手方向一端部47に、厚み方向に貫通する取付孔48が形成され、長手方向他端部49は、長手方向一端部から他端部に向かうにつれて、幅寸法を小さくするように先細状に形成され、略3角形状である。また周縁部は、全周にわたって、外方に向かうにつれて、厚みを小さくするように傾斜して形成されるとともに、丸みを有する非先鋭形状に形成される。
【0029】
このへら片11は、取付孔48に軸部材25が挿通されて、取付孔48の軸線を角変位軸線L12と一致させて、各挟持片12a,12bとともに、長手方向一端部で挟持されて、各挟持片本体16a,16bに沿った状態で保持される。この状態でへら片11は、各挟持片12a,12bに対して、角変位軸線L12まわりに角変位自在であり、図1〜図4に示すような、各挟持片12a,12bに挟まれる角度範囲にある収納位置に配置される収納状態と、図2に仮想線で示すとともに図5に示すような、各挟持片12a,12bに挟まれる角度範囲を除く、各挟持片12a,12bの外側にある突出位置に配置される突出状態との両方の状態に、角変位させて状態変更することができる。
【0030】
各保持体18a,18bの幅寸法W18は、各挟持片本体16a,16bの幅寸法W16(=W30)よりも大きく、各保持体18a,18bは、各挟持片本体16a,16bから幅方向両側に突出している。またへら片11は、取付孔48の軸線から長手方向他端部の先端までの距離W11が、各挟持片12a,12bにおける各軸孔33の軸線から各保持体18a,18bまでの距離W12よりも大きい。これによって、へら片11は、各挟持片本体16a,16bに沿った状態では、長手方向他端部49が各保持体18a,18bに係止されて、収納状態から突出状態への角変位による状態変化および突出状態から収納状態への角変位による状態変化が阻止される。へら片11は、操作者がへら片11を長手方向他端部49が各挟持片本体16a,16bから離反するように弾性変形させることによって、長手方向他端部49の各保持体18a,18bによる係止を回避して、収納状態と突出状態とにわたって状態を変更することができる。
【0031】
上述の研磨装置10によれば、各研磨材17a,17bを装着して、各挟持片12a,12bに、近接させる方向に操作力を与えて、平面状の研磨面19a,19bを被研磨物である光ファイバケーブル20に面接触させて、光ファイバケーブル20を厚み方向両側から挟持することができる。研磨装置10では、図22に示すように、各研磨材17a,17bを装着せずに、各挟持片12a,12bを当接位置に配置すると、長手方向一端部の先端部分だけが当接して、各挟持部14a,14b間にテーパ状の隙間50が形成される。このような構成であるので、光ファイバケーブル20を挟持した状態で、各研磨材17a,17bの研磨面19a,19bを、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面に面接触させることができる。
【0032】
この状態で、研磨装置10を光ファイバケーブル20に対して変位させることによって、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル20に摺動させて、光ファイバケーブル20を研磨することができる。このとき、各研磨材17a,17bは、光ファイバケーブル20に面接触され、しかも研磨材17a,17bと光ファイバケーブル20との接触面圧力を均一にすることができ、光ファイバケーブル20を均一に研磨することができる。このようにして、光ファイバケーブル20の各外套被膜22,23を、均一に研磨して除去することができる。したがって各光ファイバ芯線21を損傷することなく、各光ファイバ芯線21が露出するように、光ファイバケーブル20の各外套被膜22,23を除去することができる。
【0033】
また研磨材17a,17bは、着脱自在であるので、研磨材17a,17bが摩耗した場合には、研磨材17a,17bだけを交換して、研磨装置10自体は繰返し利用することができ、無駄を少なくすることができる。また各挟持片12a,12bを同一の構成とし、1つの金型で、一対の挟持片12a,12bを製造することができ、製造を容易にし、製造コストを低減することができる。またへら片11を各挟持片12a,12bと一緒に保持することによって、運搬性および保管性に優れ、作業性を高くすることができる。
【0034】
また各挟持片12a,12bおよびへら片11が合成樹脂から成るので、研磨装置10を軽量に構成することができるとともに、光ファイバ芯線21の損傷を防止することができる。またへら片11は、周縁部が非先鋭形状であるので、これによっても光ファイバ芯線21の損傷を防止することができる。
【0035】
図23は、本発明の実施の一形態の光ファイバケーブル20の分岐方法を示すフローチャートである。図24は、光ファイバケーブル20の分岐方法を示す図である。図25は、光ファイバケーブル20の分岐方法を拡大して示す図である。光ファイバケーブル20の分岐方法は、上述の研磨装置10を用いて実行され、たとえば通信網を形成するために、基地局設備と複数の通信端末機器とを、高い通信速度で通信できるように光通信可能に接続する光ファイバケーブル20を分岐する方法である。
【0036】
この光ファイバケーブル20は、その一端部で、各光ファイバ芯線21が基地局設備に接続され、基地局設備から延ばされている。たとえば一般家屋、ビルなどに設けられる通信端末機器は、光ファイバケーブル21の中途部から一本の光ファイバ芯線21が分岐されて、これに接続される。たとえばこのように、光ファイバケーブル20から、一本の光ファイバ芯線21を分岐して、別途に設けられる接続対象となる他の光ファイバ芯線とを接続するために、本発明の分岐方法が好適に実施される。この分岐方法は、被膜除去工程と、芯線分離工程と、芯線抜出工程と、芯線接続工程とを含む。
【0037】
分岐方法に従う分岐作業では、ステップs1の研磨材接触段階で、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させる。具体的には、上述の研磨装置10の各挟持部14a,14bに、図6に示すように、各挟持片本体16a,16bと各保持体18a,18bとによって挟んで、各研磨材17a,17bを保持し、平面状の研磨面19a,19bを形成し、図24(1)および図25(1)に示すように、研磨装置10を操作者が操作して、各挟持部14a,14bによって、厚み方向両側から挟持する。このようにして、図7および図8に示すように、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面に、各研磨面19a,19bを、略等分布荷重を与えて面接触させる。
【0038】
次にステップs2の研磨工程では、研磨材を、光ファイバケーブル20に対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去する。具体的には、上述のように各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟んだ状態で、図24(2)および図25(2)に示すように、光ファイバケーブル20を直線状に延ばした状態で、研磨装置10を光ファイバケーブル20に対して、その延在方向、すなわち長手方向へ相対的に変位させ、各研磨材17a,17bを、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面部に摺動させ、研磨操作いわゆるやすりがけ操作する。
【0039】
このとき、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手で研磨装置10を操作するなどして、研磨装置10を、固定した位置から遠ざかる方向Cだけへ変位させる。一方向Cだけへ変位させるように研磨操作することによって、外套被膜22,23を好適に除去することができる。詳しく述べると、両方向へ往復変位させると、固定位置に近づけるように研磨装置10を変位させるときに、図26に示すように光ファイバケーブル20を湾曲させてしまうおそれがある。このように光ファイバケーブル20を湾曲させてしまうと、光信号を伝播する各光ファイバ芯線21が、光信号の伝播が不可能な状態に湾曲してしまい、通信に影響を与えてしまう。また最悪の場合には、各光ファイバ芯線21にマイクロベンドなどを発生させて、損傷してしまうおそれもある。したがって固定位置から遠ざかる方向Cだけへ研磨操作することが好ましい。
【0040】
またこのような研磨操作は、各光ファイバ芯線21がばらけてしまうまで、外套被膜22,23を完全に除去するのではなく、外套被膜22,23の厚みおよび研磨材17a,17bの特性に応じて適宜決定される回数だけ実行する。このようにして、各光ファイバ芯線21が研磨材17a,17bによって研磨されて、着色層21cが除去されるなど、損傷してしまうことを防ぐことができる。この研磨操作の回数の目安の一例は、たとえば外套被膜22,23が透光性を有する場合、外套被膜22,23が白濁する程度の回数である。
【0041】
次に、ステップs3のケーブル解段階では、図24(3)および図25(3)に示すように、ファイバケーブル20における研磨装置10を用いて研磨された研磨部分を、作業者が指先でつかむなどして解し、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去する。この解し操作は、光ファイバケーブル20を幅方向両側から圧縮するように挟持し、この挟持位置を光ファイバケーブル20の延在方向Dへ滑らかに変位させる。このようにして、光ファイバケーブル20に、ねじれおよび湾曲を生じさせないようにして解す。この解し作業においても、図27に示すように光ファイバケーブル20を湾曲させたり、ねじれを生じさせると、ステップs2で関連して述べた不具合と同様の不具合、たとえば通信障害および損傷を生じるおそれがある。したがって上述のように光ファイバケーブル20に、ねじれおよび湾曲を生じさせないようにして解すことによって、通信障害および損傷を防止することができ好適である。これらステップs1〜s3を含んで被膜除去工程が構成される。
【0042】
次に、ステップs4の芯線分離段階で、分岐すべき特定の光ファイバ芯線21を隣接する光ファイバ芯線21との縁を切って分離する。具体的には、図24(4)および図25(4)に示すように、特定の光ファイバ芯線21とこれに隣接する光ファイバ芯線21との間に、研磨装置10のへら片11を、他端部の先細状先端部を刺し入れて挿入する。そして、図24(5)および図25(5)に示すように、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手でへら片11を操作するなどして、へら片11を、固定した位置から遠ざかる方向Eへ変位させる。このようにして特定の光ファイバ芯線21を分離する。このステップs4を含んで芯線分離工程が構成される。
【0043】
次に、ステップs5の芯線抜出段階で、残余の光ファイバ芯線21から分離した光ファイバ芯線21をすくい、抜き出す。具体的には、図24(6)および図25(6)に示すように、特定の光ファイバ芯線21だけがへら片11の厚み方向一方側に配置され、残余の光ファイバ芯線21がへら片11の厚み方向他方側に配置されるように、へら片11を刺し入れて挿入する。そして、図24(7)および図25(7)に示すように、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手でへら片11を操作するなどして、へら片11を、固定した位置から遠ざかる方向Fへ変位させる。このようにして特定の光ファイバ芯線21を抜き出す。このステップs5を含んで芯線抜出工程が構成される。
【0044】
次にステップs6の芯線切断段階で、図25(8)に示すように、抜き出した特定の光ファイバ芯線21だけを、ニッパなどの切断手段60を用いて、接続作業に必要とされる接続余長を考慮して切断する。次にステップs7の分離進展防止段階で、図24(8)および図25(9)に示すように、分離した特定の光ファイバ芯線21の残余の光ファイバ芯線21との縁が切れる境目付近である付け根部を、接着剤61などを用いて接着、いわゆる玉止めをする。このようにして、光ファイバ芯線21の分離進展を防止する。
【0045】
次にステップs8の接続段階で、図25(10)に示すように、分離されかつ切断された特定の光ファイバ芯線21の一方側の部分、ここでは基地局設備に連なる部分と、接続対象の光ファイバ芯線65、ここでは通信端末機器に連なる光ファイバ芯線65とを、光的に接続する。この光ファイバ芯線同士の接続は、たとえば図28に示す融着装置66を用いて、融着接続する。この接続部には、図29に示すような補強スリーブ67を設けてもよい。この融着接続以外の接続方法で接続してもよい。これらステップs6〜s8を含んで芯線接続工程が構成される。この光ファイバ芯線の接続をして、分岐方法に従う分岐作業が終了する。
【0046】
本実施の形態の分岐方法によれば、まず被膜除去において、研磨材17a,17bが、光ファイバケーブル20に面接触され、しかも研磨材17a,17bと光ファイバケーブル20との接触面圧力が均一に保持され、光ファイバケーブル20の外套被膜22,23を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線21を損傷することなく、各光ファイバ芯線21を露出せることができるように、光ファイバケーブル20の外套被膜22,23を除去することができる。
【0047】
またこのようにして各光ファイバ芯線21を損傷することなく、光ファイバケーブル20の外套視膜22,23を除去し、特定の光ファイバ芯線21を残余の光ファイバ芯線21から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線21と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線65とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル20全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線21だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線21以外の残余の光ファイバ芯線21を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0048】
上述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば光ファイバケーブル20は、通信網を形成するためのケーブルに限定されることはなく、他のケーブルであってもよい。また光ファイバケーブルは、8芯に限定されることはなく、4芯など、光ファイバ芯線の数が、2〜7および9本以上のケーブルであってもよい。また光ファイバケーブル以外の被研磨物を研磨するために、研磨装置を用いてもよい。また研磨装置の材質、形状、寸法などは、適宜変更してもよい。
【0049】
また研磨装置は、研磨材を着脱自在に保持する構成に限定されず、挟持部に一体に研磨材が設けられる構成であってもよい。つまり、研磨装置は、挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を有する研磨材が設けられ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる構成であってもよい。この装置は、研磨材が着脱自在であることによる効果を除いて、上述の研磨装置10と同様の効果を達成することができる。
【0050】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を形成する状態に研磨材を着脱自在に装着することができ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができることを特徴とする研磨装置。
【0051】
挟持部を有する一対の挟持片の少なくともいずれか一方の挟持部に、研磨材を装着して平面状の研磨面を形成し、この研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる。このように被研磨物を挟持した状態で、研磨装置を被研磨物に対して変位させることによって、研磨材を被研磨物に摺動させて、被研磨物を研磨することができる。研磨材は、被研磨物に面接触され、しかも研磨材と被研磨物との接触面圧力を均一にすることができ、被研磨物を均一に研磨することができる。このような研磨装置は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去するために、好適に用いることが可能である。また研磨材は、着脱自在であるので、被研磨物を研磨することによって、研磨材が摩耗した場合には、研磨材だけを交換して、研磨装置自体は繰返し利用することができ、無駄を少なくすることができる。
【0052】
(2)挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を有する研磨材が設けられ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができることを特徴とする研磨装置。
【0053】
挟持部を有する一対の挟持片の少なくともいずれか一方の挟持部に、研磨材を装着して平面状の研磨面を形成し、この研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる。このように被研磨物を挟持した状態で、研磨装置を被研磨物に対して変位させることによって、研磨材を被研磨物に摺動させて、被研磨物を研磨することができる。研磨材は、被研磨物に面接触され、しかも研磨材と被研磨物との接触面圧力を均一にすることができ、被研磨物を均一に研磨することができる。このような研磨装置は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去するために、好適に用いることが可能である。
【0054】
(3)複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバーケーブルを、その厚み方向両側から挟持部によって挟持し、外套被膜を研磨して除去するために用いられることを特徴とする研磨装置。
【0055】
複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去することができる。研磨装置は、被研磨物である光ファイバケーブルの外套被膜を、均一に研磨して除去することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。
【0056】
(4)複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバーケーブルの外套被膜を除去する被膜除去方法であって、
研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバーケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させ、
研磨材を、光ファイバケーブルに対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去することを特徴とする光ファイバケーブルの被膜除去方法。
【0057】
研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバーケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去する。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。
【0058】
(5)前記光ファイバケーブルの被膜除去方法によって、外套被膜を除去し、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出し、抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0059】
各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套視膜を除去し、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がいないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0060】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。さらに外套被膜の研磨された部分を解すことによって、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去することができる。また外套被膜を除去された光ファイバケーブルの、特定の光ファイバ芯線と、これに隣接する光ファイバ芯線との間に、へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入した状態で変位させることで、前記特定の光ファイバ芯線を分離して、分離した特定の光ファイバ芯線を抜き出すことができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套被膜を除去し、へら片を用いて、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関連する研磨装置10を開いた状態で示す斜視図である。
【図2】研磨装置10を開いた状態で示す正面図である。
【図3】研磨装置10を閉じた状態で示す斜視図である。
【図4】研磨装置10を閉じた状態で示す正面図である。
【図5】研磨装置10をへら片11が突出された状態で示す斜視図である。
【図6】図2の切断面線S6−S6から見た断面図である。
【図7】研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に垂直な平面で切断して示す断面図である。
【図8】研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に平行な平面で切断して示す断面図である。
【図9】光ファイバ芯線21を示す断面図である。
【図10】研磨装置10を分解して示す斜視図である。
【図11】研磨装置10を分解して示す正面図である。
【図12】研磨装置10を分解して示す側面図である。
【図13】一方の挟持片本体16aを示す正面図である。
【図14】一方の挟持片本体16aを示す正面図である。
【図15】図14の切断面線S15−S15を示す断面図である。
【図16】一方の保持体18aを示す正面図である。
【図17】一方の保持体18aを示す底面図である。
【図18】一方の保持体18aを示す側面図である。
【図19】へら片11を示す正面図である。
【図20】へら片11を示す平面図である。
【図21】図20の切断面線S20−S20から見た断面図である。
【図22】研磨装置10を閉じた状態で、各挟持部14a,14b付近の一部を示す正面図である。
【図23】本発明の実施の一形態の光ファイバケーブル20の分岐方法を示すフローチャートである。
【図24】光ファイバケーブル20の分岐方法を示す図である。
【図25】光ファイバケーブル20の分岐方法を拡大して示す図である。
【図26】好適な研磨作業を説明するための斜視図である。
【図27】好適な解し作業を説明するための斜視図である。
【図28】接続装置66を示す斜視図である。
【図29】補強スリーブ67を示す斜視図である。
【図30】光ファイバケーブル1を示す断面図である。
【図31】従来の技術の光ファイバケーブル1の分岐方法を示す図である。
【符号の説明】
11 へら片
17a,17b 研磨材
19a,19b 研磨面
20 光ファイバケーブル
21,65 光ファイバ芯線
22,23 外套被膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる光ファイバケーブルを研磨して被覆を除去して、光ファイバケーブルから光ファイバ芯線を取出して分岐する分岐方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図30は、光ファイバケーブル1を示す断面図である。図31は、従来の技術の光ファイバケーブル1の分岐方法を示す図である。基地局設備と複数の通信端末機器とを通信可能に接続して通信網が形成されている。基地局設備と通信端末機器とを接続するにあたっては、高い通信速度を得るために、光通信を可能にする光ファイバケーブル1が用いられる。
【0003】
光ファイバケーブル1は、複数本の光ファイバ芯線2が、並べられた状態で、共通の外套被膜3によって覆われ、帯状に形成される。図31では、従来の分岐方法を理解しやすくするために、外套被膜3を除去した状態で光ファイバケーブル1を示す。このような光ファイバケーブル1は、その一端部で、各光ファイバ芯線2が基地局設備に接続され、基地局設備から延ばされている。通信端末機器は、光ファイバケーブル1の中途部から一本の光ファイバ芯線2が分岐されて接続される。
【0004】
光ファイバケーブル1を分岐するにあたっては、図31(1)に示すように、光ファイバケーブル1全体を中途部で切断し、図31(2)に示すように、切断された端部において、各光ファイバ芯線2を分離する。次に、図31(3)に示すように、一本の光ファイバ芯線2を抜き出して、端末機器に接続される端末機器用光ファイバ芯線4とを接続するとともに、図31(4)に示すように、分岐した光ファイバ芯線を除く残余の各光ファイバ芯線2を、接続用はぎ芯線5を用いて再接続をしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光ファイバケーブル1は、各光ファイバ芯線2を共通に覆う外套被膜3を有するので、光ファイバケーブル1を切断せずに、一本の光ファイバ芯線2だけを抜き出すことができない。したがって光ファイバケーブル1全体を一旦切断しなければならないので、現用回線である既に通信に用いられている光ファイバ芯線2が存在する場合、停波、すなわち通信停止する必要がある。
【0006】
また1本の光ファイバ芯線2を抜き出した後、残余の光ファイバ芯線2を再接続しなければならず、手間を要する。しかも各光ファイバ芯線2を分離するときに、指の爪および分離工具などで光ファイバ芯線2を引っ掛けて分離するので、各光ファイバ芯線2を損傷しているおそれがあり、この部分を切除することが好ましい。したがって各光ファイバ芯線2の切断された端部同士を接続することができず、接続用はぎ芯線5を用いなければならず、1本の光ファイバ芯線2を再接続するにあたって2ヶ所の接続が必要となる。たとえば8芯の光ファイバケーブル1の場合、再接続するにあたって4芯接続が2回、2芯接続が2回、単身接続が2回の接続作業が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、通信停止することなく、かつ分岐作業の手間を少なくすることができる光ファイバケーブルの分岐方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させ、研磨材を、光ファイバケーブルに対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す被膜除去工程と、
長手薄板状に形成されるとともに、長手方向一端部から他端部に向かうにつれて、幅寸法を小さくするように先細状に形成されるへら片を用いて、分岐すべき特定の光ファイバ芯線と、隣接する光ファイバ芯線との間に、前記へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入し、光ファイバケーブルの1箇所を固定して、前記へら片を、固定した位置から遠ざかる方向へ変位させることによって、特定の光ファイバ芯線の縁を切って分離する芯線分離工程と、
前記へら片を用いて、残余の光ファイバ芯線から分離した光ファイバ芯線をすくい、抜き出す芯線抜出工程と、
抜き出した光ファイバ芯線を切断し、切断した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続する芯線接続工程とを含むことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
本発明に従えば、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。さらに外套被膜の研磨された部分を解すことによって、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去することができる。また外套被膜を除去された光ファイバケーブルの、特定の光ファイバ芯線と、これに隣接する光ファイバ芯線との間に、へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入した状態で変位させることで、前記特定の光ファイバ芯線を分離して、分離した特定の光ファイバ芯線を抜き出すことができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套被膜を除去し、へら片を用いて、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に関連する研磨装置10を開いた状態で示す斜視図である。図2は、研磨装置10を開いた状態で示す正面図である。図3は、研磨装置10を閉じた状態で示す斜視図である。図4は、研磨装置10を閉じた状態で示す正面図である。図5は、研磨装置10をへら片11が突出された状態で示す斜視図である。研磨装置10は、被研磨物を研磨するための装置であって、一対の挟持片12a,12bを含む。
【0010】
各挟持片12a,12bは、長手状の部材であり、長手方向一端部13a,13bに被研磨物を挟持するための挟持部14a,14bをそれぞれ有し、長手方向他端部15a,15b付近で角変位軸線L12まわりに相互に角変位自在に連結される。これら各挟持片12は、図1、図2および図5に示すように、各挟持部14a,14bが相互に離間した離間位置と、図3および図4に示すように、各挟持部14a,14bが当接した当接位置とにわたって、離間位置から当接位置に向かう近接方向Aおよびその反対方向である当接位置から離間位置に向かう離反方向Bへ相対的に角変位することができる。近接方向Aは、各挟持部14a,14bが相対的に近接する方向であり、離反方向Bは、各挟持部14a,14bが相対的に離反する方向である。離間位置では、長手方向他端部15a,15bが当接している。
【0011】
図6は、図2の切断面線S6−S6から見た断面図である。各挟持片12a,12bは、挟持片本体16a,16bと、挟持片本体16a,16bと協働して研磨材17a,17bを保持する保持体18a,18bとをそれぞれ有する。このような構成によって、各挟持部14a,14bのうち、少なくともいずれか一方、本実施の形態では両方の挟持部14a,14bには、平面状の研磨面19a,19bを形成する状態に研磨材17a,17bを着脱自在にそれぞれ装着することができる。研磨材17a,17bは、可撓性を有する基材の一表面に、複数の研磨用微粒子が固着されて設けられるシート状研磨材であって、たとえば紙やすりなどによって実現することができる。
【0012】
図7は、研磨材17a,17bが装着された各挟持部14によって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に垂直な平面で切断して示す断面図である。図8は、研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に平行な平面で切断して示す断面図である。図9は、光ファイバ芯線21を示す断面図である。研磨装置10は、各挟持部14に研磨材17を装着した状態で、被研磨物、たとえば図7および図8に示すような光ファイバケーブル20を、各挟持部14a,14bによって挟持することができる。各挟持部14によって挟持した状態で、各研磨材17の研磨面19を、光ファイバケーブル20に面接触させることができる。
【0013】
光ファイバ芯線21は、コア21aがクラッド21bに覆われ、さらに被膜21cに覆われ、またさらに着色層21dに覆われて形成される。この着色層21dは、光ファイバケーブル20に設けられる複数の光ファイバ芯線21から特定の光ファイバ芯線21を視覚的に判別することができるようにするための層であって、光ファイバケーブル20には、各着色層21dの色の異なる光ファイバ芯線21が設けられる。
【0014】
このような複数本の光ファイバ芯線21が、並べられた状態で、共通の外套被膜22,23によって覆われ、帯状の光ファイバケーブル20が形成される。本実施の形態では、光ファイバケーブル20は、8本の光ファイバ芯線21を有する8芯のケーブルであって、4本ずつにグループ分けされ、各グループ毎に、4本の光ファイバ芯線21が並べられた状態で第1外套被膜22によって覆われ、これら全体を第2外套被膜23によって覆って、帯状に構成される。本実施の形態では、研磨装置10は、このような光ファイバケーブル21を、その厚み方向両側から挟持部14によって挟持し、研磨装置10を光ファイバケーブル21に対して変位して、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル21に摺動させ、各外套被膜22,23を厚み方向両側から研磨して除去するために用いられる。
【0015】
このような光ファイバケーブル21の被膜除去に用いる場合、たとえばアルミナ質研削材から成り、粒径がたとえば75μm以上125μm以下程度の研磨用微粒子を有する研磨材17が好適に用いられる。このような材質および粒径の研磨用微粒子を有する研磨材17を用いれば、数回の研磨で外套被膜22,23に適度な傷がつき、外套被膜のみを剥離させやすくなる。
【0016】
図10は、研磨装置10を分解して示す斜視図である。図11は、研磨装置10を分解して示す正面図である。図12は、研磨装置10を分解して示す側面図である。図13は、一方の挟持片本体16aを示す正面図である。図14は、一方の挟持片本体16aを示す正面図である。図15は、図14の切断面線S15−S15を示す断面図である。図16は、一方の保持体18aを示す正面図である。図17は、一方の保持体18aを示す底面図である。図18は、一方の保持体18aを示す側面図である。図19は、へら片11を示す正面図である。図20は、へら片11を示す平面図である。図21は、図20の切断面線S20−S20から見た断面図である。図22は、研磨装置10を閉じた状態で、各挟持部14a,14b付近の一部を示す正面図である。図10〜図12には、理解を容易にするために、一部の部品を省略して示す。図1〜図6を併せて参照して、研磨装置10は、一対の挟持片本体16a,16bと、一対の保持体18a,18bと、軸部材25と、ばね部材26と、へら片11とが組み立てられて構成される。各挟持片本体16a,16bは、同様の構成であり、各保持体18a,18bは、同様の構成である。
【0017】
各挟持片本体16a,16bは、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、大略的に長尺長方形板状の基部30と、基部30における幅方向一側部から厚み方向一方に突出する壁部31とを有する。基部30は、その長手方向一端部における厚み方向他方側の表面部に保持体嵌合凹所32が形成され、この長手方向一端部が残余の部分に比べて薄肉に形成されている。さらにこの薄肉に形成される長手方向一端部には、厚み方向に貫通し、内ねじが刻設される保持体固定ねじ孔35が形成されている。
【0018】
壁部31は、基部30の長手方向両端部間の中間部であって、長手方向他端部寄りの部分において突出している。この壁部31は、その幅寸法W31が、基部30の幅寸法W30の約1/2(W30=2×W31)である。また壁部31には、基部30の幅方向に貫通する軸孔33が形成されるとともに、幅方向他方側の表面部に幅方向他方に開放するばね嵌合凹所34が形成されている。これら壁部31の幅方向他方側の端部の端面36は、軸孔33の軸線に垂直な平面に形成され、軸孔33の軸線をほぼ全周にわたって取囲み、かつ軸孔33の軸線に関して基部30の長手方向両側にわたって配置される。
【0019】
各保持体18a,18bは、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、大略的に長方形板状の基部37と、基部37における幅方向両側部から厚み方向一方に突出する2つの係止突部38とを有する。また基部37には、厚み方向に貫通する保持体ねじ係止孔39が形成される。
【0020】
各保持体18a,18bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部に、厚み方向他方側から着脱自在に装着される。具体的には、各保持体18a,18bは、各係止突部38を挟持片本体側に配置して、保持体嵌合凹所32に嵌合される。保持体ねじ係止孔39に、外ねじが刻設される保持体固定ねじ部材40を厚み方向他方側挿通し、その保持体固定ねじ部材40を、頭部が各保持体18a,18bに係止される状態で保持体固定ねじ孔35を利用して、各挟持片本体16a,16bに螺着し、各保持体18a,18bが、各挟持片本体16a,16bに固定される。この状態で各係止突部38が、各挟持片本体16a,16bの幅方向両側部に係止され、各保持体18a,18bの各挟持片本体16a,16bに対する保持体固定ねじ部材40まわりの角変位が阻止される。また保持体嵌合凹所32を形成することによって、各挟持片12a,12bの厚みを小さくし、狭隘な空間で作業を容易にすることができる。
【0021】
このように各挟持片本体16a,16bに各保持体18a,18bが装着されて、各挟持片12a,12bが構成される。各挟持部14a,14bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部によって構成される。各研磨材17a,17bは、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における厚み方向一方側に、研磨用微粒子が設けられる研磨面と反対側の面を各挟持片本体16a,16bに対向させて支持させて配置され、各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における幅方向両端部に巻き掛けるようにして、厚み方向他方側に折返され、その折り返される両端部が、各挟持片本体16a,16bと各保持体18a,18bとによって挟持されて、各挟持部14a,14bに保持される。
【0022】
各挟持部14a,14bとなる各挟持片本体16a,16bの長手方向一端部における厚み方向一方側の表面、したがって各研磨材17a,17bを支持する面は、各軸孔33の軸線と平行な平面に形成され、これによって保持される各研磨材17a,17bの研磨面19a,19bは、各軸孔33の軸線と平行な平面となる。このように保持される各研磨材17a,17bは、両端部が挟持されることによって確りと保持され、しかも各保持体18a,18bが、各係止突起38によって、各挟持片本体16a,16bに対して角変位阻止されているので、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル20に対して摺動させても、各研磨材17a,17bが不所望にずれてしまうことが防がれる。
【0023】
各挟持片12a,12bは、各挟持片本体16a,16bの厚み方向一方側表面部が相互に対向するように、さらに長手方向一端部同士が対向し、かつ長手方向他端部同士が対向するように配置される。このように配置された状態で、軸部材25が、その軸線を、各挟持片本体16a,16bの各軸孔33の軸線と一致させて、各軸孔33に共通に挿通されて設けられ、この軸部材25によって、各挟持片12a,12bが、軸部材25の軸線と一致する角変位軸線L12まわりに角変位自在に連結される。
【0024】
軸部材25は、円筒状の部材であって、内ねじが刻設されるとともに、軸線方向一端部には外向きフランジ部42が形成されている。この軸部材25には、外ねじが刻設される軸止めねじ部材44が螺着され、軸部材25の外向きフランジ部42と、軸止めねじ部材44の頭部とによって、各挟持片本体16a,16bの壁部31を一緒に挟持している。これによって軸部材25が抜止めされるとともに、壁部31における幅方向他方側の端部の端面36同士を当接させ、各挟持片12a,12bが相対的に角変位するときに、各端面36に案内させて、各挟持片12a,12bの不所望な変位を防止して、各挟持片12a,12bが、角変位軸線L12まわりに円滑に角変位するようにできる。
【0025】
ばね部材26は、各挟持片12a,12bに、離反方向Bの押圧力、具体的には、ばね力を発生させる押圧力発生手段であって、ねじりコイルばねによって実現される。このばね部材26は、各挟持片本体16a,16bのばね嵌合凹所34に嵌まり込み、軸部材25が挿通した状態で設けられる。この状態で、両端部が各挟持片12a,12bの挟持片本体16a,16bに弾発的に当接され、各挟持片12a,12bに、離反方向Bのばね力が与えられる。
【0026】
研磨装置10は、操作者によって操作力が与えられていない状態では、ばね部材26のばね力によって、各挟持片12a,12bが離間位置にある開いた状態にある。この開いた状態から、ばね力よりも大きな操作力を与えて、各挟持片12a,12bを近接方向Aへ角変位させることによって、各挟持片12a,12bが当接位置にある閉じた状態にすることができる。この閉じた状態から、操作力を解除すると、ばね部材26のばね力によって、各挟持片12a,12bが離反方向Bへ角変位され、開いた状態になる。ここで当接位置は、各研磨材17a,17bが装着されていない状態では、各挟持部14a,14b同士が直接当接する位置であり、各研磨材17a,17bが装着されている状態では、各研磨材17a,17bが当接する位置であり、両者ともほぼ同様の位置であるので、両者とも当接位置という。
【0027】
研磨装置10は、光ファイバケーブル20を分岐する作業の一環として、上述のように光ファイバケーブル20を研磨して、外套被膜22,23を除去するために用いられる装置であって、光ファイバケーブル20を分岐する作業において、特定の光ファイバ芯線21を抜き出して分離するために用いることができるように、へら片11を備える。したがって本実施の形態の研磨装置10は、単なる研磨装置ではなく、光ファイバ分離装置として機能する。
【0028】
へら片11は、たとえばポリアセタールなどの合成樹脂から成り、長手薄板状に形成される。このへら片11は、長手方向一端部47に、厚み方向に貫通する取付孔48が形成され、長手方向他端部49は、長手方向一端部から他端部に向かうにつれて、幅寸法を小さくするように先細状に形成され、略3角形状である。また周縁部は、全周にわたって、外方に向かうにつれて、厚みを小さくするように傾斜して形成されるとともに、丸みを有する非先鋭形状に形成される。
【0029】
このへら片11は、取付孔48に軸部材25が挿通されて、取付孔48の軸線を角変位軸線L12と一致させて、各挟持片12a,12bとともに、長手方向一端部で挟持されて、各挟持片本体16a,16bに沿った状態で保持される。この状態でへら片11は、各挟持片12a,12bに対して、角変位軸線L12まわりに角変位自在であり、図1〜図4に示すような、各挟持片12a,12bに挟まれる角度範囲にある収納位置に配置される収納状態と、図2に仮想線で示すとともに図5に示すような、各挟持片12a,12bに挟まれる角度範囲を除く、各挟持片12a,12bの外側にある突出位置に配置される突出状態との両方の状態に、角変位させて状態変更することができる。
【0030】
各保持体18a,18bの幅寸法W18は、各挟持片本体16a,16bの幅寸法W16(=W30)よりも大きく、各保持体18a,18bは、各挟持片本体16a,16bから幅方向両側に突出している。またへら片11は、取付孔48の軸線から長手方向他端部の先端までの距離W11が、各挟持片12a,12bにおける各軸孔33の軸線から各保持体18a,18bまでの距離W12よりも大きい。これによって、へら片11は、各挟持片本体16a,16bに沿った状態では、長手方向他端部49が各保持体18a,18bに係止されて、収納状態から突出状態への角変位による状態変化および突出状態から収納状態への角変位による状態変化が阻止される。へら片11は、操作者がへら片11を長手方向他端部49が各挟持片本体16a,16bから離反するように弾性変形させることによって、長手方向他端部49の各保持体18a,18bによる係止を回避して、収納状態と突出状態とにわたって状態を変更することができる。
【0031】
上述の研磨装置10によれば、各研磨材17a,17bを装着して、各挟持片12a,12bに、近接させる方向に操作力を与えて、平面状の研磨面19a,19bを被研磨物である光ファイバケーブル20に面接触させて、光ファイバケーブル20を厚み方向両側から挟持することができる。研磨装置10では、図22に示すように、各研磨材17a,17bを装着せずに、各挟持片12a,12bを当接位置に配置すると、長手方向一端部の先端部分だけが当接して、各挟持部14a,14b間にテーパ状の隙間50が形成される。このような構成であるので、光ファイバケーブル20を挟持した状態で、各研磨材17a,17bの研磨面19a,19bを、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面に面接触させることができる。
【0032】
この状態で、研磨装置10を光ファイバケーブル20に対して変位させることによって、各研磨材17a,17bを光ファイバケーブル20に摺動させて、光ファイバケーブル20を研磨することができる。このとき、各研磨材17a,17bは、光ファイバケーブル20に面接触され、しかも研磨材17a,17bと光ファイバケーブル20との接触面圧力を均一にすることができ、光ファイバケーブル20を均一に研磨することができる。このようにして、光ファイバケーブル20の各外套被膜22,23を、均一に研磨して除去することができる。したがって各光ファイバ芯線21を損傷することなく、各光ファイバ芯線21が露出するように、光ファイバケーブル20の各外套被膜22,23を除去することができる。
【0033】
また研磨材17a,17bは、着脱自在であるので、研磨材17a,17bが摩耗した場合には、研磨材17a,17bだけを交換して、研磨装置10自体は繰返し利用することができ、無駄を少なくすることができる。また各挟持片12a,12bを同一の構成とし、1つの金型で、一対の挟持片12a,12bを製造することができ、製造を容易にし、製造コストを低減することができる。またへら片11を各挟持片12a,12bと一緒に保持することによって、運搬性および保管性に優れ、作業性を高くすることができる。
【0034】
また各挟持片12a,12bおよびへら片11が合成樹脂から成るので、研磨装置10を軽量に構成することができるとともに、光ファイバ芯線21の損傷を防止することができる。またへら片11は、周縁部が非先鋭形状であるので、これによっても光ファイバ芯線21の損傷を防止することができる。
【0035】
図23は、本発明の実施の一形態の光ファイバケーブル20の分岐方法を示すフローチャートである。図24は、光ファイバケーブル20の分岐方法を示す図である。図25は、光ファイバケーブル20の分岐方法を拡大して示す図である。光ファイバケーブル20の分岐方法は、上述の研磨装置10を用いて実行され、たとえば通信網を形成するために、基地局設備と複数の通信端末機器とを、高い通信速度で通信できるように光通信可能に接続する光ファイバケーブル20を分岐する方法である。
【0036】
この光ファイバケーブル20は、その一端部で、各光ファイバ芯線21が基地局設備に接続され、基地局設備から延ばされている。たとえば一般家屋、ビルなどに設けられる通信端末機器は、光ファイバケーブル21の中途部から一本の光ファイバ芯線21が分岐されて、これに接続される。たとえばこのように、光ファイバケーブル20から、一本の光ファイバ芯線21を分岐して、別途に設けられる接続対象となる他の光ファイバ芯線とを接続するために、本発明の分岐方法が好適に実施される。この分岐方法は、被膜除去工程と、芯線分離工程と、芯線抜出工程と、芯線接続工程とを含む。
【0037】
分岐方法に従う分岐作業では、ステップs1の研磨材接触段階で、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させる。具体的には、上述の研磨装置10の各挟持部14a,14bに、図6に示すように、各挟持片本体16a,16bと各保持体18a,18bとによって挟んで、各研磨材17a,17bを保持し、平面状の研磨面19a,19bを形成し、図24(1)および図25(1)に示すように、研磨装置10を操作者が操作して、各挟持部14a,14bによって、厚み方向両側から挟持する。このようにして、図7および図8に示すように、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面に、各研磨面19a,19bを、略等分布荷重を与えて面接触させる。
【0038】
次にステップs2の研磨工程では、研磨材を、光ファイバケーブル20に対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去する。具体的には、上述のように各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟んだ状態で、図24(2)および図25(2)に示すように、光ファイバケーブル20を直線状に延ばした状態で、研磨装置10を光ファイバケーブル20に対して、その延在方向、すなわち長手方向へ相対的に変位させ、各研磨材17a,17bを、光ファイバケーブル20の厚み方向両側の表面部に摺動させ、研磨操作いわゆるやすりがけ操作する。
【0039】
このとき、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手で研磨装置10を操作するなどして、研磨装置10を、固定した位置から遠ざかる方向Cだけへ変位させる。一方向Cだけへ変位させるように研磨操作することによって、外套被膜22,23を好適に除去することができる。詳しく述べると、両方向へ往復変位させると、固定位置に近づけるように研磨装置10を変位させるときに、図26に示すように光ファイバケーブル20を湾曲させてしまうおそれがある。このように光ファイバケーブル20を湾曲させてしまうと、光信号を伝播する各光ファイバ芯線21が、光信号の伝播が不可能な状態に湾曲してしまい、通信に影響を与えてしまう。また最悪の場合には、各光ファイバ芯線21にマイクロベンドなどを発生させて、損傷してしまうおそれもある。したがって固定位置から遠ざかる方向Cだけへ研磨操作することが好ましい。
【0040】
またこのような研磨操作は、各光ファイバ芯線21がばらけてしまうまで、外套被膜22,23を完全に除去するのではなく、外套被膜22,23の厚みおよび研磨材17a,17bの特性に応じて適宜決定される回数だけ実行する。このようにして、各光ファイバ芯線21が研磨材17a,17bによって研磨されて、着色層21cが除去されるなど、損傷してしまうことを防ぐことができる。この研磨操作の回数の目安の一例は、たとえば外套被膜22,23が透光性を有する場合、外套被膜22,23が白濁する程度の回数である。
【0041】
次に、ステップs3のケーブル解段階では、図24(3)および図25(3)に示すように、ファイバケーブル20における研磨装置10を用いて研磨された研磨部分を、作業者が指先でつかむなどして解し、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去する。この解し操作は、光ファイバケーブル20を幅方向両側から圧縮するように挟持し、この挟持位置を光ファイバケーブル20の延在方向Dへ滑らかに変位させる。このようにして、光ファイバケーブル20に、ねじれおよび湾曲を生じさせないようにして解す。この解し作業においても、図27に示すように光ファイバケーブル20を湾曲させたり、ねじれを生じさせると、ステップs2で関連して述べた不具合と同様の不具合、たとえば通信障害および損傷を生じるおそれがある。したがって上述のように光ファイバケーブル20に、ねじれおよび湾曲を生じさせないようにして解すことによって、通信障害および損傷を防止することができ好適である。これらステップs1〜s3を含んで被膜除去工程が構成される。
【0042】
次に、ステップs4の芯線分離段階で、分岐すべき特定の光ファイバ芯線21を隣接する光ファイバ芯線21との縁を切って分離する。具体的には、図24(4)および図25(4)に示すように、特定の光ファイバ芯線21とこれに隣接する光ファイバ芯線21との間に、研磨装置10のへら片11を、他端部の先細状先端部を刺し入れて挿入する。そして、図24(5)および図25(5)に示すように、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手でへら片11を操作するなどして、へら片11を、固定した位置から遠ざかる方向Eへ変位させる。このようにして特定の光ファイバ芯線21を分離する。このステップs4を含んで芯線分離工程が構成される。
【0043】
次に、ステップs5の芯線抜出段階で、残余の光ファイバ芯線21から分離した光ファイバ芯線21をすくい、抜き出す。具体的には、図24(6)および図25(6)に示すように、特定の光ファイバ芯線21だけがへら片11の厚み方向一方側に配置され、残余の光ファイバ芯線21がへら片11の厚み方向他方側に配置されるように、へら片11を刺し入れて挿入する。そして、図24(7)および図25(7)に示すように、たとえば一方の手で光ファイバケーブル20を挟持するなどして、1ヶ所を固定し、他方の手でへら片11を操作するなどして、へら片11を、固定した位置から遠ざかる方向Fへ変位させる。このようにして特定の光ファイバ芯線21を抜き出す。このステップs5を含んで芯線抜出工程が構成される。
【0044】
次にステップs6の芯線切断段階で、図25(8)に示すように、抜き出した特定の光ファイバ芯線21だけを、ニッパなどの切断手段60を用いて、接続作業に必要とされる接続余長を考慮して切断する。次にステップs7の分離進展防止段階で、図24(8)および図25(9)に示すように、分離した特定の光ファイバ芯線21の残余の光ファイバ芯線21との縁が切れる境目付近である付け根部を、接着剤61などを用いて接着、いわゆる玉止めをする。このようにして、光ファイバ芯線21の分離進展を防止する。
【0045】
次にステップs8の接続段階で、図25(10)に示すように、分離されかつ切断された特定の光ファイバ芯線21の一方側の部分、ここでは基地局設備に連なる部分と、接続対象の光ファイバ芯線65、ここでは通信端末機器に連なる光ファイバ芯線65とを、光的に接続する。この光ファイバ芯線同士の接続は、たとえば図28に示す融着装置66を用いて、融着接続する。この接続部には、図29に示すような補強スリーブ67を設けてもよい。この融着接続以外の接続方法で接続してもよい。これらステップs6〜s8を含んで芯線接続工程が構成される。この光ファイバ芯線の接続をして、分岐方法に従う分岐作業が終了する。
【0046】
本実施の形態の分岐方法によれば、まず被膜除去において、研磨材17a,17bが、光ファイバケーブル20に面接触され、しかも研磨材17a,17bと光ファイバケーブル20との接触面圧力が均一に保持され、光ファイバケーブル20の外套被膜22,23を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線21を損傷することなく、各光ファイバ芯線21を露出せることができるように、光ファイバケーブル20の外套被膜22,23を除去することができる。
【0047】
またこのようにして各光ファイバ芯線21を損傷することなく、光ファイバケーブル20の外套視膜22,23を除去し、特定の光ファイバ芯線21を残余の光ファイバ芯線21から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線21と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線65とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル20全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線21だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線21以外の残余の光ファイバ芯線21を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0048】
上述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば光ファイバケーブル20は、通信網を形成するためのケーブルに限定されることはなく、他のケーブルであってもよい。また光ファイバケーブルは、8芯に限定されることはなく、4芯など、光ファイバ芯線の数が、2〜7および9本以上のケーブルであってもよい。また光ファイバケーブル以外の被研磨物を研磨するために、研磨装置を用いてもよい。また研磨装置の材質、形状、寸法などは、適宜変更してもよい。
【0049】
また研磨装置は、研磨材を着脱自在に保持する構成に限定されず、挟持部に一体に研磨材が設けられる構成であってもよい。つまり、研磨装置は、挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を有する研磨材が設けられ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる構成であってもよい。この装置は、研磨材が着脱自在であることによる効果を除いて、上述の研磨装置10と同様の効果を達成することができる。
【0050】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を形成する状態に研磨材を着脱自在に装着することができ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができることを特徴とする研磨装置。
【0051】
挟持部を有する一対の挟持片の少なくともいずれか一方の挟持部に、研磨材を装着して平面状の研磨面を形成し、この研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる。このように被研磨物を挟持した状態で、研磨装置を被研磨物に対して変位させることによって、研磨材を被研磨物に摺動させて、被研磨物を研磨することができる。研磨材は、被研磨物に面接触され、しかも研磨材と被研磨物との接触面圧力を均一にすることができ、被研磨物を均一に研磨することができる。このような研磨装置は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去するために、好適に用いることが可能である。また研磨材は、着脱自在であるので、被研磨物を研磨することによって、研磨材が摩耗した場合には、研磨材だけを交換して、研磨装置自体は繰返し利用することができ、無駄を少なくすることができる。
【0052】
(2)挟持部をそれぞれ有し、挟持部が近接および離反する方向に相対的に変位自在に設けられる一対の挟持片であって、少なくともいずれか一方の挟持部には、平面状の研磨面を有する研磨材が設けられ、研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができることを特徴とする研磨装置。
【0053】
挟持部を有する一対の挟持片の少なくともいずれか一方の挟持部に、研磨材を装着して平面状の研磨面を形成し、この研磨面を被研磨物に面接触させて、被研磨物を挟持することができる。このように被研磨物を挟持した状態で、研磨装置を被研磨物に対して変位させることによって、研磨材を被研磨物に摺動させて、被研磨物を研磨することができる。研磨材は、被研磨物に面接触され、しかも研磨材と被研磨物との接触面圧力を均一にすることができ、被研磨物を均一に研磨することができる。このような研磨装置は、複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去するために、好適に用いることが可能である。
【0054】
(3)複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバーケーブルを、その厚み方向両側から挟持部によって挟持し、外套被膜を研磨して除去するために用いられることを特徴とする研磨装置。
【0055】
複数本の光ファイバ芯線が共通の外套被膜によって覆われる帯状の光ファイバーケーブルを研磨し、外套被膜を除去することができる。研磨装置は、被研磨物である光ファイバケーブルの外套被膜を、均一に研磨して除去することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。
【0056】
(4)複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバーケーブルの外套被膜を除去する被膜除去方法であって、
研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバーケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させ、
研磨材を、光ファイバケーブルに対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去することを特徴とする光ファイバケーブルの被膜除去方法。
【0057】
研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバーケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去する。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。
【0058】
(5)前記光ファイバケーブルの被膜除去方法によって、外套被膜を除去し、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出し、抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0059】
各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套視膜を除去し、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がいないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【0060】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、研磨材によって平面状の研磨面を形成し、光ファイバケーブル一表面に、略等分布荷重を与えて研磨面を面接触させ、研磨材を変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す。研磨材は、光ファイバケーブルに面接触し、しかも研磨材と光ファイバケーブルとの接触面圧力が均一となり、光ファイバケーブルの外套被膜を均一に研磨することができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、各光ファイバ芯線が露出するように、光ファイバケーブルの外套被膜を除去することができる。さらに外套被膜の研磨された部分を解すことによって、薄く残しておいた外套被膜を完全に除去することができる。また外套被膜を除去された光ファイバケーブルの、特定の光ファイバ芯線と、これに隣接する光ファイバ芯線との間に、へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入した状態で変位させることで、前記特定の光ファイバ芯線を分離して、分離した特定の光ファイバ芯線を抜き出すことができる。したがって各光ファイバ芯線を損傷することなく、光ファイバケーブルの外套被膜を除去し、へら片を用いて、特定の光ファイバ芯線を残余の光ファイバ芯線から分離して抜き出すことができる。この抜き出した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続して分岐することができる。このようにして、光ファイバケーブル全体を切断することなく、特定の光ファイバ芯線だけを抜き出して分岐することができる。したがって通信停止する必要がなく、また特定の光ファイバ芯線以外の残余の光ファイバ芯線を切断する必要がないのでその再接続が不要であり、分岐作業の手間を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関連する研磨装置10を開いた状態で示す斜視図である。
【図2】研磨装置10を開いた状態で示す正面図である。
【図3】研磨装置10を閉じた状態で示す斜視図である。
【図4】研磨装置10を閉じた状態で示す正面図である。
【図5】研磨装置10をへら片11が突出された状態で示す斜視図である。
【図6】図2の切断面線S6−S6から見た断面図である。
【図7】研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に垂直な平面で切断して示す断面図である。
【図8】研磨材17a,17bが装着された各挟持部14a,14bによって光ファイバケーブル20を挟持した状態を、光ファイバケーブル20の長手方向に平行な平面で切断して示す断面図である。
【図9】光ファイバ芯線21を示す断面図である。
【図10】研磨装置10を分解して示す斜視図である。
【図11】研磨装置10を分解して示す正面図である。
【図12】研磨装置10を分解して示す側面図である。
【図13】一方の挟持片本体16aを示す正面図である。
【図14】一方の挟持片本体16aを示す正面図である。
【図15】図14の切断面線S15−S15を示す断面図である。
【図16】一方の保持体18aを示す正面図である。
【図17】一方の保持体18aを示す底面図である。
【図18】一方の保持体18aを示す側面図である。
【図19】へら片11を示す正面図である。
【図20】へら片11を示す平面図である。
【図21】図20の切断面線S20−S20から見た断面図である。
【図22】研磨装置10を閉じた状態で、各挟持部14a,14b付近の一部を示す正面図である。
【図23】本発明の実施の一形態の光ファイバケーブル20の分岐方法を示すフローチャートである。
【図24】光ファイバケーブル20の分岐方法を示す図である。
【図25】光ファイバケーブル20の分岐方法を拡大して示す図である。
【図26】好適な研磨作業を説明するための斜視図である。
【図27】好適な解し作業を説明するための斜視図である。
【図28】接続装置66を示す斜視図である。
【図29】補強スリーブ67を示す斜視図である。
【図30】光ファイバケーブル1を示す断面図である。
【図31】従来の技術の光ファイバケーブル1の分岐方法を示す図である。
【符号の説明】
11 へら片
17a,17b 研磨材
19a,19b 研磨面
20 光ファイバケーブル
21,65 光ファイバ芯線
22,23 外套被膜
Claims (1)
- 研磨材によって平面状の研磨面を形成し、複数本の光ファイバ芯線が、並べられた状態で、共通の外套被膜によって覆われ、帯状に形成される光ファイバケーブルの一表面に、研磨面を、略等分布荷重を与えて面接触させ、研磨材を、光ファイバケーブルに対して研磨面に平行に変位させて、光ファイバケーブルの外套被膜を研磨して除去し、外套被膜の研磨された部分を解す被膜除去工程と、
長手薄板状に形成されるとともに、長手方向一端部から他端部に向かうにつれて、幅寸法を小さくするように先細状に形成されるへら片を用いて、分岐すべき特定の光ファイバ芯線と、隣接する光ファイバ芯線との間に、前記へら片の先細状先端部を刺し入れて挿入し、光ファイバケーブルの1箇所を固定して、前記へら片を、固定した位置から遠ざかる方向へ変位させることによって、特定の光ファイバ芯線の縁を切って分離する芯線分離工程と、
前記へら片を用いて、残余の光ファイバ芯線から分離した光ファイバ芯線をすくい、抜き出す芯線抜出工程と、
抜き出した光ファイバ芯線を切断し、切断した光ファイバ芯線と、別途に設けられる他の光ファイバ芯線とを光的に接続する芯線接続工程とを含むことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
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