JP3663124B2 - 包装食品用保存袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は食品の変質や腐敗を防止して、包装された食品を長期に亘り保存することのできる包装食品用保存袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンビニエンスストアの普及に代表されるような生活様式の変化から、魚肉や生うどん、惣菜等の生鮮食品が店頭に置かれる等、包装食品の多様化が進行している。これに伴って包装された食品の保存方法も多様化してきている。
このような包装食品の保存方法として、包装容器内に食品の腐敗を防止するためのガスを封入したり、包装容器内の酸素を除去するための脱酸素剤を配置したりする等の方法が行われている。
また、特開昭62−143673号公報(以下イ号公報という)には、酵母の発酵に必要な栄養源と生きた酵母からなる組成物を担体に保持させ、この保持担体を食品が収納された容器や袋などの収納体に該食品と直接接触することを避けて配置し、封止される包装食品を保存する方法が開示されている。
特開昭57−8735号公報(以下ロ号公報という)には、炭水化物を含んだ水を収納した袋と、乾燥した酵母を含んだ担持体と、脱臭剤を含み前記袋及び担持体を収納した断熱性袋と、炭酸ガス透過性を有し前記断熱性袋を収納した袋よりなる炭酸ガス供給装置が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
(1)包装容器内にガスを予め充満させておく方法は、包装容器が必ずしもガス密封性ではない場合や、出荷時や流通時の破損した場合にガスが漏出して食品の保存効果が失われるという問題点があった。
(2)脱酸素剤を包装容器に配置する方法は、脱酸素剤が食品としては使用できない材料を用いるので、万一、食品に混入した場合にこれを口に入れる危険性があり安全性に欠けるという問題点があった。
(3)前記イ号公報の場合では、酵母による栄養源の発酵が室温下で進行するので、店頭等に包装食品を配置する時に酵母を保持させた保持担体を包装容器内に収納するか、あるいは冷蔵庫内に予め包装容器ごと保管しておく必要があった。このため必要な時期に発酵させるために、酵母の保持担体の管理に手間と時間を要するという問題点があった。
(4)酵母の発酵時には特有の臭気を発生するので、食品本来の香りが損なわれる場合があるという問題点があった。
(5)前記ロ号公報の場合には、酵母の栄養源となる炭水化物が予め吸水した状態で袋に保持されているので、この炭水化物が長期の間にゲル化するために、袋内の液体が酵母を保持する担持体に十分ゆきわたらず、二酸化炭素ガスの発生が妨げられるという問題があった。
(6)また、炭水化物を含んだ水を保持する袋と酵母を含んだ担持体が、断熱性袋内に収納されているので、濡れた断熱性袋が外側の炭酸ガス透過性の袋に密着してしまい炭酸ガスの外部への放出が阻害され、炭素ガスによる食品等の保存効果を有効に発揮させることができないという問題があった。
【0004】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、食品の安全性や香り等を損なうことなく食品を保存することができ、必要なタイミングで発酵を開始させて食品の管理及び保存を容易に行うことのできる包装食品用保存袋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目標を達成するために本発明は以下の構成を有している。
請求項1に記載の包装食品用保存袋は、酵母又は酵母とその栄養源粉状物を含む乾燥粉体と、乾燥状態の水吸収体と、非透水性被膜の内部に水又は栄養液を含む液体成分を保持した水袋体と、前記乾燥粉体、前記水吸収体及び前記水袋体をそれぞれ収納したガス透過性被膜で形成された容器体と、前記水袋体の前記非透水性被膜の一部に形成され若しくは被覆された導電性部分、又は前記非透水性被膜の面に形成された半切断状態の切れ目、若しくは溝状の切欠きと、を備え、前記水吸収体がデンプン又は吸水性高分子である構成を有している。
これによって以下の作用が得られる。
(a)容器体を外部から押圧する等の手段で水袋体を必要なタイミングで、例えば、包装食品用保存袋が入れられた食品容器や袋等を店頭に並べる時期に破ることができる。これにより水袋体内の水等の液体成分が容器体内の水吸収体等に供給され、酵母が湿潤状態となった水吸収体を担持体として栄養源の発酵を開始して、アルコールや二酸化炭素のガスを発生させることができる。こうして、酵母による発酵時期を所定の時期に定めて食品の保存管理を的確かつ容易に行うことができる。
(b)包装食品用保存袋には食品の安全性を損なうような、有害成分が含まれていないので、包装される食品を安全に保存することができる。
(c)水分を吸収した水吸収体の内部の多孔性組織が温床となって栄養源粉状物を含む水溶液が発酵されるので、気体−液体界面の面積を増加させ、エチルアルコールや二酸化炭素等の発酵ガスを効率的に発生させることができる。
(d)包装食品用保存袋において、発酵を開始させる前は、水分が分離した状態で置かれているので、酵母や栄養源粉状物が変質することが少なく、冷蔵保存しない室温下でもこの包装食品用保存袋を長期に亘って保管することができる。
(e)水吸収体がデンプンで構成されている場合には、例え包装食品用保存袋が破損しても、包装される食品に不要な成分が混入するのを防ぐことができる。
(f)デンプンを素材とする場合は、水との親和性が特によく、しかも水を吸収しても適度の硬さと、強度を有して、形崩れすることなく酵母の発酵培地を安定に形成させることができる。これによって、発酵により生成した所定量ガスを持続的に食品に供給して、食品の変質を防止することができる。
(g)水吸収体として吸水性高分子を用いた場合には、特に水に対する吸収性や保水性に優れており、しかも形崩れすることない良好な培地を形成させることができる。
(h)水袋体の非透水性被膜の一部に導電性部分を形成させたりすることで、マイクロ波を照射して加熱したりして、容器体のガス透過性被膜を破断することなく水袋体の被膜の一部を破壊して密封状態にある水を必要な時期に水袋体の外部に放出させることができる。
(i)非透水性被膜の面に半切断状態の切れ目若しくは溝状の切欠きを形成することで、水袋体を押圧した時に破れ易くなるようにでき、外部から圧力を加えた時に水袋体がこの部分を起点にして破断し、内部の液体成分を栄養源粉状物や水吸収体に向けて放出させることができる。
【0006】
酵母は炭水化物を発酵させることのできる単細胞の菌類であり、自然界にひろく存在し、土壌および植物の表面に発生する。
酵母(yeast)は真核微生物のうち、単細胞で形がほぼ球形のものの総称であるり、アルコール発酵や各種醸造で用いられるSaccharomyces属酵母、S.crevisiae(パン製造、清酒醸造、上面発酵ビール醸造、ぶどう酒醸造)、S.cerevisiae(S.uvarum、下面発酵ビール醸造)や、Zygosaccharomyces rouxii(しょうゆ醸造)、Schizosaccharomyces pombe、Pichia属、Hansenula属、Kluyveromyces属(乳製品にみられ、乳糖よりアルコールを生成する)などが含まれる。
また、無胞子酵母に属するものとして、Candida属(C.utilis、C.maltosaは飼料酵母、C.utilisのRNAは呈味性ヌクレオチドの原料)、Torulopsis属(しょうゆの後熟酵母を含む)、栄養細胞から突出した小柄上に射出胞子をつくるSporobolomyces属などがある。
さらに醸造用酵母では、上面発酵酵母(top yeast)、下面発酵酵母(bottom yeast)といういい方がされ、上面の場合は、発酵液(もろみ)中や発酵泡に酵母が分散しているもので、清酒酵母、英国型ビール酵母(ともにSaccharomyces cerevisiae)などがこれにあたる。下面の場合は、酵母がもろみの底に沈んでいてアルコール発酵するもので、ぶどう酒酵母、ピルゼンタイプのビール酵母(S.uvarum)がその例である。このほかに、シェリー酵母(S.bayanus)やみその表面に生じるPichia属酵母がある。
パン酵母としてもっともひろく培養されているのはサッカロミケス属で、醸造菌として知られているのはそのうちの一種である。製品としての酵母は、砂糖、窒素源、ミネラル、水を培地として培養されて製品化され、最終的には、ドライイーストにしたり、タンパク質素材と共にケーキ状にひらたくかためられたりしたものが用いられる。
酵母の使用量は包装食品用保存袋に酵母、水、栄養源粉状物の全重量に対して、0.05〜0.10重量パーセントとすることが以下の理由から好ましい。即ち、酵母の量が0.05重量パーセントより少ないと、発酵が不十分となって食品の変質を防止するのに必要な量の二酸化炭素やエチルアルコールを発生させることができず、逆に0.10重量パーセントを越えて添加すると、栄養源粉状物が不足してガスの発生量が少なくなり保存効果が減退するからである。
なお、酵母、水、栄養源粉状物の全重量は食品容器に同時に収納される食品が例えばうどんである場合には、そのうどんの重量に対して10〜20重量パーセントの範囲とすることが望ましい。即ち、酵母、水、栄養源粉状物の全重量が10重量パーセントより少ないと、ガスの発生量が不十分となるためであり、逆に20重量パーセントを越えて添加してもガスが無駄に消費されるからである。
栄養源粉状物としては、ペントース、ヘキソース等の単糖類、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、ショ糖(スクロース)などの二糖類を粉末状にしたものを使用することができる。ショ糖は、サトウキビ、テンサイ等から取られた甘味成分でスクロースまたはサッカロースのことを指し、これらを含むものを精製したもの等が砂糖とよばれている。
【0007】
水吸収体は、水分を吸収して湿潤状態を維持することのできるデンプンやゼラチン、寒天、吸水性高分子等を使用することができる。
吸水性高分子はポリエチレン、ポリエステル等を素材として微細な連通孔を多数形成させた組織を有する吸水性繊維や吸水性樹脂等が利用される。吸水性繊維としては、例えば、天然繊維や脱脂綿あるいは、シーベ(旭化学製)、アクワロン、WAP(カネボウ製)、ウェルキー(帝人製)、コットラン(東レ製)等の商品名で市販されているものが利用できる。吸水性樹脂としては、ポリエチレンやポリスチレン、ポリウレタン等の連続気泡を有する発泡樹脂やポリビニルアルコールやその他の誘導体、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体が用いられる。
【0008】
非透水性被膜には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアミド等の合成樹脂又はこれらと紙との複合材である合成紙で成形された厚みが5〜200μmのフィルムやシート等が好適に使用できる。
このような非透水性被膜を有する水袋体は、その内部に所定量の水、例えば保存する食品100g当たり1〜20gの水を密封状態で保持させることが好ましい。なお、水袋体を比較的硬質の1個又は複数のカプセルとして用いることも可能である。このような水袋体を例えば、外部から押圧したり、又は導電性部分を被膜の一部に形成させ、この導電性部分だけを選択的に加熱することのできる周波数が約1〜100ギガヘルツのマイクロ波を照射して加熱したりして、容器体のガス透過性被膜を破断することなく水袋体の被膜の一部を破壊して密封状態にある水を必要な時期に水袋体の外部に放出させることができる。これにより、内部の液体成分が水吸収体に保持され、酵母培地を形成して、その発酵を促すことができる。
【0009】
ガス透過性被膜は、湿潤状態となる内部の酵母、栄養源粉状物の溶液を保持すると共に、発酵によって生成するエチルアルコールや二酸化炭素のガス成分を包装食品用保存袋の外部に放出する働きを有している。ガス透過性被膜は、表面に通気性の微細孔や微細間隔が多数形成され、植物性又は動物性もしくは合成繊維で形成された不織布や織布等の素材を用いることができる。
このガス透過性被膜で形成される容器体には、酵母、栄養源粉状物、水袋体、水吸収体の所定量がそれぞれ配置され、全体が封止されるようになっている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の包装食品用保存袋において、前記栄養源粉状物がペプトン、ペントース、ヘキソース、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖の内のいずれか1乃至複数の組み合わせであり、前記水袋体に保持された水に対して1〜40重量パーセント分の栄養源粉状物が前記容器体に収納されて構成されている。
これによって、請求項1の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)水袋体の一部が破壊されて内部の水が流出した時に、所定濃度の栄養源を含む溶液が生成されるので、栄養源溶液を効率的に発酵させることができ、長期に亘り容器体の外部にガスを持続的に放出させることができる。
(b)栄養源粉状物としてショ糖を用いる場合には、特に水への溶解を迅速にでき、水吸収体としてデンプンを用いる場合のデンプン表面への親和性等を大幅に向上させて、発酵効率を向上させることができる。
水袋体に保持された水に対する栄養源粉状物の比が1重量パーセントより少ないと、濃度が不足して、発酵が不十分になる。また、栄養源粉状物の量比が40重量パーセントを超えると、生じる溶液の粘性が高くなり、水吸収体への溶液の吸収が困難になるので好ましくない。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の包装食品用保存袋において、前記水袋体に保持された水に対して5〜25重量パーセント分の前記水吸収体が前記容器に収納されて構成されている。
これによって、請求項1又は2の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)培地となる水吸収体の外に余剰液が溢れることなく、また水吸収体の微細組織が目詰まりしたりすることなく、発酵を良好に維持させることができる。
ここで、水袋体に保持された水に対するデンプン又は吸水性高分子の比が5重量パーセントより少ないと、水吸収体となるデンプン又は吸水性高分子に保持できる水の容量を越えるので、余剰液が培地となる水吸収体の外に溢れ、発酵を良好に維持させることが困難になる傾向がみられる。また、デンプン又は吸水性高分子の量比が25重量パーセントを超えると、吸収する水の量が不足して、発酵効率が低下する傾向が見られると共に、水吸収体の微細組織が目詰まりしたりする原因となるので好ましくない。
吸水性高分子としては、澱粉にアクリル酸塩をグラフト重合させた澱粉系、カルボキシセルロースにアクリル酸塩をグラフト重合させたセルロース系、アクリル酸重合体等の合成系高分子が使用でき、これらは特に水に対する吸水、保水能力が優れており、酵母に対して良好な培地を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋において、前記水袋体の非透水性被膜がポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂で構成されている。
これによって、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)合成樹脂を素材としているので、被膜の厚さ、強度等を選択して水袋体を押圧した時に破れる強度を適宜、容易に調整することができる。
(b)複数の材料の中から成形方法に応じて経済的に製造できる素材を選択することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋において、前記容器体のガス透過性被膜が織布、不織布等の繊維質素材や微細孔を合成樹脂膜に多数形成した多孔性素材から構成されている。
これによって、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)栄養源の発酵により発生するエチルアルコールや二酸化炭素等のガスを容器体の外部に放出できる。
(b)内部の湿潤物を安定に保持することができ、この湿潤物が漏れだして包装される食品が汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋において、前記容器体に活性炭が収納されて構成されている。
これによって、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)発酵に伴って発生する特有の不快な臭いの成分を活性炭によって吸着して、外部に放出されるのを防止することができるので、食品の本来の香りを損なうことなく食品を長期に亘って保存することができる。
なお、活性炭は、包装食品用保存袋内に収納するものの10gに対して0.05g〜1gの範囲で用いることが好ましい。活性炭が0.05gより少ないと消臭不足となって実質的な脱臭効果がなく、1gを超える場合には、食品の風味まで除去してしまう上に、余剰の活性炭が残って原料の無駄が多くなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1の包装食品用保存袋の使用前の模式断面図であり、図1(b)は包装食品用保存袋の使用状態の模式断面図である。
図1(a)、(b)において、1は実施の形態1の包装食品用保存袋、2は包装食品用保存袋1内に収納された非透水性フィルムの内部に水を保持した水袋体、3は酵母、栄養源粉状物、水吸収体の混合粉末、4は混合粉末3及び水袋体2をそれぞれ収納したガス透過性被膜からなる容器体である。
水袋体2はポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなる非透水性被膜で形成された袋体であり、内部に水吸収体1gに対して約0.2〜5gの水が密封されている。
なお、非透水性被膜の面に半切断状態の切れ目や溝状の切欠き等を予め入れておき、水袋体2を押圧した時に破れ易くなるようにしておくと、図1(b)に示すように、外部から圧力を加えた時に水袋体2がこの部分を起点にして破断し、内部の液体成分を栄養源粉状物や水吸収体に向けて放出させることができる。
混合粉末3の酵母は市販のドライイーストやビール酵母等の乾燥状態のものが使用でき、その内包量は、包装食品用保存袋1の中身の全重量に対して、0.5〜5重量パーセントである。
栄養源粉状物には、砂糖やブドウ糖等の粉末を用い、その内包量は、水袋体2に入れられた水の重量に対して、2〜50重量パーセントである。
水吸収体には、デンプンの乾燥粉体が用いられ、その内包量は、水袋体2に入れられた水の重量に対して、3〜50重量パーセントである。このデンプンには、馬鈴薯澱粉を原料として、架橋、エステル化により耐老化性、粘度安定性を向上させ、α化による水溶解性を付与した東海澱粉株式会社製の商品名:プリジェフロPJ−20が好ましく用いられる。プリジェフロPJ−20は、水分が10%以下、蛋白が0.3%以下、灰分が1%以下、pHが5〜7で、一般生菌数が1g当たり1000以下の澱粉である。
容器体4は、天然繊維、合成繊維等の繊維を素材とした不織布、織布等、又は高分子樹脂等からなる可撓性のガス透過性被膜を有して、酵母、栄養源粉状物、水吸収体の混合粉末と水袋体2とが封入された袋状の容器である。
なお、ここでは、▲1▼酵母、▲2▼デンプン、▲3▼砂糖、▲4▼水袋体2に保持する水はそれぞれ、▲1▼5重量パーセント、▲2▼10重量パーセント、▲3▼20重量パーセント、▲4▼65重量パーセントとなるように調整したものを使用した。
【0016】
ここで表1は、酵母の関与する発酵条件を探るために行った実験の代表例である。欄内の数字は酵母、栄養源粉状物の各成分、濃度の条件の実験における発酵ガス放出量の測定データを示している。なお、栄養源粉状物として砂糖、グルコース等を実験対象としたが、表1では砂糖を用いた例の一部を示している。
【0017】
【表1】
【0018】
この実験においては、試験管に保持した10ccの水に所定濃度となる砂糖等の栄養源粉状物と所定量の酵母を入れ、これを所定温度で保持して、1週間目、2週間目、3週間目毎に試験管の重量減少量(単位:g)を測定したものであり、この重量減少量が発酵により発生するガス量に対応している。
ここでは、商品化を考慮し、比較的入手しやすい粉末のイースト菌2種類(小倉、日清)と生イースト菌K30(福岡県工業技術センターが開発)を用いて、その発酵による炭酸ガスの発生量で評価する比較実験を行った。
酵母が活動し易い温度(20度〜30度)で、糖濃度40%程度の耐糖性を比較実験した結果、生イースト菌K30で良好な結果が得られた。
また、冷蔵庫内での保管における酵母の能力低減を最少限に抑えるために、低温に強い性質を持つ酵母菌として、日本酒・白ワイン用の酵母(財団法人発酵研究所製2347、2377、10661)を選定した。
この3種類の酵母と生イースト菌K30の4種類で、炭懐ガス発生牢の比較実験を低温(0、5、10度)で行った。その際に、パン酵母に3%前後含まれている「トレハオース」という糖質もいっしょに実験を行った。
「トレハオ一ス」が酵母の中に含まれているから酵母とは相性がよく、乾燥や冷凍に耐えられるものと思われた。しかし、この実験では良好な結果が得られず、糖質としては、コストの安い砂糖を選定した。
【0019】
次に、前記説明した包装食品用保存袋1を適用して、包装された食品の保存性を高める方法について説明する。
図2(a)は、生うどん等の変質し易い食品が入れられた食品袋を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)の矢視A−A断面図である。
図2(a)、(b)において、14は包装食品用保存袋1が入れられ非透水性でかつガス不透過性の被膜で形成された食品袋、15は食品袋14に収納される生うどんである。
このような食品と包装食品用保存袋1とを収納した食品袋14を店頭に配置するときには、食品袋14の上から内部の包装食品用保存袋1の水袋体2を押圧する。こうして、図1(b)に示すように、水袋体2の被膜の一部を破断させて、保持する水を酵母、デンプン、砂糖の混合粉末に混入させることができる。これにより、水を吸収したデンプンが発酵の際の培地を形成させて、酵母を用いて砂糖を分解して二酸化炭素とエチルアルコールを生成させることができる。
【0020】
以下、実施の形態1における包装食品用保存袋を選定するために行った基礎的な実験例について具体的に説明する。
(実施例1)
適正培地の検討
酵母を増殖させるための培地として、初めにYPD培地(YEAST EXTRACT POLY PEPTONE)を使用していたが、食品の保存製剤としては、あまり好ましくない臭いなので臭いの少ない培地を探索した。
臭いが少なく尚且つ、最少限必要な栄養素が入った最少培地を使用することにしたがYPD培地の方が良い結果を得た。
そこで、▲1▼最少培地に硝酸カリウム・硝酸ナトリウム・硫酸アンモニウムを加えたもの、▲2▼麦芽糖エキスに生揚げ醤油を加えたもの、▲3▼YPD培地、▲4▼ポテトデキストロースに酵母エキスを加えたもの4種類の保存製剤を製作し、うどん、パン、ハムに入れ実験を行った。この結果、YPD培地でのものが1番良好であった。
【0021】
(実施例2)
保持担体の検討
高吸水性の樹脂では、自重の約1000倍の水を吸収して、ゲル状物を形成し、一旦吸収した水は、多少の圧力を加えてもほとんど放出しない等、吸水性と保水性に優れている。このような高吸水性樹脂であるサンフレッシュST100MPSと、吸水により形成されるゲルが硬いタイプのサンフレッシュST500D、及び馬鈴薯澱粉を主原料とする「PJ−20」の3種類は、常温水(15度〜20度)でも素早く溶けるものを使用している。
通常の寒天は、一度温度を上げないと溶けず、又、温度を上げすぎると酵母菌は死滅してしまうという問題があったが、これにより、固形化温度調整問題が解決した。品質保持剤を試作して、以上の3つを比較して、安全性が高くガス発生量が良好であった「PJ−20」を選定した。
【0022】
(実施例3)
内包材の探索及び方法の検討
空気、湿気、ガス等の気体は通し、水や溶液等の水分を適さないフィルム6種類(RS30、NS140、PN35、RG50、NG120、LH003)と、比較用のガスも水も通さないもの(スタンダード)1種の計7種類で比較実験を行った。この結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
この比較実験は、瓶の中にエタノール(100%)5gずつを計り入れて、フィルムで蓋をし、24時間毎にその重量を計測して行った。
表2に示すように、NG120とNS140でガス発生量が多く良好な結果を得たが、食品に接しても害のないNS140を使用することにした。
【0025】
(実施例4)
開発品質保持剤の有用性試験
酵母と栄養源粉状物等を含む保存製剤を試作し、これに脱酸素剤として三菱ガス化学製「エージレス」、アルコール揮散剤として「アンチモールド・マイルド」、フロイント産業製「ネガモールド」、ワサビ・からし成分を利用した保存剤「マダムサビー」「在宅菌務」「米びつ防虫剤」と何も入れないものを準備し、これに食品の水分活性を考慮して、うどん・パン・ハム・米に適用した比較実験を行った。
こうして、培地を変えたり又、栄養素の配合を変えたりといった試行錯誤をしながら比較実験を行った。表3、表4に酵母と砂糖の量比を変えた場合におけるガス発生量の経時変化を示している。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
ここでは糖濃度を高くし日数を一週問程もたせる方法をとっていたが、糖濃度が高ければ高いほどたち上がりが遅くなるため、雑菌の方が先に増殖してしまう次第であった。そこで、糖と酵母と水だけで再度エタノール発生実験を行ったところ以下の知見が得られた。
即ち、炭酸ガス発生におけるたち上がりを早くして、短時間で発酵を終えてもよい場合は、酵母の濃度を高くし糖濃度を低くすることがよい。また、逆に長時間持たせたい場合は、酵母の濃度を低くし、糖濃度を高くすればよいということがわかった。以上のことから適用する食品の種類や用途に応じて、酵母や栄養源粉状物の配合割合をかえていけば良いという結論が得られた。
【0028】
実施の形態1の包装食品用保存袋は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)包装食品用保存袋1の吸水したデンプン培地で発生させた二酸化炭素とエチルアルコールの混合ガスがガス透過性の被膜を通って、食品袋14内に放出され、生うどん15が酸化や微生物の増殖等で変質するのを効果的に抑制することができる。
(b)包装食品用保存袋1の使用開始前には、酵母、でんぷん及び砂糖の乾燥粉体と水とが分離された状態で置かれるので、室温下でも変質することが少なく、長期に亘り安定に保管することができる。
(c)予め製造しておいた、包装食品用保存袋1を必要な時期に中の水袋体2を破った状態で食品袋14に入れて使用したり、食品袋14に入れたままで外部から包装食品用保存袋1を必要な時期に押圧したりして酵母による栄養源の発酵を開始させることができる。
(d)水を吸収したデンプンが培地となって砂糖溶液が発酵され、エチルアルコールや二酸化炭素等の発酵ガスを特に効率的に発生させることができる。
(e)包装食品用保存袋1には主原料が食品を主成分として構成されているので有害成分がなく、包装される食品を安全に保存することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2の包装食品用保存袋の模式断面図である。
図3において、16は実施の形態2の包装食品用保存袋、17は非透水性被膜の内部に水を保持したカプセル状の水袋体、18は酵母、栄養源粉状物、活性炭及び水吸収体の乾燥粉体及び水袋体17をそれぞれ収納したガス透過性被膜で形成された容器体である。
実施の形態2の包装食品用保存袋16が前記実施の形態1の包装食品用保存袋1と異なるのは、▲1▼水袋体17が比較的硬質で強度の低い合成樹脂からなる被膜を有してカプセル状に形成され、この水を保持するカプセルからなる水袋体17が単数又は複数包装食品用保存袋6に備えられている点と、▲2▼実施の形態1の乾燥粉体に活性炭が添加されている点とにある。
なお、このようなカプセルの素材には、例えば水に対して不溶性であるデンプンで形成させることもでき、食品保存の際の安全性をさらに向上させることができる。
【0030】
また、カプセルの素材を可撓性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系合成樹脂、又はウレタン系、フェノール系、ポリエステル系、アイオノマー系等の合成樹脂で構成し、合成樹脂からなるカプセルの被膜面に導電性の点状又は帯状の被覆部を設けておき、包装食品用保存袋16の使用前にマイクロ波を照射して、被覆部を加熱して被膜を部分的に溶かして内部の水を放出させることも可能である。この場合には、機械的な力を食品袋に付与することなく、包装食品用保存袋に保持されている水袋体を確実に破断させたり、穿孔したりさせることができると共に、熱の発生も部分的な範囲に留まるので、酵母の加熱による死滅を防止することができる。
活性炭は、酵母、栄養源粉状物及び水吸収体を含む乾燥粉体に対して、所定量例えば0.3〜5重量パーセント分が添加され、包装食品用保存袋16に入れられる。
これによって、酵母が砂糖水溶液を栄養源として発酵する際の特有の臭いを吸着して、消費者が食品袋を開いた際に放出される不快な臭気を効果的に除去することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、以下のような優れた効果が得られる。
【0032】
請求項1に記載の包装容器用保存袋によれば、これによって以下の効果が得られる。
(a)容器体を外部から押圧する等の手段で水袋体を必要なタイミングで、例えば、包装食品用保存袋が入れられた食品容器や袋等を店頭に並べる時期に破ることができる。これにより水袋体内の水等の液体成分が容器体内の水吸収体等に供給され、酵母が湿潤状態となった水吸収体を担持体として栄養源の発酵を開始して、アルコールや二酸化炭素のガスを発生させることができる。こうして、酵母による発酵時期を所定の時期に定めて食品の保存管理を的確かつ容易に行うことができる。
(b)包装食品用保存袋には食品の安全性を損なうような、有害成分が含まれていないので、包装される食品を安全に保存することができる。
(c)水分を吸収した水吸収体の内部の多孔性組織が温床となって栄養源粉状物を含む水溶液が発酵されるので、気体−液体界面の面積を増加させ、エチルアルコールや二酸化炭素等の発酵ガスを効率的に発生させることができる。
(d)包装食品用保存袋において、発酵を開始させる前は、水分が分離した状態で置かれているので、酵母や栄養源粉状物が変質することが少なく、冷蔵保存しない室温下でもこの包装食品用保存袋を長期に亘って保管することができる。
(e)水吸収体がデンプンで構成されている場合には、例え包装食品用保存袋が破損しても、包装される食品に不要な成分が混入するのを防ぐことができる。
(f)デンプンを素材とする場合には、水との親和性が特によく、しかも水を吸収しても適度の硬さと、強度を有して、形崩れすることなく酵母の発酵培地を安定に形成させることができる。これによって、発酵により生成した所定量ガスを持続的に食品に供給して、食品の変質を防止することができる。
(g)水吸収体として吸水性高分子を用いた場合には、特に水に対する吸収性や保水性に優れており、しかも形崩れすることない良好な培地を形成させることができる。
(h)水袋体の非透水性被膜の一部に導電性部分を形成させたりすることで、マイクロ波を照射して加熱したりして、容器体のガス透過性被膜を破断することなく水袋体の被膜の一部を破壊して密封状態にある水を必要な時期に水袋体の外部に放出させることができる。
(i)非透水性被膜の面に半切断状態の切れ目若しくは溝状の切欠きを形成することで、水袋体を押圧した時に破れ易くなるようにでき、外部から圧力を加えた時に水袋体がこの部分を起点にして破断し、内部の液体成分を栄養源粉状物や水吸収体に向けて放出させることができる。
【0033】
請求項2に記載の包装食品用保存袋によれば、これによって、請求項1の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)水袋体の一部が破壊されて内部の水が流出した時に、所定濃度の栄養源溶液が生成されるので、栄養源粉状物の溶液を効率的に発酵させることができ、長期に亘り容器体の外部にガスを持続的に放出させることができる。
(b)栄養源粉状物としてショ糖を用いた場合には、水への溶解を迅速にでき、水吸収体としてデンプンを用いる場合のデンプン表面への親和性等を大幅に向上させることができる。
【0034】
請求項3に記載の包装食品用保存袋によれば、これによって、請求項1又は2の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)培地となる水吸収体の外に余剰液が溢れることなく、また水吸収体の微細組織が目詰まりしたりすることなく、発酵を良好に維持させることができる。
【0035】
請求項4に記載の包装食品用保存袋によれば、これによって、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)合成樹脂を素材としているので、水袋体を押圧した時に破れる強度を調整することができる。
(b)複数の材料の中から成形方法に応じて経済的に製造できる素材を選択することができる。
【0036】
請求項5に記載の包装食品用保存袋によれば、これによって、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)栄養源の発酵により発生するガスを容器体の外部に放出できる。
(b)内部の湿潤物を安定に保持することができ、この湿潤物が漏れだして包装される食品が汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0037】
請求項6に記載の包装食品用保存袋によれば、これによって、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
発酵に伴って発生する特有の不快な臭いの成分を活性炭によって吸着して除去することができるので、食品の本来の香りを損なうことなく食品を長期に亘って保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)実施の形態1の包装食品用保存袋の使用前の模式断面図
(b)包装食品用保存袋の使用状態の模式断面図である。
【図2】(a)食品が入れられた食品袋を示す斜視図
(b)図2(a)の矢視A−A断面図
【図3】実施の形態2の包装食品用保存袋の模式断面図
【符号の説明】
1 包装食品用保存袋
2 水袋体
3 混合粉末
4 容器体
14 食品袋
15 生うどん
16 包装食品用保存袋
17 水袋体
18 容器体
Claims (6)
- 酵母又は酵母とその栄養源粉状物を含む乾燥粉体と、乾燥状態の水吸収体と、非透水性被膜の内部に水又は栄養液を含む液体成分を保持した水袋体と、前記乾燥粉体、前記水吸収体及び前記水袋体をそれぞれ収納したガス透過性被膜で形成された容器体と、前記水袋体の前記非透水性被膜の一部に形成され若しくは被覆された導電性部分、又は前記非透水性被膜の面に形成された半切断状態の切れ目、若しくは溝状の切欠きと、を備え、前記水吸収体がデンプン又は吸水性高分子であることを特徴とする包装食品用保存袋。
- 前記栄養源粉状物がペプトン、ペントース、ヘキソース、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖の内のいずれか1乃至複数の組み合わせであり、前記水袋体に保持された水に対して1〜40重量パーセント分の前記栄養源粉状物が前記容器体に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の包装食品用保存袋。
- 前記水袋体に保持された水に対して5〜25重量パーセント分の前記水吸収体が前記容器体に収納されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装食品用保存袋。
- 前記水袋体の非透水性被膜がポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋。
- 前記容器体のガス透過性被膜が織布、不織布等の繊維質素材や微細孔を合成樹脂膜に多数形成した多孔性素材からなることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋。
- 前記容器体に活性炭が収納されていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の包装食品用保存袋。
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