JP3662746B2 - 既架橋高分子ラテックスの製造方法および該ラテックスから形成した塗膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の既架橋高分子ラテックスは、その名称が意味しているように、ゲル化または架橋したコロイド状の大きさ、即ち直径約0.001〜10ミクロンを有する粒状ポリマーである。ゲル化または架橋とは強溶剤が粒子を膨潤する場合があるとしても完全に溶解しないことを意味する。
本発明は珪素含有既架橋高分子ラテックスの製造方法およびかかる既架橋高分子ラテックスから形成された塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に対する関心が高まっており、塗料分野においても従来の溶剤系から水系塗料への移行が盛んになっている。そのため、水性塗料の使用範囲が拡大され、水性塗料に対する要求性能も高度になってきている。
従来より、水性塗料は溶剤系塗料とは異なり、水系であるがゆえ、耐水性の低下や、塗膜形成時には、ラテックス特有の造膜過程を経由する為、塗膜形成性の低下等、溶剤系塗料と比較して水性塗料は相対的に物性面で劣っていた。
【0003】
既架橋高分子ラテックスについては、種々の先行例があるが、例えば特開平1−174506に開示の方法で得られたポリマー粒子は造膜性が悪く、塗料用樹脂として使用するには満足できるものではなかった。また、重合方法としては、ラジカル重合と、加水分解縮合反応とを競争的に進行させる為、反応性は、単量体組成によって影響を受け易い。また、特開昭59−203738に開示の方法は、加水分解性シリル基の加水分解によってシラノール基を粒子に残し基材との密着性を向上させるもので、本発明の製造方法とは異なり、加水分解性シリル基を含む単量体と他の共重合性単量体とを混合した単量体を乳化重合する方法と、更に、基材との密着性を良好にするため、1段階目に、加水分解性シリル基を含まない共重合性単量体を重合した後、2段階目として加水分解性シリル基を含む単量体と他の共重合性単量体とを重合させて、粒子表面に加水分解性シリル基を局在化させようというものであり、本願発明の重合方法で得られた粒子構造とは異なるものである。また、特開昭61−9463に開示の方法では加水分解性シリル基を含む単量体の加水分解によってシラノール基を極力粒子に残し基材との密着性を向上させようというもので、この方法も、本発明の製造方法で得られるラテックスの粒子構造とは異なるものである。特開昭60−181173に開示の方法では、架橋ポリマー粒子単独で塗膜を形成するものではなく、塗膜形成性ポリマーと架橋ポリマー粒子のブレンドで使用するものであり、この製造方法では、生産性の面で不利であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、既架橋高分子ラテックス粒子の造膜性を改善するための重合方法の提供を目的とし、かかる重合方法において、重合が安定的に進行する重合方法を提供することも目的とする。また、本発明は、前記したラテックスから得られる、耐水白化性(水中に塗膜を漬けても塗膜が白化しにくい性質)に優れた塗膜を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の構成としては、水性媒体中、pH安定剤存在下、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(A)と、共重合可能な単量体を含有した単量体混合物を、乳化重合法により、まず、ラジカル重合を優先的に行い、次に、得られた高分子ラテックス中の加水分解性シリル基の加水分解縮合反応を進行させ、既架橋高分子ラテックスを得、これをシード粒子として存在させ、実質的に(A)を含まない共重合可能な単量体を添加し、重合することを特徴とする既架橋高分子ラテックスの製造方法(請求項1)である。また、高分子ラテックス中に導入した加水分解性シリル基の縮合反応を促進させる為に、縮合触媒を添加することを特徴とする請求項1記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法(請求項2)である。また、カルボキシル基を含有しないシード粒子の存在下、実質的に(A)を含まず、カルボキシル基を含有する単量体とその他の共重合可能な単量体の混合物を添加して重合することを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法(請求項3)である。また、既架橋高分子ラテックスを重合して得た後、1分子中に炭素原子が2≦C数≦7で且つ窒素原子を含有する塩基を重合後に添加することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法(請求項4)である。そして、請求項1〜4いずれかの製造方法で得られる既架橋高分子ラテックスから形成した塗膜(請求項5)である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する塩基は、耐水白化性に影響し、この点から1分子中に炭素原子が2個以上7個以下であり、窒素原子を含有すればよく、構造が直鎖、分岐、環状であってもかまわない、この例として、トリエチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン、N−メチルモルホリン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができるが、好ましくは2−アミノエタノール、イソプロパノールアミン、n−プロピルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリンから選ばれた1種または2種以上の混合物、特には、イソプロパノールアミン、n−プロピルアミン、N−メチルモルホリン、モルホリンから選ばれた1種または2種以上の混合物がより好ましい。塩基の添加量は、ラテックスのpHを5〜11、更には、pH6〜9になるような量を添加することが好ましい。pHが5未満ではラテックスの各種安定性(例えば機械的安定性、凍結安定性)が悪くなり、11以上ではラテックスはアルカリ増粘し、作業性および耐水性の低下する傾向がある為、好ましくない。
本発明で使用する(A)としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどをあげることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。また、本発明に使用できる加水分解性シランは前記したものに限られるものではない。(A)の使用量としては、単量体混合物中0.1〜50重量%の割合で使用することが好ましく、更に好ましくは、0.1〜20重量%の割合で使用する。加水分解性ビニルシラン(A)が0.1重量%未満では、造膜性は良好になるものの、十分な耐水白化性が得られない。また、50重量%を超えて使用した場合、重合安定性および造膜性の悪化、価格の上昇などの欠点が現れるので好ましくない。
本発明で使用する共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、高分子ラテックスの分散液の、機械的安定性、化学的安定性、凍結安定性の向上に寄与する重合性カルボン酸および/または重合性スルホン酸等を共重合させることができる。重合性カルボン酸および/または重合性スルホン酸を共重合させた高分子ラテックスは本願発明の塩基物質で中和することが好ましく、前記した分散液の各種安定性をより向上させることができる。重合性カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、(無水)イタコン酸、マレイン酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、アコニット酸、シトラコン酸などを挙げることができ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の混合物を使用することができる。また、重合性スルホン酸としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸などをあげることができ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の混合物を使用することができる。更には、重合性カルボン酸と重合性スルホン酸の混合物を使用することもできる。本発明において、重合性カルボン酸および/または、重合性スルホン酸は、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の割合で使用する。1重量%未満では、得られた高分子ラテックスの各種安定性(例えば、機械的安定性等)が損なわれ好ましくない。また、30重量%を超える割合で使用した場合、耐水性に悪影響を与えたり、中和時にラテックスの増粘等が発生し好ましくない。
本発明で使用する共重合可能な単量体としては、前記重合性カルボン酸、重合性スルホン酸以外に、アルキル基の炭素数が、1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3、3、5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が例示でる。その他の共重合可能な単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレインアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が例示でき、前記単量体の1種または2種以上の混合物を共重合できる。また、共重合可能な単量体であればこの限りではないが、これらの単量体の中では、1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、スチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドが好ましい。
本発明で使用するpH安定剤は、一般的に緩衝剤として使用されているものであれば特に限定されるものではないが、フタル酸水素カリウム、フタル酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ホウ砂、クエン酸二水素カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等があげられ、特には、炭酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウムが好ましい。
【0007】
乳化重合の際、加水分解性シリル基の加水分解縮合反応を抑制するために、pHを4〜9で重合することが好ましく、更に好ましくは、pHを5〜8の範囲で重合する。pHが4未満または9を超える領域で重合をおこなうと、アルコキシシリル基の加水分解縮合反応が進行し、ラジカル重合と加水分解縮合の競争反応が進行するため、単量体組成如何によっては、重合中系の増粘が発生したり、粒子径に影響を及ぼしたりするので好ましくない。
本発明において、高分子ラテックス中に導入した加水分解性シリル基の加水分解縮合反応を促進させる為の縮合触媒として、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレエート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物;リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸またはリン酸エステル;ヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルドデシルアミン、ドデシルアミンなどの有機アミン類;これら有機アミン類と酸性リン酸エステルとの混合物または反応物;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシドール、(メタ)アクリルグリシジルエーテル、カーデュラ(E)、エピコート828、エピコート1001(以上、油化シェルエポキシ(株)製)などのエポキシ化合物とリン酸および/または酸性モノリン酸エステルとの付加反応物;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、などの有機チタネート化合物;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの飽和または不飽和多価カルボン酸などの有機カルボン酸類およびこれらの酸無水物;有機カルボン酸類と有機アミン類との混合物または反応物;パラトルエンスルホン酸などの酸性化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ化合物などがあげられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、硬化性、重合中添加時のラテックスの安定性の面から、有機金属化合物、特に有機アルミニウム化合物または有機スズ化合物を、界面活性剤によって乳化させて得られた乳化物を使用することが好ましい。
また、本発明においては、硬化活性が高いという点から、酸性リン酸エステル、もしくは、有機カルボン酸類と有機アミン類との混合物または反応物が好ましい。
加水分解縮合反応を促進させるためには、硬化触媒の量は、乳化重合体に含まれるアルコキシシラン100部に対して0.1部以上20部以下であることが望ましく、更に好ましくは、0.5部以上10部以下である。20部以上になると塗膜の外観等が低下してくるので好ましくない。
【0008】
本発明で実施する乳化重合法には、特に限定はなく、例えば、バッチ重合法、モノマー滴下重合法、乳化モノマー滴下重合法などの各種乳化重合法のなかから適宜選択して採用することができる。本発明においては、特に製造時の乳化物の安定性を確保するうえで、モノマー滴下重合法および乳化モノマー滴下重合法が好ましい。
また、必要に応じて、モノマーまたは乳化モノマーの組成を変えて、多段階で重合することができ、それにより、生成する高分子ラテックスの粒子内部の組成と粒子表面層の組成を変えることができる。
【0009】
なお、ラテックスの安定性を向上させるには、乳化重合時または、重合後に乳化剤を使用すればよく、前記乳化剤としては、通常の乳化重合に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤があげられる。
前記イオン性界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイド、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどが代表例としてあげられ、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが例示できる。
また、前記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、更に、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485(以上Air Products and Chemicals Inc.製)などの分子中に三重結合を有する界面活性剤があげられ、L−77、L−720、L−5410、L−7602、L−7607(以上、ユニオンカーバイト社製)などのシリコン含有ノニオン系界面活性剤などが代表例としてあげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、L−77、L−720、L−5410が例示できる。
更に、本発明に於いては、一分子中に重合性二重結合を有する反応性乳化剤を用いることができる。かかる反応性乳化剤の具体例としては、例えば、RMA−506、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、MPG−130MA(以上、日本乳化剤社製)、アクアロンRN−20、RN−30、RN−50、アクアロンHS−10、HS−20、HS−1025、(以上、第一工業製薬社製)、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N(以上、旭電化工業社製)等の乳化剤があげられ、特に好ましくは、、MA−100、アクアロンRN−30、HS−10、HS−20、アデカリアソープSE−10Nがあげられる。
【0010】
これらの乳化剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することもでき、重合時に使用する乳化剤量としては、単量体100部に対して、0.1部以上10部以下、更に好ましくは、1部以上5部以下がよい0.1部以下では重合安定性が悪く、10部以上では、耐水白化性が悪くなる傾向がある。
本重合系で用いる重合開始剤としては、レドックス系触媒を用いることが好ましい。更に、重合中の混合液の安定性を維持し、重合を安定的に行うためには、混合液の温度が70℃以下、好ましくは、40℃〜65℃であることが好ましい。前記レドックス系開始剤における酸化剤と還元剤との組み合わせとしては、例えば過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムと酸性亜硫酸ナトリウムまたはロンガリットとの組み合わせ、過酸化水素とアスコルビン酸との組み合わせ、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物と酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどとの組み合わせなどがあげられ、特に好ましくは、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドと、ロンガリットとの組み合わせがあげられる。
前記重合開始剤の使用量は、重合単量体100部に対して0.01〜10部、好ましくは、0.05〜5部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01部未満である場合は、重合が進行しにくくなることがあり、10部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下し、得られた高分子ラテックスから形成したフィルムの耐水白化性は低下する。
また、重合開始剤の活性を安定的に付与するために、例えば、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物と、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(以後EDTAと略す)などの塩とのキレート化合物を用いてもよい。かかるキレート化剤の量は、重合単量体100部に対して0.0001〜1部、なかんずく0.0005〜0.5部であることが好ましい。
かくして得られる高分子ラテックスの固形分濃度は、重合操作の面では何ら問題は生じないが、一回の重合操作によって生じる樹脂量が少ない為、経済面で不利となったり、塗膜形成の際に塗膜の膜厚が薄くなってしまい、性能低下をおこすおそれがある。これらをなくすためには、固形分濃度は20%以上好ましくは30%以上となるように調製することが好ましい。また、系の粘度が著しく上昇するため重合熱の除去が困難になったり、重合機からの取り出しに手間がかかり作業性が低下するおそれをなくす為には、かかる高分子ラテックスの濃度は、70%以下好ましくは60%以下となるように調製することが好ましい。
また、重合時間については、1〜24時間、好ましくは、3〜20時間となるように調節することが一般的であるが、製造条件等により任意に設定が可能である。
本重合系では、分子量を調節するために、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、などの連鎖移動剤を用いてもよい。
また、得られた高分子ラテックスの平均粒子径が、0.02〜1μm程度である為、優れた塗膜形成能を有する。
また、必要に応じてメタノールやエタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールのようなアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルなどのエーテル類、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類、CS−12(チッソ社製)等の有機溶剤が助溶剤としてあげられ、これらは単独または2種以上の混合溶剤で用いることもできる。これらの中でも特に、CS−12、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
これらの助溶剤は、乳化重合時に添加してもよく、重合後に他の成分とともに添加してもよい。
また、本発明の既架橋高分子ラテックスを塗料として使用する場合、塗膜の耐候性をより向上させる為に、ベンゾトリアゾールのような紫外線吸収剤やヒンダードアミンのような光安定剤、また、これらを併用したものを重合時または配合時に添加することが可能である。
更に、本発明においては、通常塗料に用いられている、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリンなどの白色顔料、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルーなどの有色系顔料、可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、湿潤剤などの添加剤を必要に応じて配合することができる。また、塗料用の顔料ペーストを配合することも可能である。更には、市販されている塗料を、本発明のラテックスに配合することもできる。
本発明の高分子ラテックスは、前記した顔料を添加して使用してもよいが、クリアーフィルムにした場合の耐水白化性が優れており、塗料用樹脂の中でも特にクリアー用途に用いることが好ましい。
本発明の、塗料用高分子ラテックスを、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛等を用いた塗布方法によって被途物に塗布した後、通常10℃以上で養生させることで、被塗物の表層に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の高分子既架橋ラテックスは、例えば、建築物内外装用、メタリックベース、またはメタリックベース上のクリアー等の自動車用、家電用品用、プラスチック製品用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、けい酸カルシウム板、タイル、煉瓦用の塗料をはじめ、表面処理剤として好適に使用しうるものである。
【0011】
【実施例】
次に、本発明の既架橋高分子ラテックスを実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1(ラテックスNo.A−1の製造方法)
還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを付けたセパラブルフラスコに、水181重量部、ロンガリット0.482重量部、エマール2F(花王(株)製)2.0重量部、酢酸アンモニウム(AcONH4)1.9重量部、硫酸鉄(II)七水和物0.00202重量部、EDTA0.00269重量部、を計り取り、窒素気流にしながら50℃まで昇温した。別途、ブチルアクリレート(BA)16.0重量部、メチルメタクリレート(MMA)18.4重量部、ブチルメタクリレート(BMA)103.2重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(TSMA)34.4重量部、およびエマール2F3.2重量部、水43.0重量部を乳化させたモノマー乳化液と、滴下ロートに0.816%有効成分濃度のt−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液(以後TBHPと略す)50.6重量部とを作製しておき、モノマー乳化液とTBHPとを1.5時間にわたって同時に重合層に滴下し乳化重合を行った。反応を完結させるため、更に1時間重合を行い、次に、有効成分10%のジブチルスズジラウレート乳化物3.0重量部を添加し1時間反応を行ってシードとなる既架橋高分子ラテックスを得た。別途、BA28.7重量部、MMA26.3重量部、BMA103.2重量部、メタクリル酸(MAA)13.8重量部、エマール2F3.2重量部、水43.0重量部を乳化させたモノマー乳化液と、滴下ロートに0.816%有効成分濃度のTBHP50.6重量部とを作製しておき、モノマー乳化液とTBHPとを1.5時間にわたって同時に、シードラテックスの存在する重合層に滴下しシード重合を行った。反応を完結させるために、重合温度を75℃にし、更に2時間重合をおこなった。重合は安定的に進行し、冷却後、28%アンモニア水で中和、得られた既架橋粒子は、動的光散乱法による測定の結果、平均粒子径138nmであった。また、ラテックスはアセトンに不溶であった。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部(ラテックス固形分量に対して10%)添加しガラス板wetで約150μmコーティングしたところ造膜性もよく、割れのない塗膜が得られた。
実施例2(ラテックスNo.A−2の製造方法)
実施例1と同様に表1に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合したところ重合安定性は良好で、平均粒子径130nmのラテックスA−2を得た。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板wetで約150μmコーティングしたところ造膜性もよく、割れのない塗膜が得られた。
【0012】
実施例3(ラテックスNo.A−3の製造方法)
実施例1と同様に表1に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合したところ重合安定性は良好で、平均粒子径128nmのラテックスA−2を得た。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板wetで約150μmコーティングしたところ造膜性もよく、割れのない塗膜が得られた。
【0013】
比較例1(ラテックスNo.B−1の製造方法)
還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを付けたセパラブルフラスコに、水270重量部、ロンガリット0.482重量部、エマール2F(花王(株)製)0.45重量部、硫酸鉄(II)七水和物0.00202重量部、EDTA0.00269重量部、を計り取り、窒素気流にしながら50℃まで昇温した。別途、BA16.0重量部、MMA18.4重量部、BMA103.2重量部、TSMA34.4重量部、およびエマール2F3.2重量部、水43.0重量部を乳化させたモノマー乳化液と、滴下ロートに0.816%有効成分濃度のTBHP、50.6重量部とを作製しておき、モノマー乳化液とTBHPとを1.5時間にわたって同時に重合層に滴下し乳化重合を行った。反応を完結させるため、更に1時間重合を行い、シードとなる既架橋高分子ラテックスを得た。別途、BA27.5重量部、MMA34.4重量部、BMA103.2重量部、アクリル酸(AA)6.9重量部、エマール2F3.2重量部、水43.0重量部を乳化させたモノマー乳化液と、滴下ロートに0.816%有効成分濃度のTBHP50.6重量部とを作製しておき、モノマー乳化液とTBHPとを1.5時間にわたって同時に、シードラテックスの存在する重合層に滴下しシード重合を行ったが、滴下途中系が著しく増粘した。反応を完結させるために、重合温度を75℃に昇温したが、攪拌が困難な状態となり、重合は非常に不安定であった。冷却後28%アンモニア水で中和し、得られた既架橋粒子は、動的光散乱法による粒子径の測定の結果、平均粒子径112nmの粒子であった。また、ラテックスはアセトンに不溶であった。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板wetで約150μmコーティングしたところ割れのない塗膜が得られた。
【0014】
比較例2(ラテックスNo.B−2の製造方法)
比較例1と同様に表2に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合したが、系は、増粘し、得られたラテックスB−2の平均粒子径も84nmと小さく、粒子径に影響が認められた。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板wetで約150μmコーティングしたところ造膜性もよく、割れのない塗膜が得られた。
【0015】
比較例3(ラテックスNo.B−3の製造方法)
還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを付けたセパラブルフラスコに、水270重量部、ロンガリット0.482重量部、エマール2F(花王(株)製)0.45重量部、硫酸鉄(II)七水和物0.00202重量部、EDTA0.00269重量部、を計り取り、窒素気流にしながら50℃まで昇温した。別途、BA57.2重量部、MMA80.4重量部、TSMA34.4重量部、およびエマール2F3.2重量部、水43.0重量部を乳化させたモノマー乳化液と、滴下ロートに0.816%有効成分濃度のTBHP、50.6重量部とを作製しておき、モノマー乳化液とTBHPとを1.5時間にわたって同時に重合層に滴下し乳化重合を行った。反応を完結させるため、更に1時間重合を行い、既架橋高分子ラテックスを得た。ラテックスはアセトンに不溶であった。また、得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板にwetで約150μmコーティングしたところ造膜性は悪く、得られた塗膜に割れが生じた。
【0016】
比較例4(ラテックスNo.B−4の製造方法)
比較例3にAcONH4を1.9重量部添加し、表2の組成で重合を行い、得られたラテックスに10%ジブチルスズジラウレート乳化液を3.0重量部加え、縮合反応を行った。得られたラテックスに造膜助剤CS−12を10部添加しガラス板にwetで約150μmコーティングしたところ造膜性は悪く、得られた塗膜に割れが生じた。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
実施例4
実施例1と同様に、表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合した後、モルホリンで中和してラテックスA−4を得た。A−4ラテックスに造膜助剤CS−12(チッソ社製)を20%/ラテックス固形分、添加しハンドミキサーで約1分攪拌後、脱泡した。これを1日熟成させ、得られた塗料をwetで約250μmガラス板にアプリケーターでコーティングし23℃で1週間これを養生した。養生したフィルムは23℃の水に24時間漬け耐水試験を行いフィルムの白化をヘーズメーターで測定した。白化の程度は、耐水後のフィルムのヘイズ値から耐水前のクリアーフィルムのヘイズ値を差し引いた値(ΔH)および耐水前のクリアーフィルムの透過率から耐水後のフィルムの透過率を差し引いた値(ΔT)で表した。結果は表3に示した。
【0020】
実施例5
実施例1と同様に表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合し3−アミノ−1−プロパノールで中和してラテックスA−5を得た。A−5は実施例4と同様の方法で塗膜を形成し、耐水白化性を評価した。結果は表3に示した。
【0021】
実施例6
実施例1と同様に表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合しn−プロピルアミンで中和してラテックスA−6を得た。A−6は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表3に示した。
実施例7
実施例1と同様に表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合し2−アミノエタノールで中和してラテックスA−7を得た。A−7は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表3に示した。
【0022】
実施例8
実施例1と同様に表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合しモルホリンで中和してラテックスA−8を得た。A−8は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表3に示した。
実施例9
実施例1と同様に表3に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合しイソプロパノールアミンで中和してラテックスA−9を得た。A−9は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表3に示した。
【0023】
比較例5
実施例1と同様に表4に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合しアンモニア水で中和してラテックスB−5を得た。B−5は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表4に示した。
比較例6
実施例1と同様に表4に示した単量体組成で既架橋高分子ラテックスを重合しアンモニア水で中和してラテックスB−6を得た。B−6は、実施例4と同様の方法で耐水白化性を評価した。結果は表4に示した。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
ΔHとΔTから判断すると、実施例4〜9のラテックスから得られた塗膜の耐水白化性は比較例5〜6のラテックスから得られた塗膜の耐水白化性よりも良好な結果が得られた。
【0027】
【発明の効果】
本発明の既架橋高分子ラテックスの製造方法によって、重合安定性の向上と、得られたラテックスの造膜性の向上およびラテックスを乾燥させて形成した塗膜の耐水白化性が向上した。
Claims (5)
- 水性媒体中、pH安定剤存在下、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(A)と、共重合可能な単量体を含有した単量体混合物を、乳化重合法により、まず、ラジカル重合を優先的に行い、次に、得られた高分子ラテックス中の加水分解性シリル基の加水分解縮合反応を進行させ、既架橋高分子ラテックスを得、これをシード粒子として存在させ、実質的に(A)を含まない共重合可能な単量体を添加し、重合することを特徴とする既架橋高分子ラテックスの製造方法。
- 高分子ラテックス中に導入した加水分解性シリル基の縮合反応を促進させる為に、縮合触媒を添加することを特徴とする請求項1記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法。
- カルボキシル基を含有しないシード粒子の存在下、実質的に(A)を含まず、カルボキシル基を含有する単量体とその他の共重合可能な単量体の混合物を添加して重合することを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法。
- 既架橋高分子ラテックスを重合して得た後、1分子中に炭素原子が2≦C数≦7で且つ窒素原子を含有する塩基を重合後に添加することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の既架橋高分子ラテックスの製造方法。
- 請求項1〜4いずれかの製造方法で得られる既架橋高分子ラテックスから形成した塗膜。
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