JP3662673B2 - 自動二輪車のステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車のステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のステアリング装置として、例えば左, 右一対のフロントフォークの長手方向中央部同士,及び上端部同士をそれぞれアンダブラケット,アッパブラケットで連結固定し、この両ブラケット間にステアリングシャフトを固定するとともに、該ステアリングシャフトを車体フレームのヘッドパイプで枢支した構造のものがある。このようなアンダブラケット,アッパブラケットには、従来、アルミ合金の鋳造品又は鍛造品を採用するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の鋳造品又は鍛造品のブラケットでは、製造コストが高く、また軽量化を図るための肉抜き部を形成するにも限界があるという問題がある。
【0004】
そこで、上記軽量化,及び製造コストの低減を図ることのできるブラケットとしてアルミの押し出し成形材を採用することが提案されている。この押し出し成形材によれば、肉抜部を厚さ方向に貫通形成できることから上記鍛造品等に比べて軽量化を図ることができる。しかし、アルミ押し出し材を使用する場合、その構造の如何によっては、軽量化は達成できるもののブラケット全体の強度,剛性が低下したり、あるいはフロントフォークの回動角度を規制するストッパの取付け部の強度が低下するといった懸念があり、また金型が大型化する場合があり、これらの点での改善が必要であると考えられる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、押し出し成形材を採用する場合に、ブラケット全体の強度,剛性を確保でき、かつストッパ部の取付け強度を確保できる自動二輪車のステアリング装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、前輪を軸支する左,右一対のフロントフォークをブラケットで連結固定し、該ブラケットにヘッドパイプにより枢支されるステアリングシャフトを固定してなる自動二輪車のステアリング装置において、上記ブラケットを、アルミ合金の押し出し成形材製で、かつ中央のステアリングシャフト固定部の前縁,後縁と左,右のフォーク固定部の前縁,後縁とを車幅方向に延びる前壁,後壁で連結し、さらに該前壁と後壁とを該両壁間を斜めに横切るリブ壁で結合した構造のものとし、該リブ壁と前壁又は後壁との結合部に上記フロントフォークの回動角度を規制するストッパの取付部を形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記ブラケットのフォーク固定部を環状でかつ締め付け用スリットを有するものとし、かつ該スリットを車軸方向に締め付けるためのボルトの挿入用ボス部が該ブラケットの車体後方からの投影面内に位置するように形成されていることを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図7は、本発明の一実施形態による自動二輪車のステアリング装置を説明するための図であり、図1〜図3はそれぞれアンダブラケットの平面図,断面図,側面図、図4,図5はそれぞれアッパブラケットの平面図,側面図、図6,図7はそれぞれステアリング装置の側面図,一部断面側面図である。
【0009】
図6,図7において、1は自動二輪車のステアリング装置であり、これは車体フレーム2の前端部に固着されたヘッドパイプ3によりステアリングシャフト4を左右操向自在に枢支し、該ステアリングシャフト4の下端,上端にそれぞれ後述するアンダブラケット5,アッパブラケット6を固定し、該各ブラケット5,6により左, 右一対のフロントフォーク7,7を連結固定し、該フロントフォーク7の下端に不図示の前輪を軸支するとともに、上端に操向ハンドルを固定して構成されている。上記ステアリングシャフト4はヘッドパイプ3の両端部に配設された軸受(不図示)により支持されている。なおステアリングシャフト4の下端部はアンダブラケット5に常温圧入されており、上端部はボルト8を螺挿することによりアッパブラケット6に締結されている。
【0010】
上記フロントフォーク7は倒立タイプのもので、アウタチューブ10内にインナチューブ11を相対的に軸方向に摺動自在に挿入し、該インナチューブ11内に減衰機構を有するピストン部材12を固着し、該ピストン部材12と上記アウタチューブ10内に上端部から挿入された支持部材13との間にコイルスプリング14を配設した概略構造となっている。
【0011】
また上記インナチューブ11の上縁にはアウタチューブ10の内周面に摺接するリングメタル15が装着されており、アウタチューブ10の下縁にはインナチューブ11の外周面に摺接するリングメタル16が装着されている。上記フロントフォーク7は、前輪の上下動によりピストン部材12がインナチューブ11とともにアウタチューブ10内を上下に相対移動することにより所定の減衰力を発生させ、これにより路面からの衝撃を吸収するように構成されている。
【0012】
上記アンダブラケット5,アッパブラケット6は押し出し成形法により形成したものである。即ち、上記アンダ,アッパブラケット5,6はアルミ合金材を上記各ブラケット5,6の形状に対応した形状の金型(ダイス)内を通過させて長尺のブラケット材(素材)を形成し、該ブラケット材を所定寸法に切断し、孔加工等を施して製造されたものである。なお、ここで上記アンダブラケット5,アッパブラケット6は共通の押し出し成形素材を用いて製造されたものである。
【0013】
上記アッパブラケット6は、図4,図5に示すように、大略弓形状の本体部20の左右両端部に上記フロントフォーク7が挿通される挿通孔21bを有する環状のフォーク固定部21,21を一体形成するとともに、中央部に上記ステアリングシャフト4の上端部が挿通される挿通孔20aを有するシャフト固定部20bを形成して構成されている。上記本体部20は、前壁6aと後壁6bとを両者間を斜めに横切るリブ壁6c,6cで接続してなるもので、本体部20には三角形状をなす4つの窓部22が厚さ方向に貫通形成されている。これにより上記シャフト固定部20bの前縁,後縁と、フォーク固定部21,21の前縁,後縁は前壁6a,後壁6bで連結固定されている。
【0014】
また上記各フォーク固定部21の前縁にはボス部21aが一体形成されており、該ボス部21aはブラケット6の車体後方からの投影面の内側に位置している。また上記ボス部21aの軸方向中央部にはスリット23が形成されており、該ボス部21aに螺挿されたボルト24により上記フロントフォーク7を締め付け固定している。
【0015】
上記アンダブラケット5は、図1〜図3に示すように、本体部30の左右両端部に挿通孔31bを有する環状のフォーク固定部31,31を一体形成するとともに、中央部に圧入孔30aを有するシャフト固定部30bを形成して構成されている。上記本体部30は前壁5aと後壁5bとを両者間を斜めに横切るリブ壁5c,5cで接続してなり、該本体部30には三角形状をなす4つの窓部32が形成されており、基本的構造は上記アッパブラケット6と同様である。これにより上記シャフト固定部30bの前縁,後縁と、フォーク固定部31,31の前縁,後縁は前壁5a,後壁5bで連結固定されている。なお上記アンダブラケット5はアッパブラケット6より厚肉に形成されている。
【0016】
また上記各フォーク固定部31の前縁には該ブラケット5の車体後方からの投影面の内側に位置するようボス部31aが一体形成されている。このボス部31aにはスリット33が形成されており、該ボス部31aに螺挿された2本のボルト34により上記フロントフォーク7を締め付け固定している。
【0017】
そして上記アンダブラケット5の前壁5aとリブ壁5cとの結合部にはそれぞれストッパ挿着孔(取付部)35が貫通形成されており、該挿着孔35にストッパピン36が螺挿装着されている。このストッパピン36は、六角穴付ソケットボルトであり、上記ヘッドパイプ3の下端に固着された半円状の係合部3aに該ストッパピン36の円柱状の外周面を当接させることにより上記フロントフォーク7の回動角度を規制するものである。従ってボルトの締め上り角度によってフロントフォーク7の回動角度が影響を受けるということがない。ちなみにストッパピンに六角頭付ボルトを用いた場合、該六角頭の何れの部分が上記係合部3aに当接するかによってフロントフォーク7の回動角度が変化する。なお、上記ストッパピン36はねじ止めではなく圧入により固定してもよい。
【0018】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、アルミ合金の押し出し成形材によりアンダブラケット5,アッパブラケット6を形成したので、従来の鍛造成形品に比べて製造コストを低減でき、また肉抜きの窓部22,32を貫通形成できるので軽量化をより促進できる。上記各ブラケット5,6の前壁5a,6aと後壁5b,6bとをリブ壁5c,6cにより結合したので、軽量化を図りながらブラケット全体の強度,剛性を確保できる。また上記リブ壁5c,6cを傾斜させることにより三角形状の窓部22,32を形成したので、この点からも強度,剛性を向上できる。
【0019】
本実施形態では、上記アンダブラケット5の前壁5aとリブ壁5cの結合部にストッパ挿着孔35を形成したので、軽量化を図りながらストッパピン36の取付け強度を確保できる。
【0020】
また、上記各ブラケット5,6に窓部32,22を貫通形成したので、フロントフォーク7のアウタチューブ10の半径方向における変形量を均一にすることができ、ひいてはインナチューブ11の軸方向移動をスムーズにでき、特に上側のリングメタル15の寿命を延長できる。ちなみに、従来の鍛造成形によるブラケットの場合、肉抜き穴を貫通させることは困難であり、底壁が残ることから、アンダブラケットを2本のボルトでアウタチューブに固定した場合、上記底壁から離れた側のボルトの締め付け力によるアウタチューブの半径方向の変形量が底壁に近い側のボルト締め付け力による変形量よりも大きくなり、アウターチューブに「そり」が生じ、その結果インナチューブの摺動抵抗が大きくなってリングメタルが摩耗し易くなるという問題がある。本実施形態のような倒立フォークの場合、アンダブラケット5を挟んだ上下位置にリングメタル15,16がある(正立フォークの場合は両リングメタル共アンダブラケットの下方側に位置している。)ため上記「そり」による摺動抵抗増加がより顕著となるが、押出し材を採用したのでこの問題を回避できる。
【0021】
また本実施形態では、各ブラケット5,6の前縁にボス部31a,21aを車体後方からの投影面内に位置するように形成したので、押し出し成形用金型(ダイス)の大型化を回避できる。ちなみにボス部を側方に突出するように形成した場合には、該ボス部の突出分だけ金型が大きくなるという問題がある。
【0022】
なお、上記実施形態では、左, 右のフロントフォーク7の中央部,上端部をそれぞれアンダブラケット5,アッパブラケット6で固定し、各ブラケット5,6間にステアリングシャスト4を固定した場合を説明したが、本発明は、例えばフロントフォークの上端間にブラケットを固定し、該ブラケットの上面に上方に延びるステアリングシャフトを固定したスクータ型自動二輪車のステアリング装置にも適用できる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明に係る自動二輪車のステアリング装置によれば、フロントフォークを支持するブラケットをアルミ合金の押し出し成形材により形成し、該ブラケットの前壁と後壁とをリブ壁で結合するとともに、該リブ壁と前壁との結合部にストッパの取付部を形成したので、製造コスト及び重量の低減を図ることができ、また押し出し成形材を採用する場合のブラケット全体の強度,剛性を確保でき、さらにはストッパピンの取付け強度を確保できる効果がある。
【0024】
請求項2の発明では、上記ブラケットのボス部を、該ブラケットの車体後方からの投影面内に位置するように車体前側に形成したので、金型の大型化を回避でき、製造コストを低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車のステアリング装置を説明するためのアンダブラケットの平面図である。
【図2】上記アンダブラケットの断面図(図1のII-II 線断面図)である。
【図3】上記アンダブラケットの側面図である。
【図4】上記装置のアッパブラケットの平面図である。
【図5】上記アッパブラケットの側面図である。
【図6】上記ステアリング装置のステアリングシャフト部分を示す側面図である。
【図7】上記ステアリング装置のフロントフォーク部分を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
1 ステアリング装置
3 ヘッドパイプ
4 ステアリングシャフト
5 アンダブラケット
5a 前壁
5b 後壁
5c リブ壁
6 アッパブラケット
6a 前壁
6b 後壁
6c リブ壁
7 フロントフォーク
21,31 フォーク固定部
21a,31a 締め付けボス部
21b,30b ステアリングシャフト固定部
35 ストッパ挿着孔(取付部)
36 ストッパ

Claims (2)

  1. 前輪を軸支する左,右一対のフロントフォークをブラケットで連結固定し、該ブラケットにヘッドパイプにより枢支されるステアリングシャフトを固定してなる自動二輪車のステアリング装置において、上記ブラケットを、アルミ合金の押し出し成形材製で、かつ中央のステアリングシャフト固定部の前縁,後縁と左,右のフォーク固定部の前縁,後縁とを車幅方向に延びる前壁,後壁で連結し、さらに該前壁と後壁とを該両壁間を斜めに横切るリブ壁で結合した構造のものとし、該リブ壁と前壁又は後壁との結合部に上記フロントフォークの回動角度を規制するストッパの取付部を形成したことを特徴とする自動二輪車のステアリング装置。
  2. 請求項1において、上記ブラケットのフォーク固定部を環状でかつ締め付け用スリットを有するものとし、かつ該スリットを車軸方向に締め付けるためのボルトの挿入用ボス部が該ブラケットの車体後方からの投影面内に位置するように形成されていることを特徴とする自動二輪車のステアリング装置。
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