JP3662275B2 - ドライエッチング方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はドライエッチング方法に関し、さらに詳しくは、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を、選択的にパターニングするドライエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaAs MESFET(Metal Semiconductor FET)を単一半導体チップ上に集積化したMMIC(Monolithic Microwave IC)は、GHz帯の高周波領域での高速応答性、低雑音性および低消費電力等の特長を有することから、近年移動体通信や衛星通信用の半導体デバイスとして応用が広まりつつある。
【0003】
またGaAs MESFETのさらなる高速化を意図した半導体デバイスとして、HEMT(High Electron Mobility Transistor)が開発されている。このデバイスは、例えばノンドープGaAs層上のn型AlGaAs層とのヘテロ接合界面に閉じ込められた2−DEG(TwoDimensional Electron Gas)が、面内を高速で移動しうる現象を利用したものである。このHEMTにしても、高性能化、高集積化を実現するデバイス加工技術としてのドライエッチング方法に、より高精度の要求がよせられている。
【0004】
なかでも、AlGaAs層上に積層されたGaAs層を選択的にエッチングしてゲートリセスを形成する工程は、HEMT、ヘテロ接合FET等の閾値電圧を決定する重要な段階である。これは、下層のAlGaAs層の不純物濃度や厚さが、上層のGaAs層を制御性よく選択的に除去すれば、所望の閾値電圧を有するFETが得られるように、予め設計されているためである。
【0005】
AlGaAs層上に積層されたGaAs層の選択エッチング方法としては、CClx Fy 系のクロロフルオロカーボン系ガスと、希ガスとの混合ガスを用いる方法が一般的である。これは、蒸気圧の大きな反応生成物として、GaClx 、AsFy およびAsClx をそれぞれ形成してGaAsがエッチング除去される一方、下層のAlGaAs層が露出した時点においてはその表面に蒸気圧の小さいAlFx が形成され、このAlFx がエッチングストッパとなって高選択比が達成されるからである。一例として、Japanese Journal ofApplied Physics 20−11,L847−850(1981)には、CCl2 F2 /He混合ガスを用いて選択比200を達成した例が報告されている。
【0006】
しかしながら、クロロフルオロカーボン系ガスは特定フロンに指定されているものが多く、このCCl2 F2 (フロン12)もその1つである。これら特定フロンは地球のオゾン層破壊の一因と考えられており、環境保全の意味から製造および使用が禁止される運びである。そこでクロロフルオロカーボン系ガスの代替となりうるエッチングガスおよびその使用技術、すなわち脱フロンプロセスの確立が急務となっている。
【0007】
またクロロフルオロカーボン系ガスは、放電解離によりフルオロカーボン系ポリマを大量に生成し、エッチング中のパターン側面に付着して側壁保護膜となり、異方性の向上に寄与する。その反面、このフルオロカーボン系ポリマはエッチングチャンバ内壁面にも堆積して蓄積し、エッチングレートの変動やパーティクルレベルの悪化等を招きやすい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を、クロロフルオロカーボン系ガスを用いることなしに、選択的にパターニングするドライエッチング方法を提供することである。
【0009】
また本発明の別の課題は、側壁保護膜の過大な堆積によるパーティクルレベルの上昇やパターン変換差を生じることなく、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を異方性加工しうるドライエッチング方法を提供することである。本発明の上記以外の課題は、本願明細書中の記載および添付図面の説明により明らかとなる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のドライエッチング方法は、上述の課題を解決するために発案したものであり、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を、C−O結合を有する有機化合物ガスと、F系ガスとを含む混合ガスによりエッチングするものである。
【0011】
また本発明のドライエッチング方法は、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層の層厚方向の1部を、C−O結合を有する有機化合物ガスと、F系ガスとを含む混合ガスによりエッチングする第1のエッチング工程と、Alを含まない化合物半導体層の層厚方向の残余部を、この混合ガス中のF系ガスの混合比を高めてエッチングする第2のエッチング工程とにより、2段階エッチングするものである。
【0012】
C−O結合を有する有機化合物ガスとしては、アルコール、エーテル、エステル、カルボン酸およびアルデヒド等がある。これら有機化合物は、常温では液体で存在するものが多いが、液体化合物の場合には、加熱バブリング法やベーキング法により容易に気化し、エッチングチャンバ内へ導入できる、比較的低分子量の化合物が好ましい。かかるアルコール、エーテル、エステルおよびカルボン酸等の各例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸、酢酸、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド等を単独で、あるいは組み合わせて使用することが可能である。
【0013】
さらに本発明のドライエッチング方法は、C−O結合を有する有機化合物ガスと、F系ガスとを含む混合ガス中に、Cl系ガスおよびBr系ガスのいずれか一方をさらに含むものである。
【0014】
本発明で用いるF系ガスは、NF3 やSF6 等のF原子を含む汎用ガスであってもよいが、S2 F2 、SF2 、SF4 およびS2 F10等のフッ化イオウ系ガスであってもよい。
【0015】
また本発明で用いるCl系ガスおよびBr系ガスは、Cl2 やHBr等のCl原子やBr原子を含む汎用ガスであってもよいが、S2 Cl2 、S3 Cl2 、SCl2 、S2 Br2 、S3 Br2 およびSBr2 等の塩化イオウ系ガス、臭化イオウ系ガスであってもよい。
【0016】
【作用】
本発明のポイントは、異方性エッチングに不可欠の側壁保護膜の構成材料を、主としてレジストマスクの分解生成物に求め、その膜質を強化して耐イオン衝撃性と耐ラジカルアタック性を高め、側壁保護膜の付着量を低減しても、十分な側壁保護効果と被エッチング層の表面保護効果を得ることができる点にある。
【0017】
脱フロンプロセスを確立しようとする場合、側壁保護膜としての炭素系ポリマの構成材料を、フロン系エッチングガスの解離生成物に求めることは出来なくなる。そこで側壁保護膜の供給源をレジストマスクの分解生成物に求めざるを得ない。このためには、側壁保護効果を高めるため、レジストマスクの分解生成物を多量に供給すべく、エッチング時の入射イオンエネルギを高めてレジストマスクを積極的にスパッタすることが考えられる。しかし、この手法では対レジスト選択比が低下し、下地層のイオンダメージやパーティクルレベル悪化の虞れがある。
【0018】
そこで本発明のドライエッチング方法においては、側壁保護膜としての炭素系ポリマの膜質を強化する手段として、C−O結合を有する有機化合物ガスをエッチングガス中に混合する方法を採用する。アルコール、エーテル、エステル、カルボン酸およびアルデヒド等からなるこれら有機化合物ガスは、いずれも一般式Cx Hy Oz で表され、放電解離条件下で生成するHやCOの活性種がプラズマ中のハロゲンラジカルを補足することで、炭素系ポリマ中のハロゲン含有量を低減する。さらにC−H結合やC−O結合を有する分極構造を持つ原子団がプラズマ中に発生することにより、レジストマスクの分解生成物に起因する炭素系ポリマの重合度が上昇する。かかる構造の炭素系プラズマポリマは、単に -(CX)n - や -(CH)n - の繰り返し単位構造からなる従来の炭素系プラズマポリマよりも、化学的、物理的安定性が増すことは近年の研究から明らかになっている(ここでXはハロゲン元素を、nは自然数をそれぞれ表す)。これは、2原子間の結合エネルギで比較すると、C−O結合(1077kJ/mol)がC−C結合(607kJ/mol)より大きいことからも支持される。これらはいずれも側壁保護膜の膜質を強化し、入射イオンやラジカルのアタックからパターン側面を保護する効果を高める。
【0019】
このように、側壁保護膜としての炭素系ポリマの膜質が強化されるので、異方性加工に必要な入射イオンエネルギを低減でき、対レジストマスク選択比が向上する。またこれにより、従来より薄いフォトレジスト塗布膜であっても、十分実用に耐えるレジストマスクを形成でき、リソグラフィ時における解像度の向上に寄与する他、加工寸法変換差の低減が図れる。
【0020】
また入射イオンエネルギの低減効果は、当然ながら対下地選択比の向上にもつながる。さらに、側壁保護膜としての炭素系ポリマの堆積量を低減できるので、従来よりパーティクル汚染を低減することが可能となる。
【0021】
ところで、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を高選択比でエッチングする場合、Alを含む化合物半導体層上で蒸気圧の小さいAlFx を形成し、これをエッチングストッパとして用いることが原理的に有効である。そこで本発明では、C−O結合を有する有機化合物ガスとF系ガスとの混合ガスをエッチングガスとして採用するのである。
【0022】
本発明は以上のような技術的思想を基本原理としているが、さらに一層の高異方性、低パーティクル化と高選択比を目指す方法をも提案する。その一つは、エッチングを2段階化し、第2のエッチング工程において第1のエッチング工程よりもF系ガスの混合比を高めることにより、上記の目的を達成するものである。このとき、前段の第1のエッチング工程は、Alを含まない化合物半導体層は層厚方向の大部分が除去され、下地のAlを含む化合物半導体層表面は露出直前、あるいは1部露出している部分もある、いわばジャストエッチング工程である。そこでこの段階でF系ガスの混合比を高めた第2のエッチング工程、すなわちオーバーエッチング工程に切り替えれば、エッチングストッパとしてのAlFx の生成が促進され、選択性が向上するのである。
【0023】
また、上述した混合ガス系にCl系ガスまたはBr系ガスをさらに添加すればエッチングレートを高めることが可能となる。すなわち、ハロゲン系ガスとしてF系ガスのみでは、化合物半導体の構成元素によっては蒸気圧の大きな反応生成物が得られず、十分なエッチングレートが得られない虞れがある。このような場合には、エッチング反応系にCl* やBr* の化学種をも併存させることにより、蒸気圧の大きな反応生成物を利用でき、エッチングの高速化が達成される。また炭素系ポリマとしても、CClx 、CBrx 等、より堆積しやすい組成のものも併用することができる。
【0024】
さらに、本発明においては上述した側壁保護の機構に加えて、イオウ系材料をも側壁保護膜として併用する方法を提案する。イオウ系材料としては、遊離のイオウまたはポリチアジル(SN)n を利用することができる。イオウは、S2 F2 、SF2 、SF4 、S2 F10、S2 Cl2 、S3 Cl2 、SCl2 、S2 Br2 、S3 Br2 およびSBr2 のうちのいずれかのハロゲン化イオウ系ガスを放電解離することにより、大略室温以下に制御された被エッチング基板上に堆積することが可能である。またポリチアジルは、これらハロゲン化イオウ系ガスにさらにN2 、NF3 、N2 F4 およびN2 H4 等のN系ガスを添加することにより、やはり大略室温以下に制御された被エッチング基板上に堆積することが可能である。いずれの場合も、これらハロゲン化イオウ系ガスはNF3 やCl2 等の汎用ハロゲン系ガスと併用してもよいし、ハロゲン化イオウ系ガスをメインエッチャントとして用いてもよい。ただし、フッ化イオウガスとして最も一般的なSF6 は、1分子中のF原子とS原子の比であるF/S比が6と大きく、放電解離しても遊離のイオウをプラズマ中に生成しないので、イオウ系材料を側壁保護膜として併用する目的には向かない。
【0025】
イオウ系材料を側壁保護膜として併用することにより、レジストマスクの分解生成物である炭素系ポリマの堆積を低減することが可能となるので、レジストマスクのスパッタリングに要するイオンの入射エネルギを低減することができ、対レジストマスク選択比が向上する。また炭素系ポリマの堆積の低減は、パーティクル汚染の低減を意味する。これは、これらイオウ系材料はプラズマエッチング終了後、被エッチング基板を加熱するだけで昇華除去することができるからである。昇華温度はイオウは約90℃以上、ポリチアジルは約150℃以上であり、昇華後は被エッチング基板上に何らパーティクル汚染やコンタミネーションを残すことはない。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例につき、図面を参照しつつ説明する。なお以下に示す各実施例は、HEMTのゲートリセス加工に適用し、エッチング装置として基板バイアス印加型ECRプラズマエッチング装置を用いた例である。
【0027】
実施例1
本実施例は、n+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層を、メタノール(CH3 OH、bp=64.6℃)/NF3 /Ar混合ガスを用いて選択エッチングした例であり、これを図1(a)〜(c)を参照して説明する。本実施例で用いたエッチング試料は、図1(a)に示すように半絶縁性GaAs基板1上に500nmの厚さにエピタキシャル成長したノンドープのGaAsバッファ層2、厚さ約2nmのノンドープAlGaAs層3、厚さ約30nmのSiドープn+ −AlGaAs層4、および同じくn型不純物を含むn+ −GaAs層5を100nm順次成長し、この上に所定の開口径を有するレジストマスク6を形成したものである。なおレジストマスク6は、一例として電子ビームリソグラフィにより、300nmの開口幅に形成したものである。
【0028】
この被エッチング基板を、基板バイアス印加型ECRプラズマエッチング装置の基板ステージ上に載置し、一例として下記エッチング条件によりn+ −GaAs層5をエッチングした。
CH3 OH流量 40 sccm
NF3 流量 40 sccm
Ar流量 90 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 50 W(2MHz)
基板温度 20 ℃
本エッチング工程においては、NF3 の解離により生成するF* がn+ −GaAs中のAsをAsF3 、AsF5 の形で、またGaをGaF3 の形で引き抜き、エッチングが進行する。ただし、本エッチング条件の基板温度ではGaF3 の蒸気圧は小さいので、混合ガス中にArを添加し、NFx + に加えてAr+ によるイオンスパッタを併用し、GaF3 を除去している。
【0029】
またこれと同時に、レジストマスク6の分解生成物に由来する -(CF)n - や -(CH)n - の繰り返し単位構造からなる炭素系ポリマが生成し、図1(b)に示すようにレジストマスク6およびn+ −GaAs層5パターン側面に付着し、側壁保護膜7を形成する。この炭素系ポリマは、従来のエッチング条件による同種のポリマに比してF原子の組成比が小さく、またCO結合をそのネットワーク構造中に採り込んだ強固なものである。このため、本実施例においては炭素系ポリマの生成量は従来のエッチング条件による場合ほど多くはないものの、側壁保護膜7は高いエッチング耐性を示し、n+ −GaAs層5の異方性加工に寄与する。図1(b)ではこの側壁保護膜7は、厚さを誇張して示してあるが、実際には極めて薄い膜である。
【0030】
下地のn+ −AlGaAs層4が露出すると、その表面にAlFx 層(図示せず)が形成され、エッチング速度は大幅に低下し、実質的なエッチングストッパ層となる。次にO2 プラズマ処理を施すと側壁保護膜7は燃焼除去され、図1(c)に示すように垂直壁を有するリセス8が形成された。なおこのO2 プラズマ処理は、レジストマスク6をアッシング除去しない程度の極く軽度の処理で十分である。
【0031】
この後の工程であるゲート電極の形成は、公知の方法により行えばよい。その一例を図2に示す。すなわち、図1(c)に示す試料表面全面にAl系金属の電子ビーム蒸着を行い、例えば200nmの厚さのAl系金属層9を形成する。この蒸着は、微細なリセス8におけるステップカバレッジの劣化を積極的に利用するものであり、図2(a)に示すようにリセス8の底部にはゲート電極パターン9aが孤立して形成される。次にレジスト剥離液によりレジストマスク6を除去すると、Al系金属層9はリフトオフされ、微細なリセス8底部にゲート電極パターン9aのみを残すことができる。この状態を図2(b)に示す。
【0032】
本実施例によれば、CH3 OHをエッチングガス中に添加することにより、良好な異方性を有するGaAs層の対AlGaAs層選択エッチングが可能となる。
【0033】
実施例2
本実施例は、同じn+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層を、ジメチルエテル(CH3 OCH3 、bp=−24℃)/NF3 /Cl2 混合ガスを用いて選択エッチングした例であり、これを再び図1(a)〜(c)を参照して説明する。
【0034】
本実施例で用いた被エッチング基板は、実施例1で用いた図1(a)に示すものと同じである。この被エッチング基板を一例として下記エッチング条件によりパターニングする。
CH3 OCH3 流量 30 sccm
NF3 流量 30 sccm
Cl2 流量 50 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 30 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
このエッチング工程では、NF3 から解離生成するF* と、Cl2 から解離生成するCl* が主エッチング種となり、n+ −GaAs層5中のAsを主としてAsF3 、AsF5 およびAsCl3 の形で、またGaをGaCl3 の形で引き抜き、実用的なエッチングレートをもってパターニングが進行する。
【0035】
またこれと同時に、レジストマスク6の分解生成物に由来する -(CF)n - 、 -(CCl)n - や -(CH)n - の繰り返し単位構造からなる炭素系ポリマが生成し、図1(b)に示すようにレジストマスク6およびn+ −GaAs層5パターン側面に付着し、側壁保護膜7を形成する。この炭素系ポリマは、従来のエッチング条件による同種のポリマに比してF原子やCl原子の組成比が小さく、またCO結合をそのネットワーク構造中に採り込んだ強固なものである。また本実施例においてはこの炭素系ポリマの生成量は従来のエッチング条件による場合ほど多くはないが、側壁保護膜7は高いエッチング耐性を示し、n+ −GaAs層5の異方性加工に寄与する。図1(b)ではこの側壁保護膜7は、同じく厚さを誇張して示してあるが、実際には極めて薄い膜である。
【0036】
下地のn+ −AlGaAs層4が露出すると、その表面にAlFx 層(図示せず)が形成され、エッチング速度は大幅に低下し、実質的なエッチングストッパ層となる。次にO2 プラズマ処理を施すと側壁保護膜7は燃焼除去され、図1(c)に示すように垂直壁を有するリセス8が形成された。
【0037】
この後の工程であるゲート電極の形成は、実施例1と同様である。本実施例によれば、CH3 OCH3 をエッチングガス中に添加することにより、良好な異方性を有するGaAs層の対AlGaAs層選択エッチングが可能となる。また本実施例では、Gaを蒸気圧の大きな塩化物として除去できるので、実施例1に比較してRFバイアスパワーが低減されているににもかかわらず、高速でエッチングが進行した。なお、本実施例で用いたCl系ガスとしてのCl2 の替わりに、Br系ガスであるHBrやBr2 を用いても、同様に良好な異方性エッチングを行うことができる。この場合には、 -(CCl)n - よりエッチング耐性の大きな -(CBr)n - をも繰り返し単位として含む炭素形成ポリマが生成するので、レジストマスク6に対する選択比をさらに向上することが可能である。
【0038】
実施例3
本実施例は、エッチング工程を2段階化し、同じn+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層を、CH3 OH/NF3 /Cl2 混合ガスを用いてジャストエッチングした後、この混合ガス中のNF3 の流量比を高め、n+ −AlGaAs層の残余部を除去するためのオーバーエッチングを行った例であり、これを図3(a)〜(d)を参照して説明する。
【0039】
本実施例で用いた図3(a)に示す被エッチング基板は、実施例1で用いた図1(a)に示すものと同じであるので説明を省略する。この被エッチング基板を一例として下記第1のエッチング条件によりパターニングし、n+ −GaAs層5をジャストエッチングする。
CH3 OH流量 40 sccm
NF3 流量 30 sccm
Cl2 流量 50 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 30 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
本エッチング工程のメカニズム等は実施例2と大略同じである。ジャストエッチング終了後の被エッチング基板は、図3(b)に示すようにリセス7の底部に若干のn+ −GaAs層の残余部5aが残った状態であった。
【0040】
そこでエッチング条件を一例として下記のように切り替え、n+ −GaAs層の残余部5aを除去するための第2のエッチング工程、すなわちオーバーエッチングを施した。
CH3 OH流量 40 sccm
NF3 流量 60 sccm
Cl2 流量 20 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 15 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
この第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程に比較してNF3 の混合比が高められていることにより、n+ −AlGaAs層4の露出表面上でのAlFx の生成が促進される。またRFバイアスパワーを第1のエッチング工程に比べ半減させたので、n+ −GaAs層の残余部5aを除去後も、n+ −AlGaAs層4に何ら悪影響を及ぼすことはなかった。この状態を図3(c)に示す。続けてO2 プラズマ処理により側壁保護膜7を除去して図3(d)に示すように垂直壁を有するリセス8が完成した。
【0041】
本実施例では、エッチングの2段階化によりn+ −AlGaAs層4に対する選択比は100以上となり、n+ −AlGaAs層4表面のダメージ層の発生は見られなかった。
【0042】
実施例4
本実施例は同じn+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層をアセトン(CH3 COCH3 、bp=56.5℃)/NF3 /S2 Cl2 混合ガスを用いて低温エッチングした例であり、これを再び図1を参照して説明する。
【0043】
本実施例で用いた図1(a)に示す被エッチング基板は、実施例1と同様であるので説明を省略する。この被エッチング基板を一例として下記エッチング条件によりパターニングする。
CH3 COCH3 流量 40 sccm
NF3 流量 30 sccm
S2 Cl2 流量 50 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 20 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
本エッチング工程では、NF3 から解離生成するF* と、S2 Cl2 から解離生成するCl* が主エッチング種となり、n+ −GaAs層5中のAsを主としてAsF3 、AsF5 およびAsCl3 の形で、またGaをGaCl3 の形で引き抜き、パターニングが進行する。
【0044】
またこれと同時に、レジストマスク6の分解生成物に由来する -(CF)n - 、 -(CCl)n - や -(CH)n - の繰り返し単位構造からなる炭素系ポリマと、S2 Cl2 から解離生成するイオウが、共に図1(b)に示すようにレジストマスク6およびn+ −GaAs層5パターン側面に付着し、側壁保護膜7を形成する。この炭素系ポリマは、従来のエッチング条件による同種のポリマに比してF原子やCl原子の組成比が小さく、またCO結合をそのネットワーク構造中に採り込んだ強固なものであり、イオウの堆積とあいまって高いエッチング耐性を示す。下地のn+ −AlGaAs層4表面が露出した時点でのエッチングの停止機構は前の各実施例と同じである。
【0045】
側壁保護膜中のイオウは、エッチング終了後、被エッチング基板を約90℃以上に加熱すると昇華し、被エッチング基板上に痕跡を残さない。あるいは、側壁保護膜7を除去するO2 プラズマ処理時に炭素系ポリマと共に燃焼除去することも可能である。この状態を図1(c)に示す。
【0046】
本実施例によれば、イオウを含む強固な側壁保護膜の寄与により、実施例1および2に比較して、RFバイアスパワーを下げた条件であっても良好な異方性エッチングが進行し、レジストマスク6に対する選択比も向上した。また炭素系ポリマの堆積量を相対的に低減できるので、パーティクル汚染の低減にも寄与する。なお、本実施例ではCl系ガスとしてS2 Cl2 を用いたが、S2 Br2 等のBr系ガスを用いてもよい。
【0047】
実施例5
本実施例は同じn+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層をアセトン(CH3 COCH3 、bp=56.5℃)/NF3 /S2 Br2 /N2 混合ガスを用いて低温エッチングした例であり、これを再度図1を参照して説明する。
【0048】
本実施例で用いた図1(a)に示す被エッチング基板は、実施例1と同様であるので説明を省略する。この被エッチング基板を一例として下記エッチング条件によりパターニングする。
CH3 COCH3 流量 40 sccm
NF3 流量 30 sccm
S2 Br2 流量 50 sccm
N2 流量 20 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 15 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
本エッチング工程では、NF3 から解離生成するF* と、S2 Br2 から解離生成するBr* が主エッチング種となり、n+ −GaAs層5中のAsを主としてAsF3 、AsF5 およびAsBr3 の形で、またGaをGaBr3 の形で引き抜き、パターニングが進行する。
【0049】
またこれと同時に、レジストマスク6の分解生成物に由来する -(CF)n - 、 -(CCl)n - や -(CH)n - の繰り返し単位構造からなる炭素系ポリマが、図1(b)に示すようにレジストマスク6およびn+ −GaAs層5パターン側面に付着し、側壁保護膜7を形成する。この側壁保護膜7は、S2 Br2 から解離生成するイオウと、N2 の解離によるN原子により生成するポリチアジルを含む。このうち、炭素系ポリマは、従来のエッチング条件による同種のポリマに比してF原子やBr原子の組成比が小さく、またCO結合をそのネットワーク構造中に採り込んだ強固なものであり、ポリチアジルの堆積とあいまって高いエッチング耐性を示す。下地のn+ −AlGaAs層4表面が露出した時点でのエッチングの停止機構は前の各実施例と同じである。
【0050】
側壁保護膜中のポリチアジルは、エッチング終了後、被エッチング基板を約150℃以上に加熱すると昇華し、被エッチング基板上に痕跡を残さない。あるいは、側壁保護膜7を除去するO2 プラズマ処理時に炭素系ポリマと共に燃焼除去することも可能である。この状態を図1(c)に示す。
【0051】
本実施例によれば、ポリチアジルを含む強固な側壁保護膜の寄与により、実施例4に比較して、RFバイアスパワーをさらに下げた条件であっても良好な異方性エッチングが進行し、レジストマスク6や下地のn+ −AlGaAs層4に対する選択比も向上した。また炭素系ポリマの堆積量を相対的の低減できるので、パーティクル汚染の低減にも寄与する。なお、本実施例ではBr系ガスとしてS2 Br2 を用いたが、S2 Cl2 等のCl系ガスを用いてもよい。
【0052】
実施例6
本実施例は、エッチング工程を2段階化し、同じn+ −AlGaAs層上のn+ −GaAs層を、CH3 OCH3 /S2 F2 /Cl2 混合ガスを用いてジャストエッチングした後、この混合ガス中のS2 F2 の流量比を高め、n+ −AlGaAs層の残余部を除去するためのオーバーエッチングを行った例であり、これを再び図3(a)〜(d)を参照して説明する。
【0053】
本実施例で用いた図3(a)に示す被エッチング基板は、実施例1で用いた図1(a)に示すものと同じであるので説明を省略する。この被エッチング基板を一例として下記第1のエッチング条件によりパターニングし、n+ −GaAs層5をジャストエッチングする。
CH3 OCH3 流量 40 sccm
S2 F2 流量 30 sccm
Cl2 流量 50 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 30 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
本エッチング工程では、ハロゲン元素の含有量が小さく、C−O結合やC−H結合が導入により強化された炭素系ポリマと、S2 F2 の解離生成によるイオウとにより、耐イオン衝撃性の高い側壁保護膜7を形成しつつ異方性エッチングが進行する。ジャストエッチング終了後の被エッチング基板は、図3(b)に示すようにリセス7の底部に若干のn+ −GaAs層の残余部5aが残った状態であった。
【0054】
次にエッチング条件を一例として下記のように切り替え、n+ −GaAs層の残余部5aを除去するための第2のエッチング工程、すなわちオーバーエッチングを施した。
CH3 OCH3 流量 40 sccm
S2 F2 流量 50 sccm
Cl2 流量 30 sccm
ガス圧力 1.5 Pa
マイクロ波パワー 850 W(2.45GHz)
RFバイアスパワー 15 W(2MHz)
被エッチング基板温度 20 ℃
この第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程に比較してS2 F2 の混合比が高められていることにより、n+ −AlGaAs層4の露出表面上でのAlFx の生成が促進される。またRFバイアスパワーを第1のエッチング工程に比べ半減させたので、n+ −GaAs層の残余部5aを除去後も、n+ −AlGaAs層4に何ら悪影響を及ぼすことはなかった。この状態を図3(c)に示す。続けてO2 プラズマ処理により側壁保護膜7を除去して図3(d)に示すように垂直壁を有するリセス8が完成した。
【0055】
本実施例では、イオウの堆積を併用した側壁保護膜の採用と、エッチングの2段階化によりn+ −AlGaAs層4に対する選択比は150以上となり、n+ −AlGaAs層4表面のダメージ層の発生は見られなかった。
【0056】
以上、本発明を6種類の実施例により説明したが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
まず、上述の各実施例では、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層の積層系として、GaAs/AlGaAsの組み合わせを例示したが、上層にAlを含まず、下層にAlを含む従来公知の化合物半導体の積層系の選択エッチングに本発明を適用することが可能である。このような組み合わせとしては、例えばGaP/AlGaP、InP/AlInP、GaN/AlGaN、InAs/AlInAs等の2元素系/3元素系、あるいは3元素系/4元素系の化合物半導体の積層系を例示できる。
【0058】
さらに本発明は、非Al含有化合物半導体/Al含有化合物半導体の積層系の選択エッチングが必要とされるプロセスであれば、上記各実施例のHEMTの製造プロセスの他、MESFET、半導体レーザ素子、量子井戸デバイス等の加工にも適用可能である。
【0059】
C−O結合を含む有機化合物ガスとして、CH3 OH、CH3 OCH3 、CH3 COCH3 を例示したが、比較的低分子量で蒸気圧の大きいアルコール、エーテル、ケトン、エステル、カルボン酸およびアルデヒド等を適宜用いることができる。これら有機化合物は、常温では液体で存在するものが多いが、液体化合物の場合には、加熱バブリング法やベーキング法により気化し、エッチングチャンバ内へ導入して用いればよい。
【0060】
F系ガスとして実施例で用いたNF3 、S2 F2 の他にSF6 、N2 F4 、ClF3 、XeF2 、F2 等F原子を有する化合物を使用できる。SF2 、SF4 およびS2 F10のようなフッ化イオウ系ガスは、側壁保護膜としてのイオウの供給源を兼備するガスとして用いることが出来る。
【0061】
Cl系ガスおよびBr系ガスとして実施例で用いたCl2 、S2 Cl2 、S2 Br2 、の他にHCl、BCl3 、HBr、BBr3 、Br2 等を用いることが可能である。S3 Cl2 、SCl2 、S3 Br2 およびSBr2 等の塩化イオウ系ガス、臭化イオウ系ガスは、側壁保護膜としてのイオウの供給源を兼備するガスとして用いることが出来る。
【0062】
エッチング装置として基板バイアス印加型ECRプラズマエッチング装置を例示したが、より一般的な平行平板型RIE装置や、高密度プラズマによる処理が可能なヘリコン波プラズマエッチング装置、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング装置、TCP(Transformer Coupled Plasma)エッチング装置等を用いる事が可能である。
【0063】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明はAlを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を、クロロフルオロカーボン系ガスを用いることなしに、選択的にパターニングする脱フロンドライエッチング方法を提供することが可能となった。
【0064】
また本発明によれば、強固な側壁保護膜の採用により、その過大な堆積によるパーティクルレベルの上昇やパターン変換差を生じることなく、Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を異方性加工しうることが可能となった。
【0065】
また、同じく側壁保護膜の強化により、異方性エッチングに必要な入射イオンエネルギの低減が可能となる。このため、下地Alを含む化合物半導体層との選択比が向上し、ダメージを低減できるほか、レジストマスクとの選択比も向上するので、レジストパターン後退等による寸法変換差の低減に有利である。
【0066】
以上述べたように、本発明は化合物半導体装置の製造プロセスの高度な要求に応える一方、脱フロンプロセスが可能となり、環境のクリーン化にも貢献しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した実施例1、2、4および5を、その工程順に説明する概略断面図であり、(a)は半絶縁性GaAs基板上にGaAsバッファ層、AlGaAs層、n+ −AlGaAs層およびn+ −GaAs層を順次形成した状態、(b)は側壁保護膜を形成しつつn+ −GaAs層をエッチングした状態、(c)は側壁保護膜を除去してリセスが完成した状態である。
【図2】図1に続く工程を説明するための概略断面図であり、(a)はAl系金属層を形成した状態、(b)はAl系金属層をリフトオフしてリセス底部にゲート電極パターンを残置した状態である。
【図3】本発明を適用した実施例3および6を、その工程順に説明する概略断面図であり、(a)は半絶縁性GaAs基板上にGaAsバッファ層、AlGaAs層、n+ −AlGaAs層およびn+ −GaAs層を順次形成した状態、(b)は側壁保護膜を形成しつつn+ −GaAs層の層厚方向の1部をエッチングした状態、(c)はn+ −GaAs層の層厚方向の残余部をエッチングした状態、(d)は側壁保護膜を除去してリセスが完成した状態である。
【符号の説明】
1 半絶縁性GaAs基板
2 GaAsバッファ層
3 AlGaAs層
4 n+ −AlGaAs層
5 n+ −GaAs層
5a n+ −GaAs層の残余部
6 レジストマスク
7 側壁保護膜
8 リセス
9 Al系金属層
9a ゲート電極パターン
Claims (5)
- Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層を、C−O結合を有するアルコール、エーテル、エステル、カルボン酸およびアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種類である有機化合物ガスと、F系ガスとを含む混合ガスによりエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
- Alを含む化合物半導体層上に積層されたAlを含まない化合物半導体層の層厚方向の1部を、C−O結合を有するアルコール、エーテル、エステル、カルボン酸およびアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種類である有機化合物ガスと、F系ガスとを含む混合ガスによりエッチングする第1のエッチング工程と、
該Alを含まない化合物半導体層の層厚方向の残余部を、前記混合ガス中の前記F系ガスの混合比を高めてエッチングする第2のエッチング工程とを有することを特徴とするドライエッチング方法。 - 混合ガスが、Cl系ガスおよびBr系ガスのいずれか一方をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2記載のドライエッチング方法。
- F系ガスが、S2F2、SF2、SF4およびS2F10からなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1または2記載のドライエッチング方法。
- Cl系ガスおよびBr系ガスが、S2Cl2、S3Cl2、SCl2、S2Br2、S3Br2およびSBr2からなる群から選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、請求項3記載のドライエッチング方法。
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