JP3662120B2 - 水性フロアポリッシュ用組成物 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バフィングによる光沢復元性に優れた水性フロアポリッシュ用組成物に関する。詳しくは、木質系床材、合成樹脂からなる床材、コンクリートや大理石等の石床などの床面に好適であり、特に自動床洗浄機による洗浄と高速ポリッシャーによるバフィングの組み合わせによる日常管理を行ういわゆるドライメンテナンスに適した水性フロアポリッシュ用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
木質系床材、合成樹脂からなる化学床材、コンクリートや大理石等の石床などの床面には、床材の美観を保つともに、床面を保護することを目的としてフロアポリッシュ剤が用いられている。フロアポリッシュ剤には、溶剤を使用する油性タイプのものから、水性または乳化状態のものが一般的である。例えば、特公昭47−14019号公報、特公昭47−15597号公報には、水性分散状態にあるエチレン性不飽和化合物の重合体に、多価金属化合物を使用したフロアーポリッシュ用組成物が開示されている。このものを床に塗布、乾燥して得られた塗膜は、耐久性、走行性などに優れた特性を示し、現在このタイプのものが主流になっている。
また、一方で、耐スリップ性の向上を図ることを目的としてポリウレタン樹脂の水性乳濁液を含有させたフロアポリッシュ剤も開発されている。例えば特公昭53−22548号公報。また、特開昭61−148273号公報には、耐ヒールマーク性や耐スカッフ性などの耐久性を改善するために、水性樹脂とコロイダルシリカとを混合し、かつトリブトキシエチルフォスフェートを併用することによって、皮膜の耐久性を向上できることが開示されている。更に特開平8−41382号公報には、皮膜の耐水性を改良する方法が開示されている。しかしながら、上記に記載する従来の何れの方法においてもバフィングによる光沢の復元性を格段に向上させるものはなく、従来にない発明が必要とされていた。
ドライメンテナンスにおけるバフィング作業は、歩行等により生じた塗膜表面の細かい傷を塑性変形あるいは削り取りにより修復し、歩行等で低下した光沢を復元させる作業である。
一般に、フロアポリッシュのバフィングによる光沢の復元性を向上させようとすると、ポリッシュ剤の主たる成分であるアクリル−スチレン系樹脂エマルジョンの樹脂組成を種々調整することで達成できるが、耐ヒールマーク性や耐スカッフ性などの耐久性が低下する。従って、バフィングによる光沢の復元性に優れ、しかも耐ヒールマーク性や耐スカッフ性などの耐久性に優れるフロアーポリッシュ用組成物を得ることは非常に困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐久性等のフロアーポリッシュ剤に求められる一般的な性能を維持しつつ、バフィングによる光沢復元性が非常に優れた塗膜を形成できる新規な水性フロアポリッシュ用組成物を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ブタジエン系共重合成分を水性フロアポリッシュ用樹脂組成物の一成分として使用することで、高速ポリッシャーによるバフィング時の塗膜の平滑性が容易に得られ、バフィングによる光沢の復元性が向上することを見出し本発明に至った。即ち、本発明は、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョンの固形分100部に対し、スチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンを固形分として5〜100部含有することを特徴とする水性フロアポリッシュ用組成物である。
【0005】
本発明に使用できるスチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンとしては、スチレンとブタジエンを共重合したものが好適であり、その分子量、分子構造、製造方法のいかんに関わらず、あらゆる種類のものが使用できる。スチレンとブタジエンの共重合において、更に芳香族および/またはメタクリル酸メチル等の脂肪族の単量体を任意の共重合比で使用できる。また、水分散性あるいは水可溶性にするためにアクリル酸やメタクリル酸等の不飽和脂肪酸との共重合、あるいは乳化剤を用いた水への分散が可能である。このようなブタジエン系共重合ラテックスは、紙被覆用組成物等の用途に広く知られ、ブタジエンと各種単量体の乳化共重合体があるが、その代表的な例は、特公昭54−6575号公報に記載されている。このようなブタジエン系共重合ラテックスをアクリル−スチレン系樹脂エマルジョンに添加することで、本発明の水性フロアポリッシュ用組成物が製造できるが、アクリル−スチレン系共重合成分の存在下で、ブタジエンを含む単量体を重合したり、ブタジエン系共重合成分の存在下で、脂肪族不飽和化合物やスチレン等の単量体を重合することも可能である。アクリル−スチレン系樹脂とスチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンの比率は、アクリル−スチレン系樹脂100部に対し、スチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンが5〜100部、特に好ましくは5〜50部である。スチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンにおけるブタジエンの好ましい含有量は25〜70重量%であり、また、スチレンの好ましい含有量は0〜75重量%、更に好ましくは30〜75重量%である。
【0006】
本発明で用いられるアクリル−スチレン系樹脂エマルジョンとしては、例えば特公昭44−24409号公報等に開示されている樹脂組成のものが好適に用いられ、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、特にアクリル酸やメタクリル酸およびそのエステル誘導体と、スチレン等の芳香族系モノマーとの共重合体からなる。より具体的には、スチレン、メチルスチレン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチル−ヘキシル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イタコン酸、マレイン酸等から任意のエチレン性不飽和化合物を選択し、一般に公知の乳化重合法により重合体エマルジョンを得ることができる。
【0007】
本発明では、フロアポリッシュ剤に求められる各種特性を満足させるために、水性フロアポリッシュ用組成物として種々の添加物が含有させることができる。このうち、ワックスを含有ことで適度のスベリ性を得ることができ、かつ耐ブラックヒールマーク性及び耐久性に優れたものとすることができる。ワックスとしては、フロアーポリッシュ用として一般に使用される天然ワックスあるいは合成ワックスの水分散液を使用することができる。具体的には、天然ワックスとしてはカルナバワックスやパラフィンワックス等があげられ、合成ワックスとしては、ポリエチレンやポリプロピレン及びそれらの酸化物を始めとして、エチレン、プロピレン等の不飽和単量体やα,β−エチレン性不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル等から選択された単量体を重合して得られるワックスがあげられる。本発明の水性フロアポリッシュ用組成物中のワックス含有量は任意とすることができるが、0〜20重量%含有させるのが好ましい。
【0008】
本発明の水性フロアポリッシュ用組成物に架橋剤を含有させて、得られる塗膜の耐久性を向上させる。本発明で使用する架橋剤としては、金属架橋を可能とする多価金属塩又は多価金属錯体があげられ、より具体的にはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニッケル、鉄、カドミウム、ストロンチウム、ビスマス、ベリリウム、コバルト、鉛、銅、チタン及びアンチモンを使用することができ、特にカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムが好ましい。又、多価金属措体を形成するための配位子としては、例えば炭酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、リンゴ酸イオン、ヒドロキシ酢酸イオン、酒石酸イオン、アクリル酸イオン、乳酸イオン、オクトン酸イオン、ギ酸イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、グルコン酸イオン、及びグルタミン酸イオン、グリシン、アラニン、アンモニア、モルホリン、エチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはこれらに類似した無機酸、有機酸、アミノ酸、アミン等があげられ、特に炭酸亜鉛アンモニウム、炭酸カルシウムエチレンジアミン−アンモニウム、酢酸亜鉛アンモニウム、アクリル酸亜鉛アンモニウム、リンゴ酸亜鉛アンモニウム、リンゴ酸ジルコニウムアンモニウム、アミノ酢酸亜鉛アンモニウム、アラニンカルシウムアンモニウム等の塩が好ましい。
【0009】
本発明の水性フロアポリッシュ用組成物にアルカリ可溶性樹脂を含有させることにより、レベリング性、剥離性及び光沢性とを向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂としては、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ロジン−マレイン酸共重合樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性エポキシ樹脂等があげられる。本発明水性フロアポリッシュ用組成物中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は任意とすることができる。
【0010】
本発明の水性フロアポリッシュ用組成物に水性ポリウレタン系樹脂を含有させることにより、耐久性を向上させることができる。水性ポリウレタン系樹脂としては、ポリウレタン系樹脂の鎖中に、カルボン酸および/またはカルボン酸塩が結合して存在しているものが好ましい。このようなものは、例えば、ポリウレタン系樹脂の製造に際し、ジオール及びジイソシアネートにカルボン酸基を有するジオール等を加え、必要によリカルボン酸基を中和し、重合することによって得られる。カルボン酸基を導入することによって、水分散型あるいは水可溶性を有する水性ポリウレタン系樹脂にできる。さらにまた、必要に応じて乳化剤を加えて水性化することも可能である。
【0011】
本発明の水性フロアポリッシュ用組成物には可塑剤および皮膜形成助剤を含有させることができる.可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、2−ピロリドン、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート等があげられる.皮膜形成助剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、具体的にはジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等があげられる。
本発明の水性フロアポリッシュ用組成物にシリカゾルを含有させることもできる。また、フツ素系界面活性剤や防腐剤を含有させることもできる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例をあげて本発明組成物の効果について例証する。
【0013】
実施例1
アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸=32/28/20/20からなる、Tg46℃、酸価130のアクリル−スチレン系樹脂エマルジョン100部に対しスチレン/ブタジエン=60/40を主成分とする、Tg−1℃のスチレン−ブタジエン系共重合ラテックス10部を添加し本発明の水性フロアポリッシュ用組成物1を得た。
【0014】
実施例2
スチレン−ブタジエン系共重合ラテックス20部使用した他は、実施例1と同じ方法により、本発明の水性フロアポリッシュ用組成物2を得た。
【0015】
実施例3
スチレン−ブタジエン系共重合ラテックス30部使用した他は、実施例1と同じ方法により、本発明の水性フロアポリッシュ用組成物3を得た。
【0016】
比較例1
実施例1に用いたアクリル−スチレン系樹脂エマルジョンのみを用いたものを水性フロアポリッシュ用組成物4とした。
【0017】
実施例2の水性フロアポリツシユ用組成物を60℃、12時間乾燥し、分析用サンプルを調製し、組成物中に含まれるブタジエンを赤外分光光度計(KBr錠剤法、ニコレ社製60SXフーリエ変換赤外分光光度計にて100回積算)で分析した結果、ブタジエン共重合体の特性吸収帯である960〜970cm−1(transl,4CH変角振動)、900〜920cm−1(R−CH=CH変角振動)、1640cm−1(C=C伸縮振動)が観察された。また熱分解ガスクロマトグラフ(ヒューレット・パッカード社製HP5890Aガスクロマトグラフ、FID検出、日本分析工業社製高周波誘導加熱炉型熱分解装置、590℃5秒熱分解)を用いて分析した結果、分解したブタジエン単量体が確認され、確かに本発明水性フロアポリッシュ用組成物中にブタジエンを単量体成分として含有することが確認された。
【0018】
実施例1〜3及び比較例1で調製した水性フロアポリッシュ用組成物1〜4を固形分100部に対しトリブトキシエチルフォスフェート(可塑剤)10部、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(皮膜形成助剤)25部、デュポン社製フッ素系界面活性剤ゾニールFSJ(固形分25%)0.05部、アンモニウム炭酸亜鉛水溶液(固形分12%)6.37部、アトケム社製スチレンマレイン酸樹脂SMA−2625A(固形分15%)6.25部、東邦化学工業社製ポリエチレンワックスエマルジョン ハイテックE−4B(固形分40%)18.76部、武田薬品工業社製防腐剤デルトップ0.68部を順次混合することによりフロアーポリッシュ剤を製造した。
【0019】
得られた各水性フロアポリッシュ用組成物について、バフィングによる光沢復元性を測定し、結果を表1に示した。測定方法は、以下の通りである。
1.光沢度 JIS K−3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠
2.バフィングによる光沢復元性
ホモジニアスビニル床タイル(東リ社製 マチコSプレーン No.5626)に試料を5回塗布後、光沢度を測定した(a)。緑パッドを装着した自動床洗浄機J−クルーズ(ジョンソン・プロフェッショナル社製)を用いて光沢を落とし(b)、超高速ポリッシャースプリント−2000BP(ジョンソン・プロフェッショナル社製)でバフを2回行い(c)(d)、バフ前後の光沢度を測定し、バフィングによる光沢復元性を測定した。
【0020】
【表1】
Figure 0003662120
【0021】
【発明の効果】
表1に示す結果より、本発明のバフィングによる光沢の復元性に優れていることが証明される。本発明によれば、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョンの固形分100部に対し、スチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンを固形分として5〜100部含有する水性フロアポリッシュ用組成物を用いることで、従来、フロアポリッシュ剤に求められる特性として困難であったバフィングによる光沢の復元性と耐久性を両立させることが可能となる。特に自動洗浄機による洗浄と高速ポリッシャーによるバフィングで日常的な管理を行うドライメンテナスに適した水性フロアポリッシュ用組成物が提供される。

Claims (1)

  1. アクリル−スチレン系樹脂エマルジョンの固形分100部に対し、スチレン−ブタジエン系共重合エマルジョンを固形分として5〜100部含有することを特徴とする水性フロアポリッシュ用組成物
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