JP3661726B2 - バナジウムメタロセン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン類の重合触媒の成分として有用な新規なバナジウム化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
共役ジエンは、重合触媒によって種々のミクロ構造を有するポリマーが得られることが知られている。特に、ハイシス構造に適度に1,2-構造を含んだポリブタジエンは、ビニル芳香族系重合体の耐衝撃性付与剤が期待されている。
【0003】
ブタジエンの重合触媒として、バナジウム化合物を用いる触媒系が知られている。例えば、Chim. e Ind., 40, 362 (1958)などには、触媒として VCl3 −AlR3を用いる方法が報告されているが、トランス100%に近い結晶性ポリブタジエンが得られ、重合活性が極めて悪い。
【0004】
また、Macromol. Chem. Phys., 195, 1389 (1994) などには、触媒として V(acac)3 −メチルアルモキサンを用いる方法が報告されているが、触媒活性の向上は見られるものの、トランス 99%以上のポリブタジエンが得られている。
【0005】
Polymer Preprints, Japan 43 , 1708 (1994) には同種の触媒系で、シス63% 、トランス14% 、1,2- 21%のポリブタジエンが報告されているが、活性が低い。特公昭47-1212 号公報には、塩化メチレン中、VO(OR)3 等のバナジウム化合物−トリアルキルアルミニウム−水からなる触媒系によるブタジエンの重合が開示されているが、活性が低い。
【0006】
一方、メタロセン系化合物を用いたブタジエンの重合としては、例えば、Macromol. Symp., 89 , 383 (1995)にはCpTiCl3 (シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド)−メチルアルモキサンが報告されているが、重合活性が極めて低い。
【0007】
また、シクロペンタジニル基(Cp)を二つ含有する遷移金属化合物を用いたブタジエンの重合としては、例えば、高分子論文集 31 , 759 (1974)には Cp2Ni、Cp2TiCl2、Cp2ZrCl2を用いたブタジエンの重合を行い、トランス含量の高いポリマーを得ている。しかし、これらの触媒系は活性が低い問題点がある。
【0008】
バナジウム金属のメタロセン系化合物を用いた重合触媒としては、例えば、特公平4-41166 号公報にはビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロリドの記載があるがエチレン、プロピレンあるいはα−オレフィンの(共)重合に関するものであり、共役ジエンの重合に関しては記載されていない。また、特表平1-501633号公報には、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロリドの例示があるが、エチレン−ブタジエンの共重合体に関するものである。
【0009】
特公昭46-20494号公報には、バナジウムのシクロペンジエニル錯体−ハロゲン含有有機アルミニウム−含酸素化合物からなる触媒系によるポリブタジエンの製造方法が開示されている。バナジウムのシクロペンジエニル錯体としてCpVCl3が例示されているが、重合活性が低い問題点がある。また、助触媒の有機アルミニウムにはハロゲン成分を含むことが必須となっている。
【0010】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、共役ジエン類の重合体触媒として有用な新規なバナジウム化合物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式 VRCl3 で示されるバナジウムメタロセン化合物に関する。
(式中、Vはバナジウム金属を示し、Rは 1,3- ジメチルシクロペンタジエニル基、t-ブチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基を示す。)
【0012】
また、本発明は、一般式 V(O)RCl2 で示されるバナジウムメタロセン化合物に関する。
(式中、Vはバナジウム金属を示し、Rは 1,3- ジメチルシクロペンタジエニル基、t-ブチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基を示す。)
【0013】
一般式 VRCl3 で示されるバナジウム化合物の具体例として、(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、(t-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、(ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、(ベンジルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、エチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、n-ブチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。
【0014】
VR(O)Cl2 で示されるバナジウム化合物の具体例として、(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド、(t-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシトリクロライド、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド、(ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド、(ベンジルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライドが挙げられる。
【0015】
本発明のVRCl3 又はV(O)RCl2 で表されるバナジウムメタロセン化合物は、例えば、以下のルートで合成できる。
VCl4 又はVCl3 を、RLi、RNa又はRMgClなどの有機金属化合物と反応させて、VR2 Cl2 又はVR2 Clを調製し、更に塩化チオニルSOCl2 で処理することによりVRCl3 が合成できる。VRCl3 を酸素で処理することにより、V(O)RCl2 が合成できる。
【0016】
(A)本発明のバナジウム化合物、並びに(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンから得られる触媒によって、共役ジエン化合物を重合させることができる。
また、(A)本発明のバナジウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサン、並びに(C)周期律表第I 乃至III 族元素の有機金属化合物から得られる触媒によって、共役ジエン化合物を重合させることができる。
【0017】
(B)成分のうち,非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、嵩高いものが好ましく、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0018】
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
また、(アルキル)2N(C6H5)H+ のような活性プロトンを有するN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、トリアルキルアンモニウムカチオン、トリアリルホスホニウムカチオン、(C6H5)3C+ のような三置換カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、カルボランカチオン、メタルカルボランカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン、更には主元素金属、遷移金属のカチオン及びそれらにエーテル、アミンなどが配位したカチオンを挙げることができる。
【0019】
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。
【0020】
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n- ブチル) アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(i- プロピル) アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0021】
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0022】
該イオン性化合物は、上記で例示した非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる
【0023】
中でも、イオン性化合物としては、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(フルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1'- ジメチルフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。
イオン性化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、本発明の(B)成分として、アルモキサンを用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(-Al(R')O-) n で示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R' は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/ 又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R' として、はメチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0025】
トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として用いたアルモキサンを好適に用いることができる。
【0026】
また、縮合剤としては、典型的なものとして水が挙げられるが、この他に該トリアルキルアルミニウムが縮合反応する任意のもの、例えば無機物などの吸着水やジオールなどが挙げられる。
【0027】
本発明においては、(A)成分及び(B)成分に、さらに(C)成分として周期律表第I 乃至III 族元素の有機金属化合物を組合せて共役ジエンの重合を行ってもよい。(C)成分の添加により重合活性が増大する効果がある。周期律表第I 乃至III 族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0028】
具体的な化合物としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリフッ化ホウ素、トリフェニルホウ素などを挙げることができる。
【0029】
さらに、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機金属化合物も含まれる。また有機金属化合物は、二種類以上併用することができる。
【0030】
また、(B)成分としてイオン性化合物を用いる場合は、(C)成分として上記のアルモキサンを組み合わせて使用してもよい。
【0031】
各触媒成分の配合割合は、各種条件により異なるが、(A)成分のバナジウム化合物と(B)成分のアルミノキサンとのモル比は、好ましくは 1:1 〜 1:10000 、より好ましくは 1:1 〜 1:5000である。
(A)成分のバナジウム化合物と(B)成分のイオン性化合物とのモル比は、好ましくは 1:0.1 〜 1:10、より好ましくは 1:0.2 〜 1:5 である。
【0032】
(A)成分のバナジウム化合物と(C)成分の有機金属化合物とのモル比は、好ましくは 1:0.1 〜 1:1000、より好ましくは 1:0.2 〜 1:500 である。
本発明においては、各触媒成分を無機化合物、又は有機高分子化合物に担持して用いることができる。
【0033】
触媒成分の添加順序は、特に、制限はないが、例えば次の順序で行うことができる。
▲1▼重合すべき共役ジエン化合物モノマーと(B)成分との接触混合物に(A)成分を添加する。
▲2▼重合すべき共役ジエン化合物モノマーと(B)成分及び(C)成分を任意の順序で添加した接触混合物に(A)成分を添加する。
▲3▼重合すべき共役ジエン化合物モノマーと(C)成分の接触混合物に(B)成分、次いで(A)成分を添加する。
▲4▼重合すべき共役ジエン化合物モノマーに、(A)成分と(B)成分を任意の順序で接触させた混合物を添加する。
▲5▼重合すべき共役ジエン化合物モノマーに、(A)成分と(B)成分と(C)成分を任意の順序で接触させた混合物を添加する。
【0034】
ここで重合すべき共役ジエン化合物モノマーとは、全量であっても一部であってもよい。モノマーの一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマーあるいは残部のモノマー溶液と混合することができる。
【0035】
共役ジエン化合物モノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3- ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチルペンタジエン、4-メチルペンタジエン、2,4-ヘキサジエンなどが挙げられる。
これらのモノマー成分は、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、共役ジエンの他に、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ブテン-2、イソブテン、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又はスチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、1,5-ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等を少量含んでいてもよい。
【0037】
重合方法は、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1-ブテン、シス-2- ブテン、トランス-2- ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、1,3-ブタジエンそのものを重合溶媒としてもよい。
【0038】
中でも、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス-2- ブテンとトランス-2- ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0039】
重合温度は-100〜 100℃の範囲が好ましく、 -50〜60℃の範囲が特に好ましい。重合時間は10分〜12時間の範囲が好ましく、30分〜 6時間が特に好ましい。
【0040】
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0041】
上記の触媒を用いて共役ジエンを重合した場合には、得られたポリマーのミクロ構造は制御されている。シス構造の含有量は、通常40〜97重量% 、好ましくは80〜95重量% 、特に好ましくは85〜92重量% である。ビニル構造の含有量は、通常 3〜60重量% 、好ましくは 5〜20重量% 、特に好ましくは 8〜15重量% である。従って、耐衝撃ポリスチレン製造用のジエンポリマーとしても有用である。
【0042】
重合体の分子量は水素添加、重合温度、触媒濃度によって制御することができる。
【0043】
【実施例】
実施例において「触媒活性」とは、重合反応に使用したメタロセンバナジウム化合物のバナジウム金属 1ミリモル当たり、重合時間1 時間当たりの重合体収量(g) である。
分子量分布は、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC から求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mn によって評価した。
ミクロ構造は赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740 cm-1、トランス980 cm-1、ビニル910 cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0044】
実施例1
〔(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H4(SiMe3)VCl3) の調製〕
窒素気流下にて、C5H5(SiMe3):7.3g(40mmol)を40mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、-78 ℃に冷却した後 n-BuLi (1.61M, ヘキサン溶液) を29.8ml(48mmol)滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 40ml に溶解し、 VCl4 2.3ml(22mmol) のトルエン 20ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、トルエン100ml を加え、攪拌した後、ろ過し、LiClを除去した。濾液を半量まで濃縮し、等量のヘキサンを加え、-78 ℃まで冷却し、析出した結晶をろ過にて分離した。この結晶に、塩化チオニル 50ml 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエンを20ml加え、ろ過後、ヘキサン20ml加え、-78 ℃で結晶化させた。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H4(SiMe3)VCl3であることを確認した。
【0045】
実施例2
〔(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H3 (1,3-Me2)VCl3)の調製〕
窒素気流下にて、C5H4(1,3-Me2):10g(110mmol)を110ml のTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後 n-BuLi (1.61M, ヘキサン溶液) を 80ml(130mmol)滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 40ml に溶解し、 VCl4 2.2ml(20mmol) のトルエン 20ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した。その後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、トルエン100ml を加え、攪拌した後、ろ過し、固体を分離した。固体につては、塩化メチレン20mlに溶解し、トルエン10ml加え、-78 ℃で結晶化を行ない、緑色結晶を得た。ろ液については、半量まで濃縮し、等量のヘキサンを加え、-78 ℃まで冷却し、析出した結晶をろ過にて分離した。これらの結晶に、塩化チオニル 50ml 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエンを100ml 加え、ろ過後、ヘキサン100ml 加え、-78 ℃で結晶化させた。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H3(1,3-Me2)VCl3であることを確認した。
【0046】
実施例3
〔(t-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H4(t-B u)VCl3) の調製〕
窒素気流下にて、C5H5(t-Bu):10g( 82mmol) を 80ml のTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後 n-BuLi (1.61M, ヘキサン溶液) を 61ml( 98mmol)滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 60ml に溶解し、 VCl4 2.4ml(23mmol) のトルエン 20ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した。その後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、塩化メチレン100ml を加え、攪拌した後、ろ過し、固体を分離した。固体につては、塩化メチレン50mlに溶解し、ろ過後濃縮し、緑色固体を得た。ろ液については、濃縮し、50mlのヘキサンを加え、-78 ℃まで冷却し、析出した結晶をろ過にて分離した。 これらの結晶に、塩化チオニル 50ml 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエンを100ml 加え、ろ過後、ヘキサン100ml 加え、-78 ℃で結晶化させた。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H4(t-Bu)VCl3 であることを確認した。
【0047】
実施例4
〔(ベンジルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H4(CH2Ph)VCl3) の調製〕
窒素気流下にて、C5H5(CH2Ph):2.6g(17mmol)を 20ml のTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後 n-BuLi (1.60M, ヘキサン溶液) を 10.4ml(17mmol) 滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 40ml に溶解し、 VCl4 0.8ml(8mmol)のトルエン 20ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、塩化メチレン100ml を加え、攪拌した後、ろ過し、LiClを除去した。ろ液を乾固して緑色の固体を得た。この固体に、塩化チオニル 10ml 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエンを100ml 加え、ろ過した。ろ液を濃縮し、ヘキサン50ml加え、-78 ℃で濃い紫色の結晶を得た。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H4(CH2Ph)VCl3であることを確認した。
【0048】
実施例5
〔((ビストリメチルシリル)シクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H3(SiMe3)2VCl3)の調製〕
窒素気流下にて、C5H4(SiMe3)2:2.1g(10mmol) を20mlのTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後 n-BuLi (1.61M, ヘキサン溶液) を 6.2ml(10mmol)滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 20ml に溶解し、 VCl4 0.5ml(5mmol)のトルエン 20ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、トルエン 50ml を加え、攪拌した後、ろ過し、LiClを除去した。濾液を半量まで濃縮し、等量のヘキサンを加え、-78 ℃まで冷却し、析出した濃い青色の結晶をろ過にて分離した。この結晶に、塩化チオニル 10ml 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエンを50ml加え、ろ過した。ろ液を乾固し、ヘキサンで再結晶し、紫色の結晶を得た。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H3(SiMe3)2VCl3 であることを確認した。
【0049】
実施例6
〔(エチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H4(Et)VCl3)の調製〕
窒素気流下にて、C5H5(Et):4.1g(44mmol) を31mlのTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後、n-BuLi (1.60M,ヘキサン溶液) を 27.5ml(44mmol) 滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 40ml に溶解し、 VCl4 2.3ml(22mmol) のトルエン 80ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、塩化メチレン100mL を加え、攪拌した後濾過し、LiClを除去した。濾液にヘキサン100mL を加え、-78 ℃結晶化を行い、緑色結晶を得た。この結晶に、塩化チオニル 60mL 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエン 100mL加え、ろ過した。ろ液を濃縮し、ヘキサン 50mL 加え、-78 ℃で濃い紫色の結晶を得た。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H4(Et)VCl3 であることを確認した。
【0050】
実施例7
〔(n-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド (η5C5H4(n-Bu)VCl3)の調製〕
窒素気流下にて、C5H5(n-Bu):3.9g(32mmol) を30mlのTHF に溶かし、-78 ℃に冷却した後、n-BuLi (1.60M,ヘキサン溶液) を 20ml(32mmol) 滴下した反応溶液を濃縮した固体をヘキサンで洗浄した。その固体を THF 30ml に溶解し、 VCl4 1.7ml(16mmol) のトルエン 60ml 溶液に、THF の還流温度で滴下した後、室温にて10時間攪拌を行った。溶媒を除去し、塩化メチレン100mL を加え、攪拌した後濾過し、LiClを除去した。濾液にヘキサン100mL を加え、-78 ℃結晶化を行い、緑色結晶を得た。この結晶に、塩化チオニル100mL 加え、10時間、室温で攪拌した。反応後、塩化チオニルを減圧留去し、トルエン 100mL加え、ろ過した。ろ液を濃縮し、ヘキサン 50mL 加え、-78 ℃で濃い紫色の結晶を得た。結晶をろ過・分離後、室温にて、減圧乾燥した。この化合物を分析した結果、η5C5H4(n-Bu)VCl3 であることを確認した。
【0051】
実施例8
〔(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド( η5C5H4(SiMe3)V(O)Cl2)の調製〕
Organometallics 1988, 7, 496-502頁の合成方法に準じて、実施例1で合成したη5C5H4(SiMe3)VCl3を用い、酸素酸化により、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド :η5C5H4(SiMe3)V(O)Cl2 を合成した。以下に、分析結果を示す。
1H-NMR(in CDCl3): 7.01-7.00(2H,d,Cp-H), 6.90-6.89(2H,d,Cp-H),0.38(9H, s,Me3Si)
【0052】
実施例9
〔(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド (η5C5H3(1,3-Me2)V(O)Cl2)の調製〕
Organometallics 1988, 7, 496-502頁の合成方法に準じて、実施例2で合成したη5C5H3(1,3-Me2)VCl3を用い、酸素酸化により、( 1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド :η5C5H3(1,3-Me2)V(O)Cl2 を合成した。以下に、分析結果を示す。
1H-NMR(in CDCl3): 6.41-6.40(2H,d,Cp-H), 6.22(1H,s Cp-H),2.52(6H,s, Me-Cp)
【0053】
実施例10
〔(t-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド (η5C5H4 (t-Bu)V(O)Cl2)の調製〕
Organometallics 1988, 7, 496-502頁の合成方法に準じて、実施例3で合成したη5C5H4(t-Bu)VCl3 を用い、酸素酸化によって、( t-ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド :η5C5H4(t-Bu)V(O)Cl2を合成した。以下に、分析結果を示す。
1H-NMR(in CDCl3): 6.79-6.78(2H,d,Cp-H), 6.73-6.72(2H,d,Cp-H),1.43(9H, s,Me3C)
【0054】
実施例11
〔(ベンジルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド (η5C5H4 (CH2Ph)V(O)Cl2) の調製〕
Organometallics 1988, 7, 496-502頁の合成方法に準じて、実施例4で合成したη5C5H4(CH2Ph)VCl3を用い、酸素酸化によって、(ベンジルシクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド :η5C5H4(CH2Ph)V(O)Cl2 を合成した。以下に、分析結果を示す。
1H-NMR(in CDCl3): 7.37-7.23(5H,m,Ph), 6.80-6.70(2H,d,Cp-H), 6.46-6.40 (2H,d,Cp-H), 4.20(2H,s,CH2)
【0055】
実施例12
〔((ビストリメチルシリル)シクロペンタジエニル)バナジウムオキシトリクロライド (η5C5H3(SiMe3)2V(O)Cl2) の調製〕
Organometallics 1988, 7, 496-502頁の合成方法に準じて、実施例5で合成したη5C5H3(SiMe3)2VCl3 を用い、酸素酸化によって、((ビストリメチルシリル)シクロペンタジエニル)バナジウムオキシジクロライド :η5C5H3(SiMe3)2V(O)Cl2を合成した。以下に、分析結果を示す。
1H-NMR(in CDCl3): 7.24-7.23(2H,d,Cp-H), 6.87-6.85(2H,t,Cp-H), 0.42(18 H,s,Si-Me)
【0056】
実施例13〜19
〔ブタジエン重合〕
トルエン200ml にメチルアルモキサン( 東ソー・アクゾー社製) 1mmol をトルエン溶液として添加し、溶液を30℃に保つ。ブタジエン 32ml を添加し、表1に示した化合物をトルエン溶液として添加して、重合を行った。重合条件及び重合結果を表1及び表2に示した。
【0057】
実施例20〜28
〔ブタジエン重合〕
トルエン200ml にトリイソブチルアルミニウム(Al(i-Bu)3 )をトルエン溶液として添加し、溶液を30℃に保つ。ブタジエンを 32ml 添加した後、[Ph3CB(C6F5)4]及び表3に示した化合物をトルエン溶液として添加して、重合を行った。重合条件及び重合結果を表3及び表4に示した。
【0058】
実施例29〜31
〔ブタジエン重合〕
トルエン200ml にメチルアルモキサン( 東ソー・アクゾー社製) 1mmol をトルエン溶液として添加し、溶液を30℃に保つ。ブタジエン 32ml を添加し、表5に示した化合物をトルエン溶液として添加して、重合を行った。重合条件及び重合結果を表5及び表6に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【発明の効果】
共役ジエン類の重合触媒の成分として有用な新規なバナジウム化合物を提供する。
Claims (2)
- 一般式 VRCl3 で示されるバナジウムメタロセン化合物。
(式中、Vはバナジウム金属を示し、Rは 1,3- ジメチルシクロペンタジエニル基、t-ブチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基を示す。) - 一般式 V(O)RCl2 で示されるバナジウムメタロセン化合物。
(式中、Vはバナジウム金属を示し、Rは 1,3- ジメチルシクロペンタジエニル基、t-ブチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル基、ベンジルシクロペンタジエニル基を示す。)
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- 1997-04-22 JP JP10432497A patent/JP3661726B2/ja not_active Expired - Lifetime
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