JP3661558B2 - 防虫性能を有する木質床板。 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は住宅その他の建築に使用される木質床板に関するものであり詳しくは防虫性能に優れた木質床板に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、木質床板に害を及ぼし、その利用価値を低減せしめる害虫に対する防除の方法が種々試みられてきた。なかでも、木質床板の基材合板によく使用されるラワン単板を食害するヒラタキクイムシの防除には深い関心が寄せられてきた。防虫合板の製造には有機塩素系、硼酸系、含窒素塩基系等からなる防虫薬剤がよく用いられ、合板を製造する際の接着剤中に薬剤を混入するか又は単板や合板に薬剤を注入するか、単板や合板に薬液を塗布浸漬するか、又は合板裏面に防虫薬剤を塗布などして防虫合板の製造が行われてきた。
【0003】
例えば、特開昭56−84903号公報には床板裏面に適宜深さの凹溝を刻設し防虫性能を有する薬液を全面にシャワ−噴射する方法が開示され、また、特開昭58−22107号公報にはノニオン系又はアニオン系界面活性剤を含有する防虫薬剤をホルムアルデヒドと縮合する型の接着剤中に混入する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、合板の低ホルムアルデヒド化対策が盛んに叫ばれており、合板基材やそれを使用した木質床板等において合板中の遊離のホルムアルデヒドが削減されてきており、それに従ってヒラタキクイムシなどの害虫にとっては生息し易くなってきた。従って、防虫効果をより確実にするためには従来よりも薬剤使用量を増やすかなどして防虫性能の向上を図る必要があった。
【0005】
従来から行われてきた防虫処理方法はさまざま有るが、例えば接着剤中に防虫薬剤を混入する方法では混入量を過大にすると、合板を構成する単板各層の接着力が低下し最悪の場合接着不良となり、その合板を基材として用いた木質床板などを施工した後、単板剥離などの重大な問題が発生する。一方、接着力を重視して混入量を制限すると防虫効果が低下した。適度な混入量の設定が困難であった。又、接着剤中に混入する方法では合板を構成する木質単板の厚み方向の中心部付近まで薬剤が達しにくく、確実な防虫効果が得られにくかった。
【0006】
さらに、接着剤中への混入法では、床板の切断面からの食害を防止することが困難であった。すなわち、床板施工後に成虫が飛来し、部屋の壁際から侵入し壁際の床板は切断面が露出していることが多く、単板の厚みの中心付近まで薬剤が浸透しにくいので、床板切断面から侵入され易かった。
【0007】
従来から、表層から数えて第2層目の単板が食害され易かった理由は、床板表層は化粧材とその上の塗装膜があるため侵入しにくく、また、第1層目の単板は厚みが2mmよりも薄いのでヒラタキクイムシの成長するのに必要な最小限の生活空間が得られず、それに比べると第2層目の単板は第1層目よりも厚い場合が多く、特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。それで、壁際の床板切断箇所から侵入し表層から第2層目の単板木口から侵入することが多い。また、床材継ぎ目が開いている場合、その隙間から侵入し、雌実の凹部上面又は雄実の凸部上面付近の木口から侵入する。従って、実加工の位置からして第2層目単板木口が侵入され易いのである。
【0008】
また、特開昭58−22107号公報に防虫薬剤を接着剤中に均一分散させるためにノニオン系又はアニオン系界面活性剤を防虫薬剤と合わせて接着剤中に混入する方法記載されているが、この方法においても上記のように単板層の内部深くまで薬剤効果を浸透させることが困難であった。
【0009】
また、合板裏面塗布による方法においても、床板表面からの食害を防止することが困難であった。すなわち、床板施工後に成虫が飛来し、部屋の壁際から侵入し床板切断面が露出しているため床板基材の合板の表層から数えて第2層目が食害される。特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。
【0010】
また、防虫薬剤を注入、塗布、浸漬等を行う場合でも、また、特開昭56−84903号公報に記載のように、床板裏面に適宜深さの凹溝を刻設して防虫性能を有する薬液を全面にシャワ−噴射する方法をとっても、薬剤使用量を前記理由で増やさざるを得ず、そのために木質単板や合板の材質の劣化ひいてはそれを用いた木質床板の耐久性能の低下を招く結果になる危険性があった。
【0011】
また、前記理由で大量に防虫薬剤を使用すると特に浸漬、塗布などの方法では作業性が低下し、また、薬剤使用量が増えると当然のことながら、処理にかかるコストも多大となって経済的に不利となる。いかにして、制限された薬剤使用量のなかで最大の防虫効果を上げるかが大きな課題となっていた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項1に記載の発明は、木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する単板が広葉樹材からなり、基材合板の表層から第2層目の単板(6)を厚みが2mm以上の広葉樹単板とし、前記、第2層目の単板(6)にのみ防虫処理を施し、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴としている。
このような構成を有する本発明によれば、広葉樹単板からなる木質合板を基材とする床板が害虫による食害被害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板を厚みが2mm以上の広葉樹単板とし、前記、第2層目の単板(6)にのみ防虫処理を施し、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在するようにしたので、防虫薬剤の過度の使用による材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、且つ、防虫作業性を向上させ、効率良く、安価にしかも防虫効果がより確実な木質床板が可能となる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する表層から第2層目の単板(6)のみを針葉樹単板とし、その他の層の木質単板は広葉樹単板とし、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴としている。
このような構成を有する本発明によれば、木質単板からなる合板を基材とする床板が害虫による食害被害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板のみを、針葉樹単板とし、その他の層の木質単板は広葉樹単板とし、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在するようにしたので、前記、表層から第2層目の単板には、心材抽出成分が豊富に含まれており、針葉樹単板には導管孔がないので防虫性能にとって好適である。
【0014】
すなわち、本発明は防虫薬剤の過度の使用による防虫合板や防虫単板の材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、防虫作業性を低下させず効率良く、防虫性能を有する木質床板を製造し、しかも安価に提供せんとするものである。すなわち、本発明者等は、合板特にラワン合板や広葉樹合板をタ−ゲットとして食害し近年ますます、その被害が問題視されているヒラタキクイムシ対策を目的として、効率良く安価に確実な防虫性能を有する木質床板を提供するものである。
【0015】
本発明者等は以下に述べるヒラタキクイムシの習性に着目して本発明に至ったものである。すなわち、害虫のなかでも特にヒラタキクイムシの被害樹種はラワン材をはじめとする広葉樹材に限られる。主として辺材を食害し心材には被害はほとんどない。導管孔のない針葉樹材は食害しない。産卵は合板や単板の木口から導管孔内に産下され、特に実加工された床板に対しては表面側の雌実(3)、雄実(4)の接合箇所の隙間から侵入し、接合箇所の雄実(4)の凸部上面(4a)に沿って進み、雄実側の木口又は雌実側の木口に開口した導管孔に産下され、その位置が床板の合板を構成する木質単板層の表層から数えて第2層目の単板(6)に多い。産下された卵は導管孔内で孵化し、幼虫は導管壁を破り材中に侵入し、導管方向に蛇行し食害する。
【0016】
また、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)に食害が多い他の理由はヒラタキクイムシその他の害虫の幼虫が生活するのにある程度の大きさの空間的な広がりが必要とされ、単板厚みで薄くとも2mm以上必要とされる。第2層目の単板(6)がちょうど良い厚みである場合が多いためである。床板表層は化粧材とその上の塗装膜があるため侵入しにくく、それに比べると第2層目の単板(6)の木口は比較的侵入し易い。特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。
【0017】
そこで合板を構成する全ての単板の厚みを2mmよりも薄くすれば良いが、これでは単板積層枚数が多くなりすぎて材料費加工手間も含めると高価な合板になってしまう。そこで安価に防虫合板を提供するには、ある程度厚単板を組み合わせていかなければならない。表層から第1層目は高品質の単板を用いなければならないので、この第1層は厚くできず、従って安価に合板を製造するには、表層から第2層目、4層目に厚単板を使用する必要があった。この表層に近い第2層目の厚単板層は害虫が侵入し易く、集中的に狙われ易くなるのである。
【0018】
そこで、合板(5)を構成する複数枚の木質単板層の中でも、この第2層目に使用する木質単板(6)にのみ、なんらかの方法で防虫性能を付与するか又は防虫性能を初めから有する針葉樹単板を第2層目に持ってくると、防虫処理薬剤の使用量を極力削減でき、針葉樹単板使用の場合は防虫薬剤を全く使用することなく防虫性能を有する床板の製造が可能となる。しかも、安価に、作業性を低下させることなく、より確実な防虫性能を有する木質床板の製造が可能となる。このことに着目して本発明に至ったものである。
【0019】
さらに、広葉樹単板を使用する請求項1の発明では、この第2層目の単板(6)の厚みをヒラタキクイムシをはじめとする害虫の生育に適する単板の厚さである2mm以上の厚さとすることで第2層目の単板(6)に産卵させ、孵化しないで死滅させるか又は孵化して幼虫となっても死滅し食害されないようにするとより一層効果的である。2mmよりも薄くすると第2層目に産卵できず、床板の壁際切断面から無理して第4層目へ侵入するか又は、無理に迂回して床板裏面から侵入される恐れがある。そこで防虫処理した広葉樹単板を第2層目の単板とし、しかも、産卵し易いように厚みを2mm以上とすると、よりいっそう効果的である。
【0020】
請求項2の発明では食害されやすい第2層目の単板(6)にのみ導管孔のない針葉樹単板をもってくると効率的な防虫床板が可能となる。すなわち、ヒバ材、スギ材、ヒノキ材、カラマツ材、アカマツ材などの針葉樹単板が比較的抽出成分が多く含まれ効果的であるが、これら以外であっても良い。
【0021】
また、請求項1、2いずれにおいても、床板は雄実雌実加工されるので、雌実の凹部上面(3a)、雄実の凸部上面(4a)を、この第2層目の単板(6)内に位置させることで、さらなる効果的な防虫対策が可能となる。しかも、請求項1では、第2層目以外は防虫処理を施さず、請求項2では第2層目のみに針葉樹単板を持ってくるようにして、防虫性能を有する単板はこの第2層目のみとすることでむやみに多くの防虫薬剤を使用せず、前記、ヒバ、ヒノキ、スギなどの比較的高価な単板の使用量を限定するので製造コストも安価で作業性も良くより確実な防虫性能を有する床板が可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の防虫性能を有する木質床板について以下図面に従って詳しく述べる。図1は本発明の木質床板の1実施例を示す断面図である。1は木質床板を示し、2は化粧材、3は雌実、3aは雌実凹部の上面、4は雄実、4aは雄実の凸部の上面、5は合板、6は第2層目の単板を示す。
【0023】
対象とする合板(5)は3プライ以上であれば良く5プライ、7プライ又はそれ以上であっても良い。表層から数えて第2層目の単板(6)に防虫性能を有する木質単板をもってくる。請求項1に記載の床板は、第2層目の単板(6)の樹種をそのままでは虫害を受けやすいラワン材その他の広葉樹でしかも厚みを2mm以上とする。第2層目の単板(6)を乾燥後調板し防虫薬剤にて防虫処理する。防虫処理としては、単板に薬剤を浸透させる浸透法、塗布法の他に接着剤に薬剤を混合する方法があるが、防虫効果としてはより確実な浸透法又は塗布法が良い。
【0024】
防虫薬剤としては、硼砂、硼酸、弗化ソ−ダ、その他が使用できるが、この限りではない。単板への浸透量は例えば硼酸、硼砂の場合は単板の全乾重量に対して0.2%以上であればよい。弗化ソ−ダの場合は0.1%以上であればよい。処理薬液の濃度は単板厚さ1.5mm当たり溶液濃度を約2%とすると良いので例えば単板厚さ3mmの場合は溶液濃度約4%程度とすればよい。薬剤の溶液中に浸漬してもよいし吹きつけ塗布や、刷毛塗り、ロ−ル塗布であっても良い。浸漬処理の場合の処理時間は1.5mm厚単板当たり約2時間であるので例えば3mm厚単板で約4時間程度でよい。塗布、吹きつけの場合の塗布量はウエットで約50〜300g/m2程度でよい。防虫薬剤は、もちろんこれら以外であってもよいし、処理条件もその薬剤に適する方法を適宜選択すればよい。
【0025】
合板製造時の接着剤は、通常の木工用接着剤が使用できる。すなわち、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリアメラミン樹脂接着剤その他が使用できる。接着条件は、ホットプレスによる熱圧で、温度100〜130℃、圧締圧力5〜15kg/cm2、圧締時間は合板厚み1mm当たり1分以上として熱圧し、その後一定時間養生する。合板製造時の接着剤、製造条件は、もちろんこれら以外であってもよい。
【0026】
以上詳述した防虫性能を有する合板(5)を基材としてその上に化粧材(2)を貼着して木質床板(1)とする。この時の化粧材(2)は例えばナラ、ケヤキ、サクラ、その他の木質化粧単板などの他、塩化ビニルフィルム、オレフィン樹脂フィルム、金属箔、合成樹脂成型品、合成木材、などが使用できる。次ぎに所定の床板サイズに切り出し、側面に雌実(3)及び雄実(4)をテノ−ナ−などによって加工する。例えば床板の場合は303mm×1818mmサイズが良く使われるサイズである。この時重要なことは、雌実の凹部上面(3a)及び雄実の凸部上面(4a)が第2層目の単板(6)内に位置するようにすると、より一層の防虫性能効果が期待できる。
【0027】
請求項2記載の床板は、第2層目の単板(6)が導管孔がない針葉樹材からなる単板で特に、心材抽出成分の多い樹種を持ってくるのが望ましい。なかでも入手し易さを考えると、ヒバ材、スギ材、ヒノキ材、カラマツ材、アカマツ材などの単板を第2層目に持ってくると良い。勿論これら以外で心材抽出成分の多い樹種を持ってきても良い。心材抽出成分としては、例えばヒバ材にはツヤプリシン、カラマツ材にはジスティリン、スギ材にはスギオ−ルなどが含有されている。以上請求項1、2いずれの場合でも合板(5)製造時の接着剤は、通常の木工用接着剤が使用できる。すなわち、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリアメラミン樹脂接着剤その他が使用できる。接着条件は、ホットプレスによる熱圧で、温度100〜130℃、圧締圧力5〜15kg/cm2、圧締時間は合板厚み1mm当たり1分以上として熱圧し、その後一定時間養生する。合板製造時の接着剤、製造条件は、もちろんこれら以外であってもよい。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〕
表面裏面用単板として厚み1.2mmのラワン単板を、第2層目4層目の単板として厚み3.5mmの木繊維クロス方向のラワン単板を、そして中心層である第3層目の中芯用の単板として厚み2.7mmのラワン単板を用意した。防虫薬剤としてはケミホルツ株式会社製の防虫薬剤で、クロロニコチニル系のイミダクロプリドを主成分としたものを用いた。これを水で5000倍に希釈し、防虫薬剤水溶液を作成した。この水溶液中に第2層目に使用するラワン単板(6)を24時間浸漬した後80℃の熱風乾燥器にて10分間乾燥処理して防虫性能を有する厚み3.5mmの第2層目用単板(6)を作製した。次ぎに第1層目、第3層目、第5層目の単板は繊維方向を縦方向とし、第2層目第4層目の単板は繊維方向を横方向にして尿素メラミン共縮合樹脂接着剤を用いて熱圧締方式で5プライ12.1mm厚合板を作製した。
【0029】
接着条件は塗布量150g/m2、圧締温度120℃、圧締圧力10kg/cm2、圧締時間15分とした。その後24時間養生した。この合板(5)を基材とし、その上に化粧材(2)としてナラの0.3mm単板を貼着し、所定サイズに切り出して、続いて相対向する4側面に雄実雌実を加工した。この時雌実の凹部上面(3a)及び雄実の凸部上面(4a)が第2層目の単板(6)内に位置するようにした。このようにして縦1818mm×横303mmで厚み12.4mm厚の実施例1の木質床板(1)を作製した。
【0030】
次に、この木質床板(1)の表面にウレタン塗装を施して乾燥養生した後、これを環境試験室内にて8畳間のスペ−スに施工した。環境試験室の温度は25℃、相対湿度は80%に設定した。この中で、下記の防虫性能試験を実施した。
【0031】
〔実施例2〕
5プライ12mm厚の合板(5)を作製するに当たって、第2層目の単板(6)を、防虫処理しない厚さ3.5mmのヒバ単板を用いた。その他は実施例1と同様にして木質床板(1)を作製し下記の防虫性能試験を実施した。
【0032】
〔比較例1〕
第2層目の単板(6)に防虫処理しない厚さ3.5mmのラワン単板とした他は実施例1と同様にして木質床板(1)を作製し下記に示す防虫性能試験を実施した。
【0033】
〔防虫性能試験結果〕
実施例1、実施例2、比較例1各供試体の防虫性能試験結果を下記表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
〔防虫性能試験方法〕
実施例1、実施例2、比較例1の木質床板をそれぞれ別々の環境試験室内で8畳間の大きさのスペ−スに実物大で施工した。環境室内の温度は3室とも25℃、相対湿度80%で統一した。ヒラタキクイッムシの成虫各30匹をそれぞれの環境室内に放した。試験時期は産卵時期である5月下旬から開始して約3ヶ月様子を見ながら試験した。途中の1ヶ月後と最終の3ヶ月後において食害の有無と食害長の全長をノギスとスケ−ルで測定した。
【0036】
〔試験結果の考察〕
上記表1を見てわかるように、試験開始1ヶ月後で比較例1の床板は食害長が560mmに達している。これに対して実施例1では4mm、実施例2では6mmとほとんど食害されていない。3ヶ月後、比較例1が1600mm以上もの食害があったのに対して実施例1及び実施例2においては食害が10mm以下でありほとんど食害の被害がなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の防虫性能を有する木質床板は、害虫によって食害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板にのみ防虫薬剤処理したラワン単板又は心材抽出成分を豊富に含み導管孔のない針葉樹単板などの防虫性能を有する木質単板を使用し、さらに、雌実の凹部上面及び雄実の凸部上面がこの第2層目の単板内に位置するようにしたので、防虫薬剤の過度の使用による材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、且つ防虫作業性を向上させ、効率良く安価にしかも防虫効果がより確実な木質床板が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防虫性能を有する木質床板の1実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1 木質床板
2 化粧材
3 雌実
3a 雌実凹部の上面
4 雄実
4a 雄実凸部の上面
5 合板
6 第2層目の単板
【発明の属する技術分野】
本発明は住宅その他の建築に使用される木質床板に関するものであり詳しくは防虫性能に優れた木質床板に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、木質床板に害を及ぼし、その利用価値を低減せしめる害虫に対する防除の方法が種々試みられてきた。なかでも、木質床板の基材合板によく使用されるラワン単板を食害するヒラタキクイムシの防除には深い関心が寄せられてきた。防虫合板の製造には有機塩素系、硼酸系、含窒素塩基系等からなる防虫薬剤がよく用いられ、合板を製造する際の接着剤中に薬剤を混入するか又は単板や合板に薬剤を注入するか、単板や合板に薬液を塗布浸漬するか、又は合板裏面に防虫薬剤を塗布などして防虫合板の製造が行われてきた。
【0003】
例えば、特開昭56−84903号公報には床板裏面に適宜深さの凹溝を刻設し防虫性能を有する薬液を全面にシャワ−噴射する方法が開示され、また、特開昭58−22107号公報にはノニオン系又はアニオン系界面活性剤を含有する防虫薬剤をホルムアルデヒドと縮合する型の接着剤中に混入する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、合板の低ホルムアルデヒド化対策が盛んに叫ばれており、合板基材やそれを使用した木質床板等において合板中の遊離のホルムアルデヒドが削減されてきており、それに従ってヒラタキクイムシなどの害虫にとっては生息し易くなってきた。従って、防虫効果をより確実にするためには従来よりも薬剤使用量を増やすかなどして防虫性能の向上を図る必要があった。
【0005】
従来から行われてきた防虫処理方法はさまざま有るが、例えば接着剤中に防虫薬剤を混入する方法では混入量を過大にすると、合板を構成する単板各層の接着力が低下し最悪の場合接着不良となり、その合板を基材として用いた木質床板などを施工した後、単板剥離などの重大な問題が発生する。一方、接着力を重視して混入量を制限すると防虫効果が低下した。適度な混入量の設定が困難であった。又、接着剤中に混入する方法では合板を構成する木質単板の厚み方向の中心部付近まで薬剤が達しにくく、確実な防虫効果が得られにくかった。
【0006】
さらに、接着剤中への混入法では、床板の切断面からの食害を防止することが困難であった。すなわち、床板施工後に成虫が飛来し、部屋の壁際から侵入し壁際の床板は切断面が露出していることが多く、単板の厚みの中心付近まで薬剤が浸透しにくいので、床板切断面から侵入され易かった。
【0007】
従来から、表層から数えて第2層目の単板が食害され易かった理由は、床板表層は化粧材とその上の塗装膜があるため侵入しにくく、また、第1層目の単板は厚みが2mmよりも薄いのでヒラタキクイムシの成長するのに必要な最小限の生活空間が得られず、それに比べると第2層目の単板は第1層目よりも厚い場合が多く、特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。それで、壁際の床板切断箇所から侵入し表層から第2層目の単板木口から侵入することが多い。また、床材継ぎ目が開いている場合、その隙間から侵入し、雌実の凹部上面又は雄実の凸部上面付近の木口から侵入する。従って、実加工の位置からして第2層目単板木口が侵入され易いのである。
【0008】
また、特開昭58−22107号公報に防虫薬剤を接着剤中に均一分散させるためにノニオン系又はアニオン系界面活性剤を防虫薬剤と合わせて接着剤中に混入する方法記載されているが、この方法においても上記のように単板層の内部深くまで薬剤効果を浸透させることが困難であった。
【0009】
また、合板裏面塗布による方法においても、床板表面からの食害を防止することが困難であった。すなわち、床板施工後に成虫が飛来し、部屋の壁際から侵入し床板切断面が露出しているため床板基材の合板の表層から数えて第2層目が食害される。特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。
【0010】
また、防虫薬剤を注入、塗布、浸漬等を行う場合でも、また、特開昭56−84903号公報に記載のように、床板裏面に適宜深さの凹溝を刻設して防虫性能を有する薬液を全面にシャワ−噴射する方法をとっても、薬剤使用量を前記理由で増やさざるを得ず、そのために木質単板や合板の材質の劣化ひいてはそれを用いた木質床板の耐久性能の低下を招く結果になる危険性があった。
【0011】
また、前記理由で大量に防虫薬剤を使用すると特に浸漬、塗布などの方法では作業性が低下し、また、薬剤使用量が増えると当然のことながら、処理にかかるコストも多大となって経済的に不利となる。いかにして、制限された薬剤使用量のなかで最大の防虫効果を上げるかが大きな課題となっていた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項1に記載の発明は、木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する単板が広葉樹材からなり、基材合板の表層から第2層目の単板(6)を厚みが2mm以上の広葉樹単板とし、前記、第2層目の単板(6)にのみ防虫処理を施し、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴としている。
このような構成を有する本発明によれば、広葉樹単板からなる木質合板を基材とする床板が害虫による食害被害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板を厚みが2mm以上の広葉樹単板とし、前記、第2層目の単板(6)にのみ防虫処理を施し、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在するようにしたので、防虫薬剤の過度の使用による材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、且つ、防虫作業性を向上させ、効率良く、安価にしかも防虫効果がより確実な木質床板が可能となる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する表層から第2層目の単板(6)のみを針葉樹単板とし、その他の層の木質単板は広葉樹単板とし、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴としている。
このような構成を有する本発明によれば、木質単板からなる合板を基材とする床板が害虫による食害被害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板のみを、針葉樹単板とし、その他の層の木質単板は広葉樹単板とし、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在するようにしたので、前記、表層から第2層目の単板には、心材抽出成分が豊富に含まれており、針葉樹単板には導管孔がないので防虫性能にとって好適である。
【0014】
すなわち、本発明は防虫薬剤の過度の使用による防虫合板や防虫単板の材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、防虫作業性を低下させず効率良く、防虫性能を有する木質床板を製造し、しかも安価に提供せんとするものである。すなわち、本発明者等は、合板特にラワン合板や広葉樹合板をタ−ゲットとして食害し近年ますます、その被害が問題視されているヒラタキクイムシ対策を目的として、効率良く安価に確実な防虫性能を有する木質床板を提供するものである。
【0015】
本発明者等は以下に述べるヒラタキクイムシの習性に着目して本発明に至ったものである。すなわち、害虫のなかでも特にヒラタキクイムシの被害樹種はラワン材をはじめとする広葉樹材に限られる。主として辺材を食害し心材には被害はほとんどない。導管孔のない針葉樹材は食害しない。産卵は合板や単板の木口から導管孔内に産下され、特に実加工された床板に対しては表面側の雌実(3)、雄実(4)の接合箇所の隙間から侵入し、接合箇所の雄実(4)の凸部上面(4a)に沿って進み、雄実側の木口又は雌実側の木口に開口した導管孔に産下され、その位置が床板の合板を構成する木質単板層の表層から数えて第2層目の単板(6)に多い。産下された卵は導管孔内で孵化し、幼虫は導管壁を破り材中に侵入し、導管方向に蛇行し食害する。
【0016】
また、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)に食害が多い他の理由はヒラタキクイムシその他の害虫の幼虫が生活するのにある程度の大きさの空間的な広がりが必要とされ、単板厚みで薄くとも2mm以上必要とされる。第2層目の単板(6)がちょうど良い厚みである場合が多いためである。床板表層は化粧材とその上の塗装膜があるため侵入しにくく、それに比べると第2層目の単板(6)の木口は比較的侵入し易い。特に第2層目が2mm以上の厚単板であると、ヒラタキクイムシの幼虫の成育、活動にとってちょうど良い生活空間となる。2mmよりも薄い単板内では幼虫の活動にとって支障をきたすのである。
【0017】
そこで合板を構成する全ての単板の厚みを2mmよりも薄くすれば良いが、これでは単板積層枚数が多くなりすぎて材料費加工手間も含めると高価な合板になってしまう。そこで安価に防虫合板を提供するには、ある程度厚単板を組み合わせていかなければならない。表層から第1層目は高品質の単板を用いなければならないので、この第1層は厚くできず、従って安価に合板を製造するには、表層から第2層目、4層目に厚単板を使用する必要があった。この表層に近い第2層目の厚単板層は害虫が侵入し易く、集中的に狙われ易くなるのである。
【0018】
そこで、合板(5)を構成する複数枚の木質単板層の中でも、この第2層目に使用する木質単板(6)にのみ、なんらかの方法で防虫性能を付与するか又は防虫性能を初めから有する針葉樹単板を第2層目に持ってくると、防虫処理薬剤の使用量を極力削減でき、針葉樹単板使用の場合は防虫薬剤を全く使用することなく防虫性能を有する床板の製造が可能となる。しかも、安価に、作業性を低下させることなく、より確実な防虫性能を有する木質床板の製造が可能となる。このことに着目して本発明に至ったものである。
【0019】
さらに、広葉樹単板を使用する請求項1の発明では、この第2層目の単板(6)の厚みをヒラタキクイムシをはじめとする害虫の生育に適する単板の厚さである2mm以上の厚さとすることで第2層目の単板(6)に産卵させ、孵化しないで死滅させるか又は孵化して幼虫となっても死滅し食害されないようにするとより一層効果的である。2mmよりも薄くすると第2層目に産卵できず、床板の壁際切断面から無理して第4層目へ侵入するか又は、無理に迂回して床板裏面から侵入される恐れがある。そこで防虫処理した広葉樹単板を第2層目の単板とし、しかも、産卵し易いように厚みを2mm以上とすると、よりいっそう効果的である。
【0020】
請求項2の発明では食害されやすい第2層目の単板(6)にのみ導管孔のない針葉樹単板をもってくると効率的な防虫床板が可能となる。すなわち、ヒバ材、スギ材、ヒノキ材、カラマツ材、アカマツ材などの針葉樹単板が比較的抽出成分が多く含まれ効果的であるが、これら以外であっても良い。
【0021】
また、請求項1、2いずれにおいても、床板は雄実雌実加工されるので、雌実の凹部上面(3a)、雄実の凸部上面(4a)を、この第2層目の単板(6)内に位置させることで、さらなる効果的な防虫対策が可能となる。しかも、請求項1では、第2層目以外は防虫処理を施さず、請求項2では第2層目のみに針葉樹単板を持ってくるようにして、防虫性能を有する単板はこの第2層目のみとすることでむやみに多くの防虫薬剤を使用せず、前記、ヒバ、ヒノキ、スギなどの比較的高価な単板の使用量を限定するので製造コストも安価で作業性も良くより確実な防虫性能を有する床板が可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の防虫性能を有する木質床板について以下図面に従って詳しく述べる。図1は本発明の木質床板の1実施例を示す断面図である。1は木質床板を示し、2は化粧材、3は雌実、3aは雌実凹部の上面、4は雄実、4aは雄実の凸部の上面、5は合板、6は第2層目の単板を示す。
【0023】
対象とする合板(5)は3プライ以上であれば良く5プライ、7プライ又はそれ以上であっても良い。表層から数えて第2層目の単板(6)に防虫性能を有する木質単板をもってくる。請求項1に記載の床板は、第2層目の単板(6)の樹種をそのままでは虫害を受けやすいラワン材その他の広葉樹でしかも厚みを2mm以上とする。第2層目の単板(6)を乾燥後調板し防虫薬剤にて防虫処理する。防虫処理としては、単板に薬剤を浸透させる浸透法、塗布法の他に接着剤に薬剤を混合する方法があるが、防虫効果としてはより確実な浸透法又は塗布法が良い。
【0024】
防虫薬剤としては、硼砂、硼酸、弗化ソ−ダ、その他が使用できるが、この限りではない。単板への浸透量は例えば硼酸、硼砂の場合は単板の全乾重量に対して0.2%以上であればよい。弗化ソ−ダの場合は0.1%以上であればよい。処理薬液の濃度は単板厚さ1.5mm当たり溶液濃度を約2%とすると良いので例えば単板厚さ3mmの場合は溶液濃度約4%程度とすればよい。薬剤の溶液中に浸漬してもよいし吹きつけ塗布や、刷毛塗り、ロ−ル塗布であっても良い。浸漬処理の場合の処理時間は1.5mm厚単板当たり約2時間であるので例えば3mm厚単板で約4時間程度でよい。塗布、吹きつけの場合の塗布量はウエットで約50〜300g/m2程度でよい。防虫薬剤は、もちろんこれら以外であってもよいし、処理条件もその薬剤に適する方法を適宜選択すればよい。
【0025】
合板製造時の接着剤は、通常の木工用接着剤が使用できる。すなわち、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリアメラミン樹脂接着剤その他が使用できる。接着条件は、ホットプレスによる熱圧で、温度100〜130℃、圧締圧力5〜15kg/cm2、圧締時間は合板厚み1mm当たり1分以上として熱圧し、その後一定時間養生する。合板製造時の接着剤、製造条件は、もちろんこれら以外であってもよい。
【0026】
以上詳述した防虫性能を有する合板(5)を基材としてその上に化粧材(2)を貼着して木質床板(1)とする。この時の化粧材(2)は例えばナラ、ケヤキ、サクラ、その他の木質化粧単板などの他、塩化ビニルフィルム、オレフィン樹脂フィルム、金属箔、合成樹脂成型品、合成木材、などが使用できる。次ぎに所定の床板サイズに切り出し、側面に雌実(3)及び雄実(4)をテノ−ナ−などによって加工する。例えば床板の場合は303mm×1818mmサイズが良く使われるサイズである。この時重要なことは、雌実の凹部上面(3a)及び雄実の凸部上面(4a)が第2層目の単板(6)内に位置するようにすると、より一層の防虫性能効果が期待できる。
【0027】
請求項2記載の床板は、第2層目の単板(6)が導管孔がない針葉樹材からなる単板で特に、心材抽出成分の多い樹種を持ってくるのが望ましい。なかでも入手し易さを考えると、ヒバ材、スギ材、ヒノキ材、カラマツ材、アカマツ材などの単板を第2層目に持ってくると良い。勿論これら以外で心材抽出成分の多い樹種を持ってきても良い。心材抽出成分としては、例えばヒバ材にはツヤプリシン、カラマツ材にはジスティリン、スギ材にはスギオ−ルなどが含有されている。以上請求項1、2いずれの場合でも合板(5)製造時の接着剤は、通常の木工用接着剤が使用できる。すなわち、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリアメラミン樹脂接着剤その他が使用できる。接着条件は、ホットプレスによる熱圧で、温度100〜130℃、圧締圧力5〜15kg/cm2、圧締時間は合板厚み1mm当たり1分以上として熱圧し、その後一定時間養生する。合板製造時の接着剤、製造条件は、もちろんこれら以外であってもよい。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〕
表面裏面用単板として厚み1.2mmのラワン単板を、第2層目4層目の単板として厚み3.5mmの木繊維クロス方向のラワン単板を、そして中心層である第3層目の中芯用の単板として厚み2.7mmのラワン単板を用意した。防虫薬剤としてはケミホルツ株式会社製の防虫薬剤で、クロロニコチニル系のイミダクロプリドを主成分としたものを用いた。これを水で5000倍に希釈し、防虫薬剤水溶液を作成した。この水溶液中に第2層目に使用するラワン単板(6)を24時間浸漬した後80℃の熱風乾燥器にて10分間乾燥処理して防虫性能を有する厚み3.5mmの第2層目用単板(6)を作製した。次ぎに第1層目、第3層目、第5層目の単板は繊維方向を縦方向とし、第2層目第4層目の単板は繊維方向を横方向にして尿素メラミン共縮合樹脂接着剤を用いて熱圧締方式で5プライ12.1mm厚合板を作製した。
【0029】
接着条件は塗布量150g/m2、圧締温度120℃、圧締圧力10kg/cm2、圧締時間15分とした。その後24時間養生した。この合板(5)を基材とし、その上に化粧材(2)としてナラの0.3mm単板を貼着し、所定サイズに切り出して、続いて相対向する4側面に雄実雌実を加工した。この時雌実の凹部上面(3a)及び雄実の凸部上面(4a)が第2層目の単板(6)内に位置するようにした。このようにして縦1818mm×横303mmで厚み12.4mm厚の実施例1の木質床板(1)を作製した。
【0030】
次に、この木質床板(1)の表面にウレタン塗装を施して乾燥養生した後、これを環境試験室内にて8畳間のスペ−スに施工した。環境試験室の温度は25℃、相対湿度は80%に設定した。この中で、下記の防虫性能試験を実施した。
【0031】
〔実施例2〕
5プライ12mm厚の合板(5)を作製するに当たって、第2層目の単板(6)を、防虫処理しない厚さ3.5mmのヒバ単板を用いた。その他は実施例1と同様にして木質床板(1)を作製し下記の防虫性能試験を実施した。
【0032】
〔比較例1〕
第2層目の単板(6)に防虫処理しない厚さ3.5mmのラワン単板とした他は実施例1と同様にして木質床板(1)を作製し下記に示す防虫性能試験を実施した。
【0033】
〔防虫性能試験結果〕
実施例1、実施例2、比較例1各供試体の防虫性能試験結果を下記表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
〔防虫性能試験方法〕
実施例1、実施例2、比較例1の木質床板をそれぞれ別々の環境試験室内で8畳間の大きさのスペ−スに実物大で施工した。環境室内の温度は3室とも25℃、相対湿度80%で統一した。ヒラタキクイッムシの成虫各30匹をそれぞれの環境室内に放した。試験時期は産卵時期である5月下旬から開始して約3ヶ月様子を見ながら試験した。途中の1ヶ月後と最終の3ヶ月後において食害の有無と食害長の全長をノギスとスケ−ルで測定した。
【0036】
〔試験結果の考察〕
上記表1を見てわかるように、試験開始1ヶ月後で比較例1の床板は食害長が560mmに達している。これに対して実施例1では4mm、実施例2では6mmとほとんど食害されていない。3ヶ月後、比較例1が1600mm以上もの食害があったのに対して実施例1及び実施例2においては食害が10mm以下でありほとんど食害の被害がなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の防虫性能を有する木質床板は、害虫によって食害を受けやすい表層から数えて第2層目の単板にのみ防虫薬剤処理したラワン単板又は心材抽出成分を豊富に含み導管孔のない針葉樹単板などの防虫性能を有する木質単板を使用し、さらに、雌実の凹部上面及び雄実の凸部上面がこの第2層目の単板内に位置するようにしたので、防虫薬剤の過度の使用による材質の劣化を防止し、合板を構成する各単板層の接着不良に起因する単板剥離を未然に防ぎ、且つ防虫作業性を向上させ、効率良く安価にしかも防虫効果がより確実な木質床板が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防虫性能を有する木質床板の1実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1 木質床板
2 化粧材
3 雌実
3a 雌実凹部の上面
4 雄実
4a 雄実凸部の上面
5 合板
6 第2層目の単板
Claims (2)
- 木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する単板が広葉樹材からなり、基材合板の表層から第2層目の単板(6)を厚みが2mm以上の広葉樹単板とし、前記、第2層目の単板(6)にのみ防虫処理を施し、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴とする防虫性能を有する木質床板。
- 木質単板を積層接着して得られた所定サイズの合板(5)を基材とし、その一端に雌実(3)を、相対向する他端に雄実(4)を設け、表面に化粧材(2)が貼着されてなる木質床板(1)において、基材合板を構成する表層から第2層目の単板(6)のみを針葉樹単板とし、その他の層の木質単板は広葉樹単板とし、前記、雌実(3)の凹部上面(3a)及び雄実(4)の凸部上面(4a)が前記、合板(5)の表層から第2層目の単板(6)内に存在することを特徴とする防虫性能を有する木質床板。
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