JP3661543B2 - 空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内の複数の空調ゾーンに対応した空調制御量調節部材の現在位置を、それぞれの目標位置となるように独立に制御することによって、各空調ゾーンへの吹出風を独立に空調制御する空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような空調装置の従来技術としては、例えば特開平9−156340号公報記載のごとく、運転席側エアミックスドアと助手席側エアミックスドアとに連結され、正負両方向に作動可能な第1および第2サーボモータを通電制御することによって各ドアを独立に制御するものが知られている。また、この従来技術では、モータのオーバーランに対処するため、各モータの目標位置に対して上記正負両方向に不感帯を設け、各モータの現在位置が不感帯の範囲外のときには、目標位置となるように各モータを通電制御し、各モータの現在位置が不感帯の範囲内になったときには、各モータへの通電を停止するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、負感帯を設けることによって、モータの現在位置が極力目標位置で停止するようにしているものの、モータのばらつきや、モータとドアとの連結機構でのガタ等によって、モータを目標位置で停止させることは困難である。従って、各モータが互いに異なる方向で作動して不感帯の範囲内で停止したときには、各モータ間における目標位置の偏差と停止位置の偏差とが大きくずれ、その結果、運転席側と助手席側との吹出温度差が目標(乗員の設定)から大きくずれて、車室内乗員に違和感を与えてしまうという問題が発生していた。
【0004】
なお、上記のような問題は、各モータが、エアミックスドアのような温度調整部材を作動させるものだけでなく、例えば吹出モードドア等、自身の位置によって空調制御量を調節する部材を作動させるものであれば同様に発生する。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、第1および第2モータの現在位置の偏差を、各モータの目標位置の偏差に対応したものとすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。
【0007】
すなわち、室内の第1および第2空調ゾーンに対応した第1および第2空気通路(11、12)内の空調制御量を調節する第1および第2空調制御量調節部材(17、18)と、各空調制御量調節部材(17、18)と連結され、正負両方向に作動可能な第1および第2モータ(19、20)とを備え、上記正負それぞれの方向に不感帯を設定し、各モータ(19、20)の現在位置が不感帯の範囲外にあるときは、現在位置が目標位置となるように各モータ(19、20)を通電制御し、現在位置が不感帯の範囲内にあるときは、各モータ(19、20)への通電を停止する空調装置において、
請求項1記載の発明では、各モータ(19、20)の作動方向が互いに異なるときに、第1モータ(19)に対しては、その現在位置が不感帯の範囲内になったときに第1モータ(19)への通電を停止させる第1制御を行い、第2モータ(20)に対しては、その現在位置が一旦、不感帯の範囲内に入っても第2モータ(20)への通電制御を継続して行い、その後、この現在位置が不感帯から所定量離れた所定位置となったときに、第2モータ(20)を逆方向に作動させて上記第1制御をする第2制御を行うことを特徴としている。
【0008】
また、請求項4記載の発明では、各モータ(19、20)のうち、目標位置に向かって上記正方向に作動する前記モータ(19)に対しては、その現在位置が不感帯の範囲内になったときにこのモータ(19)への通電を停止させる第1制御を行い、上記負方向に作動するモータ(20)に対しては、その現在位置が一旦、前記不感帯の範囲内に入ってもこのモータ(20)への通電制御を継続して行い、その後、この現在位置が不感帯から所定量離れた所定位置となったときに、このモータ(20)を逆方向に作動させて上記第1制御をする第2制御を行うことを特徴としている。
【0009】
これら技術的手段によると、各モータ(19、20)が、常に同方向から不感帯の範囲内となるように作動し、目標位置に対してほぼ同位置に停止するため、各モータ(19、20)の現在位置の偏差を、各モータ(19、20)の目標位置の偏差に対応したものとすることができ、それによって、空調使用者に対し違和感のない空調制御を行うことができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明では、各モータ(19、20)の作動方向が互いに異なるとき、かつ各モータ(19、20)の目標位置が同一のときに、第1モータ(19)に対しては上記第1制御を行い、第2モータ(20)に対しては上記第2制御をすることを特徴としている。
【0011】
ここで、各モータ(19、20)の目標位置が同一となるときには、目標位置が異なる場合に比べて、各モータ(19、20)間における目標位置の偏差と停止位置の偏差とがずれることによって、空調使用者に対して違和感をより与えやすい。
【0012】
従って、上記請求項2記載の発明では、各モータ(19、20)の現在位置の偏差を、各モータ(19、20)の目標位置の偏差に対応したものとすることができ、それによって、空調使用者に対し違和感のない空調制御を行うことができる効果が大きい。
【0013】
また、請求項3記載の発明では、第1モータ(19)が停止したときの現在位置を検出する位置検出手段(21)を備え、各モータ(19、20)の作動方向が互いに異なるとき、かつ各モータ(19、20)の目標位置が同一のときに、第2モータ(20)における上記所定位置を、位置検出手段(21)にて検出された第1モータ(17)の現在位置に設定することを特徴としている。
【0014】
これにより、各モータ(19、20)を同じ位置から不感帯の範囲に作動できるので、目標位置に対してほぼ同位置に停止させる精度を向上できる。その結果、より効果的に、各モータ(19、20)の現在位置の偏差を、各モータ(19、20)の目標位置の偏差に対応したものとすることができ、それによって、空調使用者に対し違和感のない空調制御を行うことができる
また、請求項5記載の発明では、車室内に上記第1および第2空調ゾーンを有する車両に用いられた空調装置であることを特徴としている。
【0015】
ここで、車両用空調装置では、車両のスペースが小さいため、空調使用者、すなわち車室内乗員は、各空調ゾーンの目標空調制御量の偏差に対して実際の空調制御量の偏差が異なったときに、これを感じやすい。
【0016】
従って、上記請求項5記載の発明では、各モータ(19、20)の現在位置の偏差を、各モータ(19、20)の目標位置の偏差に対応したものとすることができ、それによって、空調使用者に対し違和感のない空調制御を行うことができる効果がより大きい。
【0017】
【発明の実施形態】
以下、本発明を自動車用空調装置に適用した一実施形態について、図1〜7を用いて説明する。
【0018】
まず、空調ユニット1の構成について図1を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、空調ユニット1は車室内に空気を導く空気通路をなす空調ケース2を備える。
【0020】
この空調ケース2の空気上流側部位には、車室内の空気を導入する内気導入口3、車室外の空気を導入する外気導入口4、および両導入口3、4を選択的に開閉することによって内外気モードを設定する内外気切替ドア5が設けられている。なお、内外気切替ドア5はその駆動手段としてのサーボモータ6(図2参照)によって駆動される。
【0021】
この内外気切替ドア5の空気下流側には、車室内への空気流を発生させるファン7とその駆動手段としてのブロアモータ8が設けられており、さらにその空気下流側には空気を冷却するエバポレータ9が設けられている。なお、ブロアモータ8に印加されるブロア電圧は、ブロアモータコントローラ10(図2参照)によって制御される。
【0022】
エバポレータ9は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、レシーバ、膨張弁とともに周知の冷凍サイクルを構成する冷却用熱交換器である。
【0023】
エバポレータ9の空気下流側には、空調ケース2を運転席側通風路11と助手席側通風路12とに区分する仕切壁13、および図示しないエンジンの冷却水を熱源とする加熱用熱交換器であるヒータコア14が設けられている。
【0024】
ここで、運転席側通風路11は車室内の運転席側空調ゾーン(図示しない)への空気通路であり、助手席側通風路12は車室内の助手席側空調ゾーン(図示しない)への空気通路である。なお、本実施形態における上記運転席側空調ゾーンと上記助手席側空調ゾーンは、それぞれ請求項1における第1空調ゾーンと第2空調ゾーンである。
【0025】
また、ヒータコア14の両側方(図1の上下)には、エバポレータ9にて冷却された冷風がヒータコア14をバイパスして流れる第1および第2バイパス通路15、16が設けられている。
【0026】
また、ヒータコア14に隣接する位置には、運転席側通風路11における温度調節手段としての運転席側エアミックスドア17、助手席側通風路12における温度調節手段としての助手席側エアミックスドア18が設けられている。なお、本実施形態では、運転席側エアミックスドア17にて請求項1における第1空調制御量調節部材を構成しており、助手席側エアミックスドア18にて請求項1、4における第2空調制御量調節部材を構成している。
【0027】
運転席側エアミックスドア17は、エバポレータ9にて冷却された冷風のうち、第1バイパス通路15を流れる風量とヒータコア14を流れる風量との割合を調節することによって上記運転席側空調ゾーンへの吹出温度を調節し、助手席側エアミックスドア18は、第2バイパス通路16を流れる風量とヒータコア14を流れる風量との割合を調節することによって上記助手席側空調ゾーンへの吹出温度を調節するようになっている。
【0028】
また、運転席側エアミックスドア17と助手席側エアミックスドア18には、第1および第2サーボモータ19、20(図2参照)がそれぞれ連結されている。これらサーボモータ19、20は正負両方向に作動可能となっており、この正負両方向への作動に連動してエアミックスドア17、18が作動するようになっている。
【0029】
また、サーボモータ19、20は、制御装置36(図2参照)にて通電されたときに作動するが、通電が遮断されたときにはすぐに停止せず、若干量作動した後、完全に停止する(以下、オーバーランという)。本実施形態では、各サーボモータ19、20に同じモータを用いており、通電が遮断されてからオーバーランする量が同程度となっている。従って、後述するようにエアミックスドア17、18が同一の目標開度に向かって同一方向に作動し、サーボモータ19、20への通電が遮断されたときには、エアミックスドア17、18はほぼ同位置で停止する。
【0030】
また、第1および第2サーボモータ19、20には、それぞれの出力軸における現在の回転角度を検出することによって、エアミックスドア17、18の現在の実開度を検出する位置検出手段としての第1および第2ポテンショメータ21、22(図2参照)が内蔵されている。
【0031】
運転席側通風路11の空気下流端には、運転席側エアミックスドア17により所望の温度に調節された空調風を、運転席側乗員の上半身に対応した位置に吹出す運転席側フェイス吹出口23、運転席側乗員の足元に対応した位置に吹出す運転席側フット吹出口24、および車室内フロントガラスに対応した位置に吹出すデフロスタ吹出口25がそれぞれ設けられている。
【0032】
また、運転席側通風路11内には運転席側フェイス吹出口23を開閉する運転席側フェイスドア26、運転席側フット吹出口24を開閉する運転席側フットドア27が設けられている。なお、運転席側フェイスドア26と運転席側フットドア27は、それぞれ駆動手段としてのサーボモータ28(図2参照)によって駆動される。
【0033】
助手席側通風路12の空気下流端には、助手席側エアミックスドア18により所望の温度に調節された空調風を、助手席側乗員の上半身に対応した位置に吹出す助手席側フェイス吹出口29、助手席側乗員の足元に対応した位置に吹出す助手席側フット吹出口30、および上記デフロスタ吹出口25がそれぞれ設けられている。
【0034】
また、助手席側通風路12内には助手席側フェイス吹出口29を開閉する助手席側フェイスドア31、助手席側フット吹出口30を開閉する助手席側フットドア32、およびデフロスタ吹出口25を開閉するデフロスタドア33が設けられている。なお、助手席側フェイスドア31と助手席側フットドア32は、それぞれ駆動手段としてのサーボモータ34(図2参照)によって駆動され、デフロスタドア33はその駆動手段としてのサーボモータ35(図2参照)によって駆動される。
【0035】
なお、上記デフロスタ吹出口25は、図1において、図面作成の都合上、助手席側通風路12の空気下流端のみに図示した。また、運転席側通風路11下流端のデフロスタ吹出口25および助手席側通風路12下流端のデフロスタ吹出口25はともに、同一のデフロスタドア33によって開閉されるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態における制御系の構成について図2を用いて説明する。
【0037】
制御装置33の内部には、図示しないCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータや、A/D変換回路等が設けられている。
【0038】
制御装置36は、イグニッションスイッチ(図示しない)がオンになると、バッテリー(図示しない)から電力が供給されて作動状態となる。
【0039】
そして、制御装置36の入力端子には、ポテンショメータ21、22、車室内温度を検出する内気温センサ37、外気温度を検出する外気温センサ38、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ39、エバポレータ9を通過した空気の温度を検出するエバ後センサ40、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ41、乗員が上記内外気モードを設定する内外気切替スイッチ42、乗員が上記運転席側空調ゾーンの温度を設定する運転席側温度設定器43、および乗員が上記助手席側空調ゾーンの温度を設定する助手席側温度設定器44等からの各信号が入力されるようになっている。
【0040】
なお、内外気切替スイッチ42と温度設定器43、44は、車室内前方に設けられたインストルメントパネル(図示しない)上に設置されている。
【0041】
ポテンショメータ21、21、上記各センサ37〜41、内外気スイッチ42、および温度設定器43、44からの信号は、上記A/D変換回路にてA/D変換された後、上記マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0042】
また、制御装置36の出力端子からは、ブロアモータコントローラ10、サーボモータ6、19、20、28、34、35への制御信号が出力されるように構成されている。
【0043】
次に、上記マイクロコンピュータが行う制御処理について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3のルーチンは上記イグニッションスイッチがオンされたときに起動される。
【0044】
図3のルーチンが起動されると、まずステップS100にて初期化を行い、次のステップS110にてポテンショメータ21、22、上記各センサ37〜41、内外気切替スイッチ42、および温度設定器43、44からの信号を読込み、さらに次のステップS120にて、運転席側目標吹出温度TAO(Dr)と助手席側目標吹出温度TAO(Pa)とを予めROMに記憶された以下の数式1、2に基づいて算出する。
【0045】
【数1】
TAO(Dr)=Kset×Tset(Dr)−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts−Kd(Dr)(Tset(Dr)−Tset(Pa))+C
【0046】
【数2】
TAO(Pa)=Kset×Tset(Pa)−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts−Kd(Pa)(Tset(Pa)−Tset(Dr))+C
ここでTset(Dr)は運転席側温度設定器43を用いて乗員が設定した設定温度、Tset(Pa)は助手席側温度設定器44を用いて乗員が設定した設定温度、Trは内気温センサ37が検出した内気温度、Tamは外気温センサ38が検出した外気温度、Tsは日射センサ39が検出した日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ks、Kd(Dr)、Kd(Pa)はそれぞれゲインであり、Cは定数である。
【0047】
次のステップS130では、予めROMに記憶された図4のマップに基づいて、上記TAO(Dr)およびTAO(Pa)に対応したブロア電圧VAをそれぞれ決定し、これらのブロア電圧を平均することによって、ブロアモータコントローラ10を介して実際にブロアモータ8に印加するブロア電圧VAを算出する。
【0048】
次のステップS140では、予めROMに記憶された図5に示すマップに基づいて、上記TAO(Dr)およびTAO(Pa)に対応した吹出口モードをそれぞれ決定する。
【0049】
ここで、FACE(フェイス)モードとは、フェイス吹出口23、29から空調風を吹出すモードであり、B/L(バイレベル)モードとは、フェイス吹出口23、29およびフット吹出口24、30の両方から空調風を吹出すモードであり、FOOT(フット)モードとは、フット吹出口24、30から空調風を吹出すモードである。
【0050】
次のステップS150では、運転席側エアミックスドア17の目標開度SW(Dr)と助手席側エアミックスドア18の目標開度SW(Pa)とを予めROMに記憶された以下の数式3、4に基づいて算出する。
【0051】
【数3】
SW(Dr)=(TAO(Dr)−Te)×100/(Tw−Te) (%)
【0052】
【数4】
SW(Pa)=(TAO(Pa)−Te)×100/(Tw−Te) (%)
ここでTeはエバ後センサ40が検出したエバポレータ9通過後の空気温度、Twは水温センサ41が検出したエンジン冷却水温度である。
【0053】
次のステップS160では、ステップS130にて算出したブロア電圧VAをブロアモータコントローラ10へ出力する。
【0054】
ステップS170ではエアミックスドア17、18の実開度TP(Dr)、TP(Pa)がステップS120にて算出した目標開度SW(Dr)、SW(Pa)となるようにサーボモータ19、20へ出力する。なお、このステップS170の詳細な制御処理ついては後述する。
【0055】
ステップS180では内外気スイッチ42にて設定された内外気モードとなるようにサーボモータ6へ出力する。
【0056】
ステップS190ではステップS140にて決定した吹出口モードとなるようにサーボモータ28、34、35へ出力する。
【0057】
次に、本実施形態の要部であるステップS170の制御処理について図6のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0058】
図6のサブルーチンが起動すると、まず、ステップS200にてTset(Dr)=Tset(Pa)か否かを判定し、YESと判定されるとステップS210に移り、NOと判定されるとステップS220に移る。
【0059】
ステップS210では、各エアミックスドア17、18が目標開度SW(Dr)、SW(Pa)に向かって作動する方向が互いに異なるか否かを判定し、YESと判定されるとステップS220に移り、NOと判定されるとステップS230に移る。
【0060】
具体的に説明すると、運転席側エアミックスドア17の目標開度SW(Dr)と実開度TP(Dr)との偏差(SW(Dr)−TP(Dr))と、助手席側エアミックスドア18の目標開度SW(Pa)と実開度TP(Pa)との偏差(SW(Pa)−TP(Pa))とを算出し、各偏差の正負が異なるか否かを判定する。ここで、実開度TP(Dr)、実開度TP(Pa)は、それぞれ第1ポテンショメータ、第2ポテンショメータにて検出されたものである。なお、本実施形態では、このステップS210にて請求項1における作動方向検出手段をなしている。
【0061】
そして、ステップS220では、助手席側エアミックスドア18の実開度TP(Pa)が運転席側エアミックスドア17の実開度TP(Dr)になるように制御する。なお、本実施形態では、請求項1における所定位置を、このステップS220制御時における運転席側エアミックスドア17の実開度TP(Dr)としている。
【0062】
ステップS230では、運転席側エアミックスドア17の開度を図7のマップ、および運転席側偏差(SW(Dr)−TP(Dr))に基づいて制御するとともに、助手席側エアミックスドア18の開度を図7のマップ、および助手席側偏差(SW(Pa)−TP(Pa))に基づいて制御する。なお、このTP(Pa)は、ステップS220の制御直後では当然TP(Dr)となっている。
【0063】
図7のマップによると、各エアミックスドア17、18は、上記各偏差が正方向の所定値+α(本実施形態では+3%)から負方向の所定値−α(本実施形態では−3%)までの範囲(以下、不感帯の範囲という)内となれば停止する。
【0064】
また、図7中の矢印A、Bは、ステップS220、S230での制御前に、上記運転席側偏差が不感帯に対して正方向にずれ、上記助手席側偏差が不感帯に対して負方向にずれている場合における、ステップS220、S230による第1およびエアミックスドア17、18の作動例である。
【0065】
運転席側エアミックスドア17は、図7中矢印Aに示すように不感帯の範囲内になったときに停止する。一方、助手席側エアミックスドア18は、図7中矢印Bに示すように、一旦、不感帯の範囲内に入っても停止せず、運転席側エアミックスドア17の制御前の実開度まで作動する。その後、運転席側エアミックスドア17と同じ方向から目標開度へと作動する。
【0066】
以上説明した本実施形態によると、各エアミックスドア17、18が目標開度SW(Dr)、SW(Pa)へ作動する方向が互いに異なるときには、運転席側エアミックスドア17に対しては、不感帯の範囲内になったときに停止させる制御(請求項1の第1制御)を行い、助手席側エアミックスドア18に対しては、第2サーボモータ20が一旦、不感帯の範囲内に入っても第2サーボモータ20への通電制御を維持し、助手席側エアミックスドア18が運転席側エアミックスドア17の制御前の実開度になったときに、助手席側エアミックスドア18を逆方向に作動させて不感帯の範囲内になったときに停止させる制御(請求項1の第2制御)を行う。
【0067】
これにより、エアミックスドア17、18を同じ方向から不感帯の範囲内に作動させて、各エアミックスドア17、18が不感帯の範囲内で停止したときの開度をほぼ同開度にできるので、各エアミックスドア17、18の停止開度の偏差を、各エアミックスドア17、18の目標開度SW(Dr)、SW(Pa)の偏差と対応したものにでき、その結果、車室内乗員に対して違和感のない空調制御を行うことができる。
【0068】
(他の実施形態)
上記実施形態では、請求項1における「第1モータ」を第1サーボモータ、請求項1における「第2モータ」を第2サーボモータとしているが、「第1モータ」を第2サーボモータ、「第2モータ」を第1サーボモータとしても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、請求項2における「各モータの目標位置が実質的に同一となるとき」を設定温度Tset(Dr)、Tset(Pa)が同一のときとして説明したが、これに限らず、例えば、エアミックスドア17、18の目標開度SW(Dr)、SW(Pa)が同一のとき、あるいは目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)が同一のときとしても良い。更に、「実質的に同一」という形態としては完全に一致することだけでなく、若干のずれがあっても良い。
【0070】
また、ステップS210〜S230の制御処理を上記のような各モータの目標位置が実質的に同一となる条件のとき以外に行っても良い。
【0071】
また、上記各実施形態では、請求項1における「所定位置」をステップS220制御時における運転席側エアミックスドア17の実開度としたが、これに限らない。要は、その後、助手席側エアミックスドア18が運転席側エアミックスドア18と同じ方向から不感帯の範囲内へと作動できる開度であれば良い。
【0072】
また、上記各実施形態では、運転席側エアミックスドア17に対して第1制御を行い、助手席側エアミックスドア18に対して第2制御を行ったが、例えば、各エアミックスドア17、18のうち、上記正方向に作動するドアに対して第1制御を行い、上記負方向に作動するドアに対して第2制御を行うようにしても良い。また、上記負方向に作動するドアに対して第1制御を行い、上記正方向に作動するドアに対して第2制御を行っても良い。
【0073】
また、上記各実施形態では、第1空調ゾーンを車室内の運転席側空間、第2空調ゾーンを車室内の助手席側空間としたが、これに限らず、例えば、第1空調ゾーンを車室内の前席空間、第2空調ゾーンを車室内の後席空間としても良い。
【0074】
また、上記各実施形態では、不感帯領域を上記偏差の正負両方向に3%ずつ設けたが、正方向の領域と負方向の領域とが異なるようにしても良い。
【0075】
また、上記各実施形態では、エアミックスドア17、18の目標開度として、ステップS150にて算出した値を直接用いたが、例えば吹出温度のコントロール特性の非線形性を吸収するように補正した値を用いても良い。
【0076】
また、上記各実施形態では、本発明を第1および第2空調ゾーンに対して独立に空調制御する空調装置に適用したが、3つ以上の空調ゾーンに対して独立に空調制御を行う空調装置においても本発明の効果を奏する。
【0077】
上記各実施形態では、請求項1における「空調制御量調節部材」を、吹出温度を調節するエアミックスドア17、18とした形態について説明したが、これに限らず、例えば、温水流量を調節するウォーターバルブ、吹出風量を調節する吹出モードドア、配風ドア等としても良い。
【0078】
また、上記各実施形態では、本発明を自動車用空調装置に適用したが、これに限らず、室内の複数の空調ゾーンを独立に空調制御するものであれば他の空調装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における空調ユニット1の構成図である。
【図2】上記実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】上記実施形態においてマイクロコンピュータが行う制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS130にてブロア電圧VAを算出するときに用いるマップである。
【図5】図3のステップS140にて吹出口モードを決定するときに用いるマップである。
【図6】図3のステップS170における詳細な制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS220、S230にて第1および第2サーボモータ19、20を制御するときに用いるマップである
【符号の説明】
11…運転席側通風路(第1空気通路)、
12…助手席側通風路(第2空気通路)、
17…運転席側エアミックスドア(第1空調制御量調節部材)、
18…助手席側エアミックスドア(第2空調制御量調節部材)、
19…第1サーボモータ(第1モータ)、
20…第2サーボモータ(第2モータ)、
21…第1ポテンショメータ(位置検出手段)。

Claims (5)

  1. 室内の第1空調ゾーンへ空気を導く第1空気通路(11)、および室内の第2空調ゾーンへ空気を導く第2空気通路(12)にそれぞれ対応して前記各空気通路(11、12)内の空調制御量をそれぞれ調節する第1および第2空調制御量調節部材(17、18)と、
    前記第1および第2空調制御量調節部材(17、18)と連結され、正負両方向に作動可能な第1および第2モータ(19、20)と、
    前記各空調ゾーンの空調条件に基づいて前記各モータ(19、20)の目標位置をそれぞれ決定する目標位置決定手段(S150)と、
    前記各目標位置に対して前記正負それぞれの方向に不感帯を設定し、前記各モータ(19、20)の現在位置が前記不感帯の範囲外にあるときは、前記現在位置が前記目標位置となるように前記各モータ(19、20)を通電制御し、前記現在位置が前記不感帯の範囲内にあるときは、前記各モータ(19、20)への通電を停止するモータ制御手段(S170)とを備えた空調装置において、
    前記各モータ(19、20)がそれぞれの目標位置に向かって作動する方向が互いに異なるか否かを判定する作動方向判定手段(S210)を備え、
    前記モータ制御手段(S170)は、前記作動方向判定手段(S210)によって前記各作動方向が互いに異なると判定されたときに、前記第1モータ(19)に対しては、その現在位置が前記不感帯の範囲内になったときに前記第1モータ(19)への通電を停止させる第1制御を行い、前記第2モータ(20)に対しては、その現在位置が一旦、前記不感帯の範囲内に入っても前記第2モータ(20)への通電制御を継続して行い、その後、前記現在位置が前記不感帯から所定量離れた所定位置となったときに前記第2モータ(20)を逆方向に作動させて前記第1制御をする第2制御を行うことを特徴とする空調装置。
  2. 前記各モータ(19、20)の目標位置が実質的に同一であるか否かを判定する目標位置判定手段(S200)を備え、
    前記モータ制御手段(S170)は、前記作動方向判定手段(S210)によって前記各作動方向が互いに異なると判定され、かつ前記目標位置判定手段(S200)にて前記各目標位置が実質的に同一であると判定されたときに、前記第1モータ(19)に対しては前記第1制御を行い、前記第2モータ(20)に対しては前記第2制御を行うことを特徴とする請求項1記載の空調装置。
  3. 前記第1モータ(19)が停止したときの現在位置を検出する位置検出手段(21)を備え、
    前記モータ制御手段(S170)は、前記作動方向判定手段(S210)によって前記各作動方向が互いに異なると判定され、かつ前記目標位置判定手段(S200)にて前記各目標位置が実質的に同一であると判定されたときに、前記第2モータ(20)における前記所定位置を、前記位置検出手段(21)にて検出された前記第1モータ(17)の現在位置に設定することを特徴とする請求項2記載の空調装置。
  4. 室内の第1空調ゾーンへ空気を導く第1空気通路(11)、および室内の第2空調ゾーンへ空気を導く第2空気通路(12)にそれぞれ対応して前記各空気通路(11、12)内の空調制御量をそれぞれ調節する第1および第2空調制御量調節部材(17、18)と、
    前記第1および第2空調制御量調節部材(17、18)と連結され、正負両方向にそれぞれ作動可能な第1および第2モータ(19、20)と、
    前記各空調ゾーンの空調条件に基づいて前記各モータ(19、20)の目標位置をそれぞれ決定する目標位置決定手段(S150)と、
    前記各目標位置に対して前記正負それぞれの方向に不感帯を設定し、前記各モータ(19、20)の現在位置が前記不感帯の範囲外にあるときは、前記現在位置が前記目標位置となるように前記各モータ(19、20)を通電制御し、前記現在位置が前記不感帯の範囲内にあるときは、前記各モータ(19、20)への通電を停止するモータ制御手段(S170)とを備えた空調装置において、
    前記モータ制御手段(S170)は、前記各モータ(19、20)のうち、前記目標位置に向かって前記正方向に作動する前記モータ(19)に対しては、その現在位置が前記不感帯の範囲内になったときにこのモータ(19)への通電を停止させる第1制御を行い、前記負方向に作動する前記モータ(20)に対しては、その現在位置が一旦、前記不感帯の範囲内に入ってもこのモータ(20)への通電制御を継続して行い、その後、この現在位置が前記不感帯から所定量離れた所定位置となったときにモータ(20)を逆方向に作動させて前記第1制御をする第2制御を行うことを特徴とする空調装置。
  5. 車室内に前記第1および第2空調ゾーンを有した車両に用いられたことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つに記載の空調装置。
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