JP3660834B2 - 難燃性樹脂組成物からなる成形品の再利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性樹脂組成物から溶融成形して得られる成形品の再利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性、熱的性質を有しているため工業的に広く利用されている。しかしながら芳香族ポリカーボネート樹脂は、溶融粘度が高いため、流動性が悪く成形性に劣る欠点がある。芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性を改良するため他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイについても数多く開発されている。その中でもABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂とのポリマーアロイは、自動車分野、OA機器分野、電子電気機器分野等に広く利用されている。近年OA機器、家電製品等の用途を中心に、使用する樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるためにポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイについても、難燃化の検討が数多くなされている。
【0003】
従来、かかるポリマーアロイにおいてはブロムを有するハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等の難燃助剤の併用が一般的であったが、燃焼時の有害性物質の発生問題からブロムを有するハロゲン系化合物を含まない難燃化の検討が盛んになってきた。例えば芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイにトリフェニルホスフェートとフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合する方法(特開平2−32154号公報)、縮合リン酸エステルであるホスフェート系オリゴマーを配合する方法(特開平2−115262号公報)等が提案されている。
【0004】
前者のトリフェニルホスフェートを配合する方法は、良好な難燃性を達成すると共に、樹脂組成物の流動性を大きく向上させる効果があるため、幅広く使用されている方法である。しかし一方で、かかるトリフェニルホスフェートは成形加工時に熱応力を多く受けた場合に気化しやすい特性があるため、難燃剤が製品や金型表面に付着し、製品の外観不良や生産性の低下を引き起こすという問題がある。
【0005】
後者のホスフェート系オリゴマーを配合する方法は、トリフェニルホスフェートと比べて成形加工時の難燃剤の気化が少ないため、金型付着に起因する製品の外観不良や生産性の低下を引き起こすという問題は解消される。
【0006】
一方で、近年OA機器、家電製品等の用途では、資源の有効利用ならびに環境保護の見地から、これらの不用になった製品を回収し、再生利用する種々の検討が行われている。しかしながら、該樹脂組成物の溶融成形品を再利用する過程で、粉砕機等で射出成形品を多量に粉砕しようとすると粉砕機の回転刃が高温になり、成形品が溶け出すため処理能力が低下し、その結果粉砕効率が悪くなるという欠点を有している。
【0007】
すなわち、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂からなるポリマーアロイに対し、難燃剤としてホスフェート系オリゴマーを使用することは、難燃性、金型汚染性等、種々の長所を有しているが、不用になった製品を再生する過程で成形品の粉砕効率が低下するという問題の解決は、強く要望されている課題である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイに難燃剤としてホスフェート系オリゴマーを配合してなる樹脂組成物において、該組成物の成形品が効率良く粉砕可能である難燃性樹脂組成物の溶融成形品を再利用する方法を提供することにある。本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用すると、極めて顕著に成形品の粉砕効率が向上することを見出し、結果として、難燃性、金型汚染性が良好であると共に、溶融成形で得られた成形品の粉砕性が良好である本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイに難燃剤としてホスフェート系オリゴマーを配合してなる樹脂組成物の溶融成形品を再利用する方法であって、該樹脂組成物として下記a成分、b成分およびc成分の合計を100重量%とした時、粘度平均分子量13,000〜19,500の芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%、スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%、および下記一般式(1)で示されるリン系難燃剤(c成分)3〜20重量%からなる難燃性樹脂組成物を用い、該組成物の成形品を回転刃により成形品を粉砕する粉砕機で粉砕し粉砕物を得ることを特徴とする再利用方法およびかかる再利用方法から得られる成形品粉砕物に係るものである。
【0010】
【化2】
【0011】
本発明のa成分における芳香族ポリカーボネート樹脂とは、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融法で反応させて得られるものである。
【0012】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0013】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0014】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0015】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0016】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0017】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(2)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
【0020】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0021】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(3)および(4)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
【0025】
かかる一般式(3)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0026】
また、一般式(4)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0027】
末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましい。より好ましくは全末端に対して末端停止剤が80モル%以上導入されること、すなわち2価フェノールに由来する末端の水酸基(OH基)が20モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは全末端に対して末端停止剤が90モル%以上導入されること、すなわちOH基が10モル%以下の場合である。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0028】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0029】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m―クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0030】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0031】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0032】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で13,000〜19,500であり、より好ましくは13,000〜17,000であり、更に好ましくは14,000〜17,000であり、最も好ましくは14,000〜16,000である。ここでいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求めたものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0033】
芳香族ポリカーボネート樹脂として粘度平均分子量が19,500を超えたものを使用した場合は、流動性が低下する。また溶融成形した成形品を多量に粉砕しようとしても、粉砕機の回転刃が高温となり、成形品が溶け出すため、粉砕効率が低下するようになる。また、粘度平均分子量が13,000未満のものを使用した場合は、十分な難燃性が得られず、また機械的強度も低下する。
【0034】
原料芳香族ポリカーボネート樹脂は、従来公知の常法(界面重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において精密濾過処理をしたり、造粒(脱溶媒)後の粒状原料を例えば加熱条件下でアセトンなどの貧溶媒で洗浄したりして低分子量成分や未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。ペレット状芳香族ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)では溶融状態の時に濾過精度10μmの焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去したりすることが好ましい。必要により、例えばリン系等の酸化防止剤などの添加剤を加えることも好ましい。これらリン系酸化防止剤は酸化防止効果を有する一方、芳香族ポリカーボネート樹脂の耐湿熱性に影響を与えるため、芳香族ポリカーボネート樹脂中に0.0001〜0.1重量%で配合されていることが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.05重量%、特に好ましくは0.001〜0.01重量%の場合である。いずれにしても耐湿熱性を良好にするために原料樹脂は、異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
【0035】
更に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて離型剤、トリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル系等の紫外線吸収剤、アンスラキノン系染料等のブルーイング剤、染料、カーボンブラック、酸化チタン等の着色剤(0.001〜10重量%)、光拡散剤、滑剤、クマリン、ナフタルイミド、オキサゾール化合物等の蛍光増白剤(0.01〜0.1重量%)等を配合してもよい。
【0036】
本発明においてb成分として使用されるスチレン系樹脂とは、スチレンまたはα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体をかかるスチレン系樹脂100重量%中20重量%以上を含有する樹脂をいう。したがってスチレン系樹脂としては、かかるスチレン系誘導体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体、更にはポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン成分とポリ(メタ)アルキルアクリレート成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム等のゴム成分にスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものを挙げることができる。これらのスチレン系樹脂として具体的には、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられ、共重合体および混合物においてはスチレン系誘導体成分が、かかるスチレン系樹脂100重量%中20重量%以上含まれるものである。かかる各種重合体は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、塊状懸濁重合等の各種重合法により製造されるものが使用可能であり、また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
【0037】
本発明では、これらの中でもポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)が好ましく、中でも耐衝撃性の観点からABS樹脂が最も好ましい。更にこれらの中でも塊状重合法により製造されたものがより耐湿熱性を向上させることができる点で好ましく使用できる。またこれらのb成分は一種のみならず二種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
本発明でいうABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体であり、通常AS樹脂等のグラフト重合時に副生される他の重合体との混合物を形成しているものである。更にかかるABS樹脂と別途重合されたAS樹脂との混合物が工業的に広く利用されているものである。かかるABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜75重量%であるのが好ましい。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を挙げることができ、またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレンおよび核置換スチレンを挙げることができる。かかるシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の含有割合は、かかるシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%である。更にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することができるが、これらの含有割合はb成分中15重量%以下とすべきである。
【0039】
本発明のABS樹脂は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、上記に示した如く、塊状重合法で製造されたものが耐湿熱性を更に良好とする点でより好ましいものである。
【0040】
更にABS樹脂として好ましいものは、かかるABS樹脂中に残留するアクリロニトリルモノマー量が200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下の条件を満足するものである。かかる残留アクリロニトリルモノマー量がこれらの量を満足する場合には、より良好な耐湿熱特性を満足することができる。尚、アクリロニトリルモノマー量を5ppm未満とすることは、耐湿熱性が大きくは向上しないのに対し、モノマー量低減のための工数増加等による経済的不利益が大きくなるため、5ppm以上とすることが適当である。
【0041】
本発明においてc成分として使用されるリン系難燃剤は、下記式(1)で表されるものである。
【0042】
【化6】
【0043】
(ここで、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ独立して0または1であり、nは1〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルのブレンドの場合は1〜5の平均値であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立してフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導されるものである。)
この中で好ましくは、上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールAから誘導されるものが挙げられ、j、k、l、mはそれぞれ1であり、nは1〜3の整数であり、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
【0044】
更に、特に好ましくは、Xはレゾルシノールから誘導されるものであり、j、k、l、mはそれぞれ1であり、nは1であり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
【0045】
本発明おいてd成分としては使用するケイ酸塩系充填剤とは、その化学組成上SiO2成分を35重量%以上含有する無機充填剤、好ましくは40重量%以上含有する無機充填剤をいう。かかるケイ酸塩系充填剤としては、カオリン、タルク、クレー、パイロフィライト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、天然シリカ、合成シリカ、各種ガラスフィラー、ゼオライト、ケイソウ土、ハロイサイト等を挙げることができる。
【0046】
中でも、本発明においては、かかる充填剤が微分散することで加水分解を抑制する作用点を多くできること、および難燃性付与の観点からは樹脂に対する補強効果も重要であること等の点から、タルク、マイカ、ワラストナイトを好ましい充填剤として挙げることができる。中でもタルクが最も好ましい。
【0047】
本発明におけるマイカとしては、補強効果確保の面から、平均粒径が1〜80μmの粉末状のものが好ましい。マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等があり、本発明のマイカとしてはいずれのマイカも使用できるが、特に金雲母、黒雲母および金雲母のOH基がF原子に置換された人造雲母よりは、SiO2含有量のより高い白雲母が好ましい。また、マイカの製造に際しての粉砕法としては、マイカ原石を乾式粉砕機にて粉砕する乾式粉砕法とマイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕機で本粉砕し、その後脱水、乾燥を行う湿式粉砕法があり、乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるがマイカを薄く細かく粉砕することが困難であるため本発明においては湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0048】
マイカの平均粒径としては、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が1〜80μmのものが好ましく使用できる。更に好ましくは平均粒径が2〜50μmのものである。1〜80μmの場合には、より難燃性に良好な作用を与えるとともに、樹脂中の微分散の条件も満足するため耐湿熱性も良好に維持できる。
【0049】
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmのものを使用できる。好ましくは厚みが0.03〜0.3μmである。更にかかるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、更にエポキシ系、ウレタン系、アクリル系等の結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。マイカの具体例としては、株式会社山口雲母工業所製雲母粉(マイカ粉)A−41、A−21、A−11等があり、これらは市場で容易に入手できるものである。
【0050】
本発明におけるタルクとしては、剛性確保の面から、平均粒径が0.5〜20μmの粉末状のものが好ましい。タルクはマイカに比較して厚みが厚いため、樹脂中の分散において同等とするのには、より小粒径である方が好ましい。ここでタルクの平均粒径とはマイクロトラックレーザー回折法により測定された値をいう。
【0051】
本発明のタルクとしては、特に産地等を限定するものではないが、より好ましくは、SiO2成分がより高いもの、例えば60重量%以上のものが好ましい。かかるSiO2成分量の場合は、相対的に不純物であるFe2O3の含有量も多くなりやすいため、かかるタルクは色相の点においても有利である。またかかるタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。更にかかるタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、バインダー樹脂を使用し圧縮する方法等があり、特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要のバインダー樹脂成分を本発明の組成物中に混入させない点で好ましい。
【0052】
本発明でいうワラストナイトとは、珪酸カルシウムを主成分とする繊維状無機充填材は針状結晶をもつ天然白色鉱物であり、実質的に化学式CaSiO3で表わされ、通常SiO2が約50重量%、CaOが約47重量%、その他Fe2O3、Al2O3等を含有しており、比重は約2.9である。
【0053】
本発明のワラストナイトは、好ましく数平均長さ10〜50μm、数平均直径が1〜10μmを有するものであり、更には5〜25μmの長さを有するものが少なくとも50%以上、更に好ましくは60%以上のものである。また繊維径については、0.5〜2.5μmの繊維径を有するものが少なくとも40%以上、より好ましくは50%以上のものである。更に数平均アスペクト比が6以上、さらに好ましくは8以上のものがより好ましく使用できる。特にかかるアスペクト比が8以上の場合は、補強効果が十分であり好ましい。但し、作業環境面を考慮すると、アスペクト比が50以下であるものがより好ましい。
【0054】
尚、かかる繊維長、繊維径については、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によるワラストナイトの画像から、ランダムに抽出した200本以上について測定した値から算出するものである。また、かかるワラストナイトには、通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理を施しても差し支えない。
【0055】
次に本発明の樹脂組成物における各成分の配合割合について説明する。樹脂組成物中a成分〜c成分の配合割合は、三者の合計重量に基づいて表される。三者の合計100重量%当り、a成分は40〜92重量%、b成分は5〜40重量%、c成分は3〜20重量%である。a成分が40重量%未満またはb成分が40重量%を超える場合には、十分な難燃性が得られず、耐熱性(特に荷重たわみ温度)や機械的強度が低下するようになる。また、a成分が92重量%を超えるかまたはb成分が5重量%未満の場合には、流動性が低下し、生産性が低下するようになる。更に、c成分が3重量%未満では十分な難燃性が得られず、20重量%を超えると機械的強度や耐熱性(特に荷重たわみ温度)が著しく低下するとともに、耐湿熱性も大きく低下する。
【0056】
本発明においてd成分の配合割合は、a成分〜c成分の合計100重量部当り0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜20重量部の範囲である。このd成分の配合割合が0.1重量部未満では、耐湿熱性の向上効果がなく、25重量部を超えると流動性および衝撃強度が低下したり、得られる成形品の表面外観が悪化するようになるため好ましくない。
【0057】
本発明の組成物には、難燃性能を更に向上させるためにフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合することもできる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格においてタイプ3に分類されているものである。更にかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜10μmの範囲のものが好ましく、2次粒子径が50〜700μmのものが好ましい。かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)よりテフロン6Jとして、またはダイキン化学工業(株)よりポリフロンとして市販されており容易に入手できる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量は上記a成分〜c成分の3成分の合計100重量部に対して0.1〜1重量部が好ましい。0.1〜1重量部の範囲においては、十分な溶融滴下防止性能と共に、良好な外観および機械的特性を得ることが可能となる。
【0058】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0059】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、ASA樹脂、ポリメチル(メタ)クリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、更にかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0060】
これらのなかでもb成分との相溶性の観点から、ポリスチレン、HIPS、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、更にかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体が好ましく、更に好ましくはb成分と同種の重合体を使用する場合である。
【0061】
かかる凝集混合物を調整するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有するb成分の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。尚、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0062】
尚、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、b成分であるスチレン系樹脂のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。更に凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、5〜40重量%、特に10〜30重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0063】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0064】
更に、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系単量体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0065】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」を代表例としてあげることができ、本発明において好ましく使用できるものである。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、上記スチレン系樹脂以外にも、特に低温の衝撃特性を向上させる目的で、ゴム質重合体を配合することができる。かかるゴム質重合体としては、アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができる。
【0067】
アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体としては、炭素数2〜8アルキル基を有するゴム状アルキル(メタ)アクリレート重合体およびジエン系ゴム状重合体との共重合体または混合物とのコアに、アルキル(メタ)アクリレートおよび任意に共重合可能なビニル単量体を重合したシェルが形成されたコア−シェル型の重合体、同様にした多段のコア−シェル型ポリマーも使用可能である。またコアとしてジエン系ゴム状重合体のみからなるものも使用可能である。かかるアクリル酸エステルコア−シェルグラフト重合体として、呉羽化学工業(株)から商品名「HIA−15」、「HIA−28」として市販されている樹脂を挙げることができ、またコアとしてジエン系ゴム状重合体のみからなるものとしては、呉羽化学工業(株)から商品名「パラロイド EXL−2602」として市販されている樹脂を挙げることができる。
【0068】
更にポリオルガノシロキサン成分とポリ(メタ)アルキルアクリレート成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴムに、アルキル(メタ)アクリレートおよび任意に共重合可能なビニル単量体がグラフト重合した重合体(以下IPN型ポリマーという)も使用できる。かかるIPN型ポリマーとしては、三菱レイヨン(株)より「メタブレンS−2001」という商品名で市販されており、入手容易である。
【0069】
本発明で使用できる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、有機ポリイソシアネート、ポリオール、および官能基を2乃至3個有し且つ分子量が50〜400の鎖延長剤の反応により得られるものであり、現在公知の各種熱可塑性ポリウレタンエラストマーが使用可能である。かかる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えばクラレ(株)製「クラミロンU」(商品名)等容易に入手可能である。
【0070】
本発明で使用できる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、二官能性カルボン酸成分、アルキレングリコール成分、およびポリアルキレングリコール成分を重縮合して得られるものであり、現在公知の各種熱可塑性ポリエステルエラストマーの使用が可能である。かかる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば東洋紡績(株)製「ペルプレン」(商品名)、帝人(株)製「ヌーベラン」(商品名)等容易に入手可能なものである。
【0071】
本発明の樹脂組成物上記各成分をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混錬ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲でポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル等の他の熱可塑性樹脂が混合されていてもよく、またポリオルガノシロキサン系難燃剤の配合も可能である。
【0072】
更に本発明の目的を損なわない範囲であれば、安定剤(例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物等)、光安定剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物)、着色剤、発泡剤、帯電防止剤等の一般に微量配合される各種の添加剤を配合することも可能であり、これらは単独の他、各種樹脂のマスターペレット形状で配合することも可能である。
【0073】
熱安定剤としては、芳香族ポリカーボネートの熱安定剤として従来公知の亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリスノニルフェニルホスファイト、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく挙げることができる。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。
【0074】
本発明の熱安定剤としては、上記以外に一般に酸化防止剤として知られるヒンダードフェノール系の化合物やイオウ系の化合物を配合することも好ましく行われる。かかる化合物は特にスチレン系樹脂の熱安定性を保持し、該樹脂の熱分解を抑制する点で好ましいものである。かかる化合物として具体的には、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−アミル−6−[1−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート等、およびペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等を挙げることができる。
【0075】
かくして得られる樹脂組成物は押出成形、射出成形、圧縮成形等の方法で容易に成形可能であり、またブロー成形、真空成形等にも適用できる。特にUL94V−0が要求される電気電子部品、OAの外装用途等の材料として最適である。
【0076】
【発明の実施の形態】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお実施例中の部は重量部であり、評価は下記の方法によった。
【0077】
(1)耐湿熱性−1:ペレット約50gを環境試験機(タバイエスペック(株)製プラチナスサブゼロルシファー)で65℃、85%RHの条件下で500時間処理した後、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を測定するのと同一の手法でみかけの粘度平均分子量を測定した。すなわち、ペレットを塩化メチレンに溶解した後、不溶分をろ過により取り除いて溶液として得られたものの比粘度を、本文記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量測定と同様に測定し、更に同一の算出式を用いてみかけの粘度平均分子量の値を算出した。
(2)耐湿熱性−2:ASTM D790に準拠し曲げ試験を行い、湿熱処理前後の強度変化を観察した。すなわち試験片を成形後23℃、50%RHの環境下におき24時間後に曲げ試験を行い、これを湿熱処理前の値とし、同様の条件で24時間放置後に、更に上記(1)と同じ装置により65℃、85%RHの条件下で500時間処理した後に曲げ試験を行い、これを処理後の値とした。
【0078】
(3)難燃性:UL規格94Vに従い厚み1.6mmにおける燃焼試験を実施した。
(4)粉砕性:射出成形品を粉砕機((株)朋来鉄工所製SB−210)にて、70kg/hの処理能力で粉砕し以下の基準で粉砕性を判定した。
○;問題なく粉砕可能。
×;成形品が溶融し、粉砕不可能。
【0079】
[参考例1]
温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダー中の温水にポリカーボネート溶液を滴下し、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化した。次にこの含液したポリカーボネート樹脂を粉砕、乾燥して、粘度平均分子量15000のパウダーを得た。これをPC−1とした。
【0080】
[参考例2]
撹拌機及び蒸留塔を備えた反応器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228部、ジフェニルカーボネート(バイエル社製)220部(約1.03モル/ビスフェノールA1モル)及び触媒として水酸化ナトリウム0.000024部(約6×10-7モル/ビスフェノールA1モル)とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.0073部(約8×10-5モル/ビスフェノールA1モル)を仕込み、窒素置換した。この混合物を200℃まで加熱して撹拌しながら溶解させた。次いで、減圧度を30Torrとして加熱しながら1時間で大半のフェノールを留去し、更に270℃まで温度を上げ、減圧度を1Torrとして2時間重合反応を行ったところで、末端停止剤として2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート2.3部を添加した。その後270℃、1Torr以下で5分間末端封鎖反応を行った。次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.00023部添加して270℃、10Torr以下で10分間反応を継続し、粘度平均分子量15000のポリマーを得た。このポリマーをギアポンプでエクストルーダーに送った。エクストルーダー途中でトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.008重量%加え、ポリカーボネートペレットを得た。これをPC−2とした。
【0081】
[実施例1〜7、比較例1〜3]
表1、2に記載の各成分を表記載の量をV型ブレンダーで混合した後、径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]によりシリンダー温度240℃でペレット化した。このペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]を用いて各種試験片を作成し評価した。評価結果を表1、2に示した。なお、表1、2に記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
【0082】
(a成分)
PC−1:上記参考例1(ホスゲン法)で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂
PC−2:上記参考例2(溶融法)で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂
PC−3:上記参考例1と同様の原料を使用し、同様の方法で製造された、粘度平均分子量14,200の芳香族ポリカーボネート樹脂
PC−4:上記参考例1と同様の原料を使用し、同様の方法で製造された、粘度平均分子量16,700の芳香族ポリカーボネート樹脂
(a成分以外)
PC−5:上記参考例1と同様の原料を使用し、同様の方法で製造された、粘度平均分子量20,000の芳香族ポリカーボネート樹脂
PC−6:上記参考例1と同様の原料を使用し、同様の方法で製造された、粘度平均分子量25,000の芳香族ポリカーボネート樹脂
(b成分)
ABS:塊状重合により製造されたABS樹脂[三井化学(株)製サンタックUT−61]
(c成分)
FR:レゾルシノールポリホスフェート[大八化学(株)CR−733S]
(d成分)
タルク:タルク[林化成(株)製HS−T0.8、平均粒子径約5μm]
マイカ:マイカ粉[(株)山口雲母工業所製A−41、平均粒子径約40μm]
WSN:ワラストナイト[巴工業(株)製サイカテックNN−4、平均繊維径1.5μm、平均繊維長17μm]
(その他)
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン[ダイキン工業(株)製F−201L]
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
この表から明らかなように、実施例1〜4および比較例1、2との比較から、本願発明の特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した場合には、70kg/hの処理能力で問題なく粉砕可能であり、粉砕性が良好であることがわかる。また比較例3から本発明の特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用しても、ABS樹脂の配合量が多すぎる場合には難燃性に劣ることがわかる。
【0086】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性、金型汚染性に優れると共に、溶融成形で得られた成形品の粉砕性に優れる樹脂組成物であることから、CRTハウジング、携帯情報端末ハウジング、ノート型コンピューターハウジング等に代表されるOA機器分野、電気電子機器分野等の各種工業用途に極めて有用である。
Claims (6)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイに難燃剤としてホスフェート系オリゴマーを配合してなる樹脂組成物の溶融成形品を再利用する方法であって、該樹脂組成物として下記a成分、b成分およびc成分の合計を100重量%とした時、粘度平均分子量13,000〜19,500の芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%、スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%、および下記一般式(1)で示されるリン系難燃剤(c成分)3〜20重量%からなる難燃性樹脂組成物を用い、該組成物の成形品を回転刃により成形品を粉砕する粉砕機で粉砕し粉砕物を得ることを特徴とする再利用方法。
- 上記樹脂組成物は、a成分、b成分、およびc成分の合計100重量部当たり、更にケイ酸塩系充填剤(d成分)0.1〜25重量部が配合されてなる請求項1記載の再利用方法。
- 上記b成分はABS樹脂である請求項1または2のいずれか1項に記載の再利用方法。
- b成分が、塊状重合法により製造されるABS樹脂である請求項3に記載の再利用方法。
- d成分がタルク、マイカおよびワラストナイトの群から選択される少なくとも1種以上の充填剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の再利用方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の再利用方法から得られる成形品粉砕物。
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