JP3659727B2 - ソーラー時計用表示板構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光をエネルギーとして使用する太陽電池を時計用文字板に用いたソーラー時計用表示板構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から時計、電卓、携帯ラジオなどの電源として太陽電池が用いられている。この太陽電池は、通常アモルファスシリコンなどから形成され、光エネルギーを電気エネルギーに変換しており、その機能から光があたる位置、すなわち外部から直接見える表面位置に配設する必要がある。
【0003】
そして、図12、図13に示すように腕時計の文字板構造に前記太陽電池を用いた場合には、腕時計のモジュール31の上面に平面視で扇形のソーラーセル32を4枚、絶縁帯33を挟んで配置し、このソーラーセル32の上に透明なポリカーボネートもしくはアクリル樹脂の透明板34を介して半透明な樹脂薄膜層35を積層した構成である。
【0004】
しかしながら、上記にようなソーラー時計表示板構造にあっては、ソーラーセル32が通常茶褐色または暗青色であるため、文字板が前記色となり、また、ソーラーセル32とソーラーセル32との間に絶縁帯33があるために、この絶縁帯33が十字線として現れ、色調を含めたデザインが大幅に限定されるばかりか、外観に劣り商品性の悪いものになっていた。
【0005】
これに対し、太陽電池の前面に干渉フィルタなどを設けて、太陽電池が直接見えないようにした時計などが提案されているが、太陽電池への光エネルギー供給に支障を来すという問題があり、また時計用文字板としての外観品質が悪いという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば、特公平5−38464号公報には、太陽電池と、この太陽電池の前面に設けられて太陽電池の発電に寄与する波長域の光を透過するカラーフィルタと、太陽電池とカラーフィルタとの間に設けられてカラーフィルタにより透過した光の一部を透過し、残りを四方に散乱する散乱層とから成るカラー拡散層とを有する色つき太陽電池が開示されている。
【0007】
そして、散乱層を白色拡散板とする場合には、アクリル製乳白色板、ハーフミラーに艶消しクリヤラッカーを塗布したもの、片面を粗らしたガラスやプラスチックの反対側にアルミニウムなどでミラーを形成したものなどを用いることが示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、アクリル製乳白色板は、加工時にバリが発生し、バリ取り加工が必要なためコスト増になり、さらには長期間の直射日光の照射により熱変形するという欠点がある。また、ハーフミラーに艶消しクリヤラッカーを塗布したものや、片面を粗らしたガラスやプラスチックの反対側にアルミニウムなどでミラーを形成したものについては、膜厚が不均一となることにより透過率がばらつき、色むらが発生するという欠点がある。さらには、上記したいずれの材質も、時計の文字板としての外観品質が劣るという欠点がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に着目して成されたものであって、その目的とするところは、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよく商品性に優れ、また、その残光特性による発光によって、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができるソーラー時計用表示板構造を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るソーラー時計用表示板構造は、ソーラーセルの表側に設けられたソーラー時計用表示板構造であって、光が透過する表示板基板と、この表示板基板に設けられた長残光型の蓄光性蛍光体層とを備え、
この長残光型の蓄光性蛍光体層がM1-x Al2 4-x (式中、Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選ばれる1つ以上の金属元素であり、xが−0.33≦x≦0.60の範囲にある)で表される化合物を母結晶とする長残光型の蓄光性蛍光体よりなることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項5に係るソーラー時計用表示板構造は、ソーラーセルの表側に設けられたソーラー時計用表示板構造において、光が透過する表示板基板の一面にプリズム層を設けると共に、この表示板基板の他の面に前記残光型の蛍光体層を設けたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項7に係るソーラー時計用表示板構造は、上記ソーラー時計用表示板構造において、残光型の蛍光体層の一部を厚くして、この厚肉部で表示部、マーク、模様の少なくとも一つを形成したことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項8に係るソーラー時計用表示板構造は、上記ソーラー時計用表示板構造において、残光型の蛍光体層が、その表面に樹脂薄膜層を有することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項10に係るソーラー時計用表示板構造は、上記ソーラー時計用表示板構造において、前記表示板基板が、残光型の蛍光体層の色調と異なる色調を有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項11に係るソーラー時計用表示板構造は、上記ソーラー時計用表示板構造において、前記表示板基板が、光拡散層、光透過型の反射層の少なくとも一つを有することを特徴としている。
【0016】
さらに本発明では、長残光型の蓄光性蛍光体は、賦活剤としてユウロピウム(Eu)を含んでいることが好ましく、さらに共賦活剤としてネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含んでいることが好ましい
【0017】
【作用】
請求項1に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、残光型の蛍光体層が表示板基板に形成されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル及び絶縁帯の十字線が透けて見えなくなり、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品性の良いものになる。また、明るい環境下でソーラー時計の発電に寄与した光は、残光型の蛍光体層を励起させているため、夜間等の暗い環境下では残光型の蛍光体層が、その残光特性によって発光し続けてソーラー時計用表示板の表側を照明する。よって、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
【0018】
また、請求項5に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、残光型の蛍光体層が表示板基板に形成されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル及び絶縁帯の十字線が透けて見えなくなり、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品性の良いものになる。また、残光型の蛍光体層が、わずかな光の励起スペクトルにより長時間、高輝度の残光特性を発揮し、また、残光型の蛍光体層で発光した光はプリズム層で集光されて平行した集光光になるために、輝度を高めることができ、残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
【0019】
また、請求項7に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、上記した作用を奏し得るばかりか、蛍光体層の表面に、時字に代表される表示部、マーク、模様等の少なくとも1つを設けることができる。
【0020】
また、請求項8に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、上記した作用を奏し得るばかりか、樹脂薄膜層があることにより、ソーラー時計用表示板の表面に、時字に代表される表示部、マーク、模様等の印刷を滲むことなく行なう(設ける)ことができる。
【0021】
また、請求項10に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、上記した作用を奏し得るばかりか、発光色に変化が起こり色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか外観品質がよくなって商品性の良いものになる。
【0022】
また、請求項11に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、上記した作用を奏し得るばかりか、残光型の蛍光体層及び表示板基板を透過した光は、光拡散層で拡散され、もしくは、透過した光の一部が反射層で反射されるために、茶褐色または暗青色のソーラーセル及び絶縁帯の十字線が透けて見えにくくなる。
【0023】
また請求項12および13に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、より長時間の残光特性を有し、かつ化学的にも安定であり、しかも耐光性に優れたソーラー時計用表示板構造が得られる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳述する。
【0025】
【実施例1】
図1は本発明に係るソーラー時計用表示板構造(実施例1)を備えた腕時計の縦断面図、図2は本発明に係るソーラー時計用表示板構造(実施例1)の構成説明図である。
【0026】
腕時計1は、図1に示すように外胴2の内部に合成樹脂から成る支持枠3を介してモジュール4を設け、このモジュール4の表側にソーラー時計用表示板構造Aを構成し、モジュール4に設けられた二重軸構成の針軸5を前記時計文字盤構造Aに中央の孔部A1を貫通させて、この針軸5の外軸5aに時針6を内軸5bに分針7をそれぞれ取り付け、前記外胴2の底側に防水パッキン8を介して裏蓋9を装着し、外胴2の表側に風防ガラス10を装着して大略構成されている。
【0027】
そして、前記ソーラー時計用表示板構造Aは、図2に示すように前記モジュール4の表側に固着されたソーラーセル11と、このソーラーセル11の表側に設けられた表示板基板(文字板母材)12と、この表示板基板12の表側に設けられた残光型の蛍光体層13と、この蛍光体層13の表側に設けられた樹脂薄膜層14とから構成されている。本実施例では、残光型の蛍光体層13は表示板基板12の表側にスクリーン印刷によって形成し、樹脂薄膜層14も蛍光体層13の表面に艶消しスクリーン印刷によって形成した。また、樹脂薄膜層14の表面には時字15を印刷して形成した。
【0028】
前記ソーラーセル11は、従来例の図12に示すものと同様に、平面視で扇形状をしており、このソーラーセル11を4枚絶縁帯を挟んで配置される。また、前記表示板基板12は、透明なポリカーボネートもしくはアクリル樹脂の透明板である。
【0029】
残光型の蛍光体層13としては、蛍光塗料や蓄光夜光塗料等を層状に形成すればよい。しかしながら、ソーラー時計を用いるにあたっては、長残光型の蓄光性蛍光体層13は、太陽電池の発電を妨げないようにするべく光の透過性が高いものが良い。さらには、高級感のある色調を有し、暗い環境下でできる限り長時間にわたって明るく発光するものが望まれる。このような長残光型の蓄光性蛍光体層を構成する長残光型の蓄光性蛍光体の詳細については、後述する。
【0030】
次に、上記のように構成されたソーラー時計用表示板構造Aの作用を説明する。従来の技術で述べたように、ソーラーセル11が通常茶褐色または暗青色であるため、表示板が茶褐色または暗青色になり、また、ソーラーセル11とソーラーセル11との間に絶縁帯があるために、この絶縁帯が十字線として現れるが、白色色調の残光型の蛍光体層13が表示板基板12の表側にスクリーン印刷されて形成されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0031】
長残光型の蓄光性蛍光体層13の存在により、ソーラーセル11が見えなくなるのは、以下の理由による。
まず、外部からソーラー時計用表示板構造Aに入射する光は、長残光型の蓄光性蛍光体層13により、次のように分別される。すなわち、蓄光性蛍光体層13に蓄積(吸収)される光と、蓄光性蛍光体層13によってランダムに散乱される光である。蓄光性蛍光体層13に蓄積(吸収)された光は、暗所における蓄光性蛍光体層13の発光に寄与される。蓄光性蛍光体層13によって散乱された光の一部は、上方に向かい、観察者の目に達して、観察者に蓄光性蛍光体層13を視認させる。蓄光性蛍光体層13によって散乱された光の他の一部は、下方に向かい、蓄光性蛍光体層13を通過する。
【0032】
蓄光性蛍光体層13は、長残光型の蓄光性蛍光体の粉末を、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などの透明な樹脂より成るバインダーに練り混み、表示板基板12の表側に塗布、塗装、あるいは印刷して形成される。蓄光性蛍光体の粉末が、光を蓄積(吸収)し、または散乱させる。
【0033】
また、蓄光性蛍光体層13の色調は、ソーラー時計用表示板構造Aの外観に美感を付与する。同時に、蓄光性蛍光体層13の色調と異なる系統の色の波長の光は、蓄光性蛍光体層13に吸収され、蓄光性蛍光体層13の色調と同じ系統の色の波長の光は、蓄光性蛍光体層13によって散乱されるという作用も成す。
【0034】
このように、ソーラー時計用表示板構造Aに入射した光の一部が、蓄光性蛍光体層13を通過し、表示板基板12を通過する。そして入射した光は、ソーラーセル11に達し、その発電に寄与されるが、入射した光の一部はソーラーセル11によって反射される。ソーラーセル11によって反射された光が、図2に反射光aで示されている。この反射光aが、そのまま観察者の目に達すると、観察者にソーラーセル11が視認されてしまう。しかしながら、反射光aの一部は、長残光型の蓄光性蛍光体層13に蓄積(吸収)されてしまう。さらに、蓄積されなかった反射光aの残りは、蓄光性蛍光体層13によってランダムに散乱される。散乱された光の一部は、上方に向かい、観察者の目に達するが、その量は、反射光a全体から見れば、ごく僅かに限られる。よって、観察者には、ソーラーセル11が視認されないのである。
【0035】
絶縁帯の十字線が、観察者に視認されないのも同じ理由による。また、長残光型の蓄光性蛍光体層13に蓄積(吸収)された反射光aは、暗所における長残光型の蓄光性蛍光体層13の発光に寄与することは言うまでもない。
【0036】
また、表示板基板12の表側には、長残光型の蓄光性蛍光体がスクリーン印刷されているために、わずかな光の励起スペクトルにより長時間、高輝度の残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
【0037】
また、蓄光夜光塗料あるいは長残光型の蓄光性蛍光体よりなる蛍光体層13の表面に直接時字等の印刷をするのは、印刷インクが滲んでしまうため困難である。これを解決するため樹脂薄膜層14を設けている。前記樹脂薄膜層14としては透明、または半透明のインク、あるいは塗料を層状に形成して構成されている。この樹脂薄膜層14があることにより、ソーラー時計用表示板の表面に、時字等の印刷を滲むことなく行なう(設ける)ことができる。
【0038】
【実施例2】
図3は本発明に係るソーラー時計用表示板構造(実施例2)の縦断面図、図4は図3のイ部の拡大図である。
【0039】
この第2の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aにおいては、表示板基板12として、その表面に微小なプリズム16Aを多数配置したプリズム層16が形成され、その裏側に実施例1で用いた長残光型の蓄光性蛍光体層13が形成された表示板基板を用いており、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11が載置され、さらにソーラーセル11の表面に、プリズム層16を表側に向けて表示板基板12が載置されている。プリズム層16にはその表側に実施例1と同様に、樹脂薄膜層14と時字15が順次積層されている。
【0040】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13が表示板基板12の表面に形成されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0041】
また、残光型の蛍光体層13は残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
また、残光型の蛍光体層13で発光した光はランダムに拡散する光であるが、プリズム層16の微小なプリズム16Aで集光されて平行した集光光ロになるために、実施例1よりさらに輝度を高めることができ、残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
【0042】
また、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)によって反射された反射光は、実施例1と同様に、長残光型の蓄光性蛍光体層13によって蓄積(吸収)、あるいは散乱される。この長残光型の蓄光性蛍光体層13の存在が、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)の視認を妨げていることは、実施例1に前述した如くである。
【0043】
しかしながら、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)による反射光の一部は、ごく僅かではあるが、観察者の目に達してしまう。反射光の全てが、完全に遮蔽されているわけではない。よって、注意深い観察者には、ソーラーセル11が視認される可能性もある。これを解決するため、本実施例2においては、長残光型の蓄光性蛍光体層13によって散乱された光が、さらにプリズム16Aによって屈折される。
【0044】
長残光型の蓄光性蛍光体層13によって散乱されて表側上方に向かった光が、図4に反射光bで示されている。この反射光bの量は、ごく僅かな量である。反射光bは、さらにプリズム16Aによって屈折され、集光光ロと同じく、垂直に表側上方に向かう。これは、ソーラー時計用表示板構造Aを斜め上方から見た時は、ソーラーセル11が絶対に視認されないことを意味する。なぜならば、ソーラー時計用表示板構造Aを真上から望まない限り、垂直に表側上方に向かった反射光bは、観察者の目に達しないからである。
【0045】
もちろん、ソーラー時計用表示板構造Aを真上から見た時は、ソーラーセル11が視認される可能性が残る。しかしながら、真上以外の角度、すなわち斜め上方から見た時は、ソーラーセル11が視認される可能性は全く無い。このように、本実施例2は、プリズム層16を設けることによって、ソーラーセル11が視認される可能性を大幅に削減している。
【0046】
【実施例3】
図5は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例3)の一部省略した縦断面図である。
【0047】
この第3の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aは、表示板基板12として、その裏面に微小なプリズム17Aを多数配置したプリズム層17になされた表示板基板を用いており、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11と、プリズム層17を形成した表示板基板12と、第1の実施例で使用した長残光型の蓄光性蛍光体層13と同様な残光型の蛍光体層13とがこの順序に積層されており、残光型の蛍光体層13にはその表側に時字15を設けた樹脂薄膜層14が積層されている。
【0048】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13がソーラーセル11に積層されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0049】
また、長残光型の蓄光性蛍光体層13が存在するために長期間にわたって残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
樹脂薄膜層14と長残光型の蓄光性蛍光体層13を透過した光ハは、プリズム層17の微小なプリズム17Aで集光されるように屈折され、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)に達する。ここで反射された光は、プリズム17Aにより屈折され、図5に示すように、垂直に表側上方に向かう反射光cとなる。反射光cは、蓄光性蛍光体層13によって蓄積(吸収)、あるいは散乱される。よって、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)の視認が妨げられることは、実施例1に前述した如くである。
【0050】
ところが、長残光型の蓄光性蛍光体層13が、部分的にでも極めて薄い場合、反射光cのうち、蓄光性蛍光体層13によって蓄積(吸収)、あるいは散乱されずに、蓄光性蛍光体層13を直進して透過する光もある。これが、図5に反射光dで示されている。反射光dが存在したとしても、その量は極めて僅かであるが、観察者の目に達すれば、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)が視認されてしまう可能性がある。
【0051】
しかしながら、反射光dは、プリズム17Aにより屈折され、垂直に表側上方に向かう光のみである。よって、実施例2と同じく、真上以外の角度、すなわち斜め上方から見た時は、ソーラーセル11が視認される可能性は全く無い。このように、本実施例3は、蓄光性蛍光体層13を直進して透過する光をも考慮に入れて、プリズム層17によりソーラーセル11が視認される可能性を大幅に削減している。
【0052】
【実施例4】
図6は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例4)の一部省略した縦断面図である。
【0053】
この第4の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aは、第1の実施例で使用した長残光型の蓄光性蛍光体層13と同様な成分からなる長残光型の蓄光性蛍光体層13であって、その一部を厚くした蓄光性蛍光体層13を用いており、この蓄光性蛍光体層13の表面に、表示部、マーク、模様等が厚肉部18で形成してある。そして、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11と、第1の実施例で使用した表示板基板12と同様な表示板基板12と、第1の実施例で使用した長残光型の蓄光性蛍光体層13と同様な長残光型の蓄光性蛍光体層13とがこの順序に積層されている。
【0054】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13がソーラーセル11に積層されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0055】
また、長残光型の蓄光性蛍光体層13が存在するため、長期間にわたって残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。しかも、蓄光性蛍光体層13における厚肉部18は、他の部分に比べて、より多くの光を蓄積(吸収)するため、より明るく、かつより長く発光し続ける。よって、案所において、時字、マーク、模様等の厚肉部18が、明確に視認される。
【0056】
また、上記した第1〜第4の実施例における前記表示板基板12は透明なポリカーボネートもしくはアクリル樹脂の透明板であるが、アクリル樹脂に種々の顔料、あるいは染料を混入させることにより、様々の色調を表示板基板12に施すことができる。この表示板基板12の色調を、長残光型の蓄光性蛍光体層13の色調と異なるものにすることにより、長残光型の蓄光性蛍光体層13と表示板基板12の色調が混ざりあって、異なった色調となる。このように長残光型の蓄光性蛍光体層13の種類や色調を変えずとも、表示板基板12の色調を変化させることによって、ソーラー時計用表示板構造Aに種々の色調を施すことができ、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。あるいは、前記表示板基板12に部分的に長残光型の蓄光性蛍光体層13を設けるのであれば、長残光型の蓄光性蛍光体層13の設けられた部分と設けられていない部分とに色調の違いが生じるので、表示板基板12の色調を変化させることによって、デザインに種々の面白味を付与することができる。
【0057】
さらに、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)によって反射された反射光は、蓄光性蛍光体層13に達する前に、表示板基板12中の顔料、あるいは染料によってランダムに散乱される。散乱された反射光のうち、表側上方に向かった光のみが、長残光型の蓄光性蛍光体層13に達する。蓄光性蛍光体層13に達した光は、実施例1と同じく、さらに長残光型の蓄光性蛍光体層13によって蓄積(吸収)、あるいは散乱される。このように、表示板基板12中の顔料、あるいは染料が、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)によって反射された反射光を散乱し、よって蓄光性蛍光体層13に達する反射光を削減するため、さらにソーラーセル11が視認されにくくなる。
【0058】
【実施例5】
図7は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例5)の一部省略した縦断面図である。
【0059】
この第5の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aは、表示板基板として、その裏面に光拡散層20を形成した表示板基板12を用いている。光拡散層20は、極めて微細な凹凸を形成した曇りガラス状の層である。そして、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11と、前記表示板基板12と、第1の実施例で使用した残光型の蛍光体層13と同様な残光型の蛍光体層13とがこの順序に積層されており、残光型の蛍光体層13にはその表側に樹脂薄膜層14と時字15が順次積層されている。
【0060】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13がソーラーセル11に積層されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0061】
また、長残光型の蓄光性蛍光体層13が存在するため、長期間にわたって残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
しかも、ソーラーセル11(あるいは絶縁帯の十字線)によって反射された反射光は、表示板基板12の裏面の光拡散層20によって、ランダムに拡散(散乱)される。よって、実施例4における表示板基板12中の顔料、あるいは染料による散乱の作用と同じく、さらにソーラーセル11が視認されにくくなる。
【0062】
【実施例6】
図8は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例6)の縦断面図である。
【0063】
この第6の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aは、表示板基板として、その裏面に反射層21を形成した表示板基板12を用いており、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11と、前記表示板基板12と、第1の実施例で使用した長残光型の蓄光性蛍光体層13と同様な長残光型の蓄光性蛍光体層13とがこの順序に積層されており、長残光型の蓄光性蛍光体層13にはその表側に時字15を設けた樹脂薄膜層14が積層されている。そして、前記反射層21は、Au、Cr、Al、Pt、AgおよびRdなどの、光の反射率の高い金属を蒸着して形成した、極めて薄い金属被膜として形成される。様々な種類の金属を蒸着することによって、種々の色調を有する薄膜が得られることは公知である。反射層21も、公知の手段に従って、種々の色調を有する金属薄膜として形成することができる。反射層21は、1種の金属を蒸着した単層膜であっても、多種の金属を蒸着した多層膜であっても良い。単層膜とするか、あるいは多層膜とするかは、反射層21にどのような色調を付与するかによって、適宜選択される。
【0064】
あるいは、反射層21は、白色または銀色などの印刷を施した極めて薄い印刷膜として形成しても良い。反射層21は、光の一部を反射し、光の他の一部を吸収し、残りを透過させる機能を有する薄膜である。
【0065】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13がソーラーセル11に積層されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0066】
また、長残光型の蓄光性蛍光体層13が存在するため、長期間にわたって残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
長残光型の蓄光性蛍光体層13及び表示板基板12を透過した光ニのうち、反射層21の色調と異なる系統の色の波長の光は、反射層21に吸収され、反射層21の色調と同じ系統の色の波長の光は、反射層21によって一部が反射され、残りは反射層21を透過し、ソーラーセル11に達する。ソーラーセルに達した光の一部は、ソーラーセル11の発電に寄与され、残りは表面に向かって反射される。これは、反射層21が極めて薄い薄膜であるため、一部の光を透過し、残りを反射する作用を成すためである。
【0067】
反射層21によって反射された光は、長残光型の蓄光性蛍光体層13によって、その一部が散乱され、観察者の目に達する。観察者には、蓄光性蛍光体層13の色と反射層21の色とが混ざり合って視認される。よって、蓄光性蛍光体層13の種類や色調を変えずとも、反射層21の色調を変化させることによって、ソーラー時計用表示板構造Aに様々な色調を施すことができる。
【0068】
また、ソーラーセル11によって反射された光は、再び反射層21に達し、その一部は、反射されてソーラーセル11に戻り、残りは、反射層21を透過する。反射層21を透過した光が、そのまま観察者の目に達すると、観察者にソーラーセル11が視認されてしまう。しかしながら、反射層21を透過した光は、蓄光性蛍光体層13に達し、実施例1と同じく、蓄光性蛍光体層13によって蓄積(吸収)、あるいは散乱され、散乱された光のごく一部が観察者の目に達するにすぎない。よって、観察者が、ソーラーセル11を視認することはない。
【0069】
なお、上記した第5の実施例では前記表示板基板12が光拡散層20を、第6の実施例では前記表示板基板12が光透過型の反射層21をそれぞれ有するが、前記表示板基板12が光拡散層20及び反射層21の両方を有する構成とすることもできる。
【0070】
【実施例7】
図9は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例7)の縦断面図、図10は図9のホ部を拡大した斜視図、図11は本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例7)を備えた腕時計の平面図である。
【0071】
この第7の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aは、第1の実施例におけるソーラー時計用表示板構造Aに、その表面に微小なプリズム22Aを多数配置した透明樹脂より成るプリズム板22を加えた構成である。すなわち、前記モジュール4の表側には、ソーラーセル11と、第1の実施例で使用した長残光型の蓄光性蛍光体層13と同様な長残光型の蓄光性蛍光体層13と、表示板基板12と、前記プリズム板22とがこの順序に積層されており、プリズム板22にはその表側に設けた樹脂薄膜層14と時字15とが積層されている。
【0072】
したがって、白色色調の長残光型の蓄光性蛍光体層13がソーラーセル11に積層されているために、茶褐色または暗青色のソーラーセル11及び絶縁帯の十字線が透けて見えず、このために、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。
【0073】
また、残光型の蛍光体層13が存在するため、長期間にわたって残光特性を発揮して、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
なお、上記した第2、第3の実施例のプリズム層16、17及びプリズム板22をソーラー時計用表示板構造Aに組み込むに当たっては、図11に示すようにプリズムの方向を腕時計の3時−9時方向に平行させる必要がある。また、プリズム層16、17及びプリズム板22をソーラー時計用表示板構造Aに組み込むことにより、光透過率が2%程度低下することが判明しているが、ソーラー時計用表示板構造Aにおける光透過率は50%以上であればよいために、この程度のわずかな低下であれば、太陽電池の発電には支障はない。
【0074】
したがって、前記表示板基板12に、長残光型の蓄光性蛍光体、プリズム層16、17及びプリズム板22を加えてもソーラーセル11の発電効率はあまり低下せず、充分に発電できることが解る。
【0075】
次に本発明で好ましく用いられる長残光型の蓄光性蛍光体について、具体的に説明する。
本発明で用いられる長残光型の蓄光性蛍光体は、
1-xAl24-x
(式中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素であり、
xは−0.33≦x≦0.60の範囲にある)
で表される化合物を母結晶としている。
【0076】
この長残光型の蓄光性蛍光体は、賦活剤としてユウロピウムを含んでいることが好ましく、その量は、Mで表される金属元素に対するモル%で0.002%以上20%以下、好ましくは0.2〜10%、さらに好ましくは1〜4%であることが望ましい。
【0077】
さらにこの長残光型の蓄光性蛍光体は、賦活剤とともに共賦活剤を含んでいることが好ましく、この共賦活剤としては、ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素が好ましく、その量は、Mで表される金属元素に対するモル%で0.002%以上20%以下、好ましくは0.2〜10%、さらに好ましくは1〜4%であることが望ましい。
【0078】
このような長残光型の蓄光性蛍光体は、各元素の原料となる化合物(たとえばストロンチウムの場合には炭酸ストロンチウム)を精秤し、フラックスとして硼酸を適当量加え、ボールミルなどを用いて充分に混合した後、この混合物を電気炉中などによって1200〜1400℃、好ましくは1250〜1350℃程度の温度において焼成することによって製造することができる。この際焼成雰囲気をやや還元雰囲気(たとえば窒素−水素混合ガス)とすることが好ましい。次いで得られた焼成物を粉砕し、ふるいで分級することが望ましい。
【0079】
ストロンチウム源としては、通常、炭酸ストロンチウム、あるいは酸化ストロンチウムが用いられるが、これら以外にも、例えば水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、およびストロンチウムのカルボン酸塩(酢酸ストロンチウムなど)を用いても良い。ストロンチウム源としては、加熱により分解されて、酸化ストロンチウムが得られるものであれば、何であってもかまわない。
【0080】
カルシウム源としては、通常、炭酸カルシウム、あるいは酸化カルシウムが用いられるが、これら以外にも、例えば水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、およびカルシウムのカルボン酸塩(酢酸カルシウムなど)を用いても良い。カルシウム源としては、加熱により分解されて、酸化カルシウムが得られるものであれば、何であってもかまわない。
【0081】
バリウム源としては、通常、炭酸バリウム、あるいは酸化バリウムが用いられるが、これら以外にも、例えば水酸化バリウム、硝酸バリウム、およびバリウムのカルボン酸塩(酢酸バリウムなど)を用いても良い。バリウム源としては、加熱により分解されて、酸化バリウムが得られるものであれば、何であってもかまわない。
【0082】
アルミニウム源としては、通常、炭酸アルミニウム、あるいは酸化アルミニウムが用いられるが、これら以外にも、例えば水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびアルミニウムのカルボン酸塩(酢酸アルミニウムなど)を用いても良い。アルミニウム源としては、加熱により分解されて、酸化アルミニウムが得られるものであれば、何であってもかまわない。
【0083】
賦活剤としてのユウロピウム源としては、通常、酸化ユウロピウムが用いられるが、これ以外にも、例えばユウロピウムの炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物およびカルボン酸塩(酢酸塩など)を用いても良い。ユウロピウムを含むものであれば、何でも用いることが可能であり、その化合物形は問わない。
【0084】
共賦活剤の元素源としては、共賦活剤元素を含む酸化物が用いられるが、これ以外にも、例えば共賦活剤を含む炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物およびカルボン酸塩(酢酸塩など)を用いても良い。共賦活剤を含むものであれば、何でも用いることが可能であり、その化合物形は問わない。
【0085】
以下本発明で用いられるM1-x Al2 4-x で示される長残光型の蓄光性蛍光体の製造例などについて具体的に示す。
最初に金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用いて形成された蓄光性蛍光体、共賦活剤を用いないで形成された蓄光性蛍光体について、実施例8として説明する。
実施例8.SrAl24:Eu蛍光体の合成とその特性
試料1−(1)
試薬特級の炭酸ストロンチウム146.1g(0.99モル)およびアルミナ102g(1モル)に、賦活剤としてユウロピウムを酸化ユウロピウム(Eu23)で1.76g(0.005モル)添加し、さらにフラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、ボールミルを用いて充分に混合した後、この試料を電気炉を用いて窒素−水素混合ガス(97:3)気流中(流量:0.1リットル毎分)で、1300℃、1時間焼成した。その後室温まで約1時間かけて冷却し、得られた化合物粉体をふるいで分級し100メッシュを通過したものを蛍光体試料1−(1)とした。
【0086】
図14には、合成された蛍光体の結晶構造をXRD(X線回折)により解析した結果を示す。回折ピークの特性から得られた蛍光体はSrAl2 4 のスピネル構造を有することが明らかとなった。
【0087】
図15には、本蛍光体の励起スペクトル及び刺激停止後の残光の発光スペクトルを示した。
この図15から、発光スペクトルのピーク波長が約520nmの緑色の発光であることがわかる。
【0088】
次にこのSrAl2 4 :Eu蛍光体の残光特性を市販品で緑色に発光するZnS:Cu蓄光性蛍光体(根本特殊化学(株)製:品名GSS,発光ピーク波長:530nm)の残光特性と比較して測定した結果を、図16および表2に示す。
【0089】
残光特性の測定は、蛍光体粉末0.05gを内径8mmのアルミ製試料皿に秤り取り(試料厚さ:0.1g/cm2 )、約15時間暗中に保管して残光を消去した後、D65標準光源により200ルックスの明るさで10分間刺激し、その後の残光を光電子増倍管を用いた輝度測定装置で計測したものである。
【0090】
図16から明らかなように、本発明によるSrAl2 4 :Eu蛍光体の残光は極めて大きくその減衰もゆるやかであり、経過時間とともにZnS:Cu蓄光性蛍光体との残光強度差が大きくなることが分かる。また図中に、肉眼で充分に認識可能な発光強度のレベル(約0.3mCd/m2の輝度に相当)を破線で示したが、このSrAl2 4 :Eu蛍光体の残光特性から約24時間後でもその発光が認識可能であると推定される。実際に刺激後15時間経過したこのSrAl2 4 :Eu蛍光体を肉眼で観察したところその残光を充分に確認することができた。
【0091】
また表2中の試料1−(1)には、刺激停止後10分、30分および100分後の残光強度をZnS:Cu蓄光性蛍光体の強度に対する相対値で示した。この表からこのSrAl2 4 :Eu蛍光体の残光輝度は10分後でZnS:Cu蓄光性蛍光体の2.9倍であり100分後では17倍であることが分かる。
【0092】
さらにこのSrAl2 4 :Eu蛍光体を光刺激した際の室温から250℃までの熱発光特性(グローカーブ)をTLDリーダー(KYOKKO TLD-2000 システム)を用いて調査した結果を図17に示す。図から本蛍光体の熱発光は約40℃、90℃、130℃の3つのグローピークからなり約130℃のピークがメイングローピークであることが分かる。図中の破線で示したZnS:Cu蓄光性蛍光体のメイングローピークが約40℃であることに照らして、このSrAl2 4 :Eu蛍光体の50℃以上の高温に相当する深い捕獲準位が残光の時定数を大きくし、長時間にわたる蓄光特性に寄与していると考えられる。
【0093】
試料1−(2)〜(7)
次に前述と同様の方法で、ユウロピウムの濃度を変化させた表1で表した配合比のSrAl2 4 :Eu蛍光体試料(試料1−(2)〜(7))を調製した。
【0094】
【表1】
Figure 0003659727
【0095】
この試料1−(2)〜(7)の残光特性を調査した結果を、1−(1)の残光特性を調査した結果と共に、表2中に示す。なお、表1中の酸化ユウロピウムはEu23であることから、酸化ユウロピウムEu23 1モル当たり、ユウロピウムEuを2モル含む関係を有する。従って以下に記載するEuのモル数は、表1中の酸化ユウロピウムのモル数の2倍量となっている。この関係は表3、表5の酸化ユウロピウムに関しても、同様である。
【0096】
この表2から、Euの添加量が0.005〜0.1モルの範囲(試料1−(4)〜(6))であると、10分後の輝度を含めてZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも残光特性に優れていることがわかる。ただEuの添加量が0.00002モルの場合、あるいは0.2モルの場合であっても、刺激停止後30分以上経過することによって、ZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも大きい輝度を有するようになることもわかる。
【0097】
またEuが高価であることから、経済性および濃度クエンチングによる残光特性の低下を考慮すると、Euを0.2モル(20モル%)以上にすることに余り意味がないこととなる。逆に、残光特性から判断すると、Euが0.00002モル(0.002モル%)から0.0001モル(0.01モル%)の間では、10分後輝度でZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも輝度で劣るものの、刺激停止後30分以上経過することによって、ZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも大きい輝度が得られることから、賦活剤として用いるEuの添加効果が明らかである。
【0098】
さらに、SrAl2 4 :Eu蛍光体は酸化物系であることから、従来の硫化物系蓄光性蛍光体に比べて化学的にも安定であり、かつ耐光性に優れるものである(表24および25参照)。
【0099】
【表2】
Figure 0003659727
【0100】
次に、金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いた場合の蓄光性蛍光体について、実施例9として説明する。
実施例9.SrAl2 4 :Eu、Dy蛍光体の合成とその特性
試料2−(1)
試薬特級の炭酸ストロンチウム144.6g(0.98モル)およびアルミナ102g(1モル)に、賦活剤としてユウロピウムを酸化ユウロピウム(Eu23)で1.76g(0.005モル)、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを酸化ジスプロシウム(Dy2 3 )で1.87g(0.005モル)添加し、さらにフラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、ボールミルを用いて充分に混合した後、この試料を電気炉を用いて窒素−水素混合ガス(97:3)気流中(流量:0.1リットル毎分)で、1300℃、1時間焼成した。その後室温まで約1時間かけて冷却し、得られた化合物粉体をふるいで分級し100メッシュを通過したものを蛍光体試料2−(1)とした。
【0101】
この蛍光体の残光特性を前述と同様の方法で調査した結果を図18および表4の試料2−(1)に示す。
図18から明らかなように、このSrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体の残光輝度、特にその残光初期時の輝度はZnS:Cu蓄光性蛍光体と比較して極めて高く、またその減衰の時定数も大きいことから、画期的な高輝度蓄光性蛍光体であることが分かる。図中に示した視認可能な残光強度レベルとこのSrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体の残光特性から約16時間後でもその発光を識別可能である。
【0102】
表4には、刺激後10分、30分、100分後の残光強度をZnS:Cu蓄光性蛍光体の強度に対する相対値で示しているが、表からこのSrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体の残光輝度は10分後でZnS:Cu蓄光性蛍光体の12.5倍であり100分後では37倍であることが分かる。
【0103】
さらにこのSrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体を光刺激した際の室温から250℃までの熱発光特性(グローカーブ)を調査した結果を図19に示す。図19および図17から、共賦活剤として添加したDyの作用により熱発光のメイングローピーク温度が130℃から90℃に変化したことが分かる。この90℃の温度に相当する捕獲準位からの大きな発光が、SrAl2 4 :Eu蛍光体と比較して、その残光初期時に高い輝度を示す原因と考えられる。
【0104】
試料2−(2)〜(7)
次に前述と同様の方法で、ジスプロシウムの濃度を変化させた表3で表した配合比のSrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体試料(試料2−(2)〜(7))を調製した。
【0105】
【表3】
Figure 0003659727
【0106】
この試料2−(2)〜(7)の残光特性を調査した結果を、2−(1)の残光特性を調査した結果と共に、表4に示す。なお、表3中の酸化ジスプロシウムはDy23であることから、酸化ジスプロシウムDy23 1モル当たり、ジスプロシウムDyを2モル含む関係を有する。従って以下に記載するDyのモル数は表3中の酸化ジスプロシウムのモル数の2倍量となっている。
【0107】
この表4から、共賦活剤としてのDyの添加量は、10分後輝度を含めてZnS:Cu蓄光性蛍光体よりもはるかに優れていることを基準とすると、0.005〜0.07モル(試料2−(4)〜(6))が最適であることがわかる。ただDyの添加量が0.00002モルの場合であっても、刺激停止後30分以上経過することによって、ZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも大きい輝度を有するようなることから、賦活剤および共賦活剤として用いたEuおよびDyの添加効果が明らかである。またDyが高価であることから、経済性および濃度クエンチングによる残光特性の低下を考慮すると、Dyを0.2モル(20モル%)以上にすることに余り意味がないこととなる。
【0108】
なお、SrAl2 4 :Eu,Dy蛍光体は酸化物系であることから、従来の硫化物系蓄光性蛍光体に比べて化学的にも安定であり、かつ耐光性に優れるものである(表24および25参照)。
【0109】
【表4】
Figure 0003659727
【0110】
次に、金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてネオジムを用いた場合の蓄光性蛍光体について、実施例10として説明する。
実施例10.SrAl2 4 :Eu,Nd蛍光体の合成とその特性
試料3−(1)〜(7)
前述と同様の方法で、ネオジムの濃度を変化させた表5で示した配合比のSrAl2 4 :Eu,Nd系蛍光体試料(試料3−(1)〜(7))を調製した。
【0111】
【表5】
Figure 0003659727
【0112】
これらの試料3−(1)〜(7)の残光特性を調査した結果を、表6に示した。なお表5中の酸化ネオジムはNd23であることから、酸化ネオジムNd231モル当たり、ネオジムNdを2モル含む関係を有する。従って以下に記載するNdのモル数は表5中の酸化ネオジムのモル数の2倍量となっている。
【0113】
【表6】
Figure 0003659727
【0114】
この表6から、共賦活剤としてのNdの添加量が0.005〜0.07モル(試料3−(3)〜(6))の範囲であると、10分後の輝度を含めてZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも残光特性に優れていることがわかる。ただNdの添加量が0.00002モルの場合であっても、刺激停止後60分程度を経過することによって、ZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも大きい輝度を有するようになることから、賦活剤および共賦活剤として用いたEuおよびNdの添加効果が明らかである。またNdが高価であることから、経済性および濃度クエンチングによる残光特性の低下を考慮すると、Ndを0.2モル(20モル%)以上にすることに余り意味がないこととなる。
【0115】
なお、SrAl2 4 :Eu,Nd蛍光体は酸化物系であることから、従来の硫化物系蓄光性蛍光体に比べて化学的にも安定であり、かつ耐光性に優れるものである(表24および25参照)。
【0116】
さらにこのSrAl2 4 :Eu,Nd蛍光体を光刺激した際の室温から250℃までの熱発光特性(グローカーブ)を、試料3−(4)について調査した結果を図20に示した。この図20から共賦活剤としてNdを添加した蛍光体の熱発光のメイングローピーク温度は約50℃であることが分かる。
【0117】
次に、金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤として、サマリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの元素のいずれかを用いた場合の蓄光性蛍光体について、実施例11として説明する。
【0118】
またここで、賦活剤および各共賦活剤については、実施例8〜10でユウロピウムおよびネオジムあるいはジスプロシウムを用いた場合に、金属元素(M)に対して各々0.01モル程度添加した場合に高い残光輝度が得られることを考慮して、賦活剤のEu濃度1モル%(0.01モル)、共賦活剤の濃度1モル%(0.01モル)の試料についてのみ例示する。
実施例11.SrAl24 :Eu系蛍光体におけるその他の共賦活剤の効果
既述の方法で、共賦活剤としてサマリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを添加した蛍光体試料についてその残光特性を調査した結果を表7に示した。
【0119】
この表7から明らかなように、標準として用いた市販のZnS:Cu蛍光体の残光特性と比較して、いずれのSrAl2 4 :Eu系蛍光体試料も、刺激停止後30分〜100分以上の長時間を経過すると残光特性が向上するので、充分実用レベルにあることが分かる。
【0120】
なお、SrAl2 4 :Eu系蛍光体は酸化物系であることから、従来の硫化物系蓄光性蛍光体に比べて化学的にも安定であり、かつ耐光性に優れるものである(表24および25参照)。
【0121】
【表7】
Figure 0003659727
【0122】
次に金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用いて形成された蓄光性蛍光体、共賦活剤を用いないで形成された蓄光性蛍光体、および金属元素としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群の少なくとも1つの元素を用いて形成された蓄光性蛍光体を、実施例12として説明する。
実施例12.CaAl24 :Eu系蓄光性蛍光体の合成とその特性
試薬特級の炭酸カルシウムおよびアルミナに、賦活剤としてユウロピウムを酸化ユウロピウム(Eu23)で加えただけのもの、これに共賦活剤として、ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの元素のいずれかをそれぞれその酸化物で添加したものに対して、さらにフラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、ボールミルを用いて充分に混合した後、この試料を電気炉を用いて窒素−水素混合ガス(97:3)気流中(流量:0.1リットル毎分)で、1300℃、1時間焼成した。その後室温まで約1時間かけて冷却し、得られた化合物粉体をふるいで分級し100メッシュを通過したものを蛍光体試料5−(1)〜(34)とした。
【0123】
なおここで得られた試料5−(2)のXRD解析の結果を図21に示した。図からこの蛍光体は、単斜晶系のCaAl2 4 結晶からなることが明らかとなった。
【0124】
次に、代表例として共賦活剤にネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ツリウムを用いた試料5−(10)、5−(16)、5−(22)および5−(28)について、その熱発光特性(グローカーブ)を調査した結果を図22および図23に示す。いずれも50℃以上の高温域にグローピークがあることから、これらの蛍光体が長い残光特性を有することが示唆されている。さらに試料についてその残光の発光スペクトルを測定したところ、図24で示されるようにいずれの蛍光体もその発光ピーク波長は約442nmの青色発光であった。
【0125】
そこで従来から市販されている青色発光の蓄光性蛍光体のCaSrS:Bi(商品名BA−S:根本特殊化学(株)製 発光波長454nm)を標準としてそれぞれの残光特性を相対的に比較調査した結果を表8〜表13に示す。表8からCaAl2 4 :Eu蛍光体については、Euが0.01モル(1モル%)である場合、残光初期時の輝度は低いものの100分後で市販標準品とほぼ同等に近い輝度が得られるものがあり、さらに表9〜表13に示すように、共賦活剤を添加することにより大きく増感され、いずれの共賦活剤を用いても充分実用性の高い蛍光体を得ることができる。特にNd、SmおよびTmについてはその添加効果が極めて大きく市販品より一桁以上明るい超高輝度の青色発光の蓄光性蛍光体が得られることが明らかであり画期的な蛍光体といえる。図25にはこのNd、SmおよびTmを共賦活することにより得られた高輝度蛍光体の長時間に亘る残光特性を調査した結果を示した。
【0126】
なお、詳細には金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用いるものの、共賦活剤を用いない場合の蓄光性蛍光体として、5−(1)〜(6)に示した蓄光性蛍光体の残光特性について表8に示した。
【0127】
【表8】
Figure 0003659727
【0128】
また金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてネオジムを用いて形成された蓄光性蛍光体として、5−(7)〜(12)に示した蓄光性蛍光体の残光特性を表9に示した。
【0129】
【表9】
Figure 0003659727
【0130】
さらに金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてサマリウムを用いた場合の蓄光性蛍光体として、5−(13)〜(18)に示した蓄光性蛍光体の残光特性を表10に示した。
【0131】
【表10】
Figure 0003659727
【0132】
また金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてジスプロシウムを用いて形成された蓄光性蛍光体として、5−(19)〜(24)に示した蓄光性蛍光体の残光特性を表11に示した。
【0133】
【表11】
Figure 0003659727
【0134】
また金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてツリウムを用いて形成された蓄光性蛍光体として、5−(25)〜(30)に示した蓄光性蛍光体の残光特性を表12に示す。
【0135】
【表12】
Figure 0003659727
【0136】
なお金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてホルミウム、エルビウム、イッテルビウム、ルテチウムの元素のいずれかを用いて形成された蓄光性蛍光体として、5−(31)〜(34)に示した蓄光性蛍光体の残光特性をまとめて表13に示す。
【0137】
なおこの5−(31)〜(34)に示した蓄光性蛍光体では、賦活剤としてのユーロピウムおよび他の共賦活剤は共に、1モル%ずつ添加したものである。
【0138】
【表13】
Figure 0003659727
【0139】
次に金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、共賦活剤としてネオジムを用いて形成された蓄光性蛍光体、同時に他の共賦活剤も添加して形成された蓄光性蛍光体を実施例13として説明する。
実施例13.CaAl24 :Eu,Nd系蓄光性蛍光体の合成とその特性
試薬特級の炭酸カルシウムおよびアルミナに賦活剤としてユウロピウムを酸化ユウロピウム(Eu23)で加え、これに共賦活剤としてネオジムを加えたもの、およびさらに他の共賦活剤として、ネオジム以外のサマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの元素のいずれかをそれぞれその酸化物で添加したものに、フラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、ボールミルを用いて充分に混合した後、この試料を電気炉を用いて窒素−水素混合ガス(97:3)気流中(流量:0.1リットル毎分)で、1300℃、1時間焼成した。その後室温まで約1時間かけて冷却し、得られた化合物粉体をふるいで分級し100メッシュを通過したものを蛍光体試料6−(1)〜(24)とした。
【0140】
ここでは、まず最初に、Eu:1モル%、Nd:1モル%、他の共賦活剤:1モル%として、各種蛍光体試料を調整して、10分後輝度、30分後輝度および100分後輝度を測定した。その結果を、6−(1)〜()として、表14に示す。
【0141】
【表14】
Figure 0003659727
【0142】
この測定結果から、ネオジムと共に添加する共賦活剤の中で、残光輝度が特に優れるものとしては、ランタン、ジスプロシウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム等であることが確認された。
【0145】
そこで、Eu:1モル%、Nd:1モル%とした上で、ジスプロシウムの濃度を、0.2モル%から20モル%に変えて実験を行った。その結果を、6−()〜(13)として、表15に示す。
【0146】
【表15】
Figure 0003659727
【0149】
Eu:1モル%、Nd:1モル%とした上で、ホルミウムの濃度を、0.2モル%から20モル%に変えて実験を行った。その結果を、6−(14)〜(18)として、表16に示す。
【0150】
【表16】
Figure 0003659727
【0151】
Eu:1モル%、Nd:1モル%とした上で、エルビウムの濃度を、0.2モル%から10モル%に変えて実験を行った。その結果を、6−(19)〜(24)として、表17に示す。
【0152】
【表17】
Figure 0003659727
【0153】
このような測定結果から、共賦活剤を複数種混合すると、残光輝度が向上するものがあることが確認された。またさらに、その場合、Eu:1モル%、Nd:1モル%とした上で、他の共賦活剤も1モル%程度添加した場合が、最も優れた残光特性を示すことも確認された。
【0154】
次に金属元素(M)としてバリウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてネオジムあるいはサマリウムを用いて形成された蓄光性蛍光体について、実施例14として説明する。
実施例14.BaAl24 :Eu系蛍光体
ここでは、Euを1モル%添加した上で、さらにNdあるいはSmを各々1モル%添加したものを、7−(1),(2)として表18に示す。
【0155】
また図26には本蛍光体のうち、共賦活剤としてネオジムを用いて形成された蓄光性蛍光体、励起スペクトルおよび刺激停止後30分を経過した後の残光の発光スペクトルを示す。
【0156】
さらに図27には、共賦活剤としてサマリウムを用いて形成された蓄光性蛍光体、励起スペクトルおよび刺激停止後30分を経過した後の残光の発光スペクトルを示す。
【0157】
発光スペクトルのピーク波長はいずれも約500nmで緑色の発光であることから、表18には、その残光特性を市販品で緑色に発光するZnS:Cu蓄光性蛍光体(根本特殊化学(株)製:品名GSS、発光ピーク波長:530nm)と比較して、刺激停止後10分、30分および100分後の残光強度を相対値で示す。
【0158】
【表18】
Figure 0003659727
【0159】
この表18から、BaAl24 :Eu,NdはZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも刺激停止後30分程度は残光輝度に優れていることがわかる。またBaAl24 :Eu,SmはZnS:Cu蓄光性蛍光体よりも若干残光輝度が劣る結果が得られた。しかしながらEuあるいは他の共賦活剤を添加せず、BaAl24 結晶のみで実験した結果、蛍光および残光がまったく認められないことが確認されているので、EuおよびNdあるいはSm添加による賦活効果が得られることは明らかである。
【0160】
なお、BaAl24 :Eu系蛍光体は酸化物系であることから、従来の硫化物系蓄光性蛍光体に比べて化学的にも安定であり、かつ耐光性に優れるものである(表21および22参照)。
【0161】
次に金属元素(M)として、カルシウムとストロンチウムとの混合物を用いて、形成された蓄光性蛍光体について、実施例15として説明する。
実施例15.SrxCa1-xAl24 系蓄光性蛍光体の合成とその特性
試薬特級の炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムをそれぞれ比率を変えて調合しその試料にアルミナを加え、さらに賦活剤としてユウロピウムを、共賦活剤としてネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムのいずれかの元素を添加したものに、フラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、既述の方法によりSrxCa1-xAl24 系蛍光体試料を合成した。
【0162】
得られた蛍光体の代表特性としてSr0.5 Ca0.5 Al2 4 :Eu,Dy蛍光体(Eu 1モル%、Dy 1モル%添加)の残光の発光スペクトルを調査した結果を図28に示す。この図28からSrの一部がCaに置換されるとその発光スペクトルは短波長側にシフトし、SrAl2 4 系蛍光体による発光とCaAl2 4 系蛍光体の発光の中間色の残光を得られることがわかる。
【0163】
次に賦活剤および共賦活剤としてEuおよびDyをそれぞれ1モル%添加したSrx Ca1-x Al2 4 系蛍光体試料の残光特性を調査した結果を図29に示した。
【0164】
この図29からいずれの蛍光体についても図中の破線で示した市販標準品と比較して同等以上の優れた残光特性を有する実用性の高い蓄光性蛍光体が得られることがわかる。
【0165】
次に金属元素(M)として、ストロンチウムとバリウムとの混合物を用いて形成された蓄光性蛍光体について、実施例16として説明する。
実施例16.SrxBa1-xAl24 系蓄光性蛍光体の合成とその特性
試薬特級の炭酸ストロンチウムと炭酸バリウムをそれぞれ比率を変えて調合しその試料にアルミナを加え、さらに賦活剤としてユウロピウムを、共賦活剤としてネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムのいずれかの元素を添加したものに、フラックスとして硼酸を5g(0.08モル)添加し、既述の方法によりSrxBa1-xAl24 系蛍光体試料を合成した。
【0166】
得られた蛍光体の代表特性としてEuを1モル%、Dyを1モル%添加して調整したSrx Ba1-x Al2 4 系蛍光体試料の残光特性を調査した結果を図30に示す。
【0167】
この図30からいずれの蛍光体についても図中の破線で示した市販標準品と比較して同等以上の優れた残光特性を有する実用性の高い蓄光性蛍光体が得られることが分かる。
【0171】
次に金属元素(M)として、複数の金属元素を用い、かつ賦活剤としてユウロピウムを用い、さらには共賦活剤を2種類用いた場合について、実施例18として説明する。
実施例18.Ca1-xSrxAl24 :Eu,Nd,X蛍光体の合成とその特性
試薬特級の炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムをそれぞれ比率を変えて調合しその試料にアルミナを加え、さらに賦活剤としてユウロピウム1モル%を、共賦活剤としてネオジム1モル%を加え、さらに他の共賦活剤として、ジスプロシウム、ホルミウムの元素のいずれかを1モル%添加したものに、フラックスとして例えば硼酸を5g(0.08モル)添加し、既述の方法によりCa1-xSrxAl24 :Eu,Nd,X系蛍光体試料11−(1)〜()を合成し、その残光特性を調査した。
【0174】
まず、試薬特級の炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムをそれぞれ比率を変えて調合しその試料にアルミナを加え、さらに賦活剤としてユウロピウム1モル%を、共賦活剤としてネオジム1モル%を加え、さらに他の共賦活剤として、ジスプロシウムを1モル%添加したものを11−()〜()として、表19に示す。
【0175】
【表19】
Figure 0003659727
【0176】
また試薬特級の炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムをそれぞれ比率を変えて調合しその試料にアルミナを加え、さらに賦活剤としてユウロピウム1モル%を、共賦活剤としてネオジム1モル%を加え、さらに他の共賦活剤として、ホルミウムを1モル%添加して形成された蓄光性蛍光体を11−()〜()として、表20に示す。
【0177】
【表20】
Figure 0003659727
【0178】
これらの測定結果から、金属元素(M)が、カルシウムおよびストロンチウムからなる複数の金属元素(M)を用い、賦活剤としてユウロピウムを添加し、かつ複数の共賦活剤を添加して形成された蓄光性蛍光体であっても、10分後輝度を含めて、CaSrS:Biに比べて優れていることがわかる。
実施例19.耐湿特性試験
本発明により得られた蓄光性蛍光体の耐湿特性を調査した結果を表21に示した。
【0179】
この調査では、複数の蛍光体試料を、40℃、95%RHに調湿した恒温恒湿槽中に500時間放置しその前後における輝度変化を測定した。
表から、いずれの組成の蛍光体も湿度に対してほとんど影響を受けず安定であることが分かる。
【0180】
【表21】
Figure 0003659727
【0181】
実施例20.耐光性試験結果
本発明により得られた蓄光性蛍光体の耐光性試験を行った結果を硫化亜鉛系蛍光体の結果と比較して表22に示した。
【0182】
この試験は、JIS規格に従い、試料を飽和湿度に調湿した透明容器内に入れ300Wの水銀灯下30cmの位置で3時間、6時間および12時間光照射し、その後の輝度変化を測定した。
【0183】
22から従来の硫化亜鉛系蛍光体と比較して極めて安定であることが分かる。
【0184】
【表22】
Figure 0003659727
【0185】
以下、M1-X Al2 4-x で表される組成の蓄光性蛍光体(xは0でない場合)を、金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いた蓄光性蛍光体であるSr1-X Al2 4-x :Eu,Dyを例として説明する。
【0186】
またここで、EuおよびDyは、ストロンチウムに対して0.01モル(1モル%)ずつ添加している。
さらに、実験した時のストロンチウムとアルミニウムとの比、Xの値、およびその時の蓄光性蛍光体としては、下記のように、試料(1)〜(8)として示したものを使用した。
(1)Sr:Al=1:1.5 X=−0.33 Sr1.33Al24.33:Eu,Dy
(2)Sr:Al=1:1.9 X=−0.05 Sr1.05Al24.05:Eu,Dy
(3)Sr:Al=1:2.0 X= 0 Sr1.00Al24.00:Eu,Dy
(4)Sr:Al=1:2.1 X= 0.05 Sr0.95Al23.95:Eu,Dy
(5)Sr:Al=1:2.5 X= 0.20 Sr0.80Al23.80:Eu,Dy
(6)Sr:Al=1:3.0 X= 0.33 Sr0.67Al23.67:Eu,Dy
(7)Sr:Al=1:4.0 X= 0.50 Sr0.50Al23.50:Eu,Dy
(8)Sr:Al=1:5.0 X= 0.60 Sr0.40Al23.40:Eu,Dy
そしてこれらの試料(1)〜(8)を、一旦、残光がない状態とした後、室内に20分放置し、3分後の輝度を目視にて確認した。その上で、X=0を100とした場合との残光輝度を測定した。その値が表23である。
【0187】
【表23】
Figure 0003659727
【0188】
この表から、X=0であるSrAl2 4 :Eu,Dyを示した試料(3)に比べて、試料(1)、(2)は残光輝度が劣るものの、試料(4)〜(6)は、試料(3)とほぼ同様かあるいは若干高い残光特性を示しているものもある。
【0189】
このことから、金属元素(M)としてストロンチウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いた蓄光性蛍光体を、Sr1-x Al2 4-x :Eu,Dyの組成で表すと、実用性のある残光輝度を示す範囲が、−0.33≦X≦0.60の範囲であることが確認できた。さらに、望ましくは0≦X≦0.33の範囲であることが確認できた。
【0190】
次に、M1-x Al2 4-x で表される組成の蓄光性蛍光体を、金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いて形成された蓄光性蛍光体であるCa1-x Al2 4-x :Eu,Dyを例として説明する。
【0191】
またここで、EuおよびDyは、カルシウムに対して0.01モル(1モル%)ずつ添加している。
さらに、実験した時のカルシウムとアルミニウムとの比、Xの値、およびその時の蓄光性蛍光体としては、下記のように、試料(1)〜(8)として示したものを使用した。
(1)Ca:Al=1:1.5 X=-0.33 Ca1.33Al24.33:Eu,Dy
(2)Ca:Al=1:1.9 X=-0.05 Ca1.05Al24.05:Eu,Dy
(3)Ca:Al=1:2.0 X= 0 Ca1.00Al24.00:Eu,Dy
(4)Ca:Al=1:2.1 X= 0.05 Ca0.95Al23.95:Eu,Dy
(5)Ca:Al=1:2.5 X= 0.20 Ca0.80Al23.80:Eu,Dy
(6)Ca:Al=1:3.0 X= 0.33 Ca0.67Al23.67:Eu,Dy
(7)Ca:Al=1:4.0 X= 0.50 Ca0.50Al23.50:Eu,Dy
(8)Ca:Al=1:5.0 X= 0.60 Ca0.40Al23.40:Eu,Dy
そしてこれらの試料(1)〜(8)を、一旦、残光がない状態とした後、室内に20分放置し、3分後の輝度を目視にて確認した。その上で、X=0を100とした場合との残光輝度を測定した。その値が表24である。
【0192】
【表24】
Figure 0003659727
【0193】
この表から、X=0であるCaAl2 4 :Eu,Dyを示した試料(3)に比べて、試料(1)、(2)、(4)〜(6)はいずれも残光輝度が劣るものの、十分使用に耐えるものであった。
【0194】
このことから、金属元素(M)としてカルシウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いた蓄光性蛍光体を、Ca1-x Al2 4-x :Eu,Dyの組成で表すと、実用性のある残光輝度を示す範囲が、−0.33≦X≦0.60の範囲であることが確認できた。さらに、望ましくは−0.33≦X≦0.05の範囲であることが確認できた。
【0195】
さらに、M1-x Al2 4-x で表される組成の蓄光性蛍光体を、金属元素(M)としてバリウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いて形成された蓄光性蛍光体であるBa1-x Al2 4-x :Eu,Dyを例として説明する。
【0196】
またここで、EuおよびDyは、バリウムに対して0.01モル(1モル%)ずつ添加している。
さらに、実験した時のバリウムとアルミニウムとの比、Xの値、およびその時の蓄光性蛍光体としては、下記のように、試料(1)〜(7)として示したものを使用した。
(1)Ba:Al=1:1.5 X=-0.33 Ba1.33Al24.33:Eu,Dy
(2)Ba:Al=1:1.9 X=-0.05 Ba1.05Al24.05:Eu,Dy
(3)Ba:Al=1:2.1 X= 0.05 Ba0.95Al23.95:Eu,Dy
(4)Ba:Al=1:2.5 X= 0.20 Ba0.80Al23.80:Eu,Dy
(5)Ba:Al=1:3.0 X= 0.33 Ba0.67Al23.67:Eu,Dy
(6)Ba:Al=1:4.0 X= 0.50 Ba0.50Al23.50:Eu,Dy
(7)Ba:Al=1:5.0 X= 0.60 Ba0.40Al23.40:Eu,Dy
そしてこれらの試料(1)〜(7)を、一旦、残光がない状態とした後、室内に20分放置し、3分後の輝度を目視にて確認した。その上で、X=0.05を100とした場合との残光輝度を測定した。その値が表25である。
【0197】
【表25】
Figure 0003659727
【0198】
この表から、X=0.05であるBa0.95Al2 3.95:Eu,Dyを示した試料(3)に比べて、試料(1)、(2)は残光輝度が劣るものの、試料(4)、(5)は、試料(3)より若干高い残光特性を示している。また試料(6)、(7)に関しても、十分使用に耐えるものであった。
【0199】
このことから、金属元素(M)としてバリウムを用い、賦活剤としてユウロピウムを用い、さらに共賦活剤としてジスプロシウムを用いて形成された蓄光性蛍光体を、Ba1-x Al2 4-x :Eu,Dyの組成で表すと、実用性のある残光輝度を示す範囲が、−0.33≦X≦0.60の範囲であることが確認できた。さらに、望ましくは0.05≦X≦0.50の範囲であることが確認できた。
【0200】
なお、以上の各実施例において、賦活剤としてのユウロピウム、共賦活剤としてのジスプロシウムの比率を変化させても、同一の傾向にあることが出願人によって確認されている。
【0202】
さらに、共賦活剤として、前記したジスプロシウムの他にも、ネオジム、サマリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群の少なくとも1つ以上の元素を、Mで表わす金属元素に対するモル%で0.002%以上20%以下添加した場合にあっては、M1-xAl24-x で表される組成の化合物に関して、−0.33≦X≦0.60の範囲でXを設定すると、十分実用的な残光輝度を示すことが確認された。
【0210】
次に上記のように製造された長残光型の蓄光性蛍光体を、太陽電池時計用文字板上に設けた場合の光透過率について説明する。
なお、光透過率は、一般に太陽電池時計用文字板を透過した光により太陽電池が発電した発電量により求められる。すなわち、外光が入らないようにした装置内で、光源から一定の距離に置かれた太陽電池に光を当て、光エネルギーから電気エネルギーに変換したときの電流値をAoとし、前記太陽電池の上に太陽電池時計用文字板を載せ、上記と同様にして測定した電流値をAlとしてAlをAoに対する百分率として表される。
【0211】
ソーラー時計用表示板構造Aにおける光透過率は、50%以上であれば、例えばソーラー時計用表示板構造Aを腕時計に使用しようとも、ソーラーセル11の発電に何ら支障が無いことが確認されている。光透過率が50%以上であるソーラー時計用表示板構造Aを搭載した腕時計は、これを手首に装着して携帯している間において、ソーラーセル11の発電がなくなることによって時計の機能が止まってしまうことはない。
【0212】
前述の実施例9で得られた蓄光性蛍光体のうち、試料2−(1)(SrAl2 4 :Eu、Dy)を、前述の実施例1で示したソーラー時計用表示板構造Aにおける残光型の蛍光体層13として使用し、光透過率を測定した。すなわち、ポリカーボネイト、あるいはアクリル樹脂より成る光透過性の表示板基板(厚さ4.3mm)上に、試料2−(1)(SrAl2 4 :Eu、Dy)を、厚さ約100μm(70〜120μm)となるように設け、この上に樹脂薄膜層(厚さ5〜10μm)を設けてなるソーラー時計用表示板の光透過率は、59.7%であった。
【0213】
同様に、試料2−(1)(SrAl24 :Eu、Dy)を、前述の実施例5、6および7で示したソーラー時計用表示板構造Aに使用し、各々のソーラー時計用表示板構造Aの光透過率を測定した。その結果を、表26に示す。
【0214】
【表26】
Figure 0003659727
【0215】
また、他の蛍光体として、前述の表23における試料(6)(Sr0.67Al23.67:Eu、Dy)を前述の実施例5、6および7で示したソーラー時計用表示板構造Aに使用し、各々のソーラー時計用表示板構造Aの光透過率を測定した。その結果を、表27に示す。
【0216】
なお、試料(6)(Sr0.67Al23.67:Eu、Dy)に代えて、前述の表23における試料(7)(Sr0.50Al23.50:Eu、Dy)を用いても、ほぼ同様の光透過率が得られた。
【0217】
【表27】
Figure 0003659727
【0218】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るソーラー時計用表示板構造にあっては、茶褐色または暗青色のソーラーセル及び絶縁帯の十字線が透けて見えなくなり、色調を含めたデザインバリエーションが大幅に拡大されるばかりか、外観品質がよくなり商品価値が向上する。また、明るい環境下でソーラー時計の発電に寄与した光は、残光型の蛍光体層を励起させているため、夜間等の暗い環境下では残光型の蛍光体層が、その残光特性によって発光し続けてソーラー時計用表示板の表側を照明する。よって、夜間等の暗い環境での時刻を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例1)を備えた腕時計の縦断面図である。
【図2】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例1)の構成説明図である。
【図3】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例2)の構成説明図である。
【図4】 図3のイ部の拡大図である。
【図5】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例3)の一部の構成説明図である。
【図6】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例4)の構成説明図である。
【図7】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例5)の構成説明図である。
【図8】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例6)の構成説明図である。
【図9】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例7)の構成説明図である。
【図10】 図9のホ部を拡大し且つ一部省略した斜視図である。
【図11】 本発明に係わるソーラー時計用表示板構造(実施例7)を備えた腕時計の平面図である。
【図12】 従来のソーラー時計用表示板構造を備えた腕時計の平面図である。
【図13】 従来のソーラー時計用表示板構造の構成説明図である。
【図14】 SrAl24:Eu蛍光体の結晶構造をXRDにより解析した結果を示したグラフである。
【図15】 SrAl24:Eu蛍光体の励起スペクトルと刺激停止後30分を経過した後の発光スペクトルとを示したグラフである。
【図16】 SrAl24:Eu蛍光体の残光特性をZn:S蛍光体の残光特性と比較した結果を示したグラフである。
【図17】 SrAl24:Eu蛍光体の熱発光特性を示したグラフである。
【図18】 SrAl24:Eu,Dy蛍光体の残光特性をZn:S蛍光体の残光特性と比較した結果を示したグラフである。
【図19】 SrAl24:Eu,Dy蛍光体の熱発光特性を示したグラフである。
【図20】 SrAl24:Eu,Nd蛍光体の熱発光特性を示したグラフである。
【図21】 CaAl24:Eu系蛍光体の結晶構造をXRDにより解析した結果を示したグラフである。
【図22】 CaAl24:Eu系蛍光体のうち共賦活剤としてネオジムあるいはサマリウムを用いた蛍光体の熱発光特性を示したグラフである。
【図23】 CaAl24:Eu系蛍光体のうち共賦活剤としてジスプロシウムあるいはツリウムを用いた蛍光体の熱発光特性を示したグラフである。
【図24】 CaAl24:Eu系蛍光体の刺激停止後5分を経過した後の発光スペクトルを示したグラフである。
【図25】 CaAl24:Eu,Sm蛍光体及びCaAl2O4:Eu,Nd蛍光体の残光特性をZn:S蛍光体の残光特性と比較した結果を示したグラフである。
【図26】 BaAl24:Eu,Nd蛍光体の励起スペクトルと刺激停止後30分を経過した後の発光スペクトルとを示したグラフである。
【図27】 BaAl24:Eu,Sm蛍光体の励起スペクトルと刺激停止後30分を経過した後の発光スペクトルとを示したグラフである。
【図28】 Sr0.5Ca0.5Al24:Eu,Dy蛍光体の発光スペクトルを示したグラフである。
【図29】 SrxCa1-xAl24:Eu,Dy蛍光体の残光特性をZn:S蛍光体及びCaSrS
:Bi蛍光体の残光特性と比較したグラフである。
【図30】 SrxBa1-xAl24:Eu,Dy蛍光体の残光特性をZn:S蛍光体の残光特性と比較したグラフである。

Claims (14)

  1. ソーラーセルの表側に設けられたソーラー時計用表示板構造であって、
    光が透過する表示板基板と、該表示板基板に積層された長残光型の蓄光性蛍光体層とを備え、かつ
    前記長残光型の蓄光性蛍光体層が、M1-xAl24-x (式中、Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素であり、かつxが、−0.33≦x≦0.60の範囲にある)で表される化合物を母結晶とする長残光型の蓄光性蛍光体よりなることを特徴とするソーラー時計用表示板構造。
  2. 前記長残光型の蓄光性蛍光体層が、前記表示板基板の表側に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  3. 前記長残光型の蓄光性蛍光体層が、前記表示板基板の裏側に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  4. 前記長残光型の蓄光性蛍光体層が、スクリーン印刷によって前記表示板基板に積層されたことを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  5. 前記表示板基板の一面にプリズム層を設けると共に、表示板基板の他の面に前記長残光型の蓄光性蛍光体層を積層したことを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  6. 前記表示板基板の一面にプリズムが配置されたプリズム板を積層すると共に、該表示板基板の他の面に前記長残光型の蓄光性蛍光体層を積層したことを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  7. 前記長残光型の蓄光性蛍光体層の一部を厚くした肉厚部によって、表示部、マーク、模様の少なくとも1つを形成したことを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  8. 前記長残光型の蓄光性蛍光体層が、その表面に樹脂薄膜層を有することを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  9. 前記表示板基板が、光を散乱させる顔料または染料を含むことを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  10. 前記表示板基板が、前記長残光型の蓄光性蛍光体層の色調と異なる色調を有することを特徴とする請求項9に記載のソーラー時計用表示板構造。
  11. 前記表示板基板が、光拡散層、光透過型の反射層の少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1に記載のソーラー時計用表示板構造。
  12. 前記長残光型の蓄光性蛍光体が、賦活剤としてユウロピウムを、Mで表される金属元素に対するモル%で0.002%以上20%以下の量で含んでいることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のソーラー時計用表示板構造。
  13. 前記長残光型の蓄光性蛍光体が、賦活剤に加えて、共賦活剤としてネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を、
    Mで表される金属元素に対するモル%で0.002%以上20%以下の量で含んでいることを特徴とする請求項12に記載のソーラー時計用表示板構造。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のソーラー時計用表示板構造を備えたソーラー時計。
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