JP3659466B2 - 有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガスの分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の有機ガス、より詳細には、特定の有機ガスを含有する混合ガスから前記特定の有機ガスのみを効率良く分離して除去、又は回収するのに有用な有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガスの分離方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子部品や金属部品等の洗浄分野や印刷分野、塗装分野、あるいは油槽所やタンカー等の石油精製プラント関連分野では、取り扱われる各種有機溶剤の使用量が大幅に増加し、それに伴って大気中に放出される有機ガスの量も年々増加している。また、自動車の排気ガス等に含まれる有機ガスの排出量も交通量の増加とともに増えている。
【0003】
かかる有機ガス、例えば、洗浄用に広範囲に使用されてきたトリクロロエタン等はオゾン層破壊や地球温暖化、光化学スモッグ等の原因物質であり、これらが有機ガスとして大気中に排出されることは地球規模での環境破壊につながっており、このような有機ガスを含有する混合ガスから該有機ガスを回収して大気中に放出しないことが環境保全の見地から要求されている。
【0004】
従来より、このような各種分野において有機ガスを含有する混合ガスから該有機ガスを分離、回収する方法としては、100〜20000ppm程度の濃度の特定の有機ガスを含有する混合ガスを活性炭等の吸着剤に接触させて吸着させた後、スチームにて有機ガスを回収する吸着法や、有機ガスを含む混合ガスを液状の有機溶剤に接触させて前記有機ガスを該有機溶剤に吸収させて回収する吸収法あるいは膜分離法等が知られている。
【0005】
しかしながら、前記吸着法は、大型の設備を必要とすると共に、前記吸着剤に特定の有機ガスを吸着させた後、該吸着剤から前記特定の有機ガスを脱着させる操作を繰り返し行う必要がある上、前記吸着剤からの有機ガスの脱着に大量のエネルギーを要するため、経済的に極めて不利であるという問題があった。
【0006】
さらに、このように吸着剤への吸脱着を利用する方法では、有機ガスを高濃度に含有する混合ガスから該有機ガスを回収する場合には、十分に分離除去することができず不向きである。
【0007】
また、前記吸収法は、有機ガスを比較的高濃度に含む混合ガスから該有機ガスを濃縮分離するために利用されてはいるが、設備及び運転の経費が高く、経済的には決して有利な方法ではない。
【0008】
このような知見から、前記吸着法や吸収法に比べて有機ガスの分離操作が簡便で装置が小型化できると共に、省エネルギープロセスと成り得る等の優れた特徴を有する膜分離法が有望視されている。
【0009】
例えば、特開平5−68860号公報、特開平7−155571号公報では、シリコーン樹脂が架橋されて形成された架橋シリコーン膜を、有機ガスを含有する混合ガスから該有機ガスを分離するための気体分離膜として用いることが開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記架橋シリコーン膜を気体分離膜とした膜分離法では、該架橋シリコーン膜内に混合ガス中の有機ガスが溶け込んだ後、拡散により有機ガスが膜内を透過する、いわゆる溶解拡散機構によるものであり、有機ガスが膜内に溶け込むことが律速して、有機ガスの膜透過速度は、透過率が3×10-11 mol/m2 ・Pa・s程度と非常に小さいものであった。
【0011】
その結果、有機ガスの分離回収効率が低く、とりわけ、キシレンなど環状炭化水素ガスに対しては分離性が極めて低かった。
【0013】
本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、処理速度を向上し、各種揮発性有機化合物のガスを含有する混合ガスから特定の有機化合物のガスのみを経済的に、選択的かつ効率的に分離して除去、又は回収するのに好適な特定の有機ガスに対して分離機能を有する有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガスの分離方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、高い有機ガス分離特性を有する有機ガス分離フィルタを実現すべく、フィルタの有機ガスの透過性能、および分離性能について種々検討した結果、有機ガスと分離フィルタとの親和性の強さが、有機ガスの分離特性に大きく関与し、中でもシリカ(SiO2 )が特定の有機ガスと強い親和性を持つことに基づき、多孔質支持体の表面に通気性シリカ(SiO2 )層を形成することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明の有機ガス分離フィルタは、平均細孔径が0.1〜2μm、気孔率が20〜40%のセラミック多孔質支持体の少なくとも一方の表面に、通気性を有する中間層を設け、該中間層の上に、全細孔の70%以上が5nm以下の細孔径を有し、かつ平均細孔径が2nm以上の細孔径分布を有し、特定の有機ガスを含む混合ガスより前記特定の有機ガスを選択的に透過、分離しうる通気性シリカ(SiO2)層を被着形成してなり、前記中間層の平均細孔径が、前記セラミック多孔質支持体の平均細孔径より小さく、かつ、前記通気性シリカ(SiO 2 )層の平均細孔径より大きいことを特徴とするものである。
【0020】
また、前記特定の有機ガスが、トルエンまたはキシレンであることが最も望ましい。
【0021】
一方、本発明の有機ガスの分離方法としては、平均細孔径が0.1〜2μm、気孔率が20〜40%のセラミック多孔質支持体の少なくとも一方の表面に、通気性を有する中間層を設け、該中間層の上に、全細孔の70%以上が5nm以下の細孔径を有し、かつ平均細孔径が2nm以上の細孔径分布を有し、特定の有機ガスを含む混合ガスより前記特定の有機ガスを選択的に透過、分離しうる通気性シリカ(SiO2)層を被着形成してなり、前記中間層の平均細孔径が、前記セラミック多孔質支持体の平均細孔径より小さく、かつ、前記通気性シリカ(SiO 2 )層の平均細孔径より大きいフィルタの一方の表面に、特定の有機ガスを含む混合ガスを供給し、前記フィルタが該混合ガスと接触する表面における前記特定の有機ガスの分圧よりも他方の表面における前記特定の有機ガスの分圧を低めて、前記特定の有機ガスを前記セラミック多孔質支持体および前記通気性シリカ(SiO2)層を介して選択的に他方の表面に透過、分離することを特徴とするものである。
【0022】
ここで、前記特定の有機ガスを含む混合ガスを供給する前記有機ガス分離フィルタ表面側の気圧よりも他方の表面側の気圧を低くすることが望ましい。
【0023】
【作用】
本発明の有機ガス分離フィルタによれば、セラミック多孔質支持体に被着形成した通気性シリカ(SiO2 )層表面が特定の有機ガス、とりわけトルエン、キシレンと強い親和性を示し、特定の有機ガス分子の吸着点として作用することから、該通気性シリカ(SiO2 )層表面に混合ガス中の特定の有機ガスが吸着し、さらに、該通気性シリカ(SiO2 )層内に形成された細孔の内壁を前記特定の有機ガスが毛管凝縮現象により透過する、いわゆる表面拡散機構により通気性シリカ(SiO2 )層を透過することから、特定の有機ガスを選択的にかつ効率よく分離することができる。
【0024】
さらに、通気性シリカ(SiO2 )層の細孔径分布を所定の範囲に制御することにより、シリカ層の表面に親和性の高い特定の有機ガスが吸着した後、細孔内を細孔の直径よりも少し小さい分子径を有する特定の有機ガスが毛管凝縮現象により透過するために、その他のガスは細孔内に侵入することができず、シリカ層内を透過することができないことから、特定の有機ガスの選択的な分離が可能となり、分離性能が向上する。
【0026】
さらに、特定の有機ガスを含む混合ガスを有機ガス分離フィルタに供給し、該フィルタを隔てて反対側の前記特定の有機ガス分圧を、特に全ガスの気圧を下げる等により低めることにより、有機ガス分離の処理速度を向上することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の有機ガス分離フィルタの一例について、その一部拡大図を図1に示す。本発明の有機ガス分離フィルタ1は、セラミック多孔質支持体( 以下、支持体と略す。) 2の少なくとも一方の表面に通気性シリカ(SiO2 )層 (以下、シリカ層と略す。) 3を被着形成した複合体からなるものである。
【0028】
シリカ層3は、アモルファスシリカからなることが望ましく、また、平滑な表面を有することが望ましい。さらに、シリカ層3の厚みは、有機ガス分離性能の向上および有機ガス分離の処理速度を向上させるために0.1〜1μmであることが望ましい。
【0029】
上記構成のフィルタは、高い強度を有するとともに、耐熱性や耐食性に優れ、過酷な条件下でも特性を劣化することなく使用できるものである。
【0030】
本発明によれば、シリカ層3は、毛管凝縮作用による特定の有機ガスの選択的な透過を促すために、全細孔の70%以上が5nm以下の細孔径を有し、かつ平均細孔径が2nm以上であることが望ましい。細孔径を上記範囲に制御することにより、特定の有機ガスの分離性能が向上する。
【0031】
また、支持体2の表面に被着形成されるシリカ層3は、支持体2との界面に反応生成物を生じることなく、支持体2の表面に層状に被覆できるために、平滑な表面を形成できる。
【0032】
一方、支持体2は、構造体として必要な強度を有するとともに、シリカ層3または中間層4の成膜性を高め、有機ガス分離の処理速度を向上させるために0.1〜2μmの細孔径を有することが望ましい。また、成膜性を高める上で、支持体2は平滑な表面を有することが望ましい。
【0033】
また、高い圧力をかけることなく混合ガスが支持体2中を透過するためには、支持体2は20%以上の気孔率を有することが望ましく、また、支持体2の強度を確保し、有機ガス分離フィルタ1を組み立てる際に、支持体が破損したり、操作中に支持体2を構成する粒子が脱粒することを防止するためには、支持体2の気孔率が40%以下であることが望ましい。
【0034】
支持体2としては、α−アルミナや安定化ジルコニアを主成分とするセラミックスや、シリカ系ガラス(分相ガラス)等によって形成できるが、耐熱性が高いこと、容易に作製できること、コストの点で、α−アルミナを主成分とするセラミックスからなることが望ましい。
【0035】
また、支持体2とシリカ層3との間には通気性を有する中間層( 以下、中間層と略す。) 4が介在することが望ましい。これにより、シリカ層3の支持体2への成膜性が向上することから、シリカ層3の厚みを薄くすることができ、有機ガス分離の処理速度が向上できる。ここで、中間層4の平均細孔径は、ガスの透過速度およびシリカ層3の支持体2への成膜性の点で、支持体2の平均細孔径よりも小さく、かつシリカ層3の平均細孔径より大きいことが望ましい。また、中間層4は、支持体2及びシリカ層3との間に反応生成物を生じず、支持体2の表面を層状に覆い平滑な表面を形成するものであればよい。
【0036】
かかる中間層4としては、例えば、支持体2としてα−アルミナ質セラミックスを選んだ場合、γ−アルミナが好適である。
【0037】
本発明においては、シリカと各種ガスとの親和性が異なることから、例えば、特定の有機ガスを含有する複数種類の有機ガスの混合ガスから前記特定の有機ガスを分離することが可能であり、その一例としてメタンとトルエンとを含有する混合ガスからトルエンを選択的に分離することができる。
【0038】
また、特定の有機ガスと無機ガスとの混合ガスから特定の有機ガスを分離することも可能である。ここで、前記無機ガスとは、例えば、窒素、酸素、水、塩酸、アンモニア等のガスを1種あるいは2種以上含有するガスを指す。
【0039】
さらに、複数種類の有機ガスおよび無機ガス中から特定の有機ガスを分離することも可能であるが、いずれの場合においても、上記混合ガス中に含まれる前記特定の有機ガスの濃度は、約0.02〜50容量%であることが望ましい。
【0040】
本発明のフィルタによって分離可能な特定の有機ガスとは、一般には炭化水素類、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類、カルボン酸エステル類等のガスを指し、具体的には、例えば、メタン、エタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソブタン、イソペンタン、イソオクタン等に代表される飽和脂肪族炭化水素類や、アセトン、メチルエチルケトン等に代表されるケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等に代表されるアルコール類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、フロン11、フロン113、フロン123、フロン225等に代表されるハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アクリル酸ブチル等に代表されるカルボン酸エステル類等の揮発ガスを言う。
【0041】
本発明の有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガス分離方法においては、とりわけ、シリカ(SiO2 )と高い親和性を有するトルエン、あるいはキシレンのガスを分離して除去、又は回収するのに有効である。
【0042】
また、本発明の支持体2の形状形態は、特に限定されるものではなく、平板状や管状体等のいずれでも良いが、有機ガス分離効率やフィルタとしての取り扱いを考慮すれば管状体が望ましく、その上、かかる管状体は押し出し成形法等により、比較的簡単に作製できるというメリットもある。
【0043】
管状体の径は、単位面積当たりに占めるシリカ層3の面積割合を増し、ガスの分離効率を高める上では、内径2mm程度が望ましく、また、取り扱いに支障のない強度を保つために、その肉厚は0.3〜1mmが好適である。
【0044】
上記の構成においては、シリカ層3は支持体2の内面および/または外面に被着形成されるが、シリカ層3の厚みは、ガス分離の処理速度向上の点で0.1〜1μmであることが望ましい。
【0045】
本発明の有機ガス分離フィルタ1は、フィルタ1の一方の表面側に特定の有機ガスを含有した混合ガスを流すとともに、フィルタ1の反対側の面で前記特定の有機ガスの分圧を低めることにより、該特定の有機ガスを支持体2およびシリカ層3を介して選択的に他方の表面に透過、分離して、前記混合ガスから特定の有機ガスの分離を効率的に行うことができるものである。
【0046】
ガスの透過経路としては、支持体2を通過した後、シリカ層3を透過してもよく、逆にシリカ層3を透過した後、支持体2を透過してもよい。また、支持体2が管状体からなる場合には、管状体の内部に混合ガスを流し、管状体の外部にガスを透過させ、回収してもよく、逆に管状体の外部に混合ガスを流し、管状体の内部にガスを透過させ、回収してもよい。
【0047】
前記特定の有機ガスの分圧を低める方法としては、特定の有機ガスの排出面側に特定の有機ガス以外のガスを流すこともできるが、前記特定の有機ガスを含む混合ガス供給面側の気圧よりも前記特定の有機ガス排出面側の気圧を低めることにより、より効率的に特定の有機ガスの分離ができる。
【0048】
また、上記気圧差を設ける方法としては、前記特定の有機ガス排出面側を減圧する方法、前記特定の有機ガスを含む混合ガス供給面側を加圧する方法、さらに、上記2つの方法を併用する方法が挙げられる。
【0049】
本発明の有機ガス分離フィルタを用いて特定の有機ガスを分離する有機ガス分離装置の一例を図2に示す。図2によれば、有機ガス分離装置11は、内径1〜3mm、肉厚0.3〜1mm、長さ5〜500mmの円筒形状の有機ガス分離フィルタ12を50〜100本程度束ねたものが、固定用部材13で固定され、さらにハウジング14中に接着固定されている。
【0050】
固定用部材13およびハウジング14は、塩化ビニル、ポリウレタン等の樹脂、ステンレス等の金属、アルミナやジルコニア等の緻密質セラミックス等のガスを透過しないものによって形成されるが、ハウジング14については、系内を加圧または減圧する場合には、ステンレス等の機械的強度の高いものが好適である。
【0051】
さらに、ハウジング14には、系内に混合ガスを導入するための混合ガス導入口15、有機ガス分離フィルタ12表面を通過した混合ガスが系外に排出されるための非透過ガス排出口16および有機ガス分離フィルタ12内を透過したガスを系外へ排出するための透過ガス排出口17が形成され、上記3個所にてのみガスが出入りする。
【0052】
有機ガス分離装置11によれば、系内に気圧差を設けることができ、例えば、透過ガス排出口17にアスピレータや真空ポンプを接続して有機ガス分離フィルタ12の外周表面の気圧を下げることができる。
【0053】
次に、本発明の有機ガス分離フィルタを製造する方法について説明する。まず平均粒径0.1〜2.0μmのアルミナ粉末原料に、所定量の有機バインダ、潤滑剤、可塑剤、水を添加、混合した後、該混合物をプレス成形、押し出し成形、射出成形、冷間静水圧プレス等の公知の成形手段によって成形する。
【0054】
さらに、該成形体を大気中、1000〜1500℃にて焼成することにより所望の特性を有する支持体を作製することができる。
【0055】
この支持体としては、前述した材質、気孔率、平均細孔径を有するとともに、表面粗さ0.1〜0.9μmの平滑な表面を有することが望ましく、また、内径2mm、肉厚0.3〜1mmの管状体であることが望ましい。
【0056】
一方、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシドシラン、トリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン等のアルコール希釈液を加水分解等により、シリカコロイドゾルとすること等により高粘度化してペーストを作製する。
【0057】
そして、前記支持体の表面に前記ペーストを塗布、注入または前記ペースト中に前記支持体を含浸して引き上げることにより、該支持体の表面にゲル膜を被着形成する。
【0058】
具体的には、管状体の先端部に栓をして前記ペースト中に含浸することにより管状体の外周表面にシリカ膜を被着形成でき、注射器等を用いて前記ペーストを前記管状体内部に注入することにより、管状体の内周表面にシリカ膜を被着形成できる。
【0059】
得られたシリカ膜を被着形成した支持体を乾燥した後、大気中、400〜900℃にて焼成することにより支持体表面にシリカ層を有する有機ガス分離フィルタを作製することができる。焼成温度を上記範囲に限定した理由は、400℃以下では、シリカ膜と支持体の結合力が弱く、シリカ膜が剥がれてしまう。一方、900℃以上では、焼結が進行しシリカの細孔が大きくなるため特定のガス分離性能が低下する。
【0060】
さらに、上記成膜、乾燥、焼成を数回繰り返すこともでき、これにより所望の厚みのシリカ膜を形成することができる。
【0061】
また、中間層を形成する方法としては、アルミニウムセカンダリーブトキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解によりベーマイトゾルを作製し、上記と同様の成膜法によりセラミック多孔質支持体表面に成膜することができ、また、大気中、400〜900℃にて焼成すれば良い。
【0062】
焼成温度を上記範囲に限定した理由は、400℃以下では、中間層と支持体との結合力が弱く中間層が剥離してしまうためであり、逆に900℃以上では、焼結が進行しすぎ中間層の細孔径が大きくなるためである。
【0063】
また、シリカ層および中間層を形成する方法としては、上記以外にもCVD法等も採用できる。
【0064】
【実施例】
本発明の有機ガス分離フィルタを以下のようにして作製し、評価した。
【0065】
(実施例1)
まず、純度99.9%、平均粒径0.1μmのアルミナと、有機バインダと、潤滑剤と、可塑剤と水とを混合し、押し出し成形にて管状体に成形した後、大気中、1200℃にて焼成して、内径2mm、肉厚0.4mm、長さ250mmの管状体で、平均細孔径0.2μm、気孔率39%を有するα−アルミナ質多孔質支持体を作製した。
【0066】
一方、テトラエトキシシラン1molを10molのエタノールに溶解し、該溶液にテトラエトキシシラン1molに対してエタノール70molと水10mol、塩化水素(HCl)0.07molを含む混合物を滴下して加水分解し、ペースト状のゾルを作製した。
【0067】
次に、前記α−アルミナ(Al2 O3 )多孔質支持体に先端部に栓をし、得られたペースト状のゾル内に含浸して30秒間保持した後、5mm/秒の速度で排出し、室温で1時間乾燥した後、500℃で焼成する一連の作業工程を15回繰り返し、支持体の外周表面に膜厚0.1μmのシリカ層を形成した有機ガス分離フィルタ12を作製した。
【0068】
かくして得られた有機ガス分離フィルタ50本をポリウレタン製の固定用部材13にて固定した後、さらにステンレス製のハウジング14内に固定し、図2の有機ガス分離装置11を作製した。
【0069】
なお、前記有機ガス分離フィルタ12内に形成されたシリカ層の長さは220mmで、有機ガス分離装置11内のシリカ層の面積は0.10m2 であった。
【0070】
得られた有機ガス分離装置11の混合ガス導入口15よりトルエン濃度が1%、残部が空気から成る混合ガスを5リットル/minの流速で流すとともに、透過ガス排出口17を真空ポンプで100torrに減圧した。
【0071】
この時、透過ガス排出口17より回収された混合ガス中のトルエン濃度を測定した結果5%であり、透過率2.0×10-6mol/m2 ・Pa・sと高い分離・濃縮特性を示した。また、100時間連続運転しても有機ガス分離装置11の特性及び外観に変化は認められなかった。
【0072】
また、上記と同様に、トルエンをキシレンに変更する以外は上記と全く同様にして評価を行なった結果、キシレンの濃度は4.5%であり、透過率1.5×10-6mol/m2 ・Pa・sと高い分離・濃縮特性を示した。また、100時間連続運転しても有機ガス分離装置11の特性及び外観に変化は認められなかった。
【0073】
(実施例2)
まず、水100molに対してセカンダリーブトキシドを1mol添加して加水分解し、さらに硝酸0.07molを添加した後16時間還流してベーマイトゾルを作製した。
【0074】
得られたベーマイトゾルを実施例1のシリカ層の形成法と同様にして実施例1と同じα−アルミナ(Al2 O3 )質管状体の外周表面に被覆した後、500℃で熱処理して平均細孔径5nm、厚さが2μmのγ−アルミナ(Al2 O3 )からなる中間層を被覆した支持体を作製した。
【0075】
次いで、上記中間層の表面に実施例1と同じシリカ(SiO2 )のペースト状のゾルを用いて、実施例1と同様に含浸、排出、乾燥、焼成する工程を2回繰り返して支持体の外周表面に膜厚0.1μmのシリカ層を形成した有機ガス分離フィルタ12を作製した。
【0076】
得られた有機ガス分離フィルタのシリカ層についてアルゴン吸着法にて細孔径分布を測定した結果、図3に示すように5nm以下の細孔径が全細孔容積中の75%を示し、細孔径のピークは2nmを示した。
【0077】
その後、実施例1と同様にして有機ガス分離装置11を作製し、同様の評価を行なったところ、透過ガス排出口17より回収された混合ガスのトルエンの濃度は10%、キシレンの濃度は9.5%であり、それぞれの透過率は9.9×10-6mol/m2 ・Pa・s、1.0×10-6mol/m2 ・Pa・sと高い分離・濃縮特性を示した。また、100時間連続運転しても有機ガス分離装置11の特性及び外観に変化は認められないことを確認した。
【0078】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明の有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガス分離方法は、高いガス透過速度率を有することから、特定の有機ガスを含有した混合ガスから、特定の有機ガスのみを選択的に、かつ効率的に分離・濃縮することができる。
【0079】
また、本発明の有機ガス分離フィルタは、各種の条件下において耐熱性や耐食性に優れているために、高温、高圧、酸性、アルカリ性ガス等を含有するような過酷な条件下での使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機ガス分離フィルタの一部拡大図である。
【図2】本発明の有機ガス分離フィルタを組み込んだ有機ガス分離装置の概略断面図である。
【図3】本発明の有機ガス分離フィルタにおける通気性シリカ(SiO2 )層の細孔径分布を示す図である。
【符号の説明】
1 有機ガス分離フィルタ
2 セラミック多孔質支持体
3 通気性シリカ(SiO2 )層
4 中間層
5 細孔
Claims (4)
- 平均細孔径が0.1〜2μm、気孔率が20〜40%のセラミック多孔質支持体の少なくとも一方の表面に、通気性を有する中間層を設け、該中間層の上に、全細孔の70%以上が5nm以下の細孔径を有し、かつ平均細孔径が2nm以上の細孔径分布を有し、特定の有機ガスを含む混合ガスより前記特定の有機ガスを選択的に透過、分離しうる通気性シリカ(SiO2)層を被着形成してなり、前記中間層の平均細孔径が、前記セラミック多孔質支持体の平均細孔径より小さく、かつ、前記通気性シリカ(SiO 2 )層の平均細孔径より大きいことを特徴とする有機ガス分離フィルタ。
- 前記特定の有機ガスが、トルエンまたはキシレンであることを特徴とする請求項1記載の有機ガス分離フィルタ。
- 平均細孔径が0.1〜2μm、気孔率が20〜40%のセラミック多孔質支持体の少なくとも一方の表面に、通気性を有する中間層を設け、該中間層の上に、全細孔の70%以上が5nm以下の細孔径を有し、かつ平均細孔径が2nm以上の細孔径分布を有し、特定の有機ガスを含む混合ガスより前記特定の有機ガスを選択的に透過、分離しうる通気性シリカ(SiO2)層を被着形成してなり、前記中間層の平均細孔径が、前記セラミック多孔質支持体の平均細孔径より小さく、かつ、前記通気性シリカ(SiO 2 )層の平均細孔径より大きいフィルタの一方の表面に、特定の有機ガスを含む混合ガスを供給し、前記フィルタが該混合ガスと接触する表面における前記特定の有機ガスの分圧よりも他方の表面における前記特定の有機ガスの分圧を低めて、前記特定の有機ガスを前記セラミック多孔質支持体および前記通気性シリカ(SiO2)層を介して選択的に他方の表面に透過、分離することを特徴とする有機ガスの分離方法。
- 前記特定の有機ガスが、トルエンまたはキシレンであることを特徴とする請求項3記載の有機ガス分離フィルタの分離方法。
Priority Applications (1)
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JP33636698A JP3659466B2 (ja) | 1998-11-26 | 1998-11-26 | 有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガスの分離方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP33636698A JP3659466B2 (ja) | 1998-11-26 | 1998-11-26 | 有機ガス分離フィルタおよびそれを用いた有機ガスの分離方法 |
Publications (2)
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