JP3659306B2 - 半導体素子収納用パッケージ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はLSI(大規模集積回路素子)等の半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、上面に半導体素子を収容するための凹部を有し、下面に銅や銅ータングステン合金等の金属材料から成る放熱板が取着されている絶縁基体と、該絶縁基体の凹部周辺から外周縁にかけて被着導出されたタングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末から成る複数個のメタライズ配線層と、内部に収容する半導体素子を外部電気回路に接続するために前記メタライズ配線層に銀ロウ等のロウ材を介し取着された外部リード端子と、蓋体とから構成されており、絶縁基体の凹部底面に半導体素子をガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともに該半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介してメタライズ配線層に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体に蓋体をガラス、樹脂、ロウ材等から成る封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に半導体素子を気密に収容することによって製品としての半導体装置となる。
【0003】
なお、上述の半導体素子収納用パッケージにおいては、絶縁基体の下面に取着されている放熱板が銅や銅ータングステン合金等の金属材料で形成されており、該銅や銅ータングステン合金等は熱伝導性に優れていることから放熱板は半導体素子の作動時に発する熱を良好に吸収するとともに大気中に良好に放散させることができ、これによって半導体素子を常に適温とし半導体素子に熱破壊が発生したり、特性に熱劣化が発生したりするのを有効に防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の半導体素子収納用パッケージでは、放熱板が銅で形成されている場合、該銅はその熱膨張係数が約18×10-6/℃で絶縁基体を構成する酸化アルミニウム質焼結体等の熱膨張係数(酸化アルミニウム質焼結体の熱膨張係数は約7×10-6/℃)と大きく相違することから、容器内部に半導体素子を気密に収容し、半導体装置となした後、絶縁基体と放熱板の各々に半導体素子が作動時に発生する熱等が印加された場合、放熱板と絶縁基体との間に両者の熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生し、該熱応力によって放熱板が絶縁基体より剥がれ、半導体素子の作動時に発する熱を大気中に良好に放散させることが不可となったり、絶縁基体に割れやクラックが発生し、容器の気密封止が破れて容器内部に収容する半導体素子を長期間にわたり、正常、且つ安定に作動させることができないという欠点を有していた。
【0005】
また放熱板が銅ータングステン合金で形成されている場合、該銅ータングステン合金は重いことから容器内部に半導体素子を気密に収容し、半導体装置となした際、半導体装置の重量が重くなり、近時の小型化、軽量化が進む電子装置にはその実装が困難となってしまう欠点を有していた。
【0006】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は容器内部の気密封止を完全とするとともに容器内部に収容する半導体素子を常に適温として半導体素子を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることができる半導体素子収納用パッケージを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体の少なくとも1種から成り、内部に半導体素子を収容する空所を有する絶縁容器の外表面に放熱板を取着して成る半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱板は厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着されて形成されており、かつ前記接着層、中間層、主層の各々の厚みが略同一厚みであることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、上面に半導体素子が載置される載置部を有する放熱板に前記載置部を囲繞するようにして酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体の少なくとも1種から成る枠状の絶縁体を取着させた半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱板は厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着されて形成されており、かつ前記接着層、中間層、主層の各々の厚みが略同一厚みであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱板として厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着させたものを使用したことから半導体素子が作動時に発した熱は放熱板の上面側(絶縁容器と接合する面側)から下面側にかけて選択的に伝達するとともに放熱板の下面側から大気中に効率良く放散されることとなり、その結果、半導体素子は常に適温となり、半導体素子を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0010】
また本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層を被着させた放熱板は弾性率が30GPa以下で、軟質であり、かつ熱膨張係数が約7×10-6/℃〜9×10-6/℃と絶縁容器や枠状絶縁体を形成する酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体等の熱膨張係数に近似することから、内部に半導体素子を気密に収容し、半導体装置となした後、絶縁容器と放熱板、或いは枠状絶縁体と放熱板に半導体素子が作動時に発生する熱が印加されたとしても、放熱板と絶縁容器、或いは放熱板と枠状絶縁体との間に両者の熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生することはなく、また発生した小さな熱応力も放熱板が適度に変形することによって吸収され、その結果、放熱板と絶縁容器、或いは放熱板と枠状絶縁体とは、絶縁容器や枠体に割れやクラックを発生させることなく強固に接合し、半導体素子の気密封止を完全として半導体素子を長期間にわたり、正常、且つ安定に作動させることができる。
【0011】
また本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層を被着させた放熱板はその重量が銅ータングステン合金に比べて1/5程度であり、極めて軽量なものであることから半導体素子収納用パッケージ内に半導体素子を収容し、半導体装置となした場合、半導体装置の重量は極めて軽量なものとなり、その結果、近時の小型化、軽量化が進む電子装置への実装も可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の半導体素子収納用パッケージの一実施例を示し、1は絶縁基体、2は蓋体である。この絶縁基体1と蓋体2とで半導体素子3を収容する絶縁容器4が構成される。
【0013】
前記絶縁基体1はその上面に半導体素子3を収容するための空所を形成する凹部1aが設けてあり、該凹部1a底面には半導体素子3が載置され、ガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤を介して接着固定される。
【0014】
前記絶縁基体1は酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤等を添加混合して泥漿物を作るとともに、該泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)と成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0015】
また前記絶縁基体1は凹部1a周辺から外周縁にかけて複数個のメタライズ配線層5が被着形成されており、該メタライズ配線層5の凹部1a周辺部には半導体素子3の各電極がボンディングワイヤ6を介して電気的に接続され、また絶縁基体1の上面外周縁に導出された部位には外部電気回路と接続される外部リード端子7が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されている。
【0016】
前記メタライズ配線層5は半導体素子3の各電極を外部電気回路に接続する際の導電路として作用し、タングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末により形成されている。
【0017】
前記メタライズ配線層5はタングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを絶縁基体1となるセラミックグリーンシートに予め従来周知のスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布しておくことによって絶縁基体1の凹部1a周辺から外周縁にかけて被着形成される。
【0018】
また前記メタライズ配線層5はその露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みにメッキ法により被着させておくと、メタライズ配線層5の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともにメタライズ配線層5への外部リード端子7のロウ付けを強固となすことができる。従って、前記メタライズ配線層5は、その露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
【0019】
更に前記メタライズ配線層5には外部リード端子7が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されており、該外部リード端子7は容器4内部に収容する半導体素子3の各電極を外部電気回路に電気的に接続する作用をなし、外部リード端子7を外部電気回路に接続することによって容器4内部に収容される半導体素子3はメタライズ配線層5及び外部リード端子7を介して外部電気回路に接続されることとなる。
【0020】
前記外部リード端子7は鉄ーニッケルーコバルト合金や鉄ーニッケル合金等の金属材料から成り、例えば、鉄ーニッケルーコバルト合金等の金属から成るインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を施すことによって所定の形状に形成される。
【0021】
前記外部リード端子7が被着された絶縁基体1はまたその下面に放熱板8がロウ材を介して取着されており、該放熱板8は半導体素子3が作動時に発する熱を良好に吸収するとともに大気中に効率良く放散させて半導体素子3を常に適温となし、これによって半導体素子3は常に正常に作動することが可能となる。
【0022】
前記放熱板8は、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体8aの上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3層構造を有する金属層9が被着させたものから成り、絶縁基体1の下面に前述のメタライズ配線層5と同様の方法によってタングステンやモリブデン、マンガン等の高融点金属粉末から成るメタライズ金属層10を予め被着させておき、該メタライズ金属層10に放熱板8の上面に被着させた金属層9を半田や銀ー銅合金、チタンー銀ー銅合金等のロウ材を介しロウ付けすることによって放熱板8は絶縁基体1の下面に取着される。
【0023】
前記放熱板8の一方向性複合材料から成る芯体8aは、例えば、一方向に配列した炭素繊維の束を、固体のピッチあるいはコークスなどの微粉末を分散させたフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の溶液中に含浸させ、次にこれを乾燥させて一方向に炭素繊維が配列している複数枚のシートを形成するとともに各々のシートを炭素繊維の方向が同一となるようにして複数枚積層し、次に前記積層された複数枚のシートに所定の圧力を加えるとともに加熱して熱硬化性樹脂部分を硬化させ、最後にこれを不活性雰囲気中、高温で焼成し、フェノール樹脂とピッチあるいはコークスの微粉末を炭化させる(炭素を形成する)とともに該炭素で各々の炭素繊維を結合させることによって製作されている。
【0024】
また前記放熱板8の一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に被着されている金属層9は図2に示すようにチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層からなり、各々の層の厚みは略同一厚みとなっている。
【0025】
前記金属層9を略同一厚みのチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層で形成するのは一方向性複合材料からなる芯体8aの熱膨張係数を絶縁基体1の熱膨張係数(約4×10-6/℃〜7×10-6/℃)に近似させるためであり、一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に略同一厚みのチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層からなる金属層9を被着させた放熱板8はその熱膨張係数が約7×10-6/℃〜9×10-6/℃となり、これによって放熱板8を絶縁基体1の下面に取着させた後、両者に半導体素子3が作動時に発生する熱等が印加されたとしても、放熱板8と絶縁基体1との間には両者の熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生することはなく、その結果、放熱板8は絶縁基体1に割れやクラックを発生させることなく絶縁基体1に強固に接合し、かつ半導体素子3の作動時に発する熱を大気中に良好に放散させることを可能として、容器内部に収容する半導体素子3を長期間にわたり、正常、且つ安定に作動させることができる。
【0026】
前記金属層9は一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に例えば、拡散接合させることによって被着されており、具体的には、一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に厚さ50μm以下のチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る箔と銅の箔とモリブデンの箔を順次、載置させ、次にこれを真空ホットプレスで5MPaの圧力をかけつつ1200℃の温度を1時間印加することによって行われる。
【0027】
前記金属層9のチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aは、金属層9を一方向性複合材料からなる芯体8aに強固に接合させる作用をなし、また銅から成る中間層9bは接着層9aとモリブデンから成る主層9cとを強固に接合させるとともに両者の相互拡散を有効に防止する作用をなし、更にモリブデンから成る主層9cは接着層9a及び中間層9bと相俟って放熱板8の熱膨張係数を約7×10-6/℃〜9×10-6/℃とする作用をなす。
【0028】
前記一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両主面に金属層9を被着させてなる放熱板8は、一方向性複合材料からなる芯体8aの炭素繊維の方向、即ち、放熱板8の上面から下面にかけての方向の熱伝導率が300W/m・K以上、炭素繊維に対し直交する方向の熱伝導率が30W/m・K以下であり、放熱板8の上面側から下面側に向けて熱が一方向に選択的に効率良く伝達するようになっている。そのためこの一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板8を半導体素子3が載置収容される絶縁基体1の下面に取着させた場合、半導体素子3の作動時に発する熱は絶縁基体1を介して放熱板8に良好に吸収され、かつ放熱板8を一方向に伝達して大気中に効率良く放散されることとなる。
【0029】
また前記一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板8はその重量が銅ータングステン合金に比較して1/5程度であり、軽いことからこの放熱板8が取着された半導体素子収納用パッケージに半導体素子3を収容して半導体装置を形成した場合、該半導体装置の重量も極めて軽量なものとなり、近時の小型化、軽量化が進む電子装置にも実装が可能となる。
【0030】
更に前記一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板8はその弾性率が30GPa以下であり、軟質であることから放熱板8と絶縁基体1との間に若干の熱膨張係数差があったとしても両者間に発生する熱応力は放熱板8を適度に変形させることによって吸収され、その結果、絶縁基体1と放熱板8とは極めて強固に接合し、半導体素子3が発する熱を常に大気中へ効率良く放散させることができる。
【0031】
また更に前記一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に金属層9を被着させた放熱板8は、芯体8aと上面金属層9との間及び芯体8aと下面金属層9との間に両者の熱膨張係数の相違に起因する熱応力が発生するがその各々の熱応力は金属層9の芯体8aに対する被着位置が異なることから互いに相殺され、その結果、放熱板8は芯体8aと金属層9との間に発生する熱応力によって変形することはなく常に平坦となり、これによって絶縁基体1の下面に放熱板8を強固に接合させることが可能となるとともに半導体素子3が作動時に発する熱を放熱板8を介して大気中に効率良く放散させことが可能となる。
【0032】
かくして上述の半導体素子収納用パッケージによれば、絶縁基体1の凹部1a底面に半導体素子3をガラス、樹脂、ロウ材等から成る接着剤を介して接着固定するとともに該半導体素子3の各電極をボンディングワイヤ6を介して所定のメタライズ配線層5に接続させ、しかる後、前記絶縁基体1の上面に蓋体2をガラス、樹脂、ロウ材等から成る封止材を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器4内部に半導体素子3を気密に収容することによって製品としての半導体装置となる。
【0033】
また図3は本発明の他の実施例を示し、図中、21は放熱板、22は枠状の絶縁体、23は蓋体である。この放熱板21と枠状絶縁体22と蓋体23とで半導体素子24を収容する容器25が構成される。
【0034】
前記放熱板21はその上面に半導体素子24が載置される載置部21aを有するとともに上面外周部に放熱板21の上面に設けた半導体素子24が載置される載置部21aを囲繞するようにして枠状の絶縁体22がロウ材やガラス、樹脂等の接着剤を介して取着されている。
【0035】
前記放熱板21は半導体素子24を支持する支持部材として作用するとともに半導体素子24が作動時に発する熱を良好に吸収するとともに大気中に効率良く放散させ、半導体素子24を常に適温とする作用をなし、枠状絶縁体22に囲まれた放熱板21の載置部21a上に半導体素子24がガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤を介して固定される。
【0036】
前記放熱板21は、図2に示すように、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体8aの上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3層構造を有する金属層9を被着させたものから成り、枠状絶縁体22の下面に予めタングステンやモリブデン、マンガン等の高融点金属粉末から成るメタライズ金属層27を被着させておき、該メタライズ金属層27に放熱板21の上面側に被着させた金属層9を半田や銀一銅合金、銀ー銅ーチタン合金等のロウ材を介しロウ付けすることによって放熱板21は枠状絶縁体22の下面に取着される。
【0037】
前記放熱板21の一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に被着されている金属層9は図2に示すようにチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層からなり、各々の層の厚みは略同一厚みとなっている。
【0038】
前記金属層9を略同一厚みのチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層で形成するのは一方向性複合材料からなる芯体8aの熱膨張係数を枠状絶縁体22の熱膨張係数(約4×10-6/℃〜7×10-6/℃)に近似させるためであり、一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に略同一厚みのチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層9aと、銅から成る中間層9bと、モリブデンから成る主層9cの3つの層からなる金属層9を被着させた放熱板21はその熱膨張係数が約7×10-6/℃〜9×10-6/℃となり、これによって放熱板21に枠状絶縁体22を取着させた後、両者に半導体素子24が作動時に発生する熱等が印加されたとしても、放熱板21と枠状絶縁体22との間には両者の熱膨張係数の相異に起因する大きな熱応力が発生することはなく、その結果、放熱板21は枠状絶縁体22に割れやクラックを発生させることなく枠状絶縁体22に強固に接合し、かつ半導体素子24の作動時に発する熱を大気中に良好に放散させることを可能として、容器内部に収容する半導体素子24を長期間にわたり、正常、且つ安定に作動させることができる。
【0039】
前記一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両主面に金属層9を被着させてなる放熱板21は、一方向性複合材料からなる芯体8aの炭素繊維の方向、即ち、放熱板21の上面から下面にかけての方向の熱伝導率が300W/m・K以上、炭素繊維に対し直交する方向の熱伝導率が30W/m・K以下であり、放熱板21の上面側から下面側に向けて熱が一方向に選択的に効率良く伝達するようになっている。そのためこの一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板21の上面に半導体素子24を載置固定させた場合、半導体素子24の作動時に発する熱は放熱板21の上面から下面にかけて一方向に伝達し、放熱板21の下面から大気中に効率良く放散されることとなる。
【0040】
また前記一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板21はその重量が銅ータングステン合金に比較して1/5程度であり、軽いことからこの放熱板21が取着された半導体素子収納用パッケージに半導体素子24を収容して半導体装置を形成した場合、該半導体装置の重量も極めて軽量なものとなり、近時の小型化、軽量化が進む電子装置にも実装が可能となる。
【0041】
更に前記一方向性複合材料からなる芯体8aを用いた放熱板21はその弾性率が30GPa以下であり、軟質であることから放熱板21と枠状絶縁体22との間に若干の熱膨張係数差があったとしても両者間に発生する熱応力は放熱板21を適度に変形させることによって吸収され、その結果、枠状絶縁体22と放熱板21とは極めて強固に接合し、半導体素子24が発する熱を常に大気中へ効率良く放散させることができる。
【0042】
また更に前記一方向性複合材料からなる芯体8aの上下両面に金属層9を被着させた放熱板21は、芯体8aと上面金属層9との間及び芯体8aと下面金属層9との間に両者の熱膨張係数の相違に起因する熱応力が発生するがその各々の熱応力は金属層9の芯体8aに対する被着位置が異なることから互いに相殺され、その結果、放熱板21は芯体8aと金属層9との間に発生する熱応力によって変形することはなく常に平坦となり、これによって枠状絶縁体22の下面に放熱板21を強固に接合させることが可能となるとともに半導体素子24が作動時に発する熱を放熱板21を介して大気中に効率良く放散させことが可能となる。
【0043】
更にまた前記放熱板21の上面外周部には該放熱板21の上面に設けた半導体素子24が載置される載置部21aを囲繞するようにして枠状の絶縁体22がロウ材やガラス、樹脂等の接着剤を介して取着されており、放熱板21と枠状絶縁体22とで半導体素子24を収容するための空所が内部に形成される。
【0044】
前記放熱板21に取着される枠状絶縁体22は酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体から成り、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤等を添加混合して泥漿物を作るとともに、該泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)と成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0045】
前記枠状絶縁体22は更にその内周部から上面にかけて導出する複数個のメタライズ配線層28が被着形成されており、枠状絶縁体22の内周部に導出するメタライズ配線層28の一端には半導体素子24の各電極がボンディングワイヤ29を介して電気的に接続され、また枠状絶縁体22の上面に導出された部位には外部電気回路と接続される外部リードピン30が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されている。
【0046】
前記メタライズ配線層28は半導体素子24の各電極を外部電気回路に接続する際の導電路として作用し、タングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末により形成されている。
【0047】
前記メタライズ配線層28はタングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを枠状絶縁体22となるセラミックグリーンシートに予め従来周知のスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布しておくことによって枠状絶縁体22の内周部から上面にかけて被着形成される。
【0048】
なお、前記メタライズ配線層28はその露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みにメッキ法により被着させておくと、メタライズ配線層28の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともにメタライズ配線層28への外部リードピン30のロウ付けを強固となすことができる。従って、前記メタライズ配線層28は、その露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
【0049】
また前記メタライズ配線層28には外部リードピン30が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されており、該外部リードピン30は容器25内部に収容する半導体素子24の各電極を外部電気回路に電気的に接続する作用をなし、外部リードピン30を外部電気回路に接続することによって容器25内部に収容される半導体素子24はメタライズ配線層28及び外部リ一ドピン30を介して外部電気回路に接続されることとなる。
【0050】
前記外部リードピン30は鉄ーニッケルーコバルト合金や鉄ーニッケル合金等の金属材料から成り、例えば、鉄ーニッケルーコバルト合金等の金属から成るインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を施すことによって所定の形状に形成される。
【0051】
かくして上述の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱板21の半導体素子載置部21a上に半導体素子24をガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともに該半導体素子24の各電極をボンディングワイヤ29を介して所定のメタライズ配線層28に接続させ、しかる後、前記枠状絶縁体22の上面に蓋体23をガラス、樹脂、ロウ材等から成る封止材を介して接合させ、放熱板21、枠状絶縁体22及び蓋体23とから成る容器25内部に半導体素子24を気密に収容すことによって製品としての半導体装置となる。
【0052】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0053】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱板として厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着させたものを使用したことから半導体素子が作動時に発した熱は放熱板の上面側(絶縁容器と接合する面側)から下面側にかけて選択的に伝達するとともに放熱板の下面側から大気中に効率良く放散されることとなり、その結果、半導体素子は常に適温となり、半導体素子を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0054】
また本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層を被着させた放熱板は弾性率が30GPa以下で、軟質であり、かつ熱膨張係数が約7×10-6/℃〜9×10-6/℃と絶縁容器や枠状絶縁体を形成する酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体等の熱膨張係数に近似することから、内部に半導体素子を気密に収容し、半導体装置となした後、絶縁容器と放熱板、或いは枠状絶縁体と放熱板に半導体素子が作動時に発生する熱が印加されたとしても、放熱板と絶縁容器、或いは放熱板と枠状絶縁体との間に両者の熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生することはなく、また発生した小さな熱応力も放熱板が適度に変形することによって吸収され、その結果、放熱板と絶縁容器、或いは放熱板と枠状絶縁体とは、絶縁容器や枠体に割れやクラックを発生させることなく強固に接合し、半導体素子の気密封止を完全として半導体素子を長期間にわたり、正常、且つ安定に作動させることができる。
【0055】
また本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層を被着させた放熱板はその重量が銅ータングステン合金に比べて1/5程度であり、極めて軽量なものであることから半導体素子収納用パッケージ内に半導体素子を収容し、半導体装置となした場合、半導体装置の重量は極めて軽量なものとなり、その結果、近時の小型化、軽量化が進む電子装置への実装も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体素子収納用パッケージの要部拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・絶縁基体
2、23・・・・・蓋体
3、24・・・・・半導体素子
4・・・・・・・・絶縁容器
5、28・・・・・メタライズ配線層
7・・・・・・・・外部リード端子
8、21・・・・・放熱板
8a・・・・・・・芯体
9・・・・・・・・金属層
9a・・・・・・・接着層
9b・・・・・・・中間層
9c・・・・・・・主層
22・・・・・・・枠状の絶縁体

Claims (2)

  1. 酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体の少なくとも1種から成り、内部に半導体素子を収容する空所を有する絶縁容器の外表面に放熱板を取着して成る半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱板は厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着されて形成されており、かつ前記接着層、中間層、主層の各々の厚みが略同一厚みであることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
  2. 上面に半導体素子が載置される載置部を有する放熱板に前記載置部を囲繞するようにして酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体の少なくとも1種から成る枠状の絶縁体を取着させた半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱板は厚み方向に配列した炭素繊維を炭素で結合した一方向性複合材料から成る芯体の上下両面にチタン、ジルコニウム、バナジウムもしくはこれらを主成分とする合金の少なくとも1種より成る接着層と、銅から成る中間層と、モリブデンから成る主層の3層構造を有する金属層が被着されて形成されており、かつ前記接着層、中間層、主層の各々の厚みが略同一厚みであることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
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