JP3659068B2 - バッテリ管理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッテリの充放電状態等を管理するバッテリ管理装置に関し、特に、電池起電圧の検出系に故障が生じた場合において適切な管理を行うことに関する。
【0002】
【従来の技術】
バッテリの充電状態等を監視するバッテリ管理装置は、例えば、ハイブリッド車に搭載されるバッテリに用いられている。ハイブリッド車は車両駆動用モータおよびエンジンによって車輪を回転させ走行するものであり、駆動用モータの他に、エンジン駆動される発電機、及び電池が搭載され、この電池からの電力によって駆動用モータが駆動されると共に、発電機からの電力によって電池の充電が行われる。
【0003】
電池の蓄電量はSOC(充電状態:State of Charge)と呼ぶ指標を用いて管理される。SOCを検出する方法として、充電時(或いは放電時)における電池の電圧電流特性(I−V特性)とSOCとの相関関係を利用する方法がある。この検出方法においては、SOCが高い充電状態かSOCが低い放電状態において現れる強い相関関係が利用され、例えばSOCが80%以上や20%以下といった場合には、I−V特性から実際のSOC(実SOC)を精度よく決定することができる。しかし相関関係はSOCが中間の状態では弱いため、例えばSOCが20%から80%の間といった中間領域であるときには、SOCの決定に用いることができない。
【0004】
この中間領域のSOCの検出方法として、充放電電流量の積算による検出方法がある。通常の走行においては、電流積算方法により求めた積算SOCが所定値(例えば50%程度)になるように、モータの駆動および発電機の駆動が制御される。ちなみにこの方法では、上述のI−V特性とSOCとの強い相関が生じた場合(いわゆるIV判定が起こる場合)に得られる実SOCに積算SOCをリセットすることによって、積算により累積しうる誤差の解消が図られる。また、中間領域のSOCの他の検出方法として、積算SOCと電池起電圧との関係(SOC−起電圧特性)を求め、この特性に基づいて電池ユニットの起電圧からSOCを決定するという方法もある。
【0005】
バッテリ管理装置は、各電池ユニットのSOCを監視し、例えば、電池の性能劣化を生じる過放電状態の発生を抑制したり、また過放電状態を検出し適切な処置を行う。
【0006】
さて、従来よりバッテリ管理装置は電池ユニットの各起電圧を検出する電圧センサを備えている。この電圧センサは、もっぱら、上述したIV判定を行ったり、SOC−起電圧特性を利用したSOCの決定を行うために用いられていた。また、電圧センサを用いて各電池ユニットの異常検出を行うこともできる。例えば、電池ユニットの性能劣化によって生じる内部抵抗の増大を電圧センサで検出し、電池の異常を判定することができる。
【0007】
一方、従来のバッテリ管理装置では、各電池ユニットの異常検出を行う手段として、温度スイッチも設けられていた。この温度スイッチは、各電池ユニットに併設され、各電池ユニット間で直列接続された抵抗である。温度スイッチは、温度上昇に応じて抵抗率が変化する抵抗体で構成され、その抵抗の変化によって、電池ユニットの異常による発熱を検知する。その抵抗率の変化は著しく大きいため、多数の電池ユニットの一部のみで異常発熱が生じても、全電池ユニットに渡って直列接続された温度スイッチ全体の抵抗値に検知容易な変化が生じる。そのため、抵抗検出回路が基本的に一つで済むという利点がある。
【0008】
なお、温度スイッチとは別に、バッテリの代表点での温度を検知する手段としてサーミスタも設けられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
バッテリ管理装置の構造の簡素化、コスト低減等のために、温度スイッチを廃止することとした場合、電池ユニットの異常検出は、電圧センサを用いた方法のみとなる。そのため、万が一、電圧センサが故障した場合、電池ユニットの異常検出が行われなくなるおそれがあるという問題があった。
【0010】
また、電圧センサが故障すると、SOCの検知に支障を来すという問題、そして過放電状態を防止したり、検知することができなくなるという問題を生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決し、温度スイッチを廃することができ、また電圧センサが故障してもバッテリの保護が図られるバッテリ管理装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバッテリ管理装置は、複数の電池ユニットからなるバッテリの当該電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記電池ユニットの異常を検出するバッテリ管理装置であって、前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、通常時よりもバッテリ電流を抑制するバッテリ電流抑制手段とを有することを特徴とする。
【0013】
電池ユニット毎に設けられた電圧センサは、対応する電池ユニットの内部抵抗を検出し、当該電池ユニットの性能劣化等の異常発生を監視する機能を有する。よって、電圧センサが故障すると、それに対応する電池ユニットの異常を検知できなくなる。本発明によれば、電圧センサ故障検知手段がいずれかの電圧センサの故障を検知すると、バッテリ電流抑制手段がバッテリ電流、すなわち充放電電流を通常時より抑制する。これにより、万が一、その対応する電池ユニットが異常を生じていたとしても、ジュール熱による発熱を抑え、当該電池ユニットのさらなる劣化の進行が防止される。本装置では、バッテリは、電圧センサの故障発生時にシステムから切り離されることなく、充放電電流を抑制しつつも継続して利用される。これにより、当該バッテリを利用するシステムへの影響を軽減した制御が実現される。
【0014】
本発明に係る他のバッテリ管理装置は、複数の電池ユニットからなるバッテリの当該各電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記各電池ユニットの蓄電量を検出するバッテリ管理装置であって、前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、故障電圧センサに対応する電池ユニットの蓄電量を、残存する非故障電圧センサについて検出される前記蓄電量に基づいて推定する蓄電量推定手段とを有することを特徴とする。
【0015】
電池ユニット毎に設けられた電圧センサは、対応する電池ユニットの蓄電量、すなわちSOCの管理に利用される。よって、電圧センサが故障すると、過充電や過放電を検知、防止する機能が損なわれる。ここで、故障していない電圧センサに対応する電池ユニットのSOCは検知することができる。本発明によれば、電圧センサ故障検知手段がいずれかの電圧センサの故障を検知すると、蓄電量推定手段が故障していない電圧センサに対応する電池ユニットのSOCから、故障した電圧センサに対応する電池ユニットのSOCを推定し、この推定SOCを用いてバッテリの管理が行われる。本装置では、バッテリは、電圧センサの故障発生時にシステムから切り離されることなく継続して利用される。これにより、当該バッテリを利用するシステムへの影響を軽減した制御が実現される。
【0016】
本発明の好適な態様は、複数の電池ユニットからなるバッテリの当該各電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記各電池ユニットの異常及び蓄電量を検出するバッテリ管理装置であって、前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、通常時よりもバッテリ電流を抑制するバッテリ電流抑制手段と、いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、故障電圧センサに対応する電池ユニットの蓄電量を、残存する非故障電圧センサについて検出される前記蓄電量に基づいて推定する蓄電量推定手段とを有するバッテリ管理装置である。
【0017】
また本発明の他の好適な態様は、前記バッテリ電流抑制手段が、予め決められた前記バッテリの充放電電力の範囲内で、ジュール熱を抑制するよう、前記バッテリ電流の抑制を行うバッテリ管理装置である。
【0018】
本発明に係る別のバッテリ管理装置は、バッテリ電流の積算に基づいて積算蓄電量を求める手段と、電圧センサにより検出されるバッテリの起電圧に基づいて前記積算蓄電量を補正する手段とを有するバッテリ管理装置であって、前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、前記電圧センサの故障が検知された場合に、放電量に比べ充電量が多くなるように制御し、前記バッテリの充電状態を満充電に向けてシフトさせる充電促進手段と、充電時のバッテリ温度に基づいてバッテリの前記満充電を検出する満充電検出手段と、前記満充電検出手段により満充電を検出した場合に、前記積算蓄電量を満充電状態にリセットする積算蓄電量リセット手段とを有することを特徴とする。
【0019】
電圧センサの出力を用いて積算蓄電量を補正する方法として、IV判定やSOC−起電圧特性に基づく方法があるが、いずれかの電池ユニットの電圧センサ、又はバッテリ全体の電圧を計測する電圧センサが故障すると、それら手法によって当該電池ユニット又はバッテリ全体のSOCの補正を行うことができなくなる。本発明によれば、電圧センサ故障検知手段がいずれかの電圧センサの故障を検知すると、充電促進手段が放電量より充電量を多くするように制御し、意図的に実際のSOCを満充電状態に向かわせる。実際のSOCが満充電状態となったことは満充電検出手段によって検知される。満充電検出手段は、例えば温度変化(dT/dt:Tはバッテリ温度、tは時間)が所定値に達したことでSOCが満充電状態となったと判定する。積算蓄電量リセット手段は、実SOCの満充電状態が検知されると積算SOCを満充電状態にリセットする。このようにして本発明によれば、実SOCと積算SOCとのずれが解消され、積算SOCを用いたバッテリのSOC管理の精度が維持され、過放電を防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のバッテリ管理装置をハイブリッド車に適用したシステムの構成を示すブロック図である。バッテリ10は、多数のバッテリセルからなっている。本実施形態では、このバッテリ10は、ニッケル水素(Ni−MH)バッテリであり、20個のバッテリセルをまとめて1つのブロック(電池ユニット)として、このブロックを12個接続して、240個のバッテリセルを直列接続した300V程度の出力電圧を有している。
【0021】
バッテリ10の各ブロック毎の電圧及び全体の電圧は、電圧検出器12で計測され、電池ECU14に供給される。また、この電池ECU14には、バッテリの代表点における温度をバッテリ温度として検出する温度センサ16、およびバッテリ電流を検出する電流検出器18が接続されており、バッテリ温度及びバッテリ電流の各データが電池ECU14に供給される。
【0022】
そして、この電池ECU14は、供給される各種データに基づいて、バッテリ10の蓄電量(SOC)を検出し、これをHVECU20に供給する。なお、電池ECU14は、電圧検出器12から供給されるブロック毎の電圧値に基づいて、バッテリセルにおける過放電を検出する。
【0023】
このHVECU20は、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報に基づいて決定されたトルク指令に基づき、負荷22を制御する。負荷22は、インバータ、モータなどからなり、バッテリ10からの直流電力をインバータにより、交流電流に変換してモータを駆動するものである。そして、HVECU20からの制御信号によりインバータの動作が制御されることで、モータよりトルク指令に合致したトルクを出力する。また、インバータのスイッチングによって回生制動も行う。なお、本実施形態は、HV車であるため、エンジン及びエンジン駆動のジェネレータを有しており、ジェネレータの発電電力によりバッテリ10の充電ができると共に、エンジンによりモータ出力軸を回転できるようになっている。また、モータとジェネレータは、モータジェネレータとして1つの装置として構成してもよい。
【0024】
そして、HVECU20は、電池ECU14から供給されるバッテリ10のSOCの値に従って、モータ出力、エンジン出力などを制御して、バッテリ10のSOCが50%付近になるように制御している。なお、バッテリセルの過放電が検出された場合には、バッテリ10からの放電を禁止する。
【0025】
ここで、電池ECU14においては、電流検出器18の出力値の積算によって、バッテリ10の充放電電流量を計算し、積算SOCを求めている。しかし、このSOC算出では、上述のように長期間の積算によりSOC検出についての誤差が大きくなる。
【0026】
そこで、電池ECU14においては、電圧検出器12において検出したバッテリ10の電圧値に基づいたSOCの推定も行う。これは、バッテリ10のSOCと起電圧の関係(SOC−起電圧特性)を予め求めておき、そのときの起電圧に応じて、SOCを推定するものである。
【0027】
また、電池ECU14は、電圧検出器12において検出した電池ユニットの電圧値に基づいて当該電池ユニットの内部抵抗を監視し、電池ユニットの異常を検知する。
【0028】
図2は、本発明に係るバッテリ管理装置の動作を説明する概略のフロー図である。ステップS50〜70は各電池ユニットに対応した電圧検出器の動作確認と各電池ユニットのSOCの決定とを行う処理である。電池ECU14は、制御変数iを1から電池ユニット数の上限N(ここではN=12)まで順に変化させ、i番目の電池ユニットに対応する電圧検出器が正常ならば(S60)、その電圧計測値とSOC−起電圧特性とから、第i電池ユニットのSOCを決定する(S65)。
【0029】
一方、ステップS60において、例えば第b電池ユニット担当の電圧検出器の故障が検知された場合には、例えば制御変数値bがレジスタに保存される。この故障している電圧検出器12が存在する場合には(S75)、電池ECU14は蓄電量推定手段としての処理S80を実行する。この処理S80において、故障した電圧検出器12に対応する第b電池ユニットのSOCは、正常な電圧検出器12に対応する第i電池ユニット(但しi≠b)に関してステップS65にて得られたSOCから推定される。例えば、通常は各電池ユニットのSOCのばらつきは小さいことに基づいて、第b電池ユニットの推定SOCを他の電池ユニットのSOCと同等の値とすることができる。具体的には、他のSOCの平均値を用いることもできる。また例えば、全電池ユニットのSOCの最大値を所定の上限値以下に、また最小値を所定の下限値以上に保つSOC制御を行う場合に、第b電池ユニット以外のSOCの最大値MAX(i≠b)、最小値MIN(i≠b)に対し所定のマージンを設けたMAX(i≠b)+α、MIN(i≠b)−β(ここでα,β>0)を第b電池ユニットを含めた全電池ユニットのSOCの最大値、最小値として、上記上限、下限との比較に用いてもよい。
【0030】
SOC制御S85は、故障した電圧検出器12がない場合には(S75)、SOC−起電圧特性に基づいて決定されたSOCの情報のみを用いて、また故障した電圧検出器12が存在する場合には、推定されたSOCの情報をも用いて、SOCが例えば各電池ユニットの所定範囲に維持されるように制御を行う。すなわち本システムによれば、一部の電池ユニットに対応する電圧検出器12に故障が生じても適切なSOC制御を行うことができる。
【0031】
次に電池ECU14はバッテリ電流抑制手段として処理を行う。すなわち、電池ECU14は、温度センサ16の出力信号に基づいて、バッテリ10の代表点での温度を検知し、当該温度が所定範囲となるように充放電電流(バッテリ電流)の通常の制御値ICを決定する(S90)。電池ECU14は、全ての電圧検出器12が正常である場合には(S95)、この制御値ICを用いて充放電制御を行う。一方、故障した電圧検出器12が存在する場合には(S95)、ICよりも抑制された充放電電流制御値IC’を定め(S100)、これを用いて充放電制御を行う。
【0032】
本システムでは、コストの低減、また構造の簡素化のため、電池ユニットの異常検知に用いられていた温度スイッチが廃止されている。そのため、電池ユニットの異常を検知する手段としては、電圧検出器12による電池ユニットの内部抵抗の増加の監視が残されている。したがって、電圧検出器12が故障すると、それに対応する電池ユニットの異常の発生を検知することができない。
【0033】
万が一、故障した電圧検出器12に対応する電池ユニットに異常が生じると、その内部抵抗の上昇に伴ってジュール熱も増大し、電池が破損するおそれがある。これを回避する一つの方法として、システムメインリレーをオフ状態として、バッテリを使用しないこととすることが可能である。しかし、この方法では、ハイブリッド車としてのドライビリティが低下する。本システムでは、電圧検出器12の故障が検知された場合には、上述のように充放電電流を抑制しつつもバッテリを使用することによりドライビリティが確保されるとともに、万が一、対応する電池ユニットに異常が生じていても、バッテリの保護が図られる。
【0034】
ここで、電池ユニットの異常時の内部抵抗は予め実験等により見積もることができる。よって充放電電流制御値IC’を決定する際にその内部抵抗値が考慮される。また制御値IC’を決定する際には、この他、電池ユニットの許容される温度上限値や電池ユニットからの放熱効率等のパラメータを考慮することができる。
【0035】
上述の処理S50〜S100は、エンジンの停止等に伴うバッテリ管理処理が終了されない限り、基本的に反復される(S105)。
【0036】
なお、上記構成は、充放電に伴うジュール熱の抑制制御を充放電電流に基づいて行うものであるが、代わりに充放電電力を用いて制御を行うこともできる。その場合には、充放電電力の制御値が一定であっても(充放電なので±制御値となる。)、バッテリの内部抵抗が温度によって変化するため、充放電電圧と充放電電流も変化し、充放電電流の制御値も変化しうる。本実施形態では、例えば、充放電電力を+制御値(放電)〜−制御値(充電)の範囲内で制御することによりジュール熱の抑制制御を行っている。
【0037】
[実施の形態2]
本実施形態に係るシステムの全体構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同一である。
【0038】
図3は、本発明に係るバッテリ管理装置の動作を説明する概略のフロー図である。電圧検出器12が故障していない通常の動作をまず説明する。電池ECU14が電圧検出器12が故障していないと判断する場合には(S200)、次式に基づいて最新の積算SOCが計算される(S205)。
【0039】
【数1】
SOC(t+Δt)=SOC(t)−I・Δt・η ………(1)
ここでSOC(t+Δt)は時刻t+Δtにおける積算SOC、SOC(t)は時刻tにおける積算SOC、Iは充放電電流、ηは充放電効率である。ここでηは放電時には基本的に1であるが、充電時には一般にη<1となる。充電時のηの値は、SOCの影響を受けて変化しうる。一般には、SOCが低いほどηは1に近い値をとり、バッテリは充電されやすいが、SOCが高くなるにつれηは低減し、バッテリは充電されにくくなる。また、ηはバッテリの温度の影響も受ける。
【0040】
SOCや温度に応じたηの特性は実験等で得ることができる。ステップS205における(1)式の計算においては、充電時の効率ηとして、基本的にその時点でのSOC及び温度に応じた実際の充電効率の値が用いられる。
【0041】
電圧検出器12が正常に動作している場合には、IV判定により実際のSOCがの上限又は下限に達したことを検知することができる(S210)。この上限判定、下限判定が発生した場合には、積算SOCは、その上限値、下限値にリセットされる(S215)。
【0042】
SOC制御処理S220は、ステップS205又はS215で決定されたSOCに基づいて、バッテリの充放電制御を行う。
【0043】
一方、電圧検出器12が故障していることが検知された場合には(S200)、電池ECU14は充電を促進するように制御を行う。例えば、電池ECU14は、充電時のηをステップS205で用いられる値より小さな値に設定し(S250)、(1)式に基づいて積算SOCを求める(S255)。充電時のηを実際の値より小さく設定すると、積算により推定されたSOCは小さめに評価されることになり、電池ECU14はそれを補おうとして充放電制御のウェイトを充電側にシフトさせる。よって、バッテリの実際のSOCは、満充電に向かうことになる。
【0044】
ここでは、電圧検出器12が故障しているため、IV判定により実SOCの上限、下限を検知することができない。しかし、Ni−MHバッテリは、ほぼ満充電にまで充電されると、温度が急激に上昇する性質を有することが知られている。そこで、温度センサ16によって充電時の温度変化を検出していれば、満充電を検出することができる。すなわち、図4に示すように、予めSOCと温度変化(dT/dt:Tはバッテリ温度、tは時間)との関係を求めておき、この変化が所定値となったことでSOCを100%と判定することができる(dT/dt判定)。このdT/dt判定が発生した場合に(S260)、積算SOCを100%にリセットすることにより、積算SOCと実SOCとのずれを解消することができる(S265)。
【0045】
この場合にはSOC制御処理S220は、ステップS255又はS265で決定されたSOCに基づいて、バッテリの充放電制御を行う。
【0046】
バッテリにおいては過充電より過放電の方が性能劣化等の悪影響を有するが、本システムではηを通常時より低減することにより、過放電状態となることが抑制され、バッテリの保護が図られる。よって、電圧検出器12の故障が検知された場合には、ηを定常的に低減状態としておいて構わない。また、dT/dt判定発生後、積算SOCの精度が所定レベルに維持されうる間は、ηとして通常時の値を用いてSOC制御の精度を確保し、積算SOCの精度が許容限度以下となる可能性が大きくなった段階でηを十分に低減しステップS265のリセット処理を誘起させる構成とすることもできる。このηの低減開始のタイミングは、例えば、dT/dt判定から所定時間経過したことや、積算SOCが所定レベルに低下したことなどに基づいて決定することができる。
【0047】
図5は、本システムにおける積算SOCと実際のSOCとの時間変化を示す概略のグラフである。図において横軸が時間、縦軸がSOCである。また実線300は積算SOCの値の変化を表し、点線302は実SOCの値の変化を表す。この図には、dT/dt判定後、積算SOCが50%に低下するまでは通常のηを使用し、その後、ηを低減し充電を促進する例が示されている。つまり、例えば時刻t1においてdT/dt判定が発生すると、積算SOCが100%にリセットされ、実SOCとのずれが解消されるとともに、充電効率ηが通常の値にセットされてSOC制御が開始される。その後、時間の経過とともに積算SOCの実SOCからのずれは拡大する可能性を有するが、通常のηを用いている間はそのずれはそれほど大きくはならないと期待することができる。積算SOCが時刻t2において50%に達すると、充電時の効率ηが通常時よりも小さい値に設定され、充電の促進が開始される。これによりシステムは積算SOCを用いてSOCを50%程度に維持するように制御を行っているつもりであるにも拘わらず、実SOCは積算SOCから乖離して上昇し始める。そして時刻t3においてdT/dt判定が発生すると、再び積算SOCが100%にリセットされる。
【0048】
上述の処理S200〜S265は、エンジンの停止等に伴うバッテリ管理処理が終了されない限り、基本的に反復される点(S270)は実施形態1と同様である。
【0049】
なお、上述の構成では意図的に充電を促進させdT/dt判定を起こさせるために、充電時の効率ηを通常より低く設定することとした。この方法は、電圧検出器12の正常時と故障時とで基本的な処理が共通であるため、電池ECU14上で実行されるプログラムの構成が簡単であるという利点がある。しかし、充電を意図的に促進する方法としては他の方法を採用することも自由である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】 第1の実施形態の処理を説明する概略のフロー図である。
【図3】 第2の実施形態の処理を説明する概略のフロー図である。
【図4】 温度変化(dT/dt)とSOCの関係を示すグラフである。
【図5】 積算SOCと実SOCとの時間変化を示す概略のグラフである。
【符号の説明】
10 バッテリ、12 電圧検出器、14 電池ECU、16 温度センサ、18 電流検出器、20 HVECU、22 負荷。
Claims (5)
- 複数の電池ユニットからなるバッテリの当該電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記電池ユニットの異常を検出するバッテリ管理装置であって、
前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、
いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、通常時よりもバッテリ電流を抑制するバッテリ電流抑制手段と、
を有することを特徴とするバッテリ管理装置。 - 複数の電池ユニットからなるバッテリの当該各電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記各電池ユニットの蓄電量を検出するバッテリ管理装置であって、
前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、
いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、故障電圧センサに対応する電池ユニットの蓄電量を、残存する非故障電圧センサについて検出される前記蓄電量に基づいて推定する蓄電量推定手段と、
を有することを特徴とするバッテリ管理装置。 - 複数の電池ユニットからなるバッテリの当該各電池ユニット毎にその起電圧を検出する電圧センサを設け、当該電圧センサにより検出される起電圧に基づいて前記各電池ユニットの異常及び蓄電量を検出するバッテリ管理装置であって、
前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、
いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、通常時よりもバッテリ電流を抑制するバッテリ電流抑制手段と、
いずれかの前記電圧センサの故障が検知された場合に、故障電圧センサに対応する電池ユニットの蓄電量を、残存する非故障電圧センサについて検出される前記蓄電量に基づいて推定する蓄電量推定手段と、
を有することを特徴とするバッテリ管理装置。 - 請求項1又は請求項3に記載のバッテリ管理装置において、
前記バッテリ電流抑制手段は、予め決められた前記バッテリの充放電電力の範囲内で、ジュール熱を抑制するよう、前記バッテリ電流の抑制を行うこと、
を特徴とするバッテリ管理装置。 - バッテリ電流の積算に基づいて積算蓄電量を求める手段と、電圧センサにより検出されるバッテリの起電圧に基づいて前記積算蓄電量を補正する手段とを有するバッテリ管理装置であって、
前記電圧センサの故障を検知する電圧センサ故障検知手段と、
前記電圧センサの故障が検知された場合に、放電量に比べ充電量が多くなるように制御し、前記バッテリの充電状態を満充電に向けてシフトさせる充電促進手段と、
充電時のバッテリ温度に基づいてバッテリの前記満充電を検出する満充電検出手段と、
前記満充電検出手段により満充電を検出した場合に、前記積算蓄電量を満充電状態にリセットする積算蓄電量リセット手段と、
を有することを特徴とするバッテリ管理装置。
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