JP3865189B2 - 自己発電型電気自動車用電池の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己発電型電気自動車用電池の制御方法に関する。本発明は、例えばエンジン駆動発電機や燃料電池などの発電手段とそれらの発生エネルギ−を補完する二次電池とを搭載するハイブリッド車や燃料電池車のように、放電と充電を頻繁に繰り返す電池を使用する自己発電型電気自動車の電池制御に適用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費向上等の目的のため、エンジンと電池によって駆動するモータとを装備するHV(ハイブリッド)自動車が注目を集めている。HV自動車に搭載される電池は、主に、加速時等の高負荷運転時には電池から電力が放出され、減速時や一定速度走行等の低負荷運転時には電池に電力が放電される。したがって、ハイブリッド車の電池では充電及び放電のどちらにでも対応できるように、容量(残存容量)を常に中間状態に維持する必要がある。このような電池制御は、HV車だけでなく、エンジン駆動発電機の代わりに燃料電池により発電する燃料電池車用の補助電池の制御においても必要となる。
【0003】
したがって、自己発電型電気自動車の電池制御では、充放電により容量を常に中間状態に保つ必要があり、そのため容量の現在値を正確に検出する必要がある。従来、電池の容量推定では、通常、電池の充放電電流を累算することによりそれを求めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した電流累算方式は、上記ハイブリッド車などのように充放電を頻繁に繰り返すと徐々に積算誤差が累積するという問題をもち、更に組み電池を構成する各電池間で容量(残存容量)のばらつきが生じ、また各単電池の劣化速度にもばらつきがあるため、一つの単電池が過放電となる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、均等充電や不良単電池の交換などのタイミングの適切な決定を可能とし、一部の単電池の過放電を高精度に回避可能な自己発電型電気自動車用電池の制御方法を提供することをその目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法によれば、
組み電池の累算充放電電流から求めた残存容量又はこの残存容量に関連する量たとえばSOCなどに基づいて充放電制御を行うので、電池電圧などに基づいて放電終止する電池制御に比べて格段に正確に現在の残存容量を推定することができ、ハイブリッド車や燃料電池車のように電池の容量に常に中間容量レベルに維持して、次に充電要請が入力されても、放電要請が入力されても対応できるようにすることができる。
【0007】
また、本構成では、すべての単電池が劣化していないと想定した場合の常用範囲(過放電に対するマ−ジンのため、残存容量が0近傍は常用充放電では用いない)における最小容量値すなわち常用最小容量値の組み電池を所定の基準電流値または基準電力値で放電した場合の放電電圧値である基準放電時常用最小電圧値を設定し、この基準電流値または基準電力値での放電である基準放電における放電電圧がこの基準放電時常用最小電圧値以下となる領域を、単電池が過放電となる可能性がある過放電可能性領域と判定する。
【0008】
このようにすれば、上記残存容量やSOCに基づく充放電制御では判定できない単電池のどれかが上記説明したようななんらかの原因で過放電に落ち入るのを防止することができ、更に各単電池が正常である場合において上記常用容量範囲以上に放電することも防止して正常に放電を終止することができる。
【0009】
更に、本構成では、上記した単電池個別過放電可能性が生じた状態を判定するための基準放電時常用最小電圧値を、基準電流値または基準電力値での放電である基準放電により求めている。
【0010】
このようにすれば、電池の種々の放電状態における電池の電池内部抵抗による電圧降下の影響を排除して、正確に電池の状態を判定することができる。
【0011】
以下、更に詳しく説明する。
【0012】
本発明者らは、組電池中の単電池が0V以下に達して過放電状態に陥ると、組み電池の残存容量と無関係に組電池の上記基準放電換算の電圧が所定の一定電圧以下に急激に降下するということを見出した。
【0013】
これは、単電池が基準電力放電条件又は基準電流放電条件下において容量0近傍で急激な電圧垂下特性をもつためである。
【0014】
したがって、この組み電池をこの基準電流値または基準電力値での放電である基準放電において一個の単電池が過放電となる組み電池電圧の値又はその近傍の値を、基準放電時常用最小電圧値とし、この基準放電時常用最小電圧値以上の放電を停止すれば、単電池の過放電を防止乃至抑止することができる。
【0015】
なお、ここでいう「常用最小容量値」とは、すべての単電池が容量劣化、容量ばらつきがない電池セット(組み電池又は電池モジュ−ル)を、各単電池が過放電とならない範囲で放電させる場合の最小容量値を意味し、正常な単電池のみからなる電池セットの容量が0の点に所定の余裕容量値をマ−ジンとして加えた値を意味する。
【0016】
したがって、本構成によれば、各単電池の容量ばらつきが小さい場合には、この基準放電時常用最小電圧値は、各単電池の残存容量が0に近い所定の容量値の組み電池の電圧、すなわち各単電池の容量0近傍の上記急激な電圧垂下特性の始まりの部分となる。その結果、本構成によれば、SOC制御における常用容量範囲をいたずらに狭めることなく、単電池の過放電を回避することができるという効果を奏することができる。
【0017】
請求項2記載の構成によれば請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、組み電池の放電が過放電可能性領域に入った場合に放電の停止又は制限を行うので、単電池が過放電となるのを阻止することができる。
【0018】
請求項3記載の構成によれば請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、上記基準放電は、基準電力値での放電とされるので、基準電力放電状態(たとえば、常用最大放電電力状態)での残存容量減少による正常な放電終止及び単電池過放電防止のための早期の放電終止の両方を過放電が生じ易い大電力放電時に正確に実施することができる。
【0019】
請求項4記載の構成によれば請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、常用最小容量値は、組み電池の供用初期時における上記基準放電により求めた初期容量値の5〜20%の範囲に設定されるので、常用容量範囲を狭めることなく、また、組み電池の経時的劣化にかかわらず、正常に過放電を回避することができる。
【0020】
請求項5記載の構成によれば請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、組み電池の前記過放電可能性領域に入った時点の前記SOC又は電気量に基づいて組電池の各前記単電池間の容量ばらつきの大きさを推定するので、正確に一部の単電池の容量の異常減少を検出することができる。
【0021】
請求項6記載の構成によれば請求項5記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、上記判定結果に基づいて一部の単電池の過放電と判定した場合に均等充電を指令するので、無駄なくかつ適切に単電池間の容量ばらつきを低減することができる。
【0022】
請求項7記載の構成によれば請求項6記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において更に、放電電圧が前記基準放電時常用最小電圧値となる場合の放電可能出力を演算し、放電可能出力の範囲に放電出力の制限を指令するので、基準放電時すなわち大放電電流でSOCが過放電可能性領域に入ったとしても、電流制限により電池の内部抵抗電圧降下を減らして過放電可能性領域外で、すなわち単電池を過放電させることなく放電を持続することができる。
【0023】
請求項8記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法によれば、組み電池の累算充放電電流から求めた残存容量又はこの残存容量に関連する量たとえばSOCなどに基づいて充放電制御を行うので、電池電圧などに基づいて放電禁止する電池制御に比べて格段に格段に正確に現在の残存容量を推定することができ、ハイブリッド車や燃料電池車のように電池の容量に常に中間容量レベルに維持して、次に充電要請が入力されても、放電要請が入力されても対応できるようにすることができる。
【0024】
また、本構成では、すべての単電池が劣化していないと想定した場合の常用範囲(過放電に対するマ−ジンのため、残存容量が0近傍は常用充放電では用いない)における最小容量値すなわち常用最小容量値の組み電池を所定の基準電流値または基準電力値で放電した場合の放電電圧値である基準放電時常用最小電圧値を設定し、この放電可能出力範囲に放電出力を制限する指令を発する。
【0025】
このようにすれば、上記残存容量やSOCに基づく充放電制御では判定できない単電池のどれかが上記説明したようななんらかの原因で過放電に落ち入るのを防止することができ、更に各単電池が正常である場合において上記常用容量範囲以上に放電することも防止して正常に放電を終止することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の自己発電型電気自動車用電池の制御方法の好適例を図面を参照して以下に説明する。
【0027】
【実施例1】
実施例1のハイブリッド車用電池の制御方法を以下に説明する。
(全体構成)
図1はパラレルハイブリッド車の全体構成を示し、11はエンジン、12は発電機、13はインバ−タ、14は電池パック(本発明で言う電池)、15はトルク分配機、16はモ−タ、17は減速用のギヤ18は車輪である。
【0028】
発電機12は、エンジン11の駆動力の一部で発電し、インバータ13は、発電機12の発電出力を電池パック14やモ−タ16に給電する。エンジン11の出力は、トルク分配機15で車輪駆動動力と発電機12駆動動力に分配され、モ−タ16は電池パック14又は発電機12からの電力を走行動力に変換し、制動時には車輪からの駆動力を電力に変換して電池14に回生する。
(電池回路構成)
電池パック14及びその関連回路を図2に示す。
【0029】
22は複数の単電池からなる電池モジュールであり、各電池モジュ−ルを縦続接続して組み電池が構成されている。23は温度センサ、24は各電池モジュール22の電圧を検出する電圧検出回路である。25は電池の温度を検出する温度検出回路、26は組み電池の充放電電流を検出する電池電流検出回路、27は各電池モジュ−ル22の電圧を加算してから組み電池の電圧を検出するとともに、電圧検出回路24、温度検出回路25、電流検出回路26の信号に基づいて電池パック14の容量を検出し、電池パック14の充放電制御用のデ−タ(SOC量など)を外部に出力する。
【0030】
なお、電圧検出回路24及び温度検出回路25は、単電池個々にとりつけた方がばらつきに対応した制御が可能で望ましいが、コストダウンなどの目的から、通常複数個の単電池に1個の割合で取りつけられることが一般的である。
(電池特性)
電池パック14として用いたニッケル水素電池の電池特性を以下に説明する。
【0031】
図3は、ニッケル水素電池を搭載したハイブリッド自動車を走行している時に測定した、単電池1個当たりの電流,電圧分布である。このデータは電池容量がほぼ満充電状態から放電できなくなるまでの全てのデータが含まれている。
【0032】
図3中、曲線Lは、所定の定電力(電圧×電流=一定)である基準電力(ここでは常用最大電力とする)での放電特性を示す曲線である。この基準電力は、電池パック14を単電池240個を縦続接続して構成した場合における最大電力(21kW)すなわち本発明でいう基準電力での放電における電圧−電流特性を単電池当たりに換算して示したものである。
【0033】
直線31、32は、それぞれ電池容量が満充電状態の時と、ほぼ完全放電状態の電流−電圧特性を示したものである。したがって、図3中、V_maxとV_minとは曲線Lと直線31、32との交点の電圧値である。
【0034】
次に、図3に示す電流−電圧特性を示す直線と定電力曲線Lとの交点の電圧値と電池容量との関係を図4に示す。図4において、41はSOC(この実施例では残存容量/定格容量×100を意味する)100%の状態から放電傾向にあるときに測定した電圧特性、42は完全放電に近い状態から充電傾向にあるときに測定した電圧特性である。41と42の特性は大きくずれており、放電傾向と充電傾向の特性との間には大きなヒステリシスが生じていることがわかる。
【0035】
43はSOC80%の座標P_Hi点からSOC40%の座標P_Lo点まで放電傾向にしたときの電圧特性、44はSOC40%の座標P_Lo点からSOC80%の座標P_Hi点まで充電傾向にしたときの電圧特性である。43と44の特性で囲まれたヒステリシスは、41と42に囲まれたヒステリシスに対して、小さくなっていることがわかる。
【0036】
VMは、特性43,44に囲まれた領域の面積的な中心点(ここでは、V_maxとV_minとを合計して2で割った平均電圧値)とSOC60%のラインとが交差する点の電圧点である。すなわち、容量が80から40%、或いは一セル当たりの電圧がV_HiからV_Loの間で充放電制限して電池を使用している場合、上記定電力で放電しているときの電圧がVMであれば容量60%±約10%の範囲内にあることがわかる。
【0037】
図4に示す曲線43、44で囲まれるヒステリシス特性について、更に詳細に調べた結果を図5に示す。
【0038】
図5は、充放電を繰り返しながら基準電力で充放電した場合の電圧変化を測定したものである。
【0039】
SOC40%時の点P_Loから充放電を開始し、SOC80%の点P_Hi、点P1、点P2、点P3と座標が推移する場合、座標は特性44、特性43、特性61、特性62の軌跡をたどることがわかった。すなわち、SOC80〜40%の範囲で容量を活用している条件下では、ヒステリシス特性44、43で囲まれた範囲内で軌跡が必ず推移すことがわかる。
【0040】
つまり、座標P1から充電する時は、特性61上を座標P_Hi点に向かって推移し、座標P2で放電に転じると、特性62上を座標P1点に向かって推移することがわかる。これは、ニッケル水素電池に限らず、充電可能な2次電池全てに共通する特徴で、分極現象と呼ばれている。
【0041】
ここで、電圧VMをヒステリシス特性44、43の面積的な中心近傍に位置するように適当に選択し、ハイブリッド車の走行中の21kW定電力放電電圧(基準放電電圧)がVMになるように発電器12をコントロールすると、SOC60±20%の範囲で電池のSOC制御を行えば、SOC(容量)は60%に良好に収束していくことがわかる。
【0042】
なお、上記したSOC制御は、SOC80〜40%の範囲でのみ電池容量を利用するという意味では決してない。車両の走行条件による充放電要請により上記範囲を超えて充放電することもでき、この場合は、たとえば図5において充電特性線44に沿ってP_Hi、P1、P2、P3の順に充放電するなどして再度、動作点(座標)を元の動作領域に復帰させる復帰処理を行えばよい。
【0043】
また、本実施例では、最大放電電力として21kW放電時の電圧特性を例にしたが、電流が0A時の開放電圧,或いは所定電流放電時の特性上でも同様の結果となる。
【0044】
更に、この実施例では基準電力放電条件(21KW放電条件)での放電電圧−SOC特性を用いたが、常用最大電流値などの基準電流放電条件での放電電圧−SOC特性を用いて上述のSOC制御を行ってもよい。
(SOC演算)
図6は、上記電池容量制御を示すフロ−チャ−トを示す。
【0045】
まず、601にて電圧VB,電流IBと温度TBとからなるデ−タのセットを多数取得し、602にて電池の内部抵抗を想定したオ−ムの法則にて21kW定電力放電電圧VBwを最小二乗法などで算出する。VBoは電池の開放電圧である。VBは検出したモジュール電圧を電池モジュ−ルを構成する単電池数で割って求めた値であり、VBw、VBoも単電池単位で演算する。
【0046】
VBo=VB+Rk×IB
VBw=VBo+(VBo2 −4×Rk×α)0.5
αは定電力で、21kWを電池パック内の総単電池数で割って、単電池当たりの電力に直したものである。
【0047】
次に、603にて検出した電流を積算して残存容量を求め、更にSOCを算出する。
【0048】
残存容量=初期容量+ΣI・dt
SOC=残存容量/定格容量×100(%)
なお、本実施例では、SOCを60%に収束させるように、記述しない充放電制御により制御しているものとする。
【0049】
次に、603にて算出したSOCが60%に近い状態かどうかを604にて調べ、そうでなければSOC誤差修正には不適当と判断して607に進み、60%に近い状態であれば、606にて現在の定電力放電電圧VBwと予め設定された設定電圧VMとを比較する。
【0050】
その結果、VBw>VMの場合、603にて算出したSOCのプラス方向の容量累算誤差が発生したと考え、上式の残存容量を両者の差だけ減少させ、SOCを下方修正する。VBw<VMの場合は、その逆の修正を行う。たとえば、記述しない充放電制御装置がSOCを例えば50%に制御しているときは、設定電圧をSOC50%相当の電圧にすると共に、603にて算出したSOCが50%に近い状態で電圧放電電圧VBwと予め設定された設定電圧VMを比較すればよい。
【0051】
607では、603で算出した又は606で累算誤差補正したSOCを記述していない外部の発電制御装置に出力し、発電制御装置がSOC60%へ収束させるための制御を可能にする。
【0052】
本システムでは、電池のヒステリシス特性が小さい鉛電池等は、電池容量の使用範囲を限定することなく目標とする容量を維持することが可能である。また、電圧VMは電池容量を維持したい容量に対して設定することで、維持する容量を本実施例の60%ではなく任意の容量に変更することが可能である。さらに、電圧VMを決定する際には、車両の要求する電力に応じて所定電力(本発明でいう基準基準電力値、本実施例は21kW)を決定すれば良く、例えば開放電圧特性や、ある定められた所定電流放電時(本発明で言う基準電流放電条件時)の電圧特性から導いても問題はない。また、上記特性を各温度ごとに求めて現在の温度に相当する上記特性からこの温度におけるSOCをもとめてもよく、一層高精度にSOCを求めることができる。
【0053】
図7(a)、図7(b)、図7(c)は、上述したSOC60%収束制御を行う装置をハイブリッド自動車に組み込んで走行した場合の実測データを示す。図7(a)は走行時に電池パック14に流れた電力、図7(b)は走行中のSOCの推移を示したもので、図7(b)中、721はSOC検出値、722は予め容量を測定した後に電流の積算によって求めた真値である。本発明の電池容量検出誤差は±4%程度で、高精度にSOCが60%に制御されていることがわかる。
【0054】
また、図7(c)は電圧VM731に対する、21kW定電力放電電圧732(単電池当たりに換算)のすれを示したものである。図7(b)のSOC検出値721は、21kW定電力放電電圧732が電圧VM731以上か否かで誤差修正するようにしているため、SOC検出値が制御目標値であるSOC60%付近にあるときは、21kW定電力放電電圧732と電圧VM31が良く一致していることがわかる。
(単電池間の容量ばらつきによる単電池過放電の発生現象とその回避方法の説明)
次に、電池パック14を構成する個々の単電池の容量がばらついた場合の影響について説明する。
【0055】
多数の単電池からなる組電池を制御する場合、個々の電池容量のばらつきは充放電時間が増加するにつれて増大する。この容量ばらつきが発生すると、各単電池のどれかが早期に過放電されたり逆に過充電される可能性が生じる。上記SOC一定値収束制御で組み電池を運転する場合に不可避的に生じるこの問題を解決するには、個々の単電池それぞれに電圧センサを搭載し、個々の単電池ごとに上記SOC制御を行えばよい。しかし、このような回路構成は極めて複雑となるので、図2に示すように複数の単電池を1セットとして電池モジュール22を形成し、各モジュール22(又は組み電池全体)に対して1つの電圧センサを設置し、各モジュ−ルごとに又は組み電池全体ごとにSOCを求め、求めたSOCのうちの最小値を基準に放電制御したり、最大値を基準に充電制御することが得策である。
【0056】
この場合、個々の単電池ごとにSOCを求めないため、単電池のSOCとモジュ−ルのSOCとの間のばらつきによる単電池の過放電を回避することが上記SOC制御では特に重要となる。
【0057】
なお、ここでいう過放電状態とは、複数の電池が直列の接続された状態で、少なくとも1つの単電池が開放電池電圧が0V以下まで垂下した状態を意味するものとする。
【0058】
単電池の過放電防止対策について図8を参照して更に説明する。
【0059】
モジュール22内の単電池が過放電をおこしやすいのは、より大きな電力で放電しているときである。通常、電池容量が少なくなると、小電力で放電している時の単電池電圧はまだある程度高くても、大電力で放電すると急激な電圧降下によって電圧が0Vまで達して過放電を起こすようになることが知られている。
【0060】
図8(a)は、本実施例で用いる単電池総数240個の組み電池を搭載したハイブリッド車で最大放電電力21kWで放電した時の単電池のSOC−放電電圧特性を示す。図中、Aは初期放電特性を示し、図中、Bは容量が約30%低下したときの放電特性を示す。
【0061】
図8(b)は図8(a)の特性A、Bの単電池を24個組み合わせて構成したモジュ−ル22の放電特性を示す。図中、Cは電池Aだけを24個接続したもので容量ばらつきがない状態の放電特性を示し、Dは特性Aの単電池23個と特性Bの単電池1個とを直列接続したモジュ−ル22の放電特性すなわち容量がばらついたモジュール22の放電特性を示す。
【0062】
SOC100%から放電していくと、容量ばらつきがない図8(b)のモジュールの電圧特性Cに対して、容量ばらつきが存在するモジュールの電圧特性Dは、SOC40%近傍で急激な電圧降下を生じることがわかる。この時、直列24個の組電池電圧が、図8(b)のP点の電圧VP(本発明でいう基準放電時常用最小電圧値)に達するとき、容量が30%ばらついていたモジュ−ルの上記一つの単電池の電圧は、K点の電圧即ち0V以下に到達していることがわかる。図8(b)のQ点は本発明でいう常用最小容量値に相当する。
【0063】
しかし、基準電力(ここでは最大電力)で放電している時のモジュール電圧がP点の電圧Vp以下となったとしても、放電電流を制限して電池の内部抵抗電圧降下を減らせば電池の放電電圧をVp(基準放電時常用最小電圧値)以上に維持して過放電を防止することができ、更に、容量ばらつきが存在しない場合にはSOC20%未満、すなわち本発明でいう基準放電時常用最小容量値より更に深くまで過放電を生じることなく放電を行うことが可能となることがわかる。このことは、一つの単電池の容量ばらつきが30%以外の値をとる場合でもほとんど同じである。
【0064】
ここで、30%の容量ばらつきをもつモジュ−ルの放電電圧が基準放電時(最大電力21kWで放電したとき)VPに達するのは、図8(b)から約SOC40%の時であり、上述したSOC60%にSOCを収束させる制御を行う場合、SOC20%以上放電することが不可能となってしまう。即ち、電池容量のばらつきが大きくなると、放電できる容量が小さくなる。
【0065】
つまり、大放電電流が流れる最大電力21kW放電時に電圧VP以下で放電することは過放電の危険があるが、もっと小さい電力で放電する場合には上述したように単電池の過放電が生じることがないはずである。
【0066】
そこで、この実施例では、21kW放電時の電圧がVP以下になる場合には、放電電流を規制して電池の内部抵抗電圧降下を減少させ、放電電圧VPにならない電力で放電を行う。
【0067】
つまり、電圧VPに至るまでは、最大の電力で放電しても30%容量ばらつきに対しても過放電することが無く、電圧VP以下で電圧VPより小さい所定の絶対放電終止電圧(小電流放電も停止するべき電圧)VOまでは放電電力を制限しつつ放電する。なお、この絶対放電終止電圧VOは、基準電力(ここでは最大電力)で放電する場合においてもはや放電不能(たとえば放電電流及び放電電力0)になる電圧値に設定することができる。
【0068】
上記の放電制限制御を実施しない場合の放電傾向走行時の実施結果を図9に示し、上記の放電制限制御を実施した場合の放電傾向走行時の実施結果を図10に示し、この放電制限制御のフロ−チャ−トを図11に示す。
【0069】
図9は、車両走行中に、容量が30%低下した単電池を一個含み、合計24個の単電池からなるモジュールの走行中の電圧変化を測定したものである。図中、9Aはモジュール電圧を単電池電圧に換算したものであって、電池24個の平均値で示したものである。また、9Bは30%容量低下していた単電池の電圧を示し、9Cはモジュールの平均SOCを示す。なお、放電制限制御は、モジュール電圧、つまり9Aの電圧で制御している。
【0070】
図9からわかるように、モジュール電圧9Aは十分に高い電圧を維持しているため放電を継続しているが、容量が低下している単電池の電圧9Bは、SOCが減少すると0V以下にまで低下し、過放電となっていることがわかる。さらに、平均SOC9Cも10%程度まで低下しており、30%容量低下していた単電池は20%だけ過放電している状態になったことがわかる。
【0071】
図10(b)は、同じ走行条件で上述した放電制限制御を行った結果を示す。図10(b)において、10A、10Bは、それぞれ24個の単電池からなるモジュール電圧を単電池数で割った平均値と、30%容量低下単電池の電圧である。図10(b)から、モジュール電圧を検出し、後述する放電制限制御を行うことにより容量が30%低下した単電池の電圧10Bが過放電するのを最小限に抑制できることがわかる。
【0072】
なお、図10(a)は、走行中の組電池(単電池240個)全体の放電電力を示したものである。図中、101は放電許容値を示し、前記したモジュール電圧がVP以下にならないように放電できる電力を算出したものである。
【0073】
この放電制限制御は、基準放電時のモジュール電圧がVP以下にならないように放電電力を許容値101以下に制限している制御するので、図10(b)に示すような過放電防止効果を実現することができる。この過放電防止放電制御を、図11に示すフローチャ−トを参照して以下に説明する。
(SOC算出)
まず、601〜607では図6にて既に説明したSOCの算出を行う。ただし、605では前述の式を用いて内部抵抗RKを算出し、607にてSOCを算出し、走行データ(電圧、電流、温度)を取得する。
(放電電力制限)
1108においては、図12に示すように、電圧VB、電流IBの走行データ(座標P点)と、605にて算出した単電池の内部抵抗Rkを用いて、予め定められた電圧VP(本発明でいう基準放電時常用最小電圧値)で放電する場合の放電電力即ち電池の許容放電電力値Woutと電流IBとの関係(等電力曲線)を次式によって算出する。
【0074】
Wout=((VBo−VP)/Rk)・VP
VBo=VB+Rk+IB
次に、1109にて、21kW放電時の単電池電圧VBwが単電池当たりの放電終止電圧VO(ここでは単電池1個当たり平均0.9Vに設定)以下かどうかを調べる。VBがVO未満であれば、図8(b)からわかるように、これ以上放電しても21kW放電電圧VBは極めて急激に低下してしまうため、既に放電限界点に達していると判断し、1110でWoutを0(W)に設定する。
【0075】
その後、1113にて求めた放電電力許容値Woutを図示しない外部の充放電制御装置に送信する。したがって、図示しない外部の充放電装置が放電許容値Wout以下の電力で放電を制御していれば、モジュール電圧は単電池当たりVP以下になることはない。すなわち、単電池が0V以下となる過放電を起こすことはない。
【0076】
また、さらにSOCを目標値60%に制御するように充電をコントロ−ルしていれば、市街地など大きな負荷が連続して必要でない状況下では、通常60%付近で制御される。
(容量ばらつきの低減)
単電池間の容量ばらつきが大きくなると、1109でVBw<VP(或いはVO)となるSOCが大きくなる。図8(b)では、電池容量がばらついていない状況では点Q(点O)のSOC20%付近では条件が満たされるのに対し、約30%の容量ばらつきが生じると、点P(点O’)のSOC40%付近で条件が満たされるようになる。すなわち、容量ばらつきが大きくなってくると、VP或いはVOに達するときのSOCすなわち組み電池の残存容量が大きくなることになる。
【0077】
そこで、1111では、所定電力放電時の電圧がSOC40%以上であるにもかかわらず電圧VP或いは電圧VOに達した場合、モジュール内の単電池容量のばらつきが大きいと判断して、ばらつきを抑制するために1112にて均等充電を要求する。この後、均等充電がなされると、各単電池はゆっくり充電され、各単電池間の容量ばらつきが小さくなる。
【0078】
1114にて走行が終了した場合、1115にて各種演算パラメータを図示しない記憶装置に記録して、次回走行時に備える。
【0079】
なお、電圧がVPあるいはVOに達した時のSOCと、容量ばらつきがないとみなせる初期時において電圧がVP又はVOに達した時のSOCとを比較することにより、容量ばらつきの大きさを推定することができる。
(変形態様)
1110にて放電終止を要求した時点のSOC値を記憶しておき、その後の放電における組み電池の最小容量値として利用することができる。たとえば、この最小容量値SOCmin%と満充電容量値SOC100%との中間値にSOC一定収束制御の目標SOCを定めることにより、組み電池の充電側容量変化幅と放電側容量変化幅とを等しくし、放電可能容量と充電可能容量とのアンバランスを低減することができる。
(変形態様)
上記した図11に示す制御例では、放電電力は1108にて自動的に放電出力を制限するため、基準放電時放電電圧が基準放電時常用最小電圧値VPに達したかどうかの判定は行わないが、放電出力Woutが100%未満(実施例では21KW)となる点の基準放電時常用最小電圧値に等しくなっている。
【0080】
なお、放電電圧が基準放電時常用最小電圧値VPに達したかどうかを検出し、達しない場合は1108の放電可能出力の算出を省略して最大出力21KWをWoutとし、達したら1108でVPにおける放電可能電力Woutを算出し、このWout以下に放電を制限してもよく、これら2つの制御方法は実質的に同じであることは明白である。
【0081】
この変形制御例を図14に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に用いるパラレルハイブリッド車の全体構成を示すブロック図である。
【図2】電池パック及びその関連回路を示すブロック回路図である。
【図3】ニッケル水素電池を搭載したハイブリッド自動車を走行している時に測定した、単電池1個当たりの電流,電圧分布を示す特性図である。
【図4】電流,電圧特性と定電力L曲線の交点の電圧と電池容量の関係を示す特性図である。
【図5】充放電を繰り返しながら基準電力で充放電した場合の電圧変化を示す電圧変化特性図である。
【図6】電池容量を求める処理を示すフロ−チャ−トである。
【図7】(a)SOC制御をハイブリッド自動車に組み込んで走行した場合の実測データを示す図である。
(b)SOC制御をハイブリッド自動車に組み込んで走行した場合の実測データを示す図である。
(c)SOC制御をハイブリッド自動車に組み込んで走行した場合の実測データを示す図である。
【図8】(a)電池総数240個のハイブリッド車で最大放電電力21kWで充電した時の放電電圧特性を示す特性図である。
(b)図2に示す電池モジュールに含まれる電池数を24個としたときのモジュール電圧の変化を示す電圧変化特性図である。
【図9】車両走行中に容量が30%低下した単電池を一個含み、合計24個の単電池からなるモジュールの電圧の変化を示す電圧変化特性図(放電規制なし)である。
【図10】(a)走行中の組電池(単電池240個)全体の放電電力とモジュール電圧がVP以下にならないように放電できる電力の変化を示す電圧変化特性図である。
(b)車両走行中に容量が30%低下した単電池を一個含み、合計24個の単電池からなるモジュールの電圧の変化を示す電圧変化特性図(放電規制あり)である。
【図11】実施例1の放電規制技術を示すフローチャ−トである。
【図12】基準放電時常用最小電圧値VPでの放電可能出力を算出する方法を示す特性図である。
【図13】変形例を示すフロ−チャ−トである。
Claims (8)
- 直列接続された複数個の単電池により構成されて車両に搭載されて走行動力に変換する電力を蓄電する組み電池の残存容量を推定し、前記残存容量又は前記残存容量に関連する量に基づいて前記電池の充放電を制御する自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
測定した組み電池又は直列接続された所定数の電池モジュ−ルの測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における前記組み電池又は電池モジュ−ルの放電電圧である基準放電時電圧を演算し、
前記基準電流値または所定の基準電力値での放電である基準放電における所定の常用最小容量値に対応する前記組み電池又は電池モジュ−ルの電圧を基準放電時常用最小電圧値として設定し、
前記基準放電時電圧値が前記基準放電時常用最小電圧値未満を過放電可能性領域と判定することを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
前記組み電池又は電池モジュ−ルの放電が前記過放電可能性領域に入った場合に放電の停止又は制限を要求することを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
前記基準放電は、前記基準電力値での放電であることを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
前記常用最小容量値は、組み電池又は電池モジュ−ルの供用初期時における前記基準放電により求めた初期容量値の5〜20%の範囲に設定されることを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
前記組み電池の前記過放電可能性領域に入った時点の前記SOC又は電気量に基づいて組電池の各前記単電池間の容量ばらつきの大きさを推定することを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項5記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
前記一部の単電池の過放電と判定した場合に、均等充電を指令することを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 請求項1記載の自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
放電電圧が前記基準放電時常用最小電圧値となる場合の放電可能出力を演算し、前記放電可能出力の範囲に放電出力の制限を指令することを特徴とする自己発電型電気自動車用電池の制御方法。 - 直列接続された複数個の単電池により構成されて車両に搭載されて走行動力に変換する電力を蓄電する組み電池の残存容量を推定し、前記残存容量又は前記残存容量に関連する量に基づいて前記電池の充放電を制御する自己発電型電気自動車用電池の制御方法において、
測定した組み電池又は直列接続された所定数の電池モジュ−ルの測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における前記組み電池又は電池モジュ−ルの放電電圧である基準放電時電圧を演算し、
前記基準電流値または所定の基準電力値での放電である基準放電における所定の常用最小容量値に対応する前記組み電池又は電池モジュ−ルの電圧を基準放電時常用最小電圧値として設定し、
放電電圧が前記基準放電時常用最小電圧値となる場合の放電可能出力を演算し、前記放電可能出力の範囲に放電出力の制限を指令することを特徴とする自己発電型電機自動車の方法。
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