JP3658810B2 - ポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃用マスターバッチよりなる、優れた表面外観と、ムラがなく均一で高い難燃性という相反する2つの特性を同時に達成したポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテル樹脂は耐熱性、電気特性、耐酸性、耐アルカリ性等に優れ、しかも低比重、低吸水性である等の優れた特性を有する樹脂であるため、例えば工業部品、電気・電子部品、事務機器、ハウジング、自動車部品、精密部品などの各種用途に実用化されている。また、ポリフェニレンエーテル樹脂は、その利用分野の多くで材料に難燃性が要求され、リン酸エステル化合物を添加する事により容易に難燃化する事ができるため、非ハロゲン難燃材料として注目されている樹脂である。トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル化合物はポリフェニレンエーテル樹脂で最も一般的に用いられている難燃剤であり、難燃性の改良と共に樹脂に可塑性を付与し流動性、成形加工性を高める働きを持つ事が知られている。
【0003】
しかし、一方でこれらリン酸エステル化合物は、加工時に難燃剤に起因する発煙・揮発・ブリードアウトや難燃剤の加水分解による成形片の膨れ等を引き起こすという欠点がある。この欠点を改良するために、各種非ハロゲン熱可塑性樹脂の難燃剤に、揮発性や耐加水分解性に優れた特定のリン酸エステル化合物を用いる技術が特開平7−53876号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近の自動車分野やOA機器分野での高耐熱・軽量化や難燃化の傾向とともに、難燃剤の少量添加で、難燃性のムラがなく均一で高い難燃性と、優れた表面外観という相反する特性を同時に有するフィルムやシート材料の要求が高まっている。
【0005】
しかし、上記した従来の技術の組成物からなるフィルム又はシートでは、ムラがなく均一で高い難燃性を有するフィルムやシートを得るためには難燃剤を多量に添加する必要があり、そのためにダイス口でのスリップ現象等が発生しフィルムやシート表面に縞模様状のスリップ痕が生じ表面外観が極度に悪化する。また、優れた表面外観を有するフィルムやシートを得るために難燃剤添加量を少量に抑えると、難燃剤がフィルムやシート中に均一に分散せず同一フィルム、同一シート中においてさえも、難燃性の高い部分と低い部分が混在するようになり難燃性のムラが生じる。
【0006】
このように、優れた表面外観と、ムラがなく均一で高い難燃性という相反する特性を同時に併せもつポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートを得る事は非常に困難な事であった。
本発明の課題は、上記したように従来の技術で達成することのできなかった優れた表面外観と、ムラがなく均一で高い難燃性という互いに相反する特性を同時に満足させるポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、難燃用マスターバッチの混合物からなるポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートが上記目的を同時に達成する事を見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)成分としてのポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部と、(B)成分としてポリフェニレンエーテル樹脂または、ポリスチレン系樹脂、または、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の混合物100重量部に対して、一般式(I)、
【0009】
【化2】
Figure 0003658810
【0010】
(ここで、Q1 、Q2 、Q3 、Q4 は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1 、R2 はメチル基を、R3 、R4 は独立にメチル基または水素を表す。nは1以上の整数を表す。n1 、n2 は独立に0から2の整数を表す。m1 、m2 、m3 、m4 は、独立に0から3の整数を示す。)
で表されるリン酸エステル化合物5〜60重量部を配合し、あらかじめ溶融混練することにより得られる難燃用マスターバッチ1〜60重量部とを溶融混練する事を特徴とするポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法を提供するものであり、又、上記の(A)成分と(B)成分と、それらに加えて(C)成分としての芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体および、またはその水素添加物を、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.1〜15重量部配合する事を特徴とするポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法を提供するものであり、且つ、上記製造方法で得られた樹脂組成物を用いるポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明の(A)成分及び(B)成分中で用いる事のできるポリフェニレンエーテル樹脂とは、一般式(II−1)及び/又は(II−2)で表される繰り返し単位を有する単独重合体あるいは共重合体である。
【0012】
【化3】
Figure 0003658810
【0013】
(ここで、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10は、独立に炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素を表す。但し、R9 、R10は、同時に水素ではない。)
【0014】
ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0015】
ポリフェニレンエーテル共重合体とは、フェニレンエーテル構造を主単量単位とする共重合体である。その例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールあるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0016】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特開平1−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。
【0017】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
さらに、例えば特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されている、炭素−炭素二重結合を持つ化合物により変性されたポリフェニレンエーテルも含まれる。
【0018】
本発明に用いるポリフェニレンエーテル系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特公平5−13966号公報に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0019】
本発明の(A)成分及び(B)成分中で用いる事のできるポリスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、スチレン系化合物と共重合可能な化合物をゴム質重合体存在下または非存在下に重合して得られる重合体である。
【0020】
スチレン系化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−アミノスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、これら混合物であっても構わない。
【0021】
また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類、無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物とともに併用しても構わない。
【0022】
また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴム、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物のコポリマーまたはその水素添加物、あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が挙げられ、これら混合物でも良い。
【0023】
さらに、共役ジエン系ゴムとしては、例えば、無機支持体に吸着したクロム化合物、又は有機金属化合物(例えばトリアルキルアルミニウム)と遷移金属化合物(例えばハロゲニド、特に塩化チタン、ヨウ化チタンまたはリチウムハロゲニド)との反応生成物を含む触媒を用い、不活性炭化水素溶液中でブタジエンを立体規則性重合によって製造される、1,4−シス結合を少なくとも50重量%以上、1,2−ビニル結合を10重量%以下としたものを用いても構わない。また、共役ジエン系ゴムを水素添加して、不飽和結合を減少させた部分水素添加共役ジエン系ゴムを用いても構わない。
【0024】
また、さらにゴムに封入されたポリスチレンの粒子がポリスチレン樹脂のマトリックス中に分散されたコア−シェル型の耐衝撃ポリスチレン樹脂も本発明に好適に使用する事ができる。もちろんこれら共役ジエン系ゴムは2種以上の混合物であっても良い。
【0025】
本発明のスチレン系樹脂の製造方法は限定されるものではなく、当業者に良く知られている塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれを用いても良い。
本発明の(B)成分中で用いられるリン酸エステル化合物は、一般式(I)、
【0026】
【化4】
Figure 0003658810
【0027】
(ここで、Q1 、Q2 、Q3 、Q4 は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1 、R2 はメチル基を、R3 、R4 は独立にメチル基または水素を表す。nは1以上の整数を表す。n1 、n2 は独立に0から2の整数を表す。m1 、m2 、m3 、m4 は、独立に0から3の整数を示す。)
【0028】
一般式(I)においてn1 、n2 が0で、R3 、R4 がメチル基であることが好ましい。
また、一般式(I)においてm1 、m2 、m3 、m4 が0である、つまり、末端のフェニル基へのアルキル基の置換がないか、またはQ1 、Q2 、Q3 、Q4 が、メチル基である、つまり末端フェニル基へのメチル基が置換されている場合が最も好ましい。
一般式(I)におけるnは1以上の整数であり、その好ましいnの範囲は1〜10である。また(B)成分中のリン酸エステル化合物はn量体の混合物であってもかまわない。
【0029】
本発明の(B)成分中のリン酸エステル化合物は、特定の二官能フェノールによる結合構造と、特定の単官能フェノールによる末端構造を有する。
二官能フェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称ビスフェノールA〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビスフェノール類が挙げられ、その中でもビスフェノールAが好ましい。
【0030】
単官能フェノールとしては、無置換フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール、トリアルキルフェノールを単独又は2種以上の混合物として使用できる。特にフェノール、クレゾール、ジメチルフェノール(混合キシレノール)、2,6−ジメチルフェノール、トリメチルフェノールが好ましい。
【0031】
(B)成分中のリン酸エステル化合物は、上記の二官能フェノール類と単官能フェノール類をオキシ塩化リンと反応させることにより得ることができる。
【0032】
本発明で用いる(B)成分中のリン酸エステルは、発明の効果を損なわない範囲で一般的に用いられる他のリン酸エステル類、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物などを含有していてもよい。もちろん、これら混合物を含有していても良い。
【0033】
本発明のリン酸エステル化合物は、揮発性が低く熱安定性に優れる。例えばトリフェニルホスフェートに代表される低分子量のリン酸エステル化合物では、フィルムやシート成形時にリン酸エステル化合物が揮発し、フィルムやシートの表面を荒れさせ、表面外観が悪くなるといった問題が生じる。また、ポリリン酸エステル化合物の中であっても熱安定性の低いものは、ポリフェニレンエーテル系樹脂と反応してゲル化と呼ばれる一種の架橋反応を起こす事がある。フィルムやシートの良好な表面外観は、本願のリン酸エステル化合物をもって初めて達成する事が可能となる。
【0034】
本発明における(C)成分として使用することのできる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体および、またはその水素添加物の中の、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体とは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体である。
【0035】
共役ジエン化合物の具体例としては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンが挙げられ、これらは2種類以上併用しても良い。これらの中でも1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、さらには1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0036】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、及びクロロスチレンがあり、またこれら2種以上の併用も可能である。これらの中でスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエンが好ましく、スチレンが中でも好ましい。
【0037】
またこれらの不飽和化合物を共重合して得られる共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体は共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合物=5〜95/95〜5重量%の範囲で得られるものであり、好ましくは共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合物=60〜95/40〜5重量%、更に好ましくは40〜95/60〜5重量%の範囲が好ましい。
【0038】
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体の水素添加物とは、上記した芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体の共役ジエン化合物の部分の脂肪族不飽和基が水素添加により減少させられたものである。本発明で用いる事のできる共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体の水素添加物は、上記した構造の共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における、共役ジエン化合物に由来する脂肪族不飽和基の少なくとも50%以上、好ましくは80%以上が水素添加される。また、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の不飽和結合の25%以下が水素添加されていても構わない。水素添加処理方法は、例えば特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭46−20814号公報あるいは特公昭63−5401号公報等に記載されている。
【0039】
また、これら共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体及び共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体の水素添加物の結合形態は、ブロック状共重合体(共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体、及び共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体の水素添加物)が好ましい。ここでいう共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体とは、芳香族ビニル化合物に由来する連鎖ブロック「a」と共役ジエン化合物に由来する連鎖ブロック「b」をそれぞれ少なくとも一個有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物系共重合体である。
【0040】
また、ここでいう共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体の水素添加物とは、上記した連鎖ブロック「a」と連鎖ブロック「b」をそれぞれ少なくとも一個有する共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体の、主として連鎖ブロック「b]の部分の脂肪族不飽和基が水素添加により減少させられた共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物系共重合体である。
【0041】
当該ブロック共重合体の構造は、線状構造をなすジブロック(a−b)、トリブロック(a−b−a,b−a−b)、テトラブロック(a−b−a−b)、あるいはaとbのブロック数の合計が5以上のものでも良く、分岐構造いわゆるラジアルテレブロック型構造を成すものであっても良い。これらの中でもジブロック、トリブロック、テトラブロック構造が好ましく、とりわけトリブロック、テトラブロックは特に好ましい。
【0042】
モノマー成分の分布は、特に限定されず均一であっても、また不均一であっても、さらには分子鎖に沿ってモノマー成分の濃度が変化するテーパー状であっても良い。
【0043】
そして更に、これらの(C)成分として用いるすべての共重合体または、一部の共重合体が、不飽和カルボン酸及び、または、その誘導体の変性物であっても構わない。無水マレイン酸、メタクリル酸エステル類の変性物が挙げられる。 本発明では、これら(C)成分として用いる事ができる共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体、及びその水素添加物は、上記した構造の共重合体であれば、2種以上の混合物であっても良い。
【0044】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの混合組成は、(A)成分としてのポリフェニレンエーテル系樹脂の100重量部と、(B)成分としての難燃用マスターバッチ1〜60重量部である。(B)成分の割合が1重量部未満の場合はフィルムやシートの難燃性にムラが発生し、燃え易い部分と燃えにくい部分が同一フィルムや同一シート中に存在するようになる。また、(B)成分の割合が60重量部を超えるとフィルムやシートの表面外観が損なわれる。(B)成分のより好ましい量は、(A)成分100重量部に対して、1〜50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部である。本発明中の(B)成分の難燃用マスターバッチは上記混合組成範囲内で、かつ下記配合組成の範囲内であれば、異なる配合のものを2種以上含む混合物であっても良い。
【0045】
本発明中の(B)成分の難燃用マスターバッチの配合組成は、ポリフェニレンエーテル樹脂、または、ポリスチレン系樹脂、または、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の混合物100重量部に対して、リン酸エステル化合物を5〜60重量部を含む。難燃用マスターバッチ中のリン酸エステル化合物量が5重量部未満であるとフィルムの難燃性に劣り、60重量部を超えるとリン酸エステル化合物が樹脂中に存在しにくくなり、ブリードアウトしてきて、難燃用マスターバッチとして用いる事が困難になる。また、難燃用マスターバッチ中のリン酸エステル化合物は配合組成範囲内であれば、2種以上の混合物であっても構わない。
【0046】
また、(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂にはポリスチレン系樹脂を含んでいても良く、その適量は、ポリフェニレンエーテル樹脂1〜90重量部と、ポリスチレン系樹脂99〜10重量部の合計100重量部である。好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂5〜80重量部と、ポリスチレン系樹脂95〜20重量部の合計100重量部、さらに好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂10〜70重量部と、ポリスチレン系樹脂90〜30重量部の合計100重量部である。
【0047】
また、(B)成分の難燃用マスターバッチ中の樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂、または、ポリスチレン系樹脂、または、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の混合物が挙げられ、いかなる配合比でも構わないが、好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂100重量部に対してポリスチレン系樹脂100重量部以下である。
【0048】
次に、(C)成分の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体および、またはその水素添加物の適量は、(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂と(B)成分の難燃用マスターバッチの合計100重量部に対して0.1〜15重量部である。好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜10重量部である。もちろん2種以上の混合物であっても良い。
【0049】
本発明におけるポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの望ましい厚さは、0.01〜5mmである。好ましくは0.1〜3mmであり、さらに好ましくは0.1〜1mmである。
【0050】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートが、優れた表面外観とムラがなく均一で高い難燃性という相反する2つの特性を同時に達成する理由に関しては良く判っていないが、本発明の低揮発性と安定性に優れるリン酸エステル化合物を含む難燃用マスターバッチを用いる事により、難燃剤を有効、かつ効率よくフィルム中に分散させ、必要最低限の難燃剤添加で難燃効果を引き出す事を可能にし、従来技術より大幅に難燃剤量を減少させる事が可能となったため、ダイス口付近でのフィルムのスリップ等がなくなり表面外観が大幅に改善したためと考えられる。
【0051】
本発明中の性能を発現するためには、本発明で使用する各成分中に含まれる揮発成分が少ない方が好ましい。好ましくは全成分中の全揮発成分量が3,000ppm以下、更に好ましくは1,000ppm以下である事が望ましい。揮発成分とはポリフェニレンエーテル樹脂やポリスチレン系樹脂等を製造する際の、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の溶剤や、スチレンモノマー等の分解物や、水分等が含まれる。これら揮発成分が多いとフィルムやシートの表面外観を損なう場合がある。
【0052】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートには、その特徴を損なわない範囲であれば、上記成分以外に他の熱可塑性樹脂を配合または、他の熱可塑性樹脂からなるフィルムやシートを積層しても構わない。
【0053】
その熱可塑性樹脂としての例としては、例えば、ポリスチレン,アクリロニトリル−スチレン共重合体,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリメチルメタクリレート等の様な汎用プラスチックス、ポリアセタール,ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド4,6等),ポリブチレンテレフタレート,ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート,ポリフェニレンエーテル系樹脂等のようなエンジニアリングプラスチックス、ポリイミド,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリサルフォン,ポリエーテルサルフォンのようなスーパーエンジニアリングプラスチックス等、その他の樹脂(フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等)が挙げられ、これら2種以上の混合物であっても構わない。また、これら2種以上の樹脂を用いての多層積層でも構わない。
【0054】
さらには、本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートは、その特徴を損なわない範囲であれば、上記の成分の他に、公知の無機及び有機の充填材や補強材(ガラス繊維、カーボン繊維、カーボン、ケイソウ土、ウィスカー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、ウォラストナイトなど)を添加する事もできる。
【0055】
これら充填材や補強材は粒状であっても繊維状であっても構わない。また、各種オイル(ミネラルオイル、シリコンオイルなど)、他の難燃剤(他のリン酸エステル類、臭素化ポリスチレン等のハロゲン系難燃剤など)、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、各種着色剤、香料、滑剤、離型剤、造核剤等の添加物を添加して用いることもできる。もちろん、これら混合物も有用である。
【0056】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートは、自動車や列車の天井材・壁材・床材、家電製品やOA機器の外板、土木材(一般建築物・工場等の天井材・壁材・床材)、ディスプレー材等の各種用途に使用できる。また、他のフィルムやシート・発泡シート等と積層して使用する事もできる。フィルムの積層の具体例としては、断熱性・吸遮音性を確保するために自動車や列車の天井・壁、自動車のリアシェルフ等の内装材に使用される発泡材料の剛性・強度・寸法安定性の向上の為に、発泡体の片面もしくは両面に積層された材料が挙げられる。
【0057】
本発明中の(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂は、当該ポリフェニレンエーテル系樹脂を構成するパウダー状そして、またはペレット状の各樹脂を単にドライブレンドしたものであっても、あらかじめ(A)成分を構成する各樹脂を押出機等で溶融混練したものであっても構わない。
【0058】
本発明中の(B)成分の難燃用マスターバッチとは、上記したポリフェニレンエーテル樹脂、またはポリスチレン系樹脂、または両者の混合物とリン酸エステル化合物を、あらかじめ予備ブレンドしたもので、ブレンド方法は溶融混練法・溶液ブレンド法・混合してから熱を加えず圧縮する錠剤法等があり、中でも溶融混練法が好ましい。形態はペレット状・パウダー状・顆粒状・ブロック状・錠剤状等があるが、形態には関わらず、あらかじめ樹脂成分とリン酸エステル化合物の両者が安定にブレンドされている事が重要である。
【0059】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法は、特に規定するものではなく、一般のフィルム状またはシート状に成形が可能な押出機を用いる事により容易に製造できる。詳しくは、(A)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂と(B)成分である難燃用マスターバッチを所望の割合でブレンドし、フィルム状またはシート状に成形が可能な押出機に直接供給してフィルムやシートを得る方法、ポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃用マスターバッチを一般の単軸または2軸押出機等で所望の割合であらかじめ溶融混練したものを、フィルム押出機またはシート押出機に供給してフィルム状またはシート状に成形する方法等が挙げられるが、後者のポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃用マスターバッチを一般の単軸または2軸押出機等で所望の割合であらかじめ溶融混練したものを、フィルム押出機または、シート押出機に供給してフィルム状またはシート状に成形する方法が好ましい。
【0060】
また、(C)成分である芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体の添加も、フィルム押出機やシート押出機に直接添加する方法と、単軸または2軸押出機であらかじめ溶融混練する際に添加する方法が考えられるが、後者の方が好ましい。
【0061】
また本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートは、他のフィルムや板状成形品・発泡シート等へ積層して用いる事もできる。他のフィルムや板状成形品・発泡シート等への積層は、両者を接着剤で積層する方法、熱接着する方法等が挙げられるが熱接着する方法が好ましく、中でも熱ロールにより接着する方法、フィルムやシート押出直後にインラインで積層する方法、多層押出金型を用いる共押出積層法等を特に好適に用いる事ができる。
【0062】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の態様を具体的に説明する。
【0063】
製造例1 ポリフェニレンエーテル樹脂の調製
実施例及び比較例において用いたポリフェニレンエーテル樹脂は、特開昭64−33131号公報に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合し、白色粉末状のポリフェニレンエーテル樹脂を得た。このポリフェニレンエーテル樹脂の、0.5%クロロホルム溶液を30℃の条件でウベローデ粘度管を用いて粘度数を測定したところ、ηsp/C=0.533であった。また、この得られたポリフェニレンエーテル樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで標準ポリスチレンの検量線からポリスチレン換算の数平均分子量を求めたところ、24,500であった。以下このポリフェニレンエーテル樹脂をPPEと略記する。
【0064】
実施例及び比較例において用いたポリスチレン系樹脂は、以下の2種類のものを用いた。ポリスチレン系樹脂としてスタイロン685[旭化成工業(株)製:以下これをGPPSと略記]と、シス1,4結合が98%のポリブタジエンを9%含有し、ゴム粒径が1.5μm、フリーのポリスチレンのトルエン中30℃にて測定した還元粘度が0.82dl/gであるゴム変性耐衝撃性ポリスチレン樹脂(以下これをHIPSと略記)を用いた。
【0065】
実施例及び比較例において使用した水素添加された芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、水素添加された芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の変性物は、以下の製造例2及び製造例3で製造したものを用いた。
【0066】
製造例2 水素添加された芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の調製
窒素置換した100リットルの撹拌機・ジャケット付きオートクレーブにシクロヘキサン66.2リットル、スチレン1.62kgを仕込み撹拌しながら70℃に昇温した。更に、sec−ブチルリチウム10.68gと、ビニル化剤としてテトラヒドロフランを添加し、70℃で60分間重合した。その後ブタジエン6.05kgをオートクレーブに供給し70℃で60分間重合した。所定時間ブタジエンを重合した後、更にスチレン1.62kgをオートクレーブに供給して70℃で60分間重合を続け全体としてポリスチレン−ブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量35重量%、ポリスチレンブロックセグメントの数平均分子量28,000、ポリマー全体の分子量分布1.03、ブタジエンセグメントの1,2結合が36%のブロック共重合体を得た。
【0067】
ここで得たポリスチレン−ブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体を、更に特公昭63−5401号公報の実施例1〜12と同様にして水素添加反応を実施し、ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、水素添加率99.9%の水素添加ブロック共重合体を得た。、ここで得たポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体をHTRと略記する。
【0068】
製造例3 水素添加された芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の変性物の調製
製造例1で製造したHTR2000gに対して、加工性を賦与するためのGPPS[スタイロン685:旭化成工業(株)製]を500gと無水マレイン酸140gとtert−ブチルパーオキサイド10gをドライブレンドし、200℃に設定した同方向回転二軸押出機ZSK−25[ウェルナー&ファウドラー社製]で溶融混練し、水浴中で冷却し、切断してペレット状の無水マレイン酸変性のHTRを得た。
【0069】
更に、この無水マレイン酸変性のHTRをクロロホルムに溶かし、メタノールで再沈澱し、濾過し、HTRに結合していない無水マレイン酸を除去後、再度クロロホルムに溶解し、キャスト法によりフィルム化して、フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定装置[FT/IR−7000:日本分光社製]で分析したところ、無水物に起因する吸収が見られた。この吸収と、HTRの一置換ベンゼンに基づく特性吸収との吸光度比を求め、あらかじめ同じHTRと無水マレイン酸の混合物のキャストフィルムの測定より得られた吸光度比で作成した検量線に基づき、無水マレイン酸付加率が1.1%である事が判った。この無水マレイン酸変性のHTRをMHTRと略記する。
【0070】
実施例及び比較例におけるリン酸エステル化合物は以下のものを用いた。
P−1:ビスフェノールA−ポリクレジルホスフェート:化学式(III)(n=1〜3の混合物)。
【0071】
【化5】
Figure 0003658810
【0072】
P−2:ビスフェノールA−ポリフェニルホスフェート:化学式(IV)(n=1〜3の混合物)。
【0073】
【化6】
Figure 0003658810
【0074】
P−3:トリフェニルホスフェート:化学式(V)
【0075】
【化7】
Figure 0003658810
【0076】
難燃用マスターバッチの調製例1〜6
上記したPPE、GPPS、HIPS、P−3を、それぞれ表1記載の割合でドライブレンドして、液体添加用ポンプと押出機中央部に液体注入口を有する、300℃に設定した同方向回転二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&ファウドラー社製]に供給し溶融混練し、押出機中央部の液体注入口より、表1記載の割合で難燃剤P−1及びP−2を圧入し、押出機ダイス小孔より出てきたストランドを水槽を通して冷却後、切断しペレットとして得た。それぞれの難燃用マスターバッチの名称をMB1〜MB6とし、表1に併記した。なお、MB6の調製時に、押出機ダイス付近より白煙が立ちのぼるのが確認されたが、そのままペレット化した。MB1〜5に関しては、この様な白煙は見られなかった。
【0077】
【実施例】
実施例1〜8
難燃用マスターバッチの調製例で示したMB1〜5とPPE、GPPS、HIPS、HTR、そしてMHTRを表2の中の実施例1〜8記載の割合でドライブレンドし、300℃に設定した同方向回転二軸押出機[ZSK−25:ウェルナー&ファウドラー社製]に供給し溶融混練し、ダイス小孔より出てきたストランドを水槽を通して冷却後、切断しペレットとして得た。得られたペレットを30mmφ単軸フィルム押出機に供給し、幅50cmのフィルム状に押出した。フィルムの厚みを測定したところ約0.3mmであった。
【0078】
難燃性及び難燃性のムラの評価は、この幅50cmのフィルムを切断し、幅50cm×長さ50cmのフィルムとして採取し、さらに、このフィルムの流動方向と垂直に、0.5cmの長さで切断し、幅50cm×長さ0.5cmの大きさにし、一方の端より0cm,15cm,25cm,35cm,50cm(他端)の合計5箇所から5mgサンプルを採取して、そのすべてについて熱天秤[TGA−51:島津製作所社製]を用いて加熱後の残渣量から行った。
【0079】
評価条件は、窒素中で毎分40℃の昇温速度で、25℃から850℃に昇温した後の残査の割合を重量%で求め、5箇所の燃焼後の残査割合の加算平均を難燃性の指標にし、そして5つのデータの標準偏差を難燃性のムラの評価の指標にした。
【0080】
表面外観は、押しだしたフィルム全体を眺め、全体的にフィルム表面が均一で表面外観に優れるものを○、部分的にフィルム表面に発泡やスリップ痕が見られるものを△、全体的に表面に発泡やスリップ痕が見られ表面外観が悪いものを×の3段階で評価した。
難燃性及び難燃性のムラ、表面外観の評価結果も表2に併記した。
【0081】
比較例1〜8
実施例1〜8では難燃用マスターバッチに含有されていた難燃剤を、比較例1〜8ではマスターバッチ法を用いず直接添加する方法で調製した。なお、比較しやすくする為、実施例1〜8と比較例1〜8がそれぞれ最終混合組成で同じ混合組成になるように調製している。PPE、GPPS、HIPS、HTR、MHTRを、それぞれ表3記載の割合でドライブレンドして、液体添加用ポンプと押出機中央部に液体注入口を有する、300℃に設定した同方向回転二軸押出機に供給し溶融混練し、押出機中央部の液体注入口より、表3記載の割合で難燃剤P−1及びP−2を圧入し、押出機ダイス小孔より出てきたストランドを水槽を通して冷却後、切断しペレットとして得た。
【0082】
得られたペレットを30mmφ単軸フィルム押出機に供給し、幅50cmのフィルム状に押出した。得られたフィルムを実施例1〜8と同様に切断し、難燃性及び難燃性のムラ表面外観を評価し、表3に併記した。
【0083】
比較例9
実施例4の難燃用マスターバッチをMB−5からMB−6にかえた他は実施例4と同様に押し出してペレットとして得た。この時押出機ダイス付近より白煙が立ちのぼった。次にこれも実施例4と同様に、得られたペレットを30mmφ単軸フィルム押出機に供給し、幅50cmのフィルム状に押出したところ、フィルム全体から白煙が立ちのぼるだけでなく、フィルム全体に発泡が見られ表面外観が極度に悪化した。この為、比較例9に関しては難燃性や表面外観の評価は行わなかった。
【0084】
【表1】
Figure 0003658810
【0085】
【表2】
Figure 0003658810
【0086】
【表3】
Figure 0003658810
【0087】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートには、従来のものに比べ優れた表面外観と、ムラがなく均一で高い難燃性という相反する2つの特性を同時に達成したという効果がある。

Claims (5)

  1. (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部と、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂または、ポリスチレン系樹脂、または、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の混合物100重量部に対して、一般式(I)、
    Figure 0003658810
    (ここで、Q1 、Q2 、Q3 、Q4 は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1 、R2 はメチル基を、R3 、R4 は独立にメチル基または水素を表す。nは1以上の整数を表す。n1 、n2 は独立に0から2の整数を表す。m1 、m2 、m3 、m4 は、独立に0から3の整数を示す。)
    で表されるリン酸エステル化合物5〜60重量部を配合し、あらかじめ溶融混練することにより得られる難燃用マスターバッチ1〜60重量部とを溶融混練する事を特徴とする表面外観に優れるポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法
  2. (A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂1〜90重量部と、ポリスチレン系樹脂99〜10重量部の合計100重量部からなる事を特徴とする請求項1記載のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法。
  3. A)成分と(B)成分の他に、(C)成分として芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体および、またはその水素添加物を、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.1〜15重量部配合する事を特徴とする請求項1又は2記載のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法。
  4. (B)成分中のリン酸エステル化合物が、リン酸エステル化合物を表す一般式(I)において、n1 、n2 が0で、R3 、R4 がメチル基である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法。
  5. ポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法において、請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系フィルム又はシート用樹脂組成物の製造方法で得られた樹脂組成物を用いることを特徴とするポリフェニレンエーテル系フィルム又はシートの製造方法。
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