JP3658285B2 - 一酸化炭素センサおよび一酸化炭素濃度計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素センサ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素センサ素子としては現在様々なものが実用化されており、それらは工程管理、安全管理等の分野で幅広く使われている。これらのうち、内燃機関等の燃焼排ガスの不完全燃焼を検知する一酸化炭素センサとして用いることができるものとしては半導体式センサ及び接触燃焼式センサ素子が挙げられる。その中でも、実公平2−20682号公報などで知られる半導体式センサは試料ガス中の酸素濃度あるいは水分率が変化すると正確に測定できないと云う欠点を有するため、通常、接触燃焼式センサ素子を有する接触燃焼式センサ検知部を用いる接触燃焼式センサが用いられている。
【0003】
接触燃焼式センサ検知部の一例のモデル断面図を図1に示す。図中符号11aは接触燃焼式センサ素子であり、白金線等からなるコイル部に、パラジウム、白金などの燃焼触媒を有するシリカ、アルミナなどの担体層を配して構成される。
【0004】
温度変化などによる測定値への影響を排除するため、この接触燃焼式センサ検知部には接触燃焼式センサ素子11a以外に補償素子11bが設けられている。この補償素子11bは、燃焼触媒を有しない他は接触燃焼式センサ素子11aと同様に構成されている。これら素子の白金線は台座14を貫通する信号ピン12a、12bに接続され、これら素子からの出力値はこの信号ピン12a、12bによってセンサハウジング外へ出力される。
【0005】
接触燃焼式センサ素子11a及び補償素子11bが互いに干渉しないようにこれらの間に遮蔽板13が設けられ、これらは金網15b及びカバー15a及び台座14から構成されるセンサハウジング内に収納されて保護されている。
【0006】
このような接触燃焼式センサ素子を用いた検知部は出力の直線性に優れていて、高濃度領域での測定では高い精度が得られる。
接触燃焼式センサ素子と補償素子とからなる接触燃焼式センサ検知部を有する接触燃焼式センサの一例の基本特性を図2に示す。横軸は空気中に添加された一酸化炭素ガス濃度を示す。ただし、このサンプルガスは、不完全燃焼ガスを想定しているため、一酸化炭素ガス以外に、その半分の濃度の水素ガスが添加されている。また、縦軸はセンサ出力値である。
【0007】
図2により、接触燃焼式センサでは出力に極めて高い直線性が得られることが判る。しかし接触燃焼式センサの出力は、図2より明らかなように低濃度(1000ppm程度以下)領域ではその絶対値が小さくなり、その結果、精度の良い測定が困難になる。
【0008】
一方、固体電解質型センサ素子は半導体式センサ素子と同様に対数的特性を示すため、低濃度領域における精度が高いものの、高濃度での測定精度は低い。
【0009】
ここで固体電解質型センサ素子についてモデル図を用いて説明する。
センサ素子4の拡大モデル図を図3(a)に、そのモデル断面図を図3(b)に示す。
【0010】
符号a及びbでそれぞれ示される上部電極及び下部電極で挟まれている層cが固体電解質層であり、この例では酸素イオン伝導性を有する安定化ジルコニア(YSZ)からなる。これら電極a及びbは白金とYSZとの混合物の焼結体であり、ともに多孔質である。
【0011】
下部電極bの下側にはアルミナなどからなる多孔質材料に白金、パラジウムなどの可燃性ガス酸化触媒が担持されてなるガス拡散層dが配されている。このように下部電極bはこれらガス拡散層dを介してのみ被検ガスと接するようになっている。
【0012】
下部電極b側では、一酸化炭素ガスはガス拡散層d内で気相中の酸素によって酸化されて二酸化炭素として除去される。そのため一酸化炭素ガスは下部電極bまでは到達しない。
【0013】
このため下部電極bには気相中の酸素のみが吸着される。その吸着の際、酸素は下記式(I)のように解離して酸素イオンが生成する。生成した酸素イオンは電解質c内を上部電極bに向かって拡散・移動する(式(I)において「O(ads)」は吸着されて解離した酸素を示す)。
【0014】
【化1】
O(ads) + 2e- → O2- ……(I)
【0015】
一方、上部電極aにおいて、雰囲気中の一酸化炭素は電極aに吸着され、気相、電極a及び電解質cによって形成される三相界面で下部電極bから電解質c中を拡散してきた酸素イオンと反応し、二酸化炭素と電子とが生成する(式(II)参照。なお、式(II)において「CO(ads)」は吸着された一酸化炭素を示す)。
【0016】
【化2】
CO(ads) + O2- → CO2 + 2e- ……(II)
【0017】
上部電極aで一酸化炭素と反応する酸素は電解質c内を下部電極bから拡散してきた酸素イオンである必要がある。このようにして、気相より下部電極bに解離吸着した酸素がイオン化され、電解質c内を下部電極bから上部電極a側へ拡散し、三相界面において気相より吸着した一酸化炭素と反応することによりセンサ出力が発生し、一酸化炭素ガスの濃度を検出することができる。
【0018】
なお、図中符号eはアルミナ絶縁膜、fはヒータ、gはアルミナ基板であり、ヒータfはセンサ素子温度をセンサ動作に適した温度に保つ。電極a,bはセンサ素子出力取り出し部a’及びb’にそれぞれに接続されている。
【0019】
このような固体電解質型センサの一例の基本特性を図4に示す。
図4の横軸は空気中に添加された一酸化炭素ガス濃度を示す。ただし、このサンプルガスは、不完全燃焼ガスを想定しているため、一酸化炭素ガス以外に、その半分の濃度の水素ガスが添加されている。また、縦軸はセンサ出力値EMFである。
【0020】
図4により、固体電解質型センサでは低濃度領域での感度が極めて高いことが判る。しかしこのような固体電解質型ガスセンサは、低濃度(1000ppm程度以上)では、その感度が小さくなって精度の良い測定が困難になる。
このように、現状では低濃度から高濃度まで精度良く測定できる一酸化炭素センサはなかった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の欠点を解決し、低濃度から高濃度まで精度良く測定でき、コンパクト化が容易な一酸化炭素センサ複合素子を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の一酸化炭素センサは請求項1に記載の通り、固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とを有する一酸化炭素センサ複合素子を備えた一酸化炭素センサであって、測定対象ガス中の一酸化炭素が低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力を外部に出力し、高濃度時には接触燃焼式センサ検知部からの出力を外部に出力する出力切替手段を有し、上記切り替え手段の一酸化炭素ガス濃度が低濃度から上昇して接触燃焼式センサ検知部からの出力に切り替えるときの濃度が、ガス濃度が高濃度から下降して固体電解質型センサ素子からの出力に切り替えるときの一酸化炭素ガス濃度より高いことを特徴とする一酸化炭素センサである。この構成により、コンパクト化が容易でありながら、低濃度から高濃度まで精度良く測定することができ、使用者はこれら2種の検知部の出力のいずれを選択するかを気にせずに、常に正確で精度の良い測定を行うことができ、さらに、頻繁なセンサ出力の切り替えを防止できるため、用いるCPU等のスペックが特に高度なものを必要とすることがなくなり、同時に消費電力を少なくすることが可能となる。
【0023】
また、請求項2に記載のように上記固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とが1つのハウジング内に設けられていることにより、コンパクト化が可能となり、さらに2つの測定部が同一の環境で測定することが可能となり、測定精度が良好となる。
【0024】
さらに請求項3に記載のように固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とを一体に有する構成とすることにより、さらなるコンパクト化が可能となるとともに、およびこれら固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とがそれぞれ測定に必要な温度となるのに必要な熱量を小さくすることが可能となり省電力化が容易となる。
【0025】
また、請求項4に記載のように請求項3記載の一酸化炭素センサ複合素子がチップ状であって、その一方の面に固体電解質型センサ素子部が、他方の面に接触燃焼式センサ検知部がそれぞれ設けられていることにより、さらなるコンパクト化が可能となり、さらに、必要な熱量(消費電力)をさらに小さくすることができ、また、半導体製造技術あるいは電気回路印刷技術を応用することにより製造が容易なものとすることができる。
【0026】
さらに請求項5に記載のように請求項4の接触燃焼式センサ検知部が固体電解質型センサ素子部の固体電解質をそのイオン伝導に適した温度に保つヒータとして機能するものとすることにより、固体電解質型センサ素子部の固体電解質層をそのイオン伝導に適した温度とするための熱量を事実上0とすることができ、また、製造上のヒータ形成工程を省くことが可能となる。
【0027】
本発明の一酸化炭素濃度計は請求項6に記載のように、上記請求項1ないし請求項5のいずれかの一酸化炭素センサを有する一酸化炭素濃度計であり、小型化が容易であり、また省電力とすることが可能であるため、ポータブル機器に組み込んで長時間の電池駆動が可能となる。なお、この一酸化炭素濃度計は、警報器、検知器等に応用することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明のセンサを用いて測定を行う場合には低濃度時に固体電解質型センサ素子部を、高濃度時に接触燃焼式センサ検知部を用いることが必要である。固体電解質型センサ素子の代わりに、同様に対数的特性を有する半導体式センサを用いた場合、試料ガス中の酸素濃度や水分率が変化すると正確に測定できないと云う欠点が生じてしまう。
また、上記のように高濃度時には接触燃焼式センサ検知部からの出力を用いると、高濃度時の出力の直線性が良好であり、正確な測定が可能となる。
【0031】
本発明において、接触燃焼式センサ検知部及び固体電解質型センサ素子部は、現在広く用いられているものをそのまま用いることができる。このとき、これらセンサ素子の信号ピンの一方を共通とすることで、全体をさらにコンパクトなものとすることができる。なお、本発明のセンサは接触燃焼式センサ検知部及び固体電解質型センサ素子部とを備えておればよく、これらは互いに隣接して設けられていること、特に同じハウジング内に設けられていることが測定精度上望ましいが、用途上の都合等により距離を置いて設けられても良い。
【0032】
接触燃焼式センサ検知部の接触燃焼式センサ素子は通常、白金線などからなるコイル部に、パラジウムなどの燃焼触媒が担持されたシリカ、アルミナなどの担体層を配することにより構成される。ここで、接触燃焼式センサ検知部が接触燃焼式センサ素子以外に燃焼触媒を有しない他は同様に作製された補償素子を併せ持ち、補償素子を接触燃焼式センサ素子とともにブリッジ回路に組み込んで用いることで、環境温度などの測定値への影響を防止することができる。
【0033】
接触燃焼式センサ検知部として、粒状の触媒担持担体層を有するものの他、ダイアフラム型の接触燃焼式センサ素子を用いることもできる。このとき、コンパクト化が可能となるとともにその結果さらなる省消費電力化が可能となる。
【0034】
このような、固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とを有する本発明のセンサ素子を図5に示す。符号αは固体電解質型センサ素子部を構成する固体電解質型センサ素子であり、図3に示したものと同様の構造を有する。
また、この例における接触燃焼式センサ検知部を構成する接触燃焼式センサ素子β、補償素子β’も図1に示したものと同様の構造である。
【0035】
接触燃焼式センサ素子βと補償素子β’との間にはこれら素子間での干渉を防ぐため遮蔽板εが設けられている。これら素子及び遮蔽板は台座δ上に設けられ、それら素子の信号は信号ピンγによって台座δ裏面側に伝えられる。なお、この図では示していないが、これら3種の素子及び遮蔽板εは図1の接触燃焼式センサ検知部同様、金網及びカバー及び台座δから構成されるセンサハウジング内に収納されて保護されている。
【0036】
このような一酸化炭素センサ複合素子を有する本発明の一酸化炭素センサを用いてさまざまな濃度の一酸化炭素ガスを測定したときの、センサ出力(EMF)を図6に示す。
【0037】
図6は、1000ppm相当の出力を境にして、それより低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力を外部に出力し、1000ppm相当の高濃度時には接触燃焼式センサ検知部からの出力(補償素子・ブリッジ回路によって補償した出力)を外部に出力する出力切替手段を有している本発明の一酸化炭素センサの出力について示すものである。
【0038】
図6より、一酸化炭素ガス濃度が100〜3000ppmの範囲でセンサ出力が4mV以下になることはなく、また、ガス濃度の変化に応じた出力の変化も大きいため、このセンサによりS/N比が良好で、精度の高い測定が可能となることが判る。
【0039】
ここで、本発明の、低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力を用い、高濃度時には接触燃焼式センサ検出部からの出力を用いる、入力切替手段を有する一酸化炭素センサを用いる一酸化炭素濃度計の一例について、ブロック図を用いて説明する。
【0040】
図7に示すように本発明の一酸化炭素ガスセンサ素子Fは、固体電解質型センサ素子部A及び接触燃焼式センサ検知部Bは入力切替手段に接続されている。この接触燃焼式センサ検知部Bは接触燃焼式センサ素子B1と補償素子B2とから構成されている。
【0041】
入力切替手段Cからの出力はガス濃度算出手段Dに入力される。このときの入力切替手段Cの出力としては、センサ素子からの出力のみならず、その出力が固体電解質型センサ素子Aあるいは接触燃焼式センサ検知部Bのどちらからのものであるかについての情報も例えば0、1信号などによってガス濃度算出手段D出力される。
【0042】
ガス濃度算出手段Dは入力されたセンサ出力値を適した関数により一酸化炭素濃度に変換し、表示手段Eに出力する。表示手段Eは入力された測定値を表示する。
【0043】
このような、本発明の一酸化炭素ガスセンサ素子を用いる一酸化炭素濃度計の一例の回路図を図8(a)に示す。
固体電解質型センサ素子部1はAD変換機能を有するMPU3の入力ポート3iaに接続されている。接触燃焼式センサ検知部Bを構成する接触燃焼式センサ素子h及び補償素子iはブリッジ回路に接続され、その出力はAD変換機能を有するMPU3の入力ポート3ibに接続されている。MPU3にはこのほか、制御用回路CPU3cp、使用するセンサ素子からの出力値を切り替えるための定数a(35mV),b(4.6mV)、センサ出力値から一酸化炭素ガス濃度を算出するための関数(f()、g())プログラムなどの情報が書き込まれたROM3ro(図8(b)参照)、センサ出力値xなどの変数を格納するためのRAM3ra(図8(c)参照)、及び、この例における濃度表示手段であるLCD4に接続され、これに出力を行う出力ポート3oを有する(この図ではブリッジ回路に電圧を印加する回路、および、各素子を加熱するための電圧を印加する回路等一部を略してある)。
【0044】
この一酸化炭素濃度計の動作について、図9のフローチャートを用いて説明する。
電源投入と共にプログラムがスタートする。ステップS1で固体電解質型センサ素子部からの出力値が入力ポート3iaからMPU3内部に取り込まれ、変数xとしてRAM3raに格納される。
【0045】
ステップS2で、この値xから固体電解質型センサ素子用に予め設定された関数f()によって一酸化炭素濃度Cが求められる。ステップS3では出力ポート3o経由でLCD4に出力され、その値がLCD4に表示される。ステップS4で、上記xの値が35mV(一酸化炭素ガス濃度1000ppmに相当する、固体電解質型センサ素子の出力値)以上であれば、ステップS5に進み、35mV未満のとき、すなわち被検ガスが低濃度領域である場合にはステップS1〜S4が繰り返される。
【0046】
ステップS5では接触燃焼式センサ素子2aからの出力が、補償素子2bにより補償され、ブリッジ回路で電圧値に変換されて入力ポート3ibからMPU3内部に取り込まれ、変数xとしてRAM3raに格納される。
【0047】
ステップS6で、このxから接触燃焼式センサ検知部2用に予め設定された関数g()によって一酸化炭素濃度Cが求められる。ステップS7では出力ポート3o経由でLCD4に出力されてその値が表示される。ステップS8で、上記xの値が4.5mV(一酸化炭素ガス濃度1000ppmに相当するこの接触燃焼式センサ検知部2を有するブリッジ回路の出力値)以下のとき、すなわち、被検ガスが低濃度領域であれば、ステップS1に進み、4.5mV超のとき、すなわち、被検ガスが高濃度領域にあるときにはステップS5〜S8が繰り返される。
【0048】
なお、この一酸化炭素濃度計におけるMPU3は上記記載からも明らかなように、低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力を外部に出力し、高濃度時には接触燃焼式センサ検知部からの出力を外部に出力する出力切替手段、及び、ガス濃度算出手段に相当し、LCD4は表示手段に相当する。
【0049】
上記例においては、ガス濃度が低濃度から上昇して、出力切り替え手段が用いるセンサ出力を切り替える濃度と、ガス濃度が高濃度から下降して、出力切り替え手段が用いるセンサ出力を切り替える濃度とがほぼ等しいため、切り替え濃度(上記例では1000ppm)付近の濃度のガスを測定する場合に頻繁に上記切り替えが生じ、CPU3cpの負担となり、あるいは、高速なCPUを用いる必要が生じ、結果とし、消費電力が増加して電池駆動ができなくなったり、電池交換の頻度が増えてメンテナンスコストが上昇するおそれがある。
【0050】
そこで、低濃度から上昇して接触燃焼式センサ検出部からの出力に切り替えるときの濃度を、ガス濃度が高濃度から下降して低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力に切り替えるときの濃度より高くすることにより、頻繁な切り替えを防止することができる。
【0051】
具体的には、図9でのステップS4で35mVを濃度上昇側切り替え基準電圧とし、xの値が35mV以上であれば、ステップS5に進み、35mV未満のときにはステップS1〜S4が繰り返されるとしたが、例えば図10のステップS4’のように濃度上昇側切り替え基準電圧を35mVの代わりに36mVとする。
【0052】
この場合、ガス濃度が低濃度から高濃度に変化する際には図11における実線の検量線を、ガス濃度が高濃度から低濃度に変化する場合には、図11における破線の検量線を用いることとなる。
【0053】
このとき図11よりガス濃度が1000ppm前後、あるいは1250ppm前後で激しく変化する場合にも、用いるセンサの出力を頻繁には切り替える必要がなくなることが理解される。
【0054】
(固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検出部とを一体に有する一酸化炭素センサ複合素子の例)
以上、従来の形状を有する固体電解質型センサ素子部と、同様に従来の形状を有する接触燃焼式センサ検出部とを組み合わせてなる一酸化炭素センサ複合素子を用いた例について説明した。
【0055】
しかし、このものは図5(a)および(b)からも理解できるように従来のセンサ素子を組み合わせて複合化したセンサ素子であり、そのため、組み立て工程が必要であるが、従来のセンサ素子と比べた場合、組立箇所が多くなるため、生産ラインを従来のセンサ素子のものから大幅に変更する必要がある。しかし、従来の固体電解質型センサと比べると、接触燃焼式センサ素子および補償素子の部分が大きくなり、この形式の場合センサ素子のさらなる小型化には困難がある。
【0056】
さらにこのような図5(a)および(b)に示すセンサ素子の場合、固体電解質センサ素子はその固体電解質をイオン伝導に適した温度に保つために加熱されることが必要であり、また、接触燃焼式センサ素子はその接触燃焼のために、さらに補償素子は接触燃焼式センサ素子と同条件に保たれる必要性があるため、共に加熱されることが必要であり、共に通常ジュール熱による加熱を行うため、消費電力が多く、電池駆動などの場合には使用可能期間が短くなったり、或いは電池駆動自体が困難になるなどの問題が生じた。
【0057】
このように、より生産性が良好で消費電力が小さく、かつ、より小型化が可能な、低濃度から高濃度まで精度良く測定できる一酸化炭素センサとして、次に固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検出部とを一体に有する一酸化炭素センサ複合素子の例について説明する。
【0058】
このような構成を有する本発明の一酸化炭素センサ複合素子は、一酸化炭素濃度計などに組み込んだ場合、消費電力が小さく、より小型化が可能な、低濃度から高濃度まで精度良く測定できる。
【0059】
図12(a)に本発明に係る固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検出部とを一体に有する一酸化炭素センサ複合素子1’の上面の斜視図(モデル図)を、図12(b)にはそのモデル断面図を、図12(c)には底面の斜視図(モデル図)をそれぞれ示す。
【0060】
この一酸化炭素センサ複合素子1’は固体電解質型センサ素子部Aと接触燃焼式センサ検知部Bとを一体に有し、その形状はチップ状であって、その一方の面(上面)に固体電解質型センサ素子部Aが、他方の面(底面)に接触燃焼式センサ検知部Bがそれぞれ設けられている。
【0061】
図中符号a及びbでそれぞれ示される上部電極及び下部電極で挟まれている層cが固体電解質層であり、この例では酸素イオン伝導性を有する安定化ジルコニア(YSZ)からなる。これら電極a及びbは白金とYSZとの混合物の焼結体であり、ともに多孔質である。
【0062】
下部電極bの下側にはアルミナなどからなる多孔質材料(本例では多孔質アルミナ)に白金、パラジウムなどの可燃性ガス酸化触媒(本例ではパラジウム)が担持されてなるガス拡散層dが配されている。このように下部電極bはこれらガス拡散層dを介してのみ被検ガスと接するようになっている。
【0063】
なお、図中符号eはアルミナ絶縁膜であり、このアルミナ絶縁膜eの反対面には接触燃焼式センサ検知部Bが設けられていて、固体電解質型センサ素子部Aの固体電解質層cをそのイオン伝導に適した温度に保つヒータとして機能する。
【0064】
接触燃焼式センサ検知部Bは、接触燃焼式センサ素子hおよび補償素子iからなり、接触燃焼式センサ素子hは酸化触媒(本例ではパラジウムを使用。その他、白金などが使用可)が担持された多孔質材料(本例ではアルミナ)からなる酸化触媒層h1および接触燃焼型ヒータおよび検出線兼用の白金ヒータh2からなり、また、補償素子iは酸化触媒を有しない以外は接触燃焼式センサ素子hと同じ構造を有していて、補償層i1および白金ヒータi2とからなる。
【0065】
この一酸化炭素センサ複合素子1’の固体電解質型センサ素子部Aは従来の固体電解質型センサ素子の製造方法を応用し、但し、ヒータ層を設けず、容易に作製することできる。一方、接触燃焼式センサ検知部は印刷等の方法で形成することができる(本例もこの方法によった)。なお、この例では白金ヒータは露出しているが、そのヒータ本体(つづれ折りになっている部分)は酸化触媒層h1あるいは補償層i1内に埋設されていても良い。
また、図中a’およびb’はそれぞれ上部電極aおよび下部電極bのリード部である。
【0066】
この一酸化炭素センサ複合素子1’の使用の際には、白金ヒータh2およびi2に通電され、この接触燃焼式センサ検知部Bが加熱される。この熱は接触燃焼式センサ素子hの酸化触媒層h1による雰囲気中の可燃ガス分子の接触酸化反応を可能とする。
【0067】
同時に白金ヒータh2およびi2による熱は絶縁層eおよびガス拡散層dを伝導して固体電解質層cに達し、固体電解質層cを固体電解質のイオン伝導に適した温度に加熱し、固体電解質型センサ素子部での一酸化炭素測定を可能とする。
【0068】
接触反応に適した温度は250℃付近以上であるが、固体電解質のイオン伝導に適した温度は一般に350℃以上500℃以下であるため、この一酸化炭素センサ複合素子1は、耐久性等を考慮して通常350℃以上450℃以下で使用される。
【0069】
なお、一酸化炭素センサ複合素子1’を長時間使用しなかった後の使用直後などでは、クリーニング等の目的で、一時的に(数秒〜数分間)センサ素子温度をより高い温度に昇温することができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明の一酸化炭素センサによれば、被検ガス中の一酸化炭素濃度が低濃度であるときは固体電解質型センサ素子からの出力を、高濃度であるときには接触燃焼式センサ素子からの出力をそれぞれ用いることができ、さらに小型化、省電力化が極めて容易であるため、電池駆動のポータブルな軽量機器として精度が良く信頼性が高い測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】接触燃焼式センサ検知部のモデル断面図である。
【図2】接触燃焼式センサ検知部のさまざまな濃度の被検ガスに対する出力を示す図である。
【図3】固体電解質型センサ素子を示すモデル図である。
(a)斜視図
(b)断面図
【図4】固体電解質型センサ素子のさまざまな濃度の被検ガスに対する出力を示す図である。
【図5】本発明の一酸化炭素センサ複合素子を示すモデル図である。
(a)上面図
(b)斜視図
【図6】本発明の一酸化炭素センサ複合素子の出力例を示す図である。
【図7】本発明の一酸化炭素センサ複合素子を用いる一酸化炭素濃度計の一例のブロック図である。
【図8】図7の一酸化炭素濃度計の回路図である。
【図9】図7の一酸化炭素濃度計の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一酸化炭素センサ複合素子を用いる一酸化炭素濃度計の一例のフローチャートである。
【図11】本発明の一酸化炭素センサ複合素子を用いたの他の場合の出力例を示す図である。
【図12】本発明の一酸化炭素センサ複合素子の他の例1’を示す図である。
(a)上方からの斜視図
(b)断面図
(C)下方からの斜視図
【符号の説明】
1 本発明に係る一酸化炭素センサ複合素子
1’ 本発明に係る一酸化炭素センサ複合素子
A 固体電解質型センサ素子部
B 接触燃焼式センサ検知部
a 上部電極
a’ リード部
b 下部電極
b’ リード部
c 固体電解質
d ガス拡散層
e アルミナ絶縁層
h 接触燃焼式センサ素子
h1 酸化触媒層
h2 白金ヒータ
i 補償素子
i1 補償層
i2 白金ヒータ
Claims (6)
- 固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とを有する一酸化炭素センサ複合素子を備えた一酸化炭素センサであって、測定対象ガス中の一酸化炭素が低濃度時には固体電解質型センサ素子部からの出力を外部に出力し、高濃度時には接触燃焼式センサ検知部からの出力を外部に出力する出力切替手段を有し、上記切り替え手段の一酸化炭素ガス濃度が低濃度から上昇して接触燃焼式センサ検知部からの出力に切り替えるときの濃度が、ガス濃度が高濃度から下降して固体電解質型センサ素子からの出力に切り替えるときの一酸化炭素ガス濃度より高いことを特徴とする一酸化炭素センサ。
- 上記固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とが1つのハウジング内に設けられていることを特徴とする一酸化炭素センサ。
- 上記一酸化炭素センサ複合素子が固体電解質型センサ素子部と接触燃焼式センサ検知部とを一体に有することを特徴とする請求項2に記載の一酸化炭素センサ。
- 上記一酸化炭素センサ複合素子がチップ状であって、その一方の面に固体電解質型センサ素子部が、他方の面に接触燃焼式センサ検知部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3に記載の一酸化炭素センサ。
- 上記接触燃焼式センサ検知部が固体電解質型センサ素子部の固体電解質をそのイオン伝導に適した温度に保つヒータとして機能することを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の一酸化炭素センサ。
- 上記請求項1ないし請求項5のいずれかの一酸化炭素センサを有することを特徴とする一酸化炭素濃度計。
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