JP3657843B2 - エポキシ樹脂用硬化剤とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層板用ワニス、塗料、成形材料に適したエポキシ樹脂硬化剤としてのクレゾールノボラック樹脂に関するものである。特に、この発明で得られる樹脂は、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂に良好な機械的強度と高耐熱性と高耐湿性を与えることができ、従って、高信頼性を必要とする電子・電気の用途に非常に有用である。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ノボラック型フェノール樹脂は、一般にフェノール類をアルデヒドと共に酸性触媒の存在下に縮合重合して製造されている。しかし、その数平均分子量は特開昭56−92908号公報にも記載されているように、ゲル化物を生じない公知の従来の製造方法では、ノボラック樹脂の数平均分子量は250〜800で、最大限1200である。エポキシ樹脂の硬化剤として、このような低分子量のノボラック型フェノール樹胎を用いて高い耐熱性を得ようとした場合、耐熱性の高い4 官能性やナフタレンエポキシなどの特殊で高価なエポキシ樹脂との組合わせを必要とする。
【0003】
分子量を上げるために反応をつづけてもゲル化物の発生が増加するだけで、低分子量成分は減少しない。また、ゲル化物の存在は、耐熱性の低下を招くため、高い耐熱性を得るためには存在しないことが必要である。
【0004】
また、アルキル基を有する置換フェノールのノボラック樹脂においても、数平均分子量は1200以下であった。
【0005】
これに対し、高耐熱性を得るためにさらに高分子にする方法として、前述の特開昭56−9290号公報に記載された方法がある。しかしながら、この製法では、反応が2段階であるために工業上不利であり、また、反応が175℃で4時間とかなりの高温が必要であるため、安全性と経費に問題がある。
【0006】
この製法に対し、特開昭60−260611号公報でオルトクレゾールとアルデヒドとを反応させて高分子量ノボラック樹脂を得る製法が示されている。この製法は、オルトクレゾールとアルデヒドとを、炭素数が3〜12の脂肪族アルコール、炭素数が3〜6のグリコールエーテル、ベンジルアルコールおよび炭素数が2〜6の脂肪族カルボン酸より選ばれた溶媒中で酸性触媒の存在下に重縮合させて得るという製法である。この方法によれば、確かにゲル化物のない高分子量のクレゾールノボラック樹脂が得られるのであるが、特開昭56−92908号公報ほどではないにせよ、反応温度が105℃〜150℃と非常に高く、有機溶剤の取り扱い上、きわめて危険である。
【0007】
さらには、反応時間においても相当長い時間を要し、工業上有利とは言えない。
【0008】
また、耐熱性向上のためには、数平均分子量が大きいことだけでなく、分子量の分布も影響する。あまりに大きな分子は反応性に劣り、従って、未反応分として取り残されるため、長期の劣化性が大きくなり、低分子成分の存在はガラス転移温度を低下させる。つまり、分布が広くなると、エポキシ樹脂との硬化反応において、不均一化が増大し、ガラス転移温度だけでなく、連続耐熱性や耐薬品性の向上の効果が少なくなる。
【0009】
そこで、この発明は、有機溶媒を使用しないで極めて短時間に高分子量のクレゾールノボラック樹脂を合成することができ、しかも狭い範囲の分子量分布の樹脂を得ることができると共に、有機溶媒を使用する場合においても、比較的低温で合成することができ、安全性が高い、クレゾールノボラック樹脂の製造方法を得ようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために、ゲル化物のない高分子量のクレゾールノボラック樹脂を合成する方法として、オルトクレゾールとトリオキサンをクロルシランの存在下で加熱して重縮合させて得るようにしたものである。
【0011】
クレゾールは、オルトクレゾール単独であっても、その50モル%未満、好ましくは30モル%未満をパラクレゾールに置き換えてもよい。パラクレゾールの使用は樹脂の耐熱性の向上に寄与するが、樹脂の溶剤に対する溶解性を低下させる。
【0012】
トリオキサンはクレゾールと反応して高分子化させる重要な成分である。従来のノボラック化反応では、ホルマリンが使用されるのが一般的であるが、ホルマリンだと反応系の初期において、水の存在がクロルシランの速やかな分解を生じるため、クロルシランの触媒作用の低下を招く。これにより、 この発明の特徴であるところの速やかな反応速度は得られない。
【0013】
パラホルムを使用した場合では、クロルシランの分解はないものの、溶媒を使用しない反応系では成分の混合のためには融点以上の温度にする必要があるが、パラホルムの融点が高く(121〜123℃)、融点以上の温度では反応が急激すぎてゲル化などの副反応が生じる。低温で反応させるためには、溶媒系とする必要があるが、この発明で使用する芳香族炭化水素系溶媒に溶解しにくいという問題がある。パラホルムを溶解する極性の溶媒においては、クロルシラン触媒ではほとんど反応しない。
【0014】
この発明では、まずフェノール性OH基がクロルシランによってシリル化された後、発生したHCl によりトリオキサンが開裂し、メチロールカチオンが生成し、オルトクレゾールと付加縮合するものと考えられる。これらのそれぞれの反応速度が早いために、従来製法よりも低温または短時間での合成が可能となったのである。また、この反応系には溶媒がなくても充分に反応するものである。
【0015】
さらに、この発明による製法では分子量分布の狭い樹脂が得られる。これは、反応速度が早いことに起因すると考える。
【0016】
クロルシランはノボラック化反応の触媒として作用するもので、限定するものではないが、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどがあり、これらから選択した1 種もしくは数種を併用する。
【0017】
この発明は、溶媒のない系でかつ短時間に合成できることに特徴を有しているが、反応の進行とともに塩化水素ガスが発生する。そこで、より安全性を高めるために、芳香族炭化水素系の有機溶媒中で反応させるようにすることで、塩化水素ガスの発生を抑制することができる。
【0018】
この発明で用いることのできる溶媒としては、芳香族炭化水素系とした。極性の溶媒はクロルシランと反応するかまたはクロルシランの活性が著しく低下し、塩化水素の発生がさまたげられるためである。そこで極性が低く、沸点が反応温度以上である溶媒として芳香族炭化水素系の有機溶媒としたのである。
【0019】
芳香族炭化水素系の有機溶媒としては、限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン、シメン、シクロへキシルベンゼン、ビフェニル、スチレンなどがあり、クレゾールとトリオキサンとの相溶性およびコストなどを考慮して選択し、1種もしくは数種を併用する。
【0020】
その配合量は限定するものではないが、クレゾール、トリオキサン、トリメチルクロルシランの3成分を溶解するのに必要な量が最小限で、多いほど塩化水素ガスの発生が抑制できる。3成分の合計量に対し、0.5〜10倍量が適当である。
【0021】
数平均分子量を1200以上としたのは、1200未満では耐熱性の効果が不十分であるからである。従来の数平均分子量を1200以下のクレゾールノボラック樹脂・クレゾールノボラックエポキシ樹脂硬化物系では150〜170℃程度のガラス転移温度しか得られないが、この発明によるクレゾールノボラック樹胎・クレゾールノボラックエポキシ樹脂硬化物系ではさらに高い耐熱性の組成物を得ることができる。
【0022】
この発明の製造方法は、クレゾールとトリオキサンとクロルシランの量を調整することで、ゲル化物を生じないで分子量を調整することができる。このため、必要とする成形性や硬化物の性能によって必要な分子量のクレゾールノボラックを合成することができる。
【0023】
この発明のクレゾールノボラック樹脂の反応温度条件としては、特に限定するものではないが、70〜120℃、より好ましくは、90〜110℃である。
【0024】
低温では、反応が緩やかなために、長時間を要し、高温では、危険性の増大だけでなく、急激な反応のため、副生成物が生じやすくなる。
【0025】
反応時間としては、特に限定するものではないが、反応温度によって決定される要因であり、溶媒のない系での50〜70℃とした場合の時間は、4〜1時間で、溶媒を含む系でも90〜110℃とした場合の時間は、6〜2時間である。
【0026】
エポキシ樹脂としては、特に限定するものではないが、公知のエポキシ樹脂が使用できる。たとえば、ビスフェノール型、多価フェノール型、多価アルコール型、ポリカルボン酸型、ノボラック型エポキシ、ナフタレン型、三官能型、四官能型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、などがあり、目的とする硬化物の特性によって、選択・組合わせを行う。
【0027】
クレゾールノボラック樹脂とエポキシ樹脂との配合比率は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対し、クレゾールノボラック樹脂0.5〜2当量の範囲が好適である。
【0028】
また、反応促進剤や充填剤、着色剤、離型剤、UV吸収剤、蛍光発光剤、難燃剤などを添加することもできる。
【0029】
次に、この発明によるエポキシ樹脂との樹脂組成物の用途は、トランスファー成形用として半導体の封止樹脂用途に、溶剤を加えてワニスとして特にBGAなどの半導体搭載用や高信頼性の必要な高多層プリント配線板用途や接着剤に、またビルドアッププリント配線板のコーティング樹脂用途に、ゴムの粘着付与剤、印刷インキ塗料、感圧複写紙用インキなど高信頼性用途や高耐熱と難燃性の必要な用途に応用が可能である。
【0030】
【実施例】
[実施例1]
O−クレゾール108g、トリオキサン30g、トリメチルクロルシラン30mlを反応器内に入れ、攪拌しながら60℃で1時間反応を行った。
【0031】
反応終了後、イオン交換水で洗浄した後、水分を除去して固形の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリスチレン換算)で2000であつた。また、この樹脂はメチルエチルケトンに溶解し、ゲル化物はなかった。
【0032】
[実施例2]
O−クレゾール108g、トリオキサン30g、トリメチルクロルシラン30gおよびトルエン250mlを反応器内に入れ、攪拌しながら95℃で3時間反応を行った。反応終了後、イオン交換水で洗浄した後、水分とトルエンを除去して固形の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリスチレン換算)で、1400であつた。また、この樹脂はメチルエチルケトンに溶解し、ゲル化物はなかった。
【0033】
[実施例3]
O−クレゾール108g、トリオキサン33g、トリメチルクロルシラン30gおよびトルエン250mlを反応器内に入れ、攪拌しながら95℃で3時間反応を行った。反応終了後、イオン交換水で洗浄した後、水分とトルエンを除去して固形の樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリスチレン換算)で、1800であつた。また、この樹脂はメチルエチルケトンに溶解し、ゲル化物はなかった。
【0034】
[比較例1]
O−クレゾール108g、バラホルムアルデヒド32g、エチルセロソルブ240gを硫酸10gとともに反応器内に入れ、撹拝しながら95℃で3時間反応を行った。反応終了後、17gのNaHCO 3 と水30gを加えて中和した後、高速に攪拌しながら水2l中に反応液を投入し、沈殿してくる樹脂を濾別後、乾燥して樹脂115gを得た。この樹脂の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリスチレン換算)で400であった。また、この樹脂はメチルエチルケトンに溶解し、ゲル化物はなかった。
【0035】
[比較例2]
O−クレゾール108g、パラホルムアルデヒド32g、エチルセロソルブ240gを硫酸10gとともに反応器内に入れ、攪拌しながら115℃で4時間反応を行った。反応終了後、17gのNaHCO 3 と水30gを加えて中和した後、高速に攪拌しながら水2l中に反応液を投入し、沈殿してくる樹脂を濾別後、乾燥して樹脂115gを得た。この樹脂の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリスチレン換算)で、1400であつた。また、この樹脂はメチルエチルケトンに溶解し、ゲル化物はなかった。
【0036】
次に、以下の樹脂組生物による硬化物を作成し、特性を測定した。
実施例、比較例で得た樹脂 50重量部
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN704) 100重量部
硬化促進剤(2E 4MZ) 0.1重量部
シリカ 200重量部
これらの組成物を金型で成形し、180℃ 2時間の加熱で硬化させた。
【0037】
実施例、比較例より合成した樹脂の特性と硬化物の特性を表1にまとめた。比較例1では、この発明と同様の反応条件では、分子量の低いものしか製造することができず、この発明と同様の分子量を得ようとすると比較例2のように反応温度を高くかつ反応時間を長くする必要がある。
【0038】
【表1】
Figure 0003657843
【0039】
Figure 0003657843
を使用し、ポリスチレンを標準試料として、測定して、数平均分子量および重量平均分子量を求めた。
【0040】
ガラス転移温度:JIS C64815.1.3項(ねじり法)に準拠して減衰を測定し、減衰のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0041】
【発明の効果】
この発明の製造方法は、ゲル化物のない高分子量のクレゾールノボラック樹脂を短時間かつ低温で合成でき、また分子量の調整も容易であり、工業上、極めて有用である。

Claims (2)

  1. オルトクレゾールとトリオキサンをクロルシランの存在下で加熱して重縮合させて、エポキシ樹脂硬化剤としての数平均分子量が1200以上であるクレゾールノボラック樹脂の製造方法。
  2. オルトクレゾールとトリオキサンをクロルシランの存在下で芳香族炭化水素系溶媒中で加熱して重縮合させて、エポキシ樹脂硬化剤としての数平均分子量が1200以上であるクレゾールノボラック樹脂の製造方法。
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