JP3657227B2 - Pcb含有絶縁油の回収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCB汚染物の無害化処理に関するものであって、詳しくは、PCB汚染物内のPCB含有絶縁油を回収するために用いられる回収装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)は、安定性、不燃性、電気絶縁性に優れていることから、過去において、コンデンサやトランス等(以下「コンデンサ等」という。)を構成する際の絶縁油に利用されていた。このように利用されるPCBは、容易に化学的に分解されないため、使用されたコンデンサ等が廃棄処理された後には、水、土壌等に蓄積して、食品等を介して人体に入るおそれがある。
【0003】
このように、PCBは、分解されにくく有害であるため、現在は、その製造や新規使用等が禁止されている。そして、その毒性が指摘された後は、PCBを含有する絶縁油(以下、「PCB含有絶縁油」という。)を使用したコンデンサ等は保管され、その早急な処理が必要とされている。
【0004】
コンデンサ等は、具体的には、本体とPCB含有絶縁油、及びこれらを収容する容器等から構成され、本体は、素子、その他付属物とから構成されている。このうち、素子は、帯状の電極と帯状の絶縁体が重ねられた状態で、これらが何層にも巻かれて構成されている。
【0005】
上記コンデンサ等の廃棄処理を行う際には、容器内から抜き出されたPCB含有絶縁油については、そのPCBを確実に分解処理(無害化)することが求められ、従来から種々の処理方法が検討されている。
また、コンデンサ等を構成する容器や素子については、絶縁油を抜き出した後においても、容器には絶縁油が付着しており、素子の絶縁体は絶縁油を含浸しているため、これらを完全に除去した後、安全な状態で廃棄あるいは再利用する必要がある。
【0006】
さて、PCB汚染物の除染処理を行う場合、PCB汚染物は、上述したように、その内部に充填等されているPCB含有絶縁油を抜き出した後(回収した後)に、その容器等についての解体処理等が行われるが、回収作業時に全てのPCB含有絶縁油を抜き出すことは困難である。したがって、PCB汚染物の除染処理を行う場合には、回収装置表面の他、解体箇所の下部あるいは搬送経路下部にPCB含有絶縁油が流下して付着する場合がある。
【0007】
そこで、従来技術においては、メインのPCB含有汚染物の回収装置に加えて、PCB含有絶縁油が流下する可能性がある作業箇所の下には、PCB含有絶縁油を回収するための油受け等の回収装置が設けられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、次のような問題があった。
【0009】
上述したように、従来技術においては、PCB含有絶縁油を回収するために、種々の回収装置が設けられているが、PCB含有絶縁油が付着した各部表面からPCBが蒸発するという問題があった。
【0010】
そこで、従来技術においては、PCB含有絶縁油の回収、解体処理、および洗浄処理等の除染処理を遮蔽室内にて行うべく構成し、PCBの蒸発に対応すべく、遮蔽室内を常に換気(排気)している。
ところが、このように遮蔽室内を常時排気した場合であっても、大量のPCB含有絶縁油の回収を行う場合(特にメインの回収装置使用時)には、遮蔽室内には高濃度のPCB蒸気が充満する可能性があり、そのようなときに作業者が遮蔽室内に入ると、曝露する可能性があるという問題があった。
また、PCB蒸気の濃度の高まりがメインの回収装置使用時等の一時的なものであったとしても、遮蔽室内の機器は、そのたびに高濃度のPCB蒸気にさらされて汚染されることとなるため、メンテナンス処理時や解体時に洗浄の手間がかかるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来技術にかかる問題を解決するためになされたものであって、PCB含有絶縁油を回収する際におけるPCB蒸気の発生を低減させることが可能なPCB含有絶縁油の回収装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、PCB汚染物内のPCB含有絶縁油を回収するために用いられる回収装置であって、PCB含有絶縁油を受ける油受け部と、前記油受け部表面に洗浄液を流す洗浄液流出部とを備え、該洗浄液流出部は、前記油受け部に設けられた複数の洗浄液吐出部と、前記洗浄液吐出部を介して前記油受け部の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部とを用いて構成され、吐出された洗浄液をそれぞれ重なり合わせて油受け部に吐出させ得るように吐出液が略扇形に吐出される前記洗浄液吐出部が所定間隔に備えられ、且つ、前記洗浄液流出部から前記洗浄液を流すタイミングが、前記PCB含有絶縁油が前記油受け部に流下される直後あるいは直前から洗浄液の流出を開始させて、流下が終了してから30〜60秒経過後に洗浄液の流出を終了させるべく定められていることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、前記PCB含有絶縁油を回収する際に、この絶縁油を受ける油受け部表面に洗浄液を流す前記洗浄液流出部が設けられているため、回収時に前記油受け部に付着したPCBが前記洗浄液に溶解され、また洗浄液によって物理的に洗い流され、さらにPCB表面を洗浄液が覆うこととなる。以上のことから、油受け部にPCBが付着する時間が大きく低減され、また空気との接触状態も低減されることとなるため、PCBの蒸発、拡散を効果的に抑えることが可能となる。さらに、該洗浄液流出部は、前記油受け部に設けられた複数の洗浄液吐出部と、前記洗浄液吐出部を介して前記油受け部の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部とを用いて構成され、吐出された洗浄液をそれぞれ重なり合わせて油受け部に吐出させ得るように吐出液が略扇形に吐出される前記洗浄液吐出部が所定間隔に備えられており、前記複数の洗浄液吐出部を介して前記洗浄液供給部から供給される前記洗浄液を吐出させ、迅速に前記洗浄液を前記油受け部の表面全体に流出させることが可能となるため、PCBの蒸発を効果的に抑えることができる。
【0014】
また、本発明にかかるPCB含有絶縁油の回収装置においては、前記油受け部が前記PCB汚染物の解体箇所下部に設けられている構成が好ましく、さらに、前記油受け部が前記PCB汚染物の搬送経路下部に設けられている構成が好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、主にPCB含有絶縁油を回収する箇所(メインの回収装置設置場所)はもちろんのこと、上記のようにPCB含有絶縁油が漏洩する可能性がある箇所(前記解体箇所下部、前記搬送経路下部)にも、予め前記油受け部が設けられているため、かかる箇所にて前記PCB含有絶縁油が漏洩したとしても、上述した前記洗浄液の機能により、PCBの蒸発を抑えることができる。
【0018】
また、本発明にかかるPCB含有絶縁油の回収装置においては、前記洗浄液吐出部が、前記油受け部の上縁部に設けられている構成が好ましい。
【0019】
この好ましい構成によれば、前記複数の前記洗浄液吐出部が前記油受け部の上縁部に設けられているため、前記油受け部の全面に対して、前記洗浄液を上方から下方に迅速に流出させることができる。
【0020】
また、本発明にかかるPCB含有絶縁油の回収装置においては、前記油受け部が漏斗形状を有していることが好ましい。
【0021】
この好ましい構成によれば、前記油受け部は、その開口部が広く形成され、下部に行くに従って先細形状となっているため、漏れ等なく比較的容易に前記PCB含有絶縁油を回収すると共に、回収したPCB含有絶縁油を簡単に集めて次工程に搬送等することができる。
【0022】
また、本発明にかかるPCB含有絶縁油の回収装置においては、前記洗浄液流出部から前記洗浄液を流すタイミングが、前記PCB含有絶縁油が前記油受け部に流下される時期に応じて定められる。
【0023】
この構成によれば、前記PCB含有絶縁油の流下時期に応じて、前記洗浄液を流すタイミングが定められるため、前記洗浄液の使用量を抑えつつ、効果的にPCBの蒸発を抑制することができる。例えば、前記PCB汚染物内のPCB含有絶縁油を直接的に流下させて、PCB含有絶縁油の回収を行う箇所(メインの回収箇所)においては、PCB汚染物を挟持等して絶縁油を流下させる機構の動きとリンクして、絶縁油の流下直後(あるいは直前)から洗浄液の流出を開始させて、絶縁油流下後であって所定時間経過した後(30〜60秒経過後)に洗浄液の流出を終了させるべく構成すればよい。また、PCB含有絶縁油の漏洩等の可能性がある箇所(サブの回収箇所)においては、実際に漏洩が生じた際、あるいは予め定められた所定時間毎に洗浄液の流出を行うべく構成すればよい。
【0024】
また、本発明にかかるPCB含有絶縁油の回収装置においては、前記洗浄液として、PCBよりも蒸気圧が低い洗浄液が用いられる構成が好ましい。
【0025】
この好ましい構成によれば、PCBよりも蒸気圧が低い洗浄液が用いられるため、PCBの蒸発をより効果的に抑制することが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、PCB汚染物の無害化処理に関するものであって、PCB汚染物の解体処理およびPCB含有絶縁油の回収処理に特徴を有する。したがって、本実施形態においては、これらの処理に用いられるPCB汚染物の解体装置およびPCB含有絶縁油の回収装置について、特に詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施形態にかかる各装置にて処理されるコンデンサ(本発明の「PCB汚染物」に相当)の一例を示す概略断面図である。
コンデンサ1は、炭素鋼板等にて形成される直方体形状の容器2と、容器2内に収容される本体部3と、容器2の上部を密封する炭素鋼板等にて形成される上蓋4と、上蓋4を貫通すべく設けられた複数の碍子5と、碍子5の先端から突出すべく設けられた端子6と、端子6から碍子5内を貫通して本体部3の端子部に接続されるリード線7とを用いて構成されており、さらに、このコンデンサ1を成す容器2内には、電気絶縁用および冷却用のPCB含有絶縁油8が充填されている。
【0028】
また、本体部3は、アルミ箔と紙(クラフト紙等)とを重ねて巻回された多数のコンデンサ素子9等を用いて構成されている。さらに、このコンデンサ素子9等から成る本体部3は、容器2の側板の内周面に配設された固定板3aの内側に収容されており、本体部3の底部と容器2の底面との間にはクラフト紙3bが配設されている。
【0029】
さて、先にも述べたように、PCB汚染物の処理には、PCB等を含んだ絶縁油(PCB含有絶縁油)の処理と、PCBを含浸(あるいはPCBが付着)した各構成要素の処理とがある。そして、このPCBを含浸等した構成要素(容器2内の本体部3等)については、より細かい状態とした後に洗浄処理等を施す必要がある。
すなわち、以上のように構成されたPCB汚染物であるコンデンサ1についての除染処理を行うためには、コンデンサ1を成す容器2等を解体して、その内部の本体部3等と、容器2内に封入されているPCB含有絶縁油8とを、分離回収しなければならない。
【0030】
図2は、PCB汚染物たるコンデンサの除染処理を実施する際のプロセスフローの概略図を示したものである。
【0031】
コンデンサ1は、受入時に、外部汚れ、PCB漏れ、および破損程度等が検査され、まずはじめに、コンデンサ1の容器2の外部除塵処理S201が行われる。また、PCB汚染のない外部部材についは、その取り外し処理S202が行われて、取り外された金属等については、リサイクルあるいは廃棄される。
【0032】
次に、外部部材等の取り外しが行われたコンデンサ1は、移送ラインに移され、遠隔操作にて、寸法・重量測定処理S203およびX線による内部構造透視の検査S204を受ける。この内部透視処理S204の結果は、次工程以降のコンデンサ1の穿孔処理、解体処理等を行う際に利用される。すなわち、この内部透視の結果に基づいて、穿孔位置(穿孔しやすい位置、適切な穿孔深さ等)あるいは切断位置(切断しやすい位置等)等が定められる。
ここで「切断位置」は、例えば、内部透視の結果に基づき確認された容器2内の本体部3に干渉しない位置と、後述する上蓋支持具に干渉しない位置との間に定められる。また、容器2内のPCB含有絶縁油8の液面が容器2内の本体部3よりも上方に位置する程度にしか抜油されない場合には、絶縁油8の漏出を防止するために、「切断位置」は、絶縁油8の液面と上蓋支持具に干渉しない位置との間に定めることが好ましい。
【0033】
次に、コンデンサ1の内部のPCB含有絶縁油8を適切に回収するために、真空吸引状態にある抜油針にてコンデンサ1の上蓋4の穿孔処理S205が行われ、後述する上蓋4の切断時にコンデンサ1に圧力封入されているPCB含有絶縁油が飛散しないように、所定量(上蓋4の切断を適切に行うことが可能となる量)のPCB含有絶縁油8の抜油処理S206が行われる。
【0034】
抜油処理S206が行われた後のコンデンサ1については、次に、容器2上部の切断処理S207が行われて、上蓋4が分離される。この分離された上蓋4については、後に適切な分別・洗浄等を実施可能なように解体処理S208が行われる。
【0035】
また、上蓋4が分離された後のコンデンサ1については、その内部の残油(PCB含有絶縁油8)の回収処理S209が行われた後に、容器2内から本体部3の取り出し処理S210が行われる。すなわち、容器2と本体部3とPCB含有絶縁油8とにそれぞれ分離されることとなる。
【0036】
さらに、各構成要素についても、先に説明した上蓋4の場合と同様に、適切な洗浄効果をあげるために、分解・裁断処理が施される。具体的には、分離された容器2については、底の切断処理等の解体処理S211等が行われ、本体部3(コンデンサ素子9)についても、裁断処理等の解体処理S212等が行われる。
【0037】
そして、残油回収処理S209にて回収されたPCB含有絶縁油8については、抜油処理S206にて回収されたPCB含有絶縁油8と共に、図示外の装置にて無害化処理が施され、解体処理等が行われたコンデンサ1の各構成要素(容器2、本体部3、および上蓋4等)については、それぞれ洗浄の難易度等に合わせた分別処理および洗浄処理等S213(分別、洗浄、乾燥等)が施される。
【0038】
上記洗浄処理等が終了した後には、その洗浄方法、あるいは構成部位等に応じて、それぞれ定められた方法を用いて判定処理S214が行われる。この判定処理S214の方法としては、例えば、洗浄液試験法、拭き取り試験法、部材採取試験法がある。
【0039】
さて、本発明は、上述したように、PCB汚染物の無害化処理に関するものであって、PCB汚染物の解体処理(容器上部切断処理S207)およびPCB含有絶縁油の回収処理(残油回収処理S209)等に特徴を有する。
そこで以下においては、これらの各処理に用いられる装置について具体的に説明する。
【0040】
図3は、本実施形態にかかる解体装置の概略図を示したものであって、より詳細には、解体装置にPCB汚染物(コンデンサ)が搬入された状態を示したものである。また、図4は、図3のIV−IV線矢視図を示したものである。
【0041】
本実施形態にかかる解体装置は、搬入されたコンデンサ1を解体位置にて支持・固定するコンデンサ支持具31と、コンデンサ1の所定箇所(例えば、コンデンサ1の上部箇所(図1の破線X位置))を切断すべく設けられた切断機構32(第一切断機構32A,第二切断機構32B)と、コンデンサ1の上蓋を支持等する上蓋支持具33等とを用いて構成されている。
また、この解体装置の下部には、コンデンサ1の解体時に漏洩する可能性があるPCB含有絶縁油を回収するための第二の回収装置51(本発明の「PCB含有絶縁油の回収装置」に相当)が設けられている。
そして、ここで切断位置として定められる破線X位置は、上述したように、上蓋4を支持している状態の上蓋支持具33、容器2内の本体部3、および容器2内のPCB含有絶縁油8の液面のいずれにも干渉しないように定められるものであり、本実施形態においては、図1に示すように、上蓋支持具33に干渉せず(上蓋支持具33のつかみ代よりも下方であって)、容器2内の絶縁油8の液面に干渉しない位置(液面よりも上方)に、切断箇所たる破線X位置が定められる。
【0042】
コンデンサ支持具31は、切断機構32を用いた切断時にコンデンサ1が動いたり倒れたりしないように、容器2を支持・固定するものであって、コンデンサ1の両側に一対設けられている。このコンデンサ支持具31は、矢印X1方向(図3参照)に移動可能に構成されており、コンデンサ1の搬入時には、コンデンサ1に接触しない位置に待避しており、切断時には、コンデンサ1に接触して固定する位置にまで移動する。そして、さらに、切断後には、コンデンサ1はさらに後流側の工程(S209等)に搬出されるため、支持具31はコンデンサ1と非接触状態となる位置にまで待避する。すなわち、このコンデンサ支持具31は、搬入、切断、および搬出が繰り返される状態において、待避(非接触)、固定(接触)、および待避(非接触)を繰り返すべく機能する。
【0043】
切断機構32は、図4に示すべく、解体装置に搬入され、コンデンサ支持具31に固定された状態のコンデンサ1の両側に一対設けられており、各切断機構32A,32Bには、それぞれ薄板の切断に用いられる薄板用チゼル321(本発明の「切断部」に相当)と厚板の切断に用いられる厚板用チゼル322(本発明の「切断部」に相当)とが設けられている。また、第一切断機構32Aには、リード線7等を切断するために用いられるニッパ323が設けられている。
なお、図3および図4においては、図面の複雑化を避けるために、適宜重複する部分等については記載を省略しているところもある。例えば、図3においては、第一切断機構32Aに設けられている各チゼル321,322の記載は省略している。
【0044】
この切断機構32は、図4に示すように、矢印Y1方向に駆動可能な設置台320(第一設置台320A,第二設置台320B)(本発明の「駆動部」に相当)に上記チゼル321,322等が設けられており、各チゼル321,322については、設置台320上にて矢印X2方向に駆動可能に構成されている(この駆動機構も本発明の「駆動部」に相当)。また、各チゼル321,322は、回転可能に構成されている。具体的には、この各チゼル321,322近傍は、図5および図6に示すように構成されている。この図5および図6については、後述する。
【0045】
上蓋支持具33は、切断機構32を用いた切断時に上蓋4および端子6等が落ちないように、上蓋4等を固定するものであって、搬入されたコンデンサ1の上部に設けられている。この上蓋支持具33は、上下方向(矢印Z1方向)(図3参照)に駆動可能に構成されており、コンデンサ1の搬入時には、コンデンサ1に接触しない位置に待避しており、切断時には、コンデンサ1の上蓋4を挟持して固定すべく機能する。そして、この上蓋支持具33は、容器2の切断処理後には、上蓋4を挟持固定した状態で上方向に移動して、コンデンサ1の容器2から、上蓋4およびこれに付随した各構成要素(端子6等)を解体分離すべく機能する。なお、この解体分離の際、上蓋4に付随して持ち上げられたリード線7については、切断機構32に設けられたニッパ323にて切断される。このようにして、上蓋4等の解体分離が終了した後には、上述したように、コンデンサ1はさらに後流側の工程(S209等)に搬出され、上蓋4等については、さらに他の装置(図示省略)を用いて解体処理(S208)等が施される。
【0046】
また、図3および図4に示された第二の回収装置51は、上述したように、コンデンサ1解体時におけるPCB含有絶縁油の漏洩に備え、解体装置の下部に設けられたものである。
そして、この第二の回収装置51は、これらの図に示すように、解体装置におけるコンデンサ1の解体領域を覆うような開口部を有する油受け部511と、この油受け部511の表面に洗浄液を吐出すべく設けられた洗浄液流出部512と、洗浄液供給部(図示省略)から洗浄液流出部512に対して洗浄液を供給すべく設けられた洗浄液供給パイプ513と、油受け部511にて回収されたPCB含有絶縁油および洗浄液を図示外の処理装置に排出するために設けられた排出パイプ514等とを用いて構成されている。
なお、この第二の回収装置51は、他の箇所に設けられた回収装置(後述する第一の回収装置)等と略同様の構成および作用効果を有する。したがって、ここでは、第二の回収装置51の詳細な構成および具体的な作用効果等については省略する。
【0047】
図5は、設置台上に設けられたチゼルおよびその周辺の構成の概略図を示したものであり、図6は、図5のVI線方向矢視図を示したものである。なお、各チゼル321,322およびその周辺の構成は、いずれも略同様の構成を有しているため、ここでは、特に「A」「B」等の符号を付すことなく説明する。
【0048】
本実施形態にかかる切断機構32においては、チゼル321を矢印X2方向に駆動させるべく、ガイド棒324と油圧シリンダ325とが設けられ、チゼル321はこのガイド棒324に取り付けられている。このガイド棒324および油圧シリンダ325は、本発明の「駆動部」に相当する。
さらに詳細には、チゼル321は、回転支持フレーム341、反力吸収アブソーバ328、断続的打力発生器327等を介してガイド棒324に取り付けられており、断続的打力発生器327とチゼル321との間には引き戻し用ばね326および回り止め342が設けられている。また、チゼル321は、モータ329によって、回動軸343を中心としてS1方向に回動可能に構成されている。
【0049】
また、チゼル321(322)は、三枚の刃を用いて構成されており、中央刃321a(322a)が、その両側に設けられた側方刃321b(322b)の下側に反るように設けられている。すなわち、図5に示すような側面図において、中央刃321aと側方刃321bとの間に所定の角度が設けられている。
【0050】
そして、このチゼル321は、以上のように所定の角度を有することによって、容器2を切断する際には、中央刃321aのみが容器2を構成する側板の内側(裏側)に入り込み、中央刃321aと側方刃321bとの間で容器2を挟持するような状態で前進することによって、容器2の側板を剪断力によって切断することができる。この際、両側の側方刃321bは、側板の外側に接して中央刃321aをサポートする。なお、切断を行うための剪断力は、本実施形態においては、上述した断続的打力発生器327にてチゼル321に与えられる。
【0051】
上記図3〜図6に示すべく構成された解体装置においては、コンデンサ1が搬入された後に、具体的に次のように機能して、解体処理(容器上部切断処理S207)が行われる。
【0052】
まず、コンデンサ1が解体装置に搬入されると、コンデンサ支持具31を駆動させて、コンデンサ1が側方から支持固定され、さらに、上蓋支持具33を下降させることによって、コンデンサ1の上蓋4が挟持固定される。
【0053】
次いで、そのコンデンサ1を成す容器2の側板の厚さに応じて、切断機構32において、薄板用チゼル321あるいは厚板用チゼル322が選択され、選択されたチゼルによる容器2側板の切断処理が行われる。この切断位置は、内部透視の結果等に基づいて定められ、図1に示すようなコンデンサ1については、例えば破線Xの位置で切断処理が行われる。
この切断の際には、それぞれの切断機構32を駆動させるために設けられた駆動部によって、各チゼルはコンデンサ1の容器の外周形状に沿って移動可能に構成されている。そして、第一切断機構32Aに設けられたチゼルによって、コンデンサ1の第一面1aおよび第二面1bが切断され、第二切断機構32Bに設けられたチゼルによって、コンデンサ1の第三面1cおよび第四面1dが切断される。
【0054】
例えば、第一切断機構32Aによってコンデンサ1の第一面1aおよび第二面1bを切断する場合について説明する。
まず、図5に示すような角度のチゼル321を第一面1aに接する位置まで矢印X21方向に移動させ、チゼル321を第一面1aを切削可能な状態で矢印Y11方向に移動させることによって第一面1aの切断処理を行う。
次いで、第一面1aと第二面1bとの間の角部にて、チゼル321が第二面1bを切削可能な状態となるように、チゼル321をモータ329によって矢印S11方向に回転させる。すなわち、第一面1aの切断時における、第一面1aとチゼル321との間に形成された関係(角度等)と、略同様の関係となるべく、第二面1bに対してチゼル321を矢印S11方向に回転させる。そして、その状態を維持しつつ、チゼル321を切削可能な状態で矢印X21方向に移動させることによって第二面1bの切断よりを行う。
【0055】
コンデンサ1を成す容器2の全面1a,1b,1c,1d(図4参照)の所定位置が切断された後には、上蓋4を挟持している上蓋支持具33を上昇させて、上蓋4に付属のリード線7等をニッパ323にて切断して、上蓋4およびこれに付属した構成要素を容器2から分離させる。
【0056】
なお、上述したように、上蓋4等がコンデンサ1の容器2から分離させられる際には(あるいは、チゼルにて切断を行っている最中においては)、容器2内のPCB含有絶縁油の残留状態等によって、容器2内からPCB含有絶縁油が漏出する場合がある。そこで、本実施形態においては、解体装置の下部に先に説明した第二の回収装置51を設けている。この第二の回収装置51は、必要に応じて(例えば、所定時間毎に)、油受け部511の上部に設けられた洗浄液流出部から、油受け部511の表面に洗浄液を吐出可能に構成されており、これによって、絶縁油が漏出した場合のPCBの蒸発を抑制すべく構成されている。
【0057】
以上のようにして、容器上部の切断処理S207が終了した後には、図2にも示したように、上蓋4は解体処理S208へ、容器2については残油回収処理S209へ送られる。残油回収処理S209およびこの処理に用いられる装置については、後述する。
【0058】
本実施形態にかかる解体装置は、上記図3〜図6に示すべく構成され、各構成要素が上述したように機能するため、次のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態によれば、三本刃を有するチゼル321,322を容器2の外周形状に沿って移動させながら容器2の所定箇所(例えば破線X位置)を切断して、コンデンサ1の容器2の解体分離を行うべく構成されているため、容器2の切断面のカエリが外向きに形成される。つまり、本実施形態においては、チゼルの中央刃321a,322aが容器2内に挿入された状態かで容器2の切断が行われるため、適切に外向きのカエリが形成される。
したがって、本実施形態によれば、分離解体の際に、容器2内から容易に本体部3(コンデンサ素子9)を取り出すことが可能であるため、作業性が大きく向上する。
【0060】
また、本実施形態によれば、チゼルを上述したように連続的に駆動させることによって容器2の切断処理が行われるため、従来技術(例えば、サンダー等を用いる場合)よりも細かな切削粉の発生量を少なくすることができる。さらに、火花の発生や発熱も抑えつつ、比較的速く解体処理を実施することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、三本刃のうちで中央刃のみが下方に反って、所定の角度を有すべく構成されているため、中央刃と側方刃との間で容器2の側板を挟持することができる。すなわち、このような挟持状態にてチゼルを駆動させることによって、容器2の切断面を適切に外向きに形成することが可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態によれば、上述した構成に基づいて、搬入後のコンデンサ1の解体処理を自動化して、遠隔処理を行うことが可能となる。したがって、本実施形態によれば、解体処理の際における作業者のPCBに接する時間を低減させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、解体装置下部に第二の回収装置51を設けているため、容器2内のPCB絶縁油の漏出等についても、適切に対応可能である。詳細は後述する。
【0064】
以上のようにして、コンデンサ1の容器2の上部切断処理S207が終了した後には、上蓋4が切断された容器2は、容器2内のPCB含有絶縁油を回収するために、残油回収処理S209に送られる。
【0065】
図7は、本実施形態にかかる残油回収処理を行う際に用いられる回収装置(第一の回収装置)の概略図を示したものである。また、図8は、図7のVIII−VIII線矢視図である。
【0066】
本実施形態にかかる第一の回収装置61(本発明の「PCB含有絶縁油の回収装置」に相当)は、これらの図6および図7に示すように、油受け部611と、この油受け部611の表面に洗浄液を吐出すべく設けられた洗浄液流出部612と、洗浄液の供給源たる洗浄液供給部615と、洗浄液流出部612と洗浄液供給部615とを連通可能に設けられた洗浄液供給パイプ613と、油受け部611にて回収されたPCB含有絶縁油および洗浄液を図示外の処理装置に排出するために設けられた排出パイプ614と、搬送されたコンデンサ1を収容して、その内部で容器2を傾斜あるいは反転等させるフード部618等とを用いて構成されている。
【0067】
また、洗浄液供給パイプ613には、洗浄液の供給量および供給時期等を適切に調節すべく洗浄液調整バルブ616が設けられ、排出パイプ614には、排出液調整バルブ617が設けられている。
【0068】
さらに、本実施形態にかかる洗浄液流出部612は、油受け部611の上縁部に配設されたパイプ状部材を用いて構成されており、このパイプ状部材には複数個の小孔612a(本発明の「洗浄液吐出部」に相当)が設けられている。なお、この小孔612aは、吐出される洗浄液が略扇形となるように、パイプ状部材に穿孔されている。また、小孔612aの穿孔間隔は、各小孔612aから略扇形に吐出される洗浄液が、それぞれ重なり合って、油受け部611全面に吐出されるような間隔に設定される。
【0069】
本実施形態にかかる第一の回収装置61は、上記図7および図8に示すべく構成され、各要素が以下のように機能し、種々の効果を得ることができる。
【0070】
まず、本実施形態においては、上述した容器上部切断処理S207が終了した容器2がフード部618内の残油回収位置に搬入され、容器2内からPCB含有絶縁油が流下される前に、洗浄液供給部615の洗浄液が、洗浄液調整バルブの調整量に応じて、洗浄液供給パイプ613および洗浄液流出部612(の小孔612a)を介して油受け部611の表面に流される。
また、このフード部618は、図7に示すように、油受け部611および油受け部611にPCB含有絶縁油を流下する容器2等の全てを含むべく(すなわち、作業領域全体を閉塞すべく)構成されており、このように構成することによって、外部にPCBが流出することを防止している(環境対策、曝露対策)。なお、先に説明した図3等においては省略したが、同様の趣旨に基づいて、解体装置についてもその作業領域全体を閉塞すべくフード部(図示省略)が設けられている。
【0071】
次いで、油受け部611の表面全体に、洗浄液が略行き渡る程度に流出された後、容器2を傾斜あるいは反転等させて、容器2内のPCB含有絶縁油を油受け部611内に流下させる。なお、このPCB含有絶縁油の流下時、洗浄液流出部612からは、油受け部611に対する洗浄液の供給が連続して行われている。
【0072】
次いで、容器2内のPCB含有絶縁油の全て(容器2内に付着あるいは含浸しているものを除く。)を油受け部611に流下させた後には、容器2の開口部(上蓋4が切断された面)を上方となるべく、容器2を反転等させる。そして、油受け部611へのPCB含有絶縁油の流下が終了してから所定時間経過後(30〜60秒経過後)に、洗浄液調整バルブ616を閉止して、油受け部611に対する洗浄液の供給を停止する。なお、流下されたPCB含有絶縁油および洗浄液は、油受け部611から排出パイプ614を介して、図示外の処理装置に送られる。
【0073】
以上のようにして、PCB含有絶縁油の回収(排出)が完了した容器2は、次いで、本体部取り出し処理S210に搬送され、先にも述べたように、その後分別・洗浄等されて、PCBの除染が行われる。
【0074】
さて、本実施形態にかかる回収装置61は、上述したように構成され機能するため、次のような効果を得ることができる。なお、第二の回収装置51の構成は、基本的に(小孔の構成等)、第一の回収装置61と同様であるため、特記しない限りは、第二の回収装置51も第一の回収装置61と同様の効果を有する。
【0075】
まず、本実施形態によれば、PCB含有絶縁油を回収する際に、洗浄液流出部612から油受け部611表面に対して洗浄液が流されるため、油受け部611上にて、PCBが洗浄液に溶解して洗い流されることとなる。すなわち、本実施形態によれば、油受け部611にPCBが付着する時間が大きく低減されることとなって、PCBの蒸発を効果的に抑えることが可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、主にPCB含有絶縁油を回収する箇所(第一の回収装置61)はもちろんのこと、上記のようにPCB含有絶縁油が漏洩する可能性がある箇所(例えば解体箇所下部)にも、予め回収装置(第二の回収装置51)が設けられているため、かかる箇所にてPCB含有絶縁油が漏洩したとしても、上述した洗浄液の機能により、PCBの蒸発を抑えることができる。
なお、本実施形態においては、第二の回収装置51を解体装置の下部に設ける構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、容器2内からPCB含有絶縁油が漏出する可能性がある部位の如何なる箇所に設けてもよい。例えば、容器2を搬送する搬送経路の下部に設けてもよい。
【0077】
また、本実施形態によれば、複数の小孔612a(本発明の「洗浄液吐出部」に相当)を介して洗浄液供給部615から洗浄液が供給されるため、迅速に洗浄液を油受け部611の表面全体に流出させることが可能となり、PCBの蒸発を効果的に抑えることができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、複数の小孔612aが油受け部611の上縁部に設けられているため、油受け部611の全面に対して、洗浄液を上方から下方に迅速に流出させることができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、油受け部611は漏斗形状を有し、その開口部が広く形成され、下部に行くに従って先細形状となっているため、漏れ等なく比較的容易にPCB含有絶縁油を回収すると共に、回収したPCB含有絶縁油を簡単に集めて次工程に搬送等することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、PCB含有絶縁油の流下時期に応じて、洗浄液を流すタイミングが定められるため、洗浄液の使用量を抑えつつ、効果的にPCBの蒸発を抑制することができる。
例えば、PCB汚染物内のPCB含有絶縁油を直接的に流下させて、PCB含有絶縁油の回収を行う箇所(第一の回収装置61)においては、PCB汚染物を反転等させて絶縁油を流下させる機構の動きとリンクして、絶縁油の流下直前から洗浄液の流出を開始させて、絶縁油流下後であって所定時間経過した後に洗浄液の流出を終了させるべく構成すればよい。
また、PCB含有絶縁油の漏洩等の可能性がある箇所(第二の回収装置51)においては、実際に漏洩が生じた際、あるいは予め定められた所定時間毎に洗浄液の流出を行うべく構成すればよい。漏洩が生じたことは、目視で確認しても、また何らかのセンサーを用いてよい。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態においては、油受け部の開口部形状が矩形である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、全体として漏斗形状を有するものであれば、開口部形状は円形、あるいは他の多角形(例えば五角形、六角形等)であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態においては、油受け部が漏斗形状である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、容器内からPCB含有絶縁油を適切に流下させて回収可能であれば、いかなる形状であってもよい。したがって、例えば、樋形状(トラフ(trough)形状あるいはガータ(gutter)形状等)であってもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、使用される洗浄液については、特に説明しなかったが、本発明に使用される洗浄液は特に限定されず、PCB含有絶縁油を溶解可能であって、PCBと相溶性があり、PCBの蒸発を適切に抑制できればよい。したがって、例えば、ヘキサン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、炭化水素系溶剤、絶縁油等を使用可能である。
なお、これらの洗浄液の中では、環境負荷が少なく、防曝対策の必要がなく、さらに蒸気圧が低い(PCBの蒸発をより効果的に抑制可能な程の蒸気圧)という性質を有する「絶縁油」を用いることが特に好ましい。
洗浄液としては、PCBの蒸発をより効果的に抑制するために、PCBよりも蒸気圧が低い洗浄液を用いることが好ましい。
【0085】
さらに、上記実施形態においては、解体装置の下部に回収装置(第二の回収装置)を設ける場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、図2で示した解体の全行程、搬送経路(ベルトコンベア等)下部、あるいは洗浄機器の間のハンドリング等の、いわゆるPCBが漏出する可能性がある全ての箇所において適用可能である。
【0086】
また、上記実施形態においては、三本刃を備えたチゼルを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、容器を切断した後、切断面に外向きのカエリを形成可能であれば、二本以下あるいは四本以上の刃を有するチゼルを用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、チゼルを複数(片側二本ずつ)設ける場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、その本数は必要に応じて適宜変更可能である。
さらに、上記実施形態においては、片方のチゼルにて、容器2の二面の切断を行う場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、一本のチゼルにて全面の切断を行ってもよく、また、各面をそれぞれ一本のチゼルにて切断すべく構成してもよい。すなわち、そのチゼルの数や、受け持つ切断面等は特に限定されない。
【0088】
また、上記実施形態においては、切断部としてチゼルを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、チゼルに換えて、図9に示すような切断部を用いてもよい。
【0089】
図9は、本発明の実施形態にかかる解体装置を成す他の切断部の概略図を示したものであって、図9(a)は側面概略図を示し、図9(b)は図9(a)のIX−IX断面概略図を示したものである。
この図9に示された切断部70は、先に説明されたチゼル321,322の換わりに使用可能なものであって、図5にて説明したガイド棒に取り付けた状態で容器2の外周形状に沿って移動させつつ、容器2の側板の切断処理を行うことができる。
【0090】
より具体的に、切断部70は、容器2の外周面に接触する固定部71と、固定部71にピン73にて接合されて、このピン73を中心にして回動可能な切削部72と、切削部72を駆動させるべく設けられた油圧シリンダ74等とを用いて構成されている。
【0091】
切削部72の先端部72aであって、容器2内面に接触する部位には、容器2を切断するための刃部が形成されており、後端部72bは、油圧シリンダ74のシャフト74aとピン75にて接合されている。そして、本実施形態においては、油圧シリンダ74にてシャフト74aを矢印L1方向に駆動(往復動)させることによって、ピン73を中心として、切削部72の先端部72aを矢印L2方向に回動させることができる。なお、図9(b)に示すように、固定部71には、切削部72の先端部72aが回動して容器2の切断を行った際に、その先端部72aが固定部71に接触しないように、溝部71aおよび切欠部71bが形成されている。
【0092】
また、固定部71と切削部72とは、上述したように、切削部72を回動させることによって、各部71,72の間に、所定の角度(図9(a)に示すような側面図において)を設け得る構成であるため、固定部71と切削部72との間に、容易に容器2側板を挟持して切削処理を行うことができる。
【0093】
この他の実施形態にかかる切削部72は、以上のように構成されているため、切削部72を回動させることによって、切断面のカエリを外側に形成しつつ、容器2の切断処理を行うことが可能となる。したがって、先に説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、PCB含有絶縁油を回収する際におけるPCB蒸気の発生を低減させることが可能なPCB含有絶縁油の回収装置を得ることができる。
すなわち、本発明にかかる回収装置によれば、油受け表面に付着しPCBが洗浄液に溶解して洗い流されることとなる。また、蒸気圧がPCBよりも低い洗浄液を使用することによって、PCBの蒸発を効果的に抑制可能である。さらに、PCB蒸発量が低減することとなるため、遮蔽室内でのメンテナンスにおいて、作業者の安全性確保、および機器の取扱い性が向上する。また、排気ラインの長寿命化、具体的は、排気ラインの活性炭等の長寿命化を図ることができる。さらに、本発明によれば、高濃度PCBの処理に特に効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる各装置にて処理されるPCB汚染物の一例(コンデンサ)の概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる各装置を用いて行われる除染処理を実施する際のプロセスフローの概略図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる解体装置等の概略図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる解体装置を成すチゼルおよびその周辺構成を示す概略図である。
【図6】図5のVI線方向矢視図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる残油回収処理を行う際に用いられる回収装置の概略図である。
【図8】図7のVIII−VIII線矢視図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる解体装置を成す他の切断部を示す概略図である。図9(a)は側面概略図、図9(b)は図9(a)のIX−IX断面概略図である。
【符号の説明】
1…コンデンサ、2…容器、3…本体部、3a…固定板、3b…クラフト紙、
4…上蓋、5…碍子、6…端子、7…リード線、8…PCB含有絶縁油、9…コンデンサ素子
31…コンデンサ支持具、32…切断機構、32A…第一切断機構、32B…第二切断機構、33…上蓋支持具
51…第二の回収装置
61…第一の回収装置
70…切断部、71…固定部、72…切削部、73…ピン、74…油圧シリンダ、74a…シャフト、75…ピン
321…薄板用チゼル、321a,322a…中央刃、321b,322b…側方刃、322…厚板用チゼル、323…ニッパ、324…ガイド棒、325…油圧シリンダ、326…引き戻し用ばね、327…断続的打力発生器、328…反力吸収アブソーバ、329…モータ、341…回転支持フレーム、342…回り止め、343…回動軸
511,611…油受け部、512,612…洗浄液流出部、513,613…洗浄液供給パイプ、514,614…排出パイプ、615…洗浄液供給部、616…洗浄液調整バルブ、617…排出液調整バルブ、618…フード部
Claims (7)
- PCB汚染物内のPCB含有絶縁油を回収するために用いられる回収装置であって、
PCB含有絶縁油を受ける油受け部と、
前記油受け部表面に洗浄液を流す洗浄液流出部とを備え、
該洗浄液流出部は、前記油受け部に設けられた複数の洗浄液吐出部と、前記洗浄液吐出部を介して前記油受け部の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部とを用いて構成され、吐出された洗浄液をそれぞれ重なり合わせて油受け部に吐出させ得るように吐出液が略扇形に吐出される前記洗浄液吐出部が所定間隔に備えられ、且つ、前記洗浄液流出部から前記洗浄液を流すタイミングが、前記PCB含有絶縁油が前記油受け部に流下される直後あるいは直前から洗浄液の流出を開始させて、流下が終了してから30〜60秒経過後に洗浄液の流出を終了させるべく定められていることを特徴とするPCB含有絶縁油の回収装置。 - 前記油受け部が、前記PCB汚染物の解体箇所下部に設けられている請求項1に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
- 前記油受け部が、前記PCB汚染物の搬送経路下部に設けられている請求項1に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
- 前記洗浄液吐出部が、前記油受け部の上縁部に設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
- 前記油受け部が、漏斗形状を有している請求項1から4のいずれか1項に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
- 前記洗浄液として、PCBよりも蒸気圧が低い洗浄液が用いられる請求項1から5のいずれか1項に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
- 前記洗浄液として、絶縁油が用いられる請求項6に記載のPCB含有絶縁油の回収装置。
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