JP3993800B2 - Pcb含有排ガスの処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、PCB汚染物処理設備等から排出され、PCBと低沸点有機成分とを含有するPCB含有排ガスの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニール類(本発明において、単にPCBともいう)を使用したコンデンサやトランスなどのPCB汚染機器を無害化するには、該PCB汚染物より油抜き、切断、解体等の前処理を行った後、有機溶剤による洗浄を繰り返し行う必要がある。
【0003】
そして、このような処理に於いては、PCB汚染物の前処理に際して発生した塵埃や、溶剤による洗浄に際して発生した溶剤の揮発成分を吸引して除去する必要がある。また、そのようにして設備内の各所から吸引された排ガス中には、ごく微量ではあるもののPCBが含まれているおそれがある。従って、このような排ガスについては、複数段の活性炭吸着塔によってこれを完全に吸着処理し、微量のPCBさえも確実に除去した後、設備外へ放出することが望ましい。
【0004】
ただ、上述のようなPCB汚染物処理設備において発生する排ガス中には、PCBの量と比較して非常に多くの洗浄用溶剤が含まれているという特徴がある。
そこで、従来、前記活性炭吸着塔については、交互に使用可能な2以上の吸着塔を設置しておき、一方の活性炭で吸着処理している間に、他方の活性炭をスチーム等の再生ガスで処理して吸着能力を回復させ、その後、活性炭の温度が低下してからこれら2つの吸着塔を切り換えて使用するという方法が検討されている。
【0005】
そして、繰り返し使用されると活性炭は徐々に劣化して微細化するため、活性炭吸着塔の圧力損失が増大することとなるが、一般には、この圧力損失の増加を基準として、活性炭の交換時期を判断する方法が採られると思われる。
【0006】
しかしながら、PCBは、溶剤のようにスチーム等によっては容易に活性炭から脱着しないという性質があるため、活性炭の劣化よりもPCBの吸着による吸着能力の低下の方が早い可能性がある。よって、上述のようなPCB含有排ガスの吸着処理に使用する活性炭については、従来の圧力損失の増大に基づく交換時期の判断手法では、該吸着層をPCBが破過してしまうおそれがあり、PCB汚染物処理設備に付随して用いられる排ガス処理方法としては万全ではない。
加えて、PCBの検出方法として公定分析法を採用する場合には長時間を必要とし、また、センサー等によるオンライン分析を採用する場合には装置が非常に高価になるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、PCB汚染物処理設備等で発生したPCBと低沸点有機成分とを含有する排ガスを処理するに際し、使用する活性炭のPCB吸着状態を適確に把握し、より確実にPCBを除去し得るPCB含有排ガスの処理方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決すべく、本発明は、PCBと低沸点有機成分とを含有する排ガスを、吸着材が充填された2以上の吸着層により吸着処理するPCB含有排ガスの処理方法であって、前記排ガスを導入してPCBと低沸点有機成分とを吸着処理する吸着工程と、低沸点有機成分についての吸着能を回復させるための再生工程とを、前記吸着層について所定の切替時間ごとに交互に行い、さらに、吸着処理後の排ガスについて前記低沸点有機成分の濃度を測定し、該測定によって低沸点有機成分が検出された時には、前記所定の切替時間よりも先に吸着工程と再生工程との切り替えを行うようにし、さらに、該測定によって低沸点有機成分が検出されたことにより前記吸着層がPCBによって破過する前に予め該PCBによる破過を検知し、前記吸着材の交換時期を判断することを特徴とするPCB含有排ガスの処理方法を提供する。
尚、本発明において、低沸点有機成分とは、一般にPCB汚染物からPCBを除去するための洗浄に使用され、PCBと比較して沸点が低い有機溶媒を意味するものである。また、本明細書においては、単に溶剤ともいう。
さらに、本発明において、低沸点有機成分の検出とは、測定される低沸点有機成分濃度が所定の値以上になった場合をいう。
【0009】
本発明によれば、例えば8時間といった所定の切替時間内に低沸点有機成分が検出されたとき、その使用中の吸着層には、相当量のPCBが蓄積されている(PCBの破過時期が近づいている)と推測でき、従来の圧損の上昇による交換時期の判断手法とは異なる、より安全な交換時期の判断基準とすることができる。
【0011】
低沸点有機成分の検出により吸着層を交換すれば、低沸点有機成分の漏洩を防止できるだけでなく、PCBの確実な漏洩防止を図ることが可能となる。
また、低沸点有機成分が検出された時に前記吸着工程と再生工程とを切り替えることにより、PCBの確実な漏洩防止を図りつつ、吸着層を有効に活用すること、及び、吸着層の交換に必要な時間を確保することができる。
【0012】
また、本発明は、PCBと低沸点有機成分とを含有する排ガスを、吸着材が充填された2以上の吸着層により吸着処理するPCB含有排ガスの処理方法であって、前記PCB排ガスとしてPCB濃度の異なる2種以上の排ガスを導入するとともに、PCB濃度の低い排ガスを濃縮してPCB濃度の高い排ガスとともに吸着処理することによりPCBと低沸点有機成分とを吸着する吸着工程と、低沸点有機成分についての吸着能を回復させるための再生工程とを前記吸着層について所定の切替時間ごとに交互に行い、さらに、吸着処理後の排ガスについて前記低沸点有機成分の濃度を測定し、該測定によって低沸点有機成分が検出された時には、前記所定の切替時間よりも先に吸着工程と再生工程との切り替えを行うようにし、さらに、該測定によって低沸点有機成分が検出されたことにより前記吸着層がPCBによって破過する前に予め該PCBによる破過を検知し、前記吸着材の交換時期を判断することを特徴とするPCB含有排ガスの処理方法を提供する。
【0013】
斯かるPCB含有排ガスの処理方法によれば、上述した効果に加え、さらにPCB濃度の低い大量の排ガスとPCB濃度の高い少量の排ガスとを効率的に処理できるという特有の効果を奏するものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るPCB含有排ガスの処理方法に使用される装置の一実施形態を示したフロー図である。図1に示したように、本実施形態に係るPCB含有排ガスの処理装置1は、PCB汚染物処理設備から回収され、PCB及びPCBの洗浄に用いられた低沸点有機成分(以下、単に「溶剤」ともいう)を含む排ガスXおよび排ガスYを導入して処理するものである。
【0020】
排ガスXは、例えば、PCB汚染物処理設備(図示せず)の前段において、PCB汚染物の油ぬき工程、切断工程、解体工程、又は予備洗浄工程などの前処理工程から負圧管理のために吸引されて発生した排ガスであり、比較的多量の空気と共に排出されるものである。
一方、排ガスYは、PCB汚染物が容器や碍子、その他金属部品等として分解された後、これを溶剤によって洗浄する洗浄工程から発生した排ガスであり、比較的高濃度のPCBおよび低沸点有機成分を含んだものである。
【0021】
溶剤としては、一般に、炭化水素系溶剤や有機塩素系溶剤が使用される。なかでも、炭化水素系溶剤としてはノルマルパラフィンが好ましく、炭素数9〜12のものが特に好ましく使用される。また、有機塩素系溶剤としては、パークロロエチレンが好ましい。
【0022】
図1に示したように、PCBを含む排ガスXは、プレ吸着層21とハニカムローター22を経て清浄なガスとして排出されるように構成されている。そして、ハニカムローター22には高温(200〜400℃)の不活性ガスが導入され、吸着したPCBを脱着させて濃縮ガスZとし、PCBおよび溶剤を含む排ガスYと併せて処理されるように構成されている。
【0023】
排ガスY及び濃縮ガスZの蒸気成分(PCBおよび溶剤)は、蒸気凝縮器11によって冷却されることにより、凝縮させてガス中のPCB及び溶剤の量を低減させた後、交互に使用するために並設された吸着層12のうちの一方(図1においては12a)へ導入され、吸着材による吸着処理を経た後、最終吸着層13を経て清浄ガスとして排出されるように構成されている。
そして、前記吸着層12から最終吸着層13へ至る排ガス経路には、溶剤(低沸点有機成分)の含有を検出するためのガスモニター14が設置され、随時、検出結果を電気信号としてコンピュータ15へ送信するように構成されている。
【0024】
また、本実施形態のPCB含有排ガスの処理装置には、並設された吸着層12の使用していない側の吸着材を再生処理するための再生処理手段が備えられている。該再生処理手段は具体的には、並設された吸着層12のうち、再生工程にある側(図1においては12b)へ再生ガスとして高温(100〜150℃)のスチーム若しくは高温(100〜400℃)の不活性ガスを供給し、活性炭から溶剤を脱着させ、脱着後の混合蒸気を凝縮させた後、分離槽31によって溶剤と水とに静置分離し、さらに分離された水を後処理吸着層32を経て排出するように構成されている。
【0025】
さらに、後処理吸着層32に吸着した溶剤については、該後処理吸着層に高温のスチームあるいは高温の不活性ガスを供給して溶剤を脱着させることにより、同様にして活性炭の再生処理が可能であるように構成されている。
【0026】
前記吸着層12に充填されている吸着材としては、PCBに対する選択吸着性の高いものが好ましく、例えば、細孔径11〜22Å、比表面積1000m2/g以上、充填密度0.38〜0.5g/cc、硬度96%以上、水分3%以下、粒度4〜6メッシュが95%以上の活性炭等を好適に使用し得る。
【0027】
また、吸着材の再生工程においては、供給されるスチーム又は不活性ガスによって100℃以上に吸着材の温度が上昇するため、該吸着材を再び吸着工程に使用するには、その温度を常温程度にまで低下させる必要がある。従って、吸着層12に充填される吸着材の量としては、再生工程における再生処理時間と冷却時間とを合わせた時間についてPCBおよび溶剤を十分に吸着できるような量とすることが好ましい。
【0028】
ガスモニター14としては、溶剤(低沸点有機成分)を検出できるものであれば特に限定されないが、例えばVOC(揮発性有機化合物)モニターを好適に使用し得る。
【0029】
また、プレ吸着層21や最終吸着層13、および後処理吸着層32についても、それぞれ活性炭等の吸着材が充填されているが、プレ吸着層21や最終吸着層13については排ガス処理用の吸着材、後処理吸着層32については水処理用の吸着材が充填されている。
【0030】
ハニカムローター22は、ハニカム状の微細な流路を有する円柱形状の吸着体(例えば活性炭)が周方向に回転可能に支持され、該吸着体が回転することによって排ガスの吸着を行う領域と、不活性ガスによる脱着が行われる領域とを、順次通過するように構成されたものである。そして、脱着領域から排出された不活性ガスには、処理排ガスよりも高濃度のPCB等の有機物が含まれるように、即ち、被処理ガスの流量が低減するように構成されている。
【0031】
斯かる構成の排ガス処理装置の運転に際しては、並設された吸着層12は、例えば8時間毎に吸着工程と再生工程とが自動的に切り替えられるように運転される。即ち、一方の吸着層12aによって吸着処理をしている間に、他方の吸着層12bは、スチームによる脱着処理の後、冷却されて吸着能力が再生される。そして、設定された切り換え時間(例えば8時間)に達すると、吸着工程を終えた一方の吸着層12aと、再生工程を終えた他方の吸着層12bとは、ガス経路の変更によって自動的に処理工程が切り換えられ、一方の吸着層12aでは再生工程が開始され、他方の吸着層12bでは吸着工程が開始される。
【0032】
吸着材が十分な吸着能力を有する間には、予め設定した切り換え時間(例えば、8時間)内には、ガスモニター14によって溶剤が検出されることはない。しかし、上述のように吸着工程と再生工程とを繰り返すと、吸着層12中の吸着材には徐々にPCBが蓄積され、吸着材の吸着能力は徐々に低下することとなる。
【0033】
そして、排ガス処理を開始して一定の期間が経過すると、吸着すべき低沸点有機成分を吸着しきれない程にPCBが吸着した状態となり、吸着工程と再生工程との切り替え時間よりも、吸着材の溶剤による破過時間の方が短くなる状態になると推測される。
こうして、切り換え時間内に吸着材が溶剤によって破過したとすれば、吸着層12を通過した排ガス中には溶剤が含まれることとなるため、前記ガスモニター14によって直ちにこれを検出することができる。
【0034】
そして、このような低沸点有機成分の検出は、即ち、PCBの破過時間が近づいていることをも示しており、吸着材のPCB吸着状態をリアルタイムで監視しながら運転することができる。
【0035】
即ち、本実施形態に係る排ガス処理に於いては、従来のような吸着材の劣化という観点だけではなく、PCBの漏洩防止という観点からも、該吸着層における吸着材の交換時期を判断することができる。
【0036】
従って、ガスモニター14によって低沸点有機成分が検出された場合には、PCB漏洩防止の観点から吸着層を交換するのが好ましいが、吸着層の交換に長時間を要する場合には、その時間を確保する必要がある。そこで、ガスモニター14によって低沸点有機成分が検出された時には、この時を吸着工程と再生工程の切り替え時間とし、設定された切り換え時間よりも先に処理工程の切り替えを行ってもよい。これにより、PCBの漏洩を確実に防止しつつ、吸着層の交換のための時間を確保でき、吸着層の有効活用にもなる。
【0037】
また、本実施形態では、交互に切り替えて使用する吸着層12の後段に最終吸着層13が備えられている為、通常運転中にPCBや低沸点有機成分の漏洩を確実に防止できるだけでなく、このような取り替えの際にもPCB等の漏洩を確実に防止できるものとなる。
【0038】
さらに、本実施形態では、PCB汚染物処理設備より排出された極めて低濃度の排ガスについてもハニカムローターによって濃縮され、他方の排ガスとともに吸着処理されるため、コンパクト且つ低コストで該排ガスの処理を確実に行うことができるという効果がある。
【0039】
また、前記実施形態の界面分離槽31において分離された溶剤については、PCB汚染物処理設備へ返送し、PCB汚染物洗浄用の溶剤等とともに処理することができる。
一方、後処理吸着層32を通過して回収された水については、系外へ排出することも可能であるが、ボイラ用の水等として再利用することにより、クローズドシステムとすることもできる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るPCB含有排ガス処理方法によれば、吸着層のPCB吸着状態を適確に把握することができ、より確実にPCBを除去し得る排ガス処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るPCB含有排ガスの処理方法に使用される装置の一実施形態を示した概略フロー図。
Claims (2)
- PCBと低沸点有機成分とを含有する排ガスを、吸着材が充填された2以上の吸着層により吸着処理するPCB含有排ガスの処理方法であって、
前記排ガスを導入してPCBと低沸点有機成分とを吸着処理する吸着工程と、低沸点有機成分についての吸着能を回復させるための再生工程とを、前記吸着層について所定の切替時間ごとに交互に行い、さらに、吸着処理後の排ガスについて前記低沸点有機成分の濃度を測定し、該測定によって低沸点有機成分が検出された時には、前記所定の切替時間よりも先に吸着工程と再生工程との切り替えを行うようにし、さらに、該測定によって低沸点有機成分が検出されたことにより前記吸着層がPCBによって破過する前に予め該PCBによる破過を検知し、前記吸着材の交換時期を判断することを特徴とするPCB含有排ガスの処理方法。 - PCBと低沸点有機成分とを含有する排ガスを、吸着材が充填された2以上の吸着層により吸着処理するPCB含有排ガスの処理方法であって、前記PCB排ガスとしてPCB濃度の異なる2種以上の排ガスを導入するとともに、PCB濃度の低い排ガスを濃縮してPCB濃度の高い排ガスとともに吸着処理することによりPCBと低沸点有機成分とを吸着する吸着工程と、低沸点有機成分についての吸着能を回復させるための再生工程とを前記吸着層について所定の切替時間ごとに交互に行い、さらに、吸着処理後の排ガスについて前記低沸点有機成分の濃度を測定し、該測定によって低沸点有機成分が検出された時には、前記所定の切替時間よりも先に吸着工程と再生工程との切り替えを行うようにし、さらに、該測定によって低沸点有機成分が検出されたことにより前記吸着層がPCBによって破過する前に予め該PCBによる破過を検知し、前記吸着材の交換時期を判断することを特徴とするPCB含有排ガスの処理方法。
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