JP3656886B2 - 熱転写記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱転写記録媒体、特に高速印字用の熱転写記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱転写記録媒体のインク層は、最初期には、着色剤とワックス単独からなるものであったが、転写画像の耐擦性(耐摩耗性)が不十分であることから、ワックス単独に代わってワックスと樹脂とを混合したものが開発された。しかし熱感度を高める効果を発現させるためには、樹脂に対してワックスを20〜30重量%用いる必要があり、この程度配合すると耐擦性(耐摩耗性)が不十分となる。一方、低融点又は低軟化点の樹脂を用いることにより、着色剤と樹脂単独で構成されたインク層も開発されている。しかし、樹脂単独の場合は、低融点又は低軟化点の樹脂を用いたとしても、ワックスに比較して熱感度が劣ると云う欠点を有する。
【0003】
更に熱転写記録媒体においては、熱転写性能を向上させるために軟化温度の低いインク層が要求されると共に、熱転写された画像を加熱時にこすっても尾を引いて地肌を汚すことがなく、かつ、有機溶剤のような薬品で溶解することがない、定着性のよいインクが要求される。しかし、これらの要求には矛盾した要求もあるから、簡便に理想的なインク層を形成させることは極めて困難である。
例えば、特公昭60−59159号公報には、軟化温度60〜110℃のエポキシ樹脂と着色剤で構成される熱転写インク層を持つ熱転写記録媒体が開示されており、このインク層は保存安定性がよく耐摩耗性にも優れた転写画像を与えるが、この転写画像は70℃程度の加熱下で摩擦すると画像が乱れるという欠点があり、また、転写画像表面の潤滑性が低いため金属の角やツメ等で容易に剥ぎ取られるという欠点もある。
【0004】
これらの欠点を解消するため、熱転写記録層を多層構造にしたり、特定のバイダー樹脂と特定の熱溶融性インクの組み合わせを探索する等の検討が行われている。
例えば、特開平3−99885号公報には、融点60〜120℃の熱溶融性物質で形成される剥離層の上に、ガラス転移温度50〜70℃のポリエステル樹脂と着色剤と滑剤を主成分とする熱転写インク層をもつ熱転写記録材料が開示されている。また特開平3−211090号公報には、剥離層やインク層等の複数層で形成されている熱転写記録層の少なくとも一層をガラス転移温度120℃以上の熱可塑性樹脂を主成分とする層とし、これによって耐熱性や耐薬品性の高い転写画像が得られる熱転写記録媒体が開示されている。
【0005】
また、特開平3−178488号公報には、軟化点70〜120℃のワックスを主成分とする剥離層と、無色の熱可塑性バインダー樹脂中に無機顔料又は軟化点100℃以上の樹脂粉末を含有させた層と、インク層を持つ3層構造の熱転写記録媒体が、更に特開平4−189189号公報には、熱溶融性インクと該インクに対して離型性を有する樹脂マトリックスより成る熱溶融性インク層を有する熱転写記録媒体が本出願人によって提案されている。
【0006】
更に、本出願人は転写画像の耐摩耗性や耐熱性や耐薬品性向上を目的に研究を進め、インク層のバインダー樹脂として、メチルメタクリレートとアクリロニトリルとグリシジルメタクリレートから成る共重合体をアルカノールアミンで変性した樹脂を提案した(特開平2−258294号公報)。また同様な目的で、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルと不飽和エステルで形成される共重合体をインク層のバインダー樹脂にする方法、及び該インク層の下に潤滑付与剤層及び/又は密着向上剤層を設ける方法を提案した(特開平2−258295号公報)。
【0007】
しかしながら、一般に熱転写記録媒体は、転写画像の耐摩耗性が高い場合は熱感度が劣り、熱感度が高い場合は耐摩耗性に問題のあるものが多く、未だ両者を充分に満足できる程度に向上させることが可能な簡単な方法は見当たらない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記諸問題を解決し、熱感度が高く、従って高速印字可能で、かつ転写画像の耐摩耗性に優れ、熱転写性(転写性)即ち画像品質優れ、製造も容易な熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に支持体上に、直接、或いは剥離層を介して熱溶融性インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記熱溶融性インク層が着色剤とポリエステル樹脂及び化1の(a)〜(d)に示すナフタレン誘導体を主成分とすることを特徴とする熱転写記録媒体が提供される。第二に、前記熱溶融性インク層のポリエステル樹脂のTgが、30〜50℃であることを特徴とする前記熱転写記録媒体が提供される。第三に、前記熱溶融性インク層のポリエステル樹脂の数平均分子量が、15000〜20000であることを特徴とする前記熱転写記録媒体が提供される。
【0010】
即ち、上述したように本発明は、支持体上に直接、或いはワックスを主成分とする剥離層を介して、着色剤を含む熱溶融性インク層を順次積層した熱転写記録媒体において、該インク層が着色剤とポリエステル樹脂、特にTgが30〜50℃及び/又は数平均分子量が15000〜20000であるポリエステル樹脂と、これに加えて、ナフタレン誘導体を含有することを特徴とするものである。
従来、ポリエステル樹脂のみでは、これら特性を両立させることが困難であったが、このような構成とすることにより、熱感度等の転写性能が優れ、耐摩耗性にも優れた転写画像が得られること、すなわち、前記ポリエステル樹脂にナフタレン誘導体を添加することによってこの難点を克服することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明において、ナフタレン誘導体の添加によりワックスを併用した場合と同等に熱感度が向上する理由は定かではないが、ナフタレン誘導体がワックスのように低融点を有し、シャープな溶融特性を示し、しかもポリエステル樹脂との相溶性良く、低温度溶融に寄与する為であると考えられる。しかも樹脂を主体とするため耐擦性をも有している。更に、同時に熱転写性(画像品質)も十分なレベルを保持しているのである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の熱転写記録媒体の熱溶融性インク層を構成するポリエステル樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との重縮合、ラクトン等環状エステルの開環重合により、従来公知の合成法で製造される。
該ポリエステル樹脂のTgは30〜50℃が好ましく、Tg30℃未満のポリエステル樹脂を用いた場合、転写画像に尾引きが発生したり、高温でのロール巻での保管時の対向面保護層への転移、転写画像の耐性の低下が起こる。逆に、Tg50℃を越えるポリエステル樹脂を用いた場合、受容体への定着が十分でなく、転写に高エネルギーが必要となり熱感度が劣る。
また該ポリエステル樹脂の数平均分子量は15000〜20000が好ましく、15000未満であると転写画像の耐摩耗性等の耐性が低下し、逆に数平均分子量が20000を越えると熱感度及び転写性が低下し、鮮明な画像が得られなくなる。
【0013】
該ポリエステル樹脂の原料である多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸が好ましい。また、多塩基酸の誘導体としては、メチルエステル、エチルエステル等の低級多価アルコールとのエステル、酸クロライド等の酸ハライドが挙げられる。
また、該ポリエステル樹脂の原料である多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、エチレングリコール、ネオペンチレングリコールが好ましい。
更に該ポリエステル樹脂の原料である環状エステルとしては、カプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド等が挙げられ、カプロラクトンが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリネオペンチレンテレフタレート等を使用することができ、特に、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0014】
次に、本発明の熱転写記録媒体の熱溶融性インク層を構成するナフタレン誘導体としては、種々のものが挙げられ、特に融点が70〜170℃のものが好ましい。融点が170℃より高い場合は、転写性がやや劣り、逆に融点が70℃より低い場合は、転写画像の耐熱性が劣る。
該ナフタレン誘導体の好ましい例を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
本発明において、該ポリエステル樹脂と該ナフタレン誘導体の二つのインク層主剤は、要求される耐性、熱感度に応じて適宜添加量を選択できるが、ポリエステル樹脂がインク層中の固形分重量割合の50〜90重量%含まれることが広範囲な受容体に対し好適である。インク層中のポリエステル樹脂が50重量%未満の場合、受容体への定着が十分でなく特にシャープエッジによる引っ掻きに弱いなどの耐性が劣る。一方、インク層中のポリエステル樹脂が90重量%を越える場合、低平滑な受容体への転写画像にかすれが生じるなど転写性が十分でなくなる。
【0017】
本発明の熱転写記録媒体の熱溶融性インク層に用いられる着色剤としては、要求される色調などに応じ、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料、又は各種染料から適当なものを選択して用いることができる。
このような着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、ランプブラック、ス−ダンブラックSM、ファスト・エローG、ベンジン・エロー、ピグメント・エロー、インドファストオレンジ、イルガジン・レッド、パラニトロアニリン・レッド、トルイジンレッド、カーミンFB、パーマネント・ボルドーFRR、ピグメント・オレンジR、リソール・レッド2G、レーキ・レッドC、ローダミンFB、ローダミンBレ−キ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニングブルー、ピグメントブルー、ブリリアント・グリーンB、フタロシアニングリ−ン、オイルイエロ−GG、ザボンファストエローCGG、カヤセットY963、スミプラストエローGG、ザボンファストオレンジRR、オイルスカーレット、スミプラストオレンジG、オラズールブラウンG、ザボンファストスカ−レットCG、アイゼンスピロンレッドF4R、ファストゲンブルー5007、スーダンブルー、オイルピーコックブルーなど従来から公知の着色剤を1種又は2種以上混合して使用する。
【0018】
本発明のインク層には、熱感度、熱転写性や耐摩耗性の向上を目的に各種の滑剤を添加しても良い。例えば、ワックス状の脂肪酸アミド、各種滑剤、パラフィンワックスのような合成ワックス類、キャンデリラワックスやカルナバワックス等の天然ワックス類、シリコーン油やハーフロロアルキルエーテル等のオイル類等の添加で向上させることができる。なお、この他ポリエチレン樹脂やリン酸エステル等のほか、シリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂やフロロアルキルエーテル樹脂等の樹脂類、及び炭化ケイ素やシリカ等の無機滑剤も使用可能である。また、他の添加剤を添加してもよい。
【0019】
次に剥離層は支持体に隣接して設けられる層であり、融点又は軟化点が70〜120℃のワックスを主体としている。この層は熱印加時に支持体とインク層間の剥離性をよくするために設ける層であり、そのためサーマルヘッドによる熱印加で溶融して低粘度液体になるような成分で構成するのが望ましく、また加熱部分と非加熱部分の界面近くで層が容易に切れるように層成分を調整するとよい。
【0020】
本発明の剥離層に使用されるワックスを具体的に例示すると、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、米ぬかろう、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、ベヘニン酸等の高級飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級飽和一価アルコール、ソルビタンの脂肪酸エステル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
また、インク層の添加で述べた滑剤も同様に用いられる。
【0021】
また、剥離層に弾力性を持たせることにより熱転写記録媒体と被転写体との密着性をよくすることも可能であり、この目的を達成するために剥離層にイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム類を添加してもよい。このほか、剥離層の脱落防止のために接着性の強い樹脂類を該層に添加することも可能であり、このために添加される樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等が好適である。
【0022】
本発明において、支持体は公知のフィルムや紙をそのまま使用すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ナイロン、ポリイミド等のように比較的耐熱性のよいプラスチックフィルム、セロハン、硫酸紙等が好ましく使用される。
【0023】
また、本発明の熱転写記録媒体には必要に応じて支持体の裏面に保護層を設けてもよい。保護層はサーマルヘッドによる熱印加及び摺擦時に支持体を高温、摩耗、打痕から保護するための層であり、耐熱性の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のほか、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂も使用可能である。なお、保護層形成には好適な樹脂はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等であり、これらの樹脂を薄膜状で使用すればよい。また、保護層の設置によって支持体の耐熱性を著しく向上させることができるため、該層の設置によって従来は不適とされていた材料を支持体にすることも可能になる。
【0024】
支持体上への剥離層や熱溶融性インク層の設置は、ホットメルト塗布法、水性塗布法、有機溶剤を使用する塗布法等の公知の方法で行うことができる。
【0025】
このような塗工法で設けられる熱転写層は全体の厚みが0.5〜10μm、好ましくは0.5〜5.0μmであり、該熱転写層内で熱溶融性インク層厚は0.5〜5.0μm、好ましくは0.5〜3.0μm、剥離層厚は0.2〜2.0μm、好ましくは0.3〜1.5μmである。
【0026】
【実施例】
次に実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、ここでの部は固形分重量基準である。
【0027】
支持体として4.5μm厚のポリエステルフィルムを用いた。この支持体側から順に、剥離層1.0μm厚、そしてインク層1.0μm厚を各実施例、比較例の下記組成物をメチルエチルケトンを溶剤として溶解又は分散させた後塗布し、本発明及び比較用の熱転写記録媒体を作製した。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
上記にて得られた実施例1〜5及び比較例1、2の熱転写記録媒体について、以下の方法にて評価テストを行った。なお、評価テストは転写画像について行ったが、受容体は裏面にのり付け処理されたラベル状の白PETを使用し、下記の条件にてこれを印字したものをテストした。
(印字条件)
サーマルヘッド:部分グレーズ薄膜ヘッドタイプ(8ドット/mm)
プラテン圧:150g/cm
熱転写記録媒体の引き剥がし角度:30度
引き剥がしトルク値:200g
印字速度:150mm/sec
【0036】
評価した諸特性は以下の通りである。
1.熱転写性
白PET(Bekk平滑度25000秒)を被転写紙として用い、印加エネルギー20mJ/mm2下での転写画像を下記の基準にて評価した。
○ 鮮明に転写されている。
× 不鮮明な印字となり、部分的に転写されていない。
2.熱感度
白PET(Bekk平滑度25000秒)を被転写紙として用いた転写画像において、細線かすれの発生のない印加エネルギーの最小値を記録した。
3.耐摩耗性
白PET(Bekk平滑度25000秒)を被転写紙として用い、印加エネルギー30mJ/mm2下での転写画像を、約1t/cm2のステンレスエッジの対物で、30cm/secのスピードでラブテストを行い、被転写紙面が露出した回数を記録した。
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明の熱転写記録媒体によれば、支持体上に直接、或いはワックスを主成分とした剥離層を介して、着色剤を含む熱溶融性インク層を積層してなる熱転写記録媒体において、該インク層は着色剤とポリエステル樹脂とナフタレン誘導体を主成分としてなることより、熱感度及び熱転写性に優れ、高速印字が可能であり、かつ、耐摩耗性に優れた転写画像を得ることができる。
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