JP3656883B2 - 熱転写記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱転写記録媒体に関し、詳しくは受容体への定着性が良く、熱、こすれ等の耐性に強く、熱感度などの転写性能の点でも極めて優れた熱転写記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱転写記録媒体は、熱転写性能を向上させるために軟化温度の低いインク層が要求されると共に、熱転写された画像を加熱時にこすっても尾を引いて地肌を汚すことなく、定着性のよいインクが要求される。しかし、これらの要求には、矛盾した要求もあるから、簡便に理想的なインク層を形成させることは極めて困難である。
例えば、特公昭60−59159号公報には、軟化温度60〜110℃のエポキシ樹脂と着色剤で構成される熱転写インク層を持つ熱転写記録媒体が開示されており、このインク層は保存安定性がよく耐摩耗性にも優れた転写画像を与えるが、この転写画像は70℃程度の加熱下で摩擦すると画像が乱れる欠点がある。
【0003】
このような欠点を解消するため、熱転写記録層を多層構造にしたり、特定のバインダー樹脂と特定の熱溶融性インクの組み合わせを探索する等の検討が行われている。
例えば、特開平3−99885号公報には、融点60〜120℃の熱溶融性物質で形成される剥離層の上に、ガラス転移温度50〜70℃のポリエステル樹脂と着色剤と滑剤を主成分とする熱転写インク層を設けた熱転写記録材料が開示されている。特開平3−211090号公報には、剥離層やインク層等の複数層で形成されている熱転写記録層の少なくとも一層をガラス転移温度120℃以上の熱可塑性樹脂を主成分とする層とし、これによって耐摩耗性の高い転写画像が得られる熱転写記録媒体が開示されている。
【0004】
また、本出願人は先に、軟化点70〜120℃のワックスを主成分とする剥離層と、無色の熱可塑性バインダー樹脂中に無機顔料又は軟化点100℃以上の樹脂粉末を含有させた層と、インク層を持つ3層構成の熱転写記録媒体(特開平3−178488号公報)を、更に、熱溶融性インクと該インクに対して離型性を持つ樹脂マトリックスより成る熱溶融性インク層を持つ熱転写記録媒体(特開平4−189189号公報)を提案した。
更にまた、本出願人は、転写画像の定着性や耐摩耗性向上を目的に研究を進め、インク層のバインダーとして、特定の酢酸ビニル含有量、メルトフローレートをもつエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を提案した。
【0005】
熱転写記録媒体は、以上に示したように多数の提案がなされているが、一般に熱写画像の耐摩耗性が高い場合は熱感度が劣り、熱感度が高い場合は耐摩耗性に問題のあるものが多く、充分に満足できる程度に両者を向上させることが可能な簡単な方法は見当らない。例えば、剥離層を設けることで熱感度が向上するが著しく耐摩耗性が低下し、耐摩耗性向上のため剥離層に溶剤や樹脂等を添加すると熱感度が低下してしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記諸問題を解決した、耐摩耗性の転写画像を与えると共に画像解像度や熱感度が高く、作製も容易な熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば支持体上に、熱溶融性インク層を設けるか、あるいは剥離層を介して熱溶融インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記熱溶融性インク層が、着色剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体、及び下記一般式(1)で表わされるシュウ酸エステル又は下記一般式(2)で表わされるジオール炭酸エステルを主成分とすることを特徴とする熱転写記録媒体。
【化1】
〔式中、R1およびR2は、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、−CnH2n−Ar(式中、nは1〜8の整数、Arはアリール基を示し、以下も同様である。)又は−CnH2n−CO−Arを表わし、相互に同一でも異なっていてもよい。ただし、炭素数1〜20のアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、またシクロアルキル基、アリール基、−CnH2n−Arおよび−CnH2n−CO−Ar中のArはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、フェナシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、アンモニウムスルホン酸基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。〕
【化2】
(式中、R3、R4は、アルキル基、アリール基、プロパギル基、アラルキル基、アリル基を表わし、相互に同一でも異なっていてもよい。Xは、アルキレン、フェニレン、−CH2CH=CHCH2−、又は下記構造式
【化3】
で示される二価基のいずれかを表わす。)
が提供される。
また本発明によれば、前記インク層中のエチレン酢酸ビニル共重合体の軟化点(環球式)が、80〜150℃であることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録媒体が提供される。
更に、本発明によれば、前記インク層中のエチレン酢酸ビニル共重合体の数平均分子量が、10,000〜30,000であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱転写記録媒体が提供される。
【0008】
即ち、本発明者等は、支持体上に、直接、或いはワックス等を主成分とする剥離層を介して着色剤を含むインク層を積層した熱転写記録媒体において、該インク層に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVA樹脂とも云う)、特に軟化点(環球式)(以下、Tmと云う)が80〜150℃及び/又は数平均分子量が10,000〜30,000であるEVA樹脂とこれに加えて、特定のジエステル化合物を含有させることにより、上記課題、即ち耐摩耗性の転写画像を与えると共に解像度や熱感度等の転写性能に優れた熱転写記録媒体とすることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の熱転写記録媒体の熱溶融性インク層は、着色剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体と、特定のジエステルを主成分とするものである。
該インク層に含有させるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であり、エチレンと酢酸ビニルとの共重合割合はモル比で、エチレン:酢酸ビニル=8:2〜5:5のものが好ましい。
また、50モル%以下であれば、他のビニルモノマーを共重合させたものも使用することができる。この際の他のビニルモノマーとしては、スチレン、塩化ビニル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、アクリル酸等が挙げられる。
【0010】
前記EVA樹脂のTmは重要であり、80〜150℃のものとすることにより画像特性を向上できる。Tmが80℃未満のEVA樹脂を用いた場合、転写画像に尾ひきが発生したり、高温保管時の保護層への転移、転写画像の耐性の低下が起こる場合がある。また、Tmが150℃を超えるEVA樹脂を用いた場合、受容体への定着が十分でなく、転写に高エネルギーが必要となり熱感度が劣る。
更に、該EVA樹脂の数平均分子量(以下、Mnと言う)も重要であり、10,000〜30,000とすることがさらに好適である。Mnが10,000未満であると転写画像の耐摩擦性などの耐性が低下し、Mnが30,000を超えると転写性が低下し、鮮明な画像が得られなくなる。
【0011】
本発明で用いる前記一般式(1)で表わされるシュウ酸エステルとしては種々のものが挙げられる。なかでも、融点が70℃から120℃のものが良好である。融点が高い場合、転写性がやや劣り、融点が低い場合、転写画像の耐熱性が劣る。このような点から好ましいシュウ酸エステルとしては下記表1の構造式(a)〜(e)のシュウ酸エステル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
【表1】
【0013】
また、本発明で用いる前記一般式(2)で表わされるジオールの炭酸エステルは種々のものが挙げられる。なかでも、融点が70℃から120℃のものが良好である。融点が高い場合、転写性がやや劣り、融点が低い場合、転写画像の耐熱性が劣る。このような点から、好ましい炭酸エステルとしては下記表2の構造式(1)〜(25)の炭酸エステル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
【表2−(1)】
【0015】
【表2−(2)】
【0016】
【表2−(3)】
【0017】
上記の一般式(1)で表わされるシュウ酸エステル又は一般式(2)で表わされるジオールのジ炭酸エステルとEVA樹脂のそれぞれのインク層主材は、要求される耐性、印字特性に応じて適宜添加量を選択できるが、EVA樹脂がインク層中の固形分重量割合の30〜70重量%含まれることが広範囲な受容体に対し好適である。インク層中のEVA樹脂が30重量%未満の場合、受容体への定着が十分でなく特にシャープエッジによる引っ掻きに弱いなど耐性が劣る。一方、インク層中のEVA樹脂が70重量%を超える場合、低平滑な受容体への転写画像にかすれが生じるなど転写が十分でなくなることがある。
【0018】
本発明で用いられる着色剤としては、要求される色調などに応じて、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料、又は各種染料から適当なものを選択して用いることができる。
【0019】
本発明のインク層には熱転写性や解像度の向上を目的に各種の添加物を添加してもよい。例えば、ワックス状の脂肪酸アミド、各種滑剤、パラフィンワックスのような合成ワックス類、キャデリラワックスやカルナウバワックス等の天然ワックス類、シリコーン油やパフロロアルキルエーテル等のオイル等の添加で熱転写性や解像度を向上させることができる。なお、この場合の滑剤にはリン酸エステル等のほか、シリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂やフロロアルキルエーテル樹脂等の樹脂類、及び炭化ケイ素やシリカ等の無機滑剤も使用可能である。
【0020】
次に、剥離層は支持体に隣接して設けられる層であり、融点又は軟化点が70〜120℃のワックスを主体とするものが好ましい。この層は熱印加特に支持体と熱転写層間の剥離性をよくするために設ける層であり、そのためサーマルヘッドによる熱印加で溶融して低粘度液体になるような成分で構成するのが望ましく、また加熱部分と非加熱部分の界面近くで層が容易に切れるように層成分を調整するとよい。
【0021】
該剥離層に使用されるワックスを具体的に例示すると、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、米ぬかろう、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス;マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、ベヘニン酸等の高級飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級飽和一価アルコール;ソルビタンの脂肪酸エステル等の高級エステル;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0022】
また、剥離層に弾力性を持たせて熱転写記録媒体と被転写体との密着性をよくすることも可能であり、この目的を達成するため剥離層にイソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等のゴム類が添加される。
このほか、剥離層の脱落防止のため接着性の強い樹脂類を該層に添加することもよく行なわれるが、このために添加される樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレンーエチルアクリレート共重合体が好適である。
【0023】
更に、支持体は、公知のフィルムや紙をそのまま使用すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ナイロン、ポリイミド等のように比較的耐熱性のよいプラスチックフィルム;セロハン;硫酸紙等が好ましく使用される。
【0024】
また本発明の熱転写記録媒体には必要に応じて支持体の裏面に保護層を設けてもよい。保護層はサーマルヘッドによる熱印加時に支持体を高温から保護するための層であり、耐熱性の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のほか、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂も使用可能である。なお、保護層形成に好適な樹脂はフッ素樹脂、シリコンーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等であり、これらの樹脂を薄膜状で使用すればよい。
また、保護層の設置によって支持体の耐熱性を著しく向上させることができるため、該層の設置によって従来は不適とされていた材料を支持体にすることも可能である。
【0025】
支持体上への剥離層やインク層の設置は、ホットメルト塗布法、水性塗工法、有機溶剤を使用する塗工法等の公知の方法で行うことができる。
【0026】
このような塗工法で設けられる熱転写層は、全体の厚みが0.8〜5.0μm、好ましくは1.8〜4.0μmであり、該熱転写層内でインク層厚は0.3〜2.0μm、好ましくは0.8〜1.5μm、剥離層厚は0.5〜3.0μm、好ましくは1.0〜2.5μmとすればよい。
【0027】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、ここでの部は固型分重量基準である。
【0028】
各実施例及び比較例において、支持体として4.5μm厚のポリエステルフィルムを用いた。この支持体側から順に、剥離層1.8μm厚そしてインク層1.3μm厚として各実施例、比較例の下記組成物をトルエンを溶剤として塗布し、本発明の熱転写記録媒体を作製した。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
上記にて得られた実施例1〜7及び比較例1〜2の熱転写記録媒体について、以下の方法にて評価テストを行った。なお、評価テストは転写画像について行ったが、受容紙には裏面にのり付け処理されたラベル状の白PET、キャストコート紙、軽量コート紙を使用し、下記の条件にてこれを印字したものをテストした。
(印字条件)
サーマルヘッド:部分グレース薄膜ヘッドタイプ(8ドット/mm)
サーマルヘッドに熱印加してから熱転写記録媒体と受容紙とを引き剥すまでの
距離 :210μm
印字速度 :254mm/s
巻取り力 :43g/cm
【0039】
評価した諸特性は以下の通りである。
1.画像転写性
キャストコート紙(Bekk平滑度2400秒)と軽量コート紙(Bekk平滑度250秒)を被転写紙として用い、印加エネルギー20mJ/mm2下での転写画像を下記の基準にて評価した。
◎ ボイド、カスレが無く、画像のエッジがシャープである。
○ ボイド、カスレがほとんど無い。
△ ややボイド、カスレがある。
× まったく転写しない。
2.耐摩耗性
白PET(Bekk平滑度25000秒)を被転写紙として用い、印加エネルギー20mJ/mm2下での転写画像を試験片として、約1t/cm2のステンレスエッジの対物で30cm/secのスピードで50往復画像をラブテストした。
◎ 画像がまったく破壊されていない。
○ 画像がほとんど破壊されない。
△ 画像がやや破壊される。
× 画像が完全に破壊される。
この評価をまとめて表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明の熱転写記録媒体は、支持体上に、或いはワックスを主成分とした剥離層を介して、着色剤を含むインク層を積層してなる転写層を有する熱転写記録媒体において、該インク層を、着色剤と、前記のシュウ酸エステル又はジオールの炭酸エステルと、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を主成分として構成したことにより、耐摩擦性の極めて優れた転写画像を得ることができ、また優れた熱転写性にも優れた作用効果を奏するものである。
Claims (3)
- 支持体上に、熱溶融性インク層を設けるか、あるいは剥離層を介して熱溶融インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記熱溶融性インク層が、着色剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体、及び下記一般式(1)で表わされるシュウ酸エステル又は下記一般式(2)で表わされるジオール炭酸エステルを主成分とすることを特徴とする熱転写記録媒体。
- 前記インク層中のエチレン酢酸ビニル共重合体の軟化点(環球式)が、80〜150℃であることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録媒体。
- 前記インク層中のエチレン酢酸ビニル共重合体の数平均分子量が、10,000〜30,000であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱転写記録媒体。
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JP33123897A Expired - Fee Related JP3656883B2 (ja) | 1997-11-14 | 1997-11-14 | 熱転写記録媒体 |
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-
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