JP3656879B2 - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。さらに詳しくは、高感度で被りが少なく、保存安定性に優れ、かつ残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化、及び処理後の残色低減のために、多大の努力がなされてきた。分光増感のために用いられる増感色素は、ハロゲン化銀写真感光材料の性能に大きな影響を与えることが知られている。増感色素においては、構造上の僅かな違いが、感度・被り・保存安定性・処理後の残存着色(残色)などの写真性能に大きな影響を与え、また増感色素を2種以上併用することによっても写真性能に大きな影響を与えるが、その効果を事前に予測するのは困難であり、従来から多くの研究者は数多くの増感色素を合成し、また数多くの増感色素の併用を検討してその写真性能を調べる努力をしてきた。しかし、依然として写真性能を予想することができないのが現状である。
【0003】
また、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化のために、還元増感の試みは古くから検討されている。例えば、米国特許第2,487,850号において錫化合物が、同第2,521,925号においてポリアミン化合物が、英国特許第789,823号において二酸化チオ尿素系の化合物が還元増感剤として有用であることが開示された。さらにPhotographic Science and Engineering23巻113頁(1979)において色々な還元増感方法によって作られた銀核の性質が比較されており、ジメチルアミンボラン、塩化第一錫、ヒドラジン、高pH熟成、低pAg熟成の方法が採用された。還元増感の方法はさらに米国特許第2,518,698号、同第3,201,254号、同第3,411,917号、同第3,779,777号、同第3,930,867号にも開示されている。還元増感剤の選択だけでなく還元増感法の工夫に関して、特公昭57−33572号、同58−1410号に述べられている。
【0004】
以上の理由から、ハロゲン化銀粒子(特に還元増感を施した粒子)を高感度に、かつ被りや残色等の悪影響を生じさせずに分光増感する技術が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高感度で被りが少なく、保存安定性に優れ、かつ残色の少ないハロゲン化銀感光材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は鋭意研究を行なった結果、下記の手段によって達成することができた。すなわち、
【0007】
(1)下記一般式( III )で表される化合物のうち少なくとも1つと、下記一般式( IV )で表される化合物のうち少なくとも1つを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式( III )
【0008】
【化3】
【0009】
式( III )中、R 11 およびR 12 はそれぞれスルホアルキル基を表し、W 1 はメチル基またはエチル基を表し、V 11 およびV 12 はそれぞれフッ素原子、塩素原子、アルコキシ基、またはヒドロキシ基を表す。X 11 は対イオンを表し、m 1 は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式( IV )
【0010】
【化4】
【0011】
式( IV )中、R 13 はスルホアルキル基を表し、R 14 はカルボキシメチル基を表す。Z 1 はメチル基またはエチル基を表し、Y 1 はアリール基を表し、V 13 はそれぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルコキシ基、またはヒドロキシ基を表す。X 12 は対イオンを表し、n 1 は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
【0012】
(2) 前記ハロゲン化銀写真感光材料が、還元増感を施されたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に使用する一般式( III )及び( IV )で表される化合物、並びに一般式( III )及び( IV )で表される化合物を包含する下記一般式( I )及び( II )で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(I)
【化5】
式(I)中、R 1 およびR 2 はそれぞれアルキル基を表し、Wは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、V 1 、V 2 、V 3 、V 4 はそれぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシ基を表す。X 1 は対イオンを表し、mは分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式( II )
【化6】
式( II )中、R 3 およびR 4 はそれぞれアルキル基を表し、R 3 とR 4 の少なくとも一方はカルボキシアルキル基またはアルカンスルホニルカルバモイルアルキル基である。Zは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Yはアリール基または複素環基を表し、V 5 、V 6 はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシ基を表す。X 2 は対イオンを表し、nは分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
【0019】
一般式(I)および(II)において、R1 、R2 、R3 およびR4 で表されるアルキル基としては例えば、炭素数1から8、好ましくは1から4の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル)、炭素数1から8、好ましくは1から4の置換アルキル基{置換基として例えば、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ基、炭素数1から7のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、炭素数1から7のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1から7のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ)、炭素数6から7のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−トリルオキシ)、炭素数1から7のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、プロピオニルオキシ)、
【0020】
炭素数1から7のアシル基(例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、モルホリノカルボニル、ピペリジノカルボニル)、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルホニル、ピペリジノスルホニル)、炭素数1から7のアリール基(例えばフェニル、p−クロロフェニル、p−トリル)、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、などで置換された炭素数1から8のアルキル基}などが挙げられる。さらに好ましくは解離性基で置換されたアルキル基であり、カルボキシアルキル基(例えばカルボキシメチル、2−カルボキシエチル)、アルカンスルホニルカルバモイルアルキル基(例えばメタンスルホニルカルバモイルメチル基)またはスルホアルキル基(例えば2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−スルホブチル)が挙げられる。特にR3 およびR4 のいずれか一方はカルボキシアルキル基またはアルカンスルホニルカルバモイルアルキル基であることが必須であり、R4 がカルボキシアルキル基またはアルカンスルホニルカルバモイルアルキル基であることが好ましい。さらに好ましくはカルボキシメチル、カルボキシエチル、メタンスルホニルカルバモイルメチルであり、特に好ましくはカルボキシメチルである。R1 、R2 および(R3 とR4 の残りの基)はスルホアルキル基であることが好ましく、特に好ましくは2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−スルホブチルである。
【0021】
一般式(III)および(IV)において、R11、R12、R13はスルホアルキル基を表し、特に好ましくは2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−スルホブチルである。
一般式(IV)において、R14で表されるカルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル、カルボキシエチルが好ましく、アルカンスルホニルカルバモイルアルキル基としてはメタンスルホニルカルバモイルメチルが好ましい。特に好ましくはカルボキシメチルである。
【0022】
一般式(I)におけるWと一般式(II)におけるZはそれぞれ水素原子、メチル基またはエチル基を表すが、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0023】
一般式(II)におけるV5 およびV6 で表されるハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、フッ素、塩素がより好ましい。
一般式(I)および(II)におけるV1 、V2 、V3 、V4 、V5 およびV6 ならびに一般式(III)および(IV)におけるV11、V12およびV13で表されるアルコキシ基としてはメトキシ、エトキシが好ましく、メトキシがより好ましい。
【0024】
V2 、V4 およびV6 は水素原子であることがより好ましく、V1 、V3 、V11およびV12はフッ素原子または塩素原子であることがより好ましい。V5 およびV13は水素原子またはフッ素原子、塩素原子であることがより好ましい。
【0025】
一般式(II)におけるY、一般式(IV)におけるY1 で表されるアリール基としては例えば、炭素数6から15、好ましくは6から10の置換または無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、p−クロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、、p−ブロモフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル)、複素環基としては例えば、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から10、さらに好ましくは炭素数4から6の置換されてもよい複素環基(例えばピリジル、5ーメチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)が挙げられる。また、ベンゼン環、ナフタレン環やアントラセン環が縮合した構造をとることもできる。
好ましくはアリール基であり、特にフェニルが好ましい。
【0026】
一般式(I)、(II)、(III)および(IV)において、X1 、X2 、X11およびX12はイオン電荷を中和するために必要であるとき、陽イオンまたは陰イオンの存在を示すために式の中に含められている。ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その置換基に依存する。典型的な陽イオンとしては水素イオン、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えばアンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン)などの有機陽イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン化物陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマーまたは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよい。
好ましい陽イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、メチルピリジニウムイオンである。好ましい陰イオンは過塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン)である。
なお、本発明ではスルホ基を SO3 - と表記しているが、対イオンとして水素イオンを持つときはSO3Hと表記することも可能である。
【0027】
m、n、m1 、n1 は分子中の電荷を均衡させるために必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合は0である。好ましくは0以上4以下の数である。
【0028】
本発明において、一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表されるような増感色素以外にも、他の増感色素を用いても良い。増感色素の組み合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0029】
以下に一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物の具体例を示すが、これにより本発明が制限されるものではない。
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】
本発明に用いられる一般式( III )および( IV )の化合物、並びにこれらを包含する一般式(I)、( II )の化合物は、以下の文献に記載の方法に基づいて合成することができる。
a)エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニン・ダイズ・アンド・リレイティッド・コンパウンズ(HeterocyclicCompounds-Cyanine dyes and related compounds )」、(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons )社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊)、
b)デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer )著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry )」、第8章、第4節、482〜515頁(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons )社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊)
c)「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」、第2版、第4巻、パートB、第15章、369〜422頁(エルセビア・サイエンス・パブリッシング・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社−ニューヨーク、1977年刊)
【0037】
一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物を本発明のハロゲン化銀乳剤中に含有せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0038】
また、米国特許第3,469,987号明細書等に記載のように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号等に記載のように、水不溶性色素を溶解することなしに水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に記載されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、同第4,006,026号明細書等に記載のように、界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中へ添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に記載のように、親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法等を用いる事もできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。
【0039】
一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用である事が認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば、米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程および/または脱塩前の時期、脱塩工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類をも変えて添加されてもよい。
【0040】
一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物の使用量は、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり0.1ないし4ミリモル、好ましくは0.2ないし2.5ミリモルであり、さらに他の増感色素と併用してもよい。
【0041】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生する極めて微少な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に難溶の銀塩を形成してもよく、また、硝酸銀等の水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2 ・ H2O2・3H2O ,2Na2CO3 ・3H2O2,Na2P2O7 ・2H2O2,2Na2SO4 ・ H2O2・2H2O )、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8,K2C2O6,K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物{例えば、K2(Ti(O2)C2O4)・3H2O ,4K2SO4・ Ti(O2)OH・SO4 ・2H2O ,Na3(VO(O2)(C2H4)2 ・6H2O }、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4 )、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7 )などの酸素酸塩、ヨウ素や臭素などのハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過ヨウ素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩などがある。また、有機の酸化剤としては、p−キノンなどのキノン類、過酢酸や過安息香酸などの有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
さらに好ましい酸化剤として欧州特許第627657A2号に記載のジスルフィド化合物が用いられる。
【0042】
本発明の好ましい酸化剤として、さらにオゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化物およびキノン類の有機酸化剤を挙げることができる。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いた後還元増感を施す方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は、粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0043】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、好ましくは、次の一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する。
一般式(V) R101 −SO2 S−M101
一般式(VI) R101 −SO2 S−R102
一般式(VII) R101 −SO2 S−(E)a −SSO2 −R103
式中、R101 、R102 、R103 は脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、M101 は陽イオンを表し、Eは2価の連結基を表し、aは0または1である。
【0044】
一般式(V) 、(VI) 又は (VII)の化合物を更に詳しく説明すると、R101 、R102 、及びR103 が脂肪族基の場合、好ましくは炭素数が1から22のアルキル基、炭素数が2から22のアルケニル基、アルキニル基であり、これらは、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、イソプロピル、t−ブチルがあげらる。
アルケニル基としては、例えばアリル、ブテニルがあげられる。
アルキニル基としては、例えばプロパギル、ブチニルがあげられる。
R101 、R102 、及びR103 の芳香族基としては、好ましくは炭素数が6から20のもので、例えばフェニル基、ナフチル基があげられる。これらは、置換されていてもよい。
【0045】
R101 、R102 、及びR103 のヘテロ環基としては、窒素、酸素、硫黄、セレン、テルルから選ばれる元素を少なくとも一つ有する3ないし15員環のもので、例えばピロリジン環、ピペリジン環、ピリジン環、テトラヒドロフラン環、チオフエン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、テルラゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。
【0046】
R101 、R102 およびR103 の置換基としては、例えばアルキル基(例えばメチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えばフェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、アシル基(例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ)、アシロキシ基(例えばアセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アミノ基等が挙げられる。
Eとして好ましくは2価の脂肪族基または2価の芳香族基である。Eの2価の脂肪族基としては例えば-(CH2)n - (n=1〜12)、-CH2-CH=CH-CH2- 、
【0047】
【化15】
【0048】
キシリレン基などが挙げられる。
Eの2価の芳香族基としては例えばフェニレン、ナフチレンが挙げられる。
M101 として好ましくは、金属イオンまたは有機カチオンである。金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。有機カチオンとしては、例えばアンモニウムイオン(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム)、ホスホニウムイオン(例えばテトラフェニルホスホニウム)、グアニジニウムイオン等が挙げられる。
【0049】
一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
【化20】
【0055】
【化21】
【0056】
【化22】
【0057】
【化23】
【0058】
【化24】
【0059】
【化25】
【0060】
一般式(V)の化合物は、特開昭54−1019号および英国特許第972,211号に記載されている方法で容易に合成できる。
【0061】
一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物はハロゲン化銀1モルあたり10-7〜10-1モル添加するのが好ましい。さらに10-6〜10-2モル、特に10-5〜10-3モルの添加量が好ましい。
一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物を製造工程中に添加せしめるのは、写真乳剤に添加剤を加える場合に通常用いられる方法で適用できる。例えば、水溶性の化合物は適当な濃度の水溶液とし、水に不溶または難溶性の化合物は水と混和しうる適当な有機溶媒、例えばアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などのうちで、写真特性に悪い影響を与えない溶媒に溶解し、溶液として添加することができる。
【0062】
一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物は、ハロゲン化銀乳剤の粒子形成中、化学増感の前あるいは後の製造中のどの段階で添加してもよい。好ましいのは還元増感が施される前、あるいは施されている時に、化合物が添加される方法である。特に好ましいのは、粒子成長中に添加する方法である。
あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子形成の適当な時期に添加する方が好ましい。また、水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶液にあらかじめ一般式(V)、(VI)または(VII)の化合物を添加しておき、これらの水溶液を用いて粒子形成してもよい。また粒子形成に伴って一般式(V)、(VI)または(VII)の化合物の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
一般式(V)、(VI)または(VII)で表される化合物のうちで本発明に対してもっとも好ましい化合物は、一般式(V)で表される化合物である。
【0063】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いることのできる種々の技術や無機・有機の素材については一般にはリサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)、同37038(1995年)に記載されたものを用いることができる。
【0064】
これに加えて、より具体的には、例えば、本発明のハロゲン化銀写真乳剤が適用できるカラー写真感光材料に用いることができる技術および無機・有機素材については、欧州特許第436938A2号の下記の箇所及び下記に引用の特許に記載されている。
【0065】
【0066】
本発明により調製されたハロゲン化銀乳剤はカラー写真感光材料及び黒白写真感光材料のいずれにも用いることができる。カラー写真感光材料としては特にカラーペーパー、カラー撮影用フィルム、カラーリバーサルフィルム、黒白写真感光材料としてはX−レイ用フィルム、一般撮影用フィルム、印刷感材用フィルム等を挙げることができる。好ましくはカラーリバーサルフィルムである。
【0067】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の露光方法について説明する。写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行なえばよい。すなわち、自然光(日光)、タングステン電灯、蛍光灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、レーザ光、発光ダイオード、CRTなど公知の多種の光源をいずれでも用いることができる。露光時間は通常カメラで用いられる1/1000秒から1秒の露光時間はもちろん、1/1000秒より短い露光、たとえばキセノン閃光灯を用いた1/104 〜1/106 秒の露光を用いることができるし、1秒より長い露光を用いることもできる。必要に応じて色フィルターで露光に用いられる光の分光組成を調節することができる。また電子線、X線、γ線、α線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
実施例1
(試料101の作製)
下塗りを施した厚み 127μの三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記の組成の各層より成る多層カラー感光材料を作製し、試料101とした。数字はm2当りの添加量を表わす。なお添加した化合物の効果は記載した用途に限らない。
【0069】
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.28g
ゼラチン 2.20g
紫外線吸収剤U−1 0.27g
紫外線吸収剤U−3 0.08g
紫外線吸収剤U−4 0.08g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.29g
カプラーC−9 0.12 mg
【0070】
第2層:中間層
ゼラチン 0.38g
化合物Cpd−K 5.0mg
紫外線吸収剤U−2 3.0mg
高沸点有機溶媒Oil−3 0.06g
染料D−4 10.0mg
【0071】
第3層:中間層
黄色コロイド銀 銀量 0.007g
ゼラチン 0.40g
【0072】
【0073】
第5層:第2赤感性乳剤層
乳剤C 銀量 0.14g
乳剤D 銀量 0.28g
ゼラチン 0.65g
カプラーC−1 0.05g
カプラーC−2 0.11g
化合物Cpd−E 0.10g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.09g
【0074】
第6層:第3赤感性乳剤層
乳剤E 銀量 0.50g
ゼラチン 1.56g
カプラーC−3 0.63g
化合物Cpd−E 0.11g
添加物P−1 0.16g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.04g
【0075】
第7層:中間層
ゼラチン 0.50g
化合物Cpd−D 0.04g
高沸点有機溶媒Oil−3 0.08g
第8層:中間層
黄色コロイド銀 銀量 0.01g
ゼラチン 1.56g
化合物Cpd−A 0.12g
化合物Cpd−I 0.04 mg
化合物Cpd−J 0.07g
高沸点有機溶媒Oil−3 0.15g
【0076】
【0077】
第10層:第2緑感性乳剤層
乳剤I 銀量 0.16g
乳剤J 銀量 0.34g
ゼラチン 0.75g
カプラーC−4 0.20g
化合物Cpd−B 0.03g
ポリマーラテックスP−2 0.01g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.01g
【0078】
第11層:第3緑感性乳剤層
乳剤K 銀量 0.44g
ゼラチン 0.91g
カプラーC−4 0.34g
化合物Cpd−B 0.06g
ポリマーラテックスP−2 0.01g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.02g
【0079】
第12層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 銀量 0.02g
ゼラチン 0.73g
染料E−1の微結晶分散物 0.24g
化合物Cpd−G 0.02g
化合物Cpd−J 0.04g
高沸点有機溶媒Oil−3 0.08g
ポリマーM−1 0.23g
【0080】
第13層:第1青感性乳剤層
乳剤L 銀量 0.35g
ゼラチン 0.55g
カプラーC−5 0.20g
カプラーC−6 4.00g
カプラーC−10 0.02g
化合物Cpd−E 0.07g
化合物Cpd−K 0.03mg
【0081】
第14層:第2青感性乳剤層
乳剤M 銀量 0.06g
乳剤N 銀量 0.10g
ゼラチン 0.75g
カプラーC−5 0.35g
カプラーC−6 5.00g
カプラーC−10 0.30g
化合物Cpd−E 0.04g
【0082】
第15層:第3青感性乳剤層
乳剤O 銀量 0.20g
乳剤P 銀量 0.02g
ゼラチン 2.40g
カプラーC−6 0.09g
カプラーC−10 0.90g
化合物Cpd−E 0.09g
化合物Cpd−M 0.05mg
高沸点有機溶媒Oil−2 0.40g
添加物P−2 0.10g
【0083】
第16層:第1保護層
ゼラチン 1.30g
紫外線吸収剤U−1 0.10g
紫外線吸収剤U−2 0.03g
紫外線吸収剤U−5 0.20g
化合物Cpd−F 0.40g
化合物Cpd−J 0.06g
染料D−1 0.01g
染料D−2 0.01g
染料D−3 0.01g
染料D−5 0.01g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.37g
【0084】
【0085】
また、すべての乳剤層には上記組成物の他に添加剤F−1〜F−11を添加した。さらに各層には上記組成物の他にゼラチン硬化剤H−1及び塗布用、乳化用界面活性剤W−1、W−3、W−4、W−5、W−6を添加した。
更に防腐、防黴剤としてフェノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、p−ヒドロキシ安息香酸ブチルエステルを添加した。 試料101に用いた感光性乳剤は、表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
注1) 上記乳剤は、いずれも金・硫黄・セレンを用いて化学増感されている。
注2) 上記乳剤は、いずれも増感色素を化学増感前に添加している。
注3) 上記乳剤には、化合物F-5 、F-7 、F-8 、F-9 、F-10、F-11、F-12、F- 13、F-14、V-16を適宜添加している。
注4) 乳剤A 、B 、I 、J は主平面が(100) 、その他は主平面が(111) の3重構造平板粒子である。
注5) 乳剤A 、B 、E 、F 、I 、P は表面感度よりも内部感度の方が高い乳剤である。
注6) 乳剤E 、I 、P は化学増感後塩化銀をエピタキシャル成長させた粒子である。
注7) 乳剤A 、E 、F を除く粒子には1粒子あたり50本以上の転位が透過型電子顕微鏡にて観察される粒子である。
(有機固体分散染料の分散物の調製)
染料E−1を以下の方法で分散した。すなわち、水30%含む染料のウェットケーキ1400gに水およびWー4を70g加えて攪拌し、染料濃度30%のスラリーとした。次に、アイメックス(株)製ウルトラビスコミル(UVM−2)に平均粒径 0.5mmのジルコニアビースを1700ml充填し、スラリーを通して周速約10m/sec 、吐出量0.51/min で8時間粉砕した。ビーズを濾過して除き、安定化のために90℃で10時間加熱した後、水とゼラチンを加えて染料濃度3%に希釈した。得られた染料微粒子の平均粒径は0.4μmであり、粒径の分布の広さ(粒径標準偏差× 100/平均粒径)は18%であった。
【0088】
(試料100、102〜111の作製)
試料101において用いられる乳剤F〜Kの増感色素S−4とS−5を表2のように当モルで置き換えることで試料102〜111、また色素を抜くことで色素ブランク試料100を作製した。このように得られた試料片を1/100秒の露光時間、20CMSの露光量でグレーウェッジを通して白色露光した後、下記に示す処理工程により処理し、センシトメトリーを行った。さらに処理後の試料片のステインのマゼンタ濃度から色素ブランク試料100のマゼンタステインの濃度を差し引き、残色を評価した。ステイン濃度はX−RITE社製濃度測定器、ステータスAで測定した。
【0089】
【化26】
【0090】
【化27】
【0091】
【化28】
【0092】
【化29】
【0093】
【化30】
【0094】
【化31】
【0095】
【化32】
【0096】
【化33】
【0097】
【化34】
【0098】
【化35】
【0099】
【化36】
【0100】
【化37】
【0101】
【化38】
【0102】
【化39】
【0103】
【化40】
【0104】
【化41】
【0105】
【0106】
各処理液の組成は以下の通りであった。
pHは硫酸又は水酸化カリウムで調整した。
【0107】
pHは酢酸又は水酸化ナトリウムで調整した。
【0108】
pHは硫酸又は水酸化カリウムで調整した。
【0109】
pHは酢酸又は水酸化ナトリウムで調整した。
【0110】
pHは硝酸又は水酸化ナトリウムで調整した。
【0111】
pHは酢酸又はアンモニア水で調整した
【0112】
【0113】
下記の表2にセンシトメトリーおよび残色の評価結果を示す。GL相対感度は最低濃度から濃度1.0大なる相対露光量を基に比較した。
【0114】
【表2】
【0115】
表2の結果から明らかなように、本発明の化合物および乳剤を用いることで、残色が少なく、感度の高い感材が得られることがわかる。このように本発明の構成を用いることで、初めて高感度と良好な残色が両立できることは明らかである。
【0116】
【発明の効果】
本発明の構成により、高感度と良好な残色の効果が得られる。
Claims (2)
- 下記一般式(III)で表される化合物のうち少なくとも1つと、下記一般式(IV)で表される化合物のうち少なくとも1つを含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(III)
一般式(IV)
- 前記ハロゲン化銀写真感光材料が、還元増感を施されたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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