JP3655742B2 - 高周波帯域通過フィルタおよび分波器 - Google Patents

高周波帯域通過フィルタおよび分波器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてマイクロ波帯の、およびその他の周波数帯としては、VHF帯、UHF帯、ミリ波帯等の信号をろ波するための高周波フィルタ、または、分波器に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、従来の高周波フィルタの構成について説明する。図15は、従来の高周波フィルタの斜視図、図16は、図15のフィルタの中心部における横断面図(A−A’断面図)、図17は、図15のフィルタの通過特性図、図18は、図15のフィルタの群遅延特性図である。本フィルタはストリップ線路にて構成されているものであって、下記の文献に記載されているものである。
G.Matthaei,et.al.,"Microwave Filters, Impedance Matching-Networks, andCoupling Structures", McGraw Hill, 1964, pp.440-450 R.E.Collin, "Foundations for Microwave Engeneering 2nd-Ed.", McGraw Hill, 1992, pp.617-626
【0003】
図15および図16において、1は、誘電体基板、2は、誘電体基板1の裏面に形成された地導体、3(3a,3b,3c,3d,3e)は、誘電体基板1上に形成されたストリップ導体である。4は、誘電体基板1と地導体2とストリップ導体3からなる共振器、5(5a,5b)は、誘電体基板1と地導体2とストリップ導体3からなる入出力共振器、6(6a,6b)は、誘電体基板1と地導体2とストリップ導体3からなる、外部回路へと繋がる入出力線路である。また、21(21a,21b)は、共振器4と入出力共振器5を相互に結合させる結合部であり、22(22a,22b)は、入出力共振器5と入出力線路6を相互に結合させる入出力結合部である。すなわち図15および図16は、3つの共振器が縦続接続された3段の高周波フィルタを示している。
【0004】
次に、この高周波フィルタの動作を説明する。周波数f1 を中心周波数として、高周波、たとえばマイクロ波が通過するように、共振器4および入出力共振器5の共振周波数、ならびに、結合部21および入出力結合部22での結合度が調整されている。これらの調整は主に、共振器および結合部の線路方向の長さないしは間隔を調整することによって行なわれる。
【0005】
中心周波数f1 から離れた周波数のマイクロ波が、入出力線路6aからフィルタへと入射する場合には、共振器4および入出力共振器5a,5bが共振しないため、入射したマイクロ波は反射される。一方、入射するマイクロ波の周波数がf1 もしくはその近傍の周波数である場合には、共振器4および入出力共振器5が共に共振する。このため、共振器4と入出力共振器5a,5b、または入出力共振器5aと入出力線路6aおよび入出力共振器5bと入出力線路6bとは、結合部21a,21bまたは入出力結合部22a,22bを介して強く結合する。この結果、周波数f1 もしくはその近傍の周波数のマイクロ波は入出力線路6aから入出力線路6bへと伝搬することになる。すなわち、図15および図16の高周波フィルタの周波数特性は、図17の実線のようになる。図17中、fL は低域遮断周波数、fH は高域遮断周波数を表す。また、無負荷Q値が無限大の場合の特性を一点鎖線で示す。
【0006】
上記のように共振器を用いて構成される従来の高周波フィルタの通過特性は、共振器の有する無負荷Q値に左右される。無負荷Q値は、一般に次式で定義される。
【0007】
Q=(Ev /E0 )×ω1 …(1)
ここでEv :共振器内の蓄積エネルギーの時間平均値
E0 :単位時間内に共振器内で失われるエネルギー
ω1 :中心周波数における角周波数
【0008】
(1)式によると、共振器内における電磁界の分布領域が大きい場合には共振器内の蓄積エネルギーが大きくなるため、無負荷Q値は大きくなる。また、共振器を構成する導体の導体損失が小さいほど、また、共振器内の誘電体損失が少ないほど、共振器内で消散するエネルギーが減少するため、無負荷Q値は大きくなる。
【0009】
一方、図15の高周波フィルタの群遅延特性は、図18のようになる。通常、高周波フィルタの群遅延特性は、図18に示されるように、遮断周波数の近傍の周波数域で最大となる。群遅延量はフィルタ回路内でのエネルギーの滞留時間に相当し、すなわちこれは、フィルタ回路内でのエネルギーの反射回数の多さに対応している。フィルタ内の共振器は有限の無負荷Q値、すなわち一定量の損失を持っているため、群遅延の大きい周波数、つまり、フィルタ回路内での反射回数が多い周波数では、必然的に共振器でのエネルギーの損失が大きくなる。この結果、フィルタの通過帯域端である周波数fH 、fL では、中心周波数f1 に比べて通過損失が大きくなり、通過特性は図17に示すような特性となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の高周波フィルタでは、通過損失の小さいフィルタを得ようとすると、多くの場合、無負荷Q値の大きな大形の共振器を使用する必要性が生じてフィルタの外形寸法が拡大するという問題がある。
【0011】
また、通過帯域内で平坦な通過特性を有するフィルタを得るのは容易ではないという問題がある。この問題は、共振器の無負荷Q値が小さい場合ほど顕著である。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、通過帯域内で平坦な通過特性を有する高周波フィルタおよび分波器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明に係る高周波帯域通過フィルタは、
結合手段を介して従続接続された1または複数の導波管共振器と、前記導波管共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力導波管共振器と、前記各入出力導波管共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
前記入出力導波管共振器、又は、前記入出力導波管共振器及び前記入出力導波管共振器に隣接する導波管共振器とが、他の導波管共振器よりも大きい高さ寸法を有するように構成されて他の導波管共振器よりも高い無負荷Q値を有するように構成したものである。
【0014】
また、請求項2記載の発明に係る高周波帯域通過フィルタは、結合手段を介して従続接続された1または複数のマイクロストリップ線路形1/4波長共振器と、前記マイクロストリップ線路形1/4波長共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続されたマイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器と、前記各マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器、又は、前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器及び前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器に隣接するマイクロストリップ線路形1/2波長共振器が、そのストリップ導体がコ字状に折り曲げて構成されるとともに超伝導体を用いて他のマイクロストリップ線路形1/4波長共振器よりも高い無負荷Q値を有するように構成されたものである。
【0015】
また、請求項3記載の発明に係る高周波帯域通過フィルタは、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
前記入出力共振器、又は、前記入出力共振器及び前記入出力共振器に隣接する共振器がサスペンデッドストリップ線路を用いて構成されるとともに他の共振器がトリプレートストリップ線路を用いて構成され、前記入出力共振器、又は、前記入出力共振器及び前記入出力共振器に隣接する共振器が他の共振器よりも高い無負荷Q値を有するように構成されているものである。
【0016】
また、請求項4記載の発明に係る高周波帯域通過フィルタは、
結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
前記入出力共振器の長さを4分の1波長の3倍に設定し、前記共振器の長さを4分の1波長に設定するか、又は、前記入出力共振器の長さを2分の1波長の2倍に設定し、前記共振器の長さを2分の1波長に設定したものである。
【0017】
また、請求項5記載の発明に係る分波器は、請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波帯域通過フィルタを少なくとも2つ入力分岐回路を介して並列に接続して構成したものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、添付図面、図1,図2に基づき、本発明の実施の形態1を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1による高周波フィルタの斜視図、図2は本発明の実施の形態1による高周波フィルタの電界強度分布の概略を示す図である。本実施の形態の高周波フィルタは、複数のTE101モード共振器を縦続接続した高周波導波管フィルタからなっている。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施の形態における高周波フィルタの構成を説明する。図1において、16は中空の方形導波管、17(17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17h,17i,17j,17k,17l)は誘導性アイリスである。18(18a,18b,18c)は誘導性アイリス17によって区切られて形成されたTE101モード共振器を示し、19(19a,19b)は誘導性アイリス17によって区切られて形成されたTE101モード入出力共振器を示す。入出力共振器19は、共振器18より高さ寸法が大きくなるように構成されている。20(20a,20b)は外部回路へとつながる入出力導波管である。
【0025】
次に、本実施の形態における高周波フィルタの動作について説明する。上記の高周波フィルタは、周波数f1 を中心周波数として高周波が通過するように、誘導性アイリス17の間隔、厚さ、および大きさが調整されている。入出力導波管20aから入射した高周波の周波数がf1 から離れていると、共振器18および入出力共振器19が共振しないため高周波は反射される。一方、入出力導波管20aから入射した高周波の周波数がf1 近傍であると、共振器18および入出力共振器19が共振するため、誘導性アイリス17を介して共振器18と入出力共振器19および入出力導波管20とが効率よく結合し、その結果、f1 近傍の周波数の高周波は入出力導波管20bへと伝搬する。すなわち、本実施の形態の高周波フィルタは、従来の高周波フィルタと同様に、帯域通過形の高周波フィルタとして動作する。
【0026】
次に、本実施の形態の高周波フィルタでは、フィルタの中心軸における電界の分布は図2のようになる。図2において、横軸はフィルタの線路長さ方向の座標を表し、縦軸は導波管高さ方向の電界の強さを表している。このように、中心周波数f1近傍の周波数では中央の共振器18bにおいて電界が強く(実線のカーブ)、遮断周波数fL,fH近傍の周波数においては入力端の入出力共振器19aにおいて電界が強くなり(三角印のカーブ及び丸印のカーブ)、それぞれエネルギーが集中していることがわかる。このため、中心周波数近傍の周波数ではフィルタ中心部の共振器で損失が大きく、また、遮断周波数近傍の周波数ではフィルタ端部の入出力共振器で損失が大きくなる。
【0027】
本実施の形態においては、入出力共振器19は、共振器18よりも高さ寸法が大きい共振器となっている。すなわち、入出力共振器19の無負荷Q値は共振器18のそれよりも大きい。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0028】
また、入出力共振器19のみ寸法が大きくなるため、フィルタの容積および重量の増加が少なく、したがって、特性の良好なフィルタがコンパクトに得られる利点がある。
【0029】
なお、本実施の形態の高周波フィルタでは、共振器数が5つの5段フィルタについて示したが、3段以上の段数の高周波フィルタであれば何段の高周波フィルタにおいても同様な動作原理を有すること、および、同様な効果を得られることはいうまでもない。
【0030】
実施の形態2.
以下、添付図面、図3に基づき、本発明の実施の形態2を詳細に説明する。図3は本発明の実施の形態2による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、入出力線路を含む入出力共振器部分を、超伝導体を用いるとともに共振器部分と別の誘電体基板上に構成した高周波マイクロストリップ線路形フィルタを示し、入出力共振器は1/2波長波長共振器からなり、そのほかの共振器は1/4波長共振器からなっている。
【0031】
図3において、1(1a,1b,1c)は誘電体基板であって、1a,1bは、その上に超伝導体膜を形成するのに適した第1の誘電体基板、1cは、超伝導体膜を形成しない第2の誘電体基板である。2(2a,2b,2c,2d)は、誘電体基板1の裏面または側面に形成された地導体である。3(3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h)はストリップ導体であって、3a,3bはそれぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に超伝導体膜によって形成された、フィルタの中心周波数において略1/2波長の長さを有する入出力共振器ストリップ導体、3c〜3fは、第2の誘電体基板1c上に形成された、フィルタの中心周波数において略1/4波長の長さを有する共振器ストリップ導体、3g,3hはそれぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に形成された入出力線路ストリップ導体である。4(4a,4b,4c,4d)は、第2の誘電体基板1c上に地導体2と共振器ストリップ導体3c〜3fとにより構成される1/4波長共振器である。5(5a,5b)は、それぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に地導体2a,2bと入出力共振器ストリップ導体3a,3bとにより構成される1/2波長入出力共振器である。そして、6(6a,6b)は、それぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に地導体2aまたは2bと入出力線路ストリップ導体3gまたは3hとにより構成される入出力線路である。
【0032】
本実施の形態の高周波フィルタは、6段の帯域通過型フィルタであり、実施の形態1の高周波フィルタと線路の形式、共振器の構造的な違いはあるが、基本的には実施の形態1の高周波フィルタと同様な動作を行ない、また同様な効果を奏する。すなわち、本実施の形態の高周波フィルタでは、入出力共振器5が、その他の共振器4の長さが略1/4波長であるのに対し、略1/2波長の長さを有しているため物理寸法が大きいだけでなく、その他の共振器4が通常の導体で構成されているのに対し、入出力共振器5は超伝導体を用いて構成されているため、損失が非常に少なく無負荷Q値が大きくなっている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られる。
【0033】
また、超伝導体膜は通常、特定の結晶性誘電体基板上に形成されるものであり、さらに、超伝導体の中でも高温超伝導体などはその組成が複雑な場合が多く、広い面積に亙って均質な膜を作製するのが容易ではない。本実施の形態の高周波フィルタでは、超伝導体で形成した入出力共振器5を、そのほかの共振器4とは別の誘電体基板上に形成しているため、超伝導体膜で形成する回路が比較的小面積となるため、超伝導体膜を用いて作製しやすいという利点がある。
【0034】
そのほか、超伝導体は、誘電体基板の上面に加え、側面や裏面に亙って形成するのは困難である。本実施の形態では、超伝導体を用いて形成した入出力共振器5を1/2波長共振器としたため、第1の誘電体基板の側面に地導体を形成することが不要である。従って、この点においても、超伝導体膜を用いて作製しやすいという利点がある。
【0035】
実施の形態3.
以下、添付図面、図4に基づき、本発明の実施の形態3を詳細に説明する。図4は本発明の実施の形態3による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、入出力線路を含む入出力共振器、および入出力共振器と隣接した共振器部分を、超伝導体を用いるとともに、そのほかの共振器部分とは別の誘電体基板上に構成した高周波マイクロストリップ線路形フィルタであって、超伝導体を用いて構成した入出力共振器および入出力共振器と隣接する共振器は1/2波長共振器からなり、その他の共振器は1/4波長共振器からなっている。
【0036】
図4において、1(1a,1b,1c)は誘電体基板であって、1a,1bは、その上に超伝導体膜を形成するのに適した第1の誘電体基板、1cは、超伝導体膜を形成しない第2の誘電体基板である。2(2a,2b,2c)は、誘電体基板1の裏面または側面に形成された地導体である。3(3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h)はストリップ導体であって、3a,3dはそれぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に超伝導体膜によって形成された、フィルタの中心周波数において略1/2波長の長さを有する入出力共振器ストリップ導体、3b,3cは、それぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に超伝導体膜によって形成された、フィルタの中心周波数において略1/2波長の長さを有する第1の共振器ストリップ導体、3e,3fは、第2の誘電体基板1c上に形成された、フィルタの中心周波数において略1/4波長の長さを有する第2の共振器ストリップ導体、3g,3hは、それぞれ第1の誘電体基板1a,1b上に超伝導体膜によって形成された入出力線路ストリップ導体である。4(4a,4b)は、第2の誘電体基板1c上に地導体2と共振器ストリップ導体3e,3fとにより構成される1/4波長共振器である。5(5a,5b,5c,5d)は、第1の誘電体基板1aまたは1bと、地導体2aまたは2bと、入出力共振器ストリップ導体3a,3dまたは第1の共振器ストリップ導体3b,3cとにより構成される1/2波長入出力共振器または1/2波長共振器である。そして、6(6a,6b)は、第1の誘電体基板1aまたは1b上に地導体2aまたは2bと入出力線路ストリップ導体3gまたは3hとにより構成される入出力線路である。
【0037】
本実施の形態の高周波フィルタは6段の帯域通過型フィルタであり、基本的には実施の形態2の高周波フィルタと同様な動作を行ない、また同様な効果を奏する。なお、本実施の形態の高周波フィルタでは入出力共振器5a、5dだけでなく、入出力共振器に隣接する共振器5b、5cが略1/2波長の長さを有し、超伝導体を用いて構成されている。このため、実施の形態2のフィルタよりも、遮断周波数近傍の周波数における損失低減効果と、通過特性の平坦化の効果が大きい。
【0038】
上記のような遮断周波数近傍における損失低減、通過特性の平坦化は、入出力共振器からその近傍の共振器に亙って無負荷Q値の改善を図ることにより得られる。従って、実施の形態2では入出力共振器について、実施の形態3では入出力共振器とそれに隣接する共振器について、それぞれ無負荷Q値の改善を図る例を示した。
【0039】
実施の形態4.
以下、添付図面、図5に基づき、本発明の実施の形態4を詳細に説明する。図5は本発明の実施の形態4による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、高周波マイクロストリップ線路形フィルタであって、入出力共振器は1/2波長共振器からなり、その他の共振器は1/4波長共振器からなっている。
【0040】
図5において、1は誘電体基板、2は、誘電体基板1の裏面または側面に形成された地導体である。3(3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h)はストリップ導体であって、3a,3bは誘電体基板1上に形成された、フィルタの中心周波数において略1/2波長の長さを有する入出力共振器ストリップ導体、3c〜3fは、誘電体基板1上に形成された、フィルタの中心周波数において略1/4波長の長さを有する共振器ストリップ導体、3g,3hは誘電体基板1上に形成された入出力線路ストリップ導体である。4(4a,4b,4c,4d)は、誘電体基板1と地導体2と共振器ストリップ導体3c,3d,3eまたは3fとにより構成される1/4波長共振器である。5(5a,5b)は、誘電体基板1と地導体2と入出力共振器ストリップ導体3aまたは3bとにより構成される1/2波長入出力共振器である。そして、6(6a,6b)は、それぞれ誘電体基板1と地導体2と入出力線路ストリップ導体3gまたは3hとにより構成される入出力線路である。
【0041】
本実施の形態においては、入出力共振器5は、共振器4が1/4波長であるのに対し、1/2波長となっており、外形寸法の大きい共振器となっている。すなわち、入出力共振器5の無負荷Q値は共振器4のそれよりも大きい。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0042】
また、合計6つの共振器のうちの2つの入出力共振器のみ1/2波長としているので、フィルタの大型化が抑制され、特性の良好な高周波フィルタをコンパクトに実現できるという利点がある。
なお、上記の例では、共振器ストリップ導体3c〜3fは中心周波数において略1/4波長の長さを有し、入出力共振器ストリップ導体3a,3bは中心周波数において略1/2波長の長さを有するとした。しかし、これを一般化すると、内側の共振器の長さを4分の1波長に設定し、入出力共振器の長さを4分の1波長の奇数倍またはまたは2分の1波長の整数倍に設定してもよい。また、内側の共振器の長さを2分の1波長に設定し、入出力共振器の長さを2分の1波長の整数倍に設定してもよい。このことは、上述の実施の形態2及び3についても、同様に言えることである。
【0043】
実施の形態5.
以下、添付図面、図6に基づき、本発明の実施の形態5を詳細に説明する。図6は本発明の実施の形態5による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、5つの共振器からなる5段高周波マイクロストリップ線路形フィルタからなり、図6の一部において、部品の接続や配置を明らかにするため、部品を分離して表示している。本フィルタでは、入出力共振器およびそのほかの共振器を、通過帯域の中心周波数の1/4波長より短かくするとともに、ストリップ導体の一端を地導体に短絡し、他端をチップコンデンサを介して地導体に接続した共振器としている。
【0044】
図6において、1は誘電体基板、2は誘電体基板1の裏面または側面に形成された地導体、3(3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g)はストリップ線路であって、3a、3bは誘電体基板1上に形成され、フィルタの中心周波数の1/4波長より短い入出力共振器ストリップ導体、3c〜3eは、同じく誘電体基板1上に形成され、フィルタの中心周波数の1/4波長より短く、かつ、入出力共振器ストリップ導体3a、3bよりも短い共振器ストリップ導体、3fと3gは誘電体基板1上に形成された入出力線路ストリップ導体である。4(4a,4b,4c)は、誘電体基板1と地導体2と共振器ストリップ導体3c,3d,3eにより構成される1/4波長より短い共振器である。7(7a,7b,7c,7d,7e)は、チップコンデンサの誘電体、8(8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8h,8i,8j)は、チップコンデンサの電極、9(9a,9b,9c,9d,9e)は、誘電体7および電極8から形成されたチップコンデンサである。5(5a,5b)は、誘電体基板1と地導体2と入出力共振器ストリップ導体3a,3bと、チップコンデンサ9a,9bとにより構成される入出力共振器である。そして、6(6a、6b)は、誘電体基板1と地導体2と入出力線路ストリップ導体3fまたは3gとにより構成される入出力線路である。
【0045】
本実施の形態の高周波フィルタは5段のコムライン形帯域通過形フィルタであり、実施の形態1と線路の形式および共振器の構造的な違いこそあれ、基本的には実施の形態1の高周波フィルタと同様な動作を行ない、また同様な効果を奏する。すなわち、本フィルタでは、各共振器の共振周波数はおよそ中心周波数程度となるように、チップコンデンサの容量が調整されているが、入出力共振器ストリップ導体3a,3bが、その他の共振器のストリップ共振器導体3c〜3eよりも長く、物理的寸法が大きい。このため、入出力共振器の無負荷Q値がそのほかの共振器のそれより大きくなっている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0046】
実施の形態6.
以下、添付図面、図7に基づき、本発明の実施の形態6を詳細に説明する。図7は本発明の実施の形態6による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、5つの共振器からなる5段高周波マイクロストリップ線路形フィルタからなり、図7では、各部の構造や配置を明らかにするため、一部において分解して表示している。本フィルタでは、入出力共振器およびそのほかの共振器が、通過帯域の中心周波数の略1/2波長の両端開放型共振器となっている。
【0047】
図7において、1(1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i)は誘電体基板であって、1a、1bは第1の誘電体基板、1c〜1hは第2の誘電体基板、1iは、第2の誘電体基板に比べ十分に薄い第3の誘電体基板である。また、2(2a,2b)は地導体であって、2aは第1の誘電体基板1aの下面に形成された地導体、2bは、第1の誘電体基板1bの上面に形成された地導体である。また、3(3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g)は、ストリップ導体であって、3a、3bは、第3の誘電体基板1i上に形成された、フィルタの中心周波数の略1/2波長の入出力共振器ストリップ導体、3c〜3eは、同じく第3の誘電体基板1i上に形成された、フィルタの中心周波数の略1/2波長の共振器ストリップ導体、3fと3gは、同じく第3の誘電体基板1i上に形成された入出力線路ストリップ導体である。そして4(4a,4b,c)は、第2の誘電体基板1g,1hと地導体2a,2bと第3の誘電体基板1iと共振器ストリップ導体3c〜3eにより構成される共振器、5(5a,5b)は、地導体2a,2bと第3の誘電体基板1iと入出力共振器ストリップ導体3a,3bにより構成される入出力共振器である。そして、6(6a,6b)は、第2の誘電体基板1e,1fと地導体2a,2bと第3の誘電体基板1iと入出力線路ストリップ導体3f,3gにより構成される入出力線路である。
【0048】
本実施の形態の高周波フィルタは5段の帯域通過形フィルタであり、実施の形態1と線路の形式および共振器の構造的な違いこそあれ、基本的には実施の形態1の高周波フィルタと同様な動作を行なう。本フィルタでは、入出力共振器がサスペンデッドストリップ線路により形成され、そのほかの部分はトリプレートストリップ線路により構成されている。このため、入出力共振器の無負荷Q値がそのほかの共振器のそれより大きくなっている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0049】
また、入出力共振器5の線路形式がそのほかの部分と異なるだけなので、フィルタの容積および重量の増加が少なく、特性の良好なフィルタをコンパクトに実現できるという利点がある。
【0050】
そのほか、本フィルタは多層状の誘電体基板により構成されているため、MMICなどに適用しやすいという利点がある。
【0051】
実施の形態7.
以下、添付図面、図8,図9および図10に基づき、本発明の実施の形態7を詳細に説明する。図8は本発明の実施の形態7による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、4つの高インピーダンス方形同軸線路と3つの低インピーダンス方形同軸線路を交互に接続し、そしてその端部に入出力同軸線路を接続することにより構成された同軸線路形低域通過フィルタからなり、図8では、同軸線路内導体の支持部材を省略している。また図9は図8におけるA−A’断面図、図10は図8におけるB−B’断面図である。
【0052】
図8,図9および図10において、10は中空の良導体で成る方形同軸線路の外導体、11(11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11i)は方形同軸線路の内導体であり、そのうちの11a〜11dは高インピーダンス線路の内導体、11e〜11gは低インピーダンス線路の内導体、11hは入力線路の内導体、そして、11iは出力線路の内導体である。12(12a,12b,12c,12d)は、外導体10と内導体11a〜11dにより構成される高インピーダンス線路、13(13a,13b,13c)は、外導体10と内導体11e〜11gにより構成される低インピーダンス線路、14は、外導体10と内導体11hにより構成される入力線路、そして、15は、外導体10と内導体11iにより構成される出力線路である。
【0053】
次に、本実施の形態の高周波フィルタの動作について説明する。上記のフィルタは、周波数fC を遮断周波数としたとき、遮断周波数fC 以下の周波数の高周波が通過するように、高インピーダンス線路12、低インピーダンス線路13の長さと特性インピーダンスが選択されている。さらに各線路部分は、波長に対して十分短くなるように線路の長さが選択されている。同軸線路においては外導体の断面積を一定とした場合には、高インピーダンス線路では内導体の断面積が小さくなり、低インピーダンス線路では内導体の断面積が大きくなる。従って、高インピーダンス線路12では、内導体での電流の集中により直列のインダクタンスとして、低インピーダンス線路13では、内導体での電荷の集中により並列のコンデンサとして、それぞれ等価に動作する。このため、遮断周波数fC より低い周波数の高周波は、直列インダクタンスによるリアクタンスが小さく、かつ、並列コンデンサによるサセプタンスが小さいため、フィルタ回路内で反射することなく伝搬する。一方、遮断周波数fC より高い周波数の高周波は、直列インダクタンスによるリアクタンスが大きく、かつ、並列コンデンサによるサセプタンスも大きくなるため、反射される。
【0054】
本実施の形態の高周波フィルタでは、遮断周波数fcから離れた通過域内の周波数では、中心部の線路12b、13b、12c等にエネルギーが集中し、遮断周波数fC 近傍の周波数では入力線路14に隣接した線路12aにおいてエネルギーが集中する。このため、遮断周波数近傍の周波数ではフィルタ端部の高インピーダンス線路12aにおいて損失が大きくなる。
【0055】
本実施の形態においては、入力線路14に隣接した高インピーダンス線路12aは、そのほかの高インピーダンス線路よりも特性インピーダンスの低い線路で構成している。このために電流の集中が少なくなっており、所定のインダクタンスを得るため線路長が拡大しているが、電流の集中が減少することにより損失が減少する。このため、遮断周波数近傍の周波数における高インピーダンス線路12aでの損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0056】
また、長さ方向の寸法が大きくなるのは高インピーダンス線路12aのみであるため、フィルタの容積および重量の増加が少なく、特性の良好なフィルタがコンパクトに得られるという利点がある。
【0057】
なお、上記の実施の形態の高周波フィルタでは、入力線路に隣接する高インピーダンス線路のみ低インピーダンス化する例を示したが、低インピーダンス線路13aと高インピーダンス線路12b等まで同様に対策しても良い。すなわち、対策する線路は入力線路に近い線路ほど効果的であるが、対策する線路の数は限定されるものではないことはいうまでもない。
【0058】
実施の形態8.
以下、添付図面、図11,図12および図13に基づき、本発明の実施の形態8を詳細に説明する。図11は本発明の実施の形態8による高周波フィルタの斜視図である。本実施の形態の高周波フィルタは、3つの低インピーダンス方形同軸線路と2つの高インピーダンス方形同軸線路を交互に接続し、そしてその端部に入出力同軸線路を接続することにより構成された同軸線路形低域通過フィルタからなり、図11では、同軸線路内導体の支持部材を省略している。また図12は図11におけるA−A’断面図、図13は図11におけるB−B’断面図である。
【0059】
図11,図12および図13において、10は中空の良導体で成る方形同軸線路の外導体、11(11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g)は方形同軸線路の内導体であり、そのうちの11a〜11cは低インピーダンス線路の内導体、11d、11eは高インピーダンス線路の内導体、11fは入力線路の内導体、そして、11gは出力線路の内導体である。12(12a,12b)は、外導体10と内導体11d,11eにより構成される高インピーダンス線路、13(13a,13b,13c)は、外導体10と内導体11a〜11cにより構成される低インピーダンス線路、14は、外導体10と内導体11fにより構成される入力線路、そして、15は、外導体10と内導体11gにより構成される出力線路である。
【0060】
次に、本実施の形態の高周波フィルタの動作について説明する。上記のフィルタは、周波数fC を遮断周波数として、遮断周波数fC 以下の周波数の高周波が通過するように、高インピーダンス線路12と低インピーダンス線路13の、長さと特性インピーダンスが選択されている。さらに各線路部分は、波長に対して十分短くなるように線路の長さが選択されている。同軸線路においては外導体の断面積を一定とした場合には、高インピーダンス線路では内導体の断面積が小さくなり、低インピーダンス線路では内導体の断面積が大きくなる。従って、高インピーダンス線路12では、内導体での電流の集中により直列のインダクタンスとして、低インピーダンス線路13では、内導体での電荷の集中により並列のコンデンサとして、それぞれ等価に動作する。このため、遮断周波数fC より低い周波数の高周波は、直列インダクタンスによるリアクタンスが小さく、かつ、並列コンデンサによるサセプタンスが小さいため、フィルタ回路内で反射することなく伝搬する。一方、遮断周波数fC より高い周波数の高周波は、直列インダクタンスによるリアクタンスが大きく、かつ、並列コンデンサによるサセプタンスも大きくなるため、反射される。
【0061】
本実施の形態の高周波フィルタでは、遮断周波数fC から離れた通過域内の周波数では、中心部の線路12a、13b、12b等にエネルギーが集中し、遮断周波数fC 近傍の周波数では入力線路14に隣接した線路13aにおいてエネルギーが集中する。このため、遮断周波数近傍の周波数ではフィルタ端部の低インピーダンス線路13aにおいて損失が大きくなる。
【0062】
本実施の形態においては、入力線路14に隣接した低インピーダンス線路13aは、そのほかの低インピーダンス線路13b、13cよりも特性インピーダンスの高い線路で構成している。このために電荷の集中が少なくなっており、所定のキャパシタンスを得るため線路長が拡大しているが、電荷の集中が減少することにより損失が減少する。このため、遮断周波数近傍の周波数における低インピーダンス線路13aでの損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタが得られる。
【0063】
また、長さ方向の寸法が大きくなるのは低インピーダンス線路13aのみであるため、フィルタの容積および重量の増加が少なく、特性の良好なフィルタがコンパクトに得られるという利点がある。
【0064】
なお、本実施の形態の高周波フィルタでは、入力線路に隣接する低インピーダンス線路のみ高インピーダンス化する例を示したが、高インピーダンス線路12aと低インピーダンス線路13b等まで同様に対策しても良い。すなわち、対策する線路は入力線路に近い線路ほど効果的であるが、対策する線路の数は限定されるものではないことはいうまでもない。
【0065】
実施の形態9.
以下、添付図面、図14に基づき、本発明の実施の形態9を詳細に説明する。図14は本発明の実施の形態9による分波器の斜視図である。本実施の形態の分波器は、入出力線路を含む入出力共振器部分を、超伝導体を用いるとともに共振器部分と別の誘電体基板上に構成した帯域通過形高周波マイクロストリップ線路形フィルタを2つ並列に接続することにより構成した分波器であって、いずれのフィルタも、入出力共振器は1/2波長波長共振器、そのほかの共振器は1/4波長共振器となっている。
【0066】
図14において、1(1a,1b,1c,1d,1e)は、誘電体基板であって、1a〜1cは、超伝導体膜を形成するのに適した第1の誘電体基板、1d,1eは、超伝導体膜を形成しない第2の誘電体基板である。2(2a,2b,2c,2d,2e)は、地導体であって、2a〜2cは第1の誘電体基板1a〜1cの裏面に形成された地導体、2d,2eは第2の誘電体基板1d,1eの裏面または側面に形成された地導体である。4(4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h)は、通常の導体を用いて構成した1/4波長共振器、5(5a,5b,5c,5d)は、超伝導体を用いて構成した1/2波長入出力共振器である。そして、6(6a,6b,6c)は入出力線路である。
【0067】
次に、本実施の形態の分波器の動作について説明する。本実施の形態の分波器は、通過帯域の異なる2つの帯域通過型フィルタを並列接続したものである。一方のフィルタは周波数f1 を中心周波数とし、他方のフィルタは周波数f2 を中心周波数とする帯域通過フィルタとなっている。入出力線路6aから入射したf1 近傍の高周波は、f2 を中心周波数とする一方の帯域通過フィルタで反射され、他方のフィルタを通過する。また、f2 近傍の周波数の高周波が入出力線路6aから入射すると、f1 を中心周波数とする一方の帯域通過フィルタで反射され、他方のフィルタを通過する。f1 からもf2 からも離れた周波数の高周波が入射した場合には、高周波は反射される。
【0068】
本実施の形態の分波器に組み込まれた高周波フィルタは6段の帯域通過型フィルタであり、実施の形態2の高周波フィルタと同様な動作を行ない、また同様な効果を奏する。すなわち、入出力共振器5が、その他の共振器4の長さが略1/4波長であるのに対し、略1/2波長の長さを有しているため物理的寸法が大きいだけでなく、その他の共振器4が通常の導体で構成されているのに対し、入出力共振器5は超伝導体を用いて構成されているため、損失が非常に少なく無負荷Q値が大きくなっている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ないフィルタとなっている。これにより、分波器としたときの2つの通過帯域での帯域内の通過特性が平坦になるとともに、それぞれの通過帯域において、阻止帯域となる他方のフィルタの反射損が減少するため、他方のフィルタに吸収されるエネルギーが減少し、その結果、通過帯域での損失が減少するという効果がある。
なお、この実施の形態の分波器は、実施の形態2の高周波フィルタの構造を組み合わせた例について述べた。しかし、このような分波器は、上述の実施の形態1〜6までの高周波フィルタをそれぞれ入力分岐回路を介して並列に接続して構成することもできる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器または入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器が、他の共振器よりも高い無負荷Q値を有する構成としているので、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0070】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器または入出力共振器と前記入出力共振器と隣接する共振器が、他の共振器よりも大きい外形寸法を有するようにすることにより、その無負荷Q値を大きくしている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0071】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器について、超伝導体を用いて構成することにより、その無負荷Q値を大きくしている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0072】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器を、そのほかの共振器と異なる低損失な伝送線路で構成しており、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器の無負荷Q値を大きくしている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0073】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器をサスペンデッドストリップ線路で構成し、そのほかの共振器をトリプレートストリップ線路で構成しており、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器の無負荷Q値を大きくしている。このため、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0074】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、入出力共振器および共振器を伝送線路と集中定数素子の組み合わせにより構成し、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器の伝送線路の長さを、その他の共振器に比較して長く設定している。これにより、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器の無負荷Q値が大きくなっており、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0075】
また、本願に含まれる発明では、結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波フィルタにおいて、共振器を4分の1波長あるいは2分の1波長共振器とし、入出力共振器の長さを4分の1波長の奇数倍あるいは2分の1波長の整数倍に設定している。これにより、入出力共振器、あるいは入出力共振器と前記入出力共振器に隣接する共振器の無負荷Q値がそのほかの共振器に比べ大きくなっており、遮断周波数近傍の周波数における入出力共振器での損失が低減され、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られるという効果がある。
【0076】
また、本願に含まれる発明では、上記各発明の高周波フィルタを少なくとも2つ入力分岐回路を介して並列に組み合わせて分波器を構成している。このため、各フィルタにおける通過帯域での帯域内の通過特性が平坦になるとともに、それぞれの通過帯域において、阻止帯域となる他方のフィルタの反射損が減少するため、他方のフィルタに吸収されるエネルギーが減少し、その結果、通過帯域での損失が減少するという効果がある。
【0077】
また、本願に含まれる発明では、1または複数の高インピーダンス線路と、1または複数の低インピーダンス線路とを備え、前記高インピーダンス線路と低インピーダンス線路とを交互に従続接続して、前記従続接続の一端に外部回路と接続するための入力線路を接続し、前記従続接続の他端に外部回路と接続するための出力線路を接続してなる高周波フィルタにおいて、入力線路にもっとも近い高インピーダンス線路の特性インピーダンスをその他の高インピーダンス線路の特性インピーダンスより低く設定している。このため、入力線路にもっとも近い高インピーダンス線路における電流の集中が緩和されており、損失が減少する。このため、遮断周波数近傍の周波数における損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られる。
【0078】
また、本願に含まれる発明では、1または複数の高インピーダンス線路と、1または複数の低インピーダンス線路とを備え、前記高インピーダンス線路と低インピーダンス線路とを交互に従続接続して、前記従続接続の一端に外部回路と接続するための入力線路を接続し、前記従続接続の他端に外部回路と接続するための出力線路を接続してなる高周波フィルタにおいて、入力線路にもっとも近い低インピーダンス線路の特性インピーダンスをその他の低インピーダンス線路の特性インピーダンスより高く設定している。このため、入力線路にもっとも近い低インピーダンス線路における電荷の集中が緩和されており、損失が減少する。このため、遮断周波数近傍の周波数における損失が低減される。これにより、遮断周波数近傍の通過帯域内の周波数では通過損失が減少し、また、遮断周波数近傍の通過帯域外の周波数では反射損失が減少することになる。したがって、通過帯域内の通過特性が平坦で、かつ、帯域外でのフィルタ内損失の少ない高周波フィルタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による高周波フィルタの斜視図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による高周波フィルタの電界強度分布の概略を示す図である。
【図3】 本発明の実施の形態2による高周波フィルタの斜視図である。
【図4】 本発明の実施の形態3による高周波フィルタの斜視図である。
【図5】 本発明の実施の形態4による高周波フィルタの斜視図である。
【図6】 本発明の実施の形態5による高周波フィルタの斜視図である。
【図7】 本発明の実施の形態6による高周波フィルタの斜視図である。
【図8】 本発明の実施の形態7による高周波フィルタの斜視図である。
【図9】 本発明の実施の形態7による高周波フィルタのA−A’断面図である。
【図10】 本発明の実施の形態7による高周波フィルタのB−B’断面図である。
【図11】 本発明の実施の形態8による高周波フィルタの斜視図である。
【図12】 本発明の実施の形態8による高周波フィルタのA−A’断面図である。
【図13】 本発明の実施の形態8による高周波フィルタのB−B’断面図である。
【図14】 本発明の実施の形態9による分波器の斜視図である。
【図15】 従来の高周波フィルタの斜視図である。
【図16】 図15の高周波フィルタの中心部における横断面図である。
【図17】 図15の高周波フィルタの通過特性図である。
【図18】 図15の高周波フィルタの群遅延特性図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板、 2 地導体、 3 ストリップ導体、 4 共振器、 5入出力共振器または入出力共振器に隣接した共振器、 6 入出力線路、 7誘電体、 8 電極、 9 チップコンデンサ、 10 方形同軸線路の外導体、 11 方形同軸線路の内導体、 12 高インピーダンス線路、 13低インピーダンス線路、 14 入力線路、 15 出力線路、 16 方形導波管、 17 誘導性アイリス、 18 TE101共振器、 19 入出力TE101共振器、 20 入出力導波管、 21 結合部、 22 入出力結合部。

Claims (5)

  1. 結合手段を介して従続接続された1または複数の導波管共振器と、前記導波管共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力導波管共振器と、前記各入出力導波管共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
    前記入出力導波管共振器、又は、前記入出力導波管共振器及び前記入出力導波管共振器に隣接する導波管共振器とが、他の導波管共振器よりも大きい高さ寸法を有するように構成されて他の導波管共振器よりも高い無負荷Q値を有することを特徴とする高周波帯域通過フィルタ。
  2. 結合手段を介して従続接続された1または複数のマイクロストリップ線路形1/4波長共振器と、前記マイクロストリップ線路形1/4波長共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続されたマイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器と、前記各マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
    前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器、又は、前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器及び前記マイクロストリップ線路形1/2波長入出力共振器に隣接するマイクロストリップ線路形1/2波長共振器が、そのストリップ導体がコ字状に折り曲げて構成されるとともに超伝導体を用いて他のマイクロストリップ線路形1/4波長共振器よりも高い無負荷Q値を有するように構成されていることを特徴とする高周波帯域通過フィルタ。
  3. 結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
    前記入出力共振器、又は、前記入出力共振器及び前記入出力共振器に隣接する共振器がサスペンデッドストリップ線路を用いて構成されるとともに他の共振器がトリプレートストリップ線路を用いて構成され、前記入出力共振器、又は、前記入出力共振器及び前記入出力共振器に隣接する共振器が他の共振器よりも高い無負荷Q値を有するように構成されていることを特徴とする高周波帯域通過フィルタ。
  4. 結合手段を介して従続接続された1または複数の共振器と、前記共振器列の前後にそれぞれ結合手段を介して接続された入出力共振器と、前記各入出力共振器と外部回路とを接続する入出力結合手段とを具備する高周波帯域通過フィルタにおいて、
    前記入出力共振器の長さを4分の1波長の3倍に設定し、前記共振器の長さを4分の1波長に設定するか、又は、前記入出力共振器の長さを2分の1波長の2倍に設定し、前記共振器の長さを2分の1波長に設定したことを特徴とする高周波帯域通過フィルタ。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波帯域通過フィルタを少なくとも2つ入力分岐回路を介して並列に接続して構成したことを特徴とする分波器
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