JP3655601B2 - 鋼矢板の継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼矢板の継手に関し、特に地盤変動等に伴う鋼矢板の変位に追随して伸縮、撓み変形をすることができる継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼矢板は、その両側端の継手部を互いに連結して地中に打設し、連結する鋼矢板壁を形成することによって、その前後の土砂の崩壊を防止するもので、岸壁、護岸、土留め擁壁、止水壁、堤防等建設工事全般にわたって広く使用されている。
【0003】
鋼矢板は、地震による地盤変位が生じた場合、連結横方向への伸縮変形、撓み変形をしないため鋼矢板の係合の離脱あるいは鋼矢板の破壊を生じるおそれがある。そこで、本出願人は、さきに特開昭60−62325号公報に記載される鋼矢板の継手を提案した。この継手は、隣接する鋼矢板との接合継手部を有する1対の板状部を跨ぐようにしてゴム・合成樹脂などからなる可撓止水部材を設けることにより、地盤変動等に伴う鋼矢板の変位に追随して伸縮・撓み変形をすることが可能であり、これによって鋼矢板の損傷、破壊を防止することができる。
【0004】
また、この継手の打設に際して可撓止水部材に亀裂等の損傷が生じることを防止するために多くの提案がなされている。
【0005】
鋼矢板の継手を施工する場合は、継手の上端部を振動式杭打ち機(バイブロハンマー)等で荷重を加えて押込み埋設するが、その際可撓止水部材の下端部の亀裂損傷を防ぐとともに継手の土中への押込みを安全に先導し継手の、埋設を容易にするため、図5に斜視図で示す先端沓Aを継手の下端部に装着する。先端沓Aは、箱型の形状を有し、継手の板状部の基部と平行な2つの面aの下部には内側に傾斜する傾斜面bが形成されている。また先端沓Aの両側部cには上下方向に溝dが切られている。この溝dに継手の板状部の各基部を挿入し、先端沓Aの両側部cに固定したワイヤ(図示せず)を継手の基部に設けたワイヤ取付け部(図示せず)に取付けることにより先端沓Aを継手に固定する。継手を打設した後ワイヤを切断し継手本体を所定の高さだけ引上げて板状部の基部を先端沓Aの溝dから外すことにより、可撓止水部材は地盤変動に伴って伸縮することができる。
【0006】
上記継手においては、継手打設後に先端沓を吊下げているワイヤを切断し、継手を所定の高さだけ引上げて板状部の基部を先端沓の溝から取外すための作業が必要であり、施工に手間がかかるという欠点がある。
【0007】
そこで、本出願人は、特願2001−239129号をもって、図6に斜視図を示す先端沓を提案した。この先端沓Bは、2つの部分f−1、f−2に分割した形状の部材で形成されており、これら2つの部材f−1、f−2は相互に仮溶接されている。先端沓Bの上端部の一側が継手の板状部gの基部hの下端部内側面に溶接されている。この構成により、継手打設後に地盤変動等により鋼矢板が変位する場合は、仮溶接により連結されている先端沓の2つの部材が切断されて継手は幅方向に伸長することができるので、ワイヤ切断、板状部基部の引上げ作業が不要となり、継手の施工が容易になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特願2001−239129号明細書記載の先端沓は、施工完了時において2つの部材が相互に仮溶接されているので、その後地盤変動により鋼矢板が幅方向に伸長する方向に変位する場合は仮溶接が外れて先端沓の2つの部材は相互に離間するようにして鋼矢板の変位に追随することができるが、鋼矢板の変位が幅方向に縮む変位である場合は、先端沓は鋼矢板の変位に追随することができず、鋼矢板の破壊や損傷を生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記各鋼矢板の継手における先端沓の問題点にかんがみなされたものであって、ワイヤ切断、板状部基部の引上げ作業が不要であり、しかも地盤変動に伴う鋼矢板の変位が幅方向に伸縮いずれの変位であっても鋼矢板の変位に追随して変位することができる先端沓を備えた鋼矢板の継手を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明にかかる鋼矢板の継手は、鋼矢板を半割にした形状を有し、板状の基部と、該基部から所定角度で立上がる立上がり部と、該立上がり部の先端部に連設された隣接する鋼矢板との接合継手部からなる1対の板状部を、各基部が所定の間隔をおいて一線上に整列しかつ立上がり部が該整列した基部の同一側に位置するようにして配置し、ゴム・合成樹脂などからなる可撓止水部材を該1対の基部を跨ぐようにして各基部の該立上がり部が位置する側に可撓止水部材固定手段により固定し、該継手の下端部に先端沓を接合した鋼矢板の継手において、該先端沓を2つの先端沓部分で形成し、該2つの先端沓部分を前記板状部の基部間の該所定の間隔にほぼ等しい間隔で継手の幅方向に整列させて配置し、該2つの先端沓部分の上端部をそれぞれ該板状部の基部の下端部に溶接するとともに、1対の連結板を該2つの先端沓部分に跨るようにして配置し、前記2つの先端沓部分の間隔を維持しかつ鋼矢板が幅方向に縮む方向に変位できる空間を維持した状態で外部から塞ぐようにしてそれぞれを該2つの先端沓部分の継手幅方向に延長する2つの面に仮溶接したことを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明によれば、先端沓を2つの先端沓部分で形成し、2つの先端沓部分を板状部の基部間の所定の間隔にほぼ等しい間隔で継手の幅方向に整列させて配置し、2つの先端沓部分の上端部をそれぞれ板状部の基部の下端部に溶接するとともに、1対の連結板を2つの先端沓部分に跨るようにして配置し、それぞれを2つの先端沓部分の継手幅方向に延長する2つの面に仮溶接したので、継手打設後に地盤変動等により鋼矢板が幅方向に伸長する方向に変位する場合はもとより、鋼矢板が幅方向に縮む方向に変位する場合でも、仮溶接により連結されている先端沓の2つの部分が切断されて先端沓の2つの部分は相互に接近する方向に変位することが可能であり、鋼矢板の変位に追随して変位することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図4は本発明にかかる継手の1実施形態の継手本体を示す横断面図である。
鋼矢板の継手1は、U形鋼矢板を半割にした形状を有し、板状の基部3と、基部3から所定角度で立上がる立上がり部4と、立上がり部4の先端部に連設された隣接する鋼矢板との接合継手部5からなる1対の板状部2を、各基部3が所定の間隔Dをおいて一線上に整列しかつ立上がり部4が整列した基部3の同一側に位置するようにして配置し、ゴム・合成樹脂などからなる可撓止水部材6を1対の基部3を跨ぐようにして各基部3の立上がり部4が位置する側に可撓止水部材固定手段を構成するボルト8、ナット9、押え板15により固定してなるものである。
【0013】
本実施形態において、可撓止水部材6は幅方向両端部6bと中央部の2つの膨出部6aからなり、ボルト8、ナット9を堅締することにより、押え板15は可撓止水部材6の両端部6bを基部3に対して押付けて固定する。
【0014】
一方の基部3の可撓止水部材6が配置される側にはL形の保護板11の立上がり部11aが溶接により固定されており、保護板11の可撓止水部材保護部11bは可撓止水部材6と平行に延長して可撓止水部材6の外側を覆っている。他方の基部3(図中右手)端部には保護板12が溶接により固定されており、保護板12は可撓止水部材6を覆うようにして反対側の基部3のボルト8付近に達するように延長している。
【0015】
図1〜図3は同実施形態の先端沓を示すもので、図1は先端沓の継手本体への取付け状態を示す継手本体下部の斜視図、図2は先端沓の斜視図、図3は図1のA−A断面図であるである。
【0016】
先端沓20は全体として三角筒を継手の軸方向に2分割した形状の先端沓部分21、21からなり、各先端沓部分21は、図2に示すように、頂板22、頂板22の両側から斜め内側下方に延長する2枚の傾斜板23、23の3枚の板からなり、傾斜板23、23はその上縁部において頂板22の下面両側部に溶接固定され、その下縁部において相互に溶接固定されており、全体として三角筒の形状を呈している。各先端沓部分21、21の軸手幅方向外側端縁には閉塞板25、25が溶接されており、先端沓部分21、21内への土砂の浸入を防止している。
【0017】
これら2つの先端沓部分21、21は板状部2、2の基部3、3間の所定の間隔Dにほぼ等しい間隔で継手の幅方向に整列して配置され、2つの先端沓部分21、21の上端部を構成する頂板22、22はそれぞれ板状部2、2の基部3、3の下縁3a、3aに溶接固定されている。
【0018】
1対の平板からなる連結板24、24がそれぞれ2つの先端沓部分21、21に跨るようにしてその両側に配置され、各連結板24、24は2つの先端沓部分21、21の継手幅方向に延長する2つの面を構成する傾斜面23、23のそれぞれにたとえば上下2箇所において仮溶接されている。
【0019】
なお、可撓止水部材6、押え板15および保護板11、12の下端部は基部3の先端沓20を溶接する部分の上方で終端しており、溶接部分にはこれらの部材は存在しないので、これらの部材が先端沓20の上端部を溶接する際に障害となることはない。
【0020】
先端沓の形状は上記三角筒状のものに限らず、中実の三角柱としてもよい。また断面3角形の形状に限らず、たとえば図6に示すような上記特願2001−239129号明細書記載の底面が水平方向に延長する形状等他の形状のものも使用することができる。
【0021】
また、可撓止水部材6の中央部の形状も上記実施形態のものに限らず、たとえば上記特願2001−239129号に記載の中央部を折畳む形状の可撓止水部材等他の形状のものも使用することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、先端沓を2つの先端沓部分で形成し、該2つの先端沓部分を板状部の基部間の該所定の間隔にほぼ等しい間隔で継手の幅方向に整列させて配置し、2つの先端沓部分の上端部をそれぞれ板状部の基部の下端部に溶接するとともに、1対の連結板を2つの先端沓部分に跨るようにして配置し、それぞれを2つの先端沓部分の継手幅方向に延長する2つの面に仮溶接したので、地盤変動等により鋼矢板が幅方向に伸長する方向に変位する場合はもとより、鋼矢板が幅方向に縮む方向に変位する場合でも先端沓の2つの部分は相互に接近する方向に変位することが可能であり、鋼矢板の変位に追随して変位することができる。またワイヤの切断、継手本体の引上げ等の施工時の作業は一切不要であり、継手の施工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の継手の1実施形態を示す斜視図である。
【図2】先端沓の斜視図である。
【図3】図1中A−A断面図である。
【図4】継手本体の横断面図である。
【図5】従来の鋼矢板継手に使用される先端沓の斜視図である。
【図6】特願2001−239129号明細書記載の先端沓を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 鋼矢板の継手
2 板状部
3 基部
4 立上がり部
20 先端沓
21 先端沓部分
24 連結板
Claims (1)
- 鋼矢板を半割にした形状を有し、板状の基部と、該基部から所定角度で立上がる立上がり部の先端部に連設された隣接する鋼矢板との接合継手部からなる1対の板状部を、各基部が所定の間隔をおいて一線上に整列しかつ立上がり部が該整列した基部の同一側に位置するようにして配置し、ゴム・合成樹脂などからなる可撓止水部材を該一対の基部を跨ぐようにして各基部の該立上がり部が位置する側に可撓止水部材固定手段により固定し、該継手の下端部に先端沓を接合した鋼矢板の継手において、該先端沓を2つの先端沓部分で形成し、該2つの先端沓部分を前記板状部の基部間の該所定の間隔にほぼ等しい間隔で継手の幅方向に整列させて配置し、該2つの先端沓部分の上端部をそれぞれ該板状部の基部の下端部に溶接するとともに、1対の連結板を該2つの先端沓部分に跨るようにして配置し、前記2つの先端沓部分の間隔を維持しかつ鋼矢板が幅方向に縮む方向に変位できる空間を維持した状態で外部から塞ぐようにしてそれぞれを該2つの先端沓部分の継手幅方向に延長する2つの面に仮溶接したことを特徴とする鋼矢板の継手。
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- 2002-07-18 JP JP2002209260A patent/JP3655601B2/ja not_active Expired - Lifetime
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