JP3655401B2 - 床暖房用パネル - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、床暖房用パネルに関する。さらに詳しくは、床暖房用パネルを実際に施工する際に、工程数が少なく施工が容易な、根太の間に配置される床暖房用パネルに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、寒冷期の住宅の居住性を向上させる目的で、住宅の床面から暖房する床暖房技術が提案され、実用化されている。例えば、束立て床組法によった床組に床暖房設備を組込む場合には、まず、地盤上に束石を据え、その上に束立てして大引を渡し、さらにその上に複数本の根太を一定間隔で載置し、この根太の上に床板を張り、床組が構成される。この床組に床暖房パネルを組込むには、上下方向は大引の上側と床板の下との中間であって、横方向は隣接する根太の間に、大引の間に横架させるか、隣接する根太の間に掛止具によって掛止させて配置する手法が採用される（例えば、実開昭５３−１３９１１０号公報参照）。
【０００３】
【発明が解決しようとした課題】
床暖房用パネルとしては、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に加熱流体用導通管の溝を刻設し、この溝に加熱流体用導通管を埋設して、その表面をアルミニウム箔などの表面材で被覆した構造のもが提案されている（例えば、実開平２−６７８０８号公報参照）。この様な構造の床暖房パネルを施工するには、まず施工現場で根太に実開昭５３−１３９１１０号公報に記載されているような掛止具を配置し、ついで床暖房用パネルを配置し、最後に掛止具と床暖房用パネルとの双方に跨がって金属薄板製の接着テープで接着するという３工程が必須であって、施工者側の観点からは、未だ工程が多いという欠点があった。
【０００４】
本発明者らは、かかる状況にあって、上記従来法における欠点を排除した床暖房パネルおよび暖房床を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明は、次のことを目的とする。
１．根太の間に配置される床暖房用パネルを提供する。
２．床暖房用パネルを施工する際に、少ない作業工程数で施工できる床暖房用パネルを提供する。
３．上記床暖房用パネルによって施工した暖房床を提供する。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設されてなる床暖房用パネルであって、基体の長さ方向に沿って双方の側面部に、掛止具が取付けられてなる床暖房用パネルにおいて、この掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする、床暖房用パネルを提供する。
また、複数本の根太の間に床暖房用パネルが掛止具を介して配置された暖房床において、床暖房用パネルは、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設され、基体にはその長さ方向に沿って双方の側面部に掛止具が取付けられてなり、前記掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする暖房床を提供する。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る床暖房用パネルは、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とする。基体を構成する材料樹脂は、発泡板状成形体とする際に独立気泡を形成するポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの硬質汎用樹脂が挙げられる。中でもポリスチレンは、発泡成形体が独立気泡であるので断熱性に優れ、加熱流体の熱を放散し難く、また、軽量であるにも拘らず剛性に優れているので、根太の間に配置しても湾曲し難く、特に好ましい。基体の厚さは、根太の高さに応じて３０〜５０mmの範囲で、発泡倍率は樹脂の種類と基体の厚さにもよるが、２〜９０倍の範囲で選ぶことができる。
【０００７】
基体は、床暖房用パネルとして根太（根太自体の幅は、約３５〜４５mm）の間に配置されるので、その幅は隣接する根太の間隔３０３mmまたは４５５mmよりも小さく、例えば、２５３mmまたは４０５mmとされる。また、床暖房用パネルは、基体を所望の長さごとに、長さ方向に対して直角の切れ目が設けられているのが好ましい。ここで切れ目とは、基体が長さ方向に対して直角に完全に切断されていることを意味し、切れ目を設ける一単位体の長さは、梱包、施工性などの観点から、７００mm、９１０mm（半間）、１３６５mm、１８２０mm（一間）など、１８２０mm（一間）以下の長さで選ばれる。
【０００８】
基体には、その一方の面に長さ方向に沿って、加熱流体用導通管の溝が複数本刻設されている。この溝は、加熱流体用導通管を埋設する機能を果たす。溝の開口部の幅は、加熱流体用導通管の外径（例えば８．５mm）と同じ寸法かまたはこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝の形状は、長さ方向に直角に切断した際の断面がＵ字状を形成するようにすると、導通管を埋設する際に都合がよい。
【０００９】
溝の深さは導通管の外径（例えば８．５mm）と同じとし、かつ、溝の底面までの寸法が基体の厚さの５割を越えないようにするのが好ましい。溝の深さが導通管の外径より大きいと、溝に導通管を埋設した際に導通管の上部に隙間ができ、加熱流体の熱を効果的に表面材に伝熱することができず、床暖房用パネルの伝熱効率が低下し、好ましくない。溝の底面が基体の厚さの５割を越えると、溝の底壁面が薄くなり過ぎ、基体の強度、基体の断熱性が低下することがあるので、好ましくない。
【００１０】
床暖房用パネルは、基体の一方の面に刻設された溝に加熱流体用導通管が埋設され、その上が表面材で被覆されてなる。加熱流体用導通管は、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などからなり、その直径は床暖房用パネルを設置する建造物の場所、パネル基体の厚さ、加熱流体の種類、温度などによって変るが、通常は、外径が８．５mm、内径が６mmの管が一般的である。表面材は、導通管に通される加熱流体の熱を床板に放熱する機能を果たす。床暖房パネルに通す熱媒体としては、温水、水蒸気、加熱オイルなどが挙げられる。
【００１１】
本発明に係る床暖房用パネルは、基体の長さ方向に沿った双方の側面部に、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が取付けられてなる。掛止具は、隣接する根太の間に床暖房用パネルを掛止すると共に、根太自体の幅および／または基体自体の幅によって、根太と基体との間の生ずることがある隙間を塞ぐ機能を果たす。すなわち、断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具の上面部は根太の上面に載置され、掛止具の下面部は基体の底壁面を支持し、根太の幅、基体との幅によって根太と基体との間の生ずることがある隙間を、掛止具の上面部と下面部とによって塞ぐことができる。
【００１２】
断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具は、金属製であってもよいし、剛性に優れた合成樹脂製であってもよい。掛止具の素材が合成樹脂の場合には、押出成形法で容易に製造することができる。掛止具は、基体の長さ方向に沿った双方の側面部に取付けられる。掛止具を基体の側面部に取付けるには、掛止具の上面部から垂下部が始まる折曲げ部を基体の側面部に接触させ、基体の表面部と掛止具の上面部との双方に跨がって金属薄板製の接着テープで接着すればよい。掛止具を取付ける場合には、基体の長さ方向に全体の長さに亘って取付けてもよいし、例えば掛止具一個の長さを２〜１００cmとし、５０センチメートル以内の間隔で複数個取付けてもよい。
【００１３】
掛止具はその構造を若干変更することにより、基体の側面への掛止具の取付けを一層確実にすることができる。変形の一例は、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が、上面部が床暖房用パネルに平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上上面部側に傾斜させて設けられてなり、垂下部に連接した下面部を設けるが、下面部が始まる折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされた構造とするものである。下面部の先端方向を上向きにさせることによって、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができる。これにより、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
【００１４】
変形の他の例は、垂下部が上面部からの垂直に設けられてなり、垂下部に連接して設けた下面部を、下面部が始まる折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされた構造とするものである。これにより、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができ、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
【００１５】
変形のさらに他の例は、上に例示した掛止具にさらに、長さ方向に直角に切断した断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が、垂下部の上面部が延在する位置から僅かに離れた下の位置に、上面部が延在する方向とは逆方向に突き出た差し込み部を設けた構造のものである。この差し込み部は、基体の長さ方向に沿った側面部に突き刺すことによって、基体への掛止具の取付を安定にすることができる。差し込み部の長さは、上面部の延在した長さと同等ないし若干短くしてもよい。
【００１６】
また、基体の側面部への掛止具の取付けを確実にするために、いずれの構造の掛止具を使用する場合にも、基体の表面部と掛止具の上面部との双方に跨がって接着テープで接着するのが好ましい。金属薄板製の接着テープの金属薄板の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔などが挙げられる。中でも製造の難易、コストなどの観点から、アルミニウム箔が特に好ましい。金属製薄板の厚さ、余り薄いと強度が十分でなく、厚すぎると製品のコストが高くなるので、１０〜５００μｍの範囲で選ぶのが好ましい。
【００１７】
本発明に係る床暖房用パネルは、以上説明した通りであり、根太を使用した床組、例えば、束立て法によった床組、ツーバイフォア床組法によった床組、梁床組法によった床組などに適用することができる。建造物が新築の場合のみでなく、改造の場合にも同様に適用することができる。
【００１８】
【実施例】
以下、本発明に係る床暖房用パネルを、図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【００１９】
図１は、本発明に係る床暖房用パネルの一例を根太の間に敷設した状態での縦断正面図であり、図２は、図１に示した掛止具の拡大断正面図であり、図３は、構造を変更した掛止具を取付けた床暖房用パネルの例の部分拡大縦断正面図であり、図４は、図２に示した床暖房用パネルの基体と掛止具との双方に跨がって接着テープを接着した状態での部分拡大縦断正面図である。
【００２０】
図において、１０は床暖房用パネル、１１は根太、１２、３２は基体、１２ａ、３２ａは基体の側面部、１３、３３は掛止具、１３ａは上面部、１３ｂ、１３ｄは折曲げ部、１３ｃ、３３ｃは垂下部、１３ｅ、３３ｅは下面部、３３ｆは差し込み部、１４、３４は溝、１５、３５は導通管、１６、４６は接着テープである。
【００２１】
図１において、床暖房用パネル１０は、基体１２の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝１４が刻設され、この溝１４に加熱流体用導通管１５が埋設されてなる。さらに、基体１２の長さ方向に沿った双方の側面部に掛止具１３が取付けられてなる。図１には、掛止具１３は長さ方向に直角に切断した断面が、Ｚ型（右側）および逆Ｚ型（左側）を呈する例を示した。
【００２２】
掛止具１３は、図２に逆Ｚ型のもので示したとおり、上面部１３ａが基体１２の表面に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部１３ｃが上面部１３ａからの垂直線に対して５°以上上面部側に傾斜して設けられてなり、垂下部１３ｃに連接した下面部１３ｅを設けるが、下面部１３ｅが始まる折曲げ部１３ｄを最下部に位置するようにし、この折曲げ部１３ｄから離れるに従い上側に延在するようにされた構造とする。この上側に延在する高さは、掛止具１３の大きさにもよるが、５ミリメート以内で選ぶのが好ましい。
【００２３】
図３は、基体３２に別の構造の掛止具３３を取付けた例を示す。掛止具３３は上面部３３ａは折曲げ部３３ｂで折曲げられて垂下部３３ｃが連接され、垂下部３３ｃは折曲げ部３３ｄで折曲げられて下面部３３ｅが連接されている。垂下部３３ｃの上面部３３ａが延在する位置から僅かに離れた下の位置に、上面部３３ａが延在する方向とは逆方向に突き出た差し込み部３３ｆが設けられている。差し込み部３３ｆは、基体の側面部３２ａに突き刺すことによって、基体への掛止具の取付を安定にすることができる。
【００２４】
図４には、図３に示したものに、基体の表面部と掛止具の上面部３３ａとの双方に跨がって接着テープ４６を接着した状態での部分拡大縦断正面図である。基体の表面部と掛止具の上面部３３ａとを、双方に跨がらせて接着テープで接着することによって、両者の取付が一層安定する。
【００２５】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した通りであり、次の様な極めて有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
１．本発明に係る床暖房用パネルは、基体の側面部にあらかじめ掛止具が取付けられているので部材数が少なく、施工現場までの輸送・保管などが便利である。
２．本発明に係る床暖房用パネルは、基体の側面部にあらかじめ掛止具が取付けられているので、施工現場で施工する際に、少ない工程数で施工でき、しかも未熟者でも容易に施工できる。
３．掛止具の垂下部を上面部からの垂直線に対して５°以上上面側に傾斜して設けておくと、根太自体の幅および／または基体自体の幅によって、根太と基体との間に生ずることがある隙間を塞ぐことができる。
４．掛止具の垂下部に連接した下面部を、折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにすると、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができ、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
５．本発明に係る暖房床は、部材数が少なく輸送・保管などが便利で、施工が簡単で、床板への熱伝導効果が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る床暖房用パネルの一例を根太の間に敷設した状態での縦断正面図である。
【図２】 図１に示した掛止具の拡大断正面図である。
【図３】 構造を変更した掛止具を取付けた床暖房用パネルの例の部分拡大縦断正面図である。
【図４】 図３に示した床暖房用パネルの基体と掛止具との双方に跨がって接着テープを接着した状態での部分拡大縦断正面図である。
【符号の説明】
１０：床暖房用パネル
１１：根太
１２、３２：基体
１２ａ、３２ａ：基体の側面部
１３、３３：掛止具
１３ａ：上面部
１３ｂ、１３ｄ：折曲げ部
１３ｃ、３３ｃ：垂下部
１３ｅ、３３ｅ：下面部
１４、３４：溝
１５、３５：導通管
１６、４６：接着テープ
３３ｆ：差し込み部
【発明の属する技術分野】
本発明は、床暖房用パネルに関する。さらに詳しくは、床暖房用パネルを実際に施工する際に、工程数が少なく施工が容易な、根太の間に配置される床暖房用パネルに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、寒冷期の住宅の居住性を向上させる目的で、住宅の床面から暖房する床暖房技術が提案され、実用化されている。例えば、束立て床組法によった床組に床暖房設備を組込む場合には、まず、地盤上に束石を据え、その上に束立てして大引を渡し、さらにその上に複数本の根太を一定間隔で載置し、この根太の上に床板を張り、床組が構成される。この床組に床暖房パネルを組込むには、上下方向は大引の上側と床板の下との中間であって、横方向は隣接する根太の間に、大引の間に横架させるか、隣接する根太の間に掛止具によって掛止させて配置する手法が採用される（例えば、実開昭５３−１３９１１０号公報参照）。
【０００３】
【発明が解決しようとした課題】
床暖房用パネルとしては、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に加熱流体用導通管の溝を刻設し、この溝に加熱流体用導通管を埋設して、その表面をアルミニウム箔などの表面材で被覆した構造のもが提案されている（例えば、実開平２−６７８０８号公報参照）。この様な構造の床暖房パネルを施工するには、まず施工現場で根太に実開昭５３−１３９１１０号公報に記載されているような掛止具を配置し、ついで床暖房用パネルを配置し、最後に掛止具と床暖房用パネルとの双方に跨がって金属薄板製の接着テープで接着するという３工程が必須であって、施工者側の観点からは、未だ工程が多いという欠点があった。
【０００４】
本発明者らは、かかる状況にあって、上記従来法における欠点を排除した床暖房パネルおよび暖房床を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明は、次のことを目的とする。
１．根太の間に配置される床暖房用パネルを提供する。
２．床暖房用パネルを施工する際に、少ない作業工程数で施工できる床暖房用パネルを提供する。
３．上記床暖房用パネルによって施工した暖房床を提供する。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設されてなる床暖房用パネルであって、基体の長さ方向に沿って双方の側面部に、掛止具が取付けられてなる床暖房用パネルにおいて、この掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする、床暖房用パネルを提供する。
また、複数本の根太の間に床暖房用パネルが掛止具を介して配置された暖房床において、床暖房用パネルは、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設され、基体にはその長さ方向に沿って双方の側面部に掛止具が取付けられてなり、前記掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする暖房床を提供する。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る床暖房用パネルは、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とする。基体を構成する材料樹脂は、発泡板状成形体とする際に独立気泡を形成するポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの硬質汎用樹脂が挙げられる。中でもポリスチレンは、発泡成形体が独立気泡であるので断熱性に優れ、加熱流体の熱を放散し難く、また、軽量であるにも拘らず剛性に優れているので、根太の間に配置しても湾曲し難く、特に好ましい。基体の厚さは、根太の高さに応じて３０〜５０mmの範囲で、発泡倍率は樹脂の種類と基体の厚さにもよるが、２〜９０倍の範囲で選ぶことができる。
【０００７】
基体は、床暖房用パネルとして根太（根太自体の幅は、約３５〜４５mm）の間に配置されるので、その幅は隣接する根太の間隔３０３mmまたは４５５mmよりも小さく、例えば、２５３mmまたは４０５mmとされる。また、床暖房用パネルは、基体を所望の長さごとに、長さ方向に対して直角の切れ目が設けられているのが好ましい。ここで切れ目とは、基体が長さ方向に対して直角に完全に切断されていることを意味し、切れ目を設ける一単位体の長さは、梱包、施工性などの観点から、７００mm、９１０mm（半間）、１３６５mm、１８２０mm（一間）など、１８２０mm（一間）以下の長さで選ばれる。
【０００８】
基体には、その一方の面に長さ方向に沿って、加熱流体用導通管の溝が複数本刻設されている。この溝は、加熱流体用導通管を埋設する機能を果たす。溝の開口部の幅は、加熱流体用導通管の外径（例えば８．５mm）と同じ寸法かまたはこれより僅かに大きくするのが好ましい。溝の形状は、長さ方向に直角に切断した際の断面がＵ字状を形成するようにすると、導通管を埋設する際に都合がよい。
【０００９】
溝の深さは導通管の外径（例えば８．５mm）と同じとし、かつ、溝の底面までの寸法が基体の厚さの５割を越えないようにするのが好ましい。溝の深さが導通管の外径より大きいと、溝に導通管を埋設した際に導通管の上部に隙間ができ、加熱流体の熱を効果的に表面材に伝熱することができず、床暖房用パネルの伝熱効率が低下し、好ましくない。溝の底面が基体の厚さの５割を越えると、溝の底壁面が薄くなり過ぎ、基体の強度、基体の断熱性が低下することがあるので、好ましくない。
【００１０】
床暖房用パネルは、基体の一方の面に刻設された溝に加熱流体用導通管が埋設され、その上が表面材で被覆されてなる。加熱流体用導通管は、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などからなり、その直径は床暖房用パネルを設置する建造物の場所、パネル基体の厚さ、加熱流体の種類、温度などによって変るが、通常は、外径が８．５mm、内径が６mmの管が一般的である。表面材は、導通管に通される加熱流体の熱を床板に放熱する機能を果たす。床暖房パネルに通す熱媒体としては、温水、水蒸気、加熱オイルなどが挙げられる。
【００１１】
本発明に係る床暖房用パネルは、基体の長さ方向に沿った双方の側面部に、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が取付けられてなる。掛止具は、隣接する根太の間に床暖房用パネルを掛止すると共に、根太自体の幅および／または基体自体の幅によって、根太と基体との間の生ずることがある隙間を塞ぐ機能を果たす。すなわち、断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具の上面部は根太の上面に載置され、掛止具の下面部は基体の底壁面を支持し、根太の幅、基体との幅によって根太と基体との間の生ずることがある隙間を、掛止具の上面部と下面部とによって塞ぐことができる。
【００１２】
断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具は、金属製であってもよいし、剛性に優れた合成樹脂製であってもよい。掛止具の素材が合成樹脂の場合には、押出成形法で容易に製造することができる。掛止具は、基体の長さ方向に沿った双方の側面部に取付けられる。掛止具を基体の側面部に取付けるには、掛止具の上面部から垂下部が始まる折曲げ部を基体の側面部に接触させ、基体の表面部と掛止具の上面部との双方に跨がって金属薄板製の接着テープで接着すればよい。掛止具を取付ける場合には、基体の長さ方向に全体の長さに亘って取付けてもよいし、例えば掛止具一個の長さを２〜１００cmとし、５０センチメートル以内の間隔で複数個取付けてもよい。
【００１３】
掛止具はその構造を若干変更することにより、基体の側面への掛止具の取付けを一層確実にすることができる。変形の一例は、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が、上面部が床暖房用パネルに平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上上面部側に傾斜させて設けられてなり、垂下部に連接した下面部を設けるが、下面部が始まる折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされた構造とするものである。下面部の先端方向を上向きにさせることによって、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができる。これにより、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
【００１４】
変形の他の例は、垂下部が上面部からの垂直に設けられてなり、垂下部に連接して設けた下面部を、下面部が始まる折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされた構造とするものである。これにより、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができ、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
【００１５】
変形のさらに他の例は、上に例示した掛止具にさらに、長さ方向に直角に切断した断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が、垂下部の上面部が延在する位置から僅かに離れた下の位置に、上面部が延在する方向とは逆方向に突き出た差し込み部を設けた構造のものである。この差し込み部は、基体の長さ方向に沿った側面部に突き刺すことによって、基体への掛止具の取付を安定にすることができる。差し込み部の長さは、上面部の延在した長さと同等ないし若干短くしてもよい。
【００１６】
また、基体の側面部への掛止具の取付けを確実にするために、いずれの構造の掛止具を使用する場合にも、基体の表面部と掛止具の上面部との双方に跨がって接着テープで接着するのが好ましい。金属薄板製の接着テープの金属薄板の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔などが挙げられる。中でも製造の難易、コストなどの観点から、アルミニウム箔が特に好ましい。金属製薄板の厚さ、余り薄いと強度が十分でなく、厚すぎると製品のコストが高くなるので、１０〜５００μｍの範囲で選ぶのが好ましい。
【００１７】
本発明に係る床暖房用パネルは、以上説明した通りであり、根太を使用した床組、例えば、束立て法によった床組、ツーバイフォア床組法によった床組、梁床組法によった床組などに適用することができる。建造物が新築の場合のみでなく、改造の場合にも同様に適用することができる。
【００１８】
【実施例】
以下、本発明に係る床暖房用パネルを、図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【００１９】
図１は、本発明に係る床暖房用パネルの一例を根太の間に敷設した状態での縦断正面図であり、図２は、図１に示した掛止具の拡大断正面図であり、図３は、構造を変更した掛止具を取付けた床暖房用パネルの例の部分拡大縦断正面図であり、図４は、図２に示した床暖房用パネルの基体と掛止具との双方に跨がって接着テープを接着した状態での部分拡大縦断正面図である。
【００２０】
図において、１０は床暖房用パネル、１１は根太、１２、３２は基体、１２ａ、３２ａは基体の側面部、１３、３３は掛止具、１３ａは上面部、１３ｂ、１３ｄは折曲げ部、１３ｃ、３３ｃは垂下部、１３ｅ、３３ｅは下面部、３３ｆは差し込み部、１４、３４は溝、１５、３５は導通管、１６、４６は接着テープである。
【００２１】
図１において、床暖房用パネル１０は、基体１２の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝１４が刻設され、この溝１４に加熱流体用導通管１５が埋設されてなる。さらに、基体１２の長さ方向に沿った双方の側面部に掛止具１３が取付けられてなる。図１には、掛止具１３は長さ方向に直角に切断した断面が、Ｚ型（右側）および逆Ｚ型（左側）を呈する例を示した。
【００２２】
掛止具１３は、図２に逆Ｚ型のもので示したとおり、上面部１３ａが基体１２の表面に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部１３ｃが上面部１３ａからの垂直線に対して５°以上上面部側に傾斜して設けられてなり、垂下部１３ｃに連接した下面部１３ｅを設けるが、下面部１３ｅが始まる折曲げ部１３ｄを最下部に位置するようにし、この折曲げ部１３ｄから離れるに従い上側に延在するようにされた構造とする。この上側に延在する高さは、掛止具１３の大きさにもよるが、５ミリメート以内で選ぶのが好ましい。
【００２３】
図３は、基体３２に別の構造の掛止具３３を取付けた例を示す。掛止具３３は上面部３３ａは折曲げ部３３ｂで折曲げられて垂下部３３ｃが連接され、垂下部３３ｃは折曲げ部３３ｄで折曲げられて下面部３３ｅが連接されている。垂下部３３ｃの上面部３３ａが延在する位置から僅かに離れた下の位置に、上面部３３ａが延在する方向とは逆方向に突き出た差し込み部３３ｆが設けられている。差し込み部３３ｆは、基体の側面部３２ａに突き刺すことによって、基体への掛止具の取付を安定にすることができる。
【００２４】
図４には、図３に示したものに、基体の表面部と掛止具の上面部３３ａとの双方に跨がって接着テープ４６を接着した状態での部分拡大縦断正面図である。基体の表面部と掛止具の上面部３３ａとを、双方に跨がらせて接着テープで接着することによって、両者の取付が一層安定する。
【００２５】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した通りであり、次の様な極めて有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
１．本発明に係る床暖房用パネルは、基体の側面部にあらかじめ掛止具が取付けられているので部材数が少なく、施工現場までの輸送・保管などが便利である。
２．本発明に係る床暖房用パネルは、基体の側面部にあらかじめ掛止具が取付けられているので、施工現場で施工する際に、少ない工程数で施工でき、しかも未熟者でも容易に施工できる。
３．掛止具の垂下部を上面部からの垂直線に対して５°以上上面側に傾斜して設けておくと、根太自体の幅および／または基体自体の幅によって、根太と基体との間に生ずることがある隙間を塞ぐことができる。
４．掛止具の垂下部に連接した下面部を、折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにすると、基体を上側に付勢させることができ、床板に密着させることができ、床暖房用パネルの熱伝導効果を一層向上させることができる。
５．本発明に係る暖房床は、部材数が少なく輸送・保管などが便利で、施工が簡単で、床板への熱伝導効果が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る床暖房用パネルの一例を根太の間に敷設した状態での縦断正面図である。
【図２】 図１に示した掛止具の拡大断正面図である。
【図３】 構造を変更した掛止具を取付けた床暖房用パネルの例の部分拡大縦断正面図である。
【図４】 図３に示した床暖房用パネルの基体と掛止具との双方に跨がって接着テープを接着した状態での部分拡大縦断正面図である。
【符号の説明】
１０：床暖房用パネル
１１：根太
１２、３２：基体
１２ａ、３２ａ：基体の側面部
１３、３３：掛止具
１３ａ：上面部
１３ｂ、１３ｄ：折曲げ部
１３ｃ、３３ｃ：垂下部
１３ｅ、３３ｅ：下面部
１４、３４：溝
１５、３５：導通管
１６、４６：接着テープ
３３ｆ：差し込み部
Claims (4)
- 発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設されてなる床暖房用パネルであって、基体の長さ方向に沿って双方の側面部に、掛止具が取付けられてなる床暖房用パネルにおいて、この掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする、床暖房用パネル。
- 長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈する掛止具が、垂下部の上面部が延在する位置から僅かに離れた下の位置に、上面部が延在する方向とは逆方向に延在した差し込み部が設けられてなる、請求項１に記載の床暖房用パネル。
- 複数本の根太の間に床暖房用パネルが掛止具を介して配置された暖房床において、床暖房用パネルは、発泡樹脂製の長尺板状成形体を基体とし、この基体の一方の面に長さ方向に沿って加熱流体用導通管の溝が刻設され、この溝に加熱流体用導管が埋設され、基体にはその長さ方向に沿って双方の側面部に掛止具が取付けられてなり、前記掛止具が、長さ方向に直角に切断した際の断面がＺ型および逆Ｚ型を呈し、Ｚ型および逆Ｚ型の上面部が、垂下部に連接した折曲げ部から基体に平行に外側に延在させて設けられ、垂下部が上面部からの垂直線に対して５°以上傾斜させて設けられてなり、かつ、Ｚ型および逆Ｚ型の下面部が、垂下部に連接した折曲げ部を最下部とし、この折曲げ部から離れるに従い上側に延在するようにされてなることを特徴とする暖房床。
- 基体の表面部と掛止具の上面部とが、双方に跨る金属薄板製の接着テープで接着されてなる、請求項３に記載の暖房床。
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