JP3655008B2 - ボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置 - Google Patents
ボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば汽力発電プラントにおいて、復水器からボイラへボイラ水を供給する給水管の内面に酸化鉄の腐食防止皮膜を形成するボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図3に示すように、ボイラ給水管51の腐食防止皮膜形成装置としては、ボイラ給水管51にバイパス管52が分岐連通されている。このバイパス管52の途中にはポンプ53が接続されている。また、同ポンプ53の下流側におけるバイパス管52の部位にはエジェクタ54が接続され、同エジェクタ54には酸素吸込管55を介して酸素製造装置56が接続されている。これらバイパス管52、ポンプ53、エジェクタ54、酸素吸込管55、酸素製造装置56等により腐食防止皮膜形成装置が構成されている。
【0003】
ボイラ給水管51を流動するボイラ水はポンプ53によりバイパス管52に吸い込まれる。その吸い込まれたボイラ水はポンプ53から吐出され、エジェクタ54に圧送される。このとき、エジェクタ54をボイラ水が勢いよく流動することにより、エジェクタ54内(実際にはエジェクタ54と酸素吸込管55との接続部位付近)に負圧が発生する。この負圧によりエジェクタ54内には酸素製造装置56から酸素吸込管55を介して酸素が吸い込まれ、同酸素はボイラ水に溶解される。酸素を溶存するボイラ水はバイパス管52からボイラ給水管51内に還元される。酸素を溶存するボイラ水がボイラ給水管51を流動することにより、ボイラ給水管51内に酸化鉄の腐食防止皮膜が形成される。
【0004】
前記酸素吸込管55の途中にはバルブ57が接続され、同バルブ57の開度量に対応してエジェクタ54内に吸い込まれる酸素量が変化する。前記バルブ57よりも上流側における酸素吸込管55の部位には流量計58が接続されている。前記バルブ57の開度は流量計58の検出値に基づいてコントローラ59により最適となるように制御される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記腐食防止皮膜形成装置においては、次のような問題があった。
【0006】
(1)エジェクタ54に何らかの原因で異常が発生し、エジェクタ54と酸素吸込管55との接続部位付近に正常に負圧が発生しない場合がある。この場合、正常に酸素が吸い込まれないことから、流量計58により測定される流量は所定量よりも少なくなる。そのため、コントローラ59はバルブ57の開度量を大としてエジェクタ54により吸い込まれる酸素量を増加させようとする。しかし、エジェクタ54に負圧が発生していない場合には、エジェクタ54を流動するボイラ水が酸素吸込管55側を逆流し、極度の逆流に対しては逆止弁の機能を損なわしめ、ひいては流量計58及び酸素濃度を検出するセンサ等が破損するおそれがあった。
【0007】
(2)エジェクタ54が正常であるにもかかわらず、バイパス管52において配管漏れ等が発生し、圧力が低下しても、コントローラ59はそのことを判別できない。そのため、バルブ57を通常通り開放し、運転を継続する。この場合、ボイラ給水管51には所定濃度の酸素を含有するボイラ水が正常に供給されない。この場合、正常にボイラ給水管51内には腐食防止皮膜が形成されない。
【0008】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであって、その目的は、エジェクタの負圧発生状態を確認可能なボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、ポンプによりボイラ水を加圧し、その加圧されたボイラ水をエジェクタへ圧送して同エジェクタ内に負圧を発生させ、その負圧により外部からエジェクタ内に酸素を吸い込んで、ボイラ水に酸素を溶解させた後、そのボイラ水をボイラ給水管に供給してボイラ給水管内面に酸化鉄の腐食防止皮膜を形成するボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置において、前記エジェクタを通過する前のボイラ水の圧力と、エジェクタを通過した後のボイラ水の圧力との圧力差を検出する差圧検出手段を備えたことをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明では、前記差圧検出手段により検出された圧力差が所定値未満の際に、前記エジェクタに接続されて吸い込まれる酸素の流量を調整する弁体を全閉にする弁体駆動手段を備えたことをその要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記ポンプは並列に複数配列されているとともに、それぞれ開閉弁を介してエジェクタの流入側に接続されていることをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項1に記載の発明においては、差圧検出手段により検出される圧力差に基づき、エジェクタ内に発生する負圧状態が確認される。
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明の作用に加え、差圧検出手段により検出された圧力差が所定値未満の場合には、弁体駆動手段により弁体は全閉される。これにより、弁体の上流側と下流側との間の連通が断たれる。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加え、装置の駆動時には一つのポンプのみを駆動するとともに、同ポンプに対応する側の開閉弁を開放する。また、他のポンプは停止させておくとともに、開閉弁は閉鎖させておく。
【0014】
この状態で、差圧検出手段により検出された差圧に基づき、エジェクタ内に発生する負圧が正常に発生していないと判定された際には、駆動するポンプを他のポンプに切り換えるとともに、開閉弁も駆動するポンプ に対応するもののみ開放する。これでエジェクタ内に正常に負圧が発生した場合には、先に駆動していたポンプ又は開閉弁に異常があったと判定される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ボイラ11には炭素鋼からなるボイラ給水管12が接続され、ボイラ11にはボイラ給水管12を介してポンプ13によりボイラ水が圧送される。前記ボイラ給水管12にはバイパス管14が接続され、同バイパス管14の途中には第1のバイパス管用ポンプ15a及び第2のバイパス管用ポンプ15bの2つのポンプ15a,15bが並列に接続されている。また、両バイパス管用ポンプ15a,15bの下流側には第1の開閉弁16a及び第2の開閉弁16bがそれぞれ接続されている。本実施の形態では、装置の駆動時には、いずれか一方のバイパス管用ポンプ15a,15bが駆動されるとともに、その駆動されたバイパス管用ポンプ15a,15bの開閉弁16a,16bのみが開放されるようになっている。
【0016】
前記バイパス管用ポンプ15a,15bの駆動に伴い、ボイラ給水管12からバイパス管14内にボイラ水が吸い込まれる。バイパス管用ポンプ15a,15bよりも下流側におけるバイパス管14の部位にはエジェクタ17が接続されている。このエジェクタ17には酸素吸込管18を介して酸素製造装置24が接続されている。バイパス管用ポンプ15a,15bの駆動に伴い、ボイラ水がエジェクタ17に勢いよく圧送され、同エジェクタ17内に負圧が発生し、酸素製造装置24からの酸素が酸素吸込管18を介してエジェクタ17内に吸い込まれるようになっている。
【0017】
前記酸素吸込管18の途中にはエジェクタ17に吸い込まれる酸素の流量を検出する流量センサ19及び同流量センサ19の下流側にエジェクタ17に吸い込まれる酸素の流量を調整するコントロールバルブ20が接続されている。また、前記エジェクタ17の流入側と吐出側との間は、エジェクタ用バイパス管21によりバイパスされている。同バイパス管21には差圧検出手段としての差圧センサ22が接続されている。同差圧センサ22はエジェクタ17を通過する前のボイラ水の圧力と、エジェクタ17を通過した後のボイラ水の圧力との圧力差を測定するものである。
【0018】
前記両バイパス管用ポンプ15a,15b、両開閉弁16a,16b、流量センサ19、コントロールバルブ20及び差圧センサ22は弁体駆動手段としてのコントローラ23に接続されている。コントローラ23は前記流量センサ19、差圧センサ22からの検出に基づき、バイパス管用ポンプ15a,15b、開閉弁16a,16b、コントロールバルブ20を駆動制御するようになっている。
【0019】
次に本実施形態におけるコントローラ23の制御内容を図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず、コントローラ23は装置が駆動されると、ステップ101において、いずれか一方の開閉弁16a,16b(例えば、第1の開閉弁16a)を開放する。本実施の形態では、最初に第1の開閉弁16a側のバイパス管が稼働するものとして説明する。このステップ101で第1の開閉弁16aを開閉し、ステップ102においてその開放した開閉弁16aと対応する第1のバイパス管用ポンプ15aを駆動する。次のステップ103においては、差圧センサ22からの検出信号を入力する。
【0020】
次のステップ104においては、前記ステップ103にて入力した差圧センサ22からの検出信号に基づき、エジェクタ17の入力側の圧力と、吐出側の圧力との圧力差が所定値(例えば、5kg/cm2)未満か否かを判別する。ここで、圧力差が所定値未満の場合にはステップ108に移行する。一方、圧力差が所定値未満でない場合には、ステップ105に移行する。ステップ105においては、流量センサ19により検出された検出信号を入力し、この検出信号に基づきステップ106にて実酸素流量(実際の酸素流量)と目標酸素流量(ボイラ水に対する最適な酸素の含有量とするための酸素流量)との流量差を算出する。次のステップ107においては、ステップ106にて算出した流量差に基づき、コントロールバルブ20の開度量を決定し、その開度量となるようにコントロールバルブ20を駆動制御する。その後、ステップ103に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0021】
一方、ステップ108においては、コントロールバルブ20を全閉して次のステップ109へ移行する。ステップ109においては、現在開放していない第2の開閉弁16bを開放するとともに、ステップ110において第2のバイパス管用ポンプ15bを駆動させる。そして、ステップ111にて再度差圧センサ22の検出信号を入力する。次のステップ112においては、前記ステップ111にて検出した信号に基づき、前記ステップ104と同様にエジェクタ17の入力側と吐出側との圧力差が所定値未満か否かを判別する。ここで、圧力差が所定値未満の場合には、コントローラ23はステップ113にて第1及び第2のバイパス管用ポンプ15a,15bを停止させ、ステップ114にて第1及び第2の開閉弁16a,16bを閉鎖する。さらに、コントローラ23はステップ115にて図示しない警報機を作動させてエジェクタ17に異常が発生したことを外部に報知する。
【0022】
一方、ステップ112において圧力差が所定値未満でなかった場合、コントローラ23はステップ116にて第1のバイパス管用ポンプ15aを停止させる。そして、ステップ117にて第1の開閉弁16aを閉鎖する。次のステップ118にて第1のバイパス管用ポンプ15aの異常を外部に報知する。その後、前記ステップ103に戻り、以降の処理を繰り返す。この場合、第1バイパス管路側と第2バイパス管路側とが入れ替わった状態にて処理が行われ、順次正常なバイパス管路側が稼働を継続するようになっている。
【0023】
次に本実施の形態における作用について説明する。
装置が駆動されると同時に第1の開閉弁16aが開放されるとともに、第1のバイパス管用ポンプ15aが駆動される。これにより、ボイラ給水管12を流動するボイラ水はバイパス管14から第1のバイパス管用ポンプ15aの経路を経てエジェクタ17側に圧送される。そして、コントロールバルブ20が所定量開度されることにより、エジェクタ17内に酸素製造装置24にて製造された酸素が吸い込まれる。エジェクタ17内ではボイラ水に酸素が溶解され、その溶解した酸素を含有するボイラ水は再度ボイラ給水管12に還元される。酸素を含有するボイラ水がボイラ給水管12に還元されることにより、ボイラ給水管12の内面に腐食防止皮膜が形成される。
【0024】
前記エジェクタ17に流入する前のボイラ水の圧力と、エジェクタ17から吐出されたボイラ水の圧力との圧力差が所定値未満の場合には、エジェクタ17内には正常に負圧が発生していないことから、コントロールバルブ20が全閉され、駆動している第1のバイパス管用ポンプ15aの駆動停止及び第1の開閉弁16aが閉鎖される。そして、駆動されるポンプが第2のバイパス管用ポンプ15bに切り替わるとともに、第2の開閉弁16bが開放される。従って、ボイラ水の流動する経路も第2のバイパス管用ポンプ15b側の経路に切り替わる。ここで、エジェクタ17に流動する前のボイラ水の圧力と、エジェクタ17から吐出されたボイラ水の圧力との圧力差が所定圧以上の場合には、エジェクタ17内には正常に負圧が発生していることになる。従って、この場合にはバイパス管用ポンプを切換駆動させたことで、エジェクタ17内に発生する負圧が正常に復帰したことから、第1のバイパス管用ポンプ15a又は第1のバイパス管用ポンプ15a側の経路に異常があると判定され、故障管路の修理を促すとともに、被膜形成処理を中断することなく継続稼働できる。
【0025】
また、バイパス管用ポンプ15a,15bを切換駆動させてみてもエジェクタ17の流入側と吐出側との圧力差が所定値以上とならない場合には、エジェクタ17に異常があると判定される。
【0026】
本実施の形態では、上記のように腐食防止皮膜装置を構成したことにより次のような効果を得ることができる。
(1)エジェクタ17の流入側と吐出側とをエジェクタ用バイパス管21により連結したりするとともに、同管21にエジェクタ17の流入側と吐出側との圧力差を測定する差圧センサ22を設けた。この差圧センサ22により検出される圧力差に基づき、エジェクタ17内に正常に負圧が発生しているか否かを確実に判別できる。
【0027】
(2)エジェクタ17内に正常に負圧が発生していない場合には酸素の流量を調整するコントロールバルブ20を全閉するようにした。これにより、エジェクタ17を流動するボイラ水がエジェクタ17から酸素吸込管18を逆流するのを防止でき、流量センサ19や酸素製造装置24の破損を防止することができる。
【0028】
(3)バイパス管14にボイラ水を吸い込むためのポンプ15a,15bを並列に2機設けた。そして、装置駆動時にはいずれか一方のポンプを駆動させ、エジェクタ17内に正常に負圧が発生しなかった場合には、他のポンプ15a,15bを駆動させることにより、エジェクタ17に負圧を正常に発生させることができる。また、両ポンプ15a,15bを駆動させてもエジェクタ17内に負圧が正常に発生しない場合には、エジェクタ17に異常があると判定できる。このように、本実施の形態では、エジェクタ17内に負圧が正常に発生しない場合には、ポンプ15a,15b側に異常があるのかエジェクタ17側に異常があるのかを判別することができる。
【0029】
なお、本発明は次のように実施してもよい。
(1)上記実施の形態では、コントローラ23によりコントロールバルブ20の開閉を行うようにしたが、コントローラ23の指示にて作業者が開閉弁を手動で開閉動作させる方式としてもよい。
【0030】
(2)上記実施形態における各バイパス管路の開閉弁16a,16bを逆止弁にて実施してもよい。
(3)上記実施形態では、バイパス管14にバイパス管用ポンプ15a,15bを2機設けたが、3機以上設けて具体化したり、1機だけ設けて具体化してもよい。
【0031】
(4)上記実施形態では、エジェクタ17の流入側と吐出側とをエジェクタ用バイパス管21により連通し、同バイパス管21に両側の圧力差を検出する差圧センサ22を設けて具体化した。これに対し、エジェクタ17の流入側及び吐出側に圧力センサをそれぞれ設け、両圧力センサにより検出される2つの圧力に基づき、圧力差を検出する構成としてもよい。
【0032】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、エジェクタ内に発生する負圧状態を確認できることから、エジェクタに負圧が正常に発生していない状態で装置が駆動されるのを防止できる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、エジェクタの流入側と吐出側との圧力差が所定値未満の場合、すなわち、エジェクタ内に負圧が正常に発生していない場合には弁体が全閉され、エジェクタと弁体の上流側との間の連通が断たれるので、エジェクタから弁体側にボイラ水が逆流するのを防止することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、ポンプの異常が原因でエジェクタ内に正常に負圧が発生しない場合でも、他の正常なポンプを駆動させることにより、エジェクタには正常の負圧を発生させることができる。また、全ポンプを駆動させてエジェクタ内に正常の負圧が発生しない場合には、エジェクタに異常があると判定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における腐食防止皮膜形成装置の概略的な回路図。
【図2】コントローラの処理内容を説明するフローチャート。
【図3】従来技術における腐食防止皮膜形成装置の概略的な回路図。
【符号の説明】
12…ボイラ給水管、15a…ポンプとしての第1のバイパス管用ポンプ、15b…ポンプとしての第2のバイパス管用ポンプ、17…エジェクタ、20…弁体としてのコントロールバルブ、22…差圧検出手段としての差圧センサ、23…弁体駆動手段としてのコントローラ。
Claims (3)
- ポンプによりボイラ水を加圧し、その加圧されたボイラ水をエジェクタへ圧送して同エジェクタ内に負圧を発生させ、その負圧により外部からエジェクタ内に酸素を吸い込んで、ボイラ水に酸素を溶解させた後、そのボイラ水をボイラ給水管に供給してボイラ給水管内面に酸化鉄の腐食防止皮膜を形成するボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置において、
前記エジェクタを通過する前のボイラ水の圧力と、エジェクタを通過した後のボイラ水の圧力との圧力差を検出する差圧検出手段を備えたことを特徴とするボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置。 - 前記差圧検出手段により検出された圧力差が所定値未満の際に、前記エジェクタに接続されて吸い込まれる酸素の流量を調整する弁体を全閉にする弁体駆動手段を備えた請求項1に記載のボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置。
- 前記ポンプは並列に複数配列されているとともに、それぞれ開閉弁を介してエジェクタの流入側に接続されている請求項1又は請求項2に記載のボイラ給水管の腐食防止皮膜形成装置。
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