JP3654694B2 - 残留塩素測定方法および残留塩素計 - Google Patents

残留塩素測定方法および残留塩素計 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無試薬で遊離残留塩素濃度を測定する残留塩素測定方法および残留塩素計に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の残留塩素計として、例えば図3に示したようなポーラログラフ法を採用したものがある。
【0003】
残留塩素計1は、下部に被検査液Sの導入口2を形成し上部に排出口3を形成した密閉容器4の底部に検出電極(金電極)5を配設し、検出電極5に対向する密閉容器4内の上部に対極(銀/塩化銀電極)6を側面より嵌挿した状態で配設しており、密閉容器4の外部に、検出電極5と対極6との間に一定電圧を印加する電源7、および一定電圧印加時に流れる電流の大きさを計測する電流計8を設けている。そして、電流計8に接続して、電流計8により計測された電流値を残留塩素濃度として認識し、表示する表示装置9を設けている。
【0004】
密閉容器4の内部には、外部の駆動装置10より垂設した駆動軸11の下端部に固着して攪拌翼12を設け、検出電極5の表面の研磨を行って感度低下を防ぐセラミックビーズなどのビーズ状研磨材13を充填するとともに、被検査液Sの温度を測定して温度補償を施すサーミスタ14を設けている。
【0005】
この構成において、導入口2から排出口3に向けて被検査液Sを流通させ、密閉容器4内の被検査液Sを攪拌翼11により攪拌しつつ、検出電極5と対極6との間に電源7により一定電圧Vaを印加して、流れる電流の大きさiaを電流計8により計測し、計測した電流値を表示装置9において残留塩素濃度として認識し、表示するようにしている。
【0006】
残留塩素濃度の測定原理は、次のようなものである。
残留塩素を含んだ被検査液S中で検出電極5と対極6との間に外部から電圧を印加すると、検出電極5上で
Cl2 +2e- → 2Cl-
なる還元反応が起こり、図4に示したような、残留塩素濃度に応じた電流−電圧曲線(ポーラログラム)が得られる。図4から明らかなように、電流−電圧曲線では、印加電圧を変化させて対極に対する検出電極の電位を下げていくと、反応速度が増して電流が大きくなっていき(領域(1))、さらに電位を下げていくと、電流値が全く変化しなくなる(領域(2))。
【0007】
これは、反応速度が十分速くなると(無限大になると)、残留塩素が還元消費される検出電極5に向けての残留塩素の拡散が反応に追いつけなくなって、拡散速度が反応を支配するようになり、拡散速度は、被検査液Sの攪拌速度を一定にしておけば、被検査液S中の残留塩素濃度に比例するため、残留塩素濃度に比例した大きさの電流が流れるからである。
【0008】
このため、残留塩素濃度を測定する際には、拡散速度が安定するように被検査液Sを一定速度で攪拌するとともに、反応速度が十分速くなる(無限大になる)適当な大きさの電圧であって、残留塩素濃度に応じた大きさの電流が流れるプラトー領域(領域(2))内の一定電圧(たとえば点線で示した電圧)を印加して、電流の大きさを計測するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来の残留塩素測定方法では、結合型有効塩素(結合型残留塩素)の影響を受けるため、安定した測定結果を得ることができない。図5に示したような電流−電圧曲線が得られる条件下であれば、プラトー領域内の一定電圧(たとえば点線で示した電圧)を印加することによって、結合型有効塩素(結合型残留塩素)の影響を受けることなく遊離有効塩素(遊離残留塩素)濃度を測定できる。しかしながら、被検査液中の結合型有効塩素(結合型残留塩素)の割合が大きくなる冬季等には、図6に示したように電流−電圧曲線が右上がりとなって、プラトー領域が存在しなくなるため、遊離有効塩素(遊離残留塩素)の測定誤差が大きくなるという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題を解決するもので、結合型残留塩素の影響度合いを知り、影響度合いに応じ補正して、遊離残留塩素濃度をより正確に測定できるようにすることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明の残留塩素測定方法は、内部に2個の検出電極と各検出電極に対向する少なくとも1個の対極とを配設した密閉容器に一定方向に被検査液を流通させ、密閉容器内の被検査液を攪拌しつつ、各検出電極と対極との間にそれぞれ、塩素含有溶液の電流−電圧曲線において電圧の大きさにかかわらず電流の大きさがほぼ一定となる領域内の電圧であって互いに大きさの異なる一定電圧Va ,Vb を印加して、流れる電流の大きさをそれぞれ計測し、計測した電流値ia とib との差Δiを算出するとともに、一方の電流値ia に対応する残留塩素濃度fc1を求め、前記Δiとfc1とを以下の式
遊離残留塩素濃度fc=(A/Δi)・fc1
(ここで、Aは結合型有効塩素の影響を排除する補正係数である)
に代入することにより遊離残留塩素濃度fcを算出するようにしたものである。
【0012】
また本発明の残留塩素計は、被検査液が導入口から排出口に向けて流通する密閉容器と、密閉容器の内部に配設された2個の検出電極および各検出電極に対向する少なくとも1個の対極と、密閉容器内の被検査液を攪拌する攪拌手段と、各検出電極と対極との間にそれぞれ、塩素含有溶液の電流−電圧曲線において電圧の大きさにかかわらず電流の大きさがほぼ一定となる領域内の電圧であって互いに大きさの異なる一定電圧を印加する電源と、前記一定電圧が印加された時に流れる電流の大きさをそれぞれ計測する電流計と、各電流計に接続する制御装置とを有し、前記制御装置は、予め決定された結合型有効塩素の影響を排除する補正係数を記憶し、前記各電流計により計測された電流値間の差を算出し、前記一方の電流計により計測された電流値に対応する残留塩素濃度を求め、前記補正係数と電流値間の差と残留塩素濃度とに基づいて遊離残留塩素濃度を算出し、算出した遊離残留塩素濃度を表示するように構成したものである。
【0013】
上記した補正係数Aは、たとえば以下のようにして予め決定される。
遊離有効塩素および結合型有効塩素を適当濃度にて含んだ複数の塩素含有溶液について、上記と同様にして、一定電圧Va ,Vb を印加した時の電流値ian,ibn、電流値ianとibnとの差Δin 、および電流値ianに対応する有効塩素濃度fc1n を求めるとともに、吸光光度法や電流滴定法などの高精度の塩素濃度測定法により遊離有効塩素濃度fc2n を求め、前記Δin とfc1n とfc2n とを以下の式
fc2n =(an /Δin )・fc1n
に代入することにより補正係数an を算出し、算出した補正係数an の平均値を求めて補正係数Aとする。
【0014】
上述した残留塩素測定方法によれば、2種類の電圧Va ,Vb を印加した時に流れる電流値ia ,ib を求め、電流値ia に対応する有効塩素濃度fc1を求め、求めた有効塩素濃度fc1に(予め決定した補正係数A/電流値ia ,ib間の差Δi)を掛けるようにしたことにより、結合型有効塩素の影響度合いに応じた補正を行って、真の遊離残留塩素濃度に近い測定値を導き出すことができる。
【0015】
上述した残留塩素計によれば、上記した真の遊離残留塩素濃度に近い測定値を自動的に演算して得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示した残留塩素計は図3を用いて説明した従来のものと同様の構成を有しているので、従来のものと同様の作用を有する部材に同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0017】
残留塩素計15は、下部に被検査液Sの導入口2を形成し上部に排出口3を形成した密閉容器4の底部に2個の検出電極(金電極)16,17を配設し、検出電極16,17に対向する密閉容器4内の上部に1個の対極(銀/塩化銀電極)6を側面より嵌挿した状態で配設している。
【0018】
密閉容器4の外部には、検出電極16,17と対極6との間にそれぞれ一定電圧Va,Vbを印加する電源18,19、および一定電圧Va,Vbが印加された時に流れる電流の大きさia,ibを計測する電流計20,21を設け、電流計20,21に接続して、メモリ機能および演算機能および表示機能を備えた制御装置22を設けている。ここで、一定電圧Va,Vbは、残留塩素含有溶液の電流−電圧曲線において電圧の大きさにかかわらず電流の大きさがほぼ一定となる領域内の電圧であって、互いに大きさの異なる電圧である。
【0019】
密閉容器4の内部には、外部の駆動装置10より垂設した駆動軸11の下端部に固着して攪拌翼12を設け、検出電極5の表面の研磨を行って感度低下を防ぐセラミックビーズなどのビーズ状研磨材13を充填するとともに、被検査液Sの温度を測定して温度補償を施すサーミスタ14を設けている。
【0020】
上記した構成の残留塩素計15による残留塩素測定方法を説明する。
導入口2より密閉容器4の内部に被検査液Sを導入して排出口3に向けて流通させ、密閉容器4内の被検査液Sを攪拌翼11により攪拌しつつ、電源18,19によって検出電極16,17と対極6との間に同時に上記した一定電圧Va,Vbを印加する。
【0021】
これにより、印加時の電流の大きさがそれぞれ電流計20,21により計測され、制御装置22において、計測された電流値ia とib との差Δiが求められるとともに、一方の電流値ia に対応する残留塩素濃度fc1が求められ、これらのΔi,fc1と予め記憶された補正係数Aとが以下の式
遊離残留塩素濃度fc=(A/Δi)・fc1
に代入されて遊離残留塩素濃度fcが算出され、算出された遊離残留塩素濃度が表示される。
【0022】
補正係数Aは、たとえば以下のようにして実験的に決定する。
1)0〜2mg/lの範囲内の適当濃度の遊離有効塩素と適当濃度の結合型有効塩素とを含んだ複数の塩素含有水溶液を調製する。たとえば、遊離有効塩素濃度0.5,1.0,1.5,2.0mg/lと、結合型有効塩素濃度0,0.1,0.3,0.6,1.0mg/lとの組み合わせにより、20種類の塩素含有水溶液を調製する。
【0023】
2)調製した各塩素含有水溶液を被検査液Sとして、上記と同様にして、一定電圧Va ,Vb を印加した時の電流値ian,ibn、電流値ianとibnとの差Δin 、および電流値ianに対応する有効塩素濃度fc1n を求める。
【0024】
3)調製した各塩素含有水溶液について、DPDによる吸光光度法や電流滴定法などの高精度の塩素濃度測定法により遊離有効塩素濃度fc2n を求める。
4)上記2)および3)においてそれぞれ求めたΔin とfc1n とfc2nとを以下の式
fc2n =(an /Δin )・fc1n
に代入することによりan を算出する。
【0025】
5)4)におけるan は通常ばらつきをもって求められるので、各an の平均を求め、求めた平均値を補正係数Aとする。
上述した残留塩素測定方法によれば、2種類の電圧Va ,Vb で計測した電流値ia,ibの大きさと差とにより結合型有効塩素の影響度合いを知り、結合型有効塩素の影響度合いに応じた補正を行って、真の遊離残留塩素濃度に近い測定値を導き出すことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、2種類の電圧Va ,Vb を印加した時に流れる電流値ia,ibを求め、一方の電流値ia に対応する有効塩素濃度fc1を求め、求めた有効塩素濃度fc1に、(予め実験的に決定した補正係数A/電流値ia ,ib 間の差Δi)を掛けることにより、結合型有効塩素の影響度合いに応じて、その影響を常に軽減する方向に補正を行うことができ、測定精度並びに安定性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の残留塩素測定方法が行われる一実施形態の残留塩素計の全体構成を示した説明図である。
【図2】本発明の残留塩素測定方法および残留塩素計における測定原理を説明する被検査液の電流−電圧曲線である。
【図3】従来の残留塩素計の全体構成を示した説明図である。
【図4】従来および本発明の残留塩素測定方法における基本的な測定原理を説明する被検査液の電流−電圧曲線である。
【図5】従来および本発明の残留塩素測定方法において遊離有効塩素に対する結合型有効塩素の影響を説明する被検査液の電流−電圧曲線である。
【図6】従来および本発明の残留塩素測定方法において遊離有効塩素に対する結合型有効塩素の影響を説明する他の被検査液の電流−電圧曲線である。
【符号の説明】
S 被検査液
2 導入口
3 排出口
4 密閉容器
6 対極
12 攪拌翼
15 残留塩素計
16,17 検出電極
18,19 電源
20,21 電流計
22 制御装置

Claims (2)

  1. 内部に2個の検出電極と各検出電極に対向する少なくとも1個の対極とを配設した密閉容器に一定方向に被検査液を流通させ、密閉容器内の被検査液を攪拌しつつ、各検出電極と対極との間にそれぞれ、塩素含有溶液の電流−電圧曲線において電圧の大きさにかかわらず電流の大きさがほぼ一定となる領域内の電圧であって互いに大きさの異なる一定電圧Va ,Vb を印加して、流れる電流の大きさをそれぞれ計測し、計測した電流値ia とib との差Δiを算出するとともに、一方の電流値ia に対応する残留塩素濃度fc1を求め、前記Δiとfc1とを以下の式
    遊離残留塩素濃度fc=(A/Δi)・fc1
    (ここで、Aは結合型有効塩素の影響を排除する補正係数である)
    に代入することにより遊離残留塩素濃度fcを算出することを特徴とする残留塩素測定方法。
  2. 被検査液が導入口から排出口に向けて流通する密閉容器と、密閉容器の内部に配設された2個の検出電極および各検出電極に対向する少なくとも1個の対極と、密閉容器内の被検査液を攪拌する攪拌手段と、各検出電極と対極との間にそれぞれ、塩素含有溶液の電流−電圧曲線において電圧の大きさにかかわらず電流の大きさがほぼ一定となる領域内の電圧であって互いに大きさの異なる一定電圧を印加する電源と、前記一定電圧が印加された時に流れる電流の大きさをそれぞれ計測する電流計と、各電流計に接続する制御装置とを有し、前記制御装置は、予め決定された結合型有効塩素の影響を排除する補正係数を記憶し、前記各電流計により計測された電流値間の差を算出し、前記一方の電流計により計測された電流値に対応する残留塩素濃度を求め、前記補正係数と電流値間の差と残留塩素濃度とに基づいて遊離残留塩素濃度を算出し、算出した遊離残留塩素濃度を表示するように構成したことを特徴とする残留塩素計。
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