JP3654681B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具に関し、更に詳しくは、シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、筆記具本体とキャップとのシールは、キャップの一部分を、例えば、凸部として筆記具本体の軸筒の一部となる先軸に設けた凹部に嵌入等することによって行われるか、または、シール部材をキャップとは異なるゴム等で構成するのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、キャップの一部分を、例えば、凸部として筆記具本体の軸筒の一部となる先軸に設けた凹部に嵌入等によりシールする場合には、キャップの材質にポリプロピレン等の合成樹脂材料を使うことが多く、これらの樹脂材料の場合は、硬い材料のためにそのシール部の着脱が重くなることが多く、また、ゴム等で構成した場合はキャップからのゴムの脱落やキャップとゴムの間のシールを保証しなければならないなどの課題を抱えていた。
【0004】
一方、内部に筆記具本体と凹凸嵌合する嵌合部と筆記具本体の有するペン先部を気密に保持するエアタイト部を一体または別部材にて設け、外部にクリップ部を一体に設けたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂により形成した筆記具のキャップが知られている(特公平6−33022号公報)。
しかしながら、このPET樹脂からなる筆記具のキャップでも、硬い材料のためにシール部の着脱が重くなることが多く、使用性に不便を生じるという課題がある。
【0005】
また、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具は、数多く案出されている。このような筆記具において、筆記具本体とキャップとのシールは、外気とのシールを目的として行われ、その機能はペン芯からのインキの揮発を抑えるものであった。
しかしながら、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具にあっては、空気孔開口部はシールされていないため、ペン芯からインキ垂れ等が生じるという課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記夫々の従来の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具を提供することを目的とする。
【0007】
【問題を解決するための手段】
本発明者は、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具について鋭意検討した結果、シール部の材質、構造等を特定することにより目的の筆記具が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の筆記具は、次のとおりである。
(1) 筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、前記筆記具本体は先端に筒状体の先軸を有し、該先軸内にはペン芯を保持する筒状のペン芯保持部が設けられると共に、上記先軸とペン芯保持部との間に上記空気置換用の空気孔が設けられ、前記キャップ内には、ペン芯を包囲する包囲部と、該包囲部の開口部に設けられ、上記ペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断する第1シール部と、キャップ内周面に空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断する第2シール部とを備え、かつ、上記第1シール部は熱可塑性エラストマーで構成されると共に、上記第2シール部を含むキャップは熱可塑性樹脂で構成されたことを特徴とする筆記具。
【0008】
(2) 前記キャップは、異材質射出成形により一体成形してなる上記(1)記載の筆記具。
【0009】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、キャップに備わる熱可塑性エラストマーからなる第1シール部はペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断し、熱可塑性樹脂からなる第2シール部は空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断するので、キャップ内では気体の循環が起きないこととなるため、ペン芯を下向きに等に保管してもペン芯からのインキ垂れ等が生じないこととなり、また、上記第1シール部と第2シール部との二重シール構造によりキャップのシール性は大幅に向上し、ペン芯の乾燥をより防止することができ、しかも、上記第1シール部は熱可塑性エラストマーで構成したので、当接でシールが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1のキャップを異材質射出成形により一体成形すれば、すなわち、第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂とで異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、更に低コストで製造することができることとなる。
なお、本発明で規定する「異材質射出成形」とは、異材質からなる製品を一体成形するために、二組の射出機構を備えた射出成形機を用いて一体成形することをいう。
【0011】
以下、本発明の内容を詳しく説明する。
第1シール部に用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系、ウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、塩ビ系、フッ素系等が挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、従来のゴムのような加硫による成形加工でなく、熱可塑性樹脂と同じ加工法で成形できるものであり、一般のゴム製品と同程度のゴム弾性を有し、熱可塑性樹脂との相性がよく、ゴム的性質から半ゴム的性質を有し、優れた耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性を有する。
また、これらの熱可塑性エラストマーは、JIS A硬度(Hs)で100度以下、好ましくは、60度以下のものが望ましい。硬度が100度を越えると、シール部の着脱が重くなり、シール部の着脱の容易化が達成できず、好ましくない。
【0012】
第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂で構成されるものであり、該熱可塑性樹脂としては、従来から筆記具のキャップに汎用されている樹脂が使用でき、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、筆記具本体に用いる樹脂としては、従来から筆記具本体に汎用されている樹脂、例えば、上記の熱可塑性樹脂等が使用できる。
【0013】
第1シール部と、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップに用いる樹脂は、製造面、及び境界面における物性の面等から同系統の熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の使用が好ましく、例えば、第1シール部がポリアミド系熱可塑性エラストマーであれば、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップもポリアミド系熱可塑樹脂で構成することができる。
また、好ましい熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂としては、一般的に使われている筆記具の主溶剤が水、アルコール、又はグリコール系であるため、これらの溶剤に対して高い耐溶剤性とガスバリアー性を有し、しかも、コスト面から勘案するとオレフィン系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂の使用が望ましい。
【0014】
本発明の筆記具において、筆記具本体の軸筒等にシールするキャップシール部の構造は、筆記具本体の軸筒等に着脱自在にシールできる構造であれば、特に限定されるものではなく、例えば、凹部又は凸部からなる少なくとも一つの嵌合部、並びに、後述する実施例の筆記具等が挙げられる。なお、筆記具本体の軸筒には、上記嵌合部に対応するように凸部又は凹部からなる嵌合部、並びにストレート面を備えている。
【0015】
本発明の筆記具は、上記種々の構造となる第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂で、例えば、異材質射出成形により一体成形することにより製造される。
従来においてキャップの一部分を、例えば、凸部からなる嵌合部をゴム等で構成した場合は、キャップにゴム製の嵌合部を接着などにより固着したものであるので、キャップからのゴムの脱落やキャップとゴムの間のシールを保証しなければならないなどの課題を抱えていたが、異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、しかも、製造が容易となると共に、製造コストも低減できることとなる。
【0016】
本発明が適用される筆記具は、特に限定されるものではなく、例えば、中綿式のサインペン、マーキングペン、若しくはインキを貯溜するタンクを有し、中綿を使用しないで直接タンク内にインキを貯溜するインキ直接貯溜方式のサインペン、マーキングペン等を挙げることができる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の実施例を更に図面を参照して更に詳しく説明する。
【0018】
本第1実施例の筆記具Aは、図1及び図2に示すように、筆記具本体10と、キャップ20とを備えている。
筆記具本体10は、軸筒の一部となる大径部11と小径部12とからなる筒状体の先軸13を有し、該先軸13内にはペン芯14を保持する筒状のペン芯保持部15が設けられると共に、先軸13とペン芯保持部15間、すなわち、ペン芯14の周囲以外となる先軸13の周囲に環状の空気置換用の空気孔16が設けられている。
【0019】
筆記具本体10内部には、図示しないインキを貯溜するインキタンクを有し、該インキタンク内のインキを図示しない吸液性の繊維部材等からなる中継部材を介してペン芯14に供給する構造になっている。また、上記空気孔16は、インキタンク内に連通し、インキタンク内と大気圧とを同圧にして、温度変化、圧力変化による筆記時のインキのボタ落ちや洩出を防止している。
【0020】
キャップ20は、先軸13と同様の径違いの閉塞部を有する筒状体であって、先軸13の大径部11に着脱自在に外嵌される大径の胴部21と、該胴部21が肩部22を介して一体に設けられた首部23とを有している。
該首部23内には、ペン芯14を包囲する包囲部24と、該包囲部24の開口部に設けられ、上記ペン芯14の周囲と空気孔開口部16aを遮断する環状のシール突起25aを有する第1シール部25が設けられると共に、首部23内周面には空気孔開口部16aと外気とを遮断するシール突起26aを有する第2シール部26と、先軸13の小径部12に設けた嵌合用凸部12aと嵌合する嵌合用凸部27とを有している。
【0021】
前記先軸13を有する筆記具本体10はポリプロピレン(PP)樹脂で成形されたものであり、第2シール部26もポリプロピレン(PP)樹脂で一体成形されたものである。
また、上述ように構成されるキャップ20は、第1シール部25は、オレフィン系熱可塑性エラストマー〔商品名「住友TPE3570」、JIS A硬度47(住友化学工業社製)〕で、シール部25以外のキャップ20がポリプロピレン(PP)樹脂で異材質射出形により一体成形したものである。
【0022】
先軸13の小径部12先端部はストレート面12bとなっており、小径部12の外周面も環状の周面となっている。
なお、先軸13の小径部12先端部にシール突起を設け、シール部25の先端部をストレート面としてもよく、また、小径部12の外周面にシール突起を設け、シール部26の先端部をストレート面としてもよい。
【0023】
本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20の胴部21を筆記具本体10の大径部11に嵌合、すなわち、嵌合用凸部12aと27とにより嵌合させることによりキャップ20を筆記具本体10に被着することができる。これにより、先軸13の小径部12先端部に第1シール部25のシール突起25aが当接されてペン芯14の周囲と空気孔開口部16aとを遮断(シール)すると共に、小径部12の外周面に第2シール部26のシール突起26aが嵌入されて空気孔開口部16aと外気とを遮断(シール)することとなる。
従って、本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20を筆記具本体10に被着すると、第1シール部25及び第2シール部26により、ペン芯14の周囲と、空気孔開口部16aと、外気とをそれぞれ遮断することとなるので、キャップ20内では気体の循環が起きないため、ペン芯14を下向き等に保管してもペン芯14からのインキ垂れ等が生じないこととなり、また、該二重シール構造によりキャップ20のシール性は大幅に向上し、ペン芯14の乾燥をより防止することができることとなる。
【0024】
また、本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20の第1シール部25はキャップより柔らかい熱可塑性エラストマーで構成されているので、当接でシールが可能となり、しかも、第1シール部と第2シール部26を含むキャップ本体とは異材質射出成形により一体成形されているので、組み立てが不要で脱落することがなく、低コストで製造できるものとなる。
【0025】
本発明の筆記具は、上述のように構成され、使用されるものであるが、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の態様に設計変更等できるものである。
例えば、上記実施例では、第1シール部と第1シール部以外の第2シール部を含むキャップをオレフィン系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂で構成したが、これ以外の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂であってもよい。また、ペン芯14を筆ペンタイプとしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、キャップに備わる熱可塑性エラストマーからなる第1シール部はペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断すると共に、熱可塑性樹脂からなる第2シール部は空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断するので、キャップ内では気体の循環が起きないため、ペン芯を下向き等に保管してもペン芯からのインキ垂れ等が生じることがなく、また、上記第1シール部と第2シール部との二重シール構造によりキャップのシール性は大幅に向上し、ペン芯の乾燥をより防止することができ、しかも、上記第1シール部はキャップより柔らかい熱可塑性エラストマーで構成されているので、当接でシールが可能となり、第1シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具が提供される。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、キャップを異材質射出成形により一体成形、すなわち、第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂とで異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、更に低コストで製造することができる筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の第1実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
A 筆記具
10 筆記具本体
13 先軸
14 ペン芯
16 空気置換用の空気孔
20 キャップ
25 第1シール部
26 第2シール部
【産業上の利用分野】
本発明は、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具に関し、更に詳しくは、シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、筆記具本体とキャップとのシールは、キャップの一部分を、例えば、凸部として筆記具本体の軸筒の一部となる先軸に設けた凹部に嵌入等することによって行われるか、または、シール部材をキャップとは異なるゴム等で構成するのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、キャップの一部分を、例えば、凸部として筆記具本体の軸筒の一部となる先軸に設けた凹部に嵌入等によりシールする場合には、キャップの材質にポリプロピレン等の合成樹脂材料を使うことが多く、これらの樹脂材料の場合は、硬い材料のためにそのシール部の着脱が重くなることが多く、また、ゴム等で構成した場合はキャップからのゴムの脱落やキャップとゴムの間のシールを保証しなければならないなどの課題を抱えていた。
【0004】
一方、内部に筆記具本体と凹凸嵌合する嵌合部と筆記具本体の有するペン先部を気密に保持するエアタイト部を一体または別部材にて設け、外部にクリップ部を一体に設けたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂により形成した筆記具のキャップが知られている(特公平6−33022号公報)。
しかしながら、このPET樹脂からなる筆記具のキャップでも、硬い材料のためにシール部の着脱が重くなることが多く、使用性に不便を生じるという課題がある。
【0005】
また、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具は、数多く案出されている。このような筆記具において、筆記具本体とキャップとのシールは、外気とのシールを目的として行われ、その機能はペン芯からのインキの揮発を抑えるものであった。
しかしながら、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具にあっては、空気孔開口部はシールされていないため、ペン芯からインキ垂れ等が生じるという課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記夫々の従来の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具を提供することを目的とする。
【0007】
【問題を解決するための手段】
本発明者は、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具について鋭意検討した結果、シール部の材質、構造等を特定することにより目的の筆記具が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の筆記具は、次のとおりである。
(1) 筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、前記筆記具本体は先端に筒状体の先軸を有し、該先軸内にはペン芯を保持する筒状のペン芯保持部が設けられると共に、上記先軸とペン芯保持部との間に上記空気置換用の空気孔が設けられ、前記キャップ内には、ペン芯を包囲する包囲部と、該包囲部の開口部に設けられ、上記ペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断する第1シール部と、キャップ内周面に空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断する第2シール部とを備え、かつ、上記第1シール部は熱可塑性エラストマーで構成されると共に、上記第2シール部を含むキャップは熱可塑性樹脂で構成されたことを特徴とする筆記具。
【0008】
(2) 前記キャップは、異材質射出成形により一体成形してなる上記(1)記載の筆記具。
【0009】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、キャップに備わる熱可塑性エラストマーからなる第1シール部はペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断し、熱可塑性樹脂からなる第2シール部は空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断するので、キャップ内では気体の循環が起きないこととなるため、ペン芯を下向きに等に保管してもペン芯からのインキ垂れ等が生じないこととなり、また、上記第1シール部と第2シール部との二重シール構造によりキャップのシール性は大幅に向上し、ペン芯の乾燥をより防止することができ、しかも、上記第1シール部は熱可塑性エラストマーで構成したので、当接でシールが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1のキャップを異材質射出成形により一体成形すれば、すなわち、第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂とで異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、更に低コストで製造することができることとなる。
なお、本発明で規定する「異材質射出成形」とは、異材質からなる製品を一体成形するために、二組の射出機構を備えた射出成形機を用いて一体成形することをいう。
【0011】
以下、本発明の内容を詳しく説明する。
第1シール部に用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系、ウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、塩ビ系、フッ素系等が挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、従来のゴムのような加硫による成形加工でなく、熱可塑性樹脂と同じ加工法で成形できるものであり、一般のゴム製品と同程度のゴム弾性を有し、熱可塑性樹脂との相性がよく、ゴム的性質から半ゴム的性質を有し、優れた耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性を有する。
また、これらの熱可塑性エラストマーは、JIS A硬度(Hs)で100度以下、好ましくは、60度以下のものが望ましい。硬度が100度を越えると、シール部の着脱が重くなり、シール部の着脱の容易化が達成できず、好ましくない。
【0012】
第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂で構成されるものであり、該熱可塑性樹脂としては、従来から筆記具のキャップに汎用されている樹脂が使用でき、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、筆記具本体に用いる樹脂としては、従来から筆記具本体に汎用されている樹脂、例えば、上記の熱可塑性樹脂等が使用できる。
【0013】
第1シール部と、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップに用いる樹脂は、製造面、及び境界面における物性の面等から同系統の熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の使用が好ましく、例えば、第1シール部がポリアミド系熱可塑性エラストマーであれば、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップもポリアミド系熱可塑樹脂で構成することができる。
また、好ましい熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂としては、一般的に使われている筆記具の主溶剤が水、アルコール、又はグリコール系であるため、これらの溶剤に対して高い耐溶剤性とガスバリアー性を有し、しかも、コスト面から勘案するとオレフィン系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂の使用が望ましい。
【0014】
本発明の筆記具において、筆記具本体の軸筒等にシールするキャップシール部の構造は、筆記具本体の軸筒等に着脱自在にシールできる構造であれば、特に限定されるものではなく、例えば、凹部又は凸部からなる少なくとも一つの嵌合部、並びに、後述する実施例の筆記具等が挙げられる。なお、筆記具本体の軸筒には、上記嵌合部に対応するように凸部又は凹部からなる嵌合部、並びにストレート面を備えている。
【0015】
本発明の筆記具は、上記種々の構造となる第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂で、例えば、異材質射出成形により一体成形することにより製造される。
従来においてキャップの一部分を、例えば、凸部からなる嵌合部をゴム等で構成した場合は、キャップにゴム製の嵌合部を接着などにより固着したものであるので、キャップからのゴムの脱落やキャップとゴムの間のシールを保証しなければならないなどの課題を抱えていたが、異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、しかも、製造が容易となると共に、製造コストも低減できることとなる。
【0016】
本発明が適用される筆記具は、特に限定されるものではなく、例えば、中綿式のサインペン、マーキングペン、若しくはインキを貯溜するタンクを有し、中綿を使用しないで直接タンク内にインキを貯溜するインキ直接貯溜方式のサインペン、マーキングペン等を挙げることができる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の実施例を更に図面を参照して更に詳しく説明する。
【0018】
本第1実施例の筆記具Aは、図1及び図2に示すように、筆記具本体10と、キャップ20とを備えている。
筆記具本体10は、軸筒の一部となる大径部11と小径部12とからなる筒状体の先軸13を有し、該先軸13内にはペン芯14を保持する筒状のペン芯保持部15が設けられると共に、先軸13とペン芯保持部15間、すなわち、ペン芯14の周囲以外となる先軸13の周囲に環状の空気置換用の空気孔16が設けられている。
【0019】
筆記具本体10内部には、図示しないインキを貯溜するインキタンクを有し、該インキタンク内のインキを図示しない吸液性の繊維部材等からなる中継部材を介してペン芯14に供給する構造になっている。また、上記空気孔16は、インキタンク内に連通し、インキタンク内と大気圧とを同圧にして、温度変化、圧力変化による筆記時のインキのボタ落ちや洩出を防止している。
【0020】
キャップ20は、先軸13と同様の径違いの閉塞部を有する筒状体であって、先軸13の大径部11に着脱自在に外嵌される大径の胴部21と、該胴部21が肩部22を介して一体に設けられた首部23とを有している。
該首部23内には、ペン芯14を包囲する包囲部24と、該包囲部24の開口部に設けられ、上記ペン芯14の周囲と空気孔開口部16aを遮断する環状のシール突起25aを有する第1シール部25が設けられると共に、首部23内周面には空気孔開口部16aと外気とを遮断するシール突起26aを有する第2シール部26と、先軸13の小径部12に設けた嵌合用凸部12aと嵌合する嵌合用凸部27とを有している。
【0021】
前記先軸13を有する筆記具本体10はポリプロピレン(PP)樹脂で成形されたものであり、第2シール部26もポリプロピレン(PP)樹脂で一体成形されたものである。
また、上述ように構成されるキャップ20は、第1シール部25は、オレフィン系熱可塑性エラストマー〔商品名「住友TPE3570」、JIS A硬度47(住友化学工業社製)〕で、シール部25以外のキャップ20がポリプロピレン(PP)樹脂で異材質射出形により一体成形したものである。
【0022】
先軸13の小径部12先端部はストレート面12bとなっており、小径部12の外周面も環状の周面となっている。
なお、先軸13の小径部12先端部にシール突起を設け、シール部25の先端部をストレート面としてもよく、また、小径部12の外周面にシール突起を設け、シール部26の先端部をストレート面としてもよい。
【0023】
本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20の胴部21を筆記具本体10の大径部11に嵌合、すなわち、嵌合用凸部12aと27とにより嵌合させることによりキャップ20を筆記具本体10に被着することができる。これにより、先軸13の小径部12先端部に第1シール部25のシール突起25aが当接されてペン芯14の周囲と空気孔開口部16aとを遮断(シール)すると共に、小径部12の外周面に第2シール部26のシール突起26aが嵌入されて空気孔開口部16aと外気とを遮断(シール)することとなる。
従って、本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20を筆記具本体10に被着すると、第1シール部25及び第2シール部26により、ペン芯14の周囲と、空気孔開口部16aと、外気とをそれぞれ遮断することとなるので、キャップ20内では気体の循環が起きないため、ペン芯14を下向き等に保管してもペン芯14からのインキ垂れ等が生じないこととなり、また、該二重シール構造によりキャップ20のシール性は大幅に向上し、ペン芯14の乾燥をより防止することができることとなる。
【0024】
また、本第1実施例の筆記具Aでは、キャップ20の第1シール部25はキャップより柔らかい熱可塑性エラストマーで構成されているので、当接でシールが可能となり、しかも、第1シール部と第2シール部26を含むキャップ本体とは異材質射出成形により一体成形されているので、組み立てが不要で脱落することがなく、低コストで製造できるものとなる。
【0025】
本発明の筆記具は、上述のように構成され、使用されるものであるが、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の態様に設計変更等できるものである。
例えば、上記実施例では、第1シール部と第1シール部以外の第2シール部を含むキャップをオレフィン系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂で構成したが、これ以外の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂であってもよい。また、ペン芯14を筆ペンタイプとしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、キャップに備わる熱可塑性エラストマーからなる第1シール部はペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断すると共に、熱可塑性樹脂からなる第2シール部は空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断するので、キャップ内では気体の循環が起きないため、ペン芯を下向き等に保管してもペン芯からのインキ垂れ等が生じることがなく、また、上記第1シール部と第2シール部との二重シール構造によりキャップのシール性は大幅に向上し、ペン芯の乾燥をより防止することができ、しかも、上記第1シール部はキャップより柔らかい熱可塑性エラストマーで構成されているので、当接でシールが可能となり、第1シール部の着脱の容易化と共に、そのシール性を向上させた筆記具が提供される。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、キャップを異材質射出成形により一体成形、すなわち、第1シール部を熱可塑性エラストマーで、第1シール部以外の第2シール部を含むキャップを熱可塑性樹脂とで異材質射出成形により一体成形すれば、組み立てが不要で脱落することがなく、更に低コストで製造することができる筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の第1実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
A 筆記具
10 筆記具本体
13 先軸
14 ペン芯
16 空気置換用の空気孔
20 キャップ
25 第1シール部
26 第2シール部
Claims (2)
- 筆記具本体の軸筒に着脱自在となるシール部を有するキャップを備えると共に、軸筒の先端部に設けたペン芯の周囲以外に空気置換用の空気孔を備えた筆記具において、前記筆記具本体は先端に筒状体の先軸を有し、該先軸内にはペン芯を保持する筒状のペン芯保持部が設けられると共に、上記先軸とペン芯保持部との間に上記空気置換用の空気孔が設けられ、前記キャップ内には、ペン芯を包囲する包囲部と、該包囲部の開口部に設けられ、上記ペン芯の周囲と空気孔開口部とをペン芯保持部の先端面で遮断する第1シール部と、キャップ内周面に空気孔開口部と外気とを先軸の外周面で遮断する第2シール部とを備え、かつ、上記第1シール部は熱可塑性エラストマーで構成されると共に、上記第2シール部を含むキャップは熱可塑性樹脂で構成されたことを特徴とする筆記具。
- 前記キャップは、異材質射出成形により一体成形してなる請求項1記載の筆記具。
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