JP3654559B2 - 固体電解コンデンサ用コンデンサ素子における固体電解質層の形成方法 - Google Patents

固体電解コンデンサ用コンデンサ素子における固体電解質層の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンタル又はアルミ等の固体電解コンデンサにおいて、そのコンデンサ素子におけるチップ片に対して陰極側となる固体電解質層を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の固体電解コンデンサには、おおまかに言って、例えば、特開昭60−220922号公報等に記載され、且つ、図1及び図2に示すように構成した固体電解コンデンサ100と、例えば、特開平2−105513号公報等に記載され、且つ、図3に示すように構成した安全ヒューズ付き固体電解コンデンサ200とがある。
【0003】
前者の固体電解コンデンサ100は、金属粉末の焼結体製チップ片2とこのチップ片2の一端面2aより突出する陽極棒3とから成るコンデンサ素子1を、左右一対のリード端子4,5の間に、当該コンデンサ素子1における陽極棒3を一方のリード端子4に対して溶接等に固着するように配設し、このコンデンサ素子1におけるチップ片2の少なくとも外周面2cに形成した陰極側電極膜6に、他方のリード端子5を接続する一方、これらの全体を合成樹脂製のモールド部7にてパッケージして成る構造である。
【0004】
また、後者の安全ヒューズ付き固体電解コンデンサ200は、同じく金属粉末の焼結体製チップ片2とこのチップ片2より突出する陽極棒3とから成るコンデンサ素子1を、左右一対のリード端子4,5の間に、当該コンデンサ素子1における陽極棒3を一方のリード端子4に対して溶接等に固着するように配設し、このコンデンサ素子1におけるチップ片2の少なくとも外周面2cに形成した陰極側電極膜6と、他方のリード端子5との間を、過電流又は温度の上昇によって溶断するようにした安全ヒューズ線8を介して接続する一方、これらの全体を合成樹脂製のモールド部7にてパッケージして成る構造である。
【0005】
なお、これらの固体電解コンデンサ100,200において、その両リード端子4,5は、モールド部7を成形したあとにおいて、二点鎖線で示すように、当該モールド部7の裏面側に折り曲げられている。また、前記安全ヒューズ線8には、シリコーン樹脂等の弾性樹脂8aが塗着されている。
これらの固体電解コンデンサ100,200に使用するコンデンサ素子1を製造するに際しては、以下に述べる方法が採用されている。
【0006】
すなわち、先づ、タンタル等の金属粉末を、図4に示すように、外形寸法d0の断面角型等の多孔質のチップ片2に、当該チップ片2内にタンタル等の金属製陽極棒3の一部を埋設するようにして固め成形したのち焼結し、このチップ片2の複数個を、図5に示すように、金属製の横バー10に対して、当該各チップ片から突出する陽極棒3を固着することによって、横バー10の長手方向に適宜間隔で一列に並べて装着する。
【0007】
次いで、前記横バー10に固着した各チップ片2を、図6に示すように、処理槽A内に入れたりん酸水溶液等の化成液Bに浸漬した状態で直流電流を印加して陽極酸化を行うことにより、当該チップ片2における各金属粉末の表面及び前記陽極棒3における一部の表面に五酸化タンタル等の誘電体膜を形成する。
次に、前記横バー10に固着した各チップ片2を、図7に示すように、処理槽C内に装填したのち、処理槽C内に、硝酸マンガン水溶液Dを、供給弁C1より当該硝酸マンガン水溶液Dの液面が前記チップ片2における上端面2aと略同一面になる高さまで供給して、各チップ片2を硝酸マンガン水溶液D内に浸漬し、次いで、前記処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dを排出弁C2より順次排出して、その液面を、図8に示すように、各チップ片2の下端面2bから下方に下降することにより、各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから液切りし、そして、乾燥・焼成することを複数回にわたって繰り返し、これによって、前記五酸化タンタル等の誘電体膜の表面に、二酸化マンガン等の金属酸化物による固体電解質層6aを形成する。
【0008】
更に、前記チップ片2における固体電解質層6aの表面に、グラファイト膜6bを、このグラファイト膜6bの表面に銀又はニッケル等の金属膜6cを各々形成することにより、チップ片2における各側面2c及び下端面2bに、図9に示すように、これら固体電解質層6a、グラファイト膜6b及び金属膜6cにて構成される陰極側電極膜6を形成すると言う方法が採用されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来におけるコンデンサ素子の製造方法では、以下に述べるような問題があった。
すなわち、図5に示すように、金属製の横バー10に対して複数個の各チップ片2を固着する場合において、金属バー10の下面から各チップ片2の下端面2bまでの突出寸法Lを、各チップ片2の各々について同じにに揃えることはきわめて困難で、前記各チップ片2における突出寸法Lには長い短いのバラ付きが存在するものであることにより、前記横バー10に固着されている各チップ片2に対して固体電解質層6aを形成する工程において、前記処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dを排出弁C2より順次排出して、その液面を、図8に示すように、各チップ片2の下端面2bから下方に下降することによって、各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから液切りするとき、下降する液面は、各チップ片2における突出寸法Lにはバラ付きが存在することに起因して各チップ片2の下端面2bから略同時に離れることなく、各チップ片2のうち突出寸法がL′と最も大きくなっているチップ片2については最後に離れることになる。
【0010】
このとき、突出寸法がL′と最も大きいチップ片2の下端面2bと液面との間には、表面張力が集中して液面が大きく盛り上がることにより、図8に示すように、可成り太い液柱ができて、そして、この太い液柱が、液面の下降に伴って最後に切れることにより、前記突出寸法がL′と最も大きいチップ片2に付着する硝酸マンガン水溶液Dの量が、各チップ片2のうち先に液面から離れる他のチップ片2に付着する量より多くなり、換言すると、突出寸法の最も大きいチップ片2には、硝酸マンガン水溶液が余剰に多く付着し、そして、この余剰に付着する硝酸マンガン水溶液が、チップ片2の下端面2bに向かって垂れ下がって下端部に水滴状に溜まった状態になり、この状態で乾燥・焼成することを繰り返すことになる。
【0011】
その結果、前記横バー10からの突出寸法の最も大きいチップ片2における固体電解質層6aの膜厚さは、図9に示すように、上端面2aから下端面2bに向かって次第に肉厚状になり、前記チップ片2の下端部における最大外形寸法d0max が、チップ片2における上端部における外形寸法よりも可成り大きくなると共に、チップ片2に対して前記固体電解質層6aを形成した後の形状が、図9に示すように、上端部から下端部に向かって可成り大きく膨らんだ形状になるから、コンデンサ素子の複数個を横バーを使用して同時に製造するに際、前記した突出寸法の最も大きいチップ片2における形状及び寸法が、コンデンサ素子における所定の範囲から外れると言う不良品になり易く、不良品の発生率が高いと言う問題があった。
【0012】
本発明は、コンデンサ素子におけるチップ片に対して陰極側となる固体電解質層を形成するに際して、不良品の発生率を確実に低減できるようにした方法を提供することを技術的課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明の方法は、
「多孔質のチップ片の複数個を横バーに対してその長手方向に沿って適宜間隔で一列状に並べて固着し、次いで、前記横バーの高さ位置と処理槽内に入れた固体電解質層形成用液体の液面との相対的な上昇又は下降にて前記横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体中に浸漬する工程と、前記横バーの高さ位置と前記固体電解質層形成用液体の液面との相対的な上昇又は下降にて横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体から離すように液切りする工程と、前記横バーにおける各チップ片を焼成する工程とを適宜回数繰り返すようにした固体電解質層の形成方法において、
前記横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体から離すように液切りする工程のうち少なくとも各チップ片が前記固体電解質層形成用液体の液面から離れるとき、前記横バーを、その一端部が低く他端部か高くなるように傾斜すると共に、この横バーにおける各チップ片のうち横バーの一端部に位置する少なくとも一つのチップ片に対して液切り部材を接触又は近接することを特徴とする。」
ことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の作用・効果】
このように、横バーにおける各チップ片を固体電解質層形成用液体から離すように液切りする工程のうち、少なくとも、各チップ片が前記固体電解質層形成用液体の液面から離れるとき、前記横バーを、その一端部が低く他端部が高くなるように傾斜することにより、横バーに固着した各チップ片における横バーからの突出寸法にバラ付きが存在しても、各チップ片のうち横バーにおける一端部に位置する少なくとも一つのチップ片が最も低い高さの位置になるから、前記固体電解質層形成用液体における液面は、最後において、前記横バーにおける一端部に位置する少なくとも一つのチップ片から離れることになる。
【0015】
そこで、前記横バーにおける各チップ片のうち横バーの一端部に位置する少なくとも一つのチップ片に対して液切り部材を接触又は近接することにより、前記少なくとも一つのチップ片に多く付着するか、付着しようとしている電解質層形成用液体は、これに接触又は近接する液切り部材に移行するように吸い取られることになるから、前記少なくとも一つのチップ片に付着する電解質層形成用液体の量を、他のチップ片に付着する電解質層形成用液体の量に近づけるように少なくすることができるのである。
【0016】
従って、本発明によると、コンデン素子の複数個を横バーを使用して製造する場合において、所定の寸法・形状から外れて不良品になることが確実に少なくなり、不良品の発生率を大幅に低減できる効果を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図10及び図11の図面について説明する。
これら図11及び図12に符号Cで示す処理槽は、前記図7及び図8に示す処理槽Cと同じものであり、また、符号10で示す金属製の横バーも、前記図5に示す横バー10と同じもので、この横バー10には、多孔質のチップ片2の複数個が、当該各チップ片2から突出する陽極棒3を固着することによって手方向に適宜間隔で一列に並べて装着されている。更に、この横バー10における各チップ片2は、前記従来と同様に、図6に示す陽極酸化により、五酸化タンタル等の誘電体膜が形成されている。
【0018】
先づ、前記横バー10を、前記処理槽Cの両側に配設した受け枠体E1,E2の上面に載置することにより、これに固着した各コンデンサ素子1におけるチップ片2を、図10に示すように、処理槽C内に挿入したのち、処理槽C内に、硝酸マンガン水溶液Dを、供給弁C1より当該硝酸マンガン水溶液Dの液面が前記チップ片2における上端面2aと略同一面になる高さまで上昇するように供給して、前記各チップ片2を、硝酸マンガン水溶液D中に浸漬して、各チップ片2の内部に、前記硝酸マンガン水溶液Dを浸透する。
【0019】
次いで、前記処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dを排出弁C2より順次排出して、その液面を、図11に示すように、各チップ片2の下端面2bから下方に下降することにより、各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから液切りする。
次いで、各チップ片2を乾燥・焼成することを複数回にわたって繰り返し、これによって、前記五酸化タンタル等の誘電体膜の表面に、二酸化マンガン等の金属酸化物による固体電解質層6aを形成する。
【0020】
そして、本発明においては、前記図11に示すように、処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dの液面を下降することによって、各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから液切りする工程のうち、少なくとも各チップ片2が前記硝酸マンガン水溶液Dの液面から離れるとき、前記横バーを、その両端を支持する両受け枠体E1,E2のうち一方の受け枠体E1のみを適宜高さだけ上昇動するか、或いは、他方の受け枠体E2のみを適宜高さだけ下降動することにより、当該横バー10における一端部10aが低く他端部10bが高くなるように水平面に対して適宜角度θに傾斜するように構成する。
【0021】
更に、前記処理槽C内に、ブラシ等のような液切り部材Fを、当該液切り部材Fが前記横バー10における各チップ片2のうち横バー10の一端部10aに位置する少なくとも一つのチップ片2に対して接触又は近接するようにして設けるのである。
このように、処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dの液面を下降することによって横バー10における各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから離すように液切りする工程のうち、少なくとも、各チップ片2が前記硝酸マンガン水溶液Dの液面から離れるとき、前記横バー10を、その一端部10aが低く他端部10bが高くなるように傾斜することにより、この横バー10に固着した各チップ片2における横バー10からの突出寸法Lにバラ付きが存在しても、各チップ片2のうち横バー10における一端部10aに位置する少なくとも一つのチップ片2が最も低い高さの位置になるから、前記硝酸マンガン水溶液Dにおける液面は、最後において、前記横バー10における一端部10aに位置する少なくとも一つのチップ片2から離れることになる。
【0022】
そこで、前記横バー10における各チップ片2のうち横バー10の一端部10aに位置する少なくとも一つのチップ片2に対して、処理槽C内に設けた液切り部材Fを接触又は近接することにより、前記少なくとも一つのチップ片2に多く付着するか、付着しようとしている硝酸マンガン水溶液は、これに接触又は近接する液切り部材Fに移行するように吸い取られることになるから、前記少なくとも一つのチップ片2に付着する硝酸マンガン水溶液の量を、他のチップ片2に付着する硝酸マンガン水溶液の量に近づけるように確実に少なくすることができるのである。
【0023】
なお、前記実施の形態は、処理槽C内に硝酸マンガン水溶液Dを供給してその液面を上昇することにより、この硝酸マンガン水溶液D中に横バー10における各チップ片2を浸漬し、前記処理槽C内における硝酸マンガン水溶液Dを排出してその液面を下降することにより、横バー10における各チップ片2を前記硝酸マンガン水溶液Dから離すように液切りする場合を示したが、本発明は、これに限らず、前記両受け枠体E1,E2の下降動にて横バー10を下降することにより、その各チップ片2を硝酸マンガン水溶液D中に浸漬する一方、前記両受け枠体E1,E2の上昇動にて横バー10を上昇することにより、その各チップ片2を硝酸マンガン水溶液Dから離すように液切りし、この途中において、前記横バー10を傾斜するよう構成しても良いのであり、また、前記液切り部材Fは、前記実施の形態のように、処理槽C内に設けることに代えて、横バー10に設けるか、或いは、別のブラケットに設けるようにして良いことは言うまでもない。
【0024】
特に、本発明者の実験によると、前記液切り部材Fとして、スポンジを使用した場合には、硝酸マンガン水溶液Dに泡立ちが発生したが、このスポンジに代えてブラシを使用した場合には、硝酸マンガン水溶液Dに泡立ちが発生することを低減できるのであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体電解コンデンサの縦断正面図である。
【図2】図1のII−II視平断面図である。
【図3】安全ヒューズ付き固体電解コンデンサの縦断正面図である。
【図4】コンデンサ素子を示す斜視図である。
【図5】前記コンデンサ素子の複数個を横バーに固着した状態を示す斜視図である。
【図6】前記横バーにおける各コンデンサ素子に対して陽極酸化処理を行っている状態を示す図である。
【図7】前記横バーにとける各コンデンサ素子に従来の方法にて固体電解質層を形成している状態を示す図である。
【図8】前記横バーにおける各コンデンサ素子に従来の方法にて固体電解質層を形成している状態を示す図である。
【図9】従来の方法によるコンデンサ素子の縦断正面図である。
【図10】本発明の方法にて横バーにおける各コンデンサ素子に固体電解質層を形成している状態を示す図である。
【図11】本発明の方法にて横バーにおける各コンデンサ素子に固体電解質層を形成している状態を示す図である。
【符号の説明】
1 コンデンサ素子
2 チップ片
2a チップ片の上端面
2b チップ片の下端面
3 陽極棒
6 陰極側電極膜
6a 固体電解質層
6b グラファイト膜6b
6c 金属膜
10 横バー
10a 横バーの一端部
10b 横バーの他端部
C 処理槽
C1 供給弁
C2 排出弁
D 硝酸マンガン水溶液
E1,E2 受け枠体
F 液切り部材

Claims (1)

  1. 多孔質のチップ片の複数個を横バーに対してその長手方向に沿って適宜間隔で一列状に並べて固着し、次いで、前記横バーの高さ位置と処理槽内に入れた固体電解質層形成用液体の液面との相対的な上昇又は下降にて前記横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体中に浸漬する工程と、前記横バーの高さ位置と前記固体電解質層形成用液体の液面との相対的な上昇又は下降にて横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体から離すように液切りする工程と、前記横バーにおける各チップ片を焼成する工程とを適宜回数繰り返すようにした固体電解質層の形成方法において、
    前記横バーにおける各チップ片を前記固体電解質層形成用液体から離すように液切りする工程のうち少なくとも各チップ片が前記固体電解質層形成用液体の液面から離れるとき、前記横バーを、その一端部が低く他端部か高くなるように傾斜すると共に、この横バーにおける各チップ片のうち横バーの一端部に位置する少なくとも一つのチップ片に対して液切り部材を接触又は近接することを特徴とする固体電解コンデンサ用コンデンサ素子における固体電解質層の形成方法。
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