JP3653819B2 - 着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、副燃焼室内の異なった位置に発熱部を有する着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガスエンジンとして、例えば、特開昭64−24155号公報に開示されたものがある。該公報に開示されたガス機関の副室ガス圧制御方法は、副室式ガス機関の副室に供給するガスあるいは混合気の供給圧を制御するに際して、供給圧をPg、吸気負圧をPa、ブースト圧をPcとし、A,B,Cを正の定数としたときに、Pg=APa+BPc+Cなる関係式が成立するように供給圧Pgを制御している。負荷の変化は吸気負圧Paの変化に対応し、回転数の変化はブースト圧Pcの変化に対応するので、供給圧Pgをガス機関の負荷や回転数に応じた上記式により制御している。
【0003】
また、特開平4−86362号公報に開示された気体燃料の圧力調整装置は、正圧の気体燃料を送入する導入路と一定圧力の気体燃料を機器へ供給する送出路とが接続された調圧室、及び導入路を開閉する計量弁を有し、更に、計量弁を開閉動作させるための電磁気力で作動するアクチュエータ、調圧室の圧力を検出する圧力センサーの圧力信号に基づいてアクチュエータに駆動信号を送る電子式制御器を備えている。気体燃料の圧力調整装置は、調圧室の圧力が変動すると圧力センサーの圧力信号に基づいて電子式制御器がアクチュエータに駆動信号を送って計量弁を開閉動作させ、調圧室へ送入される正圧の気体燃料を制御することによって調圧室を一定圧力に維持する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガスミキサーを吸気管に設置する予混合タイプのガスエンジンでは、天然ガスの吸入量分だけ空気量が減少するため、空気利用率が減少し、ガソリンエンジンに比較して出力が低下する。このような欠点を克服するには、筒内にガス燃料を直接噴射して混合気を形成させることが燃費等を考慮した場合に有利であると考えられる。更に、エンジンに関してNOX の発生を抑制する点から考慮すると、希薄燃焼が好ましいものであり、ガス燃料を用いて希薄燃焼させるためには、確実な着火と希薄混合気の急速な燃焼が不可欠である。
【0005】
そこで、ガスエンジンにおいて、シリンダヘッドに副燃焼室を設け、主燃焼室と副燃焼室とを連通する連絡孔にバルブを設け、バルブが閉鎖して副燃焼室内の圧力が低圧時にガス燃料を供給し、圧縮行程後半にバルブを開放し、高温圧縮空気を副燃焼室に供給し、急速に均一混合させて一次燃焼を実現し、副燃焼室内の燃焼による圧力上昇にて混合気、火炎を主燃焼室に噴出し、短時間に希薄燃焼を完了させる必要がある。
【0006】
しかしながら、副燃焼室式ガスエンジンでは、副燃焼室内の圧縮着火では着火位置の特定が困難であり、着火後の副燃焼室内及び主燃焼室内での燃焼が変動し、特に、エンジンの負荷変動時には運転が不安定になることが懸念される。また、副燃焼室式ガスエンジンは、ナチュラルガスの気体燃料を使用するものであり、吸入行程でガスを吸入し、次いで圧縮すると、高圧縮となり温度が高くなり、自己着火の現象即ちノッキングが発生する。ナチュラルガスのガス燃料は圧縮比が12以下でないと自己着火するし、エンジンの熱効率は圧縮比が小さいと熱効率が小さくなるという現象がある。その反面、ナチュラルガスは自発火温度が高く、難燃性燃料であるので、拡散燃焼が緩慢になることが懸念される。
【0007】
また、副燃焼室式ガスエンジンにおいて、希薄燃焼を更に安定させるために、副燃焼室と主燃焼室とを連通する連絡孔にバルブを設置し、エンジン吸入行程時には該バルブを閉じておき、主燃焼室に空気のみを吸入し、副燃焼室には数kg/cm2 に加圧された天然ガスを導入する。そして、上記バルブを上死点手前で開き、主燃焼室と副燃焼室との圧力差により瞬間的に副燃焼室内に空気を流入させ、天然ガスと空気は極めて短時間に均一混合気を作り、同時に燃焼を始め、副燃焼室から連絡孔を通じて主燃焼室に流出しながら短時間に希薄燃焼を完了させることができる。
【0008】
また、本出願人は、上記の問題を解決したガスエンジンを開発して、特願平6−124678号として先に出願した。該ガスエンジンは、副燃焼室にナチュラルガス等のガス燃料を導入し、主燃焼室で吸入空気のみを圧縮して圧縮比を高めると共に、副燃焼室内の筒内圧を圧電素子等のセンサーで検出し、その情報を基にして燃料供給弁を作動させて負荷と回転数とに見合った適正な燃料供給量を制御し、主燃焼室内の空気を高温に上昇させた状態で連絡孔の連絡孔弁を開放して主燃焼室の高圧縮空気を副燃焼室に流入させ、副燃焼室内のガス燃料と高圧縮空気とを一気に混合させることで短期間に着火燃焼させ、しかも副燃焼室内では燃料は過濃状態なのでNOX の発生を抑制する状態で燃焼させ、火炎を副燃焼室から主燃焼室に一気に吹き出させることで二次燃焼を出来るだけ均一な混合気で短時間で完結させ、NOX 、HC等の発生を低減し、特に熱効率を高め、ガス燃料の自己着火を防止してノッキングの発生を防止したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、自発火温度が高く、難燃性燃料である天然ガス燃料をエンジンの運転条件、特に、エンジン負荷に適合するように副燃焼室で確実に着火燃焼させるため、副燃焼室内の連絡孔近傍位置と奥部位置との異なった位置に独立して加熱活性化する発熱部を設け、低負荷時と高負荷時とで加熱する発熱部を変更し、安定した燃焼を確保してエンジン性能を向上させる着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンに関する。
【0010】
この発明は、シリンダヘッドに配置した副燃焼室とシリンダ側の主燃焼室を構成するセラミックスから成る燃焼室構造体、前記副燃焼室と前記主燃焼室とを連通する前記燃焼室構造体に形成した連絡孔、前記連絡孔を開閉する連絡孔弁、ガス燃料供給源からのガス燃料を前記副燃焼室へ供給する燃料供給ノズル、前記副燃焼室内で前記連絡孔の近傍位置と離れた位置とに第1発熱部と第2発熱部を有する着火装置、及びエンジンの運転条件に応答して前記着火装置のいずれかの前記発熱部を加熱させるコントローラから構成した着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンに関する。
【0011】
また、前記着火装置は、前記連絡孔の近傍位置の前記第1発熱部を構成する第1グロープラグと前記連絡孔から離れた位置の前記発熱部を構成する第2グロープラグとから構成されている。
【0012】
又は、前記着火装置は、前記第1発熱部と前記第2発熱部とが共通の鞘に長手方向の異なった位置に組み込まれたグロープラグから構成されている。
【0013】
或いは、前記着火装置は、前記連絡孔の近傍位置の前記第1発熱部を構成する発熱コイルと前記連絡孔から離れた位置の前記第1発熱部を構成する発熱コイルとが1本のセラミックバーに長手方向の異なった位置に組み込まれたグロープラグから構成されている。
【0014】
この着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンは、上記構成によって、低負荷時には、奥部位置の発熱部を加熱して副燃焼室の奥部で着火燃焼させて奥部での圧力上昇によって連絡孔近傍の未燃ガスを主燃焼室へ噴出させ、次いで奥部の火炎を主燃焼室へ噴出させ、主燃焼室で拡散燃焼を短期に完結する。また、高負荷時には、連絡孔近傍位置の発熱部を加熱して副燃焼室内の連絡孔近傍で着火燃焼させて火炎を主燃焼室へ噴出させ、次いで副燃焼室の奥部の混合気が火炎となって主燃焼室へ噴出させ、主燃焼室で拡散燃焼を短期に完結することができる。
【0015】
また、この副燃焼室式ガスエンジンは、上記構成によって、吸入空気が前記主燃焼室内で高圧縮比になっても、ガス燃料を含んでいないのでガス燃料が自己着火することなく、ノッキングが発生することがなく、前記連絡孔が開放することで、前記主燃焼室から高圧縮の吸入空気が前記副燃焼室に流入してガス燃料と吸入空気とが混合して着火し、当量比の大きい燃料リッチな状態で高速燃焼してNOX の発生が抑制される。次いで、前記連絡孔を通じて前記副燃焼室から前記主燃焼室へその火炎が一気に噴出し、該火炎は前記主燃焼室で新気と混合し、予混合燃焼を促進して燃焼スピードを上昇して理想的な二次燃焼を完結する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの実施例を説明する。図1はこの発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの一実施例を示す断面図、図2は図1の副燃焼室式ガスエンジンにおける低負荷時の燃焼状態を示す断面図、及び図3は図1の副燃焼室式ガスエンジンにおける高負荷時の燃焼状態を示す断面図である。
【0017】
この副燃焼室式ガスエンジンは、シリンダブロック14に固定されたシリンダヘッド7に主燃焼室1と副燃焼室2とを形成する燃焼室構造体が配置されている。この副燃焼室式ガスエンジンは、シリンダヘッド7に形成した小径のキャビティ17に配置した遮熱構造の燃焼室構造体で形成した副燃焼室2、シリンダヘッド7に形成した大径のキャビティ18に配置した遮熱構造の燃焼室構造体で形成された主燃焼室1、シリンダブロック14に形成した孔部21に嵌合したシリンダライナ19、シリンダライナ19に形成したシリンダ31内を往復運動するピストン15、及び主燃焼室1と副燃焼室2とを連通する燃焼室構造体に形成した連絡孔8を有している。また、燃焼室構造体は、主燃焼室1を形成するヘッドライナ10と、シリンダ31のほぼ中央部に位置する副燃焼室2を形成する副室構造体3から成り、両者は一体構造に構成してもよく、或いは別体に構成することもできる。ヘッドライナ10は、シリンダ31の一部を構成するライナ上部12とヘッド下面部11から構成されている。
【0018】
また、ピストン15は、耐熱性に優れた窒化ケイ素等の耐熱材料から成るピストンクラウン41及びピストンクラウン41の下部に固定したAl合金等から成るピストンスカート42から構成されている。副室構造体3は、シリンダヘッド7の小径のキャビティ17にガスケット23を介在して遮熱空気層33を形成して配置されている。また、ヘッドライナ10は、シリンダヘッド7の成る大径のキャビティ18にガスケット23を介在して遮熱空気層33を形成して配置されている。
【0019】
この着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンは、特に、主燃焼室1と副燃焼室2とを連通する連絡孔8を開閉する連絡孔弁4を燃焼室構造体のヘッドライナ10に配置し、ガス燃料供給源からのガス燃料を副燃焼室2へ供給する燃料供給ノズル5を副室構造体3に設け、副燃焼室2内の異なった位置に着火装置として発熱部25Hを構成するグロープラグ25と発熱部26Hを構成するグロープラグ26を設け、エンジンの運転条件に応答してコントローラ9の指令によって切替えスイッチ29を切り換えて発熱部25H,26Hのいずれか一方のグロープラグ25,26を加熱させる制御を行うことを特徴とする。着火装置のグロープラグ25は、副燃焼室2内で連絡孔8より離れた位置の奥部に発熱部25Hを位置させるようにシリンダヘッド7に配置され、また、着火装置のグロープラグ26は、副燃焼室2内で連絡孔8の近傍に発熱部26Hを位置させるようにシリンダヘッド7に配置されている。
【0020】
この副燃焼室式ガスエンジンは、エンジンの運転条件を検出するため、エンジン負荷を検出する負荷センサ27、エンジン回転数を検出する回転センサ28が設けられている。負荷センサ27は、例えば、燃料供給ノズル5への燃料の供給量、或いは車両ではアクセルペダルの踏込み量を測定することによって検出できる。また、エンジン回転数はクランクシャフトの回転数を測定することによって検出できる。
【0021】
この実施例では、この副燃焼室式ガスエンジンは、副燃焼室2をシリンダ31のほぼ中央部に配置し、燃焼室構造体のヘッドライナ10には連絡孔8からシリンダ周辺へ放射方向に傾斜面で延びる複数のガイド溝6が形成され、ガイド溝6は吸排気ポートとの間に形成されてシリンダ周辺まで延びている。しかしながら、ヘッドライナ10にはガイド溝6を必ずしも設ける必要はなく、ヘッドライナ10のヘッド下面部11に連絡孔8を形成し、連絡孔8に連絡孔弁4が配置されればよい。また、連絡孔弁4は、カムを備えた動弁機構によって作動することができるが、電磁力を利用して開閉タイミングを制御するように作動させることもでき、リターンスプリング16のばね作用で連絡孔8を閉鎖するように構成されている。
【0022】
この副燃焼室式ガスエンジンにおいて、図示していないが、燃料としてのナチュラルガス即ちガス燃料を収容した燃料供給源が設けられ、燃料供給源からの天然ガスが燃料噴射ポンプ等によって燃料供給管を通じてシリンダヘッド7に設けた燃料供給ノズル5へ供給される。連絡孔弁4は、エンジンの回転に同期した回転するカム及びカムの回転を上下運動に変換するロッカアームを通じて作動したり、或いは電磁力で作動するように構成することができる。ガス燃料供給源のガス燃料は、図示していないが、増圧室等において5〜7kg/cm2 に加圧され、その加圧されたガス燃料が燃料供給管を通じて燃料供給ノズル5へと供給されている。燃料供給ノズル5は、例えば、コントローラの指令で燃料噴射が行なわれるように制御され、エンジン負荷及びエンジン回転数に応じて開弁期間が決定されている。
【0023】
また、連絡孔8の領域では、燃焼ガスで高温になるため、連絡孔8に配置した連絡孔弁4は高温強度を有する耐熱性に優れた耐熱金属、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックスから製作されている。この副燃焼室式ガスエンジンでは、主燃焼室1を形成するヘッドライナ10、副燃焼室2を形成する副室構造体3、シリンダライナ19及びピストンクラウン41は、耐熱性に優れた窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックスで作製されている。従って、この副燃焼室式ガスエンジンでは、燃焼後期のガス温度が高くなっても十分な耐熱性、高温強度を有し、未燃炭化水素HC等の排出が少なくなり、高効率のエンジンを構成できる。
【0024】
この副燃焼室式ガスエンジンは、上記の構成を有するので、連絡孔弁4が連絡孔8を開放すると、まず、主燃焼室1内の圧縮空気が連絡孔8を通じて副燃焼室2内へ供給され、副燃焼室2内のガス燃料と混合し、グロープラグ25又はグロープラグ26が加熱され、着火燃焼し、副燃焼室2内の圧力が上昇すると、副燃焼室2内の火炎と混合気とが連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴出される。この時、ガイド溝6を設けている場合には、副燃焼室2からの火炎と混合気は、ガイド溝6に案内されてシリンダ周辺へと到達することができ、シリンダ周辺部に存在する新気を巻き込んで空気利用率をアップし、燃焼期間を短縮して燃焼を早期に完結する。
【0025】
この副燃焼室式ガスエンジンは、連絡孔弁4を電磁力を利用して開閉タイミングを制御する場合には、位置センサにより連絡孔弁4が連絡孔8を閉鎖している状態を検出して、燃料供給ノズル5が作動して副燃焼室2内へガス燃料が供給されるように構成されている。コントローラ9は、エンジン負荷を検出する負荷センサ27、エンジン回転数を検出する回転センサ28、連絡孔弁4の開閉状態を検出する位置センサ及び副燃焼室2の筒内圧を検出する圧力センサからの検出信号を受け、それらの検出信号を基にして、副燃焼室2内に供給されるガス燃料がエンジン負荷及びエンジン回転数に最適の予め設定した燃料ガス圧になるように燃料供給ノズル5を作動して副燃焼室2内へガス燃料量が制御されている。
【0026】
次に、この着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの作動について、図4の処理フロー図を参照して説明する。この副燃焼室式ガスエンジンは、吸入行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程の4つの行程を順次繰り返すことによって作動されるものであり、この実施例では、グロープラグ25,26の制御はエンジン負荷によって制御される場合について説明する。エンジンの駆動と共に、負荷センサ27によってエンジン負荷Lを検出する。エンジンの吸入行程では、吸気弁が吸気ポートを開放して主燃焼室1に吸入空気が供給され、連絡孔弁4によって連絡孔8を閉鎖した状態で燃料供給ノズル5が作動してガス供給源から副燃焼室2に天然ガスのガス燃料が供給される(ステップ40)。
【0027】
次に、圧縮行程では、連絡孔弁4によって連絡孔8を閉鎖しておき、主燃焼室1で吸入空気を高圧縮して圧縮比を大きくする。ここで、コントローラ9は、負荷センサ27によって検出されたエンジン負荷Lが予め設定したエンジン負荷L0 より大きいか否かを判断する(ステップ41)。次いで、圧縮行程終盤で連絡孔弁4が連絡孔8を開放し、連絡孔8を通じて高圧縮で高温(例えば、650℃)化した圧縮空気を主燃焼室1から副燃焼室2へ流入し、該吸入空気は副燃焼室2内のガス燃料と混合を促進して混合気を生成するが、この時、検出されたエンジン負荷Lがエンジン負荷L0 より大きい場合には、連絡孔8の近傍に配置されたグロープラグ26に電流を供給してグロープラグ26を加熱する(ステップ42)。グロープラグ26を加熱することによって、副燃焼室2内の連絡孔8の近傍に存在する混合気が着火燃焼する。そこで、連絡孔8の近傍の着火燃焼した火炎は連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴き出すと共に、副燃焼室2内での燃焼が急速に奥部へと進展して燃料リッチでNOX を低減した状態で燃焼し、副燃焼室2の奥部からの火炎が連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴出する(ステップ43)。次いで、膨張行程へ移行し、副燃焼室2から噴出した火炎と混合気は主燃焼室1に存在する新気と混合を促進して短期間に二次燃焼を完結する。膨張行程では、連絡孔8の開放状態を維持して副燃焼室2から主燃焼室1へ火炎を噴出させて仕事をさせ、次いで、排気行程終了付近で連絡孔8を連絡孔弁4を作動して閉鎖し、吸入行程に移行して上記のサイクルを繰り返してエンジンが駆動される。
【0028】
ステップ41において、検出されたエンジン負荷Lがエンジン負荷L0 より大きくない場合には、連絡孔8より離れた位置に配置されたグロープラグ25に電流を供給してグロープラグ25を加熱する(ステップ44)。グロープラグ25を加熱することによって、副燃焼室2内の奥部に存在する混合気が着火燃焼する。そこで、副燃焼室2内での燃焼が急速に連絡孔8の近傍へと進展して燃料リッチでNOX を低減した状態で燃焼し、副燃焼室2の奥部からの火炎が連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴出する(ステップ45)。
【0029】
この副燃焼室式ガスエンジンは、特に、エンジン負荷に応じて副燃焼室2内での着火点を変更するように制御できるので、副燃焼室2内に供給されるガス燃料量に最適な燃焼状態を確保することができ、NOX の発生を抑制できると共に、主燃焼室1での拡散燃焼を促進にして燃焼期間を短縮し、エンジン性能を向上させることができる。即ち、エンジンが定格回転数による部分負荷(低負荷)運転時には、副燃焼室2内には燃料供給ノズル5から少量のガス燃料が供給されるので、主燃焼室1から連絡孔8を通じて流入した空気との可燃混合気の生成が速くなり、混合気の殆どが副燃焼室2内で燃焼するので、着火点を副燃焼室2の奥部に位置させ、混合気の着火による圧力上昇によって副燃焼室2内の火炎と混合気を連絡孔8を通じて主燃焼室1へ押し出すように噴出させ、次いで主燃焼室1で燃焼期間を短縮して燃焼を完結させる。これに対して、エンジンが全負荷(高負荷)運転の時には、副燃焼室2内へ燃料供給ノズル5から多量のガス燃料が供給されるので、副燃焼室2内での予混合気量の生成が多くなるため、予混合燃焼の立ち上がりが急激となり、副燃焼室2内での圧力上昇率が過大になるので、副燃焼室2内での着火位置を連絡孔8の近傍にし、連絡孔近傍の混合気と火炎とを連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴出させ、次いで、副燃焼室2の奥部の混合気を火炎伝播によって燃焼を進展させ、そこで、圧力上昇した火炎と混合気とを連絡孔8を通じて主燃焼室1へ噴出させ、予混合燃焼の急激な立ち上がりを抑制し、燃焼を安定させて主燃焼室1での拡散燃焼を短期に完結させる。
【0030】
また、この副燃焼室式ガスエンジンは、副燃焼室2に連絡孔8と燃料供給ノズル5を設け、天然ガスを連絡孔弁4で連絡孔8を閉鎖した状態で燃料供給ノズル5から副燃焼室2内に供給し、吸気ポートから主燃焼室1へ吸入した吸入空気を連絡孔弁4で連絡孔8を閉鎖して副燃焼室2に吸入空気が供給されない状態で、ピストン15の上昇の圧縮行程で圧縮されるので、吸入空気が主燃焼室1内で高圧縮されても、副燃焼室2内に供給されたガス燃料は主燃焼室1とは連絡孔弁4で遮断されているので自己着火することがなく、ノッキングが発生することがない。また、連絡孔弁4が連絡孔8を開放することで、主燃焼室1から高圧縮比の吸入空気が副燃焼室2に流入して燃料ガスと吸入空気とが混合して着火し、当量比の大きい燃料リッチな状態で高速燃焼してNOX の発生が抑制される。
【0031】
次に、図5、図6及び図7を参照して、この発明の着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの別の実施例を説明する。この実施例は、上記実施例と比較して、副燃焼室2内に設けた発熱部25H,26Hの着火装置の構成が異なる以外は、同一の構成であり且つ同一の機能を有するので、同一の部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。この実施例では、シリンダヘッド7には吸・排気ポート22,22aが形成され、吸・排気ポート22,22aには吸・排気弁20,20aが形成されている。着火装置を構成するグロープラグ13は、1本の鞘24内に発熱部25Hと発熱部26Hとが組み込まれている。従って、グロープラグ13の鞘24は、副燃焼室2内に連絡孔8の近傍から奥部に延びるように配置されている。
【0032】
次に、図8及び図9を参照して、この発明の着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの更に別の実施例を説明する。この実施例は、上記各実施例と比較して、副燃焼室2内に設けた発熱部25H,26Hの着火装置の構成が異なる以外は、同一の構成であり且つ同一の機能を有するので、同一の部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。この実施例では、着火装置は、連絡孔の近傍位置の発熱部26Hを構成する発熱コイルと連絡孔8から離れた位置の発熱部25Hを構成する発熱コイルとが1本のセラミックバー32に長手方向の異なった位置に組み込まれたグロープラグ30から構成されている。取付金具36には、その一端に絶縁部材38を介して陽電極端子34,35が取り付けられると共に、他端に陰極金具39が取り付けられている。セラミックバー32は、陰極金具39と絶縁部材40を介在して取付金具36に固定されている。発熱部25Hを構成する発熱コイルは、一端が陽電極リード37を通じて陽電極端子34に接続され且つ他端が陰極金具39に接続されている。また、発熱部26Hを構成する発熱コイルは、一端が陽電極リード38を通じて陽電極端子35に接続され且つ他端が陰極金具39に接続されている。更に、陽電極端子34,35は切替えスイッチ29にそれぞれ接続されている。
【0033】
【発明の効果】
この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンは、上記のように構成されいるので、着火装置が副燃焼室内で連絡孔の近傍位置に配置された第1発熱部と連絡孔から離れた位置に配置された第2発熱部を有し、コントローラの指令でエンジンの運転条件に応答して前記第1発熱部と前記第2発熱部との何れか一方を加熱させるので、例えば、低負荷時には前記副燃焼室の奥部から燃焼を進展させ、高負荷時には前記副燃焼室内の連絡孔近傍から燃焼を進展させるように、副燃焼室内での着火点を変更させることができる。従って、この副燃焼室式ガスエンジンは、高負荷時での副燃焼室内での予混合気燃焼の立ち上がりをスムースにし、安定した燃焼を確保でき、最高室内圧力を低下させ、耐久性を向上でき、主燃焼室への火炎と混合気の噴出が安定し、拡散燃焼が促進されて燃焼期間を短縮でき、エンジン性能を向上できる。
【0034】
また、副燃焼室には連絡孔が閉鎖した状態でガス燃料が供給され、主燃焼室にはガス燃料が存在しない状態で吸入空気が供給されるので、吸入空気を主燃焼室内で高圧縮することができる。しかも、前記副燃焼室内には空気が存在しない状態でガス燃料が圧縮封入され、ガス燃料の質量を大きくされた状態で副燃焼室に供給されるので、ガス燃料が自己着火することがない。また、前記連絡孔弁が作動して前記連絡孔が開放することで、前記主燃焼室から高圧縮されて高温化した空気が前記副燃焼室に一気に流入し、負荷及び回転数に適正なガス燃料が副燃焼室に供給されているので、ガス燃料と吸入空気との混合が促進して着火燃焼する。また、前記連絡孔を通じて前記副燃焼室から前記主燃焼室へその火炎が一気に噴出し、該火炎は前記主燃焼室で新気と混合し、予混合燃焼を促進して燃焼スピードを上昇して理想的な二次燃焼を完結する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1の副燃焼室式ガスエンジンの低負荷時の燃焼状態を示す断面図である。
【図3】図1の副燃焼室式ガスエンジンの高負荷時の燃焼状態を示す断面図である。
【図4】この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの作動を示す処理フロー図である。
【図5】この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンの別の実施例を示す断面図である。
【図6】図5の副燃焼室式ガスエンジンの低負荷時の燃焼状態を示す断面図である。
【図7】図5の副燃焼室式ガスエンジンの高負荷時の燃焼状態を示す説明図である。
【図8】この発明による着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジンに使用されるグロープラグの他の実施例を示す断面図である。
【図9】図8のグロープラグの端面を示す端面図である。
【符号の説明】
1 主燃焼室
2 副燃焼室
3 副室構造体(燃焼室構造体)
4 連絡孔弁
5 燃料供給ノズル
7 シリンダヘッド
8 連絡孔
9 コントローラ
10 ヘッドライナ(燃焼室構造体)
13,25,26,30 グロープラグ
24 鞘
25H,26H 発熱部
31 シリンダ
32 セラミックバー
Claims (4)
- シリンダヘッドに配置した副燃焼室とシリンダ側の主燃焼室を構成するセラミックスから成る燃焼室構造体、前記副燃焼室と前記主燃焼室とを連通する前記燃焼室構造体に形成した連絡孔、前記連絡孔を開閉する連絡孔弁、ガス燃料供給源からのガス燃料を前記副燃焼室へ供給する燃料供給ノズル、前記副燃焼室内で前記連絡孔の近傍位置と離れた位置とに第1発熱部と第2発熱部を有する着火装置、及びエンジンの運転条件に応答して前記着火装置のいずれかの前記発熱部を加熱させるコントローラから構成した着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジン。
- 前記着火装置は、前記連絡孔の近傍位置の前記第1発熱部を構成する第1グロープラグと前記連絡孔から離れた位置の前記発熱部を構成する第2グロープラグとから構成されている請求項1に記載の着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジン。
- 前記着火装置は、前記第1発熱部と前記第2発熱部とが共通の鞘に長手方向の異なった位置に組み込まれたグロープラグから構成されている請求項1に記載の着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジン。
- 前記着火装置は、前記連絡孔の近傍位置の前記第1発熱部を構成する発熱コイルと前記連絡孔から離れた位置の前記第1発熱部を構成する発熱コイルとが1本のセラミックバーに長手方向の異なった位置に組み込まれたグロープラグから構成されている請求項1に記載の着火装置を持つ副燃焼室式ガスエンジン。
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