JP3653627B2 - 耐圧板の打継工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤の上に配設した鉄筋にコンクリートを打ち継ぐことによって耐圧板を形成する際に、打継部を仕切るための網目部材を所定箇所に支持するための耐圧板の打継工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、建築物の下部構造として、地盤の上に耐圧板と称せられる鉄筋コンクリート構造の基礎を構築することが行われている。
【0003】
このような耐圧板の従来の施工法を説明すると、図7に示すように、地盤の上に打設した捨てコンクリート40の上にスペーサ41を介して鉄筋42を配設し、所定厚さのコンクリート43を打ち継ぐことにより、鉄筋コンクリート構造の耐圧板44を構成するものである。
【0004】
このような従来の耐圧板44においては、コンクリート43の打継部にメタルラス等の目の細い網目部材45を設けることが行われている。
【0005】
この網目部材45を所定箇所に固定するために、従来は、捨てコンクリート40の上に配した鉄筋42に縦方向の支持用鉄筋46を立てて溶接し、またこの縦方向の支持用鉄筋46に横方向の支持用鉄筋47を配して必要箇所で結束または溶接すると共に、これらの鉄筋を斜め方向の支持用鉄筋48で溶接し、さらに網目部材45を縦方向及び横方向の支持用鉄筋46、47に結束線によって固定するという面倒な作業を必要としていたのである。
【0006】
なお、図7において、網目部材45と支持用鉄筋46、47、48の一部を示してあるが、実際においては、このような網目部材45と支持用鉄筋46、47、48でコンクリート打継部を包囲することが必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の耐圧板の打継工法においては、コンクリートを打ち継ぐための仕切りとして用いる網目部材を所定箇所に固定するために、多くの溶接作業及び結線作業を必要とし、また、網目部材を固定するための横方向及び縦方向の支持用鉄筋を多数量必要とし、このためにコンクリート打継ぎ作業に多大なる手間と工費を必要としていたのである。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解消するために成されたもので、鉄筋コンクリートによる耐圧板を打ち継いで行くための耐圧板の打継工法を行う際に溶接作業を必要とせず、網目部材を支持するための支持用鉄筋を必要最小限で済ませることにより、耐圧板のコンクリート打継ぎ作業を簡単且つ低コストで行えるようにした耐圧板の打継工法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の耐圧板の打継工具は、地盤の上に鉄筋を配設してコンクリートを打ち継ぐことにより所定厚さの耐圧板を形成するようにした耐圧板の打継工法に使用する耐圧板の打継工具において、該打継工具は垂直部材と水平部材とを有する剛構造により形成され、前記垂直部材の外側の高さ方向に間隔をあけて複数の掛止部材を固設すると共に前記垂直部材に縦方向に固設された長尺のナットにネジ棒を螺合し、該ネジ棒に水平定規を着脱自在に固定するキャッチ具を設けて成り、コンクリートの打継部に前記打継工具を所定間隔で配列すると共に前記掛止部材の夫々に横方向に掛け止めした支持用鉄筋に仕切材を固定する一方、地盤の上に設けられた鉄筋にストッパを固設して該ストッパで夫々の前記打継工具の水平部材の端部を支持することにより該打継工具の水平方向の移動を規制し、前記水平定規の高さ調節を行うことによってコンクリートの打設高さを規定した状態でコンクリートを打ち継ぐようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2の耐圧板の打継工具は、請求項1において、前記キャッチ具は、前記ネジ棒のネジ溝を長手の途中で逆転させて該ネジ棒の下側ネジ溝を前記打継工具のナットに螺合すると共に、第1のアングル板と第2のアングル板との互いの水平部を離間した状態で垂直部同士を固着してこれらの水平部に前記ネジ棒の上側ネジ溝を螺入すると共に、前記第2のアングル板の水平部に垂直に螺合したボルトと前記第1のアングル板の水平部との間で長尺のアングル材から成る水平定規の水平部を挟持して固定して成り、前記コンクリートの打継部に沿って所定間隔で配置した打継工具ごとに前記キャッチ具を設けて前記水平定規を固定することができ、前記キャッチ具の夫々のネジ棒を回動することによって前記水平定規の垂直部の頂辺をコンクリートの打設高さに合わせて調整するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3の耐圧板の打継工具は、請求項1において、前記ストッパは1対の挟持枠をヒンジ構造により結合し、該挟持枠に形成した鉄筋挟持部に地盤の上に配設した鉄筋を挟持した状態で前記両側の挟持枠をボルトとナットで締結することにより、地盤の上に配設した鉄筋に固定するようにしたことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の請求項4の耐圧板の打継工具は、請求項1において、前記打継工具の垂直部材に固設した掛止部材は、その上端が前記垂直部材側に下り勾配を成することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明は、図1または図2示すように、地盤2の上に鉄筋3(横筋3a、縦筋3b)を配設してコンクリート4(図3参照)を打ち継ぐことにより所定厚さの耐圧板を形成するようにした耐圧板の打継工法に使用する耐圧板の打継工具を構成したものである。
【0015】
打継工具5は垂直部材6と水平部材7とを有する剛構造により形成され、垂直部材6の外側の高さ方向に間隔をあけて複数の掛止部材8、8…を固設すると共に垂直部材6に縦方向に固設された長尺のナット20(図6参照)に螺合したネジ棒9に水平定規10を着脱自在に固定するキャッチ具11を設けて成るものである。
【0016】
このような構成をより詳細に述べると、打継工具5を構成する垂直部材6は断面長方形の鋼材から成り、また水平部材7はパイプ鋼材から成り、これらの垂直部材6と水平部材7とをパイプ鋼材から成る斜め材12によって結合し、全体を三角形状に構成することによって剛構造を形成している。
【0017】
図6に示すように、打継工具5の垂直部材6の内方の上部には、長尺のナット20を縦方向に溶着してあり、このナット20に上方からネジ棒9を螺入するようにしている。
【0018】
また、図3に示すように、打継工具5の垂直部材6の外側には高さ方向に所定の間隔をあけて複数の掛止部材8、8…を固設している。この掛止部材8は、図6に示すように、その上端が垂直部材6側に下り勾配を成す掛止面8aを有し、掛止部材8の掛止面8aに支持用鉄筋14を上方から掛けるだけで該支持用鉄筋14が脱落しないように取り付けることができる。
【0019】
支持用鉄筋14は後述する網目部材等の仕切材15を固定するために設けられたものであり、コンクリート打設による側方への圧力を仕切材15と複数の支持用鉄筋14、14…で支持することができる。
【0020】
また、図5に示すように、キャッチ具11は夫々が断面L字形の第1のアングル板16と第2のアングル板17とを有し、第1のアングル板16は水平部16aと垂直部16bとが断面L字形に折曲され、第2のアングル板17は水平部17aと垂直部17bとが断面L字形に折曲されて成り、第1のアングル板16と第2のアングル板17の夫々の水平部16a、17aを上下に離間した状態で垂直部16b、17bが互いに固着されている。
【0021】
一方、長尺のネジ棒9には長手の途中の逆転部9cを境に右回りと左回りとを逆転させた上側ネジ溝9aと下側ネジ溝9bとが形成され、このネジ棒9の下側ネジ溝9bを垂直部材6に固定された長尺のナット20に螺合し、さらに第1のアングル板16と第2のアングル板17の夫々の水平部16a、17aに形成された雌ネジ18a、18bにネジ棒9の上側ネジ溝9aを螺入している。
【0022】
さらに、第2のアングル板17の水平部17aの端部寄りに形成した雌ネジ19にボルト21を垂直に螺合する。この場合、ボルト21の螺合強度を増すために、第2のアングル板17の水平部17aの雌ネジ19と合致するナット22を固着して、これにボルト21を螺入するようにしている。
【0023】
水平定規10は、図1または図2に示すように断面L字形の長尺のアングル材から形成され、図5に示すように、このアングル材の水平部10aをボルト21の下端部と第2のアングル板17の水平部17aとの間に挟んでボルト21を締めることにより固定するようにしている。
【0024】
上記のキャッチ具11は、図1または図2に示すように、コンクリートの打継部に沿って所定間隔で配置した打継工具5、5…ごとに設けて夫々のキャッチ具5、5…で水平定規10を固定することができ、図5に示すように、夫々のキャッチ具11のネジ棒9を回動することによって、打継工具5の垂直部材6の高さを一定にしたまま、水平定規10の垂直部10bの頂辺をコンクリートの打設高さHに合わせて調整することができる。
【0025】
なお、ネジ棒9の上端には矩形の突出部9dを形成してあり、この突出部9dにスパナ等を係合して回動することにより、ネジ棒9を容易に回動することができる。
【0026】
また、ストッパ13は、図4に示すように1対の挟持枠27、27を嵌合し、両側の挟持枠27、27に形成したボルト孔29にボルト29aを挿通してナット29bで締結したヒンジ構造により開閉自在に結合すると共に、これらの挟持枠27、27に切欠形成した鉄筋挟持部28、28に地盤2の上に配設した鉄筋3を挟持し、この状態を挟持枠27、27に形成したボルト孔30に貫通したボルト30aとナット30bで締め付けることにより、ストッパ13を鉄筋3に対して固定するようにしている。
【0027】
そして、図3に示すように、打継工具5の水平部材7の端部をストッパ13の側面に当てることにより、ストッパ13で打継工具5の水平方向の移動を規制することが可能となる。
【0028】
なお、図1において、ストッパ13はコンクリート打継部に平行に配設された横筋3aに固定しているが、図2または図3においては、打設したコンクリート4に固定される方向に延長された縦筋3bにストッパ13を固定するようにしている。このようなストッパ13の固定方法において、図3に示すものは、ストッパ13を固定した縦筋3bがコンクリート4によって固定された状態となるため、縦筋3aの移動がなく、ストッパ13の固定を定位置に保つことができる。
【0029】
また、このように打設コンクリート4方向に延長された縦筋3bにストッパ13を固定する場合、図2に示すように、打継工具5の垂直部材6の下端部に切欠溝6aを設けて該切欠溝6aで縦筋3bを跨ぐような構造とするのが好ましい。
【0030】
上記の打継工具5を用いた施工方法について説明すると、図1に示すように、土壌の上に捨てコンクリートを打設した地盤2の上にスペーサ2aを介して縦方向と横方向に配設した鉄筋3を結束線3cで結束し、コンクリートの打継部に沿って必要数の打継工具5、5…を所定間隔で配列すると共に、地盤2の上の鉄筋3(横筋3aまたは縦筋3b)の所定位置にストッパ13、13…を打継工具5、5…に対応した間隔で固定して、夫々の打継工具5の水平部材7の端部を支持することにより、打継工具5の水平移動を規制する。
【0031】
次いで、個々の打継工具5、5…の掛止部材8、8…の夫々に横方向に支持用鉄筋14、14…を掛け止めした後、これらの支持用鉄筋14、14…に仕切材15を結束線32で固定する。
【0032】
さらに、夫々の打継工具5のキャッチ具11にボルト21の締付けによって水平定規10を固定し、夫々のネジ棒9、9…の回動によって水平定規10の高さ調節を行うことにより、水平定規10の頂辺の高さによってコンクリートの打設高さを規定した状態とする。
【0033】
そして、網目部材等の仕切材15を境としてコンクリートを打ち継ぎ、打設コンクリートが固まった時点で鉄筋3に固定したストッパ13のボルト30a(ナット30b)を緩め付けることにより、ストッパ13を取り外して夫々の打継工具5、5…を撤去し、次のコンクリート打継位置に移動して、上記と同様の手順でコンクリートを打ち継いで行くこととなる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、耐圧板のコンクリート打継位置で網目部材等の仕切材を固定支持するために必要としていた従来の縦方向、横方向及び斜め方向の支持用鉄筋は、本発明において、横方向の鉄筋だけで済み、また本発明においては、打継工具の掛止部材に横方向の鉄筋を掛け止めするだけで取り付けることができるため、溶接手段をまったく使用する必要がなく、簡単且つ低コストで仕切材の設置が可能となる。
【0035】
さらに、本発明においては、鉄筋に固定したストッパを使用することにより、打継工具の水平位置を保持することができるため、従来のように斜め方向の支持用鉄筋を使用する必要がない。
【0036】
また、水平定規の高さ調節をスパナ等によるネジ棒の回動によって行うことができ、この水平定規を使用することによってコンクリートの打設高さを正確に規定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による耐圧板の打継工具を用いた打継工法を示す斜視図である。
【図2】本発明による耐圧板の打継工具を用いた打継工法を示すもので、地盤の上に設けられた鉄筋のうち打継コンクリートに固定される方向に延長された縦筋にストッパを固定した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明による耐圧板の打継工具を用いた耐圧板の打継工法の施工例を示す側面図である。
【図4】本発明におけるストッパの斜視図である。
【図5】本発明におけるキャッチ具の分解斜視図である。
【図6】本発明における打継工具の上部周辺の部材を示す斜視図である。
【図7】従来の耐圧板のコンクリート打継工法を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…地盤
3…鉄筋
3a…横筋
3b…縦筋
4…コンクリート(耐圧板)
5…打継工具
6…垂直部材
7…水平部材
8…掛止部材
8a…掛止面
9…ネジ棒
10…水平定規
11…キャッチ具
12…斜め材
13…ストッパ
14…支持用鉄筋
15…仕切材
16…第1のアングル板
17…第2のアングル板
20…ナット
21…ボルト
27…挟持枠
28…鉄筋挟持部

Claims (4)

  1. 地盤の上に鉄筋を配設してコンクリートを打ち継ぐことにより所定厚さの耐圧板を形成するようにした耐圧板の打継工法に使用する耐圧板の打継工具において、該打継工具は垂直部材と水平部材とを有する剛構造により形成され、前記垂直部材の外側の高さ方向に間隔をあけて複数の掛止部材を固設すると共に前記垂直部材に縦方向に固設された長尺のナットにネジ棒を螺合し、該ネジ棒に水平定規を着脱自在に固定するキャッチ具を設けて成り、コンクリートの打継部に前記打継工具を所定間隔で配列すると共に前記掛止部材の夫々に横方向に掛け止めした支持用鉄筋に仕切材を固定する一方、地盤の上に設けられた鉄筋にストッパを固設して該ストッパで夫々の前記打継工具の水平部材の端部を支持することにより該打継工具の水平方向の移動を規制し、前記水平定規の高さ調節を行うことによってコンクリートの打設高さを規定した状態でコンクリートを打ち継ぐようにしたことを特徴とする耐圧板の打継工具。
  2. 前記キャッチ具は、前記ネジ棒のネジ溝を長手の途中で逆転させて該ネジ棒の下側ネジ溝を前記打継工具のナットに螺合すると共に、第1のアングル板と第2のアングル板との互いの水平板部を離間した状態で垂直部同士を固着してこれらの水平部に前記ネジ棒の上側ネジ溝を螺入すると共に、前記第2のアングル板の水平部に垂直に螺合したボルトと前記第1のアングル板の水平部との間で長尺のアングル材から成る水平定規の水平部を挟持して固定して成り、前記コンクリートの打継部に沿って所定間隔で配置した打継工具ごとに前記キャッチ具を設けて前記水平定規を固定することができ、前記キャッチ具の夫々のネジ棒を回動することによって前記水平定規の垂直部の頂辺をコンクリートの打設高さに合わせて調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載の耐圧板の打継工具。
  3. 前記ストッパは1対の挟持枠をヒンジ構造により結合し、該挟持枠に形成した鉄筋挟持部に地盤の上に配設した鉄筋を挟持した状態で前記両側の挟持枠をボルトとナットで締結することにより、地盤の上に配設した鉄筋に固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の耐圧板の打継工具。
  4. 前記打継工具の垂直部材に固設した掛止部材は、その上端が前記垂直部材側に下り勾配を成することを特徴とする請求項1記載の耐圧板の打継工具。
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