JP3653603B2 - 人形頭髪用繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は人形頭髪用繊維に関する。詳細には、熱可塑性樹脂と、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性重合体が所定割合で溶融一体化され、前記熱可塑性重合体のガラス転移温度近傍の温度以上、融点未満の温度域で外部応力を加えることにより任意形状に変形自在であり、前記変形された形状が、ガラス転移温度未満の温度域で固定される機能を備えた人形頭髪用繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、人形頭髪用繊維として、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系の繊維やポリアミド及びポリプロピレン等の合成繊維が一般に使用されている。又、特公平5−76880号公報には、アクリロニトリルと、塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデンをそれぞれ所定割合で含むアクリル系重合体からなる合成繊維が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記した合成繊維を用いた頭髪にあっては、繊維の軟化点以上の高温で、しかも特殊の治具を適用しなければ、髪形を変形させることができず、幼児等がカール等を施して自由に遊ぶことができない。
本発明は、常温〜70℃以下の温度域、好適には30℃〜60℃の温度域で簡易に自在な髪形に変形させることができ、冷却により変形した髪形を固定でき、必要に応じて、前記固定した髪形を元の状態に復元させたり、別の髪形に変形できる等の繰り返しの変形、復元機能と持久性を備え、幼児等にあっても簡易に髪形を変形させて遊ぶことができる人形頭髪用繊維を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、及びポリアミド系、ポリウレタン系、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマーから選ばれる一種又は二種以上である熱可塑性樹脂(A)と、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、又は酢酸ビニル樹脂から選ばれる、ガラス転移温度が0℃以上70℃以下の範囲にあり、前記熱可塑性樹脂(A)とは化学構造が異なる熱可塑性重合体(B)の一種又は二種以上が、(A)/(B)=90/10〜20/80(重量比)の割合で溶融一体化されてなり、前記熱可塑性重合体(B)のガラス転移温度近傍の温度以上、融点未満の温度域で外部応力を加えることにより、前記応力に順応した形状に変形自在であり、ガラス転移温度未満の温度域で前記変形された形状に固定される機能を備えた、外径が30μm〜200μmのフィラメントから構成される人形頭髪用繊維を要件とする。
【0005】
前記において、溶融一体化は、具体的には、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性重合体(B)が溶融ブレンドされている形態と、熱可塑性重合体(B)が芯部を形成し、その周囲を熱可塑性樹脂(A)が鞘状に取り巻き接合された芯鞘型、或いは前記(A)及び(B)が並列に接合された接合型等の複合繊維形態とを挙げることができる。
【0006】
前記した構成のフィラメントは、溶融紡糸装置の適用による溶融紡糸により、通例、マルチフィラメント形態として製造される。これは、人形頭部に植毛ミシン等により連続的に植毛し易い形態の繊維束が構成されるからである。
ここで、モノフィラメントの断面は、円形状に限らず、星型、Y型、その他の異形状のものが有効であり、触感、嵩高性、カール加工性等により適宜選択される。
【0007】
モノフィラメントの外径は、30〜200μm、より好ましくは、40〜120μmの範囲であり、30μm未満の径のものは、細すぎて、カールの保持性が劣り、一方、200μmを越えると太くなり過ぎて、毛髪の性状を呈し難い。
【0008】
前記熱可塑性樹脂(A)としては、ポリアミド樹脂(6−ナイロン、6,6ナイロン、12−ナイロン、6,9ナイロン、612ナイロン、6−6,6共重合ナイロン、6−12共重合ナイロン、6−6,6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニルデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、ポリアミド−ポリエ−テルブロック共重合樹脂等のポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン−エチレンプロピレンラバーブロック共重合樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、或いはエチレン−酢酸ビニ系共重合体等の熱可塑性エラストマーの何れかより選ばれる重合体等を挙げることができる。
前記した樹脂のうち、繊維形成性の汎用の樹脂であり、融点又は軟化点が100℃以上の樹脂が基体樹脂としての適正な剛性を維持して形態保持性に寄与するので有効である。
【0009】
更には、初期のしなやかな柔軟性状を長期間保持するには、前記熱可塑性エラストマーを適用することが望ましい。前記エラストマーの適用により成形体が経時により、しなやかさが失われて硬質化することが回避される。
【0010】
熱可塑性重合体(B)としては、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂(未硬化物)、炭化水素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル−共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等を挙げることができる。
前記熱可塑性重合体(B)のうち、ガラス転移温度が0℃以上70℃以下、好ましくは、5℃〜65℃、より好ましくは、20℃〜65℃、更に好ましくは、30℃〜50℃のものが効果的であり、中でも、飽和ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン樹脂等が好適である。
【0011】
前記ガラス転移温度範囲にある熱可塑性重合体(B)を選択することにより、生活温度範囲の温度、或いはその近傍、或いは従来より公知の各種の髪形変形治具や、適宜の応力変形手段の適用により、任意形状の髪形に変形し、冷却により前記変形した髪形を保持する機能を有し、幼児等が簡易に髪形を変えて遊ぶことができる。
【0012】
ここで、フィラメントが溶融ブレンドされた形態にあっては、熱可塑性重合体(B)は、熱可塑性樹脂(A)とは、化学構造が異なる重合体から選ばれ、熱可塑性重合体(B)が分散状態又は分散と相溶が混在された状態が本発明の機能を有効に発現させる。化学構造が同一の樹脂同士、即ち、同質の樹脂同士の組み合わせにあっては、均質な相溶体を形成し、熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度以上における粘弾性的性状が、熱可塑性樹脂(A)により適正にコントロールされることなくそのまま発現されるので、成形フィラメント相互を重ねた状態で放置したとき等には、相互にくっつき易くなりがちであり、一方、ガラス転移温度未満の温度域における固定化機能も相対的に低下することになる。
【0013】
熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性重合体(B)のブレンドする割合はA/B=95/5〜20/80(重量比)が有効であり、好ましくは、90/10〜50/50であり、熱可塑性重合体(B)の重量が増加するに従い粘性が大となり、90重量%を越えると、粘性が高すぎて粘着性が生じ、成形体同士を密接させて放置するとくっつき等の不具合を生じ、一方、5重量%未満の系では、変形処理時における曲げ弾性率の低下による作用が不十分であり、粘弾性が十分に発現されず所期の変形性を生じ難い。
ここで、前記(A)及び(B)は、それぞれが単一でなく、複数を併用してもよい。
【0014】
前記フィラメントを形成する原料樹脂の1kg当り、一般顔料の0.05〜1.0g、蛍光顔料の1〜20g、マイクロカプセル顔料の10〜100g等をブレンドして成形し、彩色したフィラメントを構成することができる。
【0015】
更には、従来より汎用の光安定剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を原料樹脂中に適宜配合してフィラメントを形成したり、光安定剤を固着剤に含有させた光安定剤層を表面に設けることができる。
【0016】
又、従来より汎用の各種可塑剤、例えば、フタル酸系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸エステル系、エポキシ系、フェノール系、トリメリット酸系等を1〜30重量%配合して、変形可能温度を低下させたり、柔軟性を付与することができる。
【0017】
更に、加工性、物性等を改善するために、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、タルク、その他の着色顔料等を添加できる。
【0018】
尚、前記した熱変色性マイクロカプセル顔料は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む熱変色性材料をマイクロカプセルに内包させたものが有効であり、該熱変色性材料としては、本出願人の提案による特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公平1−17154号公報等に記載されている熱変色性材料、或いは、特開平7−186546号公報に記載されている、発色時には蛍光性を有する黄色、黄橙色、橙色、赤橙色、赤色等の高発色濃度且つ明るさに富む色を呈し、消色時には、色残りがなく無色を呈する、(イ)ピリジン系、キナゾリン系、及びビスキナゾリン系から選ばれる電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)前記電子供与性呈色性有機化合物に対して電子受容性である化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体である化合物の3成分を必須成分とする相溶体からなる熱変色性材料等、或いは、本出願人が提案した特公平4−17154号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性熱変色性材料、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する熱変色性材料も有効である。
【0019】
又、本出願人が提案した特公平1−29398号公報に記載した如き、温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の熱変色性材料が有効である。
【0020】
前記した熱変色性材料は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包して使用するのが最も好ましい。それは、種々の使用条件において熱変色性材料は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径1〜30μm、5〜15μmの範囲のものを適用できる。
【0021】
又、前記マイクロカプセル顔料は、固着剤を含む媒体中に分散されて、インキ、塗料などの色材として適用され、コーティング或いは吹き付け加工等によりフィラメント表面に可逆熱変色層を形成することもできる。
【0022】
前記におけるマイクロカプセル顔料は、コーティング樹脂層中に0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%含有させることができる。0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると、過剰であり、消色状態にあって残色が生じることもある。
【0023】
本発明の人形頭髪用繊維において、熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性重合体(B)のガラス転移温度以上における粘弾性状に転移した際にも、樹脂自体の性状が維持されており、粘着性が適宜に抑制されて、成形体同士の密着時におけるくっつきによるトラブルの回避に寄与する。
【0024】
前記した構成において、熱可塑性エラストマーがポリアミド系エラストマーであり、熱可塑性重合体(B)がガラス転移温度が0℃〜50℃の飽和ポリエステル樹脂が5〜80重量部、好ましくは、ポリアミド系エラストマー/飽和ポリエステル樹脂=80/20〜30/70(重量比)、更に好ましくは、50/50〜70/30(重量比)の範囲が有効である。前記範囲に特定することにより、ポリアミド自体のもつ高強度、触感、適宜の吸湿性が適正に発現され、頭髪との擬似性を満たすと共に所期の変形−固定機能が効果的に発現される。更には、前記した擬似性と変形−固定機能が経時的にも安定的に保持される。
【0025】
前記構成において、熱可塑性重合体(B)は、ガラス転移温度以下の温度域にあっては、比較的剛性的性状を呈しているが、ガラス転移温度以上では粘弾性的性状に変化し、曲げ弾性率が低下することにより、本来剛性的な熱可塑性重合体(B)の剛性と曲げ弾性率が相対的に低下して、外部応力により任意の形状への変形自在性が得られ、前記変形した形状は、ガラス転移温度以下の温度域で剛性的性状に復帰し固定される。
【0026】
本発明は、前記したとおり、熱可塑性樹脂(A)と、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性重合体(B)の組み合わせによる一体化により、熱可塑性樹脂(A)或いは熱可塑性重合体(B)の各単体では発現できない、特定温度域における変形自在性と、前記温度域で変形した形状を特定温度域で固定する機能を備え、しかも前記した変形−固定性が生活温度範囲の温度或いは日常的な加熱、冷熱手段により簡易に達成でき、更に前記賦形された髪形をガラス転移温度以上の温度域で解除して、別の任意の髪形に変形−固定できるといった、繰り返しの実用に耐える持久性を備えた人形頭髪用繊維を与える。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明人形頭髪用繊維を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例中の配合は重量部で示す。
【0028】
実施例1
熱可塑性樹脂(A)として共重合ポリアミド樹脂〔商品名:ダイアミドN1901、ダイセルヒュルス(株)製、融点155℃〕400部、熱可塑性重合体(B)としてポリエステル樹脂〔商品名:ポリエスターTP−217、日本合成(株)製、ガラス転移点40℃〕200部を混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して、24孔の吐出孔を有するダイスから180℃で紡出し、延伸処理することにより、外径約80μmのフィラメントが24本からなるマルチフィラメントを得た。
前記マルチフィラメントをプラスチック材からなる人形の頭部に公知の手段により植毛し、胴体部と組み合わせて人形玩具を構成した。
【0029】
前記人形玩具の頭髪を直径9mmの円筒状のヘアーカーラーに巻き付け、42℃のオーブン中で3分間加温し、次いで25℃の室温下で放置した後、カーラーを外すと、頭髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、外力を加えない限り、その形状を保持した。
【0030】
次に、前記カール状態の頭髪を直線状態に伸ばした形で固定し、再び42℃のオーブン中で加温した後、室温下で放置し、固定具を取り去ると頭髪は初期のストレート状態に戻った。
【0031】
又、固定具を使わなくとも、42℃のオーブン中で加温した後、速やかに櫛、ブラシ等で頭髪を伸ばしながらブラッシングすることによりストレート状態に復した。
【0032】
前記形状変化は、約42℃以上で変形、約30℃以下での固定が繰返し可能で、所望の形状をとることができた。この変形、固定温度は概略、使用したポリエステル樹脂のガラス転移温度を境に変化するものであった。
【0033】
実施例2
熱可塑性樹脂(A)としてイソフタル酸35モル%変性ポリブチレンテレフタレート(融点168℃)300部、熱可塑性重合体(B)としてアクリル樹脂〔商品名:ダイヤナールBR−117、三菱レーヨン(株)製、ガラス転移温度35℃〕150部を混合し、実施例1と同様にして人形頭髪用繊維を得た。
【0034】
前記得られた繊維について、実施例1と同様の直径9mmの円筒状のヘアーカ−ラーを適用し、同様の試験を行ったところ、変形温度は38℃であり、変形後20℃の室温に放置することにより変形形状が固定された。アクリル樹脂のガラス転移温度35℃を境に変形−固定が繰り返し可能であった。
【0035】
実施例3
可逆性熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン2部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−オクタン6部、カプリン酸ステアリル50部からなる可逆性熱変色性材料をエポキシ樹脂/アミンの界面重合法によってマイクロカプセル化して平均粒子径10〜20μmの可逆性熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
得られた顔料は約34℃以上で無色、約28℃以下で桃色に可逆的に変化した。
【0036】
前記マイクロカプセル顔料を乾燥、脱水したもの10部と、実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物300部を混合し、180℃でエクストルーダーにて溶融混合し、感温変色性熱可塑性樹脂組成物を得た。
前記組成物は概略34℃以上で無色、28℃以下で桃色に可逆的に変化した。
【0037】
続いて、実施例1と同様の方法により、前記樹脂組成物を汎用の溶融紡糸装置を使用して、24孔の吐出孔を有するダイスから180℃で紡出し、延伸処理することにより、外径約80μmのフィラメントが24本からなるマルチフィラメントを得、これを人形頭髪用繊維として供した。
【0038】
前記桃色の頭髪を頂点から頂点が1cm周期の波形をした板に挟み込んで固定し、42℃のオーブンに入れると頭髪は桃色から無色に変化した。3分間加温した後、25℃の室温下に放置すると頭髪は再び桃色に発色し、波形の板を取り外すと頭髪は、波形の板と同一周期にウエーブした状態となり、外力を加えない限り、その状態を保持した。
【0039】
次いで、このウエーブした頭髪を直線状態に伸ばした形で固定し、再び42℃のオーブン中で加温すると無色に変化し、室温下で放置すると桃色に発色すると共に固定具を取り去った時には、初期のストレート状態に復した。
【0040】
前記変形−固定は、約42℃以上で変形、約30℃以下での固定が繰り返し可能で、これは概略使用したポリエステル樹脂のガラス転移温度を境に変化するものであった。
【0041】
実施例4
熱可塑性樹脂(A)として、ポリアミド系熱可塑性エラストマー〔商品名:ダイアミドE62、ダイセル.ヒュルス(株)製〕400部、熱可塑性重合体(B)として、ポリエステル樹脂〔商品名:エリーテルUE−3500、ユニチカ(株)製、ガラス転移点30℃〕300部を混合し、190℃でエクストルーダーにて溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
前記組成物を汎用の溶融紡糸装置を使用して、20孔の吐出孔を有するダイスから、190℃で紡出し、延伸処理することにより、直径約100μmのフィラメント20本からなるマルチフィラメントを得た。
前記マルチフィラメントを人形の頭部に植毛し、胴体部と組み合わせて人形玩具とした。
【0042】
前記の頭髪を直径9mmのヘアーカーラーに巻き付け、25℃の室温下で5分間保持した。その後、カーラーを外すと、頭髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、数十分間その状態を保った後、徐々にカールが解除され、数時間〜1日放置により元のストレート状態に復した。
【0043】
又、カーラーに巻いた状態で35℃のオーブン中で3分間加温し、次いで20℃の室温下で放置した後、カーラーを外すとヘアーカーラーの径と同一径でカールした状態となり、外力を加えない限り、その形状を保持した。
次に、前記カール状態の頭髪を直線状態に伸ばした形で固定し、再び35℃のオーブン中で加温した後、20℃の室温下で放置し、固定具を取り去ると頭髪は初期のストレート状態に戻った。
【0044】
又、前記35℃でカールさせた頭髪を25〜30℃の室温下で放置しておくと数時間〜1日放置により概略元のストレート状態に自然に戻った。
【0045】
実施例5
鞘材料として、ポリアミド樹脂〔商品名:リルサンAMNO、東レ(株)製、融点180℃〕、芯材料として、飽和ポリエステル樹脂〔商品名:バイロン103、東洋紡(株)製、ガラス転移点47℃〕とを重量比50/50で使用し、汎用の複合繊維紡糸装置を使用して8孔の吐出孔を有するダイスから、200℃で紡出することにより、芯−鞘構造の直径70μmの複合フィラメントからなるマルチフィラメントを得た。
【0046】
前記マルチフィラメントを、直径9mmの円筒状のヘアーカーラーに巻き付け、50℃のオーブン中で3分間加温し、次いで35℃以下の室温下で放置した後、カーラーを外すと、頭髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、外力を加えない限り、その形状を保持した。
【0047】
次に、前記カール状態の頭髪を直線状態に伸ばした形で固定し、再び50℃のオーブン中で加温した後、室温下で放置し、固定具を取り去ると頭髪は初期のストレート状態に戻った。
【0048】
又、固定具を使わなくとも、50℃のオーブン中で加温した後、速やかに櫛、ブラシ等で頭髪を伸ばしながらブラッシングすることによりストレート状態に復した。
【0049】
前記変形−固定は、約50℃以上で変形、約35℃以下での固定が繰返し可能で、所望の形状をとることができた。
【0050】
【発明の効果】
本発明の人形頭髪用繊維は、常温〜70℃以下の温度域、好適には30℃〜60℃の温度域で簡易に自在な髪形に変形させることができ、冷却により変形した髪形を固定でき、必要に応じて、前記固定した髪形を元の状態に復元させたり、別の髪形に変形できる等の繰り返しの持久性を備え、幼児等にあっても簡易に髪形を変形させて遊ぶことができる人形頭髪用繊維を提供することができる。
Claims (8)
- ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、及びポリアミド系、ポリウレタン系、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマーから選ばれる一種又は二種以上である熱可塑性樹脂(A)と、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂(未硬化物)、炭化水素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂から選ばれる、ガラス転移温度が0℃以上70℃以下の範囲にあり、前記熱可塑性樹脂(A)とは化学構造が異なる熱可塑性重合体(B)の一種又は二種以上が、(A)/(B)=90/10〜20/80(重量比)の割合で溶融一体化されてなり、前記熱可塑性重合体(B)のガラス転移温度近傍の温度以上、融点未満の温度域で外部応力を加えることにより、前記応力に順応した形状に変形自在であり、ガラス転移温度未満の温度域で前記変形された形状に固定される機能を備えた、外径が30μm〜200μmのフィラメントから構成される人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以上70℃以下の範囲にある熱可塑性重合体(B)は、溶融ブレンドされて一体化されたフィラメントを構成している請求項1記載の人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以上70℃以下の範囲にある熱可塑性重合体(B)は、相互が融着されて一体化した複合繊維形態のフィラメントを構成してなる請求項1記載の人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド系、ポリウレタン系、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系、又はエチレン−酢酸ビニル系共重合体の何れかより選ばれる熱可塑性エラストマーである請求項1乃至3のいずれかに記載の人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性重合体(B)は、分散状態又は分散と相溶状態が混在された状態で存在してなる請求項1或いは2のいずれかの人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性樹脂(A)は、融点又は軟化点が100℃以上の樹脂から選ばれる請求項1乃至5のいずれかの人形頭髪用繊維。
- 熱可塑性樹脂(A)はポリアミド系エラストマーであり、熱可塑性重合体(B)が、0℃〜50℃のガラス転移温度を有する飽和ポリエステル樹脂であり、前記飽和ポリエステル樹脂が全樹脂の5〜80重量部の割合を占めてなる請求項1乃至5のいずれかの人形頭髪用繊維。
- 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が分散状態に含有されてなる請求項1乃至7のいずれかの人形頭髪用繊維。
Priority Applications (5)
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JP30125696A JP3653603B2 (ja) | 1996-10-24 | 1996-10-24 | 人形頭髪用繊維 |
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