JP2004024321A - 人形用毛髪及びそれを用いた人形類 - Google Patents
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Abstract
【課題】人形に植毛した直後から頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる簡易性及び利便性に優れた人形用毛髪及びそれを用いた人形を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)が溶融一体化されてなる人形用毛髪、或いは、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)からなり、芯部と鞘部から構成される人形用毛髪の上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で支持体2に固定し、該固定具3の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具4で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具4を取り外し、支持体2を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪1及びそれを用いた人形類。
【選択図】 図3
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)が溶融一体化されてなる人形用毛髪、或いは、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)からなり、芯部と鞘部から構成される人形用毛髪の上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で支持体2に固定し、該固定具3の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具4で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具4を取り外し、支持体2を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪1及びそれを用いた人形類。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人形用毛髪及びそれを用いた人形類に関する。更に詳細には、柔軟性に優れ、人形類への植毛に適した人形用毛髪及びそれを用いた人形類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アクリロニトリルや塩化ビニルを用いた人形用毛髪(特公平5−76880号公報)、ポリプロピレン或いはナイロンを用いた人形用毛髪が汎用されている。
前記した従来の人形用毛髪は光沢感やカール性を改良したものである。しかしながら、前記人形用毛髪は、いずれも初期の柔軟性に欠けており、人形の頭部に植毛すると逆立った状態になり、頭部の形状に沿って垂れ下がった状態を形成するためには熱処理を施す必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来の人形用毛髪の不具合を解消しようとするものであって、植毛直後から頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる利便性に優れた人形用頭髪及びそれを用いた人形類を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)が溶融一体化されてなる人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪、或いは、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)からなり、芯部と鞘部から構成される人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪を要件とする。更には、前記人形用毛髪を植毛してなる人形類を要件とする。
【0005】
本発明は、図1のように頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる特性を備えた人形用頭髪である。
前記した特性を満たすためには、下記(1)から(8)の方法を行って、折り曲げ部の屈曲角が90°以上であれば前記人形類への植毛に関して柔軟性を満たし、利便性を備えたものであるといえる(図3、4参照)。
90°未満では植毛した際、図2のように毛髪が跳ね上がって商品の見栄えを損なうと共に、熱処理を施す手間がかかる。
(1)人形用毛髪1の上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で支持体2に固定する。
(2)固定した毛髪1を固定具3の曲面に沿って180°折り曲げる。
(3)折り曲げた毛髪を保持具4で押さえる(保持する)。
(4)35℃で1分間放置する。
(5)23℃で1分間放置する。
(6)保持具3を取り外す(毛髪の保持を解除する)。
(7)支持体2を地面に対して垂直状態に保つ。
(8)折り曲げた部分の屈曲角(α)を測定する。
なお、(7)については、それ以前の段階で垂直状態を保つ場合は必要としない。
【0006】
前記熱可塑性樹脂(A)としては、ポリアミド樹脂(6−ナイロン、6,6ナイロン、12−ナイロン、6,9ナイロン、6,12ナイロン、6−6,6共重合ナイロン、6−12共重合ナイロン、6−6,6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合樹脂等のポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン−エチレンプロピレンラバーブロック共重合樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、或いはエチレン−酢酸ビニル系共重合体等の熱可塑性エラストマーの何れかより選ばれる重合体等を挙げることができる。
前記した樹脂のうち、繊維形成性の汎用の樹脂であり、融点又は軟化点が100℃以上の樹脂が基体樹脂としての適正な剛性を維持して形態保持性に寄与するので有効である。
更に、初期のしなやかな柔軟性状を長期間保持するには、前記熱可塑性エラストマーを適用することが望ましい。前記エラストマーの適用により成形体が経時により、しなやかさが失われて硬質化することが回避される。
【0007】
熱可塑性樹脂(B)としては、ガラス転移温度が40℃以下の樹脂が用いられ、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂(未硬化物)、炭化水素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル−共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等を例示でき、特に好ましくは飽和ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン樹脂等が用いられる。
前記ガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(B)を選択することにより、生活温度範囲の温度、或いはその近傍の温度域で柔軟性を保持することができる。
【0008】
前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の溶融一体化は、具体的には、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が溶融ブレンドされた形態が挙げられる。
人形用毛髪が溶融ブレンドされた形態にあっては、熱可塑性樹脂(B)は、熱可塑性樹脂(A)とは化学構造が異なる樹脂から選ばれ、熱可塑性樹脂(B)が分散状態又は分散と相溶が混在された状態が本発明の機能を有効に発現させる。化学構造が同一の樹脂、即ち、同質の樹脂同士の組み合わせにあっては、均質な相溶体を形成し、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)における特性が熱可塑性樹脂(A)により適正にコントロールされることなく、柔軟な頭髪を形成でき難くなる。
【0009】
熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)のブレンドする割合はA/B=95/5〜10/90であり、熱可塑性樹脂(B)の重量が増加するに従い粘性が大となり、90重量%を越えると、毛髪に必要な樹脂強度が得られ難くなるため、成形時や使用時に毛髪が破断し易くなる。また、5重量%未満の系では柔軟性に乏しく、所望の効果が得られ難くなる。
ここで、前記(A)及び(B)は、それぞれが単一でなく、複数を併用してもよい。
【0010】
前記したとおり、熱可塑性樹脂(A)と、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(B)の組み合わせによる一体化により、熱可塑性樹脂(A)或いは熱可塑性樹脂(B)の各単体では発現できない柔軟性を備えた人形用毛髪を与える。
【0011】
また、熱可塑性樹脂(B)が芯部を形成し、その周囲を熱可塑性樹脂(A)が鞘状に取り巻き接合された芯鞘型、或いは前記(A)及び(B)が並列に接合された接合型等の複合繊維形態の場合、芯部の熱可塑性樹脂(B)の含有量が5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%であり、鞘部における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比が下記式(1)を満たし、且つ、芯部と鞘部の重量比が式(2)を満たすことが好ましい。
鞘部における(A)/(B)=100/0〜50/50(重量%)(1)
芯部/鞘部=50/50〜90/10(重量%) (2)
これにより、複合繊維形成性(生産性)と柔軟性を満たすと共に毛髪相互の密接放置時のくっつき(結着)のない実用的機能を備えた芯鞘型人形用毛髪を与える。
前記芯部の熱可塑性樹脂(B)が95重量%を越えるとフィラメント成形機からの吐出性及び延伸成形性が悪化し、適正な芯部を形成し難くなり、5重量%未満ではフィラメントの初期柔軟性に乏しく、本発明の所望の効果が得られ難くなる。熱可塑性樹脂(B)は、より好ましくは、50〜90重量%の範囲である。式(1)において熱可塑性樹脂(B)が50重量%を超えると、粘着性の鞘表面を形成するので、毛髪相互の密接放置時におけるくっつき(結着)が発生し、実用性が阻害される。0〜50重量%の範囲が有効であり、芯部の熱可塑性樹脂(B)の構成比(5〜95重量%)との相互関係により決定される。
式(2)は、芯鞘型の複合繊維の形成性に関するものであり、鞘部の構成比が10重量%未満の系では芯部とのバランスに欠け、繊維形成性及び実用性を満足させ難い。成形される毛髪の外径との関係にも依存するが、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲である。
前記(1)、(2)式を満足させることにより、繊維形成性(生産性)及び実用的機能性を備えた、所望外径の芯鞘型の人形用毛髪を与える。
【0012】
前記人形用毛髪のモノフィラメントの外径は30〜200μm、より好ましくは50〜100μmの範囲である。30μm未満では細すぎるため、毛髪同士が絡まり易く、しかも、柔軟性が過大になるため、商品の見栄えを損なう。
200μmを越えると太くなり過ぎて、毛髪の性状を示し難くなる。
【0013】
前記した人形用毛髪は、溶融紡糸装置の適用による溶融紡糸により、モノフィラメント形態又はマルチフィラメント形態として製造される。
ここで、モノフィラメントの断面は、円形状に限らず、星型、Y型、その他の異形状のものも有効であり、触感、嵩高性、カール加工性等により適宜選択される。
【0014】
前記した人形用毛髪は、人形類として、人形又は動物玩具に植毛することができ、具体的には、人形の頭部、顔部、胴部、手足部等の適宜部分、動物玩具の体毛等に用いることができ、前記人形類に毛髪を植毛する方法としては、毛髪の外径が比較的細い場合、植毛ミシン等により植毛したり、前記毛髪を複数本束ねることのできる固定片を用いて、毛髪の端部を固定し、前記固定片を人形類の植毛する部分に固定する方法等が挙げられる。
【0015】
前記毛髪を形成する原料樹脂1kgに対し、一般顔料の0.05〜1.0g、蛍光顔料の1〜20g、或いは、可逆熱変色性材料10〜100g等をブレンドして成形し、彩色した毛髪を構成することができる。
前記熱変色性材料としては、本出願人の提案による特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公平1−17154号公報、特開平7−186546号公報等に記載されている、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物、特公平4−17154号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性材料、特公平1−29398号公報に記載した温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物等が挙げられる。
なお、前記した組成物をマイクロカプセルに内包して使用することにより、種々の使用条件において可逆熱変色性材料は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができ、化学的及び物理的に安定な顔料を構成できる。
尚、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の粒子径は0.1〜30μm、好ましくは1〜15μmの範囲のものを適用できる。
【0016】
又、前記マイクロカプセル顔料は、バインダーを含む媒体中に分散されて、インキ、塗料などの色材として適用され、コーティング或いは吹き付け加工等により毛髪表面に可逆熱変色層を形成することもできる。
前記におけるマイクロカプセル顔料は、可逆熱変色層中に0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%含有させることができる。0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると、過剰であり、消色状態にあって残色が生じることもある。
【0017】
また、芯鞘型の人形用毛髪にあって、前記した顔料類等の添加に関しては、芯部に限らず、芯、鞘の両方、或いは鞘部のみに添加してもよい。特に、鞘部に顔料やフィラーが配合された場合、透明性や表面の光沢を低減させることになるが、成形された毛髪相互の密接による結着や、エラストマー特有のゴム質的触感を回避することができる。
【0018】
更には、従来より汎用の光安定剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を原料樹脂中に適宜配合して毛髪を形成したり、光安定剤を固着剤に含有させた光安定剤層を表面に設けることができる。
又、従来より汎用の各種可塑剤、例えば、フタル酸系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸エステル系、エポキシ系、フェノール系、トリメリット酸系等を1〜30重量%配合して柔軟性を付与することもできる。
更に、加工性、物性等を改善するために、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、タルク、その他の着色顔料等を添加することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明人形用毛髪及びそれを用いた人形類を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例中の配合は重量部を示す。
【0020】
実施例1(図1、3、4参照)
熱可塑性樹脂(A)として共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)600部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂400部を混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪1)を得た。
【0021】
柔軟性試験
前記人形用毛髪1を50束重ね、200mmの長さにカットした後、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で台紙(支持体2)に固定した。
毛髪1の上端部を固定具3の曲面に沿って180°折り曲げ、保持具4で折り曲げた毛髪を押さえた(図3)。
この状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間の条件で放置した後、保持具4を取り外し、支持体2を地面に対して垂直な状態に保持し、折り曲げ部が自重で垂れ下がる角度を測定する(この際、初期のストレートな状態を0°、折り曲げた状態を180°とする)。
前記毛髪の屈曲角(α)は120°を示した(図4)。
【0022】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた(図1)。
【0023】
実施例2
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドエラストマー(融点160℃)700部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度40℃のポリエステル樹脂と−20℃のポリエステル樹脂の1:1混合物(混合後のTg=10℃)300部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は150°を示した。
【0024】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0025】
実施例3
熱可塑性樹脂(A)としてイソフタル酸35モル%変性ポリブチレンテレフタレート(融点168℃)600部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度35℃のアクリル樹脂400部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は110°を示した。
【0026】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0027】
実施例4
熱可塑性樹脂(A)として共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)400部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂600部との混合物を芯部成形用押出し機に、前記と同様の熱可塑性樹脂(A)700部、及び、熱可塑性樹脂(B)300部の混合物を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=8/2(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は170°を示した。
【0028】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0029】
実施例5
30℃以下で青色、32℃以上で無色に可逆的に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料30部、分散剤10部、熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドエラストマー(融点160℃)660部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度40℃のポリエステル樹脂と−20℃のポリエステル樹脂の1:1混合物(混合後のTg=10℃)300部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は150°を示した。
【0030】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
なお、前記頭髪は30℃以下では青色を呈し、32℃以上で無色になり、この様相変化が繰り返し行うことができた。
【0031】
比較例1
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(荷重たわみ温度130℃、曲げ弾性率1600MPa)を汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は20°を示した。
【0032】
前記毛髪を人形の頭部に植毛すると、植毛直後から頭髪が逆立った状態になり、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングしても再び毛髪が立ち上がり、自然な髪型の人形は得られなかった。
【0033】
比較例2
熱可塑性樹脂として共重合ナイロン樹脂(融点175℃)を汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は30°を示した。
【0034】
前記毛髪を人形の頭部に植毛すると、植毛直後から頭髪が逆立った状態になり、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングしても再び毛髪が立ち上がり、自然な髪型の人形は得られなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の人形用毛髪は、人形に植毛した直後から頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる簡易性及び利便性に優れた人形用毛髪及びそれを用いた人形を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人形用毛髪を人形の頭部に植毛した状態を示す説明図である。
【図2】従来の人形用毛髪を人形の頭部に植毛した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の従来の人形用毛髪を用いて柔軟性試験を行う状態を示す説明図である。
【図4】本発明の従来の人形用毛髪を用いて柔軟性試験を行なって屈曲角を測定する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 人形用毛髪
2 支持体
3 固定具
4 保持具
【発明の属する技術分野】
本発明は人形用毛髪及びそれを用いた人形類に関する。更に詳細には、柔軟性に優れ、人形類への植毛に適した人形用毛髪及びそれを用いた人形類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アクリロニトリルや塩化ビニルを用いた人形用毛髪(特公平5−76880号公報)、ポリプロピレン或いはナイロンを用いた人形用毛髪が汎用されている。
前記した従来の人形用毛髪は光沢感やカール性を改良したものである。しかしながら、前記人形用毛髪は、いずれも初期の柔軟性に欠けており、人形の頭部に植毛すると逆立った状態になり、頭部の形状に沿って垂れ下がった状態を形成するためには熱処理を施す必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来の人形用毛髪の不具合を解消しようとするものであって、植毛直後から頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる利便性に優れた人形用頭髪及びそれを用いた人形類を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)が溶融一体化されてなる人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪、或いは、熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)からなり、芯部と鞘部から構成される人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪を要件とする。更には、前記人形用毛髪を植毛してなる人形類を要件とする。
【0005】
本発明は、図1のように頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる特性を備えた人形用頭髪である。
前記した特性を満たすためには、下記(1)から(8)の方法を行って、折り曲げ部の屈曲角が90°以上であれば前記人形類への植毛に関して柔軟性を満たし、利便性を備えたものであるといえる(図3、4参照)。
90°未満では植毛した際、図2のように毛髪が跳ね上がって商品の見栄えを損なうと共に、熱処理を施す手間がかかる。
(1)人形用毛髪1の上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で支持体2に固定する。
(2)固定した毛髪1を固定具3の曲面に沿って180°折り曲げる。
(3)折り曲げた毛髪を保持具4で押さえる(保持する)。
(4)35℃で1分間放置する。
(5)23℃で1分間放置する。
(6)保持具3を取り外す(毛髪の保持を解除する)。
(7)支持体2を地面に対して垂直状態に保つ。
(8)折り曲げた部分の屈曲角(α)を測定する。
なお、(7)については、それ以前の段階で垂直状態を保つ場合は必要としない。
【0006】
前記熱可塑性樹脂(A)としては、ポリアミド樹脂(6−ナイロン、6,6ナイロン、12−ナイロン、6,9ナイロン、6,12ナイロン、6−6,6共重合ナイロン、6−12共重合ナイロン、6−6,6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合樹脂等のポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン−エチレンプロピレンラバーブロック共重合樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、或いはエチレン−酢酸ビニル系共重合体等の熱可塑性エラストマーの何れかより選ばれる重合体等を挙げることができる。
前記した樹脂のうち、繊維形成性の汎用の樹脂であり、融点又は軟化点が100℃以上の樹脂が基体樹脂としての適正な剛性を維持して形態保持性に寄与するので有効である。
更に、初期のしなやかな柔軟性状を長期間保持するには、前記熱可塑性エラストマーを適用することが望ましい。前記エラストマーの適用により成形体が経時により、しなやかさが失われて硬質化することが回避される。
【0007】
熱可塑性樹脂(B)としては、ガラス転移温度が40℃以下の樹脂が用いられ、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂(未硬化物)、炭化水素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル−共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等を例示でき、特に好ましくは飽和ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン樹脂等が用いられる。
前記ガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(B)を選択することにより、生活温度範囲の温度、或いはその近傍の温度域で柔軟性を保持することができる。
【0008】
前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の溶融一体化は、具体的には、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が溶融ブレンドされた形態が挙げられる。
人形用毛髪が溶融ブレンドされた形態にあっては、熱可塑性樹脂(B)は、熱可塑性樹脂(A)とは化学構造が異なる樹脂から選ばれ、熱可塑性樹脂(B)が分散状態又は分散と相溶が混在された状態が本発明の機能を有効に発現させる。化学構造が同一の樹脂、即ち、同質の樹脂同士の組み合わせにあっては、均質な相溶体を形成し、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)における特性が熱可塑性樹脂(A)により適正にコントロールされることなく、柔軟な頭髪を形成でき難くなる。
【0009】
熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)のブレンドする割合はA/B=95/5〜10/90であり、熱可塑性樹脂(B)の重量が増加するに従い粘性が大となり、90重量%を越えると、毛髪に必要な樹脂強度が得られ難くなるため、成形時や使用時に毛髪が破断し易くなる。また、5重量%未満の系では柔軟性に乏しく、所望の効果が得られ難くなる。
ここで、前記(A)及び(B)は、それぞれが単一でなく、複数を併用してもよい。
【0010】
前記したとおり、熱可塑性樹脂(A)と、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(B)の組み合わせによる一体化により、熱可塑性樹脂(A)或いは熱可塑性樹脂(B)の各単体では発現できない柔軟性を備えた人形用毛髪を与える。
【0011】
また、熱可塑性樹脂(B)が芯部を形成し、その周囲を熱可塑性樹脂(A)が鞘状に取り巻き接合された芯鞘型、或いは前記(A)及び(B)が並列に接合された接合型等の複合繊維形態の場合、芯部の熱可塑性樹脂(B)の含有量が5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%であり、鞘部における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比が下記式(1)を満たし、且つ、芯部と鞘部の重量比が式(2)を満たすことが好ましい。
鞘部における(A)/(B)=100/0〜50/50(重量%)(1)
芯部/鞘部=50/50〜90/10(重量%) (2)
これにより、複合繊維形成性(生産性)と柔軟性を満たすと共に毛髪相互の密接放置時のくっつき(結着)のない実用的機能を備えた芯鞘型人形用毛髪を与える。
前記芯部の熱可塑性樹脂(B)が95重量%を越えるとフィラメント成形機からの吐出性及び延伸成形性が悪化し、適正な芯部を形成し難くなり、5重量%未満ではフィラメントの初期柔軟性に乏しく、本発明の所望の効果が得られ難くなる。熱可塑性樹脂(B)は、より好ましくは、50〜90重量%の範囲である。式(1)において熱可塑性樹脂(B)が50重量%を超えると、粘着性の鞘表面を形成するので、毛髪相互の密接放置時におけるくっつき(結着)が発生し、実用性が阻害される。0〜50重量%の範囲が有効であり、芯部の熱可塑性樹脂(B)の構成比(5〜95重量%)との相互関係により決定される。
式(2)は、芯鞘型の複合繊維の形成性に関するものであり、鞘部の構成比が10重量%未満の系では芯部とのバランスに欠け、繊維形成性及び実用性を満足させ難い。成形される毛髪の外径との関係にも依存するが、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲である。
前記(1)、(2)式を満足させることにより、繊維形成性(生産性)及び実用的機能性を備えた、所望外径の芯鞘型の人形用毛髪を与える。
【0012】
前記人形用毛髪のモノフィラメントの外径は30〜200μm、より好ましくは50〜100μmの範囲である。30μm未満では細すぎるため、毛髪同士が絡まり易く、しかも、柔軟性が過大になるため、商品の見栄えを損なう。
200μmを越えると太くなり過ぎて、毛髪の性状を示し難くなる。
【0013】
前記した人形用毛髪は、溶融紡糸装置の適用による溶融紡糸により、モノフィラメント形態又はマルチフィラメント形態として製造される。
ここで、モノフィラメントの断面は、円形状に限らず、星型、Y型、その他の異形状のものも有効であり、触感、嵩高性、カール加工性等により適宜選択される。
【0014】
前記した人形用毛髪は、人形類として、人形又は動物玩具に植毛することができ、具体的には、人形の頭部、顔部、胴部、手足部等の適宜部分、動物玩具の体毛等に用いることができ、前記人形類に毛髪を植毛する方法としては、毛髪の外径が比較的細い場合、植毛ミシン等により植毛したり、前記毛髪を複数本束ねることのできる固定片を用いて、毛髪の端部を固定し、前記固定片を人形類の植毛する部分に固定する方法等が挙げられる。
【0015】
前記毛髪を形成する原料樹脂1kgに対し、一般顔料の0.05〜1.0g、蛍光顔料の1〜20g、或いは、可逆熱変色性材料10〜100g等をブレンドして成形し、彩色した毛髪を構成することができる。
前記熱変色性材料としては、本出願人の提案による特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公平1−17154号公報、特開平7−186546号公報等に記載されている、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物、特公平4−17154号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性材料、特公平1−29398号公報に記載した温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物等が挙げられる。
なお、前記した組成物をマイクロカプセルに内包して使用することにより、種々の使用条件において可逆熱変色性材料は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができ、化学的及び物理的に安定な顔料を構成できる。
尚、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の粒子径は0.1〜30μm、好ましくは1〜15μmの範囲のものを適用できる。
【0016】
又、前記マイクロカプセル顔料は、バインダーを含む媒体中に分散されて、インキ、塗料などの色材として適用され、コーティング或いは吹き付け加工等により毛髪表面に可逆熱変色層を形成することもできる。
前記におけるマイクロカプセル顔料は、可逆熱変色層中に0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%含有させることができる。0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると、過剰であり、消色状態にあって残色が生じることもある。
【0017】
また、芯鞘型の人形用毛髪にあって、前記した顔料類等の添加に関しては、芯部に限らず、芯、鞘の両方、或いは鞘部のみに添加してもよい。特に、鞘部に顔料やフィラーが配合された場合、透明性や表面の光沢を低減させることになるが、成形された毛髪相互の密接による結着や、エラストマー特有のゴム質的触感を回避することができる。
【0018】
更には、従来より汎用の光安定剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、オゾン消色剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を原料樹脂中に適宜配合して毛髪を形成したり、光安定剤を固着剤に含有させた光安定剤層を表面に設けることができる。
又、従来より汎用の各種可塑剤、例えば、フタル酸系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸エステル系、エポキシ系、フェノール系、トリメリット酸系等を1〜30重量%配合して柔軟性を付与することもできる。
更に、加工性、物性等を改善するために、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、タルク、その他の着色顔料等を添加することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明人形用毛髪及びそれを用いた人形類を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例中の配合は重量部を示す。
【0020】
実施例1(図1、3、4参照)
熱可塑性樹脂(A)として共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)600部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂400部を混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪1)を得た。
【0021】
柔軟性試験
前記人形用毛髪1を50束重ね、200mmの長さにカットした後、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具3で台紙(支持体2)に固定した。
毛髪1の上端部を固定具3の曲面に沿って180°折り曲げ、保持具4で折り曲げた毛髪を押さえた(図3)。
この状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間の条件で放置した後、保持具4を取り外し、支持体2を地面に対して垂直な状態に保持し、折り曲げ部が自重で垂れ下がる角度を測定する(この際、初期のストレートな状態を0°、折り曲げた状態を180°とする)。
前記毛髪の屈曲角(α)は120°を示した(図4)。
【0022】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた(図1)。
【0023】
実施例2
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドエラストマー(融点160℃)700部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度40℃のポリエステル樹脂と−20℃のポリエステル樹脂の1:1混合物(混合後のTg=10℃)300部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は150°を示した。
【0024】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0025】
実施例3
熱可塑性樹脂(A)としてイソフタル酸35モル%変性ポリブチレンテレフタレート(融点168℃)600部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度35℃のアクリル樹脂400部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は110°を示した。
【0026】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0027】
実施例4
熱可塑性樹脂(A)として共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)400部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂600部との混合物を芯部成形用押出し機に、前記と同様の熱可塑性樹脂(A)700部、及び、熱可塑性樹脂(B)300部の混合物を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=8/2(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は170°を示した。
【0028】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
【0029】
実施例5
30℃以下で青色、32℃以上で無色に可逆的に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料30部、分散剤10部、熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドエラストマー(融点160℃)660部、熱可塑性樹脂(B)としてガラス転移温度40℃のポリエステル樹脂と−20℃のポリエステル樹脂の1:1混合物(混合後のTg=10℃)300部とを混合し、汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は150°を示した。
【0030】
前記毛髪を人形の頭部に植毛し、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングすると、人形頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な髪型の人形が得られた。
なお、前記頭髪は30℃以下では青色を呈し、32℃以上で無色になり、この様相変化が繰り返し行うことができた。
【0031】
比較例1
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(荷重たわみ温度130℃、曲げ弾性率1600MPa)を汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は20°を示した。
【0032】
前記毛髪を人形の頭部に植毛すると、植毛直後から頭髪が逆立った状態になり、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングしても再び毛髪が立ち上がり、自然な髪型の人形は得られなかった。
【0033】
比較例2
熱可塑性樹脂として共重合ナイロン樹脂(融点175℃)を汎用の溶融紡糸装置を使用して24孔の吐出孔を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径80μmのフィラメント24本からなるマルチフィラメント(人形用毛髪)を得た。
前記人形用毛髪を用いて実施例1と同様の柔軟性試験を行うと、毛髪の屈曲角は30°を示した。
【0034】
前記毛髪を人形の頭部に植毛すると、植毛直後から頭髪が逆立った状態になり、手で撫で付けるように下向きに押えながらブラッシングしても再び毛髪が立ち上がり、自然な髪型の人形は得られなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の人形用毛髪は、人形に植毛した直後から頭部の形状に沿って垂れ下がり、自然な雰囲気を形成できる簡易性及び利便性に優れた人形用毛髪及びそれを用いた人形を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人形用毛髪を人形の頭部に植毛した状態を示す説明図である。
【図2】従来の人形用毛髪を人形の頭部に植毛した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の従来の人形用毛髪を用いて柔軟性試験を行う状態を示す説明図である。
【図4】本発明の従来の人形用毛髪を用いて柔軟性試験を行なって屈曲角を測定する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 人形用毛髪
2 支持体
3 固定具
4 保持具
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)が溶融一体化されてなる人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪。
- 前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比が(A)/(B)=95/5〜10/90である請求項1記載の人形用毛髪。
- 熱可塑性樹脂(A)と、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性樹脂(B)からなり、芯部と鞘部から構成される人形用毛髪であって、前記人形用毛髪が、上端部から50mmの位置を半径5mmの曲面を有する固定具で支持体に固定し、該固定具の曲面に沿って180°折り曲げて屈曲部を形成して保持具で押さえ、その状態を35℃で1分間、ついで、23℃で1分間放置した後、保持具を取り外し、支持体を垂直状態にした時の前記屈曲部の屈曲角が90°以上である柔軟性を有する人形用毛髪。
- 前記芯部の熱可塑性樹脂(B)の含有量が5〜95重量%であり、鞘部における熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比が下記式(1)を満たし、且つ、芯部と鞘部の重量比が式(2)を満たす請求項3記載の人形用毛髪。
鞘部における(A)/(B)=100/0〜50/50(重量%)(1)
芯部/鞘部=50/50〜90/10(重量%) (2) - 熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)は、互いに化学構造が異なる樹脂から選ばれる、請求項1乃至4記載のいずれかの人形用毛髪。
- 熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性エラストマーから選ばれる請求項1乃至5記載のいずれかの人形用毛髪。
- 毛髪の外径が30〜200μmである請求項1乃至6のいずれかに記載の人形用毛髪。
- 請求項1乃至7のいずれかの人形用毛髪を植毛してなる人形類。
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JP2013150640A (ja) * | 2012-01-24 | 2013-08-08 | Pilot Ink Co Ltd | 玩具用毛髪 |
-
2002
- 2002-06-21 JP JP2002181596A patent/JP2004024321A/ja active Pending
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