JP3653395B2 - エアクリーナー用濾材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はエアクリーナー用濾材、特に自動車のエアクリーナーに用いるための濾材に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、自動車のエンジンは外気を取り込んで燃料との混合気とし、爆発燃焼させることによって動力を発生する。このため、外気取込みに際して大気中に含まれる塵埃を捕集し、清浄な空気を供給するためにエアクリーナー用濾材(以下、単に濾材と称する)が広く利用されている。係る濾材は、塵埃のうち、特に砂塵のような比較的粒径の大きな成分のエンジン内への流入を主目的としていた。近年、特に都市部においては、自動車の排気などから発生するカーボンダストのような比較的粒径の小さな塵埃が増加している。従って、エンジンの高性能化を背景に、エアクリーナー用濾材には、砂塵からカーボンダストまでの幅広い粒径の塵埃を高効率で濾過捕集するという高度な濾過性能が求められている。
【0003】
この様な濾過性能を達成するため、塵埃の粒径に応じた複数の濾過層を備える濾材構造が種々提案されており、その一例として、特開昭62−279871号公報では、各々繊維ウエブで構成される外層(粗層)、中間層(中間密度層)及び内層(緻密層)からなる、密度勾配を持った濾材が知られている。この公報では、比較的密度の低い外層によって比較的粒径の大きな塵埃を捕集すると共に、通常、外気導入に際して最下流側に配置される内層が緻密な構造を採ることによって、カーボンダストなどの比較的小さな粒径の塵埃をも捕集する構成となっている。この従来技術では、緻密な内層を実現するために湿式不織布が用いられているが、内層に相当する繊維層にバインダなどを適用することによって、所謂、目止めを行う技術も知られている。
【0004】
また、他の従来技術として、特開平9−192427号公報では、熱接着性疎水性繊維と非熱接着性疎水性繊維とで構成される繊維層を複数層積層し、例えば前述した技術と同様に、外層(平均繊度3〜15デニール)、中間層(平均繊度1.5〜6デニール)及び内層(平均繊度0.7〜4デニール)と、順次に平均繊度を低く構成した濾材が知られている。この従来技術では、実質的にポリオレフィン系やポリエステル系といった疎水性繊維のみで各繊維層を構成し、しかも当該繊維に付着した油剤を実質的に除去することにより、外気導入時の空気流によって帯電を生じさせる構成としている。この公報の開示技術を利用することによって、特に内層において繊維間隙を確保し、濾材全体として密度勾配を緩やかに設計しても、繊維の帯電を利用して優れた濾過性能を実現することが期待できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術は、いずれも外層から内層に至る繊維層が密度勾配を形成することによって、広い粒径範囲の塵埃を捕集しようとするものである。その具体的手段は、主として、ほぼ同等な繊度を有する繊維で各繊維層を構成し、濾材を使用する際の空気流方向に従って、順次、繊度の小さな繊維層を積層するものであった。一般に、繊維を構成する樹脂が同一で有れば繊度が小さい繊維層ほど繊維1本あたりの剛性が低くなり、結果として繊維層の厚さがつぶれ易くなる傾向にある。厚さがつぶれることによって高密度化が生じ、圧力損失が大きくなるわけであるが、係る構成では、特に内層の厚さが小さくなることにより比較的小さな粒径の塵埃保持量が少なくなってしまうという問題を顕著に生じる。さらに、近年の高性能エンジンでは、より風量を大きくして燃焼効率向上を図る傾向にあるが、従来構成の濾材では、初期圧損を低く設計することが可能な反面、初期効率も低下してしまい、濾材面積を大きく採る必要があった。
【0006】
また、最近、廃棄物に対する関心が高まっており、このようなエアフィルター用濾材に対してもリサイクル可能なものが望まれており、濾材を実質的に単一の樹脂成分で構成するのが理想とされている。本発明者は、上述した問題を解決するため、繊度による密度勾配を形成することなく、比較的小さな粒径の塵埃を効率的に捕集し、しかも塵埃保持量の大きな濾材を実現すべく鋭意検討を重ねた。その結果、前述した内層を構成する上で、繊維間隙を大きく採ることができるステープル繊維に対して、バインダの代わりに微細な長繊維を均一に分散配置させることにより、初期の捕集効率と塵埃保持量との双方を満足し得る点に着目し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って本発明は、広範囲の粒径の塵埃を効率的に捕集し、特にカーボンダストなどの比較的小さな粒径の塵埃の保持量に優れ、結果として高風量のエンジンに搭載することが可能な使用寿命の長いエアクリーナー用濾材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的の達成を図るため、本発明のエアクリーナー用濾材の構成によれば、少なくとも内層と外層とを含む複数の繊維層が積層一体化されたエアクリーナー用濾材であって、上述した内層が繊維径15〜68μmのステープル繊維と繊維径0.5〜10μmの長繊維とで構成されてなり、かつ、前記ステープル繊維が熱接着性繊維であることを要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施に好適な形態につき説明する。始めに、本発明の濾材に好適な積層形態につき、図1を参照して説明する。この図から理解できるように、本発明の濾材11は、空気流方向Aの上流側から、外層13、中間層15及び内層17で構成される。このうち、外層13は比較的大きな粒径である砂塵を捕集するのに好適な構成成分であり、通常、面密度30〜100g/m2、見かけ密度0.01〜0.05g/cm3程度の不織布で構成される。また、中間層15は必須の構成成分ではないが、外層13と内層17との間の見かけ密度の勾配を緩やかに形成することによって、濾材11全体で塵埃保持の効率化を図る上で好適に採用されるものである。この中間層15を設ける場合、複数の繊維層とすることもできる。さらに内層17は、実用面、即ち、塵埃の保持量を確保し、しかも濾材の過大な圧力損失を避けるために、その面密度を50g/m2以上200g/m2以下とするのが好ましい。これら各層の積層一体化を図るに当たっては、前述した公報にも開示されるように各層を調製後に一括してニードルパンチ法を適用することができ、より好ましくは各繊維層を構成するステープル繊維として熱接着性繊維を用い、所定の加熱手段によって層間を接着するのが好ましい。
【0010】
次いで、本発明の内層の製造技術の一例について、図を参照して説明する。図2は、内層を形成するに好適な機械装置を概略的に示す製造工程図である。まず、メルトブロー装置用のダイ19によって長繊維21が形成される。この長繊維21に対して、開繊機23によって開繊され、かつ空気流に運ばれた熱接着性繊維であるステープル繊維25が吹き付けられる。然る後、2種類の繊維はコンベアーなどの捕集体27上に堆積されて繊維ウエブ29となった後、熱風ドライヤーや熱ロールなどの加熱手段31で熱処理することによって、内層17が得られる。尚、開繊機23としてカード機やガーネット機を使用することもできるが、例えば、本出願人が特開平5−9813号公報において提案しているように、複数の開繊シリンダーをハウジング内に収納し、これらシリンダーを高速で回転させることにより、空気流によってステープル繊維を所定方向に吹き飛ばし得る装置とするのが好適である。この様に吹き飛ばされたステープル繊維25が網状に供給された長繊維21に捕捉された後、捕集体27上に堆積された際に、ステープル繊維と長繊維とが均一に分散混合された状態の繊維ウエブ29が得られる。
【0011】
上述した長繊維21を構成する原料樹脂は、ポリプロピレン系、ポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂など、種々のものを用いることができるが、0.5μm以上10μm以下、より好適には0.5μm以上5μm以下の繊維径を実現し得るポリオレフィン系が特に好ましい。この長繊維に関する好適繊維径の範囲よりも細い場合にはショットが多くなり、製造工程上、繊維を形成することが難しいばかりでなく、熱接着性繊維であるステープル繊維25との均質な混合が難しくなる。また、この範囲を超えて太い繊維径とした場合には、熱接着性繊維であるステープル繊維によって確保された繊維間隙に対する長繊維の目止めが有効に機能せず、最終的に得られる濾材において比較的小さな粒径の塵埃に対する捕集効率の低下を来す場合がある。
【0012】
また、熱接着性繊維であるステープル繊維25は、繊維間隙を保持するために繊維製造工程で延伸処理された剛性に富むものが好ましい。このようなステープル繊維を構成する原料樹脂としては、上記長繊維と同一のものを用いることもでき、特に、前述した濾材の強度を確保するため、複合型の熱接着性繊維とする必要がある。この場合、内層17に配合したのと同様な熱接着性繊維を外層13や中間層15にも配合しておき、これらの繊維層を繊維ウエブ29上に載置し、加熱手段31での加熱処理によって積層一体化するのが好ましい。
【0013】
内層を構成する熱接着性繊維としてのステープル繊維と長繊維との割合は、内層の面密度に占める長繊維の重量の割合を2.5mass%以上40mass%以下とするのが好ましい。これよりも長繊維の重量割合が大きい場合には圧力損失の急激な増大を招き、また、当該割合が小さい場合には塵埃除去の効率が低下してしまう。特に、内層に含まれる長繊維を、面密度にして5g/m2以上とすることによって、比較的小さな粒径の塵埃を効率的に捕集することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例につき説明する。尚、以下の説明では、説明の理解を容易とするため、特定の構成や数値的条件を例示するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で設計の変更及び変形を行うことができる。
【0015】
実施例
実施例に係る濾材は、図1に示す3層構造を採用した。まず外層13として、市販のポリエステル繊維(繊度6デニール(繊維径24.8μm)、繊維長64mm)70mass%とポリエステル系の熱接着性繊維(繊度4デニール(繊維径20.2μm)、繊維長51mm)30mass%とを混綿し、カード機によってシート化し、面密度60g/m2の繊維層を得た。また、中間層15として、上述と同様なポリエステル繊維(繊度2デニール(繊維径14.3μm)、繊維長51mm)50mass%とポリエステル系熱接着性繊維(繊度2デニール(繊維径14.3μm)、繊維長51mm)50mass%とをカード機によってシート化し、面密度90g/m2の繊維層を得た。さらに、内層17は、市販のポリプロピレンにより繊維径1.2μmの長繊維を面密度20g/m2で吐出させ、ステープル繊維としてポリオレフィン系の熱接着性繊維(繊度6デニール(繊維径29.7μm)、繊維長64mm)70mass%と、同様なポリオレフィン系熱接着性繊維(繊度14デニール(繊維径46μm)、繊維長76mm)30mass%とを配合して使用し、面密度130g/m2で上記長繊維に対して吹き飛ばすことによって、面密度150g/m2に調製した。これら3つの繊維層にニードルパンチ(針密度30本/cm2)を施した後、熱接着性繊維に応じた約140℃の温度で加熱処理を施すことによって積層一体化し、最終的に面密度約300g/m2、厚さ3.2mmの実施例に係る濾材を得た。
【0016】
比較例
まず、内層17として、レーヨン繊維(繊度1.5デニール(繊維径11.9μm)、繊維長51mm)90mass%とポリエステル繊維(繊度1.5デニール(繊維径12.4μm)、繊維長38mm)10mass%とを混合してカード機にかけ、面密度65g/m2の繊維層を得た。次いで、中間層15として、レーヨン繊維(繊度1.5デニール(繊維径11.9μm)、繊維長51mm)40mass%と、ポリエステル繊維(繊度1.5デニール(繊維径12.4μm)、繊維長38mm)20mass%と、ポリエステル繊維(繊度3デニール(繊維径17.5μm)、繊維長64mm)20mass%と、ポリエステル繊維(繊度6デニール(繊維径24.8μm、繊維長64mm)20mass%との4種類のステープル繊維を混合してカード機にかけ、面密度60g/m2の繊維層を得た。さらに、外層13として、レーヨン繊維(繊度3デニール(繊維径16.8μm)、繊維長51mm)15mass%と、ポリエステル繊維(繊度3デニール(繊維径17.5μm)、繊維長64mm)35mass%と、ポリエステル繊維(繊度6デニール(繊維径24.8μm)、繊維長51mm)50mass%との3種類のステープル繊維からなる面密度55g/m2の繊維層を得た。然る後、これら3つの繊維層を順次積層し、実施例と同様にニードルパンチした後、市販のアクリル酸エステル系エマルジョンを含浸付着して130℃で乾燥させ、70g/m2の付着量でバインダによる目止めを行った。これにより、最終的な面密度約250g/m2、厚さ3.2mmの比較例に係る濾材を得た。
【0017】
試験方法
次いで、これら2つの濾材を評価した試験方法につき説明する。この実施例では、
(1)『初期通気抵抗』
(2)JIS−8種塵埃を用いた『JIS初期効率』
(3)JIS−8種塵埃を用いた『JISフルライフ効率』
(4)JIS−8種塵埃を用いた塵埃保持率『JIS−DHC(:dust holdingcapacity)』
(5)軽油燃焼カーボンを用いた『カーボンフルライフ効率』
(6)軽油燃焼カーボンを用いた塵埃保持率『カーボンDFC(:dust feedingcapacity)』
の6項目で評価を行った。評価試験は、下記の点を除いてJIS D 1612「自動車用エアクリーナー試験方法」に準じて行った。
(a)各濾材を装着する試験用のエアクリーナーエレメントとして、有効濾過面積が1000cm2の平板型のものを用いた。
(b)JIS−8種塵埃を用いた試験条件は、塵埃濃度1g/m3及び風速20m/分とした。
(c)『JIS初期効率』は濾過面積100cm2に対して、2.00gの割合で塵埃供給した時点での捕集効率とした。
(d)『JISフルライフ効率』及び『JIS−DHC』は、初期から通気抵抗が2.94kPa上昇した時点での値を採用した。
(e)『カーボンフルライフ』の測定は、試験ダストとして軽油燃焼時に採取したカーボン粒子を用いたこと及び塵埃濃度0.04g/m2としたことを除いては、JIS−8種塵埃による『JISフルライフ効率』の測定と同様に行った。
これら試験結果につき、下記の表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
この表1から理解できるように、JIS初期効率及びJIS−DHCの測定項目において、実施例に係る濾材は比較例の濾材特性よりも優れていた。本発明を適用した実施例の濾材は、この優れた初期効率と塵埃保持量とによって、同一の風量で有れば、比較例に係る濾材に比べて濾過面積を小さくすることができ、比較的風量の大きなエンジンに搭載し得る。
【0020】
【発明の効果】
上述した説明からも明らかなように、本発明のエアクリーナー用濾材の構成によれば、前述した内層において繊維間隙を大きく採ることができる熱接着性繊維としてのステープル繊維に対して、バインダの代わりに微細な長繊維を均一に分散配置させることにより、初期効率と塵埃保持量との双方を満足することができる。従って、本発明の構成を適用することにより、広範囲の粒径の塵埃を効率的に捕集し、特にカーボンダストなどの比較的小さな粒径の塵埃の保持量に優れ、結果として高風量のエンジンにも対応し得る使用寿命の長いエアクリーナー用濾材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好適形態の説明に供する概略的断面図、
【図2】 本発明の好適形態の説明に供する製造工程図である。
【符号の説明】
11:(エアクリーナー用)濾材、13:外層、15:中間層、17:内層、19:ダイ、21:長繊維、23:開繊機、25:(熱接着性繊維である)ステープル繊維、27:捕集体、29:繊維ウエブ、31:加熱手段、A:空気流方向。
Claims (4)
- 少なくとも内層と外層とを含む複数の繊維層が積層一体化されたエアクリーナー用濾材であって、前記内層が繊維径15〜68μmのステープル繊維と繊維径0.5〜10μmの長繊維とで構成されてなり、かつ、前記ステープル繊維が熱接着性繊維であることを特徴とするエアクリーナー用濾材。
- 前記内層の面密度に占める長繊維の割合が2.5〜40mass%であることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナー用濾材。
- 前記内層が面密度50〜200g/m2であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアクリーナー用濾材。
- 前記内層は前記長繊維を少なくとも5g/m2以上含んでなることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のエアクリーナー用濾材。
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