JP3652829B2 - 眼内レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、白内障等により摘出された水晶体の代わりに眼内に挿入される眼内レンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
白内障により混濁した水晶体を摘出した後、水晶体の代わりに眼内に挿入する眼内レンズが知られている。眼内レンズは、その製造方法により3ピースタイプと1ピースタイプに大別される。
【0003】
3ピースタイプの眼内レンズは、レンズパワーを持つ光学部とこの光学部を眼内において保持するための支持部とを別々に形成し、その後の工程で1つに結合させることにより製造する。対して、1ピースタイプの眼内レンズは、一体化した材料部材を切削加工することによって光学部と支持部を形成する。
【0004】
最近では、小切開創からの挿入を行うことができる折り畳み可能なソフト眼内レンズが出現している。この眼内レンズにおいても光学部と支持部で異なる材料、すなわち、光学部は折り畳み可能な柔軟性材料を、支持部には眼内安定性のために比較的剛直な材料を使用して一体化させて形成する1ピースタイプの眼内レンズが提案されている。このようタイプの眼内レンズは、次のような方法により製作されている。まず、光学部または支持部となるいずれか一方の材料を先に重合硬化させた後に、もう片方の材料を先のものに接するようにして重合硬化させ、異なる材料の複合部材を形成する。この際、光学部及び支持部の材料を別々に重合硬化させる必要があるため、それぞれの材料に重合開始剤を添加して重合開始のきっかけを与えるようにしている。複合部材が形成できたら切削加工して光学部と支持部とを持つ眼内レンズを得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように光学部及び支持部のそれぞれの材料に重合開始剤を添加して重合を行うと、後の方で硬化させる材料は、先に重合硬化されたものと十分に相互作用することなく単独で重合硬化してしまい、両者の物理的な結合が充分に行われなくなってしまう。このため、光学部材と支持部材との接合部分での接合強度が、その他の部分に比べて弱くなる傾向にあった。この接合部分は眼内への挿入時や眼内での位置調整時に最も力が加わるところであり、接合強度よりも強い力が加わると折損してしまう可能性がある。眼内で折損があると、折損した支持部及び光学部は眼内から取り出し、新たに眼内レンズを挿入し直さなければならず、患者眼に負担がかかる。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、光学部と支持部とが異なる材料からなる1ピースタイプの眼内レンズにおいて、光学部と支持部の接合部分での接合強度を強くし、折損の可能性を一層低減することができる眼内レンズの製造方法を提供することを技術課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 光学部と該光学部とは異なる材料からなる支持部とを一体形成する1ピースタイプの眼内レンズの製造方法において、前記光学部または支持部を得るためのいずれか一方の材料に重合硬化剤を含有させ、前記重合硬化剤が含有された一方の材料を先にラジカルが残存する程度に重厚硬化させて第1の重合部材を得る第1プロセスと、該第1プロセスにより得られた第1の重合部材に接するように、重合開始剤を含有しない他方の材料を配置する第2プロセスと、前記第1の重合部材に残るラジカルを用いて前記第2プロセスにより配置した材料を重合硬化させることにより第1の重合部材と複合した第2の重合部材を得る第3プロセスと、を有することを特徴とする。
【0013】
【実施例】
本発明の一実施例を図面に基づいて以下に説明する。図1は一般的な1ピースタイプの眼内レンズを示す平面図である。30は屈折力を持つ光学部、31は光学部30を眼内で保持させるための支持部であり、光学部30とは異なる材料により形成されて可撓性を持つ。
【0014】
次に、この眼内レンズの製造方法の一例について説明する。まず、図2(a)に示すように、円筒形反応容器3に光学部30を形成するための液体状の光学部材1を流入する。光学部材1の材料としては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルが使用される。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やエチルメタクリレート(EMA)に代表される種々の剛直性材料、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に代表される種々の親水性柔軟材料、さらに、これらの剛直性材料及び親水性柔軟材料であるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを共重合させた共重合物等である。柔軟性がある材料を使用すると、折り畳み可能なソフト眼内レンズを得ることができる。
【0015】
また、これらの材料にエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)に代表される架橋材を添加してもよい。
【0016】
なお、反応容器3の直径は、製品とする眼内レンズの光学部の直径と少なくとも同じか、それよりも大きいものを使用する。
【0017】
続いて、反応容器3に流入した光学部材1には、重合開始のきっかけを与えるための重合開始剤2を少量添加する。重合開始剤2としては従来より多くのものが知られており、例えば、加熱重合の場合にはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が、光重合の場合にはベンゾイン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等を使用することができる。
【0018】
重合開始剤2を添加した後、加熱(あるいは光照射)して重合を開始させる。これにより、重合開始剤2は熱(あるいは光)によって分解してラジカル(遊離基)を生じるようになる。ラジカルを生じた重合開始剤2が光学部材1の分子と衝突すると、重合開始剤2と光学部材1が結合する。重合開始剤2に存在していたラジカルは光学部材1との結合因子となって消滅し、その代わりに光学部材1にラジカルが生じる。その後は、ラジカルを持つ光学部材1の分子が、他の光学部材1の分子に衝突、結合を繰り返すことにより連鎖的にラジカルを生じ、重合硬化が進行していく。
【0019】
ここで、重合時間を十分に長く取ると、発生したラジカル同志も結合して重合反応が終了し、光学部材1は完全に重合硬化してラジカルが存在しない状態になる。
【0020】
そこで、本発明においては、光学部材1にラジカルが多数残っている状態、つまり、重合が完全に終了する前に次の工程(後述する支持部材4を光学部材1の側面で重合硬化する工程)へ移行する。このタイミングとしては、光学部材1がほぼ硬化し、収縮過程にいたる前が好ましい。例えば、光学部材1の材料としてHEMAとEMAを比率85:15で共重合させるものを使用するときは、50℃で48時間、60℃で24時間、70℃で24時間の順で加熱を終了した状態で次の工程へ移行する。
【0021】
ラジカルが多数残っている状態で重合硬化した円柱状の光学部材1が得られたら、図2(b)に示すように、これを円筒形の反応容器5のほぼ中央に固定する。反応容器5の直径は眼内レンズの全長に比べて少なくとも同じか、それよりも大きいものを使用する。光学部材1を固定したら、光学部材1の周辺部に支持部31となる支持部材4を流入する。その材料としてはアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが使用でき、その例としては、PMMA、EMA等に代表される剛直材料や、これらの剛直材料に2−エチルヘキシルメタクリレート等の柔軟性を備えるものを共重合させた共重合物等である。
【0022】
支持部材4を流入後、反応容器5に熱を加えて重合を開始させる。このときの重合に際しては、本実施例では重合開始剤を用いることなく、重合促進のために熱を加えるのみで重合硬化を行う。前述のように、光学部材1は重合が完全に終了していないので、その外周部分にはラジカルが多数残っている状態である。加熱により分子運動を激しくした支持部材4の分子は、光学部材1のラジカルに衝突することによって結合する。すなわち、支持部材4の重合に際しては、ラジカルを持つ光学部材1が重合開始剤の役目を果たし、その重合は光学部材1の外周部分のラジカルと支持部材4の結合から進行するようになる。さらに、ラジカルによる連鎖反応によって重合が進行していく。こうして支持部材4と先の光学部材1との複合部材が形成される。重合開始剤を添加していない場合は、連鎖反応は重合開始剤から生じるラジカルの影響を受けることなく起こるので、支持部材4は光学部材1と化学的に強固に結合しつつ重合硬化し、その接合部は重合開始剤を加えた場合に比べてより強くなる。
【0023】
なお、上記では接合強度をより強固なものとするために、支持部材4の重合硬化時には重合開始剤を添加しないものとしたが、眼内レンズの使用に必要な接合強度と製作時間、その他の重合条件等との関係により重合開始剤を添加するようにしても良い。
【0024】
このようにして光学部材1と支持部材4との複合部材が得られたら、図2(c)に示すように、反応容器5から取り出した複合部材6を必要な厚さに切断する。その後、周知の切削加工を行ことにより、光学部30及び支持部31を有する眼内レンズを製作する。
【0025】
こうして得られた眼内レンズは、光学部30と支持部31との接合部の強度が増し、折損の可能性が低くなる。
【0026】
以上の製造方法では光学部材1側を先に重合硬化させたが、支持部材4の方を先に重合硬化させることにより複合部材6を得るようにしても良い。この製造方法を図3に基づいて説明する。
【0027】
図3(a)において、2つの円筒状容器からなる反応容器13に支持部材14を流入する。支持部材14を流入した後、重合開始剤12を少量添加する。重合開始剤12を添加した後、加熱(あるいは光照射)を行うことにより、重合開始剤12は熱(あるいは光)により分解してラジカル(遊離基)を生じ、支持部材14のラジカル重合が行われる。
【0028】
支持部材14の重合反応が完全に終了する前に、支持部材14内にラジカルが多数存在する固体化した状態で次の工程に移行する。
【0029】
図3(b)において、図3(a)で形成した円筒状の支持部材14を固定し、支持部材14の中空部に光学部材11を流入する。光学部材11を流入後、熱を加えると重合が開始する。このとき、重合開始剤を加えずに加熱を行い重合を行う(必要な接合強度を確保しつつ重合時間を短くするときは、重合開始剤を添加する)。支持部材14の内周部分にはラジカルが多数残っているので、そのラジカルにより支持部材14の分子と光学部材11の分子が結合するようになる。さらに、連鎖反応によって重合が進行し、接合部分の接合強度は強固なものとなる。
【0030】
こうして支持部材14と光学部材11とが接合して硬化した複合部材16が得られたら、前述と同様に必要な厚さに切断した後、切削加工を施して眼内レンズを製作する。
【0031】
本発明は、上述したものに限定されるものではなく、種々の変容が可能であり、技術思想を同じくする範囲においては本発明に包含される。
【0032】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、光学部と支持部の接合部分で強固な接合強度が得られ、折損の可能性を一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】眼内レンズの形状を説明する図である。
【図2】本実施例である眼内レンズの製造方法の一例を説明する図である。
【図3】本実施例である眼内レンズの製造方法の変容例を説明する図である。
【符号の説明】
1、11 光学部材
2、12 重合開始剤
4、14 支持部材
6、16 複合材料
30 光学部
31 支持部
Claims (1)
- 光学部と該光学部とは異なる材料からなる支持部とを一体形成する1ピースタイプの眼内レンズの製造方法において、前記光学部または支持部を得るためのいずれか一方の材料に重合硬化剤を含有させ、前記重合硬化剤が含有された一方の材料を先にラジカルが残存する程度に重厚硬化させて第1の重合部材を得る第1プロセスと、該第1プロセスにより得られた第1の重合部材に接するように、重合開始剤を含有しない他方の材料を配置する第2プロセスと、前記第1の重合部材に残るラジカルを用いて前記第2プロセスにより配置した材料を重合硬化させることにより第1の重合部材と複合した第2の重合部材を得る第3プロセスと、を有することを特徴とする眼内レンズの製造方法。
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