JP3652400B2 - タンデム型油圧クラッチにおける給油構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内軸の外周に相対回転自在に嵌合する外軸の外周に第1クラッチピストンを駆動する第1クラッチ油室及び第2クラッチピストンを駆動する第2クラッチ油室を軸方向に並設したタンデム型油圧クラッチに関し、特にそのクラッチ油室に対する給油構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンデム型油圧クラッチでは、一方のクラッチ油室に連なる油路からシール部材を通して漏れた作動油が他方のクラッチ油室に連なる油路に流入すると、両クラッチの作動が相互に干渉する可能性がある。そこで、特開平2−125164号公報に記載されたものは、第1クラッチの油路と第2クラッチの油路との間にシール部材を挟んでドレン油路を設け、このドレン油路を大気に開放することにより両クラッチの作動の干渉を回避している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンの停止後に所定時間が経過するとクラッチ油室内の作動油は重力で排出されてしまうため、次にエンジンを始動してクラッチを係合させる際にクラッチ油室内に作動油が充満するのに時間がかかり、クラッチが即座に係合せずに応答性が低下する問題がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、タンデムに配置された一対のクラッチの相互干渉を防止しながら、エンジン始動時におけるクラッチの係合応答性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、内軸の外周に相対回転自在に嵌合する外軸の外周に第1クラッチピストンを駆動する第1クラッチ油室及び第2クラッチピストンを駆動する第2クラッチ油室を軸方向に並設し、内軸の外周に軸方向に離間して形成した第1環状溝及び第2環状溝と、外軸を貫通して第1環状溝及び第2環状溝にそれぞれ連通する第1油孔及び第2油孔とを通して第1クラッチ油室及び第2クラッチ油室に独立に作動油を給油するタンデム型油圧クラッチにおいて、内軸の外周の第1環状溝及び第2環状溝間に第3環状溝を形成し、第3環状溝及び第1環状溝間に第1シール部材を配置するとともに第3環状溝及び第2環状溝間に第2シール部材を配置し、第3環状溝に供給した潤滑油を第1シール部材及び第2シール部材を通して第1環状溝及び第2環状溝に供給することを特徴とする。
【0006】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、内軸に形成した潤滑油路を第3環状溝に連通させたことを特徴とする。
【0007】
また請求項3に記載された発明は、請求項2の構成に加えて、前記潤滑油路を外軸の外周に形成されて遠心油圧をキャンセルするキャンセラー油室に連通させたことを特徴とする。
【0008】
また請求項4に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、前記潤滑油路の第3環状溝よりも下流側に絞りを設けたことを特徴とする。
【0009】
【作用】
請求項1の構成によれば、第1クラッチの作動時に第1クラッチ油室に連なる第1環状溝から第1シール部材を通して漏れた作動油と、第2クラッチの作動時に第2クラッチ油室に連なる第2環状溝から第2シール部材を通して漏れた作動油とが第3環状溝に補集されるため、両クラッチの作動が相互に干渉することが防止される。また、第1クラッチ油室及び第2クラッチ油室が空の状態にあるとき、第3環状溝に供給した潤滑油が第1シール部材及び第2シール部材を通して第1環状溝及び第2環状溝に漏れて第1クラッチ油室及び第2クラッチ油室に供給されるため、第1クラッチ及び第2クラッチを時間遅れなく係合させることができる。
【0010】
請求項4の構成によれば、潤滑油路の第3環状溝よりも下流側に設けた絞りにより潤滑油に圧力を発生させ、潤滑油を第3環状溝から第1シール部材及び第2シール部材を通して第1環状溝及び第2環状溝に供給することができる。
【0011】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動車用トランスミッションの部分断面図、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図1の3−3線断面図、図4は図2の4A−4A線、4B−4B線及び4C−4C線断面図、図5は作動油及び潤滑油の油圧回路図である。
【0013】
図1に示すように、トランスミッションのケーシング1の内面に内軸としてのサポート2の右端が3本のボルト3…により固定されており、このサポート2の左端内周にメインシャフト4の右端外周がニードルベアリング5を介して回転自在に嵌合する。
【0014】
メインシャフト4の外周にはシングルピニオン式の第1遊星歯車機構P1 及びダブルピニオン式の第2遊星歯車機構P2 が軸方向に並置される。第1遊星歯車機構P1 及び第2遊星歯車機構P2 はそれぞれサンギヤ61 ,62 、プラネタリキャリヤ71 ,72 及びリングギヤ81 ,82 を備えており、両プラネタリキャリヤ71 ,72 はセンタープレート91 ,92 を介して一体に結合されるとともに、両リングギヤ81 ,82 は一体に形成される。プラネタリキャリヤ71 に支持された複数個のピニオン101 …は、サンギヤ61 及びリングギヤ81 に同時に噛合する。また、プラネタリキャリヤ72 に支持された内側の複数個のピニオン102 …はサンギヤ62 に噛合するとともに外側の複数個のピニオン102 …はリングギヤ82 に噛合し、且つ内側及び外側のピニオン102 …は相互に噛合する。
【0015】
一体に形成された両リングギヤ81 ,82 は、第1クラッチC1 を介してメインシャフト4に結合される。また、第1遊星歯車機構P1 のサンギヤ61 はメインシャフト4にニードルベアリング11を介して回転自在に支持されており、このサンギヤ61 に一体に結合されて半径方向外側に延びるサンギヤ拘束部材12は、第2クラッチC2 を介してメインシャフト4に結合される。
【0016】
次に、第1クラッチC1 及び第2クラッチC2 の構造を説明する。
【0017】
メインシャフト4の右端にスプライン結合されて前記サポート2の外周に相対回転自在に嵌合するクラッチハブ13は、本発明の外軸を構成する。クラッチハブ13とサンギヤ拘束部材12との間にはスラストベアリング14が介装され、またクラッチハブ13とケーシング1との間にもスラストベアリング15が介装される。クラッチハブ13の右端に固着されたクラッチドラム16は、ケーシング1の内壁面に沿って延在し、その左端は第1遊星歯車機構P1 のリングギヤ81 の半径方向外側に達している。
【0018】
クラッチハブ13の外周及びクラッチドラム16の内周間には、第1クラッチピストン17が相対回転不能且つシール部材18,19を介して軸方向摺動自在に嵌合しており、クラッチドラム16及び第1クラッチピストン17間に第1クラッチ油室20が形成される。クラッチハブ13の外周及び第1クラッチピストン17の内周間には、第2クラッチピストン21が相対回転不能且つシール部材22,23を介して軸方向摺動自在に嵌合しており、第1クラッチピストン17及び第2クラッチピストン21間に第2クラッチ油室24が形成される。キャンセラープレート25は、その内周がクリップ26でクラッチハブ13に固定され、且つ外周がシール部材27を介して第2クラッチピストン21の内周に軸方向摺動自在に嵌合する。第2クラッチピストン21及びキャンセラープレート25間にキャンセラー油室28が形成される。
【0019】
第1クラッチC1 は、リングギヤ81 に相対回転不能且つ軸方向摺動自在に係合する複数枚のクラッチ板29…と、これらクラッチ板29…に交互に重ね合わされてクラッチドラム16の内周に相対回転不能且つ軸方向摺動自在に係合する複数枚のクラッチ板30…とを備えており、両クラッチ板29…,30…は左動する第1クラッチピストン17の先端の押圧部17aに押圧されて相互に密着可能である。第2クラッチC2 は、サンギヤ拘束部材12に相対回転不能且つ軸方向摺動自在に係合する複数枚のクラッチ板31…と、これらクラッチ板31…に交互に重ね合わされて第1クラッチピストン17の内周に相対回転不能且つ軸方向摺動自在に係合する複数枚のクラッチ板32…とを備えており、両クラッチ板31…,32…は左動する第2クラッチピストン21の先端の押圧部21aに押圧されて相互に密着可能である。
【0020】
キャンセラー油室28の内部に位置するように、キャンセラープレート25の右側面及び第2クラッチピストン21の左側面に、それぞれ合成樹脂製の詰め物33,34が装着される。詰め物33は比較的に大きな体積を有しており、その半径方向内側に円周方向に離間して複数のバネ座33a…が凹設されるとともに、その半径方向外側にシール部材27へのゴミの付着を防止するための突起部33bが形成される。また、詰め物34は比較的に小さな体積を有しており、その半径方向内側に円周方向に離間して複数のバネ座34a…が突設されるとともに、その半径方向外側にシール部材27へのゴミの付着を防止するための突起部34bが形成される。而して、両詰め物33,34のバネ座33a…,34a…間に、第2クラッチピストン21を右方向に付勢する複数の戻しバネ35…が縮設される。
【0021】
前記詰め物33,34によってキャンセラー油室28内のデッドボリュームを減少させ、エンジンの運転開始時における残油の油面内径を小さくすることができる。
【0022】
次に、図2及び図3を併せて参照しながらキャンセラー油室28への吸排油構造について説明する。
【0023】
ケーシング1に形成された油路1aが、サポート2にその中心軸から偏心して軸方向に形成された油路2aに連通し、この油路2aの左端はサポート2の外周に刻設された環状溝2bに連通する。環状溝2bは一対の堰2c,2cによって劣弧よりなる給油溝2dと優弧よりなる排油溝2eとに仕切られており、前記油路2aは給油溝2dに開口する。環状溝2bを一対の堰2c,2cで仕切ることにより給油溝2d及び排油溝2eを形成したので、給油溝2d及び排油溝2eの加工コストを削減するとともにスペースの有効利用を図ることができる。環状溝2bの外周を閉塞するクラッチハブ13は円周方向に等間隔に離間した8個の油孔13a…を備えており、これら油孔13a…はキャンセラー油室28に連通する。環状溝2bとクラッチハブ13との間は、一対のシール部材36,36によってシールされる。
【0024】
また、排油溝2eはサポート2を直径方向に貫通する油路2f,2fを介してニードルベアリング5に連通し、そこから更にメインシャフト4の右端を直径方向に貫通する油路4a,4aを介して、メインシャフト4を軸方向に貫通する油路4bに連通する。
【0025】
サポート2の中心に設けられたチェック弁37は、弁座2gと、この弁座2gに着座可能なボール38と、このボール38を弁座2gに向けて付勢するスプリング39とを備える。弁座2gの上流はサポート2の右端に沿って半径方向に形成された油路2hを介して前記油路2aに連通し、また弁座2gの下流はメインシャフト4の油路4bに連通する。
【0026】
図4を併せて参照すると明らかなように、第1クラッチC1 の第1クラッチ油室20は、クラッチハブ13に形成した複数個の油孔13b…、サポート2の外周に形成した第1環状溝2i及びサポート2に軸方向に形成した油路2jを介して、ケーシング1に形成された図示せぬ油路に連通する(図4(A)参照)。第2クラッチC2 の第2クラッチ油室24は、クラッチハブ13に形成した複数個の油孔13c…、サポート2の外周に形成した第2環状溝2k及びサポート2に軸方向に形成した油路2mを介して、ケーシング1に形成された図示せぬ油路に連通する(図4(B)参照)。第1環状溝2i及び第2環状溝2k間に位置するようにサポート2の外周に形成した第3環状溝2nは、サポート2に半径方向に形成した油路2oを介して前記油路2aに連通する。
【0027】
サポート2の外周に形成した第1環状溝2iの左右両側には合成樹脂製の一対の第1シールリング40L ,40R が配置され、またサポート2の外周に形成した第2環状溝2kの左右両側には合成樹脂製の一対の第2シールリング41L ,41R が配置される。従って、中央の第3環状溝3nと右側の第1環状溝2iとは第1シールリング40L を介して隔てられ、中央の第3環状溝3nと左側の第2環状溝2kとは第2シールリング41R を介して隔てられる。
【0028】
図5に示すように、オイルタンク51からオイルポンプ52で汲み上げられたオイルはレギュレータ53で調圧された後、その一部は作動油として第1ソレノイドバルブ54及び第2ソレノイドバルブ55を経て第1クラッチC1 の第1クラッチ油室20及び第2クラッチC2 の第2クラッチ油室24に供給される。またレギュレータ53で調圧されたオイルの残部は潤滑油となってトランスミッションの各部に供給されるとともに、第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24に作用する遠心油圧を打ち消すべくキャンセラー油室28に供給される。潤滑油をオイルタンク51に戻す潤滑油通路の末端部には、潤滑油に所定の圧力を持たせるための絞り56が設けられる。
【0029】
トランスミッションは3個の油圧クラッチと2個の油圧ブレーキとによって1速変速段〜5速変速段及び後進変速段を選択的に確立可能であり、第1クラッチC1 及び第2クラッチC2 は3個の油圧クラッチのうちの2個を構成する。第1ソレノイドバルブ54及び第2ソレノイドバルブ55を開閉制御することにより、第1クラッチC1 及び第2クラッチC2 の係合及び係合解除は各々独立に制御される。
【0030】
具体的には、第1クラッチC1 は4速変速段及び5速変速段の確立時に係合し、1速変速段、2速変速段、3速変速段及び後進変速段の確立時に係合解除される。第2クラッチC2 は1速変速段、2速変速段、3速変速段及び4速変速段の確立時に係合し、5速変速段及び後進変速段の確立時に係合解除される。
【0031】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0032】
第1クラッチC1 を係合させるべく第1ソレノイドバルブ54を開弁すると、作動油は油路2jから第1環状溝2i及び油孔13b…を経て第1クラッチ油室20に流入し、第1クラッチピストン17を左動させる。その結果、クラッチ板29…,30…が密着して第1クラッチC1 が係合し、第1遊星歯車機構P1 及び第2遊星歯車機構P2 のリングギヤ81 ,82 がクラッチ板29…、クラッチ板30…、クラッチドラム16及びクラッチハブ13を介してメインシャフト4に結合される。第1クラッチピストン17が左動する際に第2クラッチピストン21も一体に左動するが、第1クラッチピストン17及び第2クラッチピストン21の相対的な位置関係は一定に保持されるため、第2クラッチC2 が係合することはない。
【0033】
第2クラッチC2 を係合させるべく第2ソレノイドバルブ55を開弁すると、作動油は油路2mから第2環状溝2k及び油孔13c…を経て第2クラッチ油室24に流入し、第2クラッチピストン21を左動させる。その結果、クラッチ板31…,32…が密着して第2クラッチC2 が係合し、第1遊星歯車機構P1 のサンギヤ61 がサンギヤ拘束部材12、クラッチ板31…、クラッチ板32…、第1クラッチピストン17、クラッチドラム16及びクラッチハブ13を介してメインシャフト4に結合される。
【0034】
第1クラッチC1 の第1クラッチ油室20から環状溝2iを経てサポート2及びクラッチハブ13の摺動面に漏れた作動油と、第2クラッチC2 の第2クラッチ油室24から環状溝2kを経てサポート2及びクラッチハブ13の摺動面に漏れた作動油とは、シールリング40L ,41R を通して第3環状溝2nに補集され、そこから油路2oを経て油路2aに排出される。これにより、第1クラッチC1 の作動及び第2クラッチC2 の作動が相互に影響を及ぼすことがない。
【0035】
第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24はメインシャフト4と一体に回転するため、第1クラッチ油室20内の作動油に作用する遠心力が第1クラッチピストン17をクラッチドラム16に対して左方向に付勢し、その付勢力は第2クラッチピストン21にも伝達される。更に第2クラッチ油室24内の作動油に作用する遠心力が第2クラッチピストン21を第1クラッチピストン17に対して左向きに付勢する。
【0036】
一方、キャンセラー油室28もメインシャフト4と一体に回転するため、その内部の潤滑油に作用する遠心力がキャンセラープレート25に対して第2クラッチピストン21を右方向に付勢し、その付勢力は第1クラッチピストン17にも伝達される。このようにして、第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24内の作動油に作用する遠心力がキャンセラー油室28内の潤滑油に作用する遠心力に釣合い、遠心力の影響を補償することができる。
【0037】
エンジンの運転中にオイルポンプ52から供給された潤滑油は、ケーシング1の油路1a、サポート2の油路2a、サポート2の給油溝2d及びクラッチハブ13の油孔13a…を介してキャンセラー油室28内に供給され、余剰の潤滑油はキャンセラー油室28からクラッチハブ13の油孔13a…、サポート2の排油溝2e、サポート2の油路2f,2f、ニードルベアリング5及びメインシャフト4の油路4a,4aを介してメインシャフト4の油路4bに排出され、そこからトランスミッションの各潤滑部に供給される。このとき、潤滑油の供給圧が過大になると、チェック弁37のボール38がスプリング39に抗して弁座2gから離間し、潤滑油はキャンセラー油室28をバイパスしてサポート2の油路2hからメインシャフト4の油路4bに排出される。これにより、潤滑油供給経路に設けられたレギュレータ53の調圧性能に悪影響が及ぶことが防止される。
【0038】
さて、エンジンが停止するとキャンセラー油室28内への潤滑油の供給が中止され、キャンセラー油室28内の潤滑油はクラッチハブ13の油孔13a…、サポート2の排油溝2e、サポート2の油路2f,2f、ニードルベアリング5及びメインシャフト4の油路4a,4aを介してメインシャフト4の油路4bに排出される。このとき、キャンセラー油室28からメインシャフト4の油路4bまでの潤滑油排出経路には絞りが存在しないため、エンジンの停止後にキャンセラー油室28内の潤滑油の所定量が速やかに排出される。
【0039】
もしも、エンジンの停止時にキャンセラー油室28内の潤滑油が充分に排出されないと仮定すると、特に寒冷地におけるエンジンの冷間始動時に、キャンセラー油室28内に残留した潤滑油の粘性が高まって第1クラッチピストン17及び第2クラッチピストン21の左動を妨げ、第1クラッチC1 及び第2クラッチC2 の係合に遅れが発生する可能性がある。しかしながら、本実施例では前述した如くキャンセラー油室28内の潤滑油の所定量が速やかに排出されるため、エンジンの再始動時に第1クラッチC1 及び第2クラッチC2 の係合に遅れが発生する虞がない。
【0040】
また、エンジンが始動すると、オイルポンプ52からの潤滑油が油路1a、油路2a、給油溝2d及び油孔13a…を介してキャンセラー油室28内に供給される。このとき、油路1aからキャンセラー油室28までの潤滑油供給経路には絞りが存在しないため、エンジンの始動後に速やかにキャンセラー油室28内に潤滑油を供給し、第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24内の作動油に作用する遠心力の影響を補償することができる。
【0041】
更に、エンジンの停止後に所定時間が経過すると、第1クラッチC1 の第1クラッチ油室20内の作動油及び第2クラッチC2 の第2クラッチ油室24内の作動油は重力で排出されてしまう。従って、この状態からエンジンを再始動して第1クラッチC1 又は第2クラッチC2 を係合させるとき、特に作動油の粘度が高い低温時には、空になった第1クラッチ油室20又は第2クラッチ油室24に作動油を充満させるのに時間がかかって応答性が低下してしまう問題がある。
【0042】
しかしながら、本実施例ではエンジンの始動によりオイルポンプ52が作動すると直ちに潤滑油が第3環状溝2nに供給され、このとき第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24が空であれば第3環状溝2nと第1環状溝2i及び第2環状溝2kとの間に圧力差があるため、第3環状溝2nの潤滑油はシールリング40L ,41R を通って第1環状溝2i及び第2環状溝2kにリークし、第1クラッチ油室20及び第2クラッチ油室24に供給される。その結果、第1ソレノイドバルブ54又は第2ソレノイドバルブ55が開弁したとき、第1クラッチC1 又は第2クラッチC2 を速やかに係合させて応答性を高めることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0044】
例えば、実施例では内軸であるサポート2が固定されており、外軸であるクラッチハブ13が回転するが、内軸及び外軸は両者が相対回転するものであれば、何れが回転しても良い。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載された発明によれば、内軸の外周の第1環状溝及び第2環状溝間に第3環状溝を形成し、第3環状溝及び第1環状溝間に第1シール部材を配置するとともに第3環状溝及び第2環状溝間に第2シール部材を配置したので、第1クラッチの作動時に第1クラッチ油室に連なる第1環状溝から第1シール部材を通して漏れた作動油と、第2クラッチの作動時に第2クラッチ油室に連なる第2環状溝から第2シール部材を通して漏れた作動油とを第3環状溝に補集して両クラッチの作動の相互干渉を防止しながら、第1クラッチ油室及び第2クラッチ油室が空の状態にあるとき、第3環状溝に供給した潤滑油を第1シール部材及び第2シール部材を通して第1環状溝及び第2環状溝に供給することにより、第1クラッチ油室及び第2クラッチ油室を潤滑油で満たして両クラッチを時間遅れなく係合させることができる。
【0046】
また請求項2に記載された発明によれば、内軸に形成した潤滑油路を第3環状溝に連通させたので、第3環状溝に簡単に潤滑油を導くことができる。
【0047】
また請求項3に記載された発明によれば、潤滑油路を外軸の外周に形成されて遠心油圧をキャンセルするキャンセラー油室に連通させたので、キャンセラー油室用の潤滑油を第3環状溝に導くことができる。
【0048】
また請求項4に記載された発明によれば、潤滑油路の第3環状溝よりも下流側に絞りを設けたので、潤滑油に所定の圧力を発生させて第3環状溝から第1シール部材及び第2シール部材を通して第1環状溝及び第2環状溝に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車用トランスミッションの部分断面図
【図2】図1の2−2線矢視図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】図2の4A−4A線、4B−4B線及び4C−4C線断面図
【図5】作動油及び潤滑油の油圧回路図
【符号の説明】
2 サポート(内軸)
2a 潤滑油路(油路)
2i 第1環状溝
2k 第2環状溝
2n 第3環状溝
13 クラッチハブ(外軸)
13b 第1油孔
13c 第2油孔
17 第1クラッチピストン
20 第1クラッチ油室
21 第2クラッチピストン
24 第2クラッチ油室
28 キャンセラー油室
40L 第1シールリング(第1シール部材)
41R 第2シールリング(第1シール部材)
56 絞り
Claims (4)
- 内軸(2)の外周に相対回転自在に嵌合する外軸(13)の外周に第1クラッチピストン(17)を駆動する第1クラッチ油室(20)及び第2クラッチピストン(21)を駆動する第2クラッチ油室(24)を軸方向に並設し、内軸(2)の外周に軸方向に離間して形成した第1環状溝(2i)及び第2環状溝(2k)と、外軸(13)を貫通して第1環状溝(2i)及び第2環状溝(2k)にそれぞれ連通する第1油孔(13b)及び第2油孔(13c)とを通して第1クラッチ油室(20)及び第2クラッチ油室(24)に独立に作動油を給油するタンデム型油圧クラッチにおいて、
内軸(2)の外周の第1環状溝(2i)及び第2環状溝(2k)間に第3環状溝(2n)を形成し、第3環状溝(2n)及び第1環状溝(2i)間に第1シール部材(40L )を配置するとともに第3環状溝(2n)及び第2環状溝(2k)間に第2シール部材(41R )を配置し、第3環状溝(2n)に供給した潤滑油を第1シール部材(40L )及び第2シール部材(41R )を通して第1環状溝(2i)及び第2環状溝(2k)に供給することを特徴とする、タンデム型油圧クラッチにおける給油構造。 - 内軸(2)に形成した潤滑油路(2a)を第3環状溝(2n)に連通させたことを特徴とする、請求項1記載のタンデム型油圧クラッチにおける給油構造。
- 前記潤滑油路(2a)を外軸(13)の外周に形成されて遠心油圧をキャンセルするキャンセラー油室(28)に連通させたことを特徴とする、請求項2記載のタンデム型油圧クラッチにおける給油構造。
- 前記潤滑油路(2a)の第3環状溝(2n)よりも下流側に絞り(56)を設けたことを特徴とする、請求項1記載のタンデム型油圧クラッチにおける給油構造。
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